説明

魚風味

本発明は、1〜20%w/wの水および少なくとも1種の多価不飽和脂肪酸を含む組成物を調製するステップと、260℃未満で、魚風味が生じるのに十分な反応時間にわたり、組成物をインキュベートするステップと、任意選択により製品を1つ以上のその他の成分と混合するステップを含む、魚風味を有する製品を製造する方法に関する。本発明はまた、本発明の方法によって得られる製品、および当該製品の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、魚風味を有する製品を製造する方法に関する。
【0002】
[背景技術]
魚風味は、魚および魚加工品などの天然食品の風味を変更または増強するために、またはスナックなどの天然の魚風味を欠く食品に魚風味を作り出すために、食品添加剤として使用される。
【0003】
調理魚肉およびその他の水棲動物の調理肉の風味は、アルデヒドと褐変生成物の複合混合物の結果である。アルデヒドは、例えばドコサヘキサエン酸などの多価不飽和脂肪酸の分解を通じて形成される(Shahidi,F.Flavor of Meat,Meat Products and Seafoods(第2版)Springer−Verlag)。
【0004】
商業的魚風味は、丸ごとの魚、特にいわゆる白身魚の加工によって製造される。この製造工程の不都合は、いずれかの特定の魚風味を製造し得るように、作業条件を最適化する可能性がわずかしかないか、または皆無であることである。結果として、これらのタイプの魚風味は一般的な魚風味を有し、顧客に特定の風味を選択する可能性を提供しない。
【0005】
食品に魚風味を与える別の可能性は、トップノートの添加である。これらは天然で魚に存在する化学物質であるが、上述の魚風味とは異なり、魚に由来せず合成的に製造される。トップノートの不都合は、魚風味の一部、すなわち匂いまたは香りを提供するだけで味を提供しないことであり、したがって本物の魚または魚加工品の濃厚で特徴的な魚風味を欠いている。別の不都合は天然でないことで、人工的であり天然でないことから消費者に避けられることが多い。
【0006】
魚由来魚風味の多くの不都合は、これらがユダヤ教の清浄食品(kosher)および/またはイスラム教の清浄食品(halal)でなく、食品産業におけるそれらの用途を大幅に制限することである。現行の魚風味の不都合をなくし、様々な異なる魚風味を製造するための新規プロセスを提供することが、本発明の目的である。
【0007】
[発明の説明]
第1の態様では、本発明は、
a)1〜20%w/wの水および少なくとも1種の多価不飽和脂肪酸を含む組成物を調製するステップと、
b)組成物を260℃未満で、魚風味が生じるのに十分な反応時間にわたりインキュベートするステップと、
c)任意選択により製品を1つ以上のその他の成分と混合するステップ
を含む、魚風味を有する製品を製造する方法を提供する。
【0008】
風味は食品またはその他の物質の感覚性の印象と定義され、味と匂いの化学感覚によって判定される。
【0009】
本発明の文脈で「魚風味」とは、任意の食用の水棲淡水または海洋動物に由来する食品の風味と定義される。同様に本発明の文脈で「魚」とは、任意の食用の水棲淡水または海洋動物と定義される。魚の例は、ニシンダマシ、シタビラメ、カタクチイワシ、タラ、ウナギ、コイ、サバ、カツオ、ニシン、サケ、マス、バラマンディ、オヒョウ、ナマズ、カレイ、マダイ、ハドック、サメ、バス、カジキ、ボラ、カワカマス、パーチ、パイクパーチ、マイワシ、フグ、イワシ、マグロ、アカメ、メカジキ、ガンギエイ、イズミダイ、およびターボットなどの硬骨魚と、サメおよびエイなどの軟骨魚と、クジラおよびオットセイと、例えばエビ、ザリガニ、カニ、ロブスター、クルマエビ、および伊勢エビなどの水棲甲殻類と、例えば甲殻類、カキ、ムール貝、ホタテガイ、ハマグリ、ザルガイ、エボシガイ、イカ、タコ、およびコウイカなどの水棲軟体動物である。
【0010】
