説明

麹菌由来のβ−1,6−グルカナーゼ及び新規レクチンの遺伝子、並びに該酵素又は該レクチンの製造方法

【課題】新規β-1,6-グルカナーゼ及びレクチンをコードする遺伝子、及び、該遺伝子の発現を増強した微生物、さらには、該蛋白質を用いて、新たな構造又は機能を有する糖鎖を製造する方法を提供すること。
【解決手段】下記のいずれか一つに示す蛋白質をコードする遺伝子。(a)特定のアミノ酸配列からなる蛋白質、(b)前記のアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入または転移を含むアミノ酸配列からなり、かつβ−1,6−グルカナーゼ活性を有する蛋白質、及び(c)前記のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む蛋白質またはその部分断片であり、かつβ−1,6−グルカナーゼ活性を有する蛋白質。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、 本発明は、β-1,6-グルカナーゼ活性を有する新規な酵素又はレクチンをコードする遺伝子又はDNA、これらを含む組換えベクター、該組換えベクターを含む微生物、並びに、これらの新規な蛋白質、及び、該蛋白質を生産する方法等に関わるものである。
【背景技術】
【0002】
レクチンは、糖鎖に結合する蛋白質(又は、糖蛋白質)であり、細胞を凝集したり、多糖を架橋したりする作用を有する。マメ科などの植物、高等動物由来のものが知られている。一方、β-1,6-グルカンはグルコースがβ-1,6結合で連なった多糖であり、地衣類で見られる。β-1,6-グルカナーゼは、このβ-1,6-グルカン及びβ-1,3-グルカンの分子内で分岐構造を形成するβ-1,6結合の切断を行う。β-1,6結合を含んだβ-1,3-グルカンは、担子菌やカビや細菌といった菌類、海藻類、麦などに存在している。担子菌では子実体(キノコ)、カビや酵母では細胞壁、一部の細菌では菌体外の分泌物に特に多く存在している。
【0003】
尚、特表2001−523962(特許文献1)には、Lentinus edodes, Volvariella spp., Penicillium roqueforti, 及びPenicillium camemberti等の食用真菌から単離されたβ-1,6-グルカナーゼが記載されている。また、特開2004−210895(特許文献2)には、免疫機能を有する可溶性β-1,3/1,6-グルカンの製造方法においてβ-1,6-グルカナーゼなどを使用することが記載されている。
【特許文献1】特表2001−523962
【特許文献2】特開2004−210895
【0004】
ところで、麹菌は米国Department of Agriculture (USDA)においてGenerally Recognized as Safe (GRAS)としてリストとされており、麹菌の生産する酵素は、食物に添加する場合の安全性が高い。その一種であるアスペルギルス・オリゼも長年発酵・醸造・酵素生産等に利用されており、人体に対して安全性の高い微生物である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
麹菌にはこれまでに産業上有用な酵素が数多く見つけられてきた。そこで、本発明者は、麹菌のゲノム情報を基としたホモロジー検索により、麹菌の糖鎖に関連した新規の有用な酵素を見つけ出し、その機能解析を行うことを目的とし、その具体的な対象として、β−1,6−グルカナーゼ及びレクチンの二種類を選択した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、本発明は、以下の各態様に係るものである。
1.下記のいずれか一つに示す蛋白質をコードする遺伝子。
(a)配列番号2又は配列番号4で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、
(b)配列番号2又は配列番号4で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入または転移を含むアミノ酸配列からなり、かつβ−1,6−グルカナーゼ活性を有する蛋白質、及び
(c)配列番号2又は配列番号4で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む蛋白質またはその部分断片であり、かつβ−1,6−グルカナーゼ活性を有する蛋白質。
2.下記のいずれか一つに示すDNAを含む遺伝子。
(a)アスペルギルス・オリゼ由来のmRNAに対するRT-PCRにおいて、配列番号13及び配列番号14、又は配列番号15及び配列番号16に示される各PCRプライマーによって増幅された1.2kb又は1.3kbのDNA断片である、β−1,6−グルカナーゼをコードする塩基配列を含むDNA、
(b)配列番号1又は配列番号3に示される塩基配列からなるDNA、
(c)配列番号1又は配列番号3に示される塩基配列またはその相補鎖を含む核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつβ−1,6−グルカナーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA、及び
(d)配列番号1又は配列番号3に示される塩基配列のDNAと80%以上の配列同一性を示すDNAまたはその部分断片であり、かつβ−1,6−グルカナーゼ活性の機能を有する蛋白質をコードするDNA。
3.下記のいずれか一つに示す蛋白質をコードする遺伝子。
(a)配列番号6、配列番号8、配列番号10又は配列番号12で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、
(b)配列番号6、配列番号8、配列番号10又は配列番号12で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入または転移を含むアミノ酸配列からなり、かつレクチン活性を有する蛋白質、及び
