麻疹サブユニットワクチン
プロテオソームをベースとするアジュバントとともに麻疹ウイルス抗原を含む組成物、ならびに、プロテオソームをベースとするアジュバントを含む麻疹ウイルス抗原の治療用組成物を作製し、使用するための方法が提供される。麻疹ウイルス抗原は、種々の供給原に由来し、例えば、組み換え産生によるか、または分割抗原調製物に由来し得る。麻疹ワクチン処方物は、例えば、麻疹ウイルスによる感染を処置または予防するための方法において、および防御免疫応答を誘発するための方法において使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般的には、ワクチンと、感染性疾患の処置または予防に関する。より具体的には、本発明は、プロテオソームアジュバント、または麻疹ウイルス抗原とともに処方されるプロテオソーム:リポ糖アジュバントを含む組成物、ならびにそれらの治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連分野の説明)
麻疹は、伝染性の強い疾患であり、毎年およそ4000万人がこれに感染し、これによって90万人を超える人が死亡している(WHO/UNICEF,Joint WHO/UNICEF statement on Vitamin A for Measles,Weekly Epidemiology Record 19:133,1987)。2001年には、世界保健機構(WHO)とUNICEFによって、開発途上国向けのワクチン接種キャンペーンを通じて、麻疹による死亡数を2005年までに少なくとも50%減少させるためのプログラムが発表された。これは、世界中の80%以上において80%以上が確保されることによって達成される(すなわち;非特許文献1)。現在使用されている生の弱毒化ワクチンは有効ではあるが、深刻な限界がある。具体的には、中和母体抗体の存在が原因で、しばしば、9ヶ月未満の月齢の子供の防御ができないことがある(非特許文献2;非特許文献3)。麻疹ウイルス(MV)に伴う死亡の30%から50%が、この受攻期に生じる。母体抗麻疹抗体力価は非常に幅広く変化し、受動的に獲得した抗体は、通常、3から4週間の半減期を有する。結果として、乳児は、誕生から1歳までの間のほぼいずれかの時点で、麻疹にかかりやすくなる(非特許文献4)。
【0003】
現在利用されている生の弱毒化ワクチンを使用して母体抗体による妨害をバイパスするいくつかの試みが行われてきた。高力価の生(感染性)の麻疹ウイルスワクチン(標準的なワクチン接種のついての103.4プラーク形成単位(PFU)と比較してワクチン株ウイルスの106.3PFUまでを有している)が試みられ(非特許文献3)、エアゾール投与が試みられた(非特許文献5)。前者のアプローチによっては、3ヶ月程度の月齢の乳児はうまく防御することができたが、これには、あまり理解されていない理由による幼児死亡率の増大が伴った。このような致死率は、生の麻疹ウイルスまたは弱毒化麻疹ウイルスを含むワクチンの投与に関係している可能性がある。生ワクチンMV株のエアゾール投与を用いた早い段階での結果もまた、期待された。しかし、極めて高度な送達システムが必要とされる投与は、非常に面倒である。認められてはいないが、これらの試みにより、2〜3ヶ月の月齢の乳児にはMV抗原に反応する能力が生まれつき備わっていること、および粘膜免疫は母体抗体の妨害に左右されないことが明らかにされている。
【0004】
宿主中で防御免疫応答を誘導する抗原の能力は、抗原を、免疫賦活剤および/またはアジュバントと混合することによって高めることができる。ミョウバンをベースとするアジュバントは、認可の注射可能なヒト用ワクチンについてほぼ例外なく使用されている。しかし、ミョウバンは特定のタイプの血清抗体反応(2型)を高めるが、他のタイプの抗体反応(1型)を高めることはほとんどなく、例えば、細胞内病原体に対する防御について重要である細胞性の免疫応答の十分ではない活性化因子である。
【非特許文献1】Orensteinら,「Am.J.Public Health(2000)第90巻:p.1521
【非特許文献2】Albrechtら、「J.Pediatr.」(1977)、第91巻:p.715
【非特許文献3】Markowitzら、「N.Engl.J.Med.」(1990)、第322巻:p.580
【非特許文献4】Crowe、「Clin.Infect.Dis.」(2001)、第33巻:p.1720
【非特許文献5】Bennettら、「Bull.World Health Organ.」(2002)、第80巻:p.806
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、麻疹感染に対して治療的に有効である組成物、具体的には、ワクチンとして機能し、防御免疫を誘発することができるそのような組成物を同定し、開発する必要がある。さらに、ヒトに対して安全であり、防御性の全身的、および粘膜、体液性、および細胞性の免疫応答の誘導を増強することができる強力なアジュバントを含むワクチン処方物、具体的には、サブユニットワクチン処方物が必要とされている。本発明は、このような必要性を満たし、さらに他の関連する利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明により、プロテオソーム処方麻疹ワクチン組成物とその治療的使用が提供される。これらのワクチンは、麻疹感染を処置または予防するための防御免疫応答を簡単に生じ、そのような防御免疫反応を誘発することができる。麻疹抗原には、1つ以上の組み換えまたは合成によって生産された麻疹ポリペプチドが含まれる場合があり、また、麻疹ウイルス粒子または感染した宿主細胞から単離された1つ以上の麻疹ポリペプチドが含まれる場合もある。麻疹抗原には、少なくとも1つの麻疹ウイルスポリペプチド、例えば、麻疹ウイルスHタンパク質またはFタンパク質が含まれ、また、中和抗体反応もしくは細胞性免疫を誘発することができる、2つ以上の麻疹ウイルス抗原が含まれる場合もある。プロテオソーム処方アジュバントには、グラム陰性細菌(プロジュバント)から得られた外膜タンパク質、または外膜タンパク質とリポ糖の組み合わせ(OMP−LPS)が含まれる場合もある。
【0007】
1つの態様においては、本発明により、アジュバントと、1つ以上の麻疹ウイルス抗原を含む免疫原性組成物が提供される。ここでは、アジュバントには、プロテオソームとリポ糖が含まれ、少なくとも1つの麻疹抗原がHタンパク質である。特定の実施形態においては、免疫原性組成物には、Fタンパク質とHタンパク質を含む少なくとも2つの麻疹ウイルス抗原が含まれる。他の実施形態においては、1つ以上の麻疹ウイルス抗原は組換え体である麻疹抗原であるか、または麻疹分割抗原(split antigen)である。関連する実施形態においては、麻疹分割抗原は、麻疹ウイルスのMoraten株、Shwarz株、Zagreb株、またはEdmonston株に由来する抗原である。さらに他の実施形態においては、免疫原性組成物のプロテオソームタンパク質の重量パーセントとしてのリポ糖の最終含有量は、約10%から500%までの範囲である。さらに別の実施形態においては、プロテオソームとリポ糖は、同じ細菌から得られるものであるか、または、別の細菌から得られるものである。他の実施形態においては、プロテオソームは、ナイセリア(Neisseria)種に由来する。さらに他の実施形態においては、リポ糖は、赤痢菌属(Shigella)、プレシオモナス属(Plesiomonas)、エシェリキア属(Escherichia)、またはサルモネラ属(Salmonella)の種に由来する。特定の実施形態においては、本発明の免疫原性組成物にはさらに、1つ以上の別の微生物抗原、例えば、ウイルス抗原、細菌抗原、寄生虫抗原、またはそれらの組み合わせが含まれる。特定の実施形態においては、上記免疫原性組成物のいずれかには、さらに、薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤が含まれる。
【0008】
別の実施形態においては、本発明により、アジュバントと1つ以上の麻疹ウイルス抗原を含む免疫原性組成物が提供される。ここでは、アジュバントにはプロテオソームが含まれ、少なくとも1つの麻疹抗原がHタンパク質である。特定の実施形態においては、組成物には、Fタンパク質とHタンパク質を含む少なくとも2つの麻疹ウイルス抗原が含まれる。他の実施形態においては、1つ以上の麻疹ウイルス抗原は組換え体である麻疹抗原であるか、または麻疹分割抗原である。関連する実施形態においては、麻疹分割抗原は、Moraten株、Shwarz株、Zagreb株、またはEdmonston株に由来する抗原である。他の実施形態においては、プロテオソームは、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)に由来する。さらに他の実施形態においては、麻疹ウイルス抗原に対するプロテオソームの割合は、少なくとも2:1、3:1、または4:1である。特定の実施形態においては、本発明の免疫原性組成物には、さらに、1つ以上の別の微生物抗原、例えば、ウイルス抗原、細菌抗原、寄生虫抗原、またはそれらの組み合わせが含まれる。他の実施形態においては、上記免疫原性組成物のいずれかには、さらに、薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤が含まれる。
【0009】
さらに別の実施形態においては、本発明により、上記の免疫原性組成物のいずれかをそれが必要である被験体に投与することを含む、麻疹感染を処置または予防する方法が提供される。関連する態様においては、本発明は、上記の免疫原性組成物のいずれかをそれが必要である被験体に投与することを含む、免疫応答を誘発する方法に関する。特定の実施形態においては、免疫応答には、粘膜免疫応答が含まれる。他の実施形態においては、免疫応答には、細胞性応答が含まれる。特定の実施形態においては、上記の免疫原性組成物は、粘膜、腸内、非経口、経皮、経粘膜的、鼻腔内、または吸入から選択される経路によって投与され得る。
【0010】
1つの実施形態においては、本発明により、少なくとも1つの麻疹ウイルス抗原をコードするポリヌクレオチドに対して動作可能であるように連結された少なくとも1つのプロモーターを含む組み換え発現ベクターをそれが必要である被験体に投与すること、その後、少なくとも1回、上記の免疫原性組成物のいずれか1つの組成物を投与することを含む、免疫応答を誘発するための方法が提供される。特定の実施形態においては、少なくとも1つの麻疹ウイルス抗原がHタンパク質である;別の実施形態においては、ポリヌクレオチドは、Hタンパク質とFタンパク質である少なくとも2つの麻疹ウイルス抗原をコードする。別の実施形態においては、この方法には、組成物を鼻腔内に投与することが含まれる。特定の実施形態においては、免疫応答は全身性体液性応答;粘膜免疫応答(ここでは、粘膜応答には、IgA免疫グロブリンの生産が含まれる);および/または細胞性免疫応答である。
【0011】
1つの実施形態においては、少なくとも1つの麻疹ウイルス抗原をコードするポリヌクレオチドに対して動作可能であるように連結された少なくとも1つのプロモーターを含む組み換え発現ベクターを投与すること、その後、少なくとも1回、上記の免疫原性組成物のいずれか1つを投与することを含む、麻疹感染を処置または予防するための方法が提供される。特定の実施形態においては、少なくとも1つの麻疹ウイルス抗原がHタンパク質である;別の実施形態においては、ポリヌクレオチドは、Hタンパク質とFタンパク質である少なくとも2つの麻疹ウイルス抗原をコードする。別の実施形態においては、この方法には、組成物を鼻腔内に投与することが含まれる。特定の実施形態においては、免疫応答は粘膜免疫応答であり、別の実施形態においては、粘膜応答は細胞性免疫応答である。
【0012】
別の実施形態においては、アジュバントと本明細書中に記載される1つ以上の麻疹ウイルス抗原を含む免疫原性組成物は、被験体の麻疹感染を処置または予防するための医薬品の製造に使用することができる。別の実施形態においては、このような免疫原性組成物を、免疫応答を誘発するための医薬品の製造に使用することができる。特定の実施形態においては、免疫応答は全身性体液性応答;粘膜応答(ここでは、粘膜応答には、IgA免疫グロブリンの生産が含まれる);および/または細胞性免疫応答である。
【0013】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の詳細な説明と添付の図面を参照して明らかになるであろう。さらに、公開されている文献についての様々な参照は、それらが本発明のさらに詳細な特定の態様において記載され、したがって、それらの全体が参照により組み入れられることを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
本明細書中に記載される発明は、プロテオソームをベースとするMVワクチン(プロテオソーム:リポ糖(LPS−MVワクチン)の鼻腔内投与が、気道と全身的な抗体応答の両方において粘膜応答を刺激することができるという驚くべき発見に関係する。さらに、本明細書中に記載されるワクチン組成物の動物(マウスおよび幼若アカゲザル(rhesus macaque)を含む)への投与により、組成物は宿主または被験体に安全に投与することができ、観察できる毒性作用または有害な作用を何ら伴わないことが示される。プロテオソームと1つ以上の麻疹ウイルス抗原を含む免疫原性組成物が、本明細書中でさらに詳細に議論される。これらは、麻疹感染を処置または予防するというような治療的な使用、ならびにそれらを調製するための方法に適している。
【0015】
本発明により、プロテオソームをベースとするアジュバントとともに処方された1つ以上の麻疹抗原を含む治療用組成物が提供される。この組成物は、防御免疫応答を誘発するためのワクチンとして使用することができる。背景としては、生の弱毒化麻疹ワクチンが広く使用されており、推奨されている免疫化の月齢は6ヶ月から15ヶ月までの範囲であるが、これはなおも議論中である(Volti et al.,Eur.J.Epidemiol.9:311,1993)。呼吸経路からの免疫化は、より月齢の低い乳児について推奨されているが、このような試みは、中和母体抗体による妨害が原因で(Markowitz et al.,前出)、うまくいかないかまたは実用的ではないかのいずれかであることが証明されている(Khanum et al.,Lancet 1:150,1987)。さらに、現在の生の麻疹ワクチンの使用に関する欠点としては、ウイルスが最初に入り複製する粘膜表面の保護ができないこと、ワクチンの熱安定性が低いこと、注射の前に再構成が必要であること、および注射器具の汚染の危険があること、ならびに、免疫化後に生じる望ましくない副作用または合併症が挙げられる。
【0016】
本明細書中では、任意の濃度範囲、パーセントの範囲、または整数の範囲は、別段の指定のない限りは、記載される範囲内の任意の整数の値を含み、そして適切である場合には、その端数(例えば、整数の10分の1、および100分の1)をも含むように理解される。本明細書中で使用される場合は、「約」または「本質的に〜を含む」は、±15%を意味する。別の表現(例えば、「または」)の使用は、1つ、両方、または別の表現のそれらの任意の組み合わせを意味すると理解されるべきである。本明細書中で使用される場合は、不定冠詞の使用、例えば、「a」または「an」は、名詞または名詞句の単数と複数を言うと理解されるべきである。さらに、本明細書中に記載される個々の組成物、処方物、もしくは化合物、または組成物の種々の成分もしくは組み合わせに由来する組成物、処方物、または化合物のグループ、あるいは、配列、構造、および置換は、組成物または化合物のそれぞれ、または組成物もしくは化合物のグループが個々に示されているかのように、同じ程度で本明細書によって開示されると理解されるべきである。したがって、特定の配列、構造、または置換の選択は、本発明の範囲内である。
【0017】
(麻疹ウイルスポリペプチド免疫原)
本発明は、概して、Hタンパク質、Fタンパク質、Mタンパク質、Nタンパク質、Lタンパク質、Pタンパク質、またはそれらの断片を含む、麻疹ウイルス(MV)ポリペプチド免疫原に関する。これらには、他のポリペプチド(例えば、疎水性アミノ酸配列)への融合体もしくは他の修飾体(例えば、脂質の付加またはグリコシル化)が含まれる。免疫原性MVポリペプチドには、MV感染に対して防御免疫応答(細胞性または体液性)を誘発することができる少なくとも1つのエピトープを有しているそのようなポリペプチドの任意の部分が含まれ得る。本発明の免疫原性ポリペプチドはまた、直線的な形態に並べることも、また、そのような形態で組み合わせることもでき、それぞれの免疫原が繰り返される場合も、また、繰り返されない場合もある。反復は、一回である場合も、また複数回である場合もある。さらに、複数の異なるMV免疫原性ポリペプチド(例えば、種々のHタンパク質、Fタンパク質、またはNタンパク質変異体、あるいはそれらの断片)を選択することができ、防御免疫応答を誘発することにおいて使用される多価ワクチンを提供するように、混合組成物になるように混合または組み合わせることができる。MV感染を処置または予防するため、あるいは、MVポリペプチド免疫原もしくはその断片、またはポリペプチドの組み合わせ(融合タンパク質を含む)を使用して免疫応答を誘発するための方法もまた意図される。
【0018】
MVポリペプチド免疫原またはその断片は、感染した被験体の組織、または培養細胞株のような、種々の生物学的供給源から調製することができる。MVの初代単離物は、例えば、末梢血細胞に由来するものである場合があり、また、気道の分泌物に由来するものである場合もある。好ましくは、単離されたMVは初代細胞培養物(例えば、ヒトの血液、肺、結膜、腎臓、小腸、羊膜、皮膚、筋肉、胸腺間質、包皮、または子宮の細胞、あるいは、サルの腎臓または精巣細胞)上で、あるいは、確立されている細胞株(例えば、Vero、KB、CV−1、BSC−1、B95−8、WI−38、MRC−5、Hep−2、HeLa、またはA549)上で増幅させられる。さらに好ましくは、MVポリペプチド免疫原またはその断片は、当該分野で公知であるかまたは当該分野で後に確立される、確立されたMVワクチン株から調製される。1つの好ましい実施形態においては、MVポリペプチド免疫原またはその断片は、Moraten株、Shwarz株、Zagreb株、またはEdmonston株から調製される。
【0019】
特定の実施形態においては、MVポリペプチド免疫原またはその断片は、完全なウイルス粒子から単離される。本明細書中で使用される場合は、用語「単離された」は、物質がそのもとの環境または自然界における環境から取り出されていることを意味する。例えば、生存している動物または細胞、またはウイルスの中に存在の天然に存在する核酸分子またはポリペプチドは単離されていないが、自然体系において一緒に存在している物質の一部または全てから離されると、これらの核酸分子またはポリペプチドは単離されている。核酸分子は、例えば、ベクターの一部であることもでき、そして/または、そのような核酸もしくはポリペプチドは組成物の一部であることもでき、そしてさらにそのようなベクター中に単離することもでき、また、組成物は、その自然界での環境の一部ではない。他の実施形態においては、MVポリペプチド免疫原またはその断片は、部分的に精製されたもの、または均質になるように精製されたもののいずれかである場合もある。
【0020】
本明細書中に記載され、当該分野で公知であるように、種々の方法を、本発明のMVポリペプチド免疫原またはその断片を単離または精製するために使用することができる。MVは、選択された細胞株、例えば、Vero細胞(アフリカミドリザルの腎臓細胞)またはCV−1上で増殖させることができ、ウイルス粒子は、哺乳動物細胞から部分的または実質的に分離することができる。例えば、MVポリペプチド免疫原またはその断片の粗抽出物を、少なくとも1回の凍結−融解サイクルを行った感染細胞から調製し、遠心分離して細胞の破片を除去し、濾過することができ、そして、ウイルスを、限外濾過によって単離し、超音波処理し、薬学的に許容される希釈液(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水、PBS)中に再懸濁することができる(実施例4を参照のこと)。あるいは、またはこれに加えて、MVポリペプチド免疫原またはその断片を、界面活性剤抽出、またはショ糖密度勾配遠心分離法を使用して単離または精製して、定量化可能なMV免疫原の量を得ることができる。本明細書中で使用される場合は、「麻疹分割抗原」の調製とは、完全な麻疹ウイルス粒子からのMVポリペプチドの分離、単離、または精製をいう。1つの好ましい実施形態においては、MVポリペプチド免疫原またはその断片には、麻疹分割抗原が含まれる。これは、例えば、界面活性剤での可溶化によって調製することができる。
【0021】
本発明はさらに、1つ以上のウイルス抗原を含む特定の処方物に関する。ここでは、ウイルス抗原は、組成物の一部、または脂質ラフトとして知られている成分であり得る。本明細書中で記載されており、当該分野で公知であるように、このような脂質ラフトは、特異的なウイルス抗原を多く含む生物学的に関係している膜(宿主細胞またはウイルス)を提示する場合がある。このような脂質ラフトは、特定の界面活性剤、例えば、オクチルグルコシドまたはメチルβシクロデキストリンでの処理によって解離させて、さらにワクチン処方物を修飾することができる。したがって、脂質ラフトの単離は、特異的な所望される抗原を多く含ませるために使用される場合があり、また、ワクチンの処方を助けるために使用される場合もある。脂質ラフトの存在またはそれが存在しないことは、例えば、免疫原の安定性または免疫学的結果に影響を与える場合がある。
【0022】
本発明により、さらに、融合タンパク質を含む合成のMVポリペプチド免疫原を生産するための方法が提供される。免疫原性ポリペプチド成分は、自動化された手順による合成を含む標準的な化学的方法によって合成することができる。一般的には、免疫原性ポリペプチドまたはペプチドは、標準的な固相Fmoc保護ストラテジーに基づいて、カップリング剤としてHATUを用いて合成される。免疫原性ペプチドは、適切なスカベンジャーを含むトリフルオロ酢酸を用いて、固相樹脂から切り離すことができる。これについてはまた、側鎖官能基の脱保護が行われる。粗免疫原性ペプチドはさらに、分取逆相クロマトグラフィーを使用して精製することができる。他の精製方法、例えば、分配クロマトグラフィー、ゲル濾過、ゲル電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー、または他の当業者によって行われる方法が使用される場合もある。tBoc保護ストラテジー、種々のカップリング試薬の使用などのような当該分野で公知である他の合成技術を使用して、同様の免疫原性ペプチドが生産される場合もある。さらに、D−またはL−アミノ酸およびそれらの組み合わせを含む任意の天然に存在するアミノ酸またはその誘導体が使用される場合もある。
【0023】
本明細書中で記載される場合は、MVポリペプチド免疫原またはその断片が、組換え体である場合もある。ここでは、所望されるMV免疫原は、組み換え核酸発現構築物中の発現制御配列(例えば、プロモーター、エンハンサー)に対して動作可能であるように連結されたポリヌクレオチドから発現される。例えば、HまたはFまたはNタンパク質免疫原をコードする核酸発現構築物を含む宿主細胞(例えば、バキュロウイルスおよび哺乳動物細胞株)を培養して、組み換えHまたはFまたはNタンパク質免疫原、あるいはそれらの断片を生産することができる(例えば、Puetz et al.,Intl.J.Parasitol.33:525(2003)およびその中で引用されている参考文献を参照のこと;一般的には、Sambrook et al.,(2001)前出を参照のこと)。
【0024】
(ワクチンアジュバント−プロテオソーム(「プロジュバント」およびOMP−LPS))
本発明はまた、1つ以上のMV抗原と、免疫応答を誘発することを助けるかまたは別の方法で協力する別の成分(例えば、アジュバント)を含む、免疫原性組成物に関する。上記のように、現在の生の弱毒化麻疹ワクチンは、中和母体抗体と未熟な乳児免疫系を維持していることが原因で、9ヶ月の月齢より低い乳児においては免疫原性が低い。生の弱毒化麻疹ワクチンの使用に関係する欠点としては、特に、第三世界諸国においては、保存の際の熱安定性が低いことが挙げられる。これは、電力供給が不安定である国において問題となり得る。投与経路は、現在は注射による投与であり、これは、危険な方法で注射が行われると他の疾患の伝染を導く恐れがある。良好なMVワクチンを処方するための多数の努力が行われているにもかかわらず、その必要がある個体を免疫化する、特に、麻疹による感染に対して免疫化するために有効な組成物が依然として必要とされている。
【0025】
生の弱毒化麻疹ウイルスに代わるものは、本発明によって提供されるMVサブユニットワクチン、例えば、本明細書中に記載されているような、分割麻疹抗原調製物とプロテオソームをベースとするアジュバントを含む処方物である。サブユニットMVワクチンの有効性を最大にするために、MV抗原が、強力な免疫賦活剤またはアジュバントと混合される場合がある。例示的なアジュバントとしては、ミョウバン(水酸化アルミニウム、REHYDRAGEL(登録商標))、リン酸アルミニウム、プロテオソームアジュバント(例えば、米国特許第5,726,292号および同第5,985,284号、ならびに米国特許出願公開番号2001/0053368を参照のこと)、ビロソーム、Lipid Aを含むかまたは含まないリポソーム、Detox(Ribi/Corixa)、MF59、あるいは他の油および水エマルジョン型アジュバント(例えば、ナノエマルジョン(例えば、米国特許第5,716,637号を参照のこと)およびサブミクロンエマルジョン(例えば、米国特許第5,961,970号を参照のこと)、ならびにフロイトの完全および不完全アジュバント)が挙げられる。特に好ましいアジュバントはプロテオソームである。
【0026】
プロテオソームは、通常はナイセリア(Neisseria)種に由来するが、他のグラム陰性細菌から導くこともできる外膜タンパク質(OMP)からなる(例えば、Lowell et al.,J.Exp.Med.167:658,1988;Lowell et al.,Science 240:800,1988;Lynch et al.,Biophys.J.45:104,1984;米国特許第5,726,292号;米国特許第4,707,543号を参照のこと)。プロテオソームは、20〜800nmの小胞または小胞様OMPクラスターへと自律的に組み立て、そして、タンパク質抗原(Ag)、具体的には、疎水性部分を有している抗原を非共有的に取り込む、配位する、会合する、または別の方法で協働する能力を有している。プロテオソームは疎水性であり、ヒトへの使用について安全であり、大きさに関して特定のウイルスと同程度である。背景として、理論に拘泥するものではないが、プロテオソームのタンパク質(例えば、抗原)との混合により、抗原とプロテオソームとの間での非共有的な会合または配位を含む組成物が提供される。ここでは、会合または配位は、安定化させるための界面活性剤が、例えば、透析によって選択的に除去されるかまたは減少させられると形成する。本明細書中で使用される場合は、「プロテオソーム」は、グラム陰性細菌、例えば、ナイセリア(Neisseria)種に由来する外膜タンパク質(OMP)の調製物をいう(例えば、Lowell et al.,J.Exp.Med.167:658,1988;Lowell et al.,Science 240:800,1988;Lynch et al.,Biophys.J.45:104,1984;Lowell,「New Generation Vaccines」第2版、Marcell Dekker,Inc.,New York,Basil,Hong Kong,頁193,1997;米国特許第5,726,292号;米国特許第5,985,284号;米国特許第4,707,543号を参照のこと)。これは、MV抗原のような免疫原についての担体またはアジュバントとして有用である。プロテオソームは、当該分野で記載されているように、または本明細書中に記載されるように調製することができる(図1Aおよび1Bのフローチャートを参照のこと)。
【0027】
1つ以上のOMPの溶けた球形のようなOMP組成物を含む小胞または小胞様形態の外膜タンパク質成分を生じる任意の調製方法が、「プロテオソーム」の定義に含まれる。1つの実施形態においては、プロテオソームは、ナイセリア属(Neisseria)の種、より好ましくは、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)に由来する。特定の実施形態においては、プロテオソームは担体ではなくアジュバントである。本明細書中で使用される場合は、アジュバントであるプロテオソームは、「プロジュバント」と呼ばれる場合がある。特定の他の実施形態においては、プロテオソームはアジュバントであり、抗原送達組成物である場合がある。好ましい実施形態においては、本発明のMV免疫原性組成物には、本明細書中に記載される1つ以上のMV抗原(すなわち、MV免疫原またはその断片)とアジュバントが含まれる。ここでは、アジュバントにはプロジュバント(すなわち、プロテオソーム)が含まれる。少なくとも1つの麻疹抗原はHタンパク質である。別の実施形態においては、この処方物には、Fタンパク質とHタンパク質を含む1つ以上の麻疹ウイルス抗原が含まれる。本明細書中に記載されるように、MV抗原は、組換え体である供給源に由来するものであってもよく、また、麻疹分割抗原を含むこともできる。好ましくは、麻疹分割抗原は、ワクチン株、例えば、Moraten株、Shwarz株、Zagreb株、またはEdmonston株から得られる。
