鮮麗錫めっき鋼板の製造方法
【課題】微細な疵やかすみ汚れが存在せず、鮮麗なめっき表面を有する錫めっき鋼板を製造する製造方法を提供する。
【解決手段】連続式電気錫めっきラインに関し、錫めっき後にルーパー部を備えるラインにて、鮮麗なめっき表面を有する錫めっき鋼板を製造する方法において、(x)ルーパー部入側のブライドルロールとルーパー部との張力段差を3500N以下に維持し、及び/又は、(y)ルーパー部の張力を9000N以上に維持し、錫めっき鋼板を通板することを特徴とする鮮麗錫めっき鋼板の製造方法。
【解決手段】連続式電気錫めっきラインに関し、錫めっき後にルーパー部を備えるラインにて、鮮麗なめっき表面を有する錫めっき鋼板を製造する方法において、(x)ルーパー部入側のブライドルロールとルーパー部との張力段差を3500N以下に維持し、及び/又は、(y)ルーパー部の張力を9000N以上に維持し、錫めっき鋼板を通板することを特徴とする鮮麗錫めっき鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続式電気錫めっきラインにて、鮮麗なめっき表面を有する錫めっき鋼板を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
連続式電気錫めっきラインで製造する錫めっき鋼板は、めっき表面が美麗であり、飲料缶、食品缶、美術缶等の様々な用途に使用されているが、近年、錫めっき量を低減し、めっき表面に、酸化皮膜の生成、塗膜密着性の低下、耐食性の劣化等を防止するクロム系の化成処理皮膜(クロメート皮膜)を被覆した錫めっき鋼板が、多量に使用されている。
【0003】
しかし、上記化成処理皮膜を有する錫めっき鋼板においては、ライン走行中に、めっき表面に、微細な疵、さらには、“かすみ”がかかったような模様(かすみ汚れ)が生じることがある。このような疵や、かすみ汚れの発生は、当然のことながら、めっき表面の光沢を損なうし、また、錫めっき鋼板に塗装した場合には、塗装欠陥を形成することになるので、錫めっき鋼板の商品価値を低減することになる。
【0004】
“かすみ汚れ”が発生して、本来の美麗な光沢を失っためっき表面には、“スマッジ”と称する異物(酸化錫の粉)が付着していることから、スマッジの発生を防止する技術が、これまで、幾つか開示されている(特許文献1〜4、参照)。
【0005】
特許文献1には、クロメート皮膜の上に、カルボキシメチルセルロースのアルカリ塩、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び酸成分からなる水溶液を塗布して加熱、乾燥し、皮膜性状を改善する表面処理法が開示されている。特許文献2には、地鉄の片面に、目付量1〜15g/m2のSn層を形成し、その上に、目付量0.0071〜0.71g/m2のZn層を形成し、耐硫化性と耐スマッジ性を高めた電気ブリキが開示されている。
【0006】
特許文献3には、溶接缶用ストライプラミネート鋼板において、可塑性樹脂膜を形成したラミネート面の裏面側に、所要油量の塗油層を形成し、スマッジの発生を抑制した溶接缶用ストライプラミネート鋼板とその製造方法が開示されている。
【0007】
特許文献1〜3には、皮膜の性状・構造の観点から、スマッジの発生を抑制する対策が開示されているが、特許文献4には、観点を変え、形状及び表面粗さを規定したロールを、錫層溶融装置と化成処理装置の間、及び、化成処理装置と出側ブライドルロールとの間に配設し、微細な疵を生成することなく、表面性状の優れた錫めっき鋼板を製造することができる連続式電気錫めっきラインが開示されている。
【0008】
特許文献1〜4開示の対策は、スマッジや、他の欠陥の発生抑制に、それなりの効果が期待できるものであるが、錫めっき量の低減化とともに、需要者が要求する耐食性や表面性状の基準は従来以上に厳しくなり、現状の連続式電気錫めっきラインでは、かすみ汚れや、他の表面欠陥の発生を完全に防止して、需要者の要求に応えることができない場合がある。
【0009】
【特許文献1】特開昭51−63328号公報
【特許文献2】特開昭51−92739号公報
【特許文献3】特開2005−146388号公報
【特許文献4】特開平6−330381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、現状技術の限界を踏まえ、微細な疵やかすみ汚れが存在せず、鮮麗なめっき表面を有する錫めっき鋼板を製造する製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、連続式電気錫めっきラインにおいて、“かすみ汚れ”の発生を抑制し、鮮麗なめっき表面を形成するため、かすみ汚れの発生機構を鋭意調査した。その結果、めっき条件や、化成処理条件を変えることなく、錫めっき鋼板の後段ライン通板時の張力分布を適正化することにより、かすみ汚れの発生を顕著に抑制することができることを見いだした。
【0012】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
【0013】
(1) 連続式電気錫めっきラインに関し、錫めっき後にルーパー部を備えるラインにて、鮮麗なめっき表面を有する錫めっき鋼板を製造する方法において、