本発明の第1の態様の方法を用いて、異なる魚風味を製造してもよい。魚風味は鮮魚または魚加工品の風味であってもよい。鮮魚とは、風味を発する魚または魚由来製品が加工されておらず、換言すれば生であることを意味する。魚加工品とは、魚または魚由来製品が何らかの方法で加工されていることを意味する。加工の例は、煮る、茹でる、網焼き、ロースト、フライ、およびスモーキングである。加工のその他の例は、例えばニシンやサケでなされるような発酵、および(干し魚を作るための)乾燥である。したがって魚風味は、煮たまたは茹でた風味、または網焼き、ロースト、フライおよび/またはスモーク風味またはそれらの混合物であってもよい。
【0011】
本発明の方法によって製造される魚風味は、例えば食品または飼料製品に欠けている魚風味を与え、または食品または飼料製品の既存の魚風味を増強するなど、好ましくは食品または飼料製品の所望の魚風味を増強しまたはそれを与えるのに適する。本発明の方法によって製造される魚風味は高度に濃縮されており、すなわちそれは非常に強力であるので、少量の魚風味の食品または飼料への添加が、所望の魚風味を提供するのに既に十分であってもよい。それは非常に濃縮されているので、本発明の方法によって製造される魚風味は、好ましくは未希釈での消費に適さない。用途に基づいて、本発明の方法によって製造される魚風味は、食品または飼料総重量を基準にして、0.01%〜5%w/w、好ましくは0.05〜1%w/w、より好ましくは0.1〜0.5%w/wの濃度に達する量で、好ましくは食品または飼料に添加される。
【0012】
第1の態様の方法では、組成物は好ましくは、魚風味が生じるのに十分な温度および反応時間の条件下で、前記組成物をインキュベートするステップに先だって魚風味を有さなくてもよい。このようにして、第1の態様の方法に従って魚風味が生じるまで、あらゆる望まれない魚風味を防止してもよい。これは例えば、魚風味を発生させるために使用する前の組成物の保存において有利である。
【0013】
多価不飽和脂肪酸は、2つ以上の不飽和C−C結合がある脂肪酸である。本発明の第1の態様の方法のステップ(a)の多価不飽和脂肪酸は、遊離酸またはその塩の形態であってもよい。多価不飽和脂肪酸はまた、例えばモノ−、ジ−、またはトリグリセリドなどの例えばグリセロール部分にエステル化されていてもよい。多価不飽和脂肪酸は、液体形態または固形形態であってもよい。固形形態である場合、多価不飽和脂肪酸は、例えば噴霧乾燥調合物、または顆粒などの粉末形態であってもよい。多価不飽和脂肪酸は純粋形態であってもよく、またはそれは塩および/またはデンプン、デキストリン、およびマルトデキストリンなどの炭水化物などのその他の成分を含んでもよい。
【0014】
好ましい実施形態では多価不飽和脂肪酸は、ω−3多価不飽和脂肪酸である。ω−3多価不飽和脂肪酸(「n−3」または「ω−3」脂肪酸とも称される)は、多価不飽和脂肪酸鎖中の第1の二重結合が、カルボキシル部分から最も遠い炭素原子から数えて3番目のC−C結合に位置する多価不飽和脂肪酸である。ω−3多価不飽和脂肪酸は魚、および魚油などの魚由来製品に豊富である。ω−3多価不飽和脂肪酸としては、α−リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサトリエン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、テトラコサペンタエン酸、およびテトラコサヘキサエン酸が挙げられる。ω−3脂肪酸は、有利には本発明の第1の態様の方法において使用され、望ましい魚風味を発生させ得る。
【0015】
より好ましい実施形態では、ω−3脂肪酸はエイコサペンタエン酸および/またはドコサヘキサエン酸である。エイコサペンタエン酸および/またはドコサヘキサエン酸は、スピルリナ(Spirulina)、またはクリプテコジニウム(Crypthecodinium)(例えばクリプテコジニウム・コーニイ(Crypthecodinium cohnii))およびシゾキトリウム(Schizochytrium)などの微細藻類などの非動物性原料と、魚、好ましくはマイワシ、タラ、ニシン、オヒョウ、サメ、およびカタクチイワシなどの脂の乗った魚と、例えば魚内臓(肝臓など)および魚油などの魚加工品と、オキアミおよび小エビなどの動物性プランクトンとに由来してもよい。エイコサペンタエン酸および/またはドコサヘキサエン酸は、魚油に由来してもよい。