【0028】
特定の実施形態においては、本発明により、リポ糖のような免疫賦活剤をさらに含む免疫原性組成物が提供される。すなわち、アジュバントが別の免疫賦活剤を含むように調製される場合もある。例えば、プロジュバントを、本明細書中に記載されるようにリポ糖と混合して、OMP−LPSアジュバントを提供することができる。したがって、OMP−LPSアジュバントは2つの塩基性成分から構成され得る。第1の成分は、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)のようなグラム陰性細菌から調製されたプロテオソームの外膜タンパク質調製物(すなわち、プロジュバント)である。第2の成分はリポ糖の調製物である。本明細書中で使用される場合は、「リポ糖」は、グラム陰性細菌、例えば、フレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)、プレジオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelloides)、または他のグラム陰性細菌(アルカリゲネス属(Alcaligenes)、バクテロイデス属(Bacteroides)、ボルデテラ属(Bordetella)、ボレリア属(Borrellia)、ブルセラ属(Brucella)、カンピロバクター属(Campylobacter)、クラミジア属(Chlamydia)、シトロバクター属(Citrobacter)、エドワードシエラ属(Edwardsiella)、Ehrlicha、エンテロバクター属(Enterobacter)、エシェリキア属(Escherichia、)フランシセラ属(Francisella)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)、ガルドネレラ属(Gardnerella)、ヘモフィラス属(Hemophillus)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、クレブシエラ属(Klebsiella)、レジオネラ属(Legionella)、レプトスピラ属(Leptospira)(レプトスピラ・インテロガンス(Leptospira interrogans)を含む)、モラクセラ属(Moraxella)、モルガネラ属(Morganella)、ナイセリア属(Neiserria)、パスツレラ属(Pasteurella)、プロテウス属(Proteus)、プロビデンシア属(Providencia)、他のプレシオモナス属(Plesiomonas)、ポルフィロモナス属(Porphyromonas)(ポルフィロモナス・ギンギバリス(Porphyromonas gingivalis)を含む)、プレボテラ属(Prevotella)、シュードモナス属(Pseudomonas)、リケッチア属(Rickettsia)、サルモネラ属(Salmonella)、セラチア属(Serratia)、他のシゲラ属(Shigella)、スピリルム属(Spirillum)、ベイヨネラ属(Veillonella)、ビブリオ属(Vibrio)、またはエルシニア属(Yersinia)の種を含む)に由来する、天然に存在しているかまたは修飾されている、リポ多糖またはリポオリゴ糖をいう(まとめて、LPSとも呼ぶ)。リポ糖は、無毒化された形態(すなわち、Lipid Aコアが除去されている)である場合も、また、無毒化されていない形態である場合もある。リポ糖は、図2のフローチャートに記載されているように調製することができる(例えば、米国特許出願公開番号2003/004442もまた参照のこと)。第2の成分に、脂質、糖脂質、糖タンパク質、低分子などが含まれる場合があることもまた意図される。
【0029】
プロテオソーム:LPSまたはプロトリン(Protollin)またはIVXまたはIVX−908は、本明細書中で使用される場合は、OMP−LPS組成物(これは、免疫賦活組成物としての役割を果たすことができる)を提供するために、本明細書中で記載されるように少なくとも1種のリポ糖と混合されたプロジュバントの調製物をいう。したがって、OMP−LPSアジュバントは、例えば、IVX−908の2つの塩基性成分(これには、(1)グラム陰性細菌、例えば、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)から調製されたプロテオソーム(すなわち、プロジュバント)である外膜タンパク質調製物と、(2)1つ以上のリポ糖の調製物が含まれる)から構成され得る。
【0030】
本明細書中で記載される場合は、OMP−LPSアジュバントの2つの成分は、これらの成分の間での相互作用を最適にするために、特異的な初期比で処方することができ(図3のフローチャートを参照のこと)、これによって、本明細書中に記載されるMV免疫原性組成物の調製において使用される成分の安定な会合および処方物が得られる。このプロセスには通常、選択された界面活性剤の溶液(例えば、Empigen(登録商標)BB、Triton(登録商標)X−100、またはMega−10)中で複数の成分を混合すること、その後、予め決定された好ましい濃度になるように、透析によって、または好ましくは、透析濾過/限外濾過方法によって、界面活性剤の量を減少させながらOMPとLPS成分の錯体形成を行うことが含まれる。2つの成分の混合、共沈、または凍結乾燥もまた、適切であり安定な会合または処方を行うために使用される場合がある。好ましい実施形態においては、本発明のMV免疫原性組成物には、本明細書中に記載される1つ以上のMV抗原(すなわち、MV免疫原またはその断片)とアジュバントが含まれる。ここでは、アジュバントには、プロジュバント(すなわち、プロテオソーム)およびリポ糖が含まれる。少なくとも1つの麻疹抗原がHタンパク質である。別の実施形態においては、この処方物には、Fタンパク質とHタンパク質を含む1つ以上の麻疹ウイルス抗原が含まれる。本明細書中に記載されるように、MV抗原は、組換え体である供給源に由来するものである場合があり、また、麻疹分割抗原を含む場合もある。好ましくは、麻疹分割抗原は、Moraten株、Shwarz株、Zagreb株、またはEdmonston株から得られる。
【0031】
好ましい実施形態においては、全プロテオソームタンパク質の重量パーセントとしての最終的なリポ糖の含有量は、約10%から約500%までの範囲であり得、約20%から約200%までの範囲、あるいは、約30%から約150%までの範囲であり得る。1つの好ましい実施形態においては、プロテオソームを含むアジュバント組成物は、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)から調製され、リポ糖は、フレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)またはプレジオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelloides)から調製される。最終的なリポ糖の含有量は、全プロテオソームタンパク質に対して重量で50%から150%の間である。別の実施形態においては、プロテオソームは、全OMPの約0.5%から約5%までの範囲の内因性リポオリゴ糖(LOS)含有量を有するように調製される。本発明の別の実施形態により、全OMPの約12%から約25%までの範囲、好ましい実施形態においては、全OMPの約15%から約20%の間の内因性リポ糖を含むプロテオソームが提供される。本発明により、また、任意のグラム陰性細菌種に由来するリポ糖を含む組成物が提供される。これは、プロテオソームの供給源と同じグラム陰性細菌種に由来する場合も、また、別の細菌種に由来する場合もある。
【0032】
(免疫原性組成物およびその使用)
1つ以上のMV免疫原を含む本明細書中に記載される免疫原性組成物は、免疫応答、例えば、防御免疫応答を誘発するために使用することができる。本発明により、本明細書中に記載されるように、1つ以上のMV免疫原またはその断片、融合タンパク質、多価免疫原、あるいは、そのような免疫原の混合物を、MVに特異的な免疫応答(細胞性および/または体液性)(これは、防御免疫応答である場合もある)を誘発するために十分な用量で、被験体に投与することによって、MVによる感染を処置または予防するための方法が提供される。MVポリペプチド免疫原およびその変異体、またはそのような免疫原の混合物は、本発明の方法において使用される場合には、アジュバント、例えば、プロジュバントまたはOMP−LPSを含む組成物の一部であることが好ましい。1つの実施形態においては、本発明の免疫原性組成物にはさらに、1つ以上の別の微生物抗原、例えば、ウイルス抗原、細菌抗原、寄生虫抗原、またはそれらの組み合わせが含まれ得る。例えば、MV免疫原性組成物には、風疹抗原およびおたふく風邪抗原もまた含まれる場合がある。
【0033】
免疫原性組成物には、さらに、1つ以上のMV免疫原またはその断片に加えて、薬学的に許容されるビヒクル、担体、希釈剤、または賦形剤が、そして状況に応じて他の成分が含まれる場合がある。例えば、本発明の免疫原性組成物との使用に適している薬学的に許容される担体または他の成分としては、増粘剤、緩衝化剤、溶媒、保湿剤、保存剤、キレート化剤、別のアジュバントなど、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0034】
さらに、本発明の薬学的組成物には、さらに、水またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)のような希釈剤が含まれ得る。好ましくは、希釈剤は、約0.1mMから約1Mまで、より好ましくは、約0.5mMから約500mMまで、さらにより好ましくは、約1mMから約50mMまで、最も好ましくは、約2.5mMから約10mMまでの最終リン酸濃度範囲;および約100mMから約200mMまで、最も好ましくは、約125mMから約175mMまでの最終塩濃度範囲のPBSである。好ましくは、最終的なPBS濃度は、約5mMのリン酸と約150mMの塩(例えば、NaCl)である。特定の実施形態においては、MV免疫原またはMV分割抗原と本発明のアジュバント(例えば、プロジュバントまたはOMP−LPS)の混合物を含む上記の免疫原性組成物の任意のものは、滅菌であることが好ましい。
【0035】
組成物は、無菌環境下でそれらを調製すること、またはそれらを当該分野で利用されている方法を使用して最後に滅菌することのいずれかによって滅菌することができる。多くの医薬品は滅菌のものとして製造され、この基準はUSP XXII<1211>によって規定されている。この実施形態での滅菌は、当業界で承認されており、USP XXII<1211>に列挙されている多数の手段によって行うことができる。これには、ガス殺菌、電離放射線、または濾過が含まれる。滅菌状態は、これもまたUSP XXII<1211>で規定されている無菌処理と呼ばれる方法で維持することができる。ガス殺菌に使用することができる気体として、エチレンオキシドガスが挙げられる。電離放射線法に使用することができる放射線のタイプとしては、ガンマ線、例えば、コバルト60源からのガンマ線、および電子線が挙げられる。ガンマ放射線の一般的な線量は、2.5MRadである。適切である場合は、適切な孔の大きさ(例えば、0.22μm)であり適切な材質(例えば、Teflon(登録商標))のフィルターを使用して濾過を行うことができる。用語「USP」は、米国薬局方(www.usp.org;Rockville,MD)をいう。プロテオソームまたはOMP−LPSが小さい粒子を生じるという事実から、本発明の免疫原性組成物を、0.8μのフィルター、0.45μのフィルター、または0.2μのフィルターを通じて濾過することが十分である。したがって、好ましい実施態様においては、本発明のMV免疫原性組成物は濾過によって滅菌される。そのような混入物の存在によるあらゆる厄介な問題を排除することが望ましいので、これは非常に有効である。
【0036】
本発明はまた、アジュバントと1つ以上の麻疹ウイルス抗原を含む免疫原性組成物を、それが必要である被験体に投与することを含む、麻疹感染を処置または予防するための方法に関する。ここでは、アジュバントには、プロテオソームまたはOMP−LPSのいずれかが含まれ、少なくとも1つの麻疹抗原がHタンパク質である。別の実施形態においては、本発明の免疫原性組成物は、免疫応答(細胞性または体液性、あるいは両方、これは、1型または2型の細胞性応答であることが好ましい場合もある)を誘発するために使用することができる。MV免疫原処方物を用いる処置または免疫応答の誘発に適している被験体は、疾患を発症するリスクについての十分に確立された指標、または既存の疾患についての十分に確立された指標によって同定することができる。本明細書中に開示されるMV免疫原で処置することができる感染としては、MVによって、またはMVが原因で引き起こされる感染が挙げられ、感染が一次感染である、二次感染である、日和見感染であるなどは問わない。MVの例としては、これらのウイルスの任意の抗原性変異体が挙げられる。
【0037】
本発明の免疫原性組成物を調製するための方法は、本明細書中に記載され、当該分野で公知である(例えば、米国特許出願公開番号2001/0053368、および同2003/0044425を参照のこと)。抗原(単数または複数)およびアジュバントは、これらの成分の間での相互作用(または協働)を最適にするような特異的な初期比で処方され、これによって、2つの成分の有意な部分が互いに非共有的に会合する(または非特異的に並ぶ)。例えば、少なくとも1つのMVポリペプチド抗原のプロテオソーム(プロジュバント)またはOMP−LPSとの混合物は、界面活性剤の存在下で調製され、透析濾過/限外濾過による混合物からの界面活性剤の減少または除去によって、アジュバントとの抗原の会合(または配位)が導かれる(図3を参照のこと)。好ましい実施形態においては、混合物中のウイルス抗原に対するプロテオソームの割合は、1:1以上、好ましくは、2:1以上、より好ましくは、3:1以上、そしてさらに好ましくは4:1である。この割合は、8:1またはそれ以上であることもできる。あるいは、混合物中のウイルス抗原に対するプロテオソームの割合は、1:1、1:2、1:3、1:4、または1:8である。2つの成分の界面活性剤をベースとする溶液には、同じ界面活性剤が含まれる場合も、また、異なる界面活性剤が含まれる場合もあり、1つ以上の界面活性剤が、限外濾過/透析濾過が行われる混合物中に存在する場合もある。適切な界面活性剤としては、Triton(登録商標)、Empigen(登録商標)BB、およびMega−10が挙げられる。他の界面活性剤もまた使用することができる。界面活性剤は、組成物を調製するために使用される成分を可溶化させるように作用する。界面活性剤の混合物の使用が特に有効である場合もある。この混合物は、もちろん、最終的な処方の前に透析濾過/限外濾過によって、除去されるか、または濃度が低下させられる。
【0038】
本明細書中に記載される1つ以上のMV抗原とプロテオソームをベースとするアジュバントを含む免疫原性組成物は、その組成物を被験体、例えば、ヒトまたはヒト以外の動物(例えば、ヒト以外の霊長類、または齧歯類、例えば、マウスまたはラット)に投与できる任意の形態であり得る。例えば、そのような免疫原性組成物は、液体溶液として調製し、投与することができ、また、固体形態(例えば、凍結乾燥させた)として調製することもできる。これは、固体形態として投与することができ、また、投与と同時に溶液中に再懸濁することもできる。MV免疫原性ポリペプチド組成物は、その中に含まれる有効成分を、被験体(または患者)に組成物が投与されると生体利用可能になるか、または徐放により生体利用可能になるように処方される。被験体または患者に投与される組成物は、1つ以上の投与量単位の形態をとる。例えば、ドロップは、単回投与量単位であり得、エアゾール形態の本発明の1つ以上の化合物の容器には、複数の投与量単位を含めることができる。特定の好ましい実施形態においては、本発明のMV免疫原または免疫原の混合液を含む上記の薬学的組成物のいずれかは、容器中に、好ましくは、滅菌の容器中に存在する。用量レベル、投与のタイミング、投与回数、投与間隔を含む特定の投与プロトコールの設計は、当業者に周知である常法を使用してそのような手順を最適化することによって決定される。
【0039】
1つの実施形態においては、免疫原性組成物は、鼻腔に投与される。他の一般的な投与経路としては、腸内、全身的、経皮/経粘膜、鼻腔、および吸入が挙げられる。用語「腸内」は、本明細書中で使用される場合は、免疫原性組成物が、消化管または口腔粘膜を通じて吸収される投与経路であり、これには、経口、直腸内、舌下が含まれる。用語「全身的」は、本明細書中で使用される場合は、消化管をバイパスする投与経路を記載し、これには、動脈内、皮内、筋肉内、鼻腔内、眼内、腹腔内、静脈内、皮下、粘膜下、および膣内での注射または注入技術が含まれる。用語「経皮/経粘膜」は、本明細書中で使用される場合は、免疫原性組成物が皮膚を介してかまたは皮膚から投与される投与経路であり、これには、局所投与が含まれる。用語「鼻腔内」および「吸入」には、免疫原性組成物が呼吸樹に導入される投与技術が含まれ、肺内または経肺動脈投与が含まれる。組成物は、当該分野で公知の装置、例えば、機械的装置(例えば、ネブライザー)によってエアゾールとして投与され得る。ここでは、エアゾール組成物は、呼吸菅上部および下部に投与される。好ましくは、本明細書中に記載される免疫原性組成物は、鼻腔内に投与される(鼻腔内投与)。
【0040】
さらに、本明細書中で開示される免疫原性組成物は、生の弱毒化麻疹ワクチンのような別のワクチンとともに投与する場合には、免疫性を増強するために、または追加免疫として使用することができる。例えば、1つ以上のMVポリペプチド免疫原をプロジュバントまたはOMP−LPSとともに含む組成物は、生の弱毒化麻疹ワクチンの投与前またはその投与後に、感作免疫として、または追加免疫として使用される(粘膜または全身的経路によって)場合もある。
【0041】
別の実施形態においては、麻疹感染を処置または予防するため、および/あるいは、免疫応答を誘発するために、被験体には、少なくとも1回、2回、または3回のDNAワクチンでの感作免疫が投与され、その後、1つ以上のMVポリペプチド免疫原をプロジュバントまたはOMP−LPSとともに含む本明細書中に開示される組成物での追加免疫が投与される。DNAワクチンには、プロモーター配列に動作可能であるように連結された麻疹ウイルスポリペプチドまたはその断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む1つ以上の組み換え発現構築物が含まれる(例えば、Fennelly et al.,J.Immunol.162:1603−10(1999);Pasetti et al.,J.Virol.77:5209−17(2003)を参照のこと)。ポリヌクレオチドは、少なくとも1つの麻疹ウイルスポリペプチド、例えば、Hタンパク質をコードすることができ、少なくとも2つの麻疹ウイルスポリペプチド(すなわち、2シストロン性ポリヌクレオチド)、例えば、Hタンパク質とFタンパク質をコードする場合があり、また、3個、4個、もしくは5個、またはそれ以上の麻疹ウイルスポリペプチド(すなわち、多シストロン性ポリヌクレオチド)をコードする場合もある。DNAワクチンには、2つ以上の組み換え発現構築物が含まれる場合がある。例えば、それぞれの構築物には、少なくとも1つの麻疹ウイルスポリペプチドまたはその断片をコードするポリヌクレオチド配列に対して動作可能であるように連結させられたプロモーターを含むポリヌクレオチドを含まれる。
【0042】
組み換えポリヌクレオチド発現構築物は、分子生物学の分野の当業者に公知の方法にしたがって調製することができる。原核生物宿主および真核生物宿主とともに使用されるクローニングおよび発現ベクターは、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第3版、Cold Spring Harbor,NY(2001)に記載されており、プラスミド、コスミド、シャトルベクター、ウイルスベクター、および本明細書中で開示される染色体複製起点を含むベクターを挙げることができる。組み換え発現構築物にはまた、宿主細胞中での目的のポリペプチドの発現を可能にする発現制御配列(調節配列)も含まれる。これには、1つ以上のプロモーター配列(例えば、lac、tac、trc、ara、trp、λファージ、T7ファージ、T5ファージプロモーター、CMV、前初期、HSVチミジンキナーゼ、初期および後期SV40、レトロウイルス由来のLTR、およびマウスメタロチオネイン−I)、エンハンサー配列、オペレーター配列(例えば、lacO)などが含まれる。
【0043】
一般的には、組み換え発現ベクターには、複製起点と宿主細胞の形質転換を可能にする選択マーカー、および下流の構造配列の転写を指示する高度に発現される遺伝子に由来するプロモーターが含まれる。異種構造配列は、翻訳開始配列および翻訳終結配列とともに適切な段階で組み立てられる。好ましい実施形態においては、構築物は、インビボで投与される組成物中に含まれる。このようなベクターおよび構築物としては、染色体配列;非染色体配列;および合成のDNA配列(例えば、SV40の誘導体);細菌プラスミド;ファージDNA;酵母プラスミド;プラスミドの組み合わせに由来するベクター;およびファージDNA;ウイルスDNA(例えば、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、ニワトリポックスウイルス、および仮性狂犬病ウイルス);あるいは、以下に記載されるような複製欠損レトロウイルスが挙げられる。しかし、任意の他のベクターが、組み換え発現構築物の調製に使用される場合もあり、好ましい実施形態においては、そのようなベクターは複製可能であり、宿主(被験体)中で生存可能である。
【0044】
1つの実施形態においては、DNAワクチンは、細菌に組み換え発現ベクターを導入することによって調製される。細菌は、その後被験体に投与される。例えば、1つ以上の麻疹ウイルスポリペプチドまたはその断片をコードするポリヌクレオチドを含む組み換え発現ベクターが、赤痢菌の株(Shigella flexneri)(例えば、Fennelly et al.,前出;Pasetti et al.,前出)に導入され得る(例えば、トランスフェクション、エレクトロポレーション、または形質転換によって)。細菌は、その後、そのようなDNAワクチンの送達のために当業者によって行われる方法にしたがって被験体に投与するために調製され得る。DNAワクチンは、鼻腔内、筋肉内、皮内、全身的、吸入によって、あるいは、コードされるMVポリペプチドが発現される様式で被験体にワクチンを提供する任意の他の経路および方法によって送達され得る。
【0045】
好ましくは、本明細書中に記載されるMV免疫原性組成物は、1つ以上の全身性体液性応答、粘膜免疫応答、および細胞性免疫(CMI)を含む、特異的な抗MV免疫応答を誘導する。全身性体液性免疫応答は、特異的な抗麻疹抗原IgG抗体または他のクラスの免疫グロブリンが血清中に存在することにより示される。その防御効果または治療効果は、ヘマグルチニン阻害(HI)アッセイを含む機能的アッセイにおいて決定することができる。HIによって測定される応答の誘導は、ヘマグルチニンを阻害する免疫化された被験体に由来する生物学的試料中の免疫グロブリンの存在が、ヒトにおいてはMVに対する防御と相関していると考えられているので、有用である。粘膜免疫応答には、鼻咽頭および肺を含む呼吸菅から回収される分泌物のような粘膜分泌物中のIgAを含む粘膜抗体の生産が含まれる。理論に拘泥するものではないが、粘膜免疫応答システムによって、おそらく、MV感染に対する最初の免疫学的バリアが提供され、粘膜の体液性応答において優性であるIgAによって防御機能が媒介される。抗MV IgA抗体のインビトロでの分析は、抗MV免疫応答によりウイルスの侵入が妨げられ、ウイルスの複製が邪魔され、そして/または、ウイルスの上皮を通過する輸送が妨害されることを示唆している(例えば、Lamm,Annu.Rev.Microbiol.51:311−40(1997);Yan et al.,J.Virol.76:430−35(2002)を参照のこと)。
【0046】
粘膜バリアを含む細胞集団は、体内で局所に、または異なる部位に到達することができるシグナルに応答する(Svanborg et al.,Curr.Opin.Microbiol.2:99−105(1999))。限定されない理論にしたがうと、トル様受容体(TLR)は、生得的な免疫系の鍵となる成分であり、おそらく、IVX908−MVは、TLRシステムを通じて作用するであろう。なぜなら、IVX908中の主要な髄膜炎菌(N.meningitidis)Ompタンパク質であるPorBは、TLR−2に結合するからである(Massari et al.,J.Immunol.168:1533−37(2002))。LPSはTLR−4を活性化し(Takeda et al.,Annu.Rev.Immunol.21:335−76(2003))、そして麻疹のHタンパク質もまた、TLR−2に結合することができる(Bieback et al.,J.Virol.76:8729−36))。TLRの関与により、プロ炎症性サイトカイン(例えば、IFN−γ、TNF−α、およびIL−12)の生産と、抗原提示細胞上の副刺激分子のアップレギュレーションが生じる。活性化された生得的反応は、効果的な適応的免疫応答を指示する。
【0047】
細胞性免疫(CMI)により、より高いかまたは優勢なTH2応答からの、混合された平衡状態の高いかまたは優勢なTH1応答(例えば、TFN−γのようなサイトカインの発現の誘導によって決定される)へのスイッチまたは減少が、それに見合う特定のTH2サイトカイン(例えば、IL−5)の誘導の増加を伴うことなく(そのレベルは、例えば、維持される、減少する、または存在しない場合もある)誘導される。このようなTH1応答は、他のCMI関連反応、例えば、細胞傷害性T細胞(CTL)の発生の誘導の素因であり、これは、TH1免疫の指標である。
【0048】
血清、鼻洗浄液、および/または肺洗浄液を含む被験体に由来する生物学的試料中に麻疹特異的抗原が存在することは、当該分野で行われる多数の免疫学的アッセイのいずれか1つによって決定することができる。このような免疫学的アッセイとしては、ELISA、免疫ブロット、放射免疫検定、およびオクタローニ(Ochterlony)が挙げられるが、これらに限定されない。麻疹特異的抗体の機能的活性の決定もまた、本明細書中に記載される当該分野で公知の方法、例えば、プラーク減少中和検定、ヘマグルチニン阻害アッセイ、およびオプソニン化抗体の存在を決定するアッセイにしたがって決定することができる。
【0049】
本明細書中に記載されているプロテオソーム:MVおよび/またはIVX908−MV組成物のようなMVワクチン組成物の、MVに対する特異的免疫応答を誘発する、および/または麻疹ウイルス感染を予防する、または被験体の麻疹ウイルス感染を処置する能力は、本明細書中に記載される当該分野で公知の動物モデルにおいて決定することができる。例えば、マウスモデルまたはヒト以外の霊長類モデル、例えば、アカゲザルモデルを使用することができる。弱毒化麻疹ワクチンまたは麻疹DNAワクチンのような、1用量、2用量、3用量、またはそれ以上の用量のMVワクチン組成物を、初回免疫および追加免疫として、あるいは、別のワクチンでの初回または感作免疫後の1回以上の追加免疫として、動物に投与することができる。好ましくは、MVワクチンは、ヒトにワクチンを投与する、例えば、鼻腔内に投与するために使用することができる送達方法と同様の様式で動物に送達され得る。動物の免疫応答は、応答が治療的または防御的であることを示す機能に特異的に結合するかまたはそのような機能を示す免疫グロブリンの存在を決定することによって評価することができる。例えば、免疫グロブリン、特に、IgGおよびIgA抗体は、特異的な免疫応答が生じた場合に、または特異的な免疫応答が生じたかどうかを決定するためにサンプリングすることができる。本明細書中に記載される当該分野で公知の例示的なアッセイとしては、免疫アッセイ(例えば、ELISAおよび免疫ブロッティング);麻疹ウイルス特異的サイトカインの生産(例えば、IFNγ、IL4、IL5)の決定;ならびにプラーク減少中和(PRN)アッセイが挙げられる。PRN値は、免疫応答を特徴づけ、そして麻疹ウイルスでチャレンジした場合に、麻疹感染および疾患に関係する続発症の発症から動物を保護するかどうかを評価するために特に有効である。ヒトにおける血清防御(seroprotection)はPRN値120超として定義されている(Chen et al.,J.Infect.Dis.162:1036−42(1990))。
【0050】
本明細書中で記載される場合は、プロテオソーム組成物およびOMP−LPS組成物を含むアジュバント組成物はまた、麻疹ウイルス以外の、または麻疹ウイルスに加えて、1つ以上の微生物(ウイルス、細菌、寄生虫、真菌)に由来する1つ以上の抗原と混合することができ、他の感染性疾患の処置または予防のために使用することができる。例えば、本明細書中に記載されるように調製されたプロテオソーム:抗原またはIVX908:抗原組成物は、風疹ウイルスまたはおたふく風邪ウイルスによる感染によって生じる疾患を処置または予防するために使用することができる。このような免疫原性組成物はまた、風疹ウイルスまたはおたふく風邪ウイルスのようなウイルスに特異的な免疫応答を誘発するためにも使用することができる。このような組成物に使用されるウイルス抗原は、ウイルス粒子から単離または部分的に単離することができ、また、ウイルスに感染した細胞から導くこともでき、また、標準的な分子生物学的方法にしたがって組み換えによって発現させ、その後で単離することもできる。1つ以上のウイルス抗原を、本明細書中に記載される方法にしたがって、プロテオソームまたはOMP−LPSアジュバントと組み合わせることができる。