(x) ルーパー部入側のブライドルロールとルーパー部との張力段差を3500N以下に維持し、錫めっき鋼板を通板する
ことを特徴とする鮮麗錫めっき鋼板の製造方法。
【0014】
(2) 連続式電気錫めっきラインに関し、錫めっき後にルーパー部を備えるラインにて、鮮麗なめっき表面を有する錫めっき鋼板を製造する方法において、
(y) ルーパー部の張力を9000N以上に維持し、錫めっき鋼板を通板する
ことを特徴とする鮮麗錫めっき鋼板の製造方法。
【0015】
(3) 連続式電気錫めっきラインに関し、錫めっき後にルーパー部を備えるラインにて、鮮麗なめっき表面を有する錫めっき鋼板を製造する方法において、
(x) ルーパー部入側のブライドルロールとルーパー部との張力段差を3500N以下に維持し、かつ、
(y) ルーパー部の張力を9000N以上に維持し、錫めっき鋼板を通板する
ことを特徴とする鮮麗錫めっき鋼板の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、めっき条件や、化成処理条件を変えることなく、錫めっき鋼板の後段ライン通板時の張力分布を適正化することにより、かすみ汚れの発生を顕著に抑制し、鮮麗なめっき表面を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
表1に、“かすみ汚れ”を定量分析した結果の一部を示す。C、O、Cr、及び、Snが主要成分である。
【0019】
【表1】
【0020】
ここで、図1に、地鉄1の上に、合金層2、Sn層3、クロメート皮膜4、及び、塗油膜5が、この順序で形成されている錫めっき鋼板6の皮膜構造を示すが、該構造から明らかなように、Cは、塗油中のCに由来し、Oは、塗油中のO、及び、SnやCrに結合しているOに由来し、Crは、クロメート皮膜中のCrに由来し、Snは、めっきの主成分Snに由来する。
【0021】
即ち、“かすみ汚れ”は、塗油後の通板中、ロールとの接触によりめっき表層が剥離して生成した微粒子が、めっき表層に付着したものである。
【0022】
本発明者は、“かすみ汚れ”の発生機構を解明するため、“かすみ汚れ”が、めっき表面において、どのような態様で存在するのかを、FE−SEM(Field Emission Scanning Electron Microscope[走査型電子顕微鏡])を用いて観察した。図2に、観察結果の一部を示す。また、図3に、“かすみ汚れ”を形成する微粒子(剥離しためっき表層が微粒子化したもの)の一態様を示す。
【0023】
以上の観察結果から、“かすみ汚れ”は、全て、めっき表層の“削れ跡”に存在することが判明した。また、上記“削れ跡”は、その形態から、スリップ痕であることが判明した。
【0024】
以上の観察結果から、“かすみ汚れ”の発生機構は、次のように推察される。
【0025】
図1に示すように、めっき表層は、Sn層3とその上のクレメート皮膜4から構成されているが、本来的に硬度が低く、ロールにより損壊され易い。
【0026】
図4に、連続式電気錫めっきラインにおける化成処理後の後段ライン(矢印が通板方向)を示す。図4に示すように、錫めっき鋼板6は、化成処理によりクロメート皮膜が形成された後、塗油装置7で塗油され、その後、ブライドルロール8、ルーパー部10、ミラー装置12、ブライドルロール9を経て、テンションリール13で巻き取られる。
【0027】
この間、ルーパー制御ロール14の位置を上下に調整することにより、ルーパー部入側のブライドルロールとルーパー部との張力段差、及び、ルーパー部の張力を、適宜、適正範囲に制御することができる。
【0028】
図4から明らかなように、錫めっき鋼板6は、クロメート皮膜形成後、テンションリール13により巻き取られるまでの間、後段ライン上を、長い距離、連続的に走行することになる。
【0029】
ブライドルロール8、9、ルーパー部10を構成するルーパーロール11、及び、各位置に配置する搬送ロール15としては、硬度が低いめっき表層に対応し、通常、ネオプレン、ニトリルなどのゴム系のテーパー型ロールを採用する。
【0030】
しかし、一般的に、ルーパーモーター(図示なし)の容量が小さい(張力で、4000N程度)ので、図5に示すように、後段ライン通板時、ルーパー部10とブライドルロール8との張力段差が大きくなり(例えば、11000N程度)、かつ、テンションリール13により巻き取られるまでの間、低張力通板(4000〜5500N程度)となるので、後段ラインのロールが、めっき表層上でスリップする。
【0031】
その結果、めっき表層(Sn層3+クロメート皮膜4)に剪断力が作用し、図6に示すように、めっき表層(Sn層3+クロメート皮膜4)の一部が剥離し、めっき表層に“削れ跡”16(図2、参照)が形成されることになる。
【0032】
剥離しためっき表層は微粒子化して(図3、参照)、ロール表面に付着して薄く堆積するが、この微粒子堆積薄層を、後続の錫めっき鋼板のめっき表層に形成された“削れ跡”が、掻き取るか、又は、噛み込んで、めっき表層に、“かすみ汚れ”が形成されることになる。
【0033】