魚油は、エイコサペンタエン酸および/またはドコサヘキサエン酸に富む。魚油は、粗製魚油または精製魚油のどちらであってもよい。魚油は、液体または固形形態であってもよい。固形形態である場合、魚油は、例えば粉末、顆粒、錠剤、または微小ビーズの形態であってもよく、例えばワックス、エマルジョン、ゼラチン、ポリエチレングリコール、デンプン、および/または炭水化物で任意選択により被覆されていてもよい。魚油はまた、例えばアスコルビン酸ナトリウムおよびトコフェロールのような安定剤などの追加的成分を含んでもよい。魚油は、0%〜100%のドコサヘキサエン酸および/またはエイコサペンタエン酸を含有してもよい。
【0016】
第1の態様の方法の組成物中の多価不飽和脂肪酸の量は、組成物総重量を基準にして0.1%w/w〜100%w/wであってもよい。好ましくは、望ましい魚風味を得るために、量は組成物総重量を基準にして0.2%w/w〜10%w/w、より好ましくは0.3%〜1%w/wである。
【0017】
本発明の方法のステップ(b)の組成物の温度は、好ましくは240℃未満、より好ましくは220℃未満、なおもより好ましくは200℃未満である。本発明の方法のステップ(b)の組成物の温度は、好ましくは60℃を超え、好ましくは80℃を超え、より好ましくは100℃を超える。好ましくは温度は100℃〜200℃、より好ましくは110℃〜180℃、なおもより好ましくは120℃〜160℃である。インキュベーション温度が高すぎる場合(例えば>260℃)、製品は焦げた臭いを有するかもしれない。インキュベーション温度が、例えば60℃未満のように100℃未満である場合、インキュベーションは非常に緩慢に進行し、または全く進行せず、魚風味が形成せずまたは形成が不十分になるかもしれない。一般に、より低いインキュベーション温度(例えば100℃未満)が望ましい煮たおよび/または茹でた魚風味をもたらし得るのに対し、より高いインキュベーション温度(例えば100℃を超える)は望ましいロースト、網焼き、またはフライ魚風味をもたらし得る。
【0018】
本発明の第1の態様の方法のステップ(b)の組成物の含水量は、組成物総重量を基準にして好ましくは1%〜15%、より好ましくは1%〜10%w/wであり、なおもより好ましくは組成物総重量を基準にして1〜9%、1〜8%、1〜7%、1〜6%、最も好ましくは1〜5%w/wである。組成物の低い含水量(すなわち20%w/w未満)は方法のステップ(b)中に、例えば100℃を超える温度など、より高いインキュベーション温度をもたらし得る。より高い温度はより短い反応時間をもたらし得、その結果として費用効率を高め得る。本発明の方法のステップ(b)の組成物の低い含水量(例えば組成物総重量を基準にして20%w/w未満)は、例えばより低いインキュベーション温度(例えば100℃未満)では、煮たまたは茹でた魚風味、より高い温度(例えば100℃を超える)では、ロースト、網焼き、またはフライ魚風味などの様々な魚風味が製造できるように、作業条件を調整し、特にインキュベーション温度を変更できるようにし得る。組成物の含水量が高すぎて、例えば組成物総重量を基準にして20%w/wを超える場合、所望の魚風味が発生せず、かつ/または望まれない異臭が発生するかもしれない。含水量が低すぎて、例えば1%未満である場合、組成物が焦げ、その結果、望まれない焦げた臭いがもたらされるかもしれない。
【0019】
当業者は、本発明の第1の態様の方法のステップ(b)のインキュベーション時間が、インキュベーション温度ならびに含水量および所望の魚風味に左右されることを理解するであろう。より高いインキュベーション温度では、魚風味を得るためのインキュベーション時間がより短くてもよいのに対し、より低いインキュベーション温度では、所望の魚風味を得るためのインキュベーション時間はより長くてもよい。同様に、より低い含水量ではインキュベーション時間がより短くてもよいのに対し、より高い含水量ではインキュベーション時間はより長くてもよい。したがって当業者は過度の負担なしに、所望の魚風味を得るために、温度、時間、および含水量について適切な条件を確立できる。
【0020】