【0051】
プロテオソームまたはOMP−LPSアジュバントと組み合わせられたウイルス抗原は、1つのタイプのウイルスに由来するものである場合も、また、混合物として使用される、すなわち、1つのウイルスに由来する1つ以上の抗原が1つ以上の他のウイルスの1つ以上の抗原と組み合わせられる場合もある。任意の多数の混合物または組み合わせを調製することができる。例えば、1つの組成物に、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、およびおたふく風邪ウイルスに由来する抗原が含まれる場合、あるいは、麻疹ウイルスと風疹ウイルスに由来する抗原が含まれる場合、または麻疹ウイルスとおたふく風邪ウイルスに由来する抗原が含まれる場合、また、おたふく風邪ウイルスと風疹ウイルスに由来する抗原が含まれる場合もある。1つ以上のウイルスに由来する任意の1つ以上の抗原を、その後、プロテオソームまたはOMP−LPSアジュバントと組み合わせることができる。あるいは、プロテオソーム:風疹抗原(単数または複数)および/またはOMP−LPS:おたふく風邪抗原(単数または複数)を、本明細書中に記載されるプロテオソーム:MVまたはIVX908−MV組成物と組み合わせて、それが必要である被験体に対して任意の組み合わせで投与することができる。個々の免疫原性組成物は、種々の回数(および経路)で別の免疫原性組成物と別々に投与することができる。これらの免疫原性組成物の任意のものを、初期(初回または感作)免疫および追加免疫として使用することができ、また、追加免疫として使用することもできる。別の感作(または初回)免疫原には、その後に追加免疫が行われるウイルスの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のウイルスポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むDNAワクチンが含まれ得る。これらのDNAワクチンは、本明細書中に記載されている当該分野で公知の方法によって調製することができる。
【0052】
本明細書中に記載される全ての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、および非特許刊行物、および/または出願データシート(Application Data Sheet)は、それらの全体が参照によって本明細書中に組み入れられる。以下の実施例は、本明細書中に記載される本発明を説明するために意図され、限定されるようには意図されない。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
(プロテオソームの調製)
免疫原(例えば、麻疹ウイルス抗原)は、ヒトまたは動物被験体の防御免疫応答を誘発することができる本発明のワクチン組成物を形成するように、プロテオソームとともに処方され得る。プロテオソームはアジュバントとして有用であり、グラム陰性細菌から精製される外膜タンパク質から構成される。プロテオソームを調製するための方法は、例えば、Mallett et al.,Infect.Immun.63:2382,1995;米国特許第6,476,201 B1号;米国特許出願公開番号2001/0053368;ならびに米国特許出願公開番号2003/0044425に記載されている。簡単に説明すると、フェノールで死滅させたグループB 2型髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)のペーストを、1Mの塩化カルシウム中の6%のEmpigen(登録商標)(EBB)(Albright and Wilson,Whithaven,Cumbria,UK)の溶液で抽出した。抽出物をエタノールで沈殿させ、1%EBB−Tris/EDTA−生理食塩水中に溶解させ、その後、硫酸アンモニウムで沈殿させた。沈殿したプロテオソームを1%のEBB緩衝液中に再度溶解させ、透析濾過し、0.1%のEBB緩衝液中で−70℃で保存した。
【0054】
約0.5%から約5%の間のリポ糖含有量を有しているプロテオソームが得られたこのプロセスのフローチャートを、フローチャート1A(図1A)に示す。プロテオソームはまた、得られるプロテオソームが約12%から約25%の間のリポ糖含有量を有していることが所望される場合には、硫酸アンモニウム沈殿工程を省略してプロセスを短縮することもでき、材料によっては、フローチャート1B(図1B)に示されるように、約15%から約20%の間のリポ糖含有量である場合もある。当業者であれば、本発明のプロジュバントまたはOMP−LPS組成物を含む処方物を調製するための方法を、ワクチン成分の特定の特性に合うように調整することができることを理解するはずである。
【0055】
(実施例2)
(リポ糖の調製)
フローチャート2(図2)の例は、フレクスナー赤痢菌(S.flexneri)またはプレジオモナス・シゲロイデス(P.shigelloides)からのLPSの単離および精製のためのプロセスを示す。このプロセスは、他のグラム陰性細菌(赤痢菌属(Shigella)、プレシオモナス属(Plesiomonas)、エシェリキア属(Escherichia)、またはサルモネラ属(Salmonella)の種を含む)からLPSを調製するために同様に使用することができる。細菌を醗酵によって300L中で増殖させた後、細菌を堆積させ、細胞ペーストを、細菌ペースト1グラムあたり3mLの0.9MのNaCl、0.005MのEDTA、および10mgのリゾチームで再度水和した。リゾチームでの消化を、室温で1時間進行させた。その後、0.025MのMgCl2中の50U/mlのBenzonase(DNase)を添加し、DNase消化を室温で30分間進行させた。その後、懸濁液を14,000から19,000psiでマイクロフルイダイザーを通過させることによって砕いた。新しいDNase(50U/mL)を添加し、懸濁物の消化を、さらに30分間室温で進行させた。消化した細胞懸濁物を水浴中で68℃に加熱し、等量の90%のフェノール(これもまた68℃に加熱した)を添加し、その後、混合液を震盪させながら68℃で30分間インキュベートした。混合液を4℃で遠心分離して、水相と有機相を分離させた。水相を回収し、有機相をWFI(注射用蒸留水)で68℃で30分間再度抽出した。混合液を4℃で遠心分離し、第2の水相を回収し、2つの回収した水相を合わせた。核酸を沈殿させるために、10mMのCaCl2を含む20%のエタノールをプールした水相に添加した。混合液を4℃で一晩攪拌し、次いで、沈殿した核酸を、10,000×gで30分間の遠心分離によって堆積させた。上清を回収し、濃縮し、30,000MW中空線維カートリッジを使用して、0.15MのNaCl、0.05MのTris、0.01MのEDTA、および0.1%のEmpigen(登録商標)BB、pH8.0の中に透析濾過した。最後に、LPSを、0.22μMのMillpak(登録商標)60フィルターユニットを使用して滅菌濾過し、滅菌の保存容器に等分し、−80℃で保存した。
【0056】
(実施例3)
(プロテオソーム:リポ糖アジュバントの調製および特徴づけ)
本発明のプロテオソームアジュバント処方物を、おそらくは非共有的である会合を可能にするためにプロテオソームとLPSを混合することによって製造した。LPSは、多数のグラム陰性細菌、例えば、赤痢菌属(Shigella)、プレシオモナス属(Plesiomonas)、エシェリキア属(Escherichia)、またはサルモネラ属(Salmonella)の種のいずれかから導くことができる(実施例2を参照のこと)。これを、フローチャート3(図3)に記載したように、実施例1のプロテオソームと混合する。簡単に説明すると、プロテオソームとLPSを4℃で一晩融解させ、TEEN緩衝液中で1%のEmpigen(登録商標)BBになるように調節した。2つの成分を、約10:1から約1:3の間のプロテオソーム:LPSの最終wt/wt比を生じる量で、室温で15分間混合した。プロテオソーム:LPS混合物を適切な大きさ(例えば、Size9)の10,000 MWCO中空線維カートリッジ上でTNS緩衝液(0.05MのTris、150mMのNaCl、pH8.0)中に透析濾過した。浸透液中のEmpigen(登録商標)含有量が<50ppm(Empigen(登録商標)Turbidity Assayによるか、またはBradford Reagent Assayによる)になった時点で、透析濾過を停止した。バルクのアジュバント(本明細書中ではOMP−LPSと呼ぶ)を濃縮し、5mg/mLのタンパク質となるように(Lowryアッセイによる)調製した。最後に、アジュバントを、0.22μmのMillipak 20フィルターユニットを使用して滅菌濾過した。バルクのアジュバントを、滅菌の保存容器に等分し、凍結させた。
【0057】
OMP−LPSアジュバントを、(1)逆相HPLCを使用してEmpigen(登録商標)(400ppm)について;(2)Lowryアッセイによってタンパク質含有量について;(3)2−ケト−3−デオキシオクトネート(KDO)アッセイの測定によってLPS含有量について試験した。OMP−LPS組成物をさらに、粒子サイズ測定装置(particle sizer)(Brookhaven Instrumentsモデル90プラス、または同様の機器)(10〜100nm)を使用した定数加重分析によって決定される粒子の大きさの分布について、さらに特徴付けた。しかし、複合体の粒子の大きさは、LPSに対するプロテオソームの比の変化(例えば、高い)に応じて増大または変化する場合がある。アジュバント処方物中のOMP−LPS組成物の安定性は、赤痢菌(S.flexneri)LPSワクチンについて以前に実証された安定性(米国特許出願公開番号2003/0044425を参照のこと)と一致するはずである。これらのデータは、OMP−LPS組成物が、冷蔵温度とそれよりも高い温度(25℃および37℃)のいずれにおいても安定であったことを示す。これらの条件下では、組成物のLPS成分、またはその任意の統計学的に有意な部分を、ワクチン処方物のプロテオソーム成分と錯体形成させることができる。
【0058】
(実施例4)
(麻疹ウイルス抗原の調製)
米国でワクチンの目的に使用されている麻疹ウイルス(MV)の弱毒化株であるMoraten株の増殖を、0.01〜0.001の感染多重度(MOI)でVeroミドリザル腎臓細胞を感染させることによって行った。ここでは、感染させた細胞を、10レベルの工業用チャンバー(Nalge Nunc International,Rochester,NY)で培養した。MOIは、不完全な妨害を生じる粒子の発生を最少にするために低くした。感染細胞の培養を、有意な細胞病理学が検出されるまで(例えば、約3〜5日)モニターし、その時点で、感染細胞の培養物を、1回の凍結−融解サイクルに供して細胞を破壊させた。細胞の破片を2100×gで20分間、4℃での遠心分離によって除去した。細胞を含まないMVを含む上清を回収し、0.45μmのフィルターと、その後に0.22μmのフィルターを連続して通過させて濾過した。その後、濾過した上清を4℃で2時間、14,000rpmで限外濾過した。堆積した麻疹ウイルス粒子をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中に再度懸濁させ、次いで超音波処理を行った。タンパク質濃度を、2シストロン性酸性タンパク質アッセイを使用して決定し(Pierce Biotechnology,Rockford,IL)、標準曲線を、ウシ血清アルブミン画分V(BSA)とウシγグロブリン画分II(BGG)の混合物を使用して作製した。
【0059】
(実施例5)
(麻疹ウイルス抗原調製物の分析)
ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を、ウイルス調製物中のMVヘマグルチニン(H)タンパク質と融合(F)タンパク質の存在を評価するために行った(図4を参照のこと)。ウイルス試料の段階希釈物を、10%のポリアクリルアミドゲル上での電気泳動によって分離し、タンパク質のバンドを、クマシーブリリアントブルーG−250(Kodak,Rochester,NY)での染色によって視覚化した。クマシーブリリアントブルーでの染色によって検出された個々のMV抗原の相対的な量と、試料の全タンパク質含有量の割合として決定したHタンパク質とFタンパク質の量を、Scion imageソフトウェアを使用する定量的デンシトメトリーによって決定した。タンパク質調製物中のHタンパク質とFタンパク質の量は44.4%であった。
【0060】
平行して、別のゲルから分離したMV試料を、MV Hタンパク質とFタンパク質の免疫ブロット分析による評価のためにPVDF膜に移した。移した後、膜を0.1%のTween−20を含むPBS(PBS−T)中の5%の脱脂粉乳でブロックし、その後、MV Hタンパク質またはFタンパク質を検出することができるモノクローナル抗体とともに、室温で60分間インキュベートした。その後、免疫ブロットをPBS−Tで洗浄し、次いで、ヤギ−抗マウスHRP(Jackson Immunoresearch Laboratories)の存在下で室温で60分間インキュベートした。その後、膜を、HRP基質、ECLキット(Amersham Biosciences)と共にインキュベートした。シグナルを、免疫ブロットをX線フィルム(Kodak,Rochester,NY)に露光させることによって視覚化した。
【0061】
MV Hタンパク質とFタンパク質に相当するバンドを、クマシーブリリアントブルーと免疫ブロット分析の両方を使用して検出した。例えば、80kDaのMV Hタンパク質のバンドを、重ね焼きした免疫ブロットとクマシー染色したゲル上で検出した。免疫ブロットによって検出したMV Fタンパク質は、F0一次翻訳産物がタンパク質分解によってF1とF2サブユニットへと処理されるとの理由から予想される、存在する種々のウイルスFタンパク質の大きさを示した。50〜60kDaの2つの形態のF0を同定することができた。この原因は、おそらく、翻訳後のグリコシル化の差である。F1バンドは、41kDaのタンパク質バンドとして同定した。これらの実験で使用したVero細胞タンパク質とFタンパク質抗体との間にはいくつかの交差反応性が検出された(例えば、図4AのVero細胞抽出物の対照のレーンを参照のこと)。
【0062】
(実施例6)
(プロテオソーム:LPSと麻疹ウイルス抗原を含む処方物の調製)
本発明の処方物を、実施例3によるプロテオソーム:LPSアジュバント(本明細書中ではOMP−LPSとも呼ぶ)を実施例4によるMV抗原と、最適な安定性と免疫学的結果を促進する割合で混合することによって調製した。いくつかの場合には、プロテオソーム:LPSアジュバントとの処方の前に、ウイルス抗原調製物を、1%の界面活性剤(例えば、Empigen BBまたはMega−10)を含むように調製し、続いて、透析し、その後、プロテオソーム:LPSアジュバントと混合した。
【0063】
(実施例7)
(プロテオソームと麻疹ウイルス抗原を含む処方物の調製)
本発明の処方物を、実施例1によるプロテオソームを、実施例4によるMV抗原と、安定性と免疫学的結果について最適な処方物となる割合で混合することによって調製した。プロテオソームとの処方の前に、ウイルス抗原調製物を、実施例6に開示したように1%の界面活性剤(例えば、Empigen BBまたはMega−10)を含むように調製した。
【0064】
(実施例8)
(麻疹ウイルス抗原ワクチン処方物の分析)
ワクチン処方物を、SDS−PAGE(クマシーブリリアントブルー染色と免疫ブロット分析)によって、そして免疫金顕微鏡法によって分析した。SDS−PAGE分析の前に、ワクチン処方物を10,000で15秒間遠心分離した。ワクチン処方物の可溶性の画分(上清)と不溶性の画分(ペレット)を回収した。不溶性の画分をPBS中に再度懸濁させ、その後、β−メルカプトエタノールを含む試料緩衝液を添加した。プロテオソーム処方MVワクチン組成物の場合は、ワクチン処方物の可溶性画分中のプロテオソームOMPの存在をモニターし、これらの実験において、良好な処方プロセスの指標として確保した。クマシーブリリアントブルー染色を使用して、可溶性画分と不溶性画分中にタンパク質が存在することを検出し、免疫ブロット分析を使用して、透析した調製物の中にMV Hタンパク質とFタンパク質が存在することを確認した。MV抗原を含むプロテオソームのワクチン処方物、およびMV抗原を含むOMP:LPSが、検出することができる量のMV Hタンパク質とFタンパク質を含むことを見出した(図5A)。
【0065】
電子顕微鏡による分析(図5B)のために、ワクチン処方物試料を5分間、ニッケルグリッド上でエアーフュージした(airfuge)。グリッドを1%のウシ血清アルブミン(BSA)を含むブロッキング溶液中に5分間浸し、洗浄し、その後、MV Hタンパク質に対するモノクローナル抗体(Chemicon International,Temecula,CA)とともに室温で60分間インキュベートした。その後、グリッドを1%のBSAで5分間ブロックし、続いて抗マウスIgG−Gold−10nmとともに1時間インキュベートし、PBS、再蒸留水で洗浄し、風乾させ、PTA 3%、pH6.0で染色し、東芝の電子顕微鏡を使用して観察した。これらの実験では、MV抗原ワクチン処方物と、対照のプロテオソームまたはOMP−LPSのみは、約100nmから約300nmまでの大きさの範囲にある、種々の大きさの丸い膜構造を呈した(図5B)。免疫金で標識されたシグナルは、プロテオソームを含むMV抗原の共局在を明確に示す。
【0066】
(実施例9)
(麻疹ウイルス抗原ワクチン処方物でのマウスの免疫化)
免疫化を、グループあたり5匹のマウスを含む21のグループの10週齢のBALB/c雌マウスに対して行った。それぞれの実験について、全てのマウスを2日おきに、体重と、毒性の兆候(例えば、毛の状態、猫背の姿勢、脂性肌、眼の分泌物、および脱水状態)について、実験手順が終わるまで評価した。BALB/cマウスを粘膜内(IM)および/または鼻腔内(IN)より、プロテオソーム:MV抗原処方物、またはプロテオソーム:LPS:MV抗原処方物で1日目および14日目に免疫化した。全てのワクチン処方物には、実施例4で調製した0.4μgのMV抗原を含めた。IN免疫化については、マウスを最初にイソフランの吸入によって軽く麻酔し、その後、鼻腔内に25μl(1つの鼻腔について12.5μl)を送達する自動導入チャンバーを使用して、ワクチンまたは対照処方物を投与した。IM免疫化については、25μlのワクチン処方物を、後肢に注射することによって投与した。全ての場合において、対照マウスを、緩衝液(PBS)のみ、MV抗原のみ、プロテオソームのみ、またはプロテオソーム:LPS(例えば、OMP:LPS)のみでINまたはIMによって免疫化した。
【0067】
分析のために、試料を1日目、14日目に側部伏在静脈から採取し、ワクチン処方物を3用量投与したマウスについては、28日目にもまた採取した。最後の免疫化の8日後(2用量および3用量の実験グループについて、それぞれ、22日目及び36日目)に、マウスをCO2での窒息によって安楽死させ、心臓の穿刺によって放血させた。鼻の洗浄と肺の洗浄もまた、気管の切開を行い、そしてカテーテル(Clear−Cath,Abott,Ireland)を、最初に、主気道に、その後に鼻咽頭に挿入することによって行った。それぞれの位置について、カテーテルを縫合によって固定し、0.1%のBSAとプロテアーゼ阻害因子(AEBSF、EDTA、ベスタチン、E−64、ロイペプチン、およびアプロチニン(Sigma,St.Louis,MO))を含む1mlのPBSを用いてサンプリングした。全ての試料を回収し、使用するまで−20℃で保存した。脾臓もまた、それぞれのマウスから回収し、脾細胞を、70μmのNylon細胞ストレーナー(BD Falcon)を使用して調製した。単細胞懸濁液を、Ficoll−Hypaque(Pharmacia)を使用して280×gで20分間遠心分離した。血漿/Ficoll界面に存在する細胞を回収し、2回洗浄し、10%のジメチルスルホキシド(DMSO)を含むウシ胎児血清中で凍結させた。
【0068】
(実施例10)
(ELISAによる麻疹ウイルスに特異的な抗体の分析)
血清と粘膜MV特異的抗体応答を、定量的ELISAによって測定した。血清試料について、全IgG、IgGイソ型(IgG1、IgG2a、IgG2b)およびIgAを測定した。鼻洗浄液および肺洗浄液については、IgAのみを評価した。U底の96ウェルマイクロタイタープレート(Greiner)を、炭酸緩衝液(pH9.6)中に希釈した1μg/mlのMV抗原で、4℃で一晩コーティングした。プレートを、PBS 0.1%のTween−20(PBS−T)中の2%の脱脂粉乳でブロックし、その後、試料の希釈物を2連で添加し、37℃で2時間インキュベートした。二次抗体には、ヤギ抗マウスIgG西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP;Pharmingen BD)、ヤギ抗マウスIgG1HRP,ヤギ抗マウスIgG2a−HRP、またはヤギ抗−マウスIgG2b−HRP(Southern Biotechnologies Associates)を含めた。ラット抗マウスIgA−ビオチン(Pharmingen,BD)を、IgAの検出のための二次抗体として使用し、続いて、ストレプトアビジン−HRP(Jackson Immunoresearch Laboratories)を使用した。アッセイを、TM Blue基質(Serological Corporation)の添加によって完了させた。反応を、0.2Mの硫酸(Sigma)を使用して停止させた。450nmで記録した光学密度の値の平均と標準偏差(SD)を、自動マイクロプレートリーダー(Bio−Rad Laboratories,Richmond,CA)から計算した。試験試料中の抗体濃度を、精製したマウスIgG抗体(Sigma,St.Louis,MO)または精製したマウスIgA(Bethyl Laboratories,Montgomery,TX)を使用してそれぞれのプレート上でインキュベートした標準曲線から計算した。値は、血清または洗浄液1ミリリットルあたりの特異的抗体のナノグラム数を示す(図6を参照のこと)。
【0069】
(実施例11)
(プラーク減少中和アッセイによる麻疹ウイルスに特異的な抗体の分析)
試料(血清および/または洗浄液)中に含まれるMV特異的抗体の、MVの増殖を中和する能力を、以前に記載された(Ward et al.,Diagn.Microbiol.Infect.Dis.33:147,1999)プラーク減少中和(PRN)アッセイによって評価した。簡単に説明すると、Vero細胞を、90〜95%の細胞集密度が得られるように24ウェルプレート(Falcon,BD Biosciences,Mississauga,Ontario,Canada)にプレートした。試料をPRN中で使用する前に、56℃で40分間熱不活化させた。試料を希釈し、37℃で90分間、MVとともにインキュベートし、その後、70%の細胞集密度のVero細胞の2連のウェルを、100μlの10倍の段階希釈物に感染させた。LebovitzのL15培地(Gibco Life Technologies,Grand Island,NY)中の16%のメチルセルロースの重層を、感染させた細胞に適用し、その後、プレートを5%のCO2中で37℃で4日間インキュベートした。4%のニュートラルレッドの溶液を添加して単層を染色し、その後、さらに24時間置いた。最後に、細胞の単層を、3.7%のホルマリンで10分間固定させ、目で見ることができるプラークを数えて、プラーク形成単位の数を決定した(図7を参照のこと)。それぞれの試料を2連で評価した。PRN指数を、Kaber法を使用して決定して、中和の50%終点を計算した。以下の式を使用してPRN値を計算した:最高希釈の逆数のlog10−[(平均プラーク数/ウイルス対照による平均プラーク数の和−0.5)×希釈係数のlog10]。
【0070】
(実施例12)
(麻疹ウイルス抗原ワクチン処方物の安全性)
MV抗原ワクチン処方物を、マウスにおいて安全性(すなわち、毒性)について評価した(実施例9もまた参照のこと)。マウスを、プロテオソームまたはOMP−LPSとともに処方したMV抗原の2または3用量のいずれかで、鼻腔内に(IN)免疫化した。さらに、プロテオソームとともに処方したMV抗原を使用して、粘膜内経路(IM)を通じてマウスを免疫化した。毒性がないことを、本明細書中に開示したワクチン処方物のいずれかを使用して検出した。マウスを毎日観察し、体重を測定した。INまたはIMのいずれかで投与したワクチン処方物については、全てのマウスにおいて行動の変化は記録されず、体重においても統計学的に有意な変動(例えば、+/−1.0グラムより大きい)は検出されなかった。これらのデータは、本発明のワクチン処方物が、おそらく、ヒトである被験体に用いる場合にも安全であることを示唆している。
【0071】
(実施例13)
(麻疹ウイルス抗原ワクチン処方物での免疫化後の血清IgG抗体応答)
MV抗原ワクチン処方物の全身性免疫を誘発する能力を、MV特異的抗体についての定量的ELISAによる血清試料の分析によって評価した。これらの実験では、マウスを図6に示した(矢印)ように、1日目、14日目、および/または28日目に免疫化した。これらの実験では、2用量または3用量のINで投与したプロテオソームMV抗原ワクチン処方物によって、測定可能な量のIgGの統計学的に有意な増加が誘導された(図6)。IMで投与した場合には、プロテオソーム−MVワクチン処方物によって、2用量のワクチンを投与した後、全てのマウスにおいて血清IgGの測定可能な増加が誘発され、これは、3用量の投与後には有意に増加した(図6)。血清IgGの検出可能なレベルはまた、IMで投与した3用量のMVのみを投与したマウスにおいても観察された。OMP−LPS−MV抗原ワクチン処方物でINで免疫化したマウスは、3用量のワクチンの後に有意なレベルのIgGを生じた。2用量のOMP−LPS−MV抗原処方ワクチンの投与によっては、検出可能な血清IgG応答は誘発されなかった。血清IgGは、全ての動物において免疫化の前には検出されず、PBS対照を投与したグループ、MV抗原のみをINで投与したグループ(2または3用量)、ならびにOMP−LPSのみを投与したグループ(2または3用量)を含む対照グループにおいては全ての時点で検出できないままであった(図6)。
【0072】
(実施例14)
(麻疹ウイルス抗原ワクチン処方物での免疫化後の粘膜抗体応答)
鼻洗浄液および肺洗浄液中のIgAの検出のためのELISAを使用して、鼻および気道の粘膜免疫を誘発するMVワクチン処方物の能力を決定した。鼻洗浄および肺洗浄を、最後の免疫化の8日後に行った。有意なレベルのMV特異的IgAが、3用量のプロテオソーム:MVワクチン処方物をINで投与したマウスにおいて検出されたが、そのようなレベルは2用量のワクチンを投与したマウスにおいては検出されなかった(図6)。対照的に、IMで投与した2用量または3用量のプロテオソーム:MV処方ワクチンによっては、検出可能なIgA応答は誘発されなかった(図6)。INで投与した3用量のOMP−LPS−MV抗原処方ワクチンで免疫化したマウスは、有意なレベルのMV特異的IgAを誘発し、力価は肺洗浄液試料において6000ng/mlに達した。IgAレベルは、鼻洗浄液よりも肺洗浄液中でより高かった(図6)。このことは、INで投与されたOMP−LPS−MV抗原ワクチン処方物によって、気道において粘膜免疫応答が誘発されたことを示唆している。IMで投与されたOMP−LPS−MV抗原処方ワクチン(2用量)は、検出可能なIgA応答を誘発しなかった。IgAのレベルは、MV抗原のみをINで投与したグループ、MV抗原のみをIMで投与したグループ(2用量または3用量)、PBS対象、およびOMP−LPSのみをINで投与したグループ(2用量または3用量)を含む対照グループから得られた鼻洗浄液および肺洗浄液の両方において低いままであったか、または検出できなかった。
【0073】
(実施例15)
(麻疹ウイルス抗原ワクチン処方物で免疫化したマウスに由来する血清および洗浄液試料の免疫中和活性)
プラーク減少中和アッセイを使用して、血清試料、さらには、鼻洗浄液および肺洗浄液試料を、最後の免疫化の8日後に採取した際の免疫中和活性について分析した。これらの実験では、INで投与したプロテオソーム−MV抗原処方ワクチンは、低いが有意なMV中和を示した(図7)。IMで投与したプロテオソーム−MVワクチン処方物は、粘膜IgA応答を誘発せず(図6)、結果として、ウイルスの中和は、MVを鼻または肺洗浄液試料に接触させた場合にも観察されなかった。IMで投与したプロテオソーム−MVワクチン処方物(3用量)によって得られた血清試料は、MVの増殖を中和することが示された(図7)。IMで投与したプロテオソーム−MV抗原ワクチン(3用量)と比較して、有意に低い中和レベルが、プロテオソーム−MV抗原処方物(2用量)をIMで投与したマウスと、MV抗原のみをIMで投与(3用量)したマウスに由来する血清試料を用いて観察された(図4)。これは、ELISAによって測定したIgGレベル(図6)と一致した。さらに、INで投与した3用量のOMP−LPS−MV抗原ワクチン処方物により、中和血清抗体の生産が誘発された。同様の結果が、INで投与されたプロテオソーム−MV処方物についても観察された。免疫中和活性の検出可能なレベルはまた、肺洗浄液試料においても観察された(図7)。MV抗原のみをINで投与したグループ(2または3用量)、PBSのみを投与したグループ、およびOMP−LPSのみを投与したグループ(2または3用量)のような対照グループから得られた試料は、MV中和活性を有していなかった。これらのデータは、MV抗原ワクチン処方物が、MV感染とその合併症からワクチンを接種した被験体を防御できる免疫応答を誘発することを示唆している。