上記発生機構によれば、錫めっき鋼板が後段ラインを通過している間に、めっき表層においては、“削れ跡”とともに、“かすみ汚れ”が増大することになる。
【0034】
本発明者は、このことを、図4に示す後段ラインにおける3箇所(ブライドルロール8の前後の(x)と(y)、及び、ルーパー部10の後面[ブライドルロール9の前]の(z))で、剥離しためっき表層が微粒子化して、錫めっき鋼板のめっき表層の“削れ跡”に掻き取られるか、又は、噛み込まれた量(スマッジ量)、及び、同じく、剥離しためっき表層が微粒子化して、ロール表面に付着、堆積した量(スマッジ量)を調査した。
【0035】
なお、スマッジ量は、後段ライン中、上記(x)、(y)及び(z)の位置に、オンライン拭取装置(錫めっき鋼板の表面に、所要面積の和紙を押し付けて、スマッジを拭き取るシリンダー装置)を配置して測定した。
【0036】
図7に、後段ライン(a)とともに、錫めっき鋼板におけるスマッジ量(b)を示す。また、図8に、後段ライン(a)とともに、ロール表面におけるスマッジ量(b)を示す。図7(b)及び図8(b)から、錫めっき鋼板の汚れも、ロールの汚れも、錫めっき鋼板が、ルーパー部入側のブライドルロール8を通過した後、増え始め、後段ラインを進行するに従い増大することが解る。
【0037】
このように、錫めっき鋼板のめっき表層に生成する“かすみ汚れ”は、図5に示すように、後段ライン通板時、ルーパー部10と、ルーパー部入側のブライドルロール8との張力段差が大きくなり、かつ、テンションロール13により巻き取られるまでの間、低張力通板(4000〜5500N程度)であることにより、後段ラインのロールが、めっき表層上でスリップすることに起因して形成されることを、本発明者は見いだした。
【0038】
本発明は、上記知見に基礎を置くものである。そして、本発明者は、さらに、上記張力段差及び通板時の張力を制御することにより、“かすみ汚れ”の生成を抑制することを検討した。
【0039】
錫めっき鋼板のめっき表層における“かすみ汚れ”の生成量(スマッジ量)は、需要者の製造ラインのレベラーロールを汚染しない範囲に抑制しなければならない。
【0040】
そこで、本発明者は、錫めっき鋼板の出荷時におけるスマッジ量と、スマッジに起因するレベラーロールの汚れ程度(スマッジ付着量)との関係を調査した。その結果、錫めっき鋼板の出荷時におけるスマッジ量が20mg/m2以下であれば、レベラーロールの汚れを極力抑制することができ、さらに、上記スマッジ量が15mg/m2以下であれば、レベラーロールの汚れを5mg以下に抑制できることが判明した。
【0041】
そして、連続式電気錫めっきラインの後段ラインにおいて、錫めっき鋼板のめっき表面に生成するスマッジの生成量を、錫めっき鋼板の加工ラインにおいて、製品品質に影響を及ぼさない20mg/m2以下に抑制することができる張力段差と通板張力を鋭意調査した。その結果を、図9と図10に示す。
【0042】
図9に、ブライドルロール8とルーパー部10の張力段差とスマッジ量の関係を示し、図10に、ルーパー部10の張力(通板張力)とスマッジ量の関係を示す。
【0043】
図9から、スマッジ量を20mg/m2以下に抑制するためには、ブライドルロール8とルーパー部10の張力段差を3500N以下に設定する必要があることが解る(図中「領域A1」参照)。
【0044】
それ故、本発明においては、ルーパー部入側のブライドルロール8とルーパー部10との張力段差を3500N以下に維持して、錫めっき鋼板を通板する。この点が、本発明の特徴の一つである。
【0045】
上記張力段差は、スマッジ量を、確実に20mg/m2以下に抑制することができる点で、3000N以下が好ましく、さらに、スマッジ量を、確実に、15mg/m2以下に抑制することができる点で、2000N以下が好ましい。なお、上記張力段差は、ブライドルロールの役割を果すため、1000N以上は必要である。
【0046】
同時に、図10から、スマッジ量を、確実に、20mg/m2以下に抑制するためには、ルーパー部の張力を9000N以上にする必要があることが解る(図中「領域A2」参照)。それ故、本発明においては、ルーパー部の張力を9000N以上に維持して、錫めっき鋼板を通板する。この点が、本発明の特徴の一つである。
【0047】
ルーパー部の張力は、スマッジ量を、確実に、20mg/m2以下に抑制することができる点で、9500N以上が好ましく、さらに、スマッジ量を、確実に、15mg/m2以下に抑制することができる点で、10000N以上が好ましい。なお、張力が高すぎると、鋼板の降伏応力を超えることがあるので、12000N以下が望ましい。
【0048】
本発明においては、ルーパー部入側のブライドルロールとルーパー部との張力段差、及び、ルーパー部の張力のいずれかを、適正範囲内に維持すれば、“かすみ汚れ”の発生量を、所要値以下に抑制することができるが、上記張力段差とルーパー部の張力の両方を適正範囲内に維持すれば、より効果的である。
【0049】
なお、ルーパー部入側のブライドルロールとルーパー部との張力段差、及び、ルーパー部の張力は、ルーパー制御ロール14の位置を上下に調整することにより、常に、適正範囲内に維持することができる。
