説明

鶏糞灰を主原料とした粒状の肥料又は土壌改良資材およびその製造方法

【課題】散布しても飛散せず、早期に肥効発現ができ、かつPH調整がなされた鶏糞灰を主原料とした粒状の肥料又は土壌改良資材およびその製造方法を提供すること、
【解決手段】混合槽に、米ぬか、乳酸菌、鶏糞灰及び過リン酸石灰を投入し、混合する(第1工程)。水分調整後、発酵槽に山積みしてビニール被覆し、表面に菌糸ができたら切り返す。数回の切り返し後、PHが6.8〜7になったら乾燥させる(第2工程)。乾燥後、粒子の直径が3mm〜8mmになるようにふるいにかけ、8mm以上のものは破砕してさらにふるいにかけて8mm以下に揃える(第3工程)。その後、袋詰めする(第4工程)。このようにして、鶏糞灰および過リン酸石灰を主たる組成物とし、該組成物に米ぬかおよび発酵菌を添加された、リン酸およびカリを主成分とする粒状の肥料又は土壌改良資材を作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鶏糞灰を主原料とした粒状の肥料又は土壌改良資材およびその製造方法に関し、特に発電所等で乾燥鶏糞を燃料として燃焼させた後に残る鶏糞灰を主原料とした粒状の肥料又は土壌改良資材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鶏糞は乾燥処理した後に肥料又は土壌改良資材として利用されているが、強アルカリのために作物によっては不向きな場合が多く、使用できる量は限られている。現在、全国の養鶏場で飼育されているブロイラーの羽数は、図2に示すようになっており、この他にも採卵鶏がいる。したがって、これらの鶏を合計すると膨大な羽数となり、鶏1羽当たりが排出する糞の量は、約50kg/年(雛は約半分量)であることから、全国で排出される鶏糞の量は膨大な量となる。
【0003】
最近は、乾燥鶏糞は発電所の燃料として利用されるようになってきたが、燃焼後に出てくる鶏糞灰の処理が新たな問題となっている。この鶏糞灰は、燃料に使う乾燥鶏糞の約1割の量である。
【0004】
従来技術の一つとして、含有水分量が多くて取り扱いが厄介な豚、牛等の糞尿を処理するために、所定の割合で鶏糞灰を該糞尿に混入して水分調整をし、1回/日の撹拌を略30日間に渡って行って強制発酵させて一次処理排泄物を形成し、これに植物肥料三要素の一つを添加して略10日間程度生糞の供給なしで1回/日の撹拌だけを行って半ば粒状化した二次処理排泄物を生成し、これを山積み堆積して熟成発酵させ、8〜9ヶ月に渡って切り返しを行って含水比20%以下の三次排泄物とすることにより、粒状物とした肥料または土壌改良材を形成するものが、下記の特許文献1に記載されている。
【0005】
また、下記の特許文献2には、製紙スラッジ焼却灰、鶏糞灰、貝類灰等に鶏糞肥料を混合して土壌改良の促進剤を製造することが開示されている。
【0006】
さらに、下記の特許文献3には、鶏糞灰を道路材料や凝集剤として再資源化すると共に、鶏糞灰を石灰の代替品として使用することにより、石灰の消費量を減らすようにすることが開示されている。
【特許文献1】特開2005−29445号公報
【特許文献2】特開2005−264001号公報
【特許文献3】特開2006−22124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に記載のものでは、含有水分量が多くて取り扱いが厄介な豚、牛等の糞尿を処理するために鶏糞灰を利用する発明であり、鶏糞灰を主原料とした肥料又は土壌改良資材を作成することについて、何らの配慮もされていなかった。また、前記特許文献2に記載の発明は、製紙スラッジ焼却灰、鶏糞灰、貝類灰等に鶏糞肥料を混合して土壌改良の促進剤を製造する発明であり、この発明においても、鶏糞灰を主原料とした肥料又は土壌改良資材を作成することについて、何らの配慮もされていなかった。さらに、前記特許文献3に記載の発明は、鶏糞灰を石灰の代替品として使用する発明であり、鶏糞灰を用いて肥料又は土壌改良資材を作成するものではない。
【0008】
また、鶏糞灰に水分を加えて練った後に圧縮してペレットにすることはできるが、このペレットは、圃場に散布した後でいかに水分を与えても溶解せずに散布した状態を保つために、肥効発現が遅くなり、本来の目的である作物の生育ステージに合った肥効を実現することはできなかった。
【0009】
さらに、鶏糞灰を微粉末のまま圃場に散布することはできるが、散布するごとに飛散して、散布している人の皮膚にも付着する。そうすると、鶏糞灰は約PH13の強アルカリであるため、特に夏場の作業は皮膚のかぶれを生じる。また、多くの作物は土壌のPH6〜7(弱酸性〜中性)を好むため、該鶏糞灰を多量に施用したり、長年施用したりすると、土壌PHがアルカリ性に向かうために、弱酸性〜中性になるようなPH調整が必要になる。