【0074】
(実施例16)
(麻疹ウイルス抗原ワクチン処方物で免疫化したマウスにおける免疫応答)
種々のIgG抗体イソ型の優位は、特異的なタイプの免疫応答に関係している。血清IgG1は体液性免疫に関与しているTH2型応答に関係しており、一方、血清IgG2aは細胞性免疫に関与しているTH1型応答に関係している。イソ型特異的IgG1またはIgG2a抗体の濃度を、最後の免疫化の8日後に回収した血清においてELISAによって測定した。図8は、各実験群について、血清試料中のIgG1とIgG2aレベルと、それぞれのIgG1/IgG2a比を示す。血清IgG応答が対照よりも有意に高いグループについては、プロテオソームまたはOMP:LPSを含むMVの処方物により、MVのみをINまたはIMで投与したグループと比較して低いIgG1/IgG2a比が得られ、これは、プロテオソームおよびOMP:LPSがMV特異的免疫応答を1型の表現形へと再度向けることに有効であることを示している。
【0075】
(実施例17)
(麻疹ウイルス抗原に対する血清抗体の特異性の分析)
血清抗体の抗原特異性を、免疫ブロット分析によって決定した。MV H、F、およびMタンパク質を検出するために、比較用免疫ブロットを設計した(図9)。MV中和抗体を有している血清(INで投与したOMP−LPS−MV抗原ワクチン処方物(3用量)で免疫したマウスから得た)を、非中和抗体を有している血清(IMで投与したプロテオソーム−MV抗原ワクチン処方物(2用量)で免疫化したマウスから得た)と比較した。高い中和活性を有している抗体を含む血清は、MVタンパク質に特異的に結合することができた。対照的に、低い中和活性を有している血清試料は、MV Hタンパク質を検出することができず、MV Mタンパク質を弱く認識した。MV Fタンパク質の認識は、同様の分子の大きさの交差反応性であるVero細胞タンパク質の存在が原因で、非特異的なバックグラウンドの結合を上回って検出することは困難であった。それにもかかわらず、F0/F1バンドの強さは、免疫ブロットを中和抗体と接触させた場合には、非中和抗体と比較して高かった。まとめると、これらの結果は、中和活性のレベルが、MV抗原の認識、例えば、MV Hタンパク質の認識のレベルと相関関係にあることを示している。
【0076】
(実施例18)
(種々の用量の麻疹ウイルス抗原−プロテオソーム:LPS処方物を投与した動物の免疫応答)
この実施例では、種々の鼻腔内用量のプロテオソーム:LPS(IVX908)とともに処方された麻疹ウイルスワクチンを投与したマウスにおける、粘膜および全身性中和抗体免疫応答について記載する。
【0077】
(麻疹抗原の調製)
麻疹ウイルス分割抗原を以下のように調製した。Moratenワクチン株MV(R.Wittes,Connaught Laboratory,Mississauga,ONから譲り受けた)を、10レベルの細胞工業用チャンバー(Nalge Nunc International,Rochester,NY)を使用して、0.01〜0.001の感染多重度(MOI)でVeroミドリザル腎臓細胞中で増殖させた。細胞変性効果がピークの時に、フラスコを1回凍結−融解させた。細胞の破片を遠心分離(2100×g、4℃で20分間)によって除去し;プールした上清を最初に0.45μmのフィルター、その後、0.22μmのフィルターを通して濾過した。濾液を超遠心分離し(10,000×g、4℃で2時間)、ペレットを再度懸濁し、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)溶液中で超音波処理した。タンパク質濃度を、ウシ血清アルブミン画分Vとウシγグロブリン画分II(Pierce Bicinchoninic Acid Protein Assay,Pierce Biotechnology,Rockford,IL)の混合物を用いた標準曲線に基づいて測定した。IVX908との処方の前に、1%の界面活性剤(Mega−10、Bachem AG)をMV抗原調製物に添加し、その後、これを、PBSに対して、Slide−A−Lyzer透析カセット(Pierce,Rockford,IL)中で7日間かけて透析した。
【0078】
(麻疹ウイルス抗原の特徴付け)
MV分割抗原の段階希釈物を、10%のポリアクリルアミドゲル上での電気泳動によって分離し、タンパク質のバンドを、クマシーブルーG−250(Kodak,Rochester,NY)で視覚化した(図10A)。MV Hタンパク質に相当する80kDaのバンドが観察された。予想されたように、種々のFタンパク質のバンドが得られた。F0は60kDaのタンパク質として同定され、タンパク質分解によって処理されたF1サブユニットは41kDaのタンパク質バンドとして見られた。クマシー染色によって同定された他のMV抗原には、Nタンパク質(50〜60kDa)とMタンパク質(38kDa)が含まれていた。MV抗原調製物中の残りのVeroタンパク質の存在(例えば、Vero細胞溶解物中でのみ検出された約70kDaの濃いバンド)もまた、クマシー染色によって観察された。
【0079】
図10Bに示すように、抗原調製物中に存在する個々のMVタンパク質の相対量および絶対量を、Scion Imageソフトウェアを使用したクマシー染色したゲルの定量的デンシトメトリー分析によって見積もった。それぞれのバンドの全タンパク質に対する分率を評価し、H抗原とF抗原に起因する割合を決定した。Hタンパク質とFタンパク質は、MV調製物中の全タンパク質の約30%を占めた。
【0080】
平行なゲル上で泳動したMV抗原を、免疫ブロット分析のためにPVDF膜に移した。膜を、5%の脱脂粉乳−0.1%のTween−20を含むPBS(PBS−T)でブロックし、その後、室温(RT)で1時間、モノクローナル抗Fまたは抗H抗体(Fabian Wild,Institut Pasteur de Lyon,Franceより提供された)とともにインキュベートした。PBS−Tでの洗浄後、PVDF膜をヤギ抗マウスHRP(Jackson Immunoresearch Laboratories,West Grove,PA)に、室温で1時間接触させた。膜をHRP基質中に浸し、PVDF膜へのヤギ抗マウスHRP結合体の結合を、製造業者の説明書(ECLキット、Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)にしたがって行ったECLアッセイを使用して視覚化した。結果を図10Aに示す。
【0081】
(プロテオソームをベースとする麻疹ウイルス(IVX908−MV)の調製)
IVX908(Protollin(商標)としてもまた公知である)を、cGMPガイドラインにしたがって製造した。これは、以前に記載されたように(Rima et al.,Curr.Topics Microbiol.Immunol.191:65−83(1995))透析濾過によって調製された期待される赤痢菌(S.flexneri)ワクチンのプロテオソーム−赤痢菌(S.flexneri)2a LPSロットと同じであった。LPSに対するプロテオソームポーリンの比は、およそ1:1wt/wtであった。髄膜炎菌(N.Meningtidis)ポーリン(Porin)A、ポーリンB、およびクラスIVタンパク質は、それぞれ、全プロテオソームタンパク質含有量の約20%、75%、および5%を占めた。IVX908を、動物への投与の直前に、1:1の比でMV抗原調製物と混合した。
【0082】
(電子顕微鏡によるIVX908−MVの特徴付け)
ワクチン処方物を、ニッケルグリッドの上のairfuge上で5分間遠心分離した。次いで、グリッドを1%のBSAのブロッキング溶液中に5分間浸した。モノクローナル抗H(Chemicon International,Temecula,CA)を、一次抗体として使用した。室温で1時間のインキュベーションの後、グリッドをさらに、1%のBSAで5分間ブロックし、その後、抗マウスIgG−Gold−10nm(Aurion,Wageningen,Netherlands)に対して室温で1時間接触させた。グリッドをPBSと再蒸留水で洗浄し、その後、風乾させた。最後に、グリッドをPTA 3%(pH6.0)(ホスホタングジック酸(phosphotungsic acid)で着色し、日立7100電子顕微鏡を使用して観察した。代表的な電子顕微鏡写真を図10Cに示す。IVX908は、種々の大きさ(100nmから300nm)の丸型の膜構造を示した(図1C)。IVX908構造の表面との金粒子の接近した会合は、ワクチン処方物中でMV抗原がIVX908と会合していることを示した。IVX908と会合していないH抗原もまた観察された。
【0083】
(動物実験の手順および試料の採取)
全ての動物の処理は、マギル大学(McGill University)のAnimal Care and Use Committee(プロトコール#4481)によって承認された。10週齢の雌のBALB/cマウスの21個のグループを使用した(1つのグループあたり5匹の動物)。体重と毒性の兆候(すなわち、毛の状態、猫背の姿勢、脂性肌、眼の分泌物、脱水状態)を、2日ごとに、実験手順が終わるまでモニターした。表1は、研究した種々の実験グループを記載する。ワクチン処方物には、1用量あたり1μg、3μg、および6μgの濃度でMV抗原を含めたが、IVX908の濃度は、全ての処方物について3μg/用量の定量に維持した。PBSを、全てのワクチン処方物について希釈剤として使用した。対照のグループには、IVX908のみ(3μg/用量)、MV抗原のみ(1、3、または6μg/用量)、Vero細胞タンパク質のみ(6μg/用量)、IVX908−Vero細胞タンパク質(6μg/用量)、およびビヒクルPBSを投与した。
【0084】
全てのワクチンを鼻腔内に投与した。免疫化を、自動導入チャンバーを使用したイソフルラン麻酔下で行い、25μlのワクチンを、ピペットゴムと滅菌チップを使用して、鼻腔内に(1つの鼻腔について12.5μl)注入した。マウスを、2週間おきに、1日目と14日目に、3用量を投与するグループについては、28日目にも免疫化した。マウスを、各免疫化の前と、最後の免疫化の10日後(2用量のグループおよび3用量のグループについて、それぞれ、24日目および38日目)に、側部伏在静脈から採血した。IVX908−MVの全ての用量は、初回免疫および追加免疫の両方について十分に寛容であった。行動の変化は記録されず、体重においてもごくわずかな変動しか(例えば、+/−1.0グラム)検出されなかった。IVX908のみ、またはIVX908−MVで鼻腔内に免疫化した動物のうちの少数(<10%)は、油性被毛を有しており、免疫化の5日後までに猫背の姿勢となった。しかし、体重の減少はそれらのマウスにおいては観察されなかった。
【0085】
最終日に、マウスをCO2での窒息によって屠殺し、その後、マウスを心臓の穿刺によって放血させた。鼻と肺の洗浄を、気管の切開を行い、そして12G−カテーテル(Clear−Cath,Abbott,Ireland)を、最初に、主気道に、その後に鼻咽頭に挿入することによって行った。それぞれの位置について、カテーテルを縫合と、0.1%のBSAとプロテアーゼ阻害因子混合物(AEBSF、EDTA、ベスタチン、E−64、ロイペプチン、およびアプロチニン(Sigma,St−Louis,MI)の混合物を含む)を含む1mlのPBSによって固定した。洗浄液を、肺洗浄液の吸引、または鼻孔から垂れる液を集めることによって回収した。全ての液体を、使用するまで−20℃で保存した。最終日には、脾臓を無菌操作によって取り出し、単細胞懸濁液を、70μmのNylon細胞ストレーナー(BD Falcon)を使用して調製した。脾細胞を、10%のウシ胎児血清(GIBCO)と1μg/mlのゲンタマイシン(Wisent)を補充したRPMI 1640(Wisent)中に再度懸濁した。
【0086】
(表1 実験グループの詳細)
【0087】
【表1】
(ELISAによるMV特異的抗体の定量)
血清および粘膜のMV特異的抗体応答を、定量的ELISAによって測定した。血清中の全IgGおよび特異的IgGイソ型(IgG1、IgG2a)を測定した。鼻洗浄液および肺洗浄液中のMV特異的IgAレベルを決定した。丸底の96ウェルマイクロタイタープレート(Greiner,MJS Biolynx,Brockville,ON)を、炭酸−重炭酸緩衝液(pH9.6)中に希釈した1μg/mlの超音波処理した全MV抗原で、4℃で一晩コーティングした。プレートを、2%の脱脂粉乳−PBS−Tでブロックし、その後、試料の希釈物を2連で添加し、37℃で2時間インキュベートした。PBS−Tでの洗浄後、二次標識抗体を、37℃で1時間かけて添加した。二次抗体には、ヤギ抗マウスIgG HRP(Pharmingen BD,San Diego,CA)、ヤギ抗マウスIgG1−HRP、ヤギ抗マウスIgG2a−HRP、およびヤギ抗−マウスIgG2b−HRP(Southern Biotechnologies Associates,Birmingham,AL)を含めた。IgAの検出のためには、ラット抗マウスIgA−ビオチン(Pharmingen,BD,San Diego,CA)を二次抗体として使用し、続いて、ストレプトアビジン−HRP(Jackson Immunoresearch Laboratories,West Grove,PA)を使用した。アッセイを、TM Blue基質(Serologicals Corporation,Norcross,GA)の添加によって完了させた。反応を、0.2Mの硫酸(Sigma−Aldrich Canada,Oakville,Ontario)を使用して停止させた。各試料の段階希釈物を測定し、標準曲線の25%〜75%の範囲に入るデータ点の光学密度の値を選択して、最終的な推定濃度を得た。450nmでの光学密度の値の平均と標準偏差(S.D.)の値を、自動マイクロプレートリーダー(Bio−Rad Laboratories,Richmond,CA)から計算した。試験試料中の抗体濃度を、精製したマウスIgG(Sigma−Aldrich Canada,Oakville,Ontario)または精製したマウスIgA(Bethyl Laboratories,Montgomery,TX)を使用してそれぞれのプレートについて作製した標準曲線から計算した。値は、血清または肺/鼻洗浄液1ml中の特異的抗体のngを示す。プロテオソームをベースとするワクチンで免疫化した後のセロコンバーションを、ワクチン前のレベルからの少なくとも4倍の抗体力価の上昇と定義した。
【0088】
免疫化した日(1日目、14日目、28日目)、および最終日(24日目または38日目)にELISAによって測定したBalb/cマウスの血清中に存在する全MV特異的IgGを示すデータを、図11に提供する。値は、平均IgG濃度+/−SEMとして示す。血清抗体は、第1回目のワクチン用量の後では、全ての研究グループにおいてほとんどの動物において検出できなかった。IVX908−MVで免疫化した動物は、2回目の免疫化の後にセロコンバーションし(図11A)、これは、少なくとも1回の追加用量が免疫応答を誘発するために効果的であることを示唆している。有意に高いレベルのMV特異的血清IgGが、3回目の免疫を投与した動物において得られた。血清IgGレベルの上昇は、ワクチン処方物に使用されるMV分割抗原の濃度に応じて変化した。MV抗原の用量と血清IgGとの間の相関係数(R2)は、2用量の後では0.938であり、3用量の後では0.934であった。MVのみ(図11Aに示した6μgのMV対照)、IVX908のみ、6μgのVeroタンパク質、IVX−Vero、およびPBSは、検出できなかったか、または非常に低いレベルのIgGを有していた(1〜500ng/mlの範囲の値)(一元配置分散分析(ANOVA)およびボンフェローニ多重比較試験によってp<0.05)。
【0089】
特異的イソ型抗体についてのELISAの結果を、3用量のIVX−908−MVを投与した動物の最後の採血の血清試料について行った(図11B)。図11Bの左側のパネルの値は、5匹の動物の平均濃度+/−SDを示す。IgG1/IgG2aの平均レベルの比を計算し、値を示し、図11Bの右側のパネルにおいてグラフにプロットした。
【0090】
図12は、最後の免疫化の10日後(2用量または3用量での免疫化についてそれぞれ、24日目または38日目)に動物から得られた鼻洗浄液および肺洗浄液中のIgAのレベルを示すELISAデータを示す。2用量の後、MV特異的IgAのセロコンバーションは、6μgのMV分割抗原を含むIVX908−MVで免疫化した動物においてのみ観察された。このことは、MV特異的粘膜応答の誘導が抗原用量依存的であることを示唆している。用量依存性はまた、3用量を投与した動物においても観察された。3用量を投与した動物についての、鼻洗浄液および肺洗浄液中のMV用量とIgAレベルとの間の相関係数は、それぞれ、0.977および0.826であった。MV特異的IgAレベルは、肺洗浄液と鼻洗浄液において同様であり、このことは、Protollin−MVによって、下部および上部気道の両方において粘膜応答が誘発されたことを示唆している。IgAのレベルは、全ての対照グループの呼吸粘膜分泌物中では低いままであったか、または検出不可能であった。
【0091】
(プラーク減少中和(PRN)アッセイ)
MV中和抗体を、以前に記載された(Ward et al.,Diagn.Microbiol.Infect.Dis.33:147−52(1999))プラーク減少中和(PRN)アッセイによって評価した。簡単に説明すると、Vero細胞を、90〜95%の細胞集密度が得られるように24ウェルプレート(Falcon,BD Biosciences,Mississauga,ON,Canada)に播種した。血清試料を、各実験グループの5匹の動物からプールし、使用前に、56℃で40分間熱不活化させた。血清の段階希釈物を混合し、37℃で90分間、継代数の低いEdmonston MV(25〜35プラーク形成単位)とともにインキュベートした。その後、細胞集密状態のVero細胞の2連のウェルを、100μlの血清の2倍の段階希釈物+MV混合物に感染させた。LiebovitzのL−15培地(Gibco/Life Technologies,Grand Island,NY)中の16%のメチルセルロースの重層を、感染させた細胞に適用し、その後、細胞を5%のCO2中で37℃で4日間インキュベートした。4%のニュートラルレッドの溶液を添加して、単層を染色し、細胞をさらに24時間インキュベートした。その後、細胞の単層を、3.7%のホルマリンで10分間固定した。目で見ることができるプラークを数えて、プラーク形成単位(PFU)の数を決定した。ウイルスのみを陰性対照とし、そして麻疹ウイルスワクチンをワクチン接種した個体に由来するヒトの血清を陽性対照とした。PRN値をKaber法を使用して得、中和の50%終点を決定した。PRN値は、プラークの数が≧50%減少した血清希釈の逆数のlog2として表される。比較のために、ヒトの血清防御は、PRN値>120として定義されている(Chen et al.,J.Infect.Dis.162:1036−42(1990))。PRN値を抗体濃度に対して標準化した。2用量および3用量のIVX908:MV抗原ワクチンを投与した後に動物から得られた血清試料の中和活性のグラフによる表示を、それぞれ、図13Aおよび図13Bに示す。全てのMV分割抗原濃度で、2用量のIVX908−MVが、有意な血清中和活性を誘発するために十分であった。さらなる用量のIVX908−MVによって、血清中和応答が増強された。鼻洗浄液および肺洗浄液中に存在する抗体による有意な中和はまた、最も高いMV分割抗原濃度(6μg)を投与したグループにおいて、および3μg/用量の肺洗浄液中でも観察された。対照グループに由来する血清および粘膜試料は、いずれの時点においても中和活性を有していなかった。
【0092】
(血清中の抗Hタンパク質抗体の検出)
血清を、3用量の高い中和活性を有している、1用量あたり6μgのIVX908−MVを投与した動物から回収し、MV抗原に特異的な抗体を検出するための免疫ブロットによって分析した。HおよびF MV抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体を使用したMV分割抗原の免疫ブロット分析(上記の調製方法を参照のこと)もまた行った。MV分割抗原、Veroタンパク質、およびOMPプロテオソームの調製物をSDS−PAGEによって分離し、分離した抗原の免疫ブロットを上記のように行った。図14に示すように、IVX908−MVで免疫化したマウスから回収した血清は、麻疹ウイルスHタンパク質(80kDa);麻疹ウイルスF0タンパク質(50〜60kDa);麻疹ウイルスF1タンパク質(41kDa);髄膜炎菌(N.meningitidis)OMP Por A(45kDa);および髄膜炎菌(N.meningitidis)OMP Por B(33kDa)を認識した。
【0093】
(ELISPOTによるサイトカインの検出)
マウスにおいては、血清IgG1はTH2型応答に関係しており、一方、血清IgG2aはTH1型応答に関係している(Maassen et al.,Vaccine 21:2751−57(2003))。最後のワクチン用量の10日後に、脾臓を全てのマウスから得た。単核細胞を、70μmのNylon細胞ストレーナー(BD Falcon)を通して処理することによって脾臓から単離し、単細胞懸濁液を得た。1つの実験グループあたり5匹の動物(表1を参照のこと)に由来する脾細胞をプールした。脾細胞によるIFNγ分泌のMV特異的刺激を、ELIPSOTによって定量した(Enzyme Linked ImmunoSPOT)(MABTECH,Nacka、Sweden)。脾細胞を、炭酸/重炭酸緩衝液(pH9.6)中に希釈した抗IFNγモノクローナル抗体クローンAN−18の5μg/mlでコーティングしたMultiScreen(商標)Immunobilon−Pベース96ウェルプレート(Millipore,Billerica,MA)中に100,000細胞/ウェルの密度で播種した。脾細胞を、種々の濃度のMV分割抗原(0.1から10μg)で72時間刺激した。PHA(5μg/mL)を陽性対照として使用した。Veroタンパク質調製物(10μg/mL)と培養培地を陰性対照として使用した。結果を、陰性対照の値を引き算した後、スポット形成細胞(SFC)/100万個の脾細胞として表す。陰性対照は、ほとんどの実験において1つのウェルあたり5未満のスポットを生じた(平均=1.3±1.2)。実験用のウェルは、5より多いスポット/ウェルが存在する(平均よりも>3 SD)場合に、ポジティブとみなした。Veroタンパク質調製物のみによって誘導されたスポットの平均数(陰性対照値)を、種々の濃度のMV分割抗原によって誘導されたスポットの平均数から引き算し、これを、100,000個の細胞あたりのサイトカインスポット形成T細胞サブセットの数に対して較正した(図15)。MV分割抗原の、対照グループ(IVXのみ、MVのみ、PBS)に由来する脾細胞とのインキュベーションによっては、スポット形成は生じなかった。これらのデータは、鼻腔内に投与されたIVX908−MVがMV特異的IFNγ応答を誘導する能力を有していることを示している。値は、3連の実験の平均を表す(*p<0.05 不等分散の片側t検定)。
【0094】
この実施例の実験についての統計学的分析を、Instat(GraphPad Software,San Diego,CA)を使用して行った。種々の試験グループについて得られた平均を、ボンフェローニ多重比較ANOVAを使用して比較した。全ての試験において、<0.05のp値を統計学的に有意とみなした。
【0095】
(実施例19)
(DNAワクチンで感作し、IVX908で追加免疫したサルにおける免疫応答)
この実施例では、麻疹DNAワクチンで免疫し、その後、IVX908を鼻腔内に追加免疫した幼若アカゲザルにおける免疫応答を記載する。この研究の全ての動物を、実験用動物の適切な世話についての手順およびプロトコールにしたがって世話し、処置した。
【0096】
幼若アカゲザル(麻疹血清反応陰性)のグループに、DNAワクチン構築物での2回の感作免疫を投与し、その後、弱毒化麻疹ワクチンまたはIVX908−MVのいずれかで追加免疫した。DNAワクチン構築物には、MV Hタンパク質をコードするDNAを含むプラスミド(pMSINH)と、MV Hタンパク質およびFタンパク質をコードするDNAを含む2シストロン性プラスミド(pMSINH−FdU)を含めた。プラスミドを、当該分野で公知の方法にしたがって調製した。第3のDNAワクチン、CVD 1208(pMSIN/HF)を、赤痢菌(Shigella flexneri)2a株CVD 1208を、Hタンパク質とFタンパク質をコードするプラスミドで、Pasetti et al.(J.Virol.77:5209−17(2003))に記載されている方法と同様の手順にしたがってトランスフェクトすることによって調製した。動物に、0日目と28日目に、DNAワクチンで2回の感作免疫を受けさせた。pMSINHおよびpMSINH−FdUのそれぞれの感作用量は、全部で1mgであり、2本の異なる脚にBiojector(登録商標)(Bioject Medical Technologies,Inc.,Bedminster,NJ)を使用して500μgのアリコートを皮内に(i.d.)投与した。CVD 1208(pMSIN/HF)細菌を、鼻腔内に(i.n.)投与した。59日目に、動物に弱毒化麻疹ワクチン(例えば、標準的なプロトコールにしたがって弱毒化したSchwarz株またはEdmonston株(ATCC,Manassan,VA))のいずれかを、当該分野で公知の方法にしたがってエアゾールによって追加免疫を投与したか、あるいは、鼻腔内(i.n.)に投与したIVX908−MV(全部で50μg、片側の鼻孔に25μg)で追加免疫した。追加免疫を、59日目に投与した。対照には、(1)PBSでの2回の感作免疫、その後の弱毒化麻疹ワクチンのエアゾール投与による追加免疫;(2)PBSでの2回の感作免疫、その後のIVX908での追加免疫を含めた。免疫化プロトコールの概要を表2に示す。
【0097】
(表2 動物のグループと免疫化スケジュール)
【0098】
【表2】
血清試料を、感作免疫の前に、−7日目および0日目(採決前)にサルから得た。その後、動物に最初の感作免疫を投与した後に、数日おき、1週間おき、または2週間に1回、血清を回収した。
【0099】
血清中のMV抗原特異的IgG抗体の存在を、ELISAによって決定した。ELISAは、当業者に公知の標準的な手順にしたがって行った。MV溶解物(Advanced Biotechnology,Colmbia,MD)。表3は、0日目から73日目まで、および0日目から91日目までの抗MV抗原力価の倍加を示す。
【0100】
(表3 麻疹抗原特異的IgG応答)
【0101】
【表3】
麻疹ウイルス抗原特異的IFNγを、血液を分画するための当該分野で公知の方法にしたがって動物から単離した末梢血単核細胞(PBMC)を使用して決定した。PBMCをMV溶解物(Advanced Biotechnology,Colmbia,MD)(5μg/ml)で、予めIFNγ抗体(Mabtech)でコーティングしておいたニトロセルロースプレート中で刺激した。106個のPBMCあたりのスポット形成細胞の平均数として表した結果を、表4に示す。
【0102】
(表4 幼若アカゲザルにおける麻疹ウイルス特異的IFNγ応答)
【0103】
【表4】
動物から回収した血清を、当該分野で公知であり実施例18に記載する方法にしたがって行ったPRNアッセイにおいて中和活性について分析した。個々のサルについての結果を、表5に示す。比較のために、ヒトの血清防御は、PRN値>120として定義されている(Chen et al.,J.Infect.Dis.162:1036−42(1990))。
【0104】
7匹の動物にIVX908−MVを投与し、全ての動物が全く症状を示さなかった。このことは、IVX908−MV処方物には全く毒性がなく、動物に有害な反応を全く生じないことを示している。したがって、IVX908−MV麻疹ワクチンは、動物に安全に投与され、特異的なウイルス中和免疫応答を誘導する。
【0105】
IVX908−MV麻疹ワクチンの、動物が麻疹感染の臨床的な症状を発現することを防ぐ能力を、追加免疫のおよそ1年後に、麻疹ウイルス株で、表2に示したグループにおいてサルをチャレンジすることによって決定した。動物を、麻疹感染を示す兆候についてモニターし、ウイルス負荷を決定した。体液性免疫応答(全身性および粘膜の両方)を、血清と、鼻洗浄液および肺洗浄液中の免疫グロブリンレベルを測定するための本明細書中に記載した方法によって決定した。動物において誘導される細胞性応答は、当該分野で公知であり、本明細書中に記載される方法によって決定した。
【0106】
(表5 免疫化マカク由来血清中のMV中和抗体)
【0107】
【表5−1】
【0108】
【表5−2】