【0050】
このように、本発明においては、連続式電気錫めっきラインにおいて、めっき条件や、化成処理条件を変えることなく、錫めっき鋼板の後段ライン通板時の張力分布を適正化することにより、かすみ汚れの発生を顕著に抑制し、鮮麗なめっき表面を有する錫めっき鋼板を製造することができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の実施例について説明するが、実施例で採用する条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【0052】
(実施例)
本発明を、既存の連続式電気錫めっきラインに適用し、錫めっき鋼板を製造した。その時の、錫めっき後のラインにおける張力分布(図中、鎖線で示す)を、本発明適用前の張力分布(図中、実線で示す)と併せて、図11に示す。
【0053】
図に示すように、Snめっきセクション出側のブライドルロールと、ルーパー部出側のブライドルロールの間の張力分布は、本発明適用(鎖線)と従来分布(実線)とで、大きく異なっている。
【0054】
次に、表2に、既存の連続式電気錫めっきラインに本発明を適用した場合と、本発明を適用しない場合とにおける“スマッジ量”と“かすみ発生状況”を示す。本発明によれば、常時、スマッジ量を、確実に20mg/m2以下に低減することができ、かすみが発生しない。また、ブライドルロールとルーパー部の張力段差とルーパー部の張力の両方の本発明条件を満たすと(発明例3と4、参照)、スマッジ量を、確実に、15mg/m2以下に抑制することができる。
【0055】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0056】
前述したように、本発明によれば、めっき条件や、化成処理条件を変えることなく、錫めっき鋼板の後段ライン通板時の張力分布を適正化することにより、“かすみ汚れ”の発生を顕著に抑制し、鮮麗なめっき表面を形成することができる。したがって、本発明は、従来の連続式電気錫めっきラインにも適用することができるので、めっき産業において、利用可能性が大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】錫めっき鋼板の皮膜構造を示す図である。
【図2】“かすみ汚れ”の存在態様を、FE−SEMで観察した結果を示す図である。(a)、(b)及び(c)は、それぞれ異なる“かすみ汚れ”の存在態様を示す。
【図3】“かすみ汚れ”を形成する微粒子(剥離しためっき表層が微粒子化したもの)の一態様を示す図である。
【図4】連続式電気錫めっきラインにおける化成処理後の後段ラインを示す図である。
【図5】後段ライン通板時における張力分布を示す図である。
【図6】ロールのスリップによりめっき表層に剪断力が作用し、めっき表層の一部が剥離する態様を示す図である。
【図7】図4に示す後段ラインにおける3箇所((x)、(y)、及び、(z))で、剥離しためっき表層が微粒子化して、錫めっき鋼板のめっき表層の“削れ跡”に掻き取られるか、又は、噛み込まれた量(スマッジ量)を示す図である。(a)は、後段ラインを示し、(b)は、3箇所((x)、(y)、及び、(z))でのスマッジ量を示す。
【図8】図4に示す後段ラインにおける3箇所((x)、(y)、及び、(z))で、剥離しためっき表層が微粒子化して、ロール表面に付着、堆積した量(スマッジ量)を示す図である。(a)は、後段ラインを示し、(b)は、3箇所((x)、(y)、及び、(z))でのスマッジ量を示す。
【図9】ブライドルロール8とルーパー部10の張力段差とスマッジ量の関係を示す図である。
【図10】ルーパー部10の張力とスマッジ量の関係を示す図である。
【図11】連続式電気錫めっきラインに本発明を適用した時の張力分布を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 地鉄
2 合金層
3 Sn層
4 クロメート皮膜
5 塗油膜
6 錫めっき鋼板
7 塗油装置
8、9 ブライドルロール
10 ルーパー部
11 ルーパーロール
12 ミラー装置
13 テンションロール
14 ルーパー制御ロール
15 搬送ロール
16 削れ跡
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続式電気錫めっきラインにて、鮮麗なめっき表面を有する錫めっき鋼板を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
連続式電気錫めっきラインで製造する錫めっき鋼板は、めっき表面が美麗であり、飲料缶、食品缶、美術缶等の様々な用途に使用されているが、近年、錫めっき量を低減し、めっき表面に、酸化皮膜の生成、塗膜密着性の低下、耐食性の劣化等を防止するクロム系の化成処理皮膜(クロメート皮膜)を被覆した錫めっき鋼板が、多量に使用されている。
【0003】
しかし、上記化成処理皮膜を有する錫めっき鋼板においては、ライン走行中に、めっき表面に、微細な疵、さらには、“かすみ”がかかったような模様(かすみ汚れ)が生じることがある。このような疵や、かすみ汚れの発生は、当然のことながら、めっき表面の光沢を損なうし、また、錫めっき鋼板に塗装した場合には、塗装欠陥を形成することになるので、錫めっき鋼板の商品価値を低減することになる。