(c)配列番号6、配列番号8、配列番号10又は配列番号12で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む蛋白質またはその部分断片であり、かつレクチン活性を有する蛋白質。
4.下記のいずれか一つに示すDNAを含む遺伝子。
(a)アスペルギルス・オリゼ由来のmRNAに対するRT-PCRにおいて、配列番号17及び配列番号18、配列番号19及び配列番号20、配列番号21及び配列番号22、並びに配列番号23及び配列番号24に示される各PCRプライマーによって増幅された、夫々、1.3kb、1.0kb、0.55kb、及び0.47kbのDNA断片である、レクチンをコードする塩基配列を含むDNA
(b)配列番号5、配列番号7、配列番号9又は配列番号11に示される塩基配列からなるDNA、
(c)配列番号5、配列番号7、配列番号9又は配列番号11に示される塩基配列またはその相補鎖を含む核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつレクチン活性を有する蛋白質をコードするDNA、及び
(d)配列番号5、配列番号7、配列番号9又は配列番号11に示される塩基配列のDNAと80%以上の配列同一性を示すDNAまたはその部分断片であり、かつレクチン活性の機能を有する蛋白質をコードするDNA。
5.上記1ないし4記載の遺伝子を含有してなる組換え発現ベクター。
6.上記5記載の組換え発現ベクターを含む微生物。
7.上記6記載の微生物を培地で培養し、その培養物からβ−1,6−グルカナーゼ又はレクチンを採取することを特徴とする、β−1,6−グルカナーゼ又はレクチンの製造方法。
8.下記のいずれか一つに示す蛋白質。
(a)配列番号2又は配列番号4で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、
(b)配列番号2又は配列番号4で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入または転移を含むアミノ酸配列からなり、かつβ−1,6−グルカナーゼ活性を有する蛋白質、及び
(c)配列番号2又は配列番号4で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む蛋白質またはその部分断片であり、かつβ−1,6−グルカナーゼ活性を有する蛋白質。
9.下記のいずれか一つに示す蛋白質。
(a)配列番号6、配列番号8、配列番号10又は配列番号12で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、
(b)配列番号6、配列番号8、配列番号10又は配列番号12で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入または転移を含むアミノ酸配列からなり、かつレクチン活性を有する蛋白質、及び
(c)配列番号6、配列番号8、配列番号10又は配列番号12で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む蛋白質またはその部分断片であり、かつレクチン活性を有する蛋白質。
10.上記8又は9に記載の蛋白質を用いて糖鎖分子を反応させることを含む、新たな構造又は機能を有する糖鎖を製造する方法。
11.上記10記載の方法で得られる糖鎖を分析することにより、該糖鎖の構造に関する情報を得る方法。
12.上記8又は9に記載の蛋白質が標識されていることを特徴とする、上記11記載の方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によって、アスペルギルス・オリゼ由来の新規なエキソ及びβ-1,6-グルカナーゼ及びレクチンをコードする遺伝子及びアミノ酸配列を明らかにした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の遺伝子
ゲノム解析により得られた配列情報に基づき、以下の手法を用いて、本発明遺伝子の情報を取得した。こうして得られた情報に基づき、以下の実施例に記載するようなプライマーを作成し、アスペルギルス・オリゼRIB40株(ATCC42149)よりtotal RNAを抽出し、mRNAに精製を行った後、当業者に公知のRT-PCRに供することにより、本発明遺伝子をコードするORF(オープンリーディングフレーム:読み取り粋)を含む塩基配列からなるcDNAを得た。
こうして得られたDNA断片をベクターにクローニングした後塩基配列の決定し、蛋白質としての翻訳領域を決定する。
【0009】
[遺伝子の特定]
ゲノムDNA塩基配列からの遺伝子の特定については、以下の手法を用いた。
遺伝子の特定手法は、ゲノムDNA塩基配列のコンティグに対し、すでに取得したESTの配列情報、既知のタンパク質アミノ酸配列データベースとの相同性情報を考慮しながら、浅井潔らによるアルゴリズム(Pacific Symposium on Biocomputing 98, 228-239.)に基づく遺伝子領域予測システムGeneDecoderと後藤修によるアルゴリズム(Bioinformatics 2000 16: 190-202.)に基づく遺伝子領域予測システムALNを組み合わせて用いた。また、tRNA遺伝子の予測はtRNA-scanを用いた。
【0010】
第1『BLAST相同性遺伝子候補領域の抽出』