上記から、本発明の特異的な実施形態が、説明の目的のために本明細書中に記載されているが、種々の変更を、本発明の精神および範囲を逸脱することなく行うことができることが明らかである。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲による場合を除いて、限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1A】図1AおよびBは、プロテオソームのバルク材料の製造についての2つの実施形態を示す(それぞれ、フローチャート1Aおよびフローチャート1B)
【図1B】図1AおよびBは、プロテオソームのバルク材料の製造についての2つの実施形態を示す(それぞれ、フローチャート1Aおよびフローチャート1B)
【図2】図2は、フレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)2a LPSの製造のためのスキームを示す(フローチャート2)。
【図3】図3は、IVX−908プロテオソーム−LPSアジュバントの製造のためのスキームを示す(フローチャート3)。
【図4】図4Aおよび4Bは、麻疹ウイルスFタンパク質とHタンパク質が、免疫ブロット分析において麻疹ウイルス分割抗原調製物中で検出可能であることを示す。麻疹ウイルス分割抗原調製物の免疫ブロットを、Hタンパク質に特異的に結合する抗体で(図4A、「H」で示したレーン)、そしてFタンパク質に特異的に結合する抗体(図4A、「F」で示したレーン)でプローブした。抗Fタンパク質抗体もまた、Vero細胞抽出物の免疫ブロットをプローブするためにも使用した。麻疹ウイルス分割抗原調製物のクマシーブルーで染色したゲルは、図4Aの一番右寄りのレーンに示されている。図4Bは、クマシーブルーで染色したゲルの定量的デンシトメトリー分析を示す。
【図5A】図5は、プロジュバントまたはOMP−LPSを用いた、およびそれらを用いない、SDS−PAGEおよび電子顕微鏡によるMV抗原調製物の分析を示す。図5Aでは、左側のパネルは、以下に列挙された試料のクマシーブルーで染色したSDS−PAGEゲルであり、中央のパネルは抗Hタンパク質モノクローナル抗体でプローブした免疫ブロットを示し、右側のパネルは、抗Fタンパク質モノクローナル抗体でプローブした免疫ブロットを示す。レーン1:MV;レーン2:MVの可溶性画分;レーン3:MVの不溶性画分;レーン4:MV+OMP;レーン5:MV+OMPの可溶性画分;レーン6:MV+OMPの不溶性画分;レーン7:OMPのみ。図5Bは、プロテオソーム:MV調製物(Pro−MV)中、およびOMP−LPS−MV調製物中のHタンパク質の存在を示す。
【図5B】図5は、プロジュバントまたはOMP−LPSを用いた、およびそれらを用いない、SDS−PAGEおよび電子顕微鏡によるMV抗原調製物の分析を示す。図5Aでは、左側のパネルは、以下に列挙された試料のクマシーブルーで染色したSDS−PAGEゲルであり、中央のパネルは抗Hタンパク質モノクローナル抗体でプローブした免疫ブロットを示し、右側のパネルは、抗Fタンパク質モノクローナル抗体でプローブした免疫ブロットを示す。レーン1:MV;レーン2:MVの可溶性画分;レーン3:MVの不溶性画分;レーン4:MV+OMP;レーン5:MV+OMPの可溶性画分;レーン6:MV+OMPの不溶性画分;レーン7:OMPのみ。図5Bは、プロテオソーム:MV調製物(Pro−MV)中、およびOMP−LPS−MV調製物中のHタンパク質の存在を示す。
【図6A】図6A〜6Cは、MV分割抗原ワクチンを投与した動物中での血清IgGおよび粘膜IgAのレベルのグラフ表示を示す。図6Aは、プロテオソーム:MVを鼻腔内に(IN)投与したマウスにおける免疫グロブリンレベルを示す。図6Bは、プロテオソーム:MVを筋肉内に(IM)投与したマウスにおける免疫グロブリンレベルを示す。図6Cは、OMP−LPS−MVを鼻腔内に(IN)投与したマウスにおける免疫グロブリンレベルを示す。
【図6B】図6A〜6Cは、MV分割抗原ワクチンを投与した動物中での血清IgGおよび粘膜IgAのレベルのグラフ表示を示す。図6Aは、プロテオソーム:MVを鼻腔内に(IN)投与したマウスにおける免疫グロブリンレベルを示す。図6Bは、プロテオソーム:MVを筋肉内に(IM)投与したマウスにおける免疫グロブリンレベルを示す。図6Cは、OMP−LPS−MVを鼻腔内に(IN)投与したマウスにおける免疫グロブリンレベルを示す。
【図6C】図6A〜6Cは、MV分割抗原ワクチンを投与した動物中での血清IgGおよび粘膜IgAのレベルのグラフ表示を示す。図6Aは、プロテオソーム:MVを鼻腔内に(IN)投与したマウスにおける免疫グロブリンレベルを示す。図6Bは、プロテオソーム:MVを筋肉内に(IM)投与したマウスにおける免疫グロブリンレベルを示す。図6Cは、OMP−LPS−MVを鼻腔内に(IN)投与したマウスにおける免疫グロブリンレベルを示す。
【図7】図7は、プロテオソーム:MVで鼻腔内に(Pro−MV IN)(上段のパネル);プロテオソーム:MVで筋肉内に(Pro−MV IM)(中段のパネル);およびOMP−LPS−MVで鼻腔内に(IN)(下段のパネル)免疫化した動物の、血清中の抗体と、鼻および肺の洗浄液中の粘膜抗体のプラーク減少中和(PRN)活性のグラフ表示を示す。
【図8】図8は、TH応答のタイプの指標としての特異的IgGイソ型のレベルのグラフ表示を示す。動物は、プロテオソーム:MVで鼻腔内に(Pro−MV IN)(上段のパネル);プロテオソーム:MVで筋肉内に(Pro−MV IM)(中段のパネル);およびOMP−LPS−MVで鼻腔内に(IN)(下段のパネル)免疫化した。
【図9】図9は、Hタンパク質に特異的なモノクローナル抗体(1番目のレーン);Fタンパク質に特異的なモノクローナル抗体(2番目のレーン);Mタンパク質に特異的なモノクローナル抗体でプローブしたMV抗原の免疫ブロットを示す。PRNアッセイにおいて高い中和活性を有していた血清試料を、MVタンパク質(4番目のレーン)およびVeroタンパク質(5番目のレーン)の免疫ブロットに使用し、低い中和抗体または低い中和活性を有している血清試料を、MVタンパク質(6番目のレーン)およびVeroタンパク質(7番目のレーン)に使用した。
【図10A】図10は、麻疹ウイルス分割抗原調製物の免疫ブロット分析と電子顕微鏡分析を示す。図10Aは、麻疹ウイルス分割抗原調製物を抗Hタンパク質モノクローナル抗体で(レーン「H」)または抗Fタンパク質モノクローナル抗体で(レーン「F」)でプローブした免疫ブロットを示す。麻疹ウイルス抗原調製物はまた、クマシーブルーでも染色した(レーン「クマシー」)。図10Bには、SDS−PAGEによって検出したタンパク質バンドのデンシトメトリー分析を示す。図10Cは、IVX908のみ(左側のパネル)と、麻疹ウイルス抗原調製物と組み合わせ、抗Hタンパク質モノクローナル抗体で検出したIVX908の電子顕微鏡分析を示す。
【図10B】図10は、麻疹ウイルス分割抗原調製物の免疫ブロット分析と電子顕微鏡分析を示す。図10Aは、麻疹ウイルス分割抗原調製物を抗Hタンパク質モノクローナル抗体で(レーン「H」)または抗Fタンパク質モノクローナル抗体で(レーン「F」)でプローブした免疫ブロットを示す。麻疹ウイルス抗原調製物はまた、クマシーブルーでも染色した(レーン「クマシー」)。図10Bには、SDS−PAGEによって検出したタンパク質バンドのデンシトメトリー分析を示す。図10Cは、IVX908のみ(左側のパネル)と、麻疹ウイルス抗原調製物と組み合わせ、抗Hタンパク質モノクローナル抗体で検出したIVX908の電子顕微鏡分析を示す。
【図10C】図10は、麻疹ウイルス分割抗原調製物の免疫ブロット分析と電子顕微鏡分析を示す。図10Aは、麻疹ウイルス分割抗原調製物を抗Hタンパク質モノクローナル抗体で(レーン「H」)または抗Fタンパク質モノクローナル抗体で(レーン「F」)でプローブした免疫ブロットを示す。麻疹ウイルス抗原調製物はまた、クマシーブルーでも染色した(レーン「クマシー」)。図10Bには、SDS−PAGEによって検出したタンパク質バンドのデンシトメトリー分析を示す。図10Cは、IVX908のみ(左側のパネル)と、麻疹ウイルス抗原調製物と組み合わせ、抗Hタンパク質モノクローナル抗体で検出したIVX908の電子顕微鏡分析を示す。
【図11】図11は、種々の用量のIVX908−MVで免疫化したマウスの血清中のIgGのELISAによる定量を示す。図11A:免疫化後14日、28日、および38日目に動物から得た血清中のMV特異的IgG(ng/ml)。図11B、左側のパネル:血清中のIgG1およびIgG2aの検出;図11B、右側のパネル:マウスにおけるIgG1:IgG2aの割合。
【図12】図12は、2用量を投与した動物については24日目(図12A)、また、3用量を投与した動物については38日目(図12B)である、IVX908−MVでの最後の免疫化の10日後に動物から得た鼻および肺の洗浄液中のIgAのレベルを示すELISAデータを示す。*によって示す統計学的優位性は、一元配置分散分析(ANOVA)およびボンフェローニ多重比較試験によるp<0.05を示す。
【図13】図13は、2用量(図13A)および3用量(図13B)のIVX908−MVを投与した後に動物から得た血清試料のプラーク減少中和活性のグラフ表示を示す。*によって示す統計学的優位性は、一元配置分散分析(ANOVA)およびボンフェローニ多重比較試験によるp<0.05を示す。
【図14】図14は、IVX908−MVで免疫化したマウスから採取した血清中の麻疹ウイルス抗原に特異的に結合する抗体の存在を決定するための免疫ブロット分析を示す。1番目のレーン:抗Hタンパク質モノクローナル抗体でブロットした分割MV抗原調製物;2番目のレーン:抗Fタンパク質モノクローナル抗体でブロットした分割MV抗原調製物;3番目のレーン:マウスの血清でブロットした分割MV抗原調製物;4番目のレーン:マウスの血清でブロットしたVero細胞調製物;5番目のレーン:マウスの血清でブロットしたプロテオソーム。検出したタンパク質の分子量は以下のとおりである:麻疹ウイルスHタンパク質(80kDa);麻疹ウイルスF0タンパク質(50〜60kDa);麻疹ウイルスF1タンパク質(41kDa);髄膜炎菌(N.meningitidis)OMP Por A(45kDa);および髄膜炎菌(N.meningitidis)OMP Por B(33kDa)。
【図15】図15は、2用量(図15A)および3用量(図15B)のIVX908−MVを投与したマウスから単離し、その後、MV分割抗原で刺激した脾細胞中でのインターフェロンγ(IFNγ)の生産を示す。*によって示す統計学的優位性は、不等分散の片側t検定によるp<0.05を示す。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般的には、ワクチンと、感染性疾患の処置または予防に関する。より具体的には、本発明は、プロテオソームアジュバント、または麻疹ウイルス抗原とともに処方されるプロテオソーム:リポ糖アジュバントを含む組成物、ならびにそれらの治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連分野の説明)
麻疹は、伝染性の強い疾患であり、毎年およそ4000万人がこれに感染し、これによって90万人を超える人が死亡している(WHO/UNICEF,Joint WHO/UNICEF statement on Vitamin A for Measles,Weekly Epidemiology Record 19:133,1987)。2001年には、世界保健機構(WHO)とUNICEFによって、開発途上国向けのワクチン接種キャンペーンを通じて、麻疹による死亡数を2005年までに少なくとも50%減少させるためのプログラムが発表された。これは、世界中の80%以上において80%以上が確保されることによって達成される(すなわち;非特許文献1)。現在使用されている生の弱毒化ワクチンは有効ではあるが、深刻な限界がある。具体的には、中和母体抗体の存在が原因で、しばしば、9ヶ月未満の月齢の子供の防御ができないことがある(非特許文献2;非特許文献3)。麻疹ウイルス(MV)に伴う死亡の30%から50%が、この受攻期に生じる。母体抗麻疹抗体力価は非常に幅広く変化し、受動的に獲得した抗体は、通常、3から4週間の半減期を有する。結果として、乳児は、誕生から1歳までの間のほぼいずれかの時点で、麻疹にかかりやすくなる(非特許文献4)。
【0003】
現在利用されている生の弱毒化ワクチンを使用して母体抗体による妨害をバイパスするいくつかの試みが行われてきた。高力価の生(感染性)の麻疹ウイルスワクチン(標準的なワクチン接種のついての103.4プラーク形成単位(PFU)と比較してワクチン株ウイルスの106.3PFUまでを有している)が試みられ(非特許文献3)、エアゾール投与が試みられた(非特許文献5)。前者のアプローチによっては、3ヶ月程度の月齢の乳児はうまく防御することができたが、これには、あまり理解されていない理由による幼児死亡率の増大が伴った。このような致死率は、生の麻疹ウイルスまたは弱毒化麻疹ウイルスを含むワクチンの投与に関係している可能性がある。生ワクチンMV株のエアゾール投与を用いた早い段階での結果もまた、期待された。しかし、極めて高度な送達システムが必要とされる投与は、非常に面倒である。認められてはいないが、これらの試みにより、2〜3ヶ月の月齢の乳児にはMV抗原に反応する能力が生まれつき備わっていること、および粘膜免疫は母体抗体の妨害に左右されないことが明らかにされている。
【0004】
宿主中で防御免疫応答を誘導する抗原の能力は、抗原を、免疫賦活剤および/またはアジュバントと混合することによって高めることができる。ミョウバンをベースとするアジュバントは、認可の注射可能なヒト用ワクチンについてほぼ例外なく使用されている。しかし、ミョウバンは特定のタイプの血清抗体反応(2型)を高めるが、他のタイプの抗体反応(1型)を高めることはほとんどなく、例えば、細胞内病原体に対する防御について重要である細胞性の免疫応答の十分ではない活性化因子である。
【非特許文献1】Orensteinら,「Am.J.Public Health(2000)第90巻:p.1521
【非特許文献2】Albrechtら、「J.Pediatr.」(1977)、第91巻:p.715
【非特許文献3】Markowitzら、「N.Engl.J.Med.」(1990)、第322巻:p.580
【非特許文献4】Crowe、「Clin.Infect.Dis.」(2001)、第33巻:p.1720
【非特許文献5】Bennettら、「Bull.World Health Organ.」(2002)、第80巻:p.806
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、麻疹感染に対して治療的に有効である組成物、具体的には、ワクチンとして機能し、防御免疫を誘発することができるそのような組成物を同定し、開発する必要がある。さらに、ヒトに対して安全であり、防御性の全身的、および粘膜、体液性、および細胞性の免疫応答の誘導を増強することができる強力なアジュバントを含むワクチン処方物、具体的には、サブユニットワクチン処方物が必要とされている。本発明は、このような必要性を満たし、さらに他の関連する利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明により、プロテオソーム処方麻疹ワクチン組成物とその治療的使用が提供される。これらのワクチンは、麻疹感染を処置または予防するための防御免疫応答を簡単に生じ、そのような防御免疫反応を誘発することができる。麻疹抗原には、1つ以上の組み換えまたは合成によって生産された麻疹ポリペプチドが含まれる場合があり、また、麻疹ウイルス粒子または感染した宿主細胞から単離された1つ以上の麻疹ポリペプチドが含まれる場合もある。麻疹抗原には、少なくとも1つの麻疹ウイルスポリペプチド、例えば、麻疹ウイルスHタンパク質またはFタンパク質が含まれ、また、中和抗体反応もしくは細胞性免疫を誘発することができる、2つ以上の麻疹ウイルス抗原が含まれる場合もある。プロテオソーム処方アジュバントには、グラム陰性細菌(プロジュバント)から得られた外膜タンパク質、または外膜タンパク質とリポ糖の組み合わせ(OMP−LPS)が含まれる場合もある。
【0007】
1つの態様においては、本発明により、アジュバントと、1つ以上の麻疹ウイルス抗原を含む免疫原性組成物が提供される。ここでは、アジュバントには、プロテオソームとリポ糖が含まれ、少なくとも1つの麻疹抗原がHタンパク質である。特定の実施形態においては、免疫原性組成物には、Fタンパク質とHタンパク質を含む少なくとも2つの麻疹ウイルス抗原が含まれる。他の実施形態においては、1つ以上の麻疹ウイルス抗原は組換え体である麻疹抗原であるか、または麻疹分割抗原(split antigen)である。関連する実施形態においては、麻疹分割抗原は、麻疹ウイルスのMoraten株、Shwarz株、Zagreb株、またはEdmonston株に由来する抗原である。さらに他の実施形態においては、免疫原性組成物のプロテオソームタンパク質の重量パーセントとしてのリポ糖の最終含有量は、約10%から500%までの範囲である。さらに別の実施形態においては、プロテオソームとリポ糖は、同じ細菌から得られるものであるか、または、別の細菌から得られるものである。他の実施形態においては、プロテオソームは、ナイセリア(Neisseria)種に由来する。さらに他の実施形態においては、リポ糖は、赤痢菌属(Shigella)、プレシオモナス属(Plesiomonas)、エシェリキア属(Escherichia)、またはサルモネラ属(Salmonella)の種に由来する。特定の実施形態においては、本発明の免疫原性組成物にはさらに、1つ以上の別の微生物抗原、例えば、ウイルス抗原、細菌抗原、寄生虫抗原、またはそれらの組み合わせが含まれる。特定の実施形態においては、上記免疫原性組成物のいずれかには、さらに、薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤が含まれる。
【0008】
別の実施形態においては、本発明により、アジュバントと1つ以上の麻疹ウイルス抗原を含む免疫原性組成物が提供される。ここでは、アジュバントにはプロテオソームが含まれ、少なくとも1つの麻疹抗原がHタンパク質である。特定の実施形態においては、組成物には、Fタンパク質とHタンパク質を含む少なくとも2つの麻疹ウイルス抗原が含まれる。他の実施形態においては、1つ以上の麻疹ウイルス抗原は組換え体である麻疹抗原であるか、または麻疹分割抗原である。関連する実施形態においては、麻疹分割抗原は、Moraten株、Shwarz株、Zagreb株、またはEdmonston株に由来する抗原である。他の実施形態においては、プロテオソームは、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)に由来する。さらに他の実施形態においては、麻疹ウイルス抗原に対するプロテオソームの割合は、少なくとも2:1、3:1、または4:1である。特定の実施形態においては、本発明の免疫原性組成物には、さらに、1つ以上の別の微生物抗原、例えば、ウイルス抗原、細菌抗原、寄生虫抗原、またはそれらの組み合わせが含まれる。他の実施形態においては、上記免疫原性組成物のいずれかには、さらに、薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤が含まれる。
【0009】
さらに別の実施形態においては、本発明により、上記の免疫原性組成物のいずれかをそれが必要である被験体に投与することを含む、麻疹感染を処置または予防する方法が提供される。関連する態様においては、本発明は、上記の免疫原性組成物のいずれかをそれが必要である被験体に投与することを含む、免疫応答を誘発する方法に関する。特定の実施形態においては、免疫応答には、粘膜免疫応答が含まれる。他の実施形態においては、免疫応答には、細胞性応答が含まれる。特定の実施形態においては、上記の免疫原性組成物は、粘膜、腸内、非経口、経皮、経粘膜的、鼻腔内、または吸入から選択される経路によって投与され得る。
【0010】
1つの実施形態においては、本発明により、少なくとも1つの麻疹ウイルス抗原をコードするポリヌクレオチドに対して動作可能であるように連結された少なくとも1つのプロモーターを含む組み換え発現ベクターをそれが必要である被験体に投与すること、その後、少なくとも1回、上記の免疫原性組成物のいずれか1つの組成物を投与することを含む、免疫応答を誘発するための方法が提供される。特定の実施形態においては、少なくとも1つの麻疹ウイルス抗原がHタンパク質である;別の実施形態においては、ポリヌクレオチドは、Hタンパク質とFタンパク質である少なくとも2つの麻疹ウイルス抗原をコードする。別の実施形態においては、この方法には、組成物を鼻腔内に投与することが含まれる。特定の実施形態においては、免疫応答は全身性体液性応答;粘膜免疫応答(ここでは、粘膜応答には、IgA免疫グロブリンの生産が含まれる);および/または細胞性免疫応答である。
【0011】
1つの実施形態においては、少なくとも1つの麻疹ウイルス抗原をコードするポリヌクレオチドに対して動作可能であるように連結された少なくとも1つのプロモーターを含む組み換え発現ベクターを投与すること、その後、少なくとも1回、上記の免疫原性組成物のいずれか1つを投与することを含む、麻疹感染を処置または予防するための方法が提供される。特定の実施形態においては、少なくとも1つの麻疹ウイルス抗原がHタンパク質である;別の実施形態においては、ポリヌクレオチドは、Hタンパク質とFタンパク質である少なくとも2つの麻疹ウイルス抗原をコードする。別の実施形態においては、この方法には、組成物を鼻腔内に投与することが含まれる。特定の実施形態においては、免疫応答は粘膜免疫応答であり、別の実施形態においては、粘膜応答は細胞性免疫応答である。
【0012】
別の実施形態においては、アジュバントと本明細書中に記載される1つ以上の麻疹ウイルス抗原を含む免疫原性組成物は、被験体の麻疹感染を処置または予防するための医薬品の製造に使用することができる。別の実施形態においては、このような免疫原性組成物を、免疫応答を誘発するための医薬品の製造に使用することができる。特定の実施形態においては、免疫応答は全身性体液性応答;粘膜応答(ここでは、粘膜応答には、IgA免疫グロブリンの生産が含まれる);および/または細胞性免疫応答である。
【0013】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の詳細な説明と添付の図面を参照して明らかになるであろう。さらに、公開されている文献についての様々な参照は、それらが本発明のさらに詳細な特定の態様において記載され、したがって、それらの全体が参照により組み入れられることを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
本明細書中に記載される発明は、プロテオソームをベースとするMVワクチン(プロテオソーム:リポ糖(LPS−MVワクチン)の鼻腔内投与が、気道と全身的な抗体応答の両方において粘膜応答を刺激することができるという驚くべき発見に関係する。さらに、本明細書中に記載されるワクチン組成物の動物(マウスおよび幼若アカゲザル(rhesus macaque)を含む)への投与により、組成物は宿主または被験体に安全に投与することができ、観察できる毒性作用または有害な作用を何ら伴わないことが示される。プロテオソームと1つ以上の麻疹ウイルス抗原を含む免疫原性組成物が、本明細書中でさらに詳細に議論される。これらは、麻疹感染を処置または予防するというような治療的な使用、ならびにそれらを調製するための方法に適している。
【0015】
本発明により、プロテオソームをベースとするアジュバントとともに処方された1つ以上の麻疹抗原を含む治療用組成物が提供される。この組成物は、防御免疫応答を誘発するためのワクチンとして使用することができる。背景としては、生の弱毒化麻疹ワクチンが広く使用されており、推奨されている免疫化の月齢は6ヶ月から15ヶ月までの範囲であるが、これはなおも議論中である(Volti et al.,Eur.J.Epidemiol.9:311,1993)。呼吸経路からの免疫化は、より月齢の低い乳児について推奨されているが、このような試みは、中和母体抗体による妨害が原因で(Markowitz et al.,前出)、うまくいかないかまたは実用的ではないかのいずれかであることが証明されている(Khanum et al.,Lancet 1:150,1987)。さらに、現在の生の麻疹ワクチンの使用に関する欠点としては、ウイルスが最初に入り複製する粘膜表面の保護ができないこと、ワクチンの熱安定性が低いこと、注射の前に再構成が必要であること、および注射器具の汚染の危険があること、ならびに、免疫化後に生じる望ましくない副作用または合併症が挙げられる。
【0016】
本明細書中では、任意の濃度範囲、パーセントの範囲、または整数の範囲は、別段の指定のない限りは、記載される範囲内の任意の整数の値を含み、そして適切である場合には、その端数(例えば、整数の10分の1、および100分の1)をも含むように理解される。本明細書中で使用される場合は、「約」または「本質的に〜を含む」は、±15%を意味する。別の表現(例えば、「または」)の使用は、1つ、両方、または別の表現のそれらの任意の組み合わせを意味すると理解されるべきである。本明細書中で使用される場合は、不定冠詞の使用、例えば、「a」または「an」は、名詞または名詞句の単数と複数を言うと理解されるべきである。さらに、本明細書中に記載される個々の組成物、処方物、もしくは化合物、または組成物の種々の成分もしくは組み合わせに由来する組成物、処方物、または化合物のグループ、あるいは、配列、構造、および置換は、組成物または化合物のそれぞれ、または組成物もしくは化合物のグループが個々に示されているかのように、同じ程度で本明細書によって開示されると理解されるべきである。したがって、特定の配列、構造、または置換の選択は、本発明の範囲内である。
【0017】
(麻疹ウイルスポリペプチド免疫原)
本発明は、概して、Hタンパク質、Fタンパク質、Mタンパク質、Nタンパク質、Lタンパク質、Pタンパク質、またはそれらの断片を含む、麻疹ウイルス(MV)ポリペプチド免疫原に関する。これらには、他のポリペプチド(例えば、疎水性アミノ酸配列)への融合体もしくは他の修飾体(例えば、脂質の付加またはグリコシル化)が含まれる。免疫原性MVポリペプチドには、MV感染に対して防御免疫応答(細胞性または体液性)を誘発することができる少なくとも1つのエピトープを有しているそのようなポリペプチドの任意の部分が含まれ得る。本発明の免疫原性ポリペプチドはまた、直線的な形態に並べることも、また、そのような形態で組み合わせることもでき、それぞれの免疫原が繰り返される場合も、また、繰り返されない場合もある。反復は、一回である場合も、また複数回である場合もある。さらに、複数の異なるMV免疫原性ポリペプチド(例えば、種々のHタンパク質、Fタンパク質、またはNタンパク質変異体、あるいはそれらの断片)を選択することができ、防御免疫応答を誘発することにおいて使用される多価ワクチンを提供するように、混合組成物になるように混合または組み合わせることができる。MV感染を処置または予防するため、あるいは、MVポリペプチド免疫原もしくはその断片、またはポリペプチドの組み合わせ(融合タンパク質を含む)を使用して免疫応答を誘発するための方法もまた意図される。
【0018】
MVポリペプチド免疫原またはその断片は、感染した被験体の組織、または培養細胞株のような、種々の生物学的供給源から調製することができる。MVの初代単離物は、例えば、末梢血細胞に由来するものである場合があり、また、気道の分泌物に由来するものである場合もある。好ましくは、単離されたMVは初代細胞培養物(例えば、ヒトの血液、肺、結膜、腎臓、小腸、羊膜、皮膚、筋肉、胸腺間質、包皮、または子宮の細胞、あるいは、サルの腎臓または精巣細胞)上で、あるいは、確立されている細胞株(例えば、Vero、KB、CV−1、BSC−1、B95−8、WI−38、MRC−5、Hep−2、HeLa、またはA549)上で増幅させられる。さらに好ましくは、MVポリペプチド免疫原またはその断片は、当該分野で公知であるかまたは当該分野で後に確立される、確立されたMVワクチン株から調製される。1つの好ましい実施形態においては、MVポリペプチド免疫原またはその断片は、Moraten株、Shwarz株、Zagreb株、またはEdmonston株から調製される。
【0019】
特定の実施形態においては、MVポリペプチド免疫原またはその断片は、完全なウイルス粒子から単離される。本明細書中で使用される場合は、用語「単離された」は、物質がそのもとの環境または自然界における環境から取り出されていることを意味する。例えば、生存している動物または細胞、またはウイルスの中に存在の天然に存在する核酸分子またはポリペプチドは単離されていないが、自然体系において一緒に存在している物質の一部または全てから離されると、これらの核酸分子またはポリペプチドは単離されている。核酸分子は、例えば、ベクターの一部であることもでき、そして/または、そのような核酸もしくはポリペプチドは組成物の一部であることもでき、そしてさらにそのようなベクター中に単離することもでき、また、組成物は、その自然界での環境の一部ではない。他の実施形態においては、MVポリペプチド免疫原またはその断片は、部分的に精製されたもの、または均質になるように精製されたもののいずれかである場合もある。
【0020】