【0004】
“かすみ汚れ”が発生して、本来の美麗な光沢を失っためっき表面には、“スマッジ”と称する異物(酸化錫の粉)が付着していることから、スマッジの発生を防止する技術が、これまで、幾つか開示されている(特許文献1〜4、参照)。
【0005】
特許文献1には、クロメート皮膜の上に、カルボキシメチルセルロースのアルカリ塩、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び酸成分からなる水溶液を塗布して加熱、乾燥し、皮膜性状を改善する表面処理法が開示されている。特許文献2には、地鉄の片面に、目付量1〜15g/m2のSn層を形成し、その上に、目付量0.0071〜0.71g/m2のZn層を形成し、耐硫化性と耐スマッジ性を高めた電気ブリキが開示されている。
【0006】
特許文献3には、溶接缶用ストライプラミネート鋼板において、可塑性樹脂膜を形成したラミネート面の裏面側に、所要油量の塗油層を形成し、スマッジの発生を抑制した溶接缶用ストライプラミネート鋼板とその製造方法が開示されている。
【0007】
特許文献1〜3には、皮膜の性状・構造の観点から、スマッジの発生を抑制する対策が開示されているが、特許文献4には、観点を変え、形状及び表面粗さを規定したロールを、錫層溶融装置と化成処理装置の間、及び、化成処理装置と出側ブライドルロールとの間に配設し、微細な疵を生成することなく、表面性状の優れた錫めっき鋼板を製造することができる連続式電気錫めっきラインが開示されている。
【0008】
特許文献1〜4開示の対策は、スマッジや、他の欠陥の発生抑制に、それなりの効果が期待できるものであるが、錫めっき量の低減化とともに、需要者が要求する耐食性や表面性状の基準は従来以上に厳しくなり、現状の連続式電気錫めっきラインでは、かすみ汚れや、他の表面欠陥の発生を完全に防止して、需要者の要求に応えることができない場合がある。
【0009】
【特許文献1】特開昭51−63328号公報
【特許文献2】特開昭51−92739号公報
【特許文献3】特開2005−146388号公報
【特許文献4】特開平6−330381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、現状技術の限界を踏まえ、微細な疵やかすみ汚れが存在せず、鮮麗なめっき表面を有する錫めっき鋼板を製造する製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、連続式電気錫めっきラインにおいて、“かすみ汚れ”の発生を抑制し、鮮麗なめっき表面を形成するため、かすみ汚れの発生機構を鋭意調査した。その結果、めっき条件や、化成処理条件を変えることなく、錫めっき鋼板の後段ライン通板時の張力分布を適正化することにより、かすみ汚れの発生を顕著に抑制することができることを見いだした。
【0012】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
【0013】
(1) 連続式電気錫めっきラインに関し、錫めっき後にルーパー部を備えるラインにて、鮮麗なめっき表面を有する錫めっき鋼板を製造する方法において、
(x) ルーパー部入側のブライドルロールとルーパー部との張力段差を3500N以下に維持し、錫めっき鋼板を通板する
ことを特徴とする鮮麗錫めっき鋼板の製造方法。
【0014】
(2) 連続式電気錫めっきラインに関し、錫めっき後にルーパー部を備えるラインにて、鮮麗なめっき表面を有する錫めっき鋼板を製造する方法において、
(y) ルーパー部の張力を9000N以上に維持し、錫めっき鋼板を通板する
ことを特徴とする鮮麗錫めっき鋼板の製造方法。
【0015】
(3) 連続式電気錫めっきラインに関し、錫めっき後にルーパー部を備えるラインにて、鮮麗なめっき表面を有する錫めっき鋼板を製造する方法において、
(x) ルーパー部入側のブライドルロールとルーパー部との張力段差を3500N以下に維持し、かつ、
(y) ルーパー部の張力を9000N以上に維持し、錫めっき鋼板を通板する
ことを特徴とする鮮麗錫めっき鋼板の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、めっき条件や、化成処理条件を変えることなく、錫めっき鋼板の後段ライン通板時の張力分布を適正化することにより、かすみ汚れの発生を顕著に抑制し、鮮麗なめっき表面を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
表1に、“かすみ汚れ”を定量分析した結果の一部を示す。C、O、Cr、及び、Snが主要成分である。
【0019】
【表1】
【0020】
ここで、図1に、地鉄1の上に、合金層2、Sn層3、クロメート皮膜4、及び、塗油膜5が、この順序で形成されている錫めっき鋼板6の皮膜構造を示すが、該構造から明らかなように、Cは、塗油中のCに由来し、Oは、塗油中のO、及び、SnやCrに結合しているOに由来し、Crは、クロメート皮膜中のCrに由来し、Snは、めっきの主成分Snに由来する。