ゲノムDNA塩基配列のコンティグから既知のタンパク質アミノ酸配列と高い相同性をもつ領域を抽出する。アミノ酸配列の相同性はKarlin and Altschul によるアルゴリズムBLAST (Proc. Natl. Acad. Sei. USA 87:2264-2268, 1990、Proc. Natl. Acad. Sei. USA 90:5873-5877, 1993)によって決定することができるが、このアルゴリズムに基づいて、BLASTXと呼ばれるプログラムが開発されており(Altschul et al. J. Mol. Biol.215:403-410, 1990)、ゲノムDNA塩基配列がアミノ酸配列に翻訳された場合に相同性が高い領域を直接検索することができる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov.)。本手法では、ゲノムDNA塩基配列のコンティグを問い合わせ配列、SWISSPROTバージョン39(Bairoch, A. & Apweiler, R. Nucleic Acids Res. 28, 45-48 (2000).)およびNRaaをデータベースとしてBLASTXの検索を行い、BLASTアルゴリズムにおける相同性の指標であるE-valueで10−30以下の値を持つ(E-valueは値が低いほど相同性が高いことを示す)領域を抽出する。これらの領域から、より相同性の高い部分を優先させるようにして、互いに重ならないBLAST相同性遺伝子候補領域を抽出する。
【0011】
第2『ALN遺伝子候補領域の抽出』
BLAST相同性遺伝子候補領域のうち、相同性の対象となるタンパク質アミノ酸配列の全長の90%以上の領域に対して相同性をもつものを核として、コンティグ配列に対して遺伝子領域予測システムALNを適用してALN遺伝子候補領域を抽出する。ALNは、相同性の対象となるタンパク質アミノ酸配列の全長を、コンティグに対して整列させながらスプライス部位を特定することにより、遺伝子領域を予測する。
【0012】
第3『GD相同性遺伝子候補領域の抽出』
BLAST相同性遺伝子候補領域のうち、相同性の対象となるタンパク質アミノ酸配列の残長の20%以上90%未満の領域に対して相同性を持つものを核として、コンティグ配列に対して遺伝子領域予測システムGeneDecoderを適用してGD相同性遺伝子候補領域を抽出する。GeneDecoderは、BLASTXのE-valueと、タンパク質コード領域の指向性の指標である2連コドン統計量を統合し、さらにスプライス部位の位置依存1次マルコフモデルによるスコアを考慮して遺伝子領域を予測する。
【0013】
第4『EST-GD遺伝子候補領域の抽出』
コンティグ配列に対応したESTによって遺伝子発現が確認されている領域については、その付近のコンティグ配列にGeneDecoderを適用することにより、EST配列によって決定される遺伝子領域のみならず、遺伝子領域全体を予測し、EST-GD遺伝子候補領域とする。
【0014】
第5『一般GD遺伝子候補領域の抽出』
第1から第4までの遺伝子候補領域に含まれないコンティグ配列に対しては、GeneDecoderを適用することにより、遺伝子領域を予測する。
【0015】
第6『遺伝子候補領域の統合』
以下の手順により、第2から第5までの遺伝子候補領域を統合する。まず、第2から第5までの遺伝子候補領域のうち、ESTによって決定されるスプライス部位と矛盾した遺伝子領域を予測するものは取り除かれる。残った遺伝子候補領域を、互いに重なるものを取り除くことによって統合する。その際、tRNA、ALN相同性遺伝子候補領域、GD相同性遺伝子候補領域、GD-EST遺伝子候補領域、一般GD遺伝子候補領域の順で優先させて統合する。この統合された遺伝子候補領域を、予測遺伝子のセットとする。
【0016】
以上の手順により、相同性の観点からは、既知タンパク質の全長にわたって相同性をもつ遺伝子、既知タンパク質と部分的に相同性をもつ遺伝子、既知タンパク質と相同性をもたない遺伝子がこの順に従った信頼性で特定されることが保証される。また、発現の確認の観点からは、ESTで発現が確認されている遺伝子、ESTで発現が確認されていない遺伝子の順に従った信頼性で特定され、また、すべての候補遺伝子がESTによって特定されるスプライス部位と矛盾しないことが保証される。
【0017】
用いられた手法はすべて終始コドンをタンパク質コード領域中に含むことを許さないアルゴリズムを採用しており、偽遺伝子を遺伝子として予測する可能性は少ない。
機能決定に関しては、予測された遺伝子領域に対して、NraaをデータベースとするBLASTによる相同性検索を行い、機能を特定するために十分な相同性(E-valueで10−30)を閾値として機能を決定した。
【0018】
更に、本発明遺伝子は当業者に公知の方法で調製することが出来る。
例えば、本明細書に記載された本発明DNAの塩基配列又はアミノ酸配列の情報に基づき適当なプライマーを合成し、これらを用いて、アスペルギルス・オリゼのtotal RNAから当業者に公知の任意の方法で調製した適当なcDNAライブラリーに対して、PCRにより増幅して調製することも出来る。
PCRは当業者に周知の条件及び手段を用いて、本発明の増幅用プライマーセットを使用して行うことが出来る。
例えば、94℃で2分の後、94℃で10秒、55℃で20秒、72℃で2分を30サイクル行い、最後に72℃で5分を行う。なお、サーマルサイクラーとしては、Perkin Elmer社製9600など一般のサーマルサイクラーを用いることができる。耐熱性 DNAポリメラーゼとしては、ExTaq DNA Polymerase(宝酒造製)などの一般の市販品を用い、反応液の組成はポリメラーゼに添付の説明書に従って実施する。
或いは、上記塩基配列に基づいて作成した適当なプローブでcDNAライブラリーに対してハイブリダイゼーションによりスクリーニングすることによって得ることが出来る。
更に、当業者に周知の化学合成によって、本発明の各遺伝子を調製することも出来る。
【0019】
本明細書において、「ストリンジェントな条件下」とは、例えば、温度60℃〜68℃において、ナトリウム濃度150〜900mM、好ましくは600〜900mM、pH 6〜8であるような条件を挙げることが出来る。