好ましい実施形態では、本発明の方法で使用される組成物は、酵母抽出物および/または酵母自己溶解物を含んでもよい。Food Chemical Codexは「酵母抽出物」を次のように定義する。「酵母抽出物は酵母細胞の水溶性構成要素を含み、その組成物は主としてアミノ酸、ペプチド、炭水化物、および塩である。酵母抽出物は、食用酵母中に存在する天然酵素による、または食品等級酵素の添加によるペプチド結合の加水分解を通じて生成する」。Food Chemical Codexは「自己溶解酵母」を「食品等級酵母から得られる濃縮、非抽出、部分的可溶性消化物。可溶化は、酵母細胞の酵素加水分解または自己消化によって達成される。食品等級塩および酵素が添加されてもよい。自己溶解した酵母は、酵母細胞全体に由来する可溶性および不溶性構成要素の双方を含有する。それは主としてアミノ酸、ペプチド、炭水化物、脂肪、および塩から構成される。」と定義する。酵母抽出物または酵母自己溶解物は、例えばパン用酵母、ビール酵母またはワイン酵母などの任意のタイプの食品等級酵母から生成されてもよい。好ましくは酵母抽出物または酵母自己溶解物は、サッカロミセス(Saccharomyces)、クリヴェロミセス(Kluyveromyces)、カンジダ(Candida)またはトルラ(Torula)属に属する酵母株から生成される。好ましい実施形態では、酵母抽出物または酵母自己溶解物は、サッカロミセス(Saccharomyces)属に属する酵母株、すなわちサッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)から生成される。
【0021】
好ましい実施形態では、本発明の方法のステップ(a)および/またはステップ(b)油の組成物に油を添加してもよい。油を添加した後の組成物中の油の量は、組成物総重量を基準にして好ましくは0.1%〜5%w/w、好ましくは0.2%〜2%w/w、より好ましくは0.5%〜1%w/wである。本発明の第1の態様の方法の製品(すなわち魚風味を有する製品、以下「製品」と称される)は、任意の形態であってもよい。例えば製品は、ドライ製剤または液剤であってもよい。ドライ製剤である場合、製品は脆いかもしれず、すなわちそれは容易に粉砕されて粉末または粉塵になり、またはそれを放出する。粉塵は一般にヒトおよび動物の健康に有害であると見なされる。組成物に油を添加することで製品の脆さが低下し、それによって粉塵または粉末の放出が防止されるかもしれない。好ましい実施形態では、油は水素化ヒマワリ油である。
【0022】
好ましい実施形態では、本発明の第1の態様のステップ(b)のインキュベーションは押し出し機内で実施される。押し出し機は、二軸押し出し機など、加工フレーバー製造に適した任意のタイプの押し出し機であってもよい。例えば二軸押し出し機などの押し出し機は、当該技術分野で知られている。第1の態様の組成物、および任意選択により水および/または油を同一または別個の供給装置を通じて、押し出し機内に装入してもよい。製品は押し出し機から、減圧(例えば5ミリバール)から大気圧(例えばおよそ1バール)まで様々な圧力で押し出し機外に出てもよい。押し出された製品は、冷却ベルトまたは当該技術分野で知られている任意のその他の方法を使用して、さらに冷却および/または乾燥し得る。押し出し機の使用は、安定した魚風味をもたらすかもしれない。例えば押し出し機内の高温(典型的に100℃よりも高いが、恐らくは120℃よりも高い)のために、押し出し機内でいわゆる「溶融物(smelt)」が形成し得、その結果、香味料はガラス質状態とも称されるカプセル化(incapsulated)形態で押し出し機を出て、それが魚風味を有する製品を、例えば酸化に対して安定化させ得る。酸化は酸敗臭をもたらし得る。
【0023】
方法のステップ(c)のその他の成分は、例えば酵母抽出物または酵母自己溶解物、タンパク質加水分解産物、醤油、ハーブ、香辛料、塩、および任意のその他の薬味であってもよい。例えば製品の魚風味が食品中で直接、未希釈で使用するには強すぎる場合、またはすぐ使用できる調味料を製造するために、製品を有利にはその他の成分と混合して魚風味を希釈してもよい。
【0024】
本発明の第2の態様では、本発明の第1の態様の方法によって得られる魚風味を有する製品を提供する。本発明の第2の態様の製品は、茹で、網焼き、ロースト、フライ、および/またはスモーク魚風味を有してもよいことで特徴付けられる。