本明細書中に記載され、当該分野で公知であるように、種々の方法を、本発明のMVポリペプチド免疫原またはその断片を単離または精製するために使用することができる。MVは、選択された細胞株、例えば、Vero細胞(アフリカミドリザルの腎臓細胞)またはCV−1上で増殖させることができ、ウイルス粒子は、哺乳動物細胞から部分的または実質的に分離することができる。例えば、MVポリペプチド免疫原またはその断片の粗抽出物を、少なくとも1回の凍結−融解サイクルを行った感染細胞から調製し、遠心分離して細胞の破片を除去し、濾過することができ、そして、ウイルスを、限外濾過によって単離し、超音波処理し、薬学的に許容される希釈液(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水、PBS)中に再懸濁することができる(実施例4を参照のこと)。あるいは、またはこれに加えて、MVポリペプチド免疫原またはその断片を、界面活性剤抽出、またはショ糖密度勾配遠心分離法を使用して単離または精製して、定量化可能なMV免疫原の量を得ることができる。本明細書中で使用される場合は、「麻疹分割抗原」の調製とは、完全な麻疹ウイルス粒子からのMVポリペプチドの分離、単離、または精製をいう。1つの好ましい実施形態においては、MVポリペプチド免疫原またはその断片には、麻疹分割抗原が含まれる。これは、例えば、界面活性剤での可溶化によって調製することができる。
【0021】
本発明はさらに、1つ以上のウイルス抗原を含む特定の処方物に関する。ここでは、ウイルス抗原は、組成物の一部、または脂質ラフトとして知られている成分であり得る。本明細書中で記載されており、当該分野で公知であるように、このような脂質ラフトは、特異的なウイルス抗原を多く含む生物学的に関係している膜(宿主細胞またはウイルス)を提示する場合がある。このような脂質ラフトは、特定の界面活性剤、例えば、オクチルグルコシドまたはメチルβシクロデキストリンでの処理によって解離させて、さらにワクチン処方物を修飾することができる。したがって、脂質ラフトの単離は、特異的な所望される抗原を多く含ませるために使用される場合があり、また、ワクチンの処方を助けるために使用される場合もある。脂質ラフトの存在またはそれが存在しないことは、例えば、免疫原の安定性または免疫学的結果に影響を与える場合がある。
【0022】
本発明により、さらに、融合タンパク質を含む合成のMVポリペプチド免疫原を生産するための方法が提供される。免疫原性ポリペプチド成分は、自動化された手順による合成を含む標準的な化学的方法によって合成することができる。一般的には、免疫原性ポリペプチドまたはペプチドは、標準的な固相Fmoc保護ストラテジーに基づいて、カップリング剤としてHATUを用いて合成される。免疫原性ペプチドは、適切なスカベンジャーを含むトリフルオロ酢酸を用いて、固相樹脂から切り離すことができる。これについてはまた、側鎖官能基の脱保護が行われる。粗免疫原性ペプチドはさらに、分取逆相クロマトグラフィーを使用して精製することができる。他の精製方法、例えば、分配クロマトグラフィー、ゲル濾過、ゲル電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー、または他の当業者によって行われる方法が使用される場合もある。tBoc保護ストラテジー、種々のカップリング試薬の使用などのような当該分野で公知である他の合成技術を使用して、同様の免疫原性ペプチドが生産される場合もある。さらに、D−またはL−アミノ酸およびそれらの組み合わせを含む任意の天然に存在するアミノ酸またはその誘導体が使用される場合もある。
【0023】
本明細書中で記載される場合は、MVポリペプチド免疫原またはその断片が、組換え体である場合もある。ここでは、所望されるMV免疫原は、組み換え核酸発現構築物中の発現制御配列(例えば、プロモーター、エンハンサー)に対して動作可能であるように連結されたポリヌクレオチドから発現される。例えば、HまたはFまたはNタンパク質免疫原をコードする核酸発現構築物を含む宿主細胞(例えば、バキュロウイルスおよび哺乳動物細胞株)を培養して、組み換えHまたはFまたはNタンパク質免疫原、あるいはそれらの断片を生産することができる(例えば、Puetz et al.,Intl.J.Parasitol.33:525(2003)およびその中で引用されている参考文献を参照のこと;一般的には、Sambrook et al.,(2001)前出を参照のこと)。
【0024】
(ワクチンアジュバント−プロテオソーム(「プロジュバント」およびOMP−LPS))
本発明はまた、1つ以上のMV抗原と、免疫応答を誘発することを助けるかまたは別の方法で協力する別の成分(例えば、アジュバント)を含む、免疫原性組成物に関する。上記のように、現在の生の弱毒化麻疹ワクチンは、中和母体抗体と未熟な乳児免疫系を維持していることが原因で、9ヶ月の月齢より低い乳児においては免疫原性が低い。生の弱毒化麻疹ワクチンの使用に関係する欠点としては、特に、第三世界諸国においては、保存の際の熱安定性が低いことが挙げられる。これは、電力供給が不安定である国において問題となり得る。投与経路は、現在は注射による投与であり、これは、危険な方法で注射が行われると他の疾患の伝染を導く恐れがある。良好なMVワクチンを処方するための多数の努力が行われているにもかかわらず、その必要がある個体を免疫化する、特に、麻疹による感染に対して免疫化するために有効な組成物が依然として必要とされている。
【0025】
生の弱毒化麻疹ウイルスに代わるものは、本発明によって提供されるMVサブユニットワクチン、例えば、本明細書中に記載されているような、分割麻疹抗原調製物とプロテオソームをベースとするアジュバントを含む処方物である。サブユニットMVワクチンの有効性を最大にするために、MV抗原が、強力な免疫賦活剤またはアジュバントと混合される場合がある。例示的なアジュバントとしては、ミョウバン(水酸化アルミニウム、REHYDRAGEL(登録商標))、リン酸アルミニウム、プロテオソームアジュバント(例えば、米国特許第5,726,292号および同第5,985,284号、ならびに米国特許出願公開番号2001/0053368を参照のこと)、ビロソーム、Lipid Aを含むかまたは含まないリポソーム、Detox(Ribi/Corixa)、MF59、あるいは他の油および水エマルジョン型アジュバント(例えば、ナノエマルジョン(例えば、米国特許第5,716,637号を参照のこと)およびサブミクロンエマルジョン(例えば、米国特許第5,961,970号を参照のこと)、ならびにフロイトの完全および不完全アジュバント)が挙げられる。特に好ましいアジュバントはプロテオソームである。
【0026】
プロテオソームは、通常はナイセリア(Neisseria)種に由来するが、他のグラム陰性細菌から導くこともできる外膜タンパク質(OMP)からなる(例えば、Lowell et al.,J.Exp.Med.167:658,1988;Lowell et al.,Science 240:800,1988;Lynch et al.,Biophys.J.45:104,1984;米国特許第5,726,292号;米国特許第4,707,543号を参照のこと)。プロテオソームは、20〜800nmの小胞または小胞様OMPクラスターへと自律的に組み立て、そして、タンパク質抗原(Ag)、具体的には、疎水性部分を有している抗原を非共有的に取り込む、配位する、会合する、または別の方法で協働する能力を有している。プロテオソームは疎水性であり、ヒトへの使用について安全であり、大きさに関して特定のウイルスと同程度である。背景として、理論に拘泥するものではないが、プロテオソームのタンパク質(例えば、抗原)との混合により、抗原とプロテオソームとの間での非共有的な会合または配位を含む組成物が提供される。ここでは、会合または配位は、安定化させるための界面活性剤が、例えば、透析によって選択的に除去されるかまたは減少させられると形成する。本明細書中で使用される場合は、「プロテオソーム」は、グラム陰性細菌、例えば、ナイセリア(Neisseria)種に由来する外膜タンパク質(OMP)の調製物をいう(例えば、Lowell et al.,J.Exp.Med.167:658,1988;Lowell et al.,Science 240:800,1988;Lynch et al.,Biophys.J.45:104,1984;Lowell,「New Generation Vaccines」第2版、Marcell Dekker,Inc.,New York,Basil,Hong Kong,頁193,1997;米国特許第5,726,292号;米国特許第5,985,284号;米国特許第4,707,543号を参照のこと)。これは、MV抗原のような免疫原についての担体またはアジュバントとして有用である。プロテオソームは、当該分野で記載されているように、または本明細書中に記載されるように調製することができる(図1Aおよび1Bのフローチャートを参照のこと)。
【0027】
1つ以上のOMPの溶けた球形のようなOMP組成物を含む小胞または小胞様形態の外膜タンパク質成分を生じる任意の調製方法が、「プロテオソーム」の定義に含まれる。1つの実施形態においては、プロテオソームは、ナイセリア属(Neisseria)の種、より好ましくは、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)に由来する。特定の実施形態においては、プロテオソームは担体ではなくアジュバントである。本明細書中で使用される場合は、アジュバントであるプロテオソームは、「プロジュバント」と呼ばれる場合がある。特定の他の実施形態においては、プロテオソームはアジュバントであり、抗原送達組成物である場合がある。好ましい実施形態においては、本発明のMV免疫原性組成物には、本明細書中に記載される1つ以上のMV抗原(すなわち、MV免疫原またはその断片)とアジュバントが含まれる。ここでは、アジュバントにはプロジュバント(すなわち、プロテオソーム)が含まれる。少なくとも1つの麻疹抗原はHタンパク質である。別の実施形態においては、この処方物には、Fタンパク質とHタンパク質を含む1つ以上の麻疹ウイルス抗原が含まれる。本明細書中に記載されるように、MV抗原は、組換え体である供給源に由来するものであってもよく、また、麻疹分割抗原を含むこともできる。好ましくは、麻疹分割抗原は、ワクチン株、例えば、Moraten株、Shwarz株、Zagreb株、またはEdmonston株から得られる。
【0028】
特定の実施形態においては、本発明により、リポ糖のような免疫賦活剤をさらに含む免疫原性組成物が提供される。すなわち、アジュバントが別の免疫賦活剤を含むように調製される場合もある。例えば、プロジュバントを、本明細書中に記載されるようにリポ糖と混合して、OMP−LPSアジュバントを提供することができる。したがって、OMP−LPSアジュバントは2つの塩基性成分から構成され得る。第1の成分は、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)のようなグラム陰性細菌から調製されたプロテオソームの外膜タンパク質調製物(すなわち、プロジュバント)である。第2の成分はリポ糖の調製物である。本明細書中で使用される場合は、「リポ糖」は、グラム陰性細菌、例えば、フレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)、プレジオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelloides)、または他のグラム陰性細菌(アルカリゲネス属(Alcaligenes)、バクテロイデス属(Bacteroides)、ボルデテラ属(Bordetella)、ボレリア属(Borrellia)、ブルセラ属(Brucella)、カンピロバクター属(Campylobacter)、クラミジア属(Chlamydia)、シトロバクター属(Citrobacter)、エドワードシエラ属(Edwardsiella)、Ehrlicha、エンテロバクター属(Enterobacter)、エシェリキア属(Escherichia、)フランシセラ属(Francisella)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)、ガルドネレラ属(Gardnerella)、ヘモフィラス属(Hemophillus)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、クレブシエラ属(Klebsiella)、レジオネラ属(Legionella)、レプトスピラ属(Leptospira)(レプトスピラ・インテロガンス(Leptospira interrogans)を含む)、モラクセラ属(Moraxella)、モルガネラ属(Morganella)、ナイセリア属(Neiserria)、パスツレラ属(Pasteurella)、プロテウス属(Proteus)、プロビデンシア属(Providencia)、他のプレシオモナス属(Plesiomonas)、ポルフィロモナス属(Porphyromonas)(ポルフィロモナス・ギンギバリス(Porphyromonas gingivalis)を含む)、プレボテラ属(Prevotella)、シュードモナス属(Pseudomonas)、リケッチア属(Rickettsia)、サルモネラ属(Salmonella)、セラチア属(Serratia)、他のシゲラ属(Shigella)、スピリルム属(Spirillum)、ベイヨネラ属(Veillonella)、ビブリオ属(Vibrio)、またはエルシニア属(Yersinia)の種を含む)に由来する、天然に存在しているかまたは修飾されている、リポ多糖またはリポオリゴ糖をいう(まとめて、LPSとも呼ぶ)。リポ糖は、無毒化された形態(すなわち、Lipid Aコアが除去されている)である場合も、また、無毒化されていない形態である場合もある。リポ糖は、図2のフローチャートに記載されているように調製することができる(例えば、米国特許出願公開番号2003/004442もまた参照のこと)。第2の成分に、脂質、糖脂質、糖タンパク質、低分子などが含まれる場合があることもまた意図される。
【0029】
プロテオソーム:LPSまたはプロトリン(Protollin)またはIVXまたはIVX−908は、本明細書中で使用される場合は、OMP−LPS組成物(これは、免疫賦活組成物としての役割を果たすことができる)を提供するために、本明細書中で記載されるように少なくとも1種のリポ糖と混合されたプロジュバントの調製物をいう。したがって、OMP−LPSアジュバントは、例えば、IVX−908の2つの塩基性成分(これには、(1)グラム陰性細菌、例えば、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)から調製されたプロテオソーム(すなわち、プロジュバント)である外膜タンパク質調製物と、(2)1つ以上のリポ糖の調製物が含まれる)から構成され得る。
【0030】
本明細書中で記載される場合は、OMP−LPSアジュバントの2つの成分は、これらの成分の間での相互作用を最適にするために、特異的な初期比で処方することができ(図3のフローチャートを参照のこと)、これによって、本明細書中に記載されるMV免疫原性組成物の調製において使用される成分の安定な会合および処方物が得られる。このプロセスには通常、選択された界面活性剤の溶液(例えば、Empigen(登録商標)BB、Triton(登録商標)X−100、またはMega−10)中で複数の成分を混合すること、その後、予め決定された好ましい濃度になるように、透析によって、または好ましくは、透析濾過/限外濾過方法によって、界面活性剤の量を減少させながらOMPとLPS成分の錯体形成を行うことが含まれる。2つの成分の混合、共沈、または凍結乾燥もまた、適切であり安定な会合または処方を行うために使用される場合がある。好ましい実施形態においては、本発明のMV免疫原性組成物には、本明細書中に記載される1つ以上のMV抗原(すなわち、MV免疫原またはその断片)とアジュバントが含まれる。ここでは、アジュバントには、プロジュバント(すなわち、プロテオソーム)およびリポ糖が含まれる。少なくとも1つの麻疹抗原がHタンパク質である。別の実施形態においては、この処方物には、Fタンパク質とHタンパク質を含む1つ以上の麻疹ウイルス抗原が含まれる。本明細書中に記載されるように、MV抗原は、組換え体である供給源に由来するものである場合があり、また、麻疹分割抗原を含む場合もある。好ましくは、麻疹分割抗原は、Moraten株、Shwarz株、Zagreb株、またはEdmonston株から得られる。
【0031】
好ましい実施形態においては、全プロテオソームタンパク質の重量パーセントとしての最終的なリポ糖の含有量は、約10%から約500%までの範囲であり得、約20%から約200%までの範囲、あるいは、約30%から約150%までの範囲であり得る。1つの好ましい実施形態においては、プロテオソームを含むアジュバント組成物は、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)から調製され、リポ糖は、フレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)またはプレジオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelloides)から調製される。最終的なリポ糖の含有量は、全プロテオソームタンパク質に対して重量で50%から150%の間である。別の実施形態においては、プロテオソームは、全OMPの約0.5%から約5%までの範囲の内因性リポオリゴ糖(LOS)含有量を有するように調製される。本発明の別の実施形態により、全OMPの約12%から約25%までの範囲、好ましい実施形態においては、全OMPの約15%から約20%の間の内因性リポ糖を含むプロテオソームが提供される。本発明により、また、任意のグラム陰性細菌種に由来するリポ糖を含む組成物が提供される。これは、プロテオソームの供給源と同じグラム陰性細菌種に由来する場合も、また、別の細菌種に由来する場合もある。
【0032】
(免疫原性組成物およびその使用)
1つ以上のMV免疫原を含む本明細書中に記載される免疫原性組成物は、免疫応答、例えば、防御免疫応答を誘発するために使用することができる。本発明により、本明細書中に記載されるように、1つ以上のMV免疫原またはその断片、融合タンパク質、多価免疫原、あるいは、そのような免疫原の混合物を、MVに特異的な免疫応答(細胞性および/または体液性)(これは、防御免疫応答である場合もある)を誘発するために十分な用量で、被験体に投与することによって、MVによる感染を処置または予防するための方法が提供される。MVポリペプチド免疫原およびその変異体、またはそのような免疫原の混合物は、本発明の方法において使用される場合には、アジュバント、例えば、プロジュバントまたはOMP−LPSを含む組成物の一部であることが好ましい。1つの実施形態においては、本発明の免疫原性組成物にはさらに、1つ以上の別の微生物抗原、例えば、ウイルス抗原、細菌抗原、寄生虫抗原、またはそれらの組み合わせが含まれ得る。例えば、MV免疫原性組成物には、風疹抗原およびおたふく風邪抗原もまた含まれる場合がある。
【0033】
免疫原性組成物には、さらに、1つ以上のMV免疫原またはその断片に加えて、薬学的に許容されるビヒクル、担体、希釈剤、または賦形剤が、そして状況に応じて他の成分が含まれる場合がある。例えば、本発明の免疫原性組成物との使用に適している薬学的に許容される担体または他の成分としては、増粘剤、緩衝化剤、溶媒、保湿剤、保存剤、キレート化剤、別のアジュバントなど、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0034】
さらに、本発明の薬学的組成物には、さらに、水またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)のような希釈剤が含まれ得る。好ましくは、希釈剤は、約0.1mMから約1Mまで、より好ましくは、約0.5mMから約500mMまで、さらにより好ましくは、約1mMから約50mMまで、最も好ましくは、約2.5mMから約10mMまでの最終リン酸濃度範囲;および約100mMから約200mMまで、最も好ましくは、約125mMから約175mMまでの最終塩濃度範囲のPBSである。好ましくは、最終的なPBS濃度は、約5mMのリン酸と約150mMの塩(例えば、NaCl)である。特定の実施形態においては、MV免疫原またはMV分割抗原と本発明のアジュバント(例えば、プロジュバントまたはOMP−LPS)の混合物を含む上記の免疫原性組成物の任意のものは、滅菌であることが好ましい。
【0035】
組成物は、無菌環境下でそれらを調製すること、またはそれらを当該分野で利用されている方法を使用して最後に滅菌することのいずれかによって滅菌することができる。多くの医薬品は滅菌のものとして製造され、この基準はUSP XXII<1211>によって規定されている。この実施形態での滅菌は、当業界で承認されており、USP XXII<1211>に列挙されている多数の手段によって行うことができる。これには、ガス殺菌、電離放射線、または濾過が含まれる。滅菌状態は、これもまたUSP XXII<1211>で規定されている無菌処理と呼ばれる方法で維持することができる。ガス殺菌に使用することができる気体として、エチレンオキシドガスが挙げられる。電離放射線法に使用することができる放射線のタイプとしては、ガンマ線、例えば、コバルト60源からのガンマ線、および電子線が挙げられる。ガンマ放射線の一般的な線量は、2.5MRadである。適切である場合は、適切な孔の大きさ(例えば、0.22μm)であり適切な材質(例えば、Teflon(登録商標))のフィルターを使用して濾過を行うことができる。用語「USP」は、米国薬局方(www.usp.org;Rockville,MD)をいう。プロテオソームまたはOMP−LPSが小さい粒子を生じるという事実から、本発明の免疫原性組成物を、0.8μのフィルター、0.45μのフィルター、または0.2μのフィルターを通じて濾過することが十分である。したがって、好ましい実施態様においては、本発明のMV免疫原性組成物は濾過によって滅菌される。そのような混入物の存在によるあらゆる厄介な問題を排除することが望ましいので、これは非常に有効である。
【0036】
本発明はまた、アジュバントと1つ以上の麻疹ウイルス抗原を含む免疫原性組成物を、それが必要である被験体に投与することを含む、麻疹感染を処置または予防するための方法に関する。ここでは、アジュバントには、プロテオソームまたはOMP−LPSのいずれかが含まれ、少なくとも1つの麻疹抗原がHタンパク質である。別の実施形態においては、本発明の免疫原性組成物は、免疫応答(細胞性または体液性、あるいは両方、これは、1型または2型の細胞性応答であることが好ましい場合もある)を誘発するために使用することができる。MV免疫原処方物を用いる処置または免疫応答の誘発に適している被験体は、疾患を発症するリスクについての十分に確立された指標、または既存の疾患についての十分に確立された指標によって同定することができる。本明細書中に開示されるMV免疫原で処置することができる感染としては、MVによって、またはMVが原因で引き起こされる感染が挙げられ、感染が一次感染である、二次感染である、日和見感染であるなどは問わない。MVの例としては、これらのウイルスの任意の抗原性変異体が挙げられる。
【0037】
本発明の免疫原性組成物を調製するための方法は、本明細書中に記載され、当該分野で公知である(例えば、米国特許出願公開番号2001/0053368、および同2003/0044425を参照のこと)。抗原(単数または複数)およびアジュバントは、これらの成分の間での相互作用(または協働)を最適にするような特異的な初期比で処方され、これによって、2つの成分の有意な部分が互いに非共有的に会合する(または非特異的に並ぶ)。例えば、少なくとも1つのMVポリペプチド抗原のプロテオソーム(プロジュバント)またはOMP−LPSとの混合物は、界面活性剤の存在下で調製され、透析濾過/限外濾過による混合物からの界面活性剤の減少または除去によって、アジュバントとの抗原の会合(または配位)が導かれる(図3を参照のこと)。好ましい実施形態においては、混合物中のウイルス抗原に対するプロテオソームの割合は、1:1以上、好ましくは、2:1以上、より好ましくは、3:1以上、そしてさらに好ましくは4:1である。この割合は、8:1またはそれ以上であることもできる。あるいは、混合物中のウイルス抗原に対するプロテオソームの割合は、1:1、1:2、1:3、1:4、または1:8である。2つの成分の界面活性剤をベースとする溶液には、同じ界面活性剤が含まれる場合も、また、異なる界面活性剤が含まれる場合もあり、1つ以上の界面活性剤が、限外濾過/透析濾過が行われる混合物中に存在する場合もある。適切な界面活性剤としては、Triton(登録商標)、Empigen(登録商標)BB、およびMega−10が挙げられる。他の界面活性剤もまた使用することができる。界面活性剤は、組成物を調製するために使用される成分を可溶化させるように作用する。界面活性剤の混合物の使用が特に有効である場合もある。この混合物は、もちろん、最終的な処方の前に透析濾過/限外濾過によって、除去されるか、または濃度が低下させられる。
【0038】
本明細書中に記載される1つ以上のMV抗原とプロテオソームをベースとするアジュバントを含む免疫原性組成物は、その組成物を被験体、例えば、ヒトまたはヒト以外の動物(例えば、ヒト以外の霊長類、または齧歯類、例えば、マウスまたはラット)に投与できる任意の形態であり得る。例えば、そのような免疫原性組成物は、液体溶液として調製し、投与することができ、また、固体形態(例えば、凍結乾燥させた)として調製することもできる。これは、固体形態として投与することができ、また、投与と同時に溶液中に再懸濁することもできる。MV免疫原性ポリペプチド組成物は、その中に含まれる有効成分を、被験体(または患者)に組成物が投与されると生体利用可能になるか、または徐放により生体利用可能になるように処方される。被験体または患者に投与される組成物は、1つ以上の投与量単位の形態をとる。例えば、ドロップは、単回投与量単位であり得、エアゾール形態の本発明の1つ以上の化合物の容器には、複数の投与量単位を含めることができる。特定の好ましい実施形態においては、本発明のMV免疫原または免疫原の混合液を含む上記の薬学的組成物のいずれかは、容器中に、好ましくは、滅菌の容器中に存在する。用量レベル、投与のタイミング、投与回数、投与間隔を含む特定の投与プロトコールの設計は、当業者に周知である常法を使用してそのような手順を最適化することによって決定される。
【0039】
1つの実施形態においては、免疫原性組成物は、鼻腔に投与される。他の一般的な投与経路としては、腸内、全身的、経皮/経粘膜、鼻腔、および吸入が挙げられる。用語「腸内」は、本明細書中で使用される場合は、免疫原性組成物が、消化管または口腔粘膜を通じて吸収される投与経路であり、これには、経口、直腸内、舌下が含まれる。用語「全身的」は、本明細書中で使用される場合は、消化管をバイパスする投与経路を記載し、これには、動脈内、皮内、筋肉内、鼻腔内、眼内、腹腔内、静脈内、皮下、粘膜下、および膣内での注射または注入技術が含まれる。用語「経皮/経粘膜」は、本明細書中で使用される場合は、免疫原性組成物が皮膚を介してかまたは皮膚から投与される投与経路であり、これには、局所投与が含まれる。用語「鼻腔内」および「吸入」には、免疫原性組成物が呼吸樹に導入される投与技術が含まれ、肺内または経肺動脈投与が含まれる。組成物は、当該分野で公知の装置、例えば、機械的装置(例えば、ネブライザー)によってエアゾールとして投与され得る。ここでは、エアゾール組成物は、呼吸菅上部および下部に投与される。好ましくは、本明細書中に記載される免疫原性組成物は、鼻腔内に投与される(鼻腔内投与)。
【0040】
さらに、本明細書中で開示される免疫原性組成物は、生の弱毒化麻疹ワクチンのような別のワクチンとともに投与する場合には、免疫性を増強するために、または追加免疫として使用することができる。例えば、1つ以上のMVポリペプチド免疫原をプロジュバントまたはOMP−LPSとともに含む組成物は、生の弱毒化麻疹ワクチンの投与前またはその投与後に、感作免疫として、または追加免疫として使用される(粘膜または全身的経路によって)場合もある。
【0041】
別の実施形態においては、麻疹感染を処置または予防するため、および/あるいは、免疫応答を誘発するために、被験体には、少なくとも1回、2回、または3回のDNAワクチンでの感作免疫が投与され、その後、1つ以上のMVポリペプチド免疫原をプロジュバントまたはOMP−LPSとともに含む本明細書中に開示される組成物での追加免疫が投与される。DNAワクチンには、プロモーター配列に動作可能であるように連結された麻疹ウイルスポリペプチドまたはその断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む1つ以上の組み換え発現構築物が含まれる(例えば、Fennelly et al.,J.Immunol.162:1603−10(1999);Pasetti et al.,J.Virol.77:5209−17(2003)を参照のこと)。ポリヌクレオチドは、少なくとも1つの麻疹ウイルスポリペプチド、例えば、Hタンパク質をコードすることができ、少なくとも2つの麻疹ウイルスポリペプチド(すなわち、2シストロン性ポリヌクレオチド)、例えば、Hタンパク質とFタンパク質をコードする場合があり、また、3個、4個、もしくは5個、またはそれ以上の麻疹ウイルスポリペプチド(すなわち、多シストロン性ポリヌクレオチド)をコードする場合もある。DNAワクチンには、2つ以上の組み換え発現構築物が含まれる場合がある。例えば、それぞれの構築物には、少なくとも1つの麻疹ウイルスポリペプチドまたはその断片をコードするポリヌクレオチド配列に対して動作可能であるように連結させられたプロモーターを含むポリヌクレオチドを含まれる。
【0042】
組み換えポリヌクレオチド発現構築物は、分子生物学の分野の当業者に公知の方法にしたがって調製することができる。原核生物宿主および真核生物宿主とともに使用されるクローニングおよび発現ベクターは、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第3版、Cold Spring Harbor,NY(2001)に記載されており、プラスミド、コスミド、シャトルベクター、ウイルスベクター、および本明細書中で開示される染色体複製起点を含むベクターを挙げることができる。組み換え発現構築物にはまた、宿主細胞中での目的のポリペプチドの発現を可能にする発現制御配列(調節配列)も含まれる。これには、1つ以上のプロモーター配列(例えば、lac、tac、trc、ara、trp、λファージ、T7ファージ、T5ファージプロモーター、CMV、前初期、HSVチミジンキナーゼ、初期および後期SV40、レトロウイルス由来のLTR、およびマウスメタロチオネイン−I)、エンハンサー配列、オペレーター配列(例えば、lacO)などが含まれる。
【0043】
一般的には、組み換え発現ベクターには、複製起点と宿主細胞の形質転換を可能にする選択マーカー、および下流の構造配列の転写を指示する高度に発現される遺伝子に由来するプロモーターが含まれる。異種構造配列は、翻訳開始配列および翻訳終結配列とともに適切な段階で組み立てられる。好ましい実施形態においては、構築物は、インビボで投与される組成物中に含まれる。このようなベクターおよび構築物としては、染色体配列;非染色体配列;および合成のDNA配列(例えば、SV40の誘導体);細菌プラスミド;ファージDNA;酵母プラスミド;プラスミドの組み合わせに由来するベクター;およびファージDNA;ウイルスDNA(例えば、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、ニワトリポックスウイルス、および仮性狂犬病ウイルス);あるいは、以下に記載されるような複製欠損レトロウイルスが挙げられる。しかし、任意の他のベクターが、組み換え発現構築物の調製に使用される場合もあり、好ましい実施形態においては、そのようなベクターは複製可能であり、宿主(被験体)中で生存可能である。
【0044】
1つの実施形態においては、DNAワクチンは、細菌に組み換え発現ベクターを導入することによって調製される。細菌は、その後被験体に投与される。例えば、1つ以上の麻疹ウイルスポリペプチドまたはその断片をコードするポリヌクレオチドを含む組み換え発現ベクターが、赤痢菌の株(Shigella flexneri)(例えば、Fennelly et al.,前出;Pasetti et al.,前出)に導入され得る(例えば、トランスフェクション、エレクトロポレーション、または形質転換によって)。細菌は、その後、そのようなDNAワクチンの送達のために当業者によって行われる方法にしたがって被験体に投与するために調製され得る。DNAワクチンは、鼻腔内、筋肉内、皮内、全身的、吸入によって、あるいは、コードされるMVポリペプチドが発現される様式で被験体にワクチンを提供する任意の他の経路および方法によって送達され得る。
【0045】
好ましくは、本明細書中に記載されるMV免疫原性組成物は、1つ以上の全身性体液性応答、粘膜免疫応答、および細胞性免疫(CMI)を含む、特異的な抗MV免疫応答を誘導する。全身性体液性免疫応答は、特異的な抗麻疹抗原IgG抗体または他のクラスの免疫グロブリンが血清中に存在することにより示される。その防御効果または治療効果は、ヘマグルチニン阻害(HI)アッセイを含む機能的アッセイにおいて決定することができる。HIによって測定される応答の誘導は、ヘマグルチニンを阻害する免疫化された被験体に由来する生物学的試料中の免疫グロブリンの存在が、ヒトにおいてはMVに対する防御と相関していると考えられているので、有用である。粘膜免疫応答には、鼻咽頭および肺を含む呼吸菅から回収される分泌物のような粘膜分泌物中のIgAを含む粘膜抗体の生産が含まれる。理論に拘泥するものではないが、粘膜免疫応答システムによって、おそらく、MV感染に対する最初の免疫学的バリアが提供され、粘膜の体液性応答において優性であるIgAによって防御機能が媒介される。抗MV IgA抗体のインビトロでの分析は、抗MV免疫応答によりウイルスの侵入が妨げられ、ウイルスの複製が邪魔され、そして/または、ウイルスの上皮を通過する輸送が妨害されることを示唆している(例えば、Lamm,Annu.Rev.Microbiol.51:311−40(1997);Yan et al.,J.Virol.76:430−35(2002)を参照のこと)。
【0046】
粘膜バリアを含む細胞集団は、体内で局所に、または異なる部位に到達することができるシグナルに応答する(Svanborg et al.,Curr.Opin.Microbiol.2:99−105(1999))。限定されない理論にしたがうと、トル様受容体(TLR)は、生得的な免疫系の鍵となる成分であり、おそらく、IVX908−MVは、TLRシステムを通じて作用するであろう。なぜなら、IVX908中の主要な髄膜炎菌(N.meningitidis)Ompタンパク質であるPorBは、TLR−2に結合するからである(Massari et al.,J.Immunol.168:1533−37(2002))。LPSはTLR−4を活性化し(Takeda et al.,Annu.Rev.Immunol.21:335−76(2003))、そして麻疹のHタンパク質もまた、TLR−2に結合することができる(Bieback et al.,J.Virol.76:8729−36))。TLRの関与により、プロ炎症性サイトカイン(例えば、IFN−γ、TNF−α、およびIL−12)の生産と、抗原提示細胞上の副刺激分子のアップレギュレーションが生じる。活性化された生得的反応は、効果的な適応的免疫応答を指示する。
【0047】
細胞性免疫(CMI)により、より高いかまたは優勢なTH2応答からの、混合された平衡状態の高いかまたは優勢なTH1応答(例えば、TFN−γのようなサイトカインの発現の誘導によって決定される)へのスイッチまたは減少が、それに見合う特定のTH2サイトカイン(例えば、IL−5)の誘導の増加を伴うことなく(そのレベルは、例えば、維持される、減少する、または存在しない場合もある)誘導される。このようなTH1応答は、他のCMI関連反応、例えば、細胞傷害性T細胞(CTL)の発生の誘導の素因であり、これは、TH1免疫の指標である。
【0048】
血清、鼻洗浄液、および/または肺洗浄液を含む被験体に由来する生物学的試料中に麻疹特異的抗原が存在することは、当該分野で行われる多数の免疫学的アッセイのいずれか1つによって決定することができる。このような免疫学的アッセイとしては、ELISA、免疫ブロット、放射免疫検定、およびオクタローニ(Ochterlony)が挙げられるが、これらに限定されない。麻疹特異的抗体の機能的活性の決定もまた、本明細書中に記載される当該分野で公知の方法、例えば、プラーク減少中和検定、ヘマグルチニン阻害アッセイ、およびオプソニン化抗体の存在を決定するアッセイにしたがって決定することができる。
【0049】
本明細書中に記載されているプロテオソーム:MVおよび/またはIVX908−MV組成物のようなMVワクチン組成物の、MVに対する特異的免疫応答を誘発する、および/または麻疹ウイルス感染を予防する、または被験体の麻疹ウイルス感染を処置する能力は、本明細書中に記載される当該分野で公知の動物モデルにおいて決定することができる。例えば、マウスモデルまたはヒト以外の霊長類モデル、例えば、アカゲザルモデルを使用することができる。弱毒化麻疹ワクチンまたは麻疹DNAワクチンのような、1用量、2用量、3用量、またはそれ以上の用量のMVワクチン組成物を、初回免疫および追加免疫として、あるいは、別のワクチンでの初回または感作免疫後の1回以上の追加免疫として、動物に投与することができる。好ましくは、MVワクチンは、ヒトにワクチンを投与する、例えば、鼻腔内に投与するために使用することができる送達方法と同様の様式で動物に送達され得る。動物の免疫応答は、応答が治療的または防御的であることを示す機能に特異的に結合するかまたはそのような機能を示す免疫グロブリンの存在を決定することによって評価することができる。例えば、免疫グロブリン、特に、IgGおよびIgA抗体は、特異的な免疫応答が生じた場合に、または特異的な免疫応答が生じたかどうかを決定するためにサンプリングすることができる。本明細書中に記載される当該分野で公知の例示的なアッセイとしては、免疫アッセイ(例えば、ELISAおよび免疫ブロッティング);麻疹ウイルス特異的サイトカインの生産(例えば、IFNγ、IL4、IL5)の決定;ならびにプラーク減少中和(PRN)アッセイが挙げられる。PRN値は、免疫応答を特徴づけ、そして麻疹ウイルスでチャレンジした場合に、麻疹感染および疾患に関係する続発症の発症から動物を保護するかどうかを評価するために特に有効である。ヒトにおける血清防御(seroprotection)はPRN値120超として定義されている(Chen et al.,J.Infect.Dis.162:1036−42(1990))。
【0050】
本明細書中で記載される場合は、プロテオソーム組成物およびOMP−LPS組成物を含むアジュバント組成物はまた、麻疹ウイルス以外の、または麻疹ウイルスに加えて、1つ以上の微生物(ウイルス、細菌、寄生虫、真菌)に由来する1つ以上の抗原と混合することができ、他の感染性疾患の処置または予防のために使用することができる。例えば、本明細書中に記載されるように調製されたプロテオソーム:抗原またはIVX908:抗原組成物は、風疹ウイルスまたはおたふく風邪ウイルスによる感染によって生じる疾患を処置または予防するために使用することができる。このような免疫原性組成物はまた、風疹ウイルスまたはおたふく風邪ウイルスのようなウイルスに特異的な免疫応答を誘発するためにも使用することができる。このような組成物に使用されるウイルス抗原は、ウイルス粒子から単離または部分的に単離することができ、また、ウイルスに感染した細胞から導くこともでき、また、標準的な分子生物学的方法にしたがって組み換えによって発現させ、その後で単離することもできる。1つ以上のウイルス抗原を、本明細書中に記載される方法にしたがって、プロテオソームまたはOMP−LPSアジュバントと組み合わせることができる。
【0051】
プロテオソームまたはOMP−LPSアジュバントと組み合わせられたウイルス抗原は、1つのタイプのウイルスに由来するものである場合も、また、混合物として使用される、すなわち、1つのウイルスに由来する1つ以上の抗原が1つ以上の他のウイルスの1つ以上の抗原と組み合わせられる場合もある。任意の多数の混合物または組み合わせを調製することができる。例えば、1つの組成物に、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、およびおたふく風邪ウイルスに由来する抗原が含まれる場合、あるいは、麻疹ウイルスと風疹ウイルスに由来する抗原が含まれる場合、または麻疹ウイルスとおたふく風邪ウイルスに由来する抗原が含まれる場合、また、おたふく風邪ウイルスと風疹ウイルスに由来する抗原が含まれる場合もある。1つ以上のウイルスに由来する任意の1つ以上の抗原を、その後、プロテオソームまたはOMP−LPSアジュバントと組み合わせることができる。あるいは、プロテオソーム:風疹抗原(単数または複数)および/またはOMP−LPS:おたふく風邪抗原(単数または複数)を、本明細書中に記載されるプロテオソーム:MVまたはIVX908−MV組成物と組み合わせて、それが必要である被験体に対して任意の組み合わせで投与することができる。個々の免疫原性組成物は、種々の回数(および経路)で別の免疫原性組成物と別々に投与することができる。これらの免疫原性組成物の任意のものを、初期(初回または感作)免疫および追加免疫として使用することができ、また、追加免疫として使用することもできる。別の感作(または初回)免疫原には、その後に追加免疫が行われるウイルスの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のウイルスポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むDNAワクチンが含まれ得る。これらのDNAワクチンは、本明細書中に記載されている当該分野で公知の方法によって調製することができる。
【0052】
本明細書中に記載される全ての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、および非特許刊行物、および/または出願データシート(Application Data Sheet)は、それらの全体が参照によって本明細書中に組み入れられる。以下の実施例は、本明細書中に記載される本発明を説明するために意図され、限定されるようには意図されない。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
(プロテオソームの調製)
免疫原(例えば、麻疹ウイルス抗原)は、ヒトまたは動物被験体の防御免疫応答を誘発することができる本発明のワクチン組成物を形成するように、プロテオソームとともに処方され得る。プロテオソームはアジュバントとして有用であり、グラム陰性細菌から精製される外膜タンパク質から構成される。プロテオソームを調製するための方法は、例えば、Mallett et al.,Infect.Immun.63:2382,1995;米国特許第6,476,201 B1号;米国特許出願公開番号2001/0053368;ならびに米国特許出願公開番号2003/0044425に記載されている。簡単に説明すると、フェノールで死滅させたグループB 2型髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)のペーストを、1Mの塩化カルシウム中の6%のEmpigen(登録商標)(EBB)(Albright and Wilson,Whithaven,Cumbria,UK)の溶液で抽出した。抽出物をエタノールで沈殿させ、1%EBB−Tris/EDTA−生理食塩水中に溶解させ、その後、硫酸アンモニウムで沈殿させた。沈殿したプロテオソームを1%のEBB緩衝液中に再度溶解させ、透析濾過し、0.1%のEBB緩衝液中で−70℃で保存した。
【0054】
約0.5%から約5%の間のリポ糖含有量を有しているプロテオソームが得られたこのプロセスのフローチャートを、フローチャート1A(図1A)に示す。プロテオソームはまた、得られるプロテオソームが約12%から約25%の間のリポ糖含有量を有していることが所望される場合には、硫酸アンモニウム沈殿工程を省略してプロセスを短縮することもでき、材料によっては、フローチャート1B(図1B)に示されるように、約15%から約20%の間のリポ糖含有量である場合もある。当業者であれば、本発明のプロジュバントまたはOMP−LPS組成物を含む処方物を調製するための方法を、ワクチン成分の特定の特性に合うように調整することができることを理解するはずである。
【0055】
(実施例2)
(リポ糖の調製)
フローチャート2(図2)の例は、フレクスナー赤痢菌(S.flexneri)またはプレジオモナス・シゲロイデス(P.shigelloides)からのLPSの単離および精製のためのプロセスを示す。このプロセスは、他のグラム陰性細菌(赤痢菌属(Shigella)、プレシオモナス属(Plesiomonas)、エシェリキア属(Escherichia)、またはサルモネラ属(Salmonella)の種を含む)からLPSを調製するために同様に使用することができる。細菌を醗酵によって300L中で増殖させた後、細菌を堆積させ、細胞ペーストを、細菌ペースト1グラムあたり3mLの0.9MのNaCl、0.005MのEDTA、および10mgのリゾチームで再度水和した。リゾチームでの消化を、室温で1時間進行させた。その後、0.025MのMgCl2中の50U/mlのBenzonase(DNase)を添加し、DNase消化を室温で30分間進行させた。その後、懸濁液を14,000から19,000psiでマイクロフルイダイザーを通過させることによって砕いた。新しいDNase(50U/mL)を添加し、懸濁物の消化を、さらに30分間室温で進行させた。消化した細胞懸濁物を水浴中で68℃に加熱し、等量の90%のフェノール(これもまた68℃に加熱した)を添加し、その後、混合液を震盪させながら68℃で30分間インキュベートした。混合液を4℃で遠心分離して、水相と有機相を分離させた。水相を回収し、有機相をWFI(注射用蒸留水)で68℃で30分間再度抽出した。混合液を4℃で遠心分離し、第2の水相を回収し、2つの回収した水相を合わせた。核酸を沈殿させるために、10mMのCaCl2を含む20%のエタノールをプールした水相に添加した。混合液を4℃で一晩攪拌し、次いで、沈殿した核酸を、10,000×gで30分間の遠心分離によって堆積させた。上清を回収し、濃縮し、30,000MW中空線維カートリッジを使用して、0.15MのNaCl、0.05MのTris、0.01MのEDTA、および0.1%のEmpigen(登録商標)BB、pH8.0の中に透析濾過した。最後に、LPSを、0.22μMのMillpak(登録商標)60フィルターユニットを使用して滅菌濾過し、滅菌の保存容器に等分し、−80℃で保存した。
【0056】
(実施例3)
(プロテオソーム:リポ糖アジュバントの調製および特徴づけ)
本発明のプロテオソームアジュバント処方物を、おそらくは非共有的である会合を可能にするためにプロテオソームとLPSを混合することによって製造した。LPSは、多数のグラム陰性細菌、例えば、赤痢菌属(Shigella)、プレシオモナス属(Plesiomonas)、エシェリキア属(Escherichia)、またはサルモネラ属(Salmonella)の種のいずれかから導くことができる(実施例2を参照のこと)。これを、フローチャート3(図3)に記載したように、実施例1のプロテオソームと混合する。簡単に説明すると、プロテオソームとLPSを4℃で一晩融解させ、TEEN緩衝液中で1%のEmpigen(登録商標)BBになるように調節した。2つの成分を、約10:1から約1:3の間のプロテオソーム:LPSの最終wt/wt比を生じる量で、室温で15分間混合した。プロテオソーム:LPS混合物を適切な大きさ(例えば、Size9)の10,000 MWCO中空線維カートリッジ上でTNS緩衝液(0.05MのTris、150mMのNaCl、pH8.0)中に透析濾過した。浸透液中のEmpigen(登録商標)含有量が<50ppm(Empigen(登録商標)Turbidity Assayによるか、またはBradford Reagent Assayによる)になった時点で、透析濾過を停止した。バルクのアジュバント(本明細書中ではOMP−LPSと呼ぶ)を濃縮し、5mg/mLのタンパク質となるように(Lowryアッセイによる)調製した。最後に、アジュバントを、0.22μmのMillipak 20フィルターユニットを使用して滅菌濾過した。バルクのアジュバントを、滅菌の保存容器に等分し、凍結させた。
【0057】
OMP−LPSアジュバントを、(1)逆相HPLCを使用してEmpigen(登録商標)(400ppm)について;(2)Lowryアッセイによってタンパク質含有量について;(3)2−ケト−3−デオキシオクトネート(KDO)アッセイの測定によってLPS含有量について試験した。OMP−LPS組成物をさらに、粒子サイズ測定装置(particle sizer)(Brookhaven Instrumentsモデル90プラス、または同様の機器)(10〜100nm)を使用した定数加重分析によって決定される粒子の大きさの分布について、さらに特徴付けた。しかし、複合体の粒子の大きさは、LPSに対するプロテオソームの比の変化(例えば、高い)に応じて増大または変化する場合がある。アジュバント処方物中のOMP−LPS組成物の安定性は、赤痢菌(S.flexneri)LPSワクチンについて以前に実証された安定性(米国特許出願公開番号2003/0044425を参照のこと)と一致するはずである。これらのデータは、OMP−LPS組成物が、冷蔵温度とそれよりも高い温度(25℃および37℃)のいずれにおいても安定であったことを示す。これらの条件下では、組成物のLPS成分、またはその任意の統計学的に有意な部分を、ワクチン処方物のプロテオソーム成分と錯体形成させることができる。
【0058】
(実施例4)
(麻疹ウイルス抗原の調製)
米国でワクチンの目的に使用されている麻疹ウイルス(MV)の弱毒化株であるMoraten株の増殖を、0.01〜0.001の感染多重度(MOI)でVeroミドリザル腎臓細胞を感染させることによって行った。ここでは、感染させた細胞を、10レベルの工業用チャンバー(Nalge Nunc International,Rochester,NY)で培養した。MOIは、不完全な妨害を生じる粒子の発生を最少にするために低くした。感染細胞の培養を、有意な細胞病理学が検出されるまで(例えば、約3〜5日)モニターし、その時点で、感染細胞の培養物を、1回の凍結−融解サイクルに供して細胞を破壊させた。細胞の破片を2100×gで20分間、4℃での遠心分離によって除去した。細胞を含まないMVを含む上清を回収し、0.45μmのフィルターと、その後に0.22μmのフィルターを連続して通過させて濾過した。その後、濾過した上清を4℃で2時間、14,000rpmで限外濾過した。堆積した麻疹ウイルス粒子をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中に再度懸濁させ、次いで超音波処理を行った。タンパク質濃度を、2シストロン性酸性タンパク質アッセイを使用して決定し(Pierce Biotechnology,Rockford,IL)、標準曲線を、ウシ血清アルブミン画分V(BSA)とウシγグロブリン画分II(BGG)の混合物を使用して作製した。
【0059】
(実施例5)
(麻疹ウイルス抗原調製物の分析)
ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を、ウイルス調製物中のMVヘマグルチニン(H)タンパク質と融合(F)タンパク質の存在を評価するために行った(図4を参照のこと)。ウイルス試料の段階希釈物を、10%のポリアクリルアミドゲル上での電気泳動によって分離し、タンパク質のバンドを、クマシーブリリアントブルーG−250(Kodak,Rochester,NY)での染色によって視覚化した。クマシーブリリアントブルーでの染色によって検出された個々のMV抗原の相対的な量と、試料の全タンパク質含有量の割合として決定したHタンパク質とFタンパク質の量を、Scion imageソフトウェアを使用する定量的デンシトメトリーによって決定した。タンパク質調製物中のHタンパク質とFタンパク質の量は44.4%であった。
【0060】
平行して、別のゲルから分離したMV試料を、MV Hタンパク質とFタンパク質の免疫ブロット分析による評価のためにPVDF膜に移した。移した後、膜を0.1%のTween−20を含むPBS(PBS−T)中の5%の脱脂粉乳でブロックし、その後、MV Hタンパク質またはFタンパク質を検出することができるモノクローナル抗体とともに、室温で60分間インキュベートした。その後、免疫ブロットをPBS−Tで洗浄し、次いで、ヤギ−抗マウスHRP(Jackson Immunoresearch Laboratories)の存在下で室温で60分間インキュベートした。その後、膜を、HRP基質、ECLキット(Amersham Biosciences)と共にインキュベートした。シグナルを、免疫ブロットをX線フィルム(Kodak,Rochester,NY)に露光させることによって視覚化した。
【0061】
MV Hタンパク質とFタンパク質に相当するバンドを、クマシーブリリアントブルーと免疫ブロット分析の両方を使用して検出した。例えば、80kDaのMV Hタンパク質のバンドを、重ね焼きした免疫ブロットとクマシー染色したゲル上で検出した。免疫ブロットによって検出したMV Fタンパク質は、F0一次翻訳産物がタンパク質分解によってF1とF2サブユニットへと処理されるとの理由から予想される、存在する種々のウイルスFタンパク質の大きさを示した。50〜60kDaの2つの形態のF0を同定することができた。この原因は、おそらく、翻訳後のグリコシル化の差である。F1バンドは、41kDaのタンパク質バンドとして同定した。これらの実験で使用したVero細胞タンパク質とFタンパク質抗体との間にはいくつかの交差反応性が検出された(例えば、図4AのVero細胞抽出物の対照のレーンを参照のこと)。
【0062】
(実施例6)
(プロテオソーム:LPSと麻疹ウイルス抗原を含む処方物の調製)
本発明の処方物を、実施例3によるプロテオソーム:LPSアジュバント(本明細書中ではOMP−LPSとも呼ぶ)を実施例4によるMV抗原と、最適な安定性と免疫学的結果を促進する割合で混合することによって調製した。いくつかの場合には、プロテオソーム:LPSアジュバントとの処方の前に、ウイルス抗原調製物を、1%の界面活性剤(例えば、Empigen BBまたはMega−10)を含むように調製し、続いて、透析し、その後、プロテオソーム:LPSアジュバントと混合した。
【0063】
(実施例7)
(プロテオソームと麻疹ウイルス抗原を含む処方物の調製)
本発明の処方物を、実施例1によるプロテオソームを、実施例4によるMV抗原と、安定性と免疫学的結果について最適な処方物となる割合で混合することによって調製した。プロテオソームとの処方の前に、ウイルス抗原調製物を、実施例6に開示したように1%の界面活性剤(例えば、Empigen BBまたはMega−10)を含むように調製した。
【0064】
(実施例8)
(麻疹ウイルス抗原ワクチン処方物の分析)
ワクチン処方物を、SDS−PAGE(クマシーブリリアントブルー染色と免疫ブロット分析)によって、そして免疫金顕微鏡法によって分析した。SDS−PAGE分析の前に、ワクチン処方物を10,000で15秒間遠心分離した。ワクチン処方物の可溶性の画分(上清)と不溶性の画分(ペレット)を回収した。不溶性の画分をPBS中に再度懸濁させ、その後、β−メルカプトエタノールを含む試料緩衝液を添加した。プロテオソーム処方MVワクチン組成物の場合は、ワクチン処方物の可溶性画分中のプロテオソームOMPの存在をモニターし、これらの実験において、良好な処方プロセスの指標として確保した。クマシーブリリアントブルー染色を使用して、可溶性画分と不溶性画分中にタンパク質が存在することを検出し、免疫ブロット分析を使用して、透析した調製物の中にMV Hタンパク質とFタンパク質が存在することを確認した。MV抗原を含むプロテオソームのワクチン処方物、およびMV抗原を含むOMP:LPSが、検出することができる量のMV Hタンパク質とFタンパク質を含むことを見出した(図5A)。
【0065】
電子顕微鏡による分析(図5B)のために、ワクチン処方物試料を5分間、ニッケルグリッド上でエアーフュージした(airfuge)。グリッドを1%のウシ血清アルブミン(BSA)を含むブロッキング溶液中に5分間浸し、洗浄し、その後、MV Hタンパク質に対するモノクローナル抗体(Chemicon International,Temecula,CA)とともに室温で60分間インキュベートした。その後、グリッドを1%のBSAで5分間ブロックし、続いて抗マウスIgG−Gold−10nmとともに1時間インキュベートし、PBS、再蒸留水で洗浄し、風乾させ、PTA 3%、pH6.0で染色し、東芝の電子顕微鏡を使用して観察した。これらの実験では、MV抗原ワクチン処方物と、対照のプロテオソームまたはOMP−LPSのみは、約100nmから約300nmまでの大きさの範囲にある、種々の大きさの丸い膜構造を呈した(図5B)。免疫金で標識されたシグナルは、プロテオソームを含むMV抗原の共局在を明確に示す。
【0066】
(実施例9)
(麻疹ウイルス抗原ワクチン処方物でのマウスの免疫化)
免疫化を、グループあたり5匹のマウスを含む21のグループの10週齢のBALB/c雌マウスに対して行った。それぞれの実験について、全てのマウスを2日おきに、体重と、毒性の兆候(例えば、毛の状態、猫背の姿勢、脂性肌、眼の分泌物、および脱水状態)について、実験手順が終わるまで評価した。BALB/cマウスを粘膜内(IM)および/または鼻腔内(IN)より、プロテオソーム:MV抗原処方物、またはプロテオソーム:LPS:MV抗原処方物で1日目および14日目に免疫化した。全てのワクチン処方物には、実施例4で調製した0.4μgのMV抗原を含めた。IN免疫化については、マウスを最初にイソフランの吸入によって軽く麻酔し、その後、鼻腔内に25μl(1つの鼻腔について12.5μl)を送達する自動導入チャンバーを使用して、ワクチンまたは対照処方物を投与した。IM免疫化については、25μlのワクチン処方物を、後肢に注射することによって投与した。全ての場合において、対照マウスを、緩衝液(PBS)のみ、MV抗原のみ、プロテオソームのみ、またはプロテオソーム:LPS(例えば、OMP:LPS)のみでINまたはIMによって免疫化した。
【0067】
分析のために、試料を1日目、14日目に側部伏在静脈から採取し、ワクチン処方物を3用量投与したマウスについては、28日目にもまた採取した。最後の免疫化の8日後(2用量および3用量の実験グループについて、それぞれ、22日目及び36日目)に、マウスをCO2での窒息によって安楽死させ、心臓の穿刺によって放血させた。鼻の洗浄と肺の洗浄もまた、気管の切開を行い、そしてカテーテル(Clear−Cath,Abott,Ireland)を、最初に、主気道に、その後に鼻咽頭に挿入することによって行った。それぞれの位置について、カテーテルを縫合によって固定し、0.1%のBSAとプロテアーゼ阻害因子(AEBSF、EDTA、ベスタチン、E−64、ロイペプチン、およびアプロチニン(Sigma,St.Louis,MO))を含む1mlのPBSを用いてサンプリングした。全ての試料を回収し、使用するまで−20℃で保存した。脾臓もまた、それぞれのマウスから回収し、脾細胞を、70μmのNylon細胞ストレーナー(BD Falcon)を使用して調製した。単細胞懸濁液を、Ficoll−Hypaque(Pharmacia)を使用して280×gで20分間遠心分離した。血漿/Ficoll界面に存在する細胞を回収し、2回洗浄し、10%のジメチルスルホキシド(DMSO)を含むウシ胎児血清中で凍結させた。
【0068】
(実施例10)
(ELISAによる麻疹ウイルスに特異的な抗体の分析)
血清と粘膜MV特異的抗体応答を、定量的ELISAによって測定した。血清試料について、全IgG、IgGイソ型(IgG1、IgG2a、IgG2b)およびIgAを測定した。鼻洗浄液および肺洗浄液については、IgAのみを評価した。U底の96ウェルマイクロタイタープレート(Greiner)を、炭酸緩衝液(pH9.6)中に希釈した1μg/mlのMV抗原で、4℃で一晩コーティングした。プレートを、PBS 0.1%のTween−20(PBS−T)中の2%の脱脂粉乳でブロックし、その後、試料の希釈物を2連で添加し、37℃で2時間インキュベートした。二次抗体には、ヤギ抗マウスIgG西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP;Pharmingen BD)、ヤギ抗マウスIgG1HRP,ヤギ抗マウスIgG2a−HRP、またはヤギ抗−マウスIgG2b−HRP(Southern Biotechnologies Associates)を含めた。ラット抗マウスIgA−ビオチン(Pharmingen,BD)を、IgAの検出のための二次抗体として使用し、続いて、ストレプトアビジン−HRP(Jackson Immunoresearch Laboratories)を使用した。アッセイを、TM Blue基質(Serological Corporation)の添加によって完了させた。反応を、0.2Mの硫酸(Sigma)を使用して停止させた。450nmで記録した光学密度の値の平均と標準偏差(SD)を、自動マイクロプレートリーダー(Bio−Rad Laboratories,Richmond,CA)から計算した。試験試料中の抗体濃度を、精製したマウスIgG抗体(Sigma,St.Louis,MO)または精製したマウスIgA(Bethyl Laboratories,Montgomery,TX)を使用してそれぞれのプレート上でインキュベートした標準曲線から計算した。値は、血清または洗浄液1ミリリットルあたりの特異的抗体のナノグラム数を示す(図6を参照のこと)。
【0069】
(実施例11)
(プラーク減少中和アッセイによる麻疹ウイルスに特異的な抗体の分析)
試料(血清および/または洗浄液)中に含まれるMV特異的抗体の、MVの増殖を中和する能力を、以前に記載された(Ward et al.,Diagn.Microbiol.Infect.Dis.33:147,1999)プラーク減少中和(PRN)アッセイによって評価した。簡単に説明すると、Vero細胞を、90〜95%の細胞集密度が得られるように24ウェルプレート(Falcon,BD Biosciences,Mississauga,Ontario,Canada)にプレートした。試料をPRN中で使用する前に、56℃で40分間熱不活化させた。試料を希釈し、37℃で90分間、MVとともにインキュベートし、その後、70%の細胞集密度のVero細胞の2連のウェルを、100μlの10倍の段階希釈物に感染させた。LebovitzのL15培地(Gibco Life Technologies,Grand Island,NY)中の16%のメチルセルロースの重層を、感染させた細胞に適用し、その後、プレートを5%のCO2中で37℃で4日間インキュベートした。4%のニュートラルレッドの溶液を添加して単層を染色し、その後、さらに24時間置いた。最後に、細胞の単層を、3.7%のホルマリンで10分間固定させ、目で見ることができるプラークを数えて、プラーク形成単位の数を決定した(図7を参照のこと)。それぞれの試料を2連で評価した。PRN指数を、Kaber法を使用して決定して、中和の50%終点を計算した。以下の式を使用してPRN値を計算した:最高希釈の逆数のlog10−[(平均プラーク数/ウイルス対照による平均プラーク数の和−0.5)×希釈係数のlog10]。
【0070】
(実施例12)
(麻疹ウイルス抗原ワクチン処方物の安全性)
MV抗原ワクチン処方物を、マウスにおいて安全性(すなわち、毒性)について評価した(実施例9もまた参照のこと)。マウスを、プロテオソームまたはOMP−LPSとともに処方したMV抗原の2または3用量のいずれかで、鼻腔内に(IN)免疫化した。さらに、プロテオソームとともに処方したMV抗原を使用して、粘膜内経路(IM)を通じてマウスを免疫化した。毒性がないことを、本明細書中に開示したワクチン処方物のいずれかを使用して検出した。マウスを毎日観察し、体重を測定した。INまたはIMのいずれかで投与したワクチン処方物については、全てのマウスにおいて行動の変化は記録されず、体重においても統計学的に有意な変動(例えば、+/−1.0グラムより大きい)は検出されなかった。これらのデータは、本発明のワクチン処方物が、おそらく、ヒトである被験体に用いる場合にも安全であることを示唆している。
【0071】
(実施例13)
(麻疹ウイルス抗原ワクチン処方物での免疫化後の血清IgG抗体応答)
MV抗原ワクチン処方物の全身性免疫を誘発する能力を、MV特異的抗体についての定量的ELISAによる血清試料の分析によって評価した。これらの実験では、マウスを図6に示した(矢印)ように、1日目、14日目、および/または28日目に免疫化した。これらの実験では、2用量または3用量のINで投与したプロテオソームMV抗原ワクチン処方物によって、測定可能な量のIgGの統計学的に有意な増加が誘導された(図6)。IMで投与した場合には、プロテオソーム−MVワクチン処方物によって、2用量のワクチンを投与した後、全てのマウスにおいて血清IgGの測定可能な増加が誘発され、これは、3用量の投与後には有意に増加した(図6)。血清IgGの検出可能なレベルはまた、IMで投与した3用量のMVのみを投与したマウスにおいても観察された。OMP−LPS−MV抗原ワクチン処方物でINで免疫化したマウスは、3用量のワクチンの後に有意なレベルのIgGを生じた。2用量のOMP−LPS−MV抗原処方ワクチンの投与によっては、検出可能な血清IgG応答は誘発されなかった。血清IgGは、全ての動物において免疫化の前には検出されず、PBS対照を投与したグループ、MV抗原のみをINで投与したグループ(2または3用量)、ならびにOMP−LPSのみを投与したグループ(2または3用量)を含む対照グループにおいては全ての時点で検出できないままであった(図6)。
【0072】
(実施例14)
(麻疹ウイルス抗原ワクチン処方物での免疫化後の粘膜抗体応答)
鼻洗浄液および肺洗浄液中のIgAの検出のためのELISAを使用して、鼻および気道の粘膜免疫を誘発するMVワクチン処方物の能力を決定した。鼻洗浄および肺洗浄を、最後の免疫化の8日後に行った。有意なレベルのMV特異的IgAが、3用量のプロテオソーム:MVワクチン処方物をINで投与したマウスにおいて検出されたが、そのようなレベルは2用量のワクチンを投与したマウスにおいては検出されなかった(図6)。対照的に、IMで投与した2用量または3用量のプロテオソーム:MV処方ワクチンによっては、検出可能なIgA応答は誘発されなかった(図6)。INで投与した3用量のOMP−LPS−MV抗原処方ワクチンで免疫化したマウスは、有意なレベルのMV特異的IgAを誘発し、力価は肺洗浄液試料において6000ng/mlに達した。IgAレベルは、鼻洗浄液よりも肺洗浄液中でより高かった(図6)。このことは、INで投与されたOMP−LPS−MV抗原ワクチン処方物によって、気道において粘膜免疫応答が誘発されたことを示唆している。IMで投与されたOMP−LPS−MV抗原処方ワクチン(2用量)は、検出可能なIgA応答を誘発しなかった。IgAのレベルは、MV抗原のみをINで投与したグループ、MV抗原のみをIMで投与したグループ(2用量または3用量)、PBS対象、およびOMP−LPSのみをINで投与したグループ(2用量または3用量)を含む対照グループから得られた鼻洗浄液および肺洗浄液の両方において低いままであったか、または検出できなかった。
【0073】
(実施例15)
(麻疹ウイルス抗原ワクチン処方物で免疫化したマウスに由来する血清および洗浄液試料の免疫中和活性)
プラーク減少中和アッセイを使用して、血清試料、さらには、鼻洗浄液および肺洗浄液試料を、最後の免疫化の8日後に採取した際の免疫中和活性について分析した。これらの実験では、INで投与したプロテオソーム−MV抗原処方ワクチンは、低いが有意なMV中和を示した(図7)。IMで投与したプロテオソーム−MVワクチン処方物は、粘膜IgA応答を誘発せず(図6)、結果として、ウイルスの中和は、MVを鼻または肺洗浄液試料に接触させた場合にも観察されなかった。IMで投与したプロテオソーム−MVワクチン処方物(3用量)によって得られた血清試料は、MVの増殖を中和することが示された(図7)。IMで投与したプロテオソーム−MV抗原ワクチン(3用量)と比較して、有意に低い中和レベルが、プロテオソーム−MV抗原処方物(2用量)をIMで投与したマウスと、MV抗原のみをIMで投与(3用量)したマウスに由来する血清試料を用いて観察された(図4)。これは、ELISAによって測定したIgGレベル(図6)と一致した。さらに、INで投与した3用量のOMP−LPS−MV抗原ワクチン処方物により、中和血清抗体の生産が誘発された。同様の結果が、INで投与されたプロテオソーム−MV処方物についても観察された。免疫中和活性の検出可能なレベルはまた、肺洗浄液試料においても観察された(図7)。MV抗原のみをINで投与したグループ(2または3用量)、PBSのみを投与したグループ、およびOMP−LPSのみを投与したグループ(2または3用量)のような対照グループから得られた試料は、MV中和活性を有していなかった。これらのデータは、MV抗原ワクチン処方物が、MV感染とその合併症からワクチンを接種した被験体を防御できる免疫応答を誘発することを示唆している。
【0074】
(実施例16)
(麻疹ウイルス抗原ワクチン処方物で免疫化したマウスにおける免疫応答)
種々のIgG抗体イソ型の優位は、特異的なタイプの免疫応答に関係している。血清IgG1は体液性免疫に関与しているTH2型応答に関係しており、一方、血清IgG2aは細胞性免疫に関与しているTH1型応答に関係している。イソ型特異的IgG1またはIgG2a抗体の濃度を、最後の免疫化の8日後に回収した血清においてELISAによって測定した。図8は、各実験群について、血清試料中のIgG1とIgG2aレベルと、それぞれのIgG1/IgG2a比を示す。血清IgG応答が対照よりも有意に高いグループについては、プロテオソームまたはOMP:LPSを含むMVの処方物により、MVのみをINまたはIMで投与したグループと比較して低いIgG1/IgG2a比が得られ、これは、プロテオソームおよびOMP:LPSがMV特異的免疫応答を1型の表現形へと再度向けることに有効であることを示している。
【0075】
(実施例17)
(麻疹ウイルス抗原に対する血清抗体の特異性の分析)
血清抗体の抗原特異性を、免疫ブロット分析によって決定した。MV H、F、およびMタンパク質を検出するために、比較用免疫ブロットを設計した(図9)。MV中和抗体を有している血清(INで投与したOMP−LPS−MV抗原ワクチン処方物(3用量)で免疫したマウスから得た)を、非中和抗体を有している血清(IMで投与したプロテオソーム−MV抗原ワクチン処方物(2用量)で免疫化したマウスから得た)と比較した。高い中和活性を有している抗体を含む血清は、MVタンパク質に特異的に結合することができた。対照的に、低い中和活性を有している血清試料は、MV Hタンパク質を検出することができず、MV Mタンパク質を弱く認識した。MV Fタンパク質の認識は、同様の分子の大きさの交差反応性であるVero細胞タンパク質の存在が原因で、非特異的なバックグラウンドの結合を上回って検出することは困難であった。それにもかかわらず、F0/F1バンドの強さは、免疫ブロットを中和抗体と接触させた場合には、非中和抗体と比較して高かった。まとめると、これらの結果は、中和活性のレベルが、MV抗原の認識、例えば、MV Hタンパク質の認識のレベルと相関関係にあることを示している。
【0076】
(実施例18)
(種々の用量の麻疹ウイルス抗原−プロテオソーム:LPS処方物を投与した動物の免疫応答)
この実施例では、種々の鼻腔内用量のプロテオソーム:LPS(IVX908)とともに処方された麻疹ウイルスワクチンを投与したマウスにおける、粘膜および全身性中和抗体免疫応答について記載する。
【0077】
(麻疹抗原の調製)
麻疹ウイルス分割抗原を以下のように調製した。Moratenワクチン株MV(R.Wittes,Connaught Laboratory,Mississauga,ONから譲り受けた)を、10レベルの細胞工業用チャンバー(Nalge Nunc International,Rochester,NY)を使用して、0.01〜0.001の感染多重度(MOI)でVeroミドリザル腎臓細胞中で増殖させた。細胞変性効果がピークの時に、フラスコを1回凍結−融解させた。細胞の破片を遠心分離(2100×g、4℃で20分間)によって除去し;プールした上清を最初に0.45μmのフィルター、その後、0.22μmのフィルターを通して濾過した。濾液を超遠心分離し(10,000×g、4℃で2時間)、ペレットを再度懸濁し、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)溶液中で超音波処理した。タンパク質濃度を、ウシ血清アルブミン画分Vとウシγグロブリン画分II(Pierce Bicinchoninic Acid Protein Assay,Pierce Biotechnology,Rockford,IL)の混合物を用いた標準曲線に基づいて測定した。IVX908との処方の前に、1%の界面活性剤(Mega−10、Bachem AG)をMV抗原調製物に添加し、その後、これを、PBSに対して、Slide−A−Lyzer透析カセット(Pierce,Rockford,IL)中で7日間かけて透析した。
【0078】
(麻疹ウイルス抗原の特徴付け)
MV分割抗原の段階希釈物を、10%のポリアクリルアミドゲル上での電気泳動によって分離し、タンパク質のバンドを、クマシーブルーG−250(Kodak,Rochester,NY)で視覚化した(図10A)。MV Hタンパク質に相当する80kDaのバンドが観察された。予想されたように、種々のFタンパク質のバンドが得られた。F0は60kDaのタンパク質として同定され、タンパク質分解によって処理されたF1サブユニットは41kDaのタンパク質バンドとして見られた。クマシー染色によって同定された他のMV抗原には、Nタンパク質(50〜60kDa)とMタンパク質(38kDa)が含まれていた。MV抗原調製物中の残りのVeroタンパク質の存在(例えば、Vero細胞溶解物中でのみ検出された約70kDaの濃いバンド)もまた、クマシー染色によって観察された。
【0079】
図10Bに示すように、抗原調製物中に存在する個々のMVタンパク質の相対量および絶対量を、Scion Imageソフトウェアを使用したクマシー染色したゲルの定量的デンシトメトリー分析によって見積もった。それぞれのバンドの全タンパク質に対する分率を評価し、H抗原とF抗原に起因する割合を決定した。Hタンパク質とFタンパク質は、MV調製物中の全タンパク質の約30%を占めた。
【0080】
平行なゲル上で泳動したMV抗原を、免疫ブロット分析のためにPVDF膜に移した。膜を、5%の脱脂粉乳−0.1%のTween−20を含むPBS(PBS−T)でブロックし、その後、室温(RT)で1時間、モノクローナル抗Fまたは抗H抗体(Fabian Wild,Institut Pasteur de Lyon,Franceより提供された)とともにインキュベートした。PBS−Tでの洗浄後、PVDF膜をヤギ抗マウスHRP(Jackson Immunoresearch Laboratories,West Grove,PA)に、室温で1時間接触させた。膜をHRP基質中に浸し、PVDF膜へのヤギ抗マウスHRP結合体の結合を、製造業者の説明書(ECLキット、Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)にしたがって行ったECLアッセイを使用して視覚化した。結果を図10Aに示す。
【0081】
(プロテオソームをベースとする麻疹ウイルス(IVX908−MV)の調製)
IVX908(Protollin(商標)としてもまた公知である)を、cGMPガイドラインにしたがって製造した。これは、以前に記載されたように(Rima et al.,Curr.Topics Microbiol.Immunol.191:65−83(1995))透析濾過によって調製された期待される赤痢菌(S.flexneri)ワクチンのプロテオソーム−赤痢菌(S.flexneri)2a LPSロットと同じであった。LPSに対するプロテオソームポーリンの比は、およそ1:1wt/wtであった。髄膜炎菌(N.Meningtidis)ポーリン(Porin)A、ポーリンB、およびクラスIVタンパク質は、それぞれ、全プロテオソームタンパク質含有量の約20%、75%、および5%を占めた。IVX908を、動物への投与の直前に、1:1の比でMV抗原調製物と混合した。
【0082】
(電子顕微鏡によるIVX908−MVの特徴付け)
ワクチン処方物を、ニッケルグリッドの上のairfuge上で5分間遠心分離した。次いで、グリッドを1%のBSAのブロッキング溶液中に5分間浸した。モノクローナル抗H(Chemicon International,Temecula,CA)を、一次抗体として使用した。室温で1時間のインキュベーションの後、グリッドをさらに、1%のBSAで5分間ブロックし、その後、抗マウスIgG−Gold−10nm(Aurion,Wageningen,Netherlands)に対して室温で1時間接触させた。グリッドをPBSと再蒸留水で洗浄し、その後、風乾させた。最後に、グリッドをPTA 3%(pH6.0)(ホスホタングジック酸(phosphotungsic acid)で着色し、日立7100電子顕微鏡を使用して観察した。代表的な電子顕微鏡写真を図10Cに示す。IVX908は、種々の大きさ(100nmから300nm)の丸型の膜構造を示した(図1C)。IVX908構造の表面との金粒子の接近した会合は、ワクチン処方物中でMV抗原がIVX908と会合していることを示した。IVX908と会合していないH抗原もまた観察された。
【0083】
(動物実験の手順および試料の採取)
全ての動物の処理は、マギル大学(McGill University)のAnimal Care and Use Committee(プロトコール#4481)によって承認された。10週齢の雌のBALB/cマウスの21個のグループを使用した(1つのグループあたり5匹の動物)。体重と毒性の兆候(すなわち、毛の状態、猫背の姿勢、脂性肌、眼の分泌物、脱水状態)を、2日ごとに、実験手順が終わるまでモニターした。表1は、研究した種々の実験グループを記載する。ワクチン処方物には、1用量あたり1μg、3μg、および6μgの濃度でMV抗原を含めたが、IVX908の濃度は、全ての処方物について3μg/用量の定量に維持した。PBSを、全てのワクチン処方物について希釈剤として使用した。対照のグループには、IVX908のみ(3μg/用量)、MV抗原のみ(1、3、または6μg/用量)、Vero細胞タンパク質のみ(6μg/用量)、IVX908−Vero細胞タンパク質(6μg/用量)、およびビヒクルPBSを投与した。
【0084】
全てのワクチンを鼻腔内に投与した。免疫化を、自動導入チャンバーを使用したイソフルラン麻酔下で行い、25μlのワクチンを、ピペットゴムと滅菌チップを使用して、鼻腔内に(1つの鼻腔について12.5μl)注入した。マウスを、2週間おきに、1日目と14日目に、3用量を投与するグループについては、28日目にも免疫化した。マウスを、各免疫化の前と、最後の免疫化の10日後(2用量のグループおよび3用量のグループについて、それぞれ、24日目および38日目)に、側部伏在静脈から採血した。IVX908−MVの全ての用量は、初回免疫および追加免疫の両方について十分に寛容であった。行動の変化は記録されず、体重においてもごくわずかな変動しか(例えば、+/−1.0グラム)検出されなかった。IVX908のみ、またはIVX908−MVで鼻腔内に免疫化した動物のうちの少数(<10%)は、油性被毛を有しており、免疫化の5日後までに猫背の姿勢となった。しかし、体重の減少はそれらのマウスにおいては観察されなかった。
【0085】
最終日に、マウスをCO2での窒息によって屠殺し、その後、マウスを心臓の穿刺によって放血させた。鼻と肺の洗浄を、気管の切開を行い、そして12G−カテーテル(Clear−Cath,Abbott,Ireland)を、最初に、主気道に、その後に鼻咽頭に挿入することによって行った。それぞれの位置について、カテーテルを縫合と、0.1%のBSAとプロテアーゼ阻害因子混合物(AEBSF、EDTA、ベスタチン、E−64、ロイペプチン、およびアプロチニン(Sigma,St−Louis,MI)の混合物を含む)を含む1mlのPBSによって固定した。洗浄液を、肺洗浄液の吸引、または鼻孔から垂れる液を集めることによって回収した。全ての液体を、使用するまで−20℃で保存した。最終日には、脾臓を無菌操作によって取り出し、単細胞懸濁液を、70μmのNylon細胞ストレーナー(BD Falcon)を使用して調製した。脾細胞を、10%のウシ胎児血清(GIBCO)と1μg/mlのゲンタマイシン(Wisent)を補充したRPMI 1640(Wisent)中に再度懸濁した。
【0086】
(表1 実験グループの詳細)
【0087】
【表1】
(ELISAによるMV特異的抗体の定量)
血清および粘膜のMV特異的抗体応答を、定量的ELISAによって測定した。血清中の全IgGおよび特異的IgGイソ型(IgG1、IgG2a)を測定した。鼻洗浄液および肺洗浄液中のMV特異的IgAレベルを決定した。丸底の96ウェルマイクロタイタープレート(Greiner,MJS Biolynx,Brockville,ON)を、炭酸−重炭酸緩衝液(pH9.6)中に希釈した1μg/mlの超音波処理した全MV抗原で、4℃で一晩コーティングした。プレートを、2%の脱脂粉乳−PBS−Tでブロックし、その後、試料の希釈物を2連で添加し、37℃で2時間インキュベートした。PBS−Tでの洗浄後、二次標識抗体を、37℃で1時間かけて添加した。二次抗体には、ヤギ抗マウスIgG HRP(Pharmingen BD,San Diego,CA)、ヤギ抗マウスIgG1−HRP、ヤギ抗マウスIgG2a−HRP、およびヤギ抗−マウスIgG2b−HRP(Southern Biotechnologies Associates,Birmingham,AL)を含めた。IgAの検出のためには、ラット抗マウスIgA−ビオチン(Pharmingen,BD,San Diego,CA)を二次抗体として使用し、続いて、ストレプトアビジン−HRP(Jackson Immunoresearch Laboratories,West Grove,PA)を使用した。アッセイを、TM Blue基質(Serologicals Corporation,Norcross,GA)の添加によって完了させた。反応を、0.2Mの硫酸(Sigma−Aldrich Canada,Oakville,Ontario)を使用して停止させた。各試料の段階希釈物を測定し、標準曲線の25%〜75%の範囲に入るデータ点の光学密度の値を選択して、最終的な推定濃度を得た。450nmでの光学密度の値の平均と標準偏差(S.D.)の値を、自動マイクロプレートリーダー(Bio−Rad Laboratories,Richmond,CA)から計算した。試験試料中の抗体濃度を、精製したマウスIgG(Sigma−Aldrich Canada,Oakville,Ontario)または精製したマウスIgA(Bethyl Laboratories,Montgomery,TX)を使用してそれぞれのプレートについて作製した標準曲線から計算した。値は、血清または肺/鼻洗浄液1ml中の特異的抗体のngを示す。プロテオソームをベースとするワクチンで免疫化した後のセロコンバーションを、ワクチン前のレベルからの少なくとも4倍の抗体力価の上昇と定義した。
【0088】
免疫化した日(1日目、14日目、28日目)、および最終日(24日目または38日目)にELISAによって測定したBalb/cマウスの血清中に存在する全MV特異的IgGを示すデータを、図11に提供する。値は、平均IgG濃度+/−SEMとして示す。血清抗体は、第1回目のワクチン用量の後では、全ての研究グループにおいてほとんどの動物において検出できなかった。IVX908−MVで免疫化した動物は、2回目の免疫化の後にセロコンバーションし(図11A)、これは、少なくとも1回の追加用量が免疫応答を誘発するために効果的であることを示唆している。有意に高いレベルのMV特異的血清IgGが、3回目の免疫を投与した動物において得られた。血清IgGレベルの上昇は、ワクチン処方物に使用されるMV分割抗原の濃度に応じて変化した。MV抗原の用量と血清IgGとの間の相関係数(R2)は、2用量の後では0.938であり、3用量の後では0.934であった。MVのみ(図11Aに示した6μgのMV対照)、IVX908のみ、6μgのVeroタンパク質、IVX−Vero、およびPBSは、検出できなかったか、または非常に低いレベルのIgGを有していた(1〜500ng/mlの範囲の値)(一元配置分散分析(ANOVA)およびボンフェローニ多重比較試験によってp<0.05)。
【0089】
特異的イソ型抗体についてのELISAの結果を、3用量のIVX−908−MVを投与した動物の最後の採血の血清試料について行った(図11B)。図11Bの左側のパネルの値は、5匹の動物の平均濃度+/−SDを示す。IgG1/IgG2aの平均レベルの比を計算し、値を示し、図11Bの右側のパネルにおいてグラフにプロットした。
【0090】
図12は、最後の免疫化の10日後(2用量または3用量での免疫化についてそれぞれ、24日目または38日目)に動物から得られた鼻洗浄液および肺洗浄液中のIgAのレベルを示すELISAデータを示す。2用量の後、MV特異的IgAのセロコンバーションは、6μgのMV分割抗原を含むIVX908−MVで免疫化した動物においてのみ観察された。このことは、MV特異的粘膜応答の誘導が抗原用量依存的であることを示唆している。用量依存性はまた、3用量を投与した動物においても観察された。3用量を投与した動物についての、鼻洗浄液および肺洗浄液中のMV用量とIgAレベルとの間の相関係数は、それぞれ、0.977および0.826であった。MV特異的IgAレベルは、肺洗浄液と鼻洗浄液において同様であり、このことは、Protollin−MVによって、下部および上部気道の両方において粘膜応答が誘発されたことを示唆している。IgAのレベルは、全ての対照グループの呼吸粘膜分泌物中では低いままであったか、または検出不可能であった。
【0091】
(プラーク減少中和(PRN)アッセイ)
MV中和抗体を、以前に記載された(Ward et al.,Diagn.Microbiol.Infect.Dis.33:147−52(1999))プラーク減少中和(PRN)アッセイによって評価した。簡単に説明すると、Vero細胞を、90〜95%の細胞集密度が得られるように24ウェルプレート(Falcon,BD Biosciences,Mississauga,ON,Canada)に播種した。血清試料を、各実験グループの5匹の動物からプールし、使用前に、56℃で40分間熱不活化させた。血清の段階希釈物を混合し、37℃で90分間、継代数の低いEdmonston MV(25〜35プラーク形成単位)とともにインキュベートした。その後、細胞集密状態のVero細胞の2連のウェルを、100μlの血清の2倍の段階希釈物+MV混合物に感染させた。LiebovitzのL−15培地(Gibco/Life Technologies,Grand Island,NY)中の16%のメチルセルロースの重層を、感染させた細胞に適用し、その後、細胞を5%のCO2中で37℃で4日間インキュベートした。4%のニュートラルレッドの溶液を添加して、単層を染色し、細胞をさらに24時間インキュベートした。その後、細胞の単層を、3.7%のホルマリンで10分間固定した。目で見ることができるプラークを数えて、プラーク形成単位(PFU)の数を決定した。ウイルスのみを陰性対照とし、そして麻疹ウイルスワクチンをワクチン接種した個体に由来するヒトの血清を陽性対照とした。PRN値をKaber法を使用して得、中和の50%終点を決定した。PRN値は、プラークの数が≧50%減少した血清希釈の逆数のlog2として表される。比較のために、ヒトの血清防御は、PRN値>120として定義されている(Chen et al.,J