従って、このようなストリンジェントな条件下でハブリダイズするDNAの代表的な例として、各塩基配列間の同一性の程度が、例えば、全体の平均で約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上であるような、高い配列同一性を有するDNA又はその断片であって、所定のβ-1,6-グルカナーゼ活性又はレクチン活性を有する蛋白質をコードするDNAを挙げることができる。
尚、塩基配列間の同一性は、当業者に公知のアルゴリズム、例えば、実施例で使用されているBlast を用いて決定することができる。
【0020】
ハイブリダイゼーションは、例えば、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(Current protocols in molecular biology(edited by Frederick M. Ausubel et al., 1987))に記載の方法等、当業界で公知の方法あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
【0021】
本発明の蛋白質
本発明の蛋白質のアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入または転移を含むアミノ酸配列を有する蛋白質であって、所定のβ-1,6-グルカナーゼ活性又はレクチン活性を有するものは、当業者に公知の任意の方法、例えば、部位特異的変異導入法、遺伝子相同組換え法、プライマー伸長法、及びPCR法等の当業者に周知の方法を適宜組み合わせて、容易に作成することが可能である。
【0022】
尚、その際に、実質的に同等の機能を有するためには、当該ポリペプチドを構成するアミノ酸のうち、同族アミノ酸(極性・非極性アミノ酸、疎水性・親水性アミノ酸、陽性・陰性荷電アミノ酸、芳香族アミノ酸など)同士の置換が可能性として考えられる。又、実質的に同等の機能の維持のためには、本発明の各ポリペプチドに含まれる機能ドメイン内のアミノ酸は保持されることが望ましい。
【0023】
更に、本発明の蛋白質として、本明細書に記載の特定のアミノ酸配列と、全体の平均で約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上であるような、高い配列同一性を有するアミノ酸配列を含む蛋白質又はその断片であって、所定のβ-1,6-グルカナーゼ活性又はレクチン活性を有するものを挙げることができる。
尚、アミノ酸配列間の同一性も、当業者に公知のアルゴリズム、例えば、実施例で使用されているBlast を用いて決定することができる。
尚、β-1,6-グルカナーゼ活性又はレクチン活性は、当業者に公知の任意の方法で測定することが出来る。
【0024】
本発明の遺伝子の発現
上記で得られた本発明遺伝子を当業者に公知の任意の方法によって組換えベクターに組み込み、本発明の組換え発現ベクターを作成することが出来る。
例えば、(1)本発明の遺伝子を含有するDNA断片を切り出し、(2)該DNA断片を適当な組換えベクター中の制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入して該ベクターに連結する挿入することにより製造することができる。組換えベクターに特に制限はなく、例えば、麹菌由来のプラスミド(例えば、pSal23, pTAex3, pNGU113, pRBG1, pGM32, pSE52, pNAGL142等)、大腸菌由来のプラスミド(例、pT7Blue T−Vector、pRSET、pBR322、pBR325、pUC18、pUC118)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110、pTP5、pC194)、及び、酵母由来プラスミド(例、pSH19、pSH15)、等の組換えベクター等を利用することが出来る。
【0025】
上記組換えベクターには、以上の他に、本発明の転写調節配列の活性を損なわない限り、所望により当該技術分野で公知のプロモーター等の各種転写調節要素、シャイン・ダルガルノ配列、選択マーカー、転写終結シグナル等を付加することができる。また、必要に応じて、本発明の外来遺伝子にコードされた所望の蛋白質を他の蛋白質又はペプチド(例えば、グルタチオンSトランスフェラーゼ、ヒスチジンタグ、カルモデュリンバインディング蛋白質、及びプロテインA等)との融合蛋白質として発現させることも可能である。このような融合蛋白質は、適当なプロテアーゼを使用して切断し、それぞれの蛋白質に分離することが出来る。
【0026】
本発明の遺伝子が有効に発現される限り、本発明の組換え発現ベクターを有する微生物(形質転換体)を調製するために使用する宿主の種類及び由来等に特に制限はないが、特に、本発明の換え発現ベクターを含む微生物、その培養物、及び/又は本発明の蛋白質を食品に添加する場合には、麹菌、サッカロマイセス・セレビシエ(パン酵母)、及びバシラス・サブチリス(納豆菌)のような、当業者に公知の人体に対して安全性の高い微生物を宿主として使用する。その他、具体的には、GRASにはリストされている以下のような微生物を挙げることが出来る。
Pseudomonas fluorescens、Laminaria japonica、Fusarium oxysporum、Streptoverticillium mobaraense、Kluyveromyces marxianus、Candida rugosa、Streptoverticillium mobaraense、Thermomyces lanuginosus、Aspergillus sojae、及び、Aspergillus aculeatus等。
【0027】