【0021】
即ち、“かすみ汚れ”は、塗油後の通板中、ロールとの接触によりめっき表層が剥離して生成した微粒子が、めっき表層に付着したものである。
【0022】
本発明者は、“かすみ汚れ”の発生機構を解明するため、“かすみ汚れ”が、めっき表面において、どのような態様で存在するのかを、FE−SEM(Field Emission Scanning Electron Microscope[走査型電子顕微鏡])を用いて観察した。図2に、観察結果の一部を示す。また、図3に、“かすみ汚れ”を形成する微粒子(剥離しためっき表層が微粒子化したもの)の一態様を示す。
【0023】
以上の観察結果から、“かすみ汚れ”は、全て、めっき表層の“削れ跡”に存在することが判明した。また、上記“削れ跡”は、その形態から、スリップ痕であることが判明した。
【0024】
以上の観察結果から、“かすみ汚れ”の発生機構は、次のように推察される。
【0025】
図1に示すように、めっき表層は、Sn層3とその上のクレメート皮膜4から構成されているが、本来的に硬度が低く、ロールにより損壊され易い。
【0026】
図4に、連続式電気錫めっきラインにおける化成処理後の後段ライン(矢印が通板方向)を示す。図4に示すように、錫めっき鋼板6は、化成処理によりクロメート皮膜が形成された後、塗油装置7で塗油され、その後、ブライドルロール8、ルーパー部10、ミラー装置12、ブライドルロール9を経て、テンションリール13で巻き取られる。
【0027】
この間、ルーパー制御ロール14の位置を上下に調整することにより、ルーパー部入側のブライドルロールとルーパー部との張力段差、及び、ルーパー部の張力を、適宜、適正範囲に制御することができる。
【0028】
図4から明らかなように、錫めっき鋼板6は、クロメート皮膜形成後、テンションリール13により巻き取られるまでの間、後段ライン上を、長い距離、連続的に走行することになる。
【0029】
ブライドルロール8、9、ルーパー部10を構成するルーパーロール11、及び、各位置に配置する搬送ロール15としては、硬度が低いめっき表層に対応し、通常、ネオプレン、ニトリルなどのゴム系のテーパー型ロールを採用する。
【0030】
しかし、一般的に、ルーパーモーター(図示なし)の容量が小さい(張力で、4000N程度)ので、図5に示すように、後段ライン通板時、ルーパー部10とブライドルロール8との張力段差が大きくなり(例えば、11000N程度)、かつ、テンションリール13により巻き取られるまでの間、低張力通板(4000〜5500N程度)となるので、後段ラインのロールが、めっき表層上でスリップする。
【0031】
その結果、めっき表層(Sn層3+クロメート皮膜4)に剪断力が作用し、図6に示すように、めっき表層(Sn層3+クロメート皮膜4)の一部が剥離し、めっき表層に“削れ跡”16(図2、参照)が形成されることになる。
【0032】
剥離しためっき表層は微粒子化して(図3、参照)、ロール表面に付着して薄く堆積するが、この微粒子堆積薄層を、後続の錫めっき鋼板のめっき表層に形成された“削れ跡”が、掻き取るか、又は、噛み込んで、めっき表層に、“かすみ汚れ”が形成されることになる。
【0033】
上記発生機構によれば、錫めっき鋼板が後段ラインを通過している間に、めっき表層においては、“削れ跡”とともに、“かすみ汚れ”が増大することになる。
【0034】
本発明者は、このことを、図4に示す後段ラインにおける3箇所(ブライドルロール8の前後の(x)と(y)、及び、ルーパー部10の後面[ブライドルロール9の前]の(z))で、剥離しためっき表層が微粒子化して、錫めっき鋼板のめっき表層の“削れ跡”に掻き取られるか、又は、噛み込まれた量(スマッジ量)、及び、同じく、剥離しためっき表層が微粒子化して、ロール表面に付着、堆積した量(スマッジ量)を調査した。
【0035】
なお、スマッジ量は、後段ライン中、上記(x)、(y)及び(z)の位置に、オンライン拭取装置(錫めっき鋼板の表面に、所要面積の和紙を押し付けて、スマッジを拭き取るシリンダー装置)を配置して測定した。
【0036】
図7に、後段ライン(a)とともに、錫めっき鋼板におけるスマッジ量(b)を示す。また、図8に、後段ライン(a)とともに、ロール表面におけるスマッジ量(b)を示す。図7(b)及び図8(b)から、錫めっき鋼板の汚れも、ロールの汚れも、錫めっき鋼板が、ルーパー部入側のブライドルロール8を通過した後、増え始め、後段ラインを進行するに従い増大することが解る。
【0037】
このように、錫めっき鋼板のめっき表層に生成する“かすみ汚れ”は、図5に示すように、後段ライン通板時、ルーパー部10と、ルーパー部入側のブライドルロール8との張力段差が大きくなり、かつ、テンションロール13により巻き取られるまでの間、低張力通板(4000〜5500N程度)であることにより、後段ラインのロールが、めっき表層上でスリップすることに起因して形成されることを、本発明者は見いだした。
【0038】
本発明は、上記知見に基礎を置くものである。そして、本発明者は、さらに、上記張力段差及び通板時の張力を制御することにより、“かすみ汚れ”の生成を抑制することを検討した。