【0010】
本発明は、前記した従来の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、散布しても飛散せず、早期に肥効発現ができ、かつPH調整がなされた鶏糞灰を主原料とした粒状の肥料又は土壌改良資材およびその製造方法を提供することにある。また、他の目的は、発電所などで燃料として使用された後に残る鶏糞灰を有効利用する鶏糞灰を主原料とした粒状の肥料又は土壌改良資材およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記した目的を達成するために、本発明は、鶏糞灰および過リン酸石灰を主たる組成物とし、該組成物に米ぬかおよび発酵菌を添加された、リン酸およびカリを主成分とする鶏糞灰を主原料とした粒状の肥料又は土壌改良資材を提供する点に第1の特徴がある。
【0012】
また、前記粒状の肥料又は土壌改良資材は、鶏糞灰に前記発酵菌の菌糸が絡むことで粒状にされている点に第2の特徴がある。
【0013】
さらに、米ぬか、発酵菌、鶏糞灰および過リン酸石灰を撹拌しながら投入し混合して混合材料を生成する工程と、前記過リン酸石灰の投入量によりPH調整をする工程と、
【0014】
加水する工程と、加水された前記混合材料を発酵させる工程と、発酵完了後に乾燥させる工程と、乾燥後に粒サイズを調整する工程と、からなる鶏糞灰を主原料とした粒状の肥料又は土壌改良資材の製造方法を提供する点に第3の特徴がある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、発電所等で燃料として使用済みの鶏糞灰を、粒状の肥料又は土壌改良資材として再利用することができる。また、粒状の肥料又は土壌改良資材であるので、散布が容易である。
【0016】
また、菌糸が絡んで粒状にされているので、粒の密度が低く、圃場に施用した場合に、溶解が早く、肥効発現が早くなる。また、乳酸菌は土壌の微生物改善の働きをするので、作物の病気を軽減する等して土壌改良資材にもなる。
【0017】
さらに、鶏糞灰の混合割合を大きくできるので、一度に多量の鶏糞灰を処理でき、鶏糞灰の処理効率が大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明の好ましい実施形態ついて、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1に示されているように、まず混合槽1に、米ぬか15%と発酵菌(例えば、乳酸菌)0.0035%と鶏糞灰50%と過リン酸石灰35%とを、米ぬかから順次、この順に投入する。該混合槽1には攪拌機が設置されており、該攪拌機は当初から作動させておく。この撹拌により、混合槽1に投入された前記米ぬか、発酵菌、鶏糞灰および過リン酸石灰が均一に混合された時点で1回目のPHを測定し、PH8〜9に調整する。以下では、この混合された物を、「混合材料」と呼ぶ。なお、本発明は前記した混合割合に限定されず、米ぬか10%〜30%、発酵菌0.0035%〜3%、鶏糞灰50%〜70%、過リン酸石灰30%〜50%の混合割り合いであっても良い。また、前記発酵菌は、乳酸菌以外の糸状菌、例えば、脱窒素菌、硝化菌、資化菌、VA菌(内生菌根菌)、パチルス、セラチア、ストレプトコッカス、トルコデルマ等であっても良い。
【0020】
混合材料のPH調整は、過リン酸石灰の投入量で調整する。この調整は、前記混合後の発酵により混合材料のPHは漸次低下するので、この分を考慮に入れて、目標にするPH6〜7より高めのPH8〜9に止めておくのがよい。前記PH調整が終わった段階で、次に水分が約60%になるように、前記混合材料に加水する。
【0021】
混合材料の水分の調整が終わると、前記混合槽1内の内容物を発酵槽2に積み込み、これをビニールシートなどで覆い、発酵させる(発酵開始)。通常、発酵を行う場合は、温度が60°Cを目途に切り返しを行うが、発酵槽2内の本発明による混合材料は温度の上昇が期待できないので、該内容物の表面の菌糸の発生を目安にして数回の切り返しを行う。発酵開始から完了までは、季節(気温、湿度など)によって異なるが、30日〜60日を要する。
【0022】
乳酸菌はPH3.1であり、発酵することでPHはさらに下がり安定する。発酵により前記混合材料のPHがPH6.8〜7に調整されたことが確認されると、乾燥工程に入る。該混合材料を発酵槽2で自然乾燥させる場合はビニールシートを剥ぎ取り、数回の切り返しを行う。一方、強制乾燥させる場合は、乾燥機により乾燥させる。
【0023】