これら宿主細胞の形質転換は、例えば、塩化カルシウム法、パーティクルガン、エレクトロポレーション法等の、当該技術分野で公知の方法に従って行うことが出来る。例えば、以下に記載の文献を参照することが出来る。Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69巻、2110(1972); Gene, 17巻、107(1982);Molecular & General Genetics,168巻, 111(1979);Methods in Enzymology,194巻、182−187(1991);Proc. Natl. Acad. Sci. USA)、75巻、1929(1978);細胞工学別冊8 新細胞工学実験プロトコール。263−267(1995)(秀潤社発行);及びVirology、52巻、456(1973)。
【0028】
このようにして得られた、本発明の形質転換体は、当該技術分野で公知の方法に従って培養することが出来る。
【0029】
本発明における蛋白質の製造に際しては、当業者に公知の方法を適宜選択することができる。例えば、該蛋白質を含む培養液から、例えば、各種クロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、溶媒沈殿、溶媒抽出、蒸留、免疫沈降、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動法、透析、再結晶等の当業者に公知の方法を適宜選択、組み合わせることによって、実質的に純粋で均一な蛋白質として分離、精製することができる。
【0030】
更に、蛋白質をグルタチオン S-トランスフェラーゼ蛋白質との融合蛋白質、又はヒスチジンを複数付加させた組換え蛋白質として発現させた場合には、発現させた組換え蛋白質はグルタチオンカラムあるいはニッケルカラムを用いて精製することができる。融合蛋白質の精製後、必要に応じて、目的の蛋白質以外の領域を、トロンビンまたはファクターXaなどにより切断し、除去することも可能である。或いは、トリプシン、キモトリプシン、リシルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グルコシダーゼ等の適当な蛋白質修飾酵素で、精製前又は精製後に蛋白質を処理することにより、任意に修飾を加えたり部分的にペプチドを除去することもできる。
【0031】
本発明の蛋白質を用いて、例えば、糖鎖に結合させ、糖鎖を合成又は切断等する等の態様で、糖鎖分子を反応させることによって、新たな構造又は機能を有する糖鎖を製造することが出来る。更に、こうした方法で得られる糖鎖を、当業者に公知の任意の各種方法で分析することにより、該糖鎖の構造に関する情報を得ることが出来る。このような製造方法においては、当業者に公知の任意の物質を+98基質として使用することが出来る。例えば、結合反応を伴う場合には、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、グルコース、マンノース、ガラクトース、シアル酸、及びフコース等の糖、並びに、これらのいずれかがβ-1,2、β-1,3、β-1,4、β-1,6、α-1,2、α-1,3、α-1,4、あるいはα-1,6のいずれかにより結合した糖鎖構造を有する物質を挙げることが出来る。又、切断反応を伴う場合には、グルコース、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、マンノース、ガラクトース、シアル酸、及びフコース等に、β-1,6あるいはβ-1,3結合によって結合したグルコースを切断する。具体的な基質としては、ラミナリン、カードラン、ゲンチビオース、プスツラン、β-1,6-グルカンなどが考えられる。更に、合成反応は上記の逆反応になる。
【0032】
尚、そのような方法を実施するに際して、使用する分析方法及び分析機器の種類などに応じて、本発明蛋白質を、例えば、蛍光物質、オリゴペプチドタグ、DNAタグ、アリカリフォスファターゼ及びパーオキシダーゼのような各種酵素等の当業者に公知の任意の物質によって標識し、化学的又は物理的に識別可能とすることが出来る。
【0033】
尚、本発明に係る蛋白質である、グルカナーゼA、グルカナーゼB、レクチンA、レクチンB、レクチンC、及びレクチンDをコードするORFの塩基配列及びアミノ酸配列を、夫々、配列番号1及び2(グルカナーゼA)、配列番号3及び4(グルカナーゼB)、配列番号5及び6(レクチンA)、配列番号7及び8(レクチンB)、配列番号9及び10(レクチンC)、並びに配列番号11及び12(レクチンD)に示した。
又、それら蛋白質をコードする塩基配列を含む、アスペルギルス・オリゼRIB40株(ATCC42149)のゲノム由来のDNA配列(スプライシングを受ける前の、イントロンを含む配列)を、夫々、配列番号25〜配列番号30に示した。
【0034】
以下の実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらによって制限されるものではない。
【実施例1】
【0035】
黄麹菌アスペルギルス・オリゼのcDNAの作製
アスペルギルス・オリゼRIB40株(ATCC42149)の胞子をY P D培地(1% イーストエキストラクト、2% バクトペプトン、2% グルコース、0.5% リン酸1カリウム、0.05% 硫酸マグネシウム) 100 mlで30℃ 、20時間振とう培養した後、菌体を貧栄養培地(0.3 %硝酸ナトリウム、0.1% リン酸1カリウム、0.2% 塩化カリウム、0.05% 硫酸マグネシウム、4% 塩化ナトリウム)に移し、30℃ 、6時間さらに培養した。その後、菌体を回収し、Chigwinらの方法(Biochemistry 18 5294-5299, (1979)) に従ってtotal RNAを得、その後オリゴ(dT)セルロースカラム(アマシャム・バイオサイエンス社)を使用してmRNAを取得した。その後、逆転写反応のプライマーにオリゴ(dT)12-18プライマー(インビトロジェン社)、逆転写酵素にSuperScriptII RNase H-Reverse Transcriptase(インビトロジェン社)を使用し、ファーストストランドcDNAの合成を行った。続いて、ファーストストランドcDNAを鋳型にし、PCR反応を行い完全長cDNAの取得を行った。
【0036】