【0025】
本発明のさらなる態様では、本発明の方法によって得られる魚風味を有する製品を含む調味料を提供する。調味料は、通常、ハーブと塩からなる、食品または飼料成分の混合物であり、食品または飼料に添加して風味を与えまたはそれを増強する。調味料は好ましくは食品または飼料調味料である。好ましくは調味料中の魚風味を有する製品の量は、調味料総重量を基準にして0.5〜10%w/w、より好ましくは1〜5%w/w、最も好ましくは2〜4%w/wである。
【0026】
本発明のさらなる態様では、本発明の魚風味を有する製品または本発明の調味料を含む、食品または飼料が提供される。好ましくは魚風味を有する製品の量は、食品または飼料総重量を基準にして0.01〜5%w/w、より好ましくは0.05〜1%w/w、最も好ましくは0.1〜0.5%w/wである。
【0027】
本発明のさらなる態様では、食品または飼料に魚風味を与えまたはそれを増強する、本発明の魚風味を有する製品または本発明の調味料の使用を提供する。本発明の魚風味を有する製品または本発明の調味料は、有利には、ポテトクリスプまたはチップ、スナック、フィッシュクラッカー、魚肉代替え品、発酵ダイズ製品、スープ、アジア食品およびそのための調味料などの茹で、網焼き、ロースト、フライ、および/またはスモーク魚風味が所望される用途で使用してもよい。本発明の魚風味を有する製品または本発明の調味料はまた、例えばすり身または寿司などの魚肉により多くの魚風味および/またはより深い魚風味を与えるのに使用してもよい。本発明の魚風味を有する製品または本発明の調味料は希釈濃度で既に効果的であり、したがって用途において対費用効果の高い様式で使用してもよい。本発明の魚風味を有する製品または本発明の調味料を使用して、ペットフードなどの飼料を風味付けしてもよい。本発明の魚風味を有する製品または本発明の調味料は天然風味と認められ、またそのように登録してもよい。本発明の魚風味を有する製品または本発明の調味料は、調製工程で(例えばキッチンで)、または例えば食卓で食品または飼料を消費する用意ができたときに、食品または飼料に添加してもよい。魚風味を有する製品または本発明の調味料の量を食品または飼料中で変化させることで、当業者は過度の負担なしに、適切な魚風味を増強し、またはそれを与えるための魚風味を有する製品または調味料の適切な量を確立してもよい。本発明の魚風味は、食品または飼料総重量を基準にして、0.01%〜5%w/w、好ましくは0.05〜1%w/w、より好ましくは0.1〜0.5%w/wの最終濃度に達する量で、好ましくは食品または飼料に添加される。
【0028】
[実施例]
[実施例1]
ドコサヘキサエン酸を含む組成物の押し出し実験
水投入ユニットおよび注入器と、油投入ユニットおよび注入器とを装着した二軸スクリュー押し出し機に、別個の供給装置を使用して表1に記載の組成物を入れた。スイス国バーゼルのDSM Nutritional Productsから得られるRopufa(登録商標)‘10’n−3 INF粉末は、アスコルビン酸ナトリウムおよびトコフェロールを含む、魚ゼラチンとスクロースのコーンスターチ被覆マトリックス中の微細分散した微小ビーズ形態の精製魚油であり、7%ドコサヘキサエン酸を含有する。知覚できる魚臭はない。オランダ国デルフトのDSM Food Specialtiesから得られるGistex(登録商標)LSは、酵母抽出物である。4件の異なる実験(実施例I〜IV)ならびに1件の比較実験(比較例A)を実施した。表1を参照されたい。形成された製品は、大気圧下の室内の押し出し機を出て、圧力ロールを装着した冷却ベルト上で冷却および乾燥され、引き続いて磨砕され試料採取された。
【0029】
【表1】



【0030】
0.4%NaClを含有する0.5%w/w水溶液を作成して、専門家パネルによって製品の風味を評価した。表1に示すように、ドコサヘキサエン酸を含む組成物が魚風味をもたらしたのに対し、ドコサヘキサエン酸のない組成物は基本的なロースト風味を有したが、本発明の魚風味を欠いていた。温度、滞留時間、処理能力および/またはドコサヘキサエン酸量を変化させることで、異なる魚風味を得られることも分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)1〜20%w/wの水および少なくとも1種の多価不飽和脂肪酸を含む組成物を調製するステップと、