【0039】
錫めっき鋼板のめっき表層における“かすみ汚れ”の生成量(スマッジ量)は、需要者の製造ラインのレベラーロールを汚染しない範囲に抑制しなければならない。
【0040】
そこで、本発明者は、錫めっき鋼板の出荷時におけるスマッジ量と、スマッジに起因するレベラーロールの汚れ程度(スマッジ付着量)との関係を調査した。その結果、錫めっき鋼板の出荷時におけるスマッジ量が20mg/m2以下であれば、レベラーロールの汚れを極力抑制することができ、さらに、上記スマッジ量が15mg/m2以下であれば、レベラーロールの汚れを5mg以下に抑制できることが判明した。
【0041】
そして、連続式電気錫めっきラインの後段ラインにおいて、錫めっき鋼板のめっき表面に生成するスマッジの生成量を、錫めっき鋼板の加工ラインにおいて、製品品質に影響を及ぼさない20mg/m2以下に抑制することができる張力段差と通板張力を鋭意調査した。その結果を、図9と図10に示す。
【0042】
図9に、ブライドルロール8とルーパー部10の張力段差とスマッジ量の関係を示し、図10に、ルーパー部10の張力(通板張力)とスマッジ量の関係を示す。
【0043】
図9から、スマッジ量を20mg/m2以下に抑制するためには、ブライドルロール8とルーパー部10の張力段差を3500N以下に設定する必要があることが解る(図中「領域A1」参照)。
【0044】
それ故、本発明においては、ルーパー部入側のブライドルロール8とルーパー部10との張力段差を3500N以下に維持して、錫めっき鋼板を通板する。この点が、本発明の特徴の一つである。
【0045】
上記張力段差は、スマッジ量を、確実に20mg/m2以下に抑制することができる点で、3000N以下が好ましく、さらに、スマッジ量を、確実に、15mg/m2以下に抑制することができる点で、2000N以下が好ましい。なお、上記張力段差は、ブライドルロールの役割を果すため、1000N以上は必要である。
【0046】
同時に、図10から、スマッジ量を、確実に、20mg/m2以下に抑制するためには、ルーパー部の張力を9000N以上にする必要があることが解る(図中「領域A2」参照)。それ故、本発明においては、ルーパー部の張力を9000N以上に維持して、錫めっき鋼板を通板する。この点が、本発明の特徴の一つである。
【0047】
ルーパー部の張力は、スマッジ量を、確実に、20mg/m2以下に抑制することができる点で、9500N以上が好ましく、さらに、スマッジ量を、確実に、15mg/m2以下に抑制することができる点で、10000N以上が好ましい。なお、張力が高すぎると、鋼板の降伏応力を超えることがあるので、12000N以下が望ましい。
【0048】
本発明においては、ルーパー部入側のブライドルロールとルーパー部との張力段差、及び、ルーパー部の張力のいずれかを、適正範囲内に維持すれば、“かすみ汚れ”の発生量を、所要値以下に抑制することができるが、上記張力段差とルーパー部の張力の両方を適正範囲内に維持すれば、より効果的である。
【0049】
なお、ルーパー部入側のブライドルロールとルーパー部との張力段差、及び、ルーパー部の張力は、ルーパー制御ロール14の位置を上下に調整することにより、常に、適正範囲内に維持することができる。
【0050】
このように、本発明においては、連続式電気錫めっきラインにおいて、めっき条件や、化成処理条件を変えることなく、錫めっき鋼板の後段ライン通板時の張力分布を適正化することにより、かすみ汚れの発生を顕著に抑制し、鮮麗なめっき表面を有する錫めっき鋼板を製造することができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の実施例について説明するが、実施例で採用する条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【0052】
(実施例)
本発明を、既存の連続式電気錫めっきラインに適用し、錫めっき鋼板を製造した。その時の、錫めっき後のラインにおける張力分布(図中、鎖線で示す)を、本発明適用前の張力分布(図中、実線で示す)と併せて、図11に示す。
【0053】
図に示すように、Snめっきセクション出側のブライドルロールと、ルーパー部出側のブライドルロールの間の張力分布は、本発明適用(鎖線)と従来分布(実線)とで、大きく異なっている。
【0054】
次に、表2に、既存の連続式電気錫めっきラインに本発明を適用した場合と、本発明を適用しない場合とにおける“スマッジ量”と“かすみ発生状況”を示す。本発明によれば、常時、スマッジ量を、確実に20mg/m2以下に低減することができ、かすみが発生しない。また、ブライドルロールとルーパー部の張力段差とルーパー部の張力の両方の本発明条件を満たすと(発明例3と4、参照)、スマッジ量を、確実に、15mg/m2以下に抑制することができる。
【0055】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0056】