黄麹菌アスペルギルス・オリゼのβ−1,6−グルカナーゼ候補遺伝子の探索
既に記載した遺伝子の特定手法を用いて、アスペルギルス・オリゼRIB40株のゲノム解析により得られた予測遺伝子産物のアミノ酸配列情報に対し、他の既知の生物(Trichoderma harzianum及びVerticillium fungicola)由来のβ−1,6−グルカナーゼのアミノ酸配列とのホモロジー解析(BLAST)を行った結果、ホモロジー検索のスコアの高かった二種類の遺伝子をアスペルギルス・オリゼのβ−1,6−グルカナーゼ遺伝子であると推定される遺伝子を2種類(グルカナーゼA(GluA)、グルカナーゼB(GluB))見つけ出した。これら各アミノ酸レベルの同一性に関する値を以下の表1に示す。尚、以下の表1及び表3において、「Identities」の値は相同性検索で完全に一致するアミノ酸の割合、「Positives」の値は完全一致するものと類似するものとを合計したアミノ酸の割合を示す。
【0037】
【表1】

【0038】
黄麹菌アスペルギルス・オリゼの新規β−1,6−グルカナーゼcDNAの増幅
上記のグルカナーゼA及びグルカナーゼBについてRT-PCRによるcDNAの増幅を試みた。グルカナーゼAは配列番号13と配列番号14で示されるプライマー対、グルカナーゼBは配列番号15と配列番号16で示されるプライマー対を用いて増幅した。
【0039】
5'-GCCTAGCTAGCATGTTACCCCTTTTGCTCTGC-3’ (配列番号13)
5'-CGCCGCTCGAGGCACTGCTTAGGGAACTCCCGG-3’ (配列番号14)
5'-GGAATTCCATATGAAAGTCACCAGGCTAGCGG-3’ (配列番号15)
5'-ATCCGGCGGCCGCGCTGCTTCGACCTTTACAGAC-3’ (配列番号16)

【0040】
各プライマーには制限酵素認識配列を含むような改変を5’側に加えた。すなわち、配列番号13にはNhe I、配列番号14にはXho I、配列番号15にはNde I、配列番号16にはNot Iが加わっている。反応はEX Taq(タカラバイオ社)を使用し、DNA Thermal Cycler(タカラバイオ社)により行った。反応液の組成は以下の表2の通りである。
【0041】
【表2】

【0042】
上記の反応液100 μlを0.2 ml反応チューブ中で混合してDNA Thermal Cyclerにセットし、以下のような温度設定によりPCRを行った。
94℃、40秒 1サイクル
94℃、20秒 55℃、1分 72℃、1分20秒 30サイクル
4℃、〜O/N
【0043】
PCR増幅産物を1.5%アガロースゲル電気泳動で確認したところ、グルカナーゼAに相当する約1.2 kbの大きさの特異的なDNAの増幅断片のバンドが確認された。一方、グルカナーゼBに関してはそのcDNAとスプライシングを受ける前のDNAに相当するそれぞれ約1.2 kbと約1.3 kbの大きさの二種類の特異的なDNAの増幅断片のバンドが確認された(図1)。
【0044】
次に増幅DNA断片が目的の遺伝子であることを、増幅DNA断片の制限酵素処理による2.0%アガロースゲル電気泳動でのバンドパターンを調べることにより確認した。
【0045】
その結果、グルカナーゼAに相当する遺伝子からは、EcoRV切断反応により約0.8 kbと約0.4 kbの二種類のDNA断片が生成した(図2)。一方、グルカナーゼBに相当する遺伝子からは、ScaI切断反応により約0.9 kb、約0.8 kb、約0.4 kbの三種類のDNA断片が生成した(図3)。
【0046】
以上の結果から、上記のグルカナーゼAに相当する1.2KbのDNA断片はグルカナーゼAをコードするORFを含む塩基配列からなることが確認された。一方、グルカナーゼBに相当する1.2kbと1.3 kbとのDNA断片は、グルカナーゼBをコードするORFを含む塩基配列とそのスプライシングを受ける前のDNAの混合物であることが確認された。
【実施例2】
【0047】
黄麹菌アスペルギルス・オリゼの新規レクチン候補遺伝子の探索
既に記載した遺伝子の特定手法を用いて、アスペルギルス・オリゼRIB40株 のゲノム解析により得られたDNA配列情報を、NCBI blast(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)にかけることにより、他の生物のレクチンとホモロジー検索のスコアの高く、アスペルギルス・オリゼのレクチン遺伝子であると推定される遺伝子を6種類見つけ出した。このうち2種類は既知のものであったが、残りの4種類(レクチンA、レクチンB、レクチンC、レクチンD)は未知のものであった。これら各アミノ酸レベルの同一性に関する値を以下の表3に示す。
【0048】
【表3】

【0049】
黄麹菌アスペルギルス・オリゼの新規レクチンcDNAの増幅
上記のレクチンA、レクチンB、レクチンC、及びレクチンDについてRT-PCRによるcDNAの増幅を試みた。尚、試薬の使用量及び終濃度、PCRのサイクル条件(温度、時間)等は実施例1と同様であった。
レクチンAは配列番号17及び配列番号18で示されるプライマー対、レクチンBは配列番号19及び配列番号20で示されるプライマー対、レクチンCは配列番号21及び配列番号22で示されるプライマー対、並びに、レクチンDは配列番号23及び配列番号24で示されるプライマー対を用いて増幅した。
【0050】
5'-GGAATTCCATATGAAGTTCTCAGCTTCTTTACC-3’ (配列番号17)
5'-ATCCGGCGGCCGCGAGGAATTTCTTGGGCATGTTTG-3’ (配列番号18)
5'-GGAATTCCATATGCTGCTCCCGCGGCTCTC-3’ (配列番号19)
5'-GCCCCAAGCTTGAACCTCGAGTATCTCTGCTTG-3’ (配列番号20)
5'-GCCTAGCTAGCATGCCAAACATTCTCCAGAAC-3’ (配列番号21)
5'-CGCCGCTCGAGAGAACGCCCAAACACTAGTC-3’ (配列番号22)
5'-GGAATTCCATATGTCTCTCTATTCGTCGTAC-3’ (配列番号23)
5'-CGCCGCTCGAGTGGCCTGCAACTCCCAGAGC-3’ (配列番号24)

【0051】
各プライマーには制限酵素認識配列を含むような改変を5’側に加えた。すなわち、配列番号17〜配列番号24には、夫々、Nde I、Not I、Nde I、Hind III、Nhe I、Xho I、Nde I、及びXho Iが加わっている。
【0052】
PCR増幅産物を1.5%アガロースゲル電気泳動で確認したところ、レクチンA及びレクチンBに相当するそれぞれ約1.3 kb及び約1.0 kbの大きさの特異的なDNAの増幅断片のバンドが確認された。一方、レクチンC及びレクチンDに関しては、スプライシングを受けていない大きさ、すなわち麹菌ゲノム上の各遺伝子配列に相当する大きさのそれぞれ0.55 kb及び0.47 kbのDNA断片の増幅が確認された(図4)。
【0053】
次に増幅DNA断片が目的の遺伝子であることを、増幅DNA断片の制限酵素処理による2.0%アガロースゲル電気泳動でのバンドパターンを調べることにより確認した。
【0054】
その結果、レクチンAに相当する遺伝子からは、XhoI切断反応により0.95 kbと0.35 kbの二種類のDNA断片が生成した(図5)。レクチンBに相当する遺伝子からは、EcoRI切断反応により約0.7 kbと約0.3 kbの二種類のDNA断片が生成した(図6)。レクチンCに相当する遺伝子からは、それぞれNdeI切断反応により約0.7 kbと約0.3 kbの二種類のDNA断片が生成した(図7)。レクチンDに相当する遺伝子からは、それぞれBrfI切断反応により0.30 kbと0.17 kbの二種類のDNA断片が生成した(図8)。
【0055】
以上の結果から、上記のレクチンAに相当する1.3kbのDNA断片はレクチンAをコードするORFを含む塩基配列からなることが確認された。レクチンBに相当する10 kbのDNA断片は、レクチンBをコードするORFを含む塩基配列からなることが確認された。レクチンCに相当する0.55 kbのDNA断片は、スプライシングを受ける前の当該遺伝子をコードする塩基配列を含むことが確認された。更に、レクチンDに相当する0.47 kbの大きさのDNA断片は、スプライシングを受ける前の当該遺伝子をコードする塩基配列を含むことが確認された。
【0056】
レクチンC及びレクチンDに相当する遺伝子は、内部にスプライシングを受けるイントロンの配列を有している可能性が示唆されている。従って、両遺伝子は麹菌の生育条件によりオールターナティブにスプライシングを受けるものである可能性が指摘された。
【0057】
こうして得られた各増幅産物を単離・精製し大腸菌発現ベクターpET21b(ノバジェン社)に連結して大腸菌BL21 Star (DE3)(インビトロジェン社)に連結する。
【産業上の利用可能性】
【0058】
β−1,6−グルカナーゼの用途としては、抗腫瘍活性効果を持つβグルカンの改良、ビール醸造工程での麦芽煮汁中のβグルカン分解によるろ過効率の向上などが考えられる。またβ−1,3及びβ−1,6グルカンは真菌の細胞壁の主要成分であるが、ヒトには存在しないため、抗真菌剤としての利用の可能性がある。更に酵母の細胞壁もまたβ−グルカンで構成されていることから酵母研究においてプロトプラストの作製にも利用されることが考えられる。レクチンの用途としては、糖鎖構造の特異的検出、がん細胞検出などが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】1.5%アガロースゲル電気泳動における、グルカナーゼA及びグルカナーゼBをコードする塩基配列を含む1.2Kb及び1.3KbのPCR増幅断片を示す写真。
【図2】2.0%アガロースゲル電気泳動における、グルカナーゼA遺伝子のPCR増幅DNA断片のEcoRV切断前後の電気泳動像を示す写真。
【図3】2.0%アガロースゲル電気泳動における、グルカナーゼB遺伝子のPCR増幅DNA断片のScaI切断前後の電気泳動像を示す写真。
【図4】1.5%アガロースゲル電気泳動における、レクチンA、レクチンB、レクチンC、及びレクチンDをコードする塩基配列を含む、夫々、1.3kb、1.0kb、0.55kb、及び0.47kbのPCR増幅断片を示す写真。
【図5】2.0%アガロースゲル電気泳動における、レクチンA遺伝子のPCR増幅DNA断片のXhoI切断前後の電気泳動像を示す写真。
【図6】2.0%アガロースゲル電気泳動における、レクチンB遺伝子のPCR増幅DNA断片のEcoRI切断前後の電気泳動像を示す写真。
【図7】2.0%アガロースゲル電気泳動における、レクチンC遺伝子のPCR増幅DNA断片のNdeI切断前後の電気泳動像を示す写真。
【図8】2.0%アガロースゲル電気泳動における、レクチンD遺伝子のPCR増幅DNA断片のBfrI切断前後の電気泳動像を示す写真。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のいずれか一つに示す蛋白質をコードする遺伝子。
(a)配列番号2又は配列番号4で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、
(b)配列番号2又は配列番号4で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入または転移を含むアミノ酸配列からなり、かつβ−1,6−グルカナーゼ活性を有する蛋白質、及び
(c)配列番号2又は配列番号4で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む蛋白質またはその部分断片であり、かつβ−1,6−グルカナーゼ活性を有する蛋白質。
【請求項2】
下記のいずれか一つに示すDNAを含む遺伝子。
(a)アスペルギルス・オリゼ由来のmRNAに対するRT-PCRにおいて、配列番号13及び配列番号14、又は配列番号15及び配列番号16に示される各PCRプライマーによって増幅された1.2kb又は1.3kbのDNA断片である、β−1,6−グルカナーゼをコードする塩基配列を含むDNA、
(b)配列番号1又は配列番号3に示される塩基配列からなるDNA、
(c)配列番号1又は配列番号3に示される塩基配列またはその相補鎖を含む核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつβ−1,6−グルカナーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA、及び
(d)配列番号1又は配列番号3に示される塩基配列のDNAと80%以上の配列同一性を示すDNAまたはその部分断片であり、かつβ−1,6−グルカナーゼ活性の機能を有する蛋白質をコードするDNA。
【請求項3】
下記のいずれか一つに示す蛋白質をコードする遺伝子。
(a)配列番号6、配列番号8、配列番号10又は配列番号12で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、
(b)配列番号6、配列番号8、配列番号10又は配列番号12で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入または転移を含むアミノ酸配列からなり、かつレクチン活性を有する蛋白質、及び
(c)配列番号6、配列番号8、配列番号10又は配列番号12で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む蛋白質またはその部分断片であり、かつレクチン活性を有する蛋白質。
【請求項4】
下記のいずれか一つに示すDNAを含む遺伝子。
(a)アスペルギルス・オリゼ由来のmRNAに対するRT-PCRにおいて、配列番号17及び配列番号18、配列番号19及び配列番号20、配列番号21及び配列番号22、並びに配列番号23及び配列番号24に示される各PCRプライマーによって増幅された、夫々、1.3kb、1.0kb、0.55kb、及び0.47kbのDNA断片である、レクチンをコードする塩基配列を含むDNA
(b)配列番号5、配列番号7、配列番号9又は配列番号11に示される塩基配列からなるDNA、
(c)配列番号5、配列番号7、配列番号9又は配列番号11に示される塩基配列またはその相補鎖を含む核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつレクチン活性を有する蛋白質をコードするDNA、及び
(d)配列番号5、配列番号7、配列番号9又は配列番号11に示される塩基配列のDNAと80%以上の配列同一性を示すDNAまたはその部分断片であり、かつレクチン活性の機能を有する蛋白質をコードするDNA。
【請求項5】
請求項1ないし4記載の遺伝子を含有してなる組換え発現ベクター。
【請求項6】
請求項5記載の組換え発現ベクターを含む微生物。
【請求項7】
請求項6記載の微生物を培地で培養し、その培養物からβ−1,6−グルカナーゼ又はレクチンを採取することを特徴とする、β−1,6−グルカナーゼ又はレクチンの製造方法。
【請求項8】
下記のいずれか一つに示す蛋白質。
(a)配列番号2又は配列番号4で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、
(b)配列番号2又は配列番号4で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入または転移を含むアミノ酸配列からなり、かつβ−1,6−グルカナーゼ活性を有する蛋白質、及び
(c)配列番号2又は配列番号4で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む蛋白質またはその部分断片であり、かつβ−1,6−グルカナーゼ活性を有する蛋白質。
【請求項9】
下記のいずれか一つに示す蛋白質。
(a)配列番号6、配列番号8、配列番号10又は配列番号12で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、
(b)配列番号6、配列番号8、配列番号10又は配列番号12で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入または転移を含むアミノ酸配列からなり、かつレクチン活性を有する蛋白質、及び
(c)配列番号6、配列番号8、配列番号10又は配列番号12で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む蛋白質またはその部分断片であり、かつレクチン活性を有する蛋白質。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の蛋白質を用いて糖鎖分子を反応させることを含む、新たな構造又は機能を有する糖鎖を製造する方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法で得られる糖鎖を分析することにより、該糖鎖の構造に関する情報を得る方法。
【請求項12】
請求項8又は9に記載の蛋白質が標識されていることを特徴とする、請求項11記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−14245(P2007−14245A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−197595(P2005−197595)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(301037213)独立行政法人製品評価技術基盤機構 (25)
【出願人】(301025634)独立行政法人酒類総合研究所 (55)
【Fターム(参考)】