b)260℃未満で、魚風味が生じるのに十分な反応時間にわたり、前記組成物をインキュベートするステップと、
c)任意選択により前記製品を1つ以上のその他の成分と混合するステップと、
を含む、魚風味を有する製品を製造する方法。
【請求項2】
前記多価不飽和脂肪酸がω−3多価不飽和脂肪酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ω−3多価不飽和脂肪酸がエイコサペンタエン酸および/またはドコサヘキサエン酸である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物中の前記多価不飽和脂肪酸の量が、前記組成物の総重量を基準にして0.1%w/w〜100%w/wである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(b)の前記組成物の温度が240℃未満である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(b)の前記組成物の温度が60℃を超える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(b)の前記組成物の含水量が、前記組成物総重量を基準にして1%〜15%w/wである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、酵母抽出物およびまたは酵母自己溶解物を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(a)および/またはステップ(b)で油が前記組成物に添加される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記油を添加した後の前記組成物中の油の量が前記組成物総重量を基準にして0.1%〜5%w/wである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記油が水素化ヒマワリ油である、請求項9または請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(b)で前記インキュベーションが押し出し機内で実施される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法によって得られる、魚風味を有する製品。
【請求項14】
請求項13に記載の魚風味を有する製品を含む調味料。
【請求項15】
食品または飼料の風味の量が、前記調味料総重量を基準にして0.5〜10%w/wである、請求項14に記載の調味料。
【請求項16】
請求項13に記載の魚風味を有する前記製品または請求項14または15に記載の前記調味料を含む、食品または飼料。
【請求項17】
魚風味を有する前記製品の量が、前記食品または前記飼料の総重量を基準にして0.01〜5%w/wである、請求項16に記載の食品または飼料。
【請求項18】
食品または飼料中に風味を与えまたはそれを増強する、請求項13に記載の魚風味を有する前記製品または請求項14または15に記載の前記調味料の使用。
【請求項19】
前記魚風味が、前記食品または飼料の総重量を基準にして0.01%〜5%w/wの最終濃度に達する量で前記食品または飼料に添加される、請求項18に記載の使用。

【公表番号】特表2012−505647(P2012−505647A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531500(P2011−531500)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063551
【国際公開番号】WO2010/046313
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】