前述したように、本発明によれば、めっき条件や、化成処理条件を変えることなく、錫めっき鋼板の後段ライン通板時の張力分布を適正化することにより、“かすみ汚れ”の発生を顕著に抑制し、鮮麗なめっき表面を形成することができる。したがって、本発明は、従来の連続式電気錫めっきラインにも適用することができるので、めっき産業において、利用可能性が大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】錫めっき鋼板の皮膜構造を示す図である。
【図2】“かすみ汚れ”の存在態様を、FE−SEMで観察した結果を示す図である。(a)、(b)及び(c)は、それぞれ異なる“かすみ汚れ”の存在態様を示す。
【図3】“かすみ汚れ”を形成する微粒子(剥離しためっき表層が微粒子化したもの)の一態様を示す図である。
【図4】連続式電気錫めっきラインにおける化成処理後の後段ラインを示す図である。
【図5】後段ライン通板時における張力分布を示す図である。
【図6】ロールのスリップによりめっき表層に剪断力が作用し、めっき表層の一部が剥離する態様を示す図である。
【図7】図4に示す後段ラインにおける3箇所((x)、(y)、及び、(z))で、剥離しためっき表層が微粒子化して、錫めっき鋼板のめっき表層の“削れ跡”に掻き取られるか、又は、噛み込まれた量(スマッジ量)を示す図である。(a)は、後段ラインを示し、(b)は、3箇所((x)、(y)、及び、(z))でのスマッジ量を示す。
【図8】図4に示す後段ラインにおける3箇所((x)、(y)、及び、(z))で、剥離しためっき表層が微粒子化して、ロール表面に付着、堆積した量(スマッジ量)を示す図である。(a)は、後段ラインを示し、(b)は、3箇所((x)、(y)、及び、(z))でのスマッジ量を示す。
【図9】ブライドルロール8とルーパー部10の張力段差とスマッジ量の関係を示す図である。
【図10】ルーパー部10の張力とスマッジ量の関係を示す図である。
【図11】連続式電気錫めっきラインに本発明を適用した時の張力分布を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 地鉄
2 合金層
3 Sn層
4 クロメート皮膜
5 塗油膜
6 錫めっき鋼板
7 塗油装置
8、9 ブライドルロール
10 ルーパー部
11 ルーパーロール
12 ミラー装置
13 テンションロール
14 ルーパー制御ロール
15 搬送ロール
16 削れ跡
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続式電気錫めっきラインに関し、錫めっき後にルーパー部を備えるラインにて、鮮麗なめっき表面を有する錫めっき鋼板を製造する方法において、
(x) ルーパー部入側のブライドルロールとルーパー部との張力段差を3500N以下に維持し、錫めっき鋼板を通板する
ことを特徴とする鮮麗錫めっき鋼板の製造方法。
【請求項2】
連続式電気錫めっきラインに関し、錫めっき後にルーパー部を備えるラインにて、鮮麗なめっき表面を有する錫めっき鋼板を製造する方法において、
(y) ルーパー部の張力を9000N以上に維持し、錫めっき鋼板を通板する
ことを特徴とする鮮麗錫めっき鋼板の製造方法。
【請求項3】
連続式電気錫めっきラインに関し、錫めっき後にルーパー部を備えるラインにて、鮮麗なめっき表面を有する錫めっき鋼板を製造する方法において、
(x) ルーパー部入側のブライドルロールとルーパー部との張力段差を3500N以下に維持し、かつ、
(y) ルーパー部の張力を9000N以上に維持し、錫めっき鋼板を通板する
ことを特徴とする鮮麗錫めっき鋼板の製造方法。
【請求項1】
連続式電気錫めっきラインに関し、錫めっき後にルーパー部を備えるラインにて、鮮麗なめっき表面を有する錫めっき鋼板を製造する方法において、
(x) ルーパー部入側のブライドルロールとルーパー部との張力段差を3500N以下に維持し、錫めっき鋼板を通板する
ことを特徴とする鮮麗錫めっき鋼板の製造方法。
【請求項2】
連続式電気錫めっきラインに関し、錫めっき後にルーパー部を備えるラインにて、鮮麗なめっき表面を有する錫めっき鋼板を製造する方法において、
(y) ルーパー部の張力を9000N以上に維持し、錫めっき鋼板を通板する
ことを特徴とする鮮麗錫めっき鋼板の製造方法。
【請求項3】
連続式電気錫めっきラインに関し、錫めっき後にルーパー部を備えるラインにて、鮮麗なめっき表面を有する錫めっき鋼板を製造する方法において、
(x) ルーパー部入側のブライドルロールとルーパー部との張力段差を3500N以下に維持し、かつ、
(y) ルーパー部の張力を9000N以上に維持し、錫めっき鋼板を通板する
ことを特徴とする鮮麗錫めっき鋼板の製造方法。
【図1】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2008−266713(P2008−266713A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110440(P2007−110440)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
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