説明

鶏舎の換気構造

【課題】長方形の鶏舎であっても、一方の側面から吸気して、他方の側面から排気するという基本的な構成を保ちながら、鶏舎内部の温度差の解消や十分な換気を得ること。
【解決手段】ウインドウレス鶏舎の換気構造において、鶏舎の1側面に外気取り入れ口が配置された長さの異なる複数のダクトを屋根近くに配置し、ダクトの終端に開口した吹き出し口の先に垂れ壁を垂設して、吹き出した空気が拡散されるように構成し、長い鶏舎であってもどの部分も十分に外気によって換気されるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鶏舎を効果的に換気するための構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
開放形でなくほぼ密閉形の鶏舎において、鶏舎の一方の妻面に設けた外気取り入れ口から外気を取入れ、他方の妻面の排気口に取付けた排気ファンから排出するように構成された平面視長方形状の鶏舎の換気構造では、外気取り入れ口に近い部分と、排気口に近い部分とでは、同じ鶏舎の内部でも温度差が大きくなり、排気口に近い部分では新鮮な外気が得られないという問題があった。
そこで、鶏舎の長手方向両側壁のほぼ中央部と、ケージ列の排気口に近い端部に対応する部分との間に延びる補助外気取り入れ口を設け、該補助外気取り入れ口の出口の入気調整板の開閉及び開度を、補助外気取り入れ口の前後の鶏舎内に設けた温度センサーからの信号により調整するように構成した鶏舎の構造が提案されている。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
【特許文献1】特開平9−102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載の鶏舎の構造では、鶏舎の妻面だけでなく、鶏舎の長手方向両側壁にも外気取り入れ口を設けるので、鶏舎の並び方に制約が生じるという問題がある。
また、鶏舎の側壁から取り込んだ外気は、鶏舎の内部の側壁に近いケージには供給されるが、鶏舎の中央に近い部分のケージには届きにくいという問題があり、ケージの列数が多い鶏舎には採用しにくいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、長方形の鶏舎であっても、一方の側面から吸気して、他方の側面から排気するという基本的な構成を保ちながら、鶏舎内部の温度差の解消や十分な換気を得ることを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1の鶏舎の換気構造は、
ほぼ密閉式の鶏舎の1側面から外気を取り入れて、他側面から排気することによって、前記鶏舎の内部を換気するように構成された鶏舎の換気構造において、
前記1側面に外気取り入れ口が配置された長さの異なる複数の通気路を形成し、
前記長さの異なる複数の通気路の終端に開口した吹き出し口が、前記鶏舎の異なる位置に配置されているとともに、
前記外気取り入れ口から前記吹き出し口へ向かう空気流を発生させる空気流発生手段が備えられていることを特徴としている。
請求項2では、
前記長さの異なる複数の通気路の吹き出し口は、同じ方向に向かって吹き出すように開口している。
請求項3では、
前記鶏舎の平面視形状は、長方形状とし、
前記外気取り入れ口が配置された1側面は、平面視短辺側の側面とし、
前記通気路は、平面視長辺に並行に配置され、
前記吹き出し口は、前記1側面に対向する他の平面視短辺側の側面に向かって吹き出すように開口している。
請求項4では、
前記通気路は鶏舎の天井もしくは屋根近くに配設され、
前記各吹き出し口の近傍には、吹き出し方向を下方に向ける吹き出し方向調整手段が配設されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかる鶏舎の換気構造によれば、
鶏舎の1側面に外気取り入れ口が配置された長さの異なる複数の通気路を形成して、前記通気路の吹き出し口が、前記鶏舎内部空間において、異なる位置に配置されているので、鶏舎の内部空間の複数箇所に新鮮が外気が供給されることになり、優れた換気効果が得られる。そして、鶏舎の内部空間の温度差が均されるので優れた育成環境が得られる。
また、前記通気路の各吹き出し口の近傍には、吹き出し方向を下方に向ける吹き出し方向調整手段が配設されているので、通気路から吹き出した外気は、種々の方向に拡散されて、鶏舎の内部空間にまんべんなく供給される。
また、ケージの列数が多い鶏舎の場合には、通期路の本数を増やすことによって、どの部分の列のケージにも新鮮な外気を供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明にかかる鶏舎の換気構造を、その実施の形態を示した図1、2、3に基づいて詳細に説明する。
1は、ほぼ密閉式でウインドレス型式の鶏舎であり、平面視長方形状となっている。
11は、前記鶏舎の短辺側の1側面であり、12は、この1側面11に対向する他の側面である。13は多段・多列のケージである。
前記鶏舎1の内部には、屋根から例えば3枚の垂れ壁31、32、33が、ケージ13の高さの位置近く(床から約3〜4m程度の高さ)まで垂設されている。
前記垂れ壁31、32、33は、前記各ダクトの吹き出し口の、吹き出し方向の近傍に、前記吹き出し方向にほぼ直角に垂設されて、吹き出された空気の流れを下方に変えるように配設されている。
前記3つの垂れ壁31、32、33によって、前記鶏舎1の内部の上部空間は、長手方向に4つの区画に区分されている。