乾燥後、粒調整3に移行する。乾燥が終わった段階では、混合材料の各素材が一体となり、菌糸が増殖して絡み合い、大小の塊となる。この塊を8mm程度のふるいにかけて、ふるいを通らなかった直径8mm以上の塊は砕いて直径8mm以下の粒状にする。この時にできる製品は、直径8mm〜3mmの粒状で、形はそれぞれ異なった形になる。この後、袋詰めの工程4を行う。
【0024】
前記した実施形態では、乳酸菌と米ぬかを別々に投入したが、事前に米ぬかに乳酸菌を混ぜて予め乳酸菌を増やしておき乳酸菌が増殖した米ぬかを混合層に投入すると、発酵槽における菌の繁殖が早くなり、前記発酵開始から完了までの時間を短縮することができる。
【0025】
また、前記直径8mm〜3mmの粒状の製品は、乳酸菌の作用で、1粒々々の中で菌糸が絡むので粒の密度が低く、圃場に施用した場合に、溶解が早く、肥効発現が早くなる。約1週間で肥効が発現する。さらに、乳酸菌は、土壌の微生物改善の働きをするので、作物の病気を軽減する等して土壌改良資材にもなる。また、本発明は、全ての作物に効果がある。
【0026】
また、前記直径8mm〜3mmの粒状の製品は、この粒状の状態で肥料として使うことができるが、他の肥料の原料としても用いることができる。さらに、ペレット肥料にすることもでき、この場合のペレットの硬度は、菌糸の張り方で加減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態の製造工程の概要を示す図である。
【図2】ブロイラーの飼育羽数例を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1・・・混合槽での混合、2・・・発酵槽での発酵、3・・・粒調整、4・・・袋詰め


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鶏糞灰および過リン酸石灰を主たる組成物とし、該組成物に米ぬかおよび発酵菌を添加された、リン酸およびカリを主成分とする鶏糞灰を主原料とした粒状の肥料又は土壌改良資材。
【請求項2】
請求項1に記載の鶏糞灰を主原料とした粒状の肥料又は土壌改良資材において、
前記鶏糞灰および過リン酸石灰の配合比率は、それぞれ、50%〜70%および30%〜50%であることを特徴とする鶏糞灰を主原料とした粒状の肥料又は土壌改良資材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の鶏糞灰を主原料とした粒状の肥料又は土壌改良資材において、
前記鶏糞灰に前記発酵菌の菌糸が絡むことで粒状にされていることを特徴とする鶏糞灰を主原料とした粒状の肥料又は土壌改良資材。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の鶏糞灰を主原料とした粒状の肥料又は土壌改良資材において、
前記発酵菌は、乳酸菌であることを特徴とする鶏糞灰を主原料とした粒状の肥料又は土壌改良資材。
【請求項5】
米ぬか、発酵菌、鶏糞灰および過リン酸石灰を撹拌しながら投入し混合して混合材料を生成する工程と、
前記過リン酸石灰の投入量によりPH調整をする工程と、
加水する工程と、
加水された前記混合材料を発酵させる工程と、
発酵完了後に乾燥させる工程と、
乾燥後に粒サイズを調整する工程と、
からなる鶏糞灰を主原料とした粒状の肥料又は土壌改良資材の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の鶏糞灰を主原料とした粒状の肥料又は土壌改良資材の製造方法において、
前記米ぬか、発酵菌、鶏糞灰および過リン酸石灰の配合比率を、それぞれ、10%〜30%、0.0035%〜3%、50%〜70%および30%〜50%とすることを特徴とする鶏糞灰を主原料とした粒状の肥料又は土壌改良資材の製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載の鶏糞灰を主原料とした粒状の肥料又は土壌改良資材の製造方法において、
前記過リン酸石灰の投入量によるPH調整はPH8〜9に調整され、前記発酵完了時のPHは6.8〜7であることを特徴とする鶏糞灰を主原料とした粒状の肥料又は土壌改良資材の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−242169(P2009−242169A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90766(P2008−90766)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(508098453)有限会社不二養土 (1)
【Fターム(参考)】