【0009】
21〜26は、前記鶏舎の1側面11に外気取り入れ口が開口し、鶏舎1の屋根近くに配設されたダクトであり、短いダクト21、26と、中間長さのダクト22、25と、長いダクト23、24とから構成されて、通気路が形成されている。
前記短いダクト21、26の外気取り入れ口は前記1側面11に開口し、吹き出し口は前記垂れ壁31の近傍に開口している。
前記中間長さのダクト22、25の外気取り入れ口は前記1側面11に開口し、吹き出し口は前記垂れ壁32の近傍に開口している。
前記短いダクト23、24の外気取り入れ口は前記1側面11に開口し、吹き出し口は前記垂れ壁33の近傍に開口している。
このようにして、長さの異なるダクトの吹き出し口は、異なる位置に開口し、同じ方向(鶏舎の長手方向、他の側面12に向かう方向)に吹き出すように開口している。
【0010】
前記他の側面12には、複数の排気ファン4、4、4、・・・が空気流発生手段として設けられている。
これらの排気ファン4が作動すると、鶏舎1においては、図上、左側から右側への空気流が発生する。この空気流に伴って前記ダクト21〜26の外気取り入れ口から導入された外気はダクト21〜26に誘導されてそれぞれの吹き出し口から鶏舎内に吹き出す。
このとき、前記1側面11に形成された外気取り入れ口から導入された外気は、主にケージ13の図上の左側から供給される。
【0011】
そして、ダクト21、26から吹き出した外気は、その近傍に垂設されている垂れ壁31に当たって下向きに向きを変えて、主にケージ13の図上の左側に近い部分に供給される。
ダクト22、25から吹き出した外気は、その近傍に垂設されている垂れ壁32に当たって下向きに向きを変えて、主にケージ13の図上の中央部分に供給される。
ダクト23、24から吹き出した外気は、その近傍に垂設されている垂れ壁33に当たって下向きに向きを変えて、主にケージ13の図上の右側に近い部分に供給される。
このようにして、長い列状のケージの長手方向に沿って、4つの異なる部分から新鮮な外気が供給されるので、長いケージであっても、当該ケージの各部がほぼ均等・適切に換気されるのである。
【0012】
なお、鶏舎1の内外の温度に基づいて前記ファン4の風量を制御する制御手段を備えてもよい。
また、ダクトの数と配置と長さは、図示した例に限定されるものではなく、鶏舎の形状、大きさなどに応じて、適宜設定することができる。例えば、天井近くではなく、床面近くに配置したり、中間高さに配置したりすることもできる。また、鶏舎の平面視形状が長方形状でなく例えば多角形や扇形などの場合でも、各ダクトの吹き出し口を鶏舎の内部の異なる場所に散在させることによって、鶏舎内部の全体的な換気を可能とすることができる。
空気流発生手段の配置場所は、1側面でも、他側面でも、外気取り入れ口でも、吹き出し口でも、ダクトの途中でもよい。
吹き出し方向調整手段は、垂れ壁に限らず、垂れ幕でも、パネルや案内羽根などでもよく、吹き出し口の形状を空気を拡散させる形状にしたものでもよいが、実施例では、3枚の垂れ壁を用いた。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明にかかる鶏舎の換気構造の実施の形態の側面断面図である。
【図2】前記鶏舎の換気構造におけるダクトと垂れ壁の平面配置図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【符号の説明】
【0014】
1 鶏舎
11 1側面
12 他の側面
13 ケージ
21〜26 ダクト、通気路
31、32、33 垂れ壁
4 排気ファン、空気流発生手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぼ密閉式の鶏舎の1側面から外気を取り入れて、他側面から排気することによって、前記鶏舎の内部を換気するように構成された鶏舎の換気構造において、
前記1側面に外気取り入れ口が配置された長さの異なる複数の通気路を形成し、
前記長さの異なる複数の通気路の終端に開口した吹き出し口が、前記鶏舎の異なる位置に配置されているとともに、
前記外気取り入れ口から前記吹き出し口へ向かう空気流を発生させる空気流発生手段が備えられていることを特徴とする鶏舎の換気構造。
【請求項2】
前記長さの異なる複数の通気路の吹き出し口は、同じ方向に向かって吹き出すように開口していることを特徴とする請求項1に記載の鶏舎の換気構造。
【請求項3】
前記鶏舎の平面視形状は、長方形状とし、
前記外気取り入れ口が配置された1側面は、平面視短辺側の側面とし、
前記通気路は、平面視長辺に並行に配置され、
前記吹き出し口は、前記1側面に対向する他の平面視短辺側の側面に向かって吹き出すように開口していることを特徴とする請求項1、2の何れか1項に記載の鶏舎の換気構造。
【請求項4】
前記通気路は鶏舎の天井もしくは屋根近くに配設され、
前記各吹き出し口の近傍には、吹き出し方向を下方に向ける吹き出し方向調整手段が配設されていることを特徴とする請求項1、2、3の何れか1項に記載の鶏舎の換気構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−148567(P2008−148567A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336959(P2006−336959)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(594208477)ヨシダエルシス株式会社 (6)
【Fターム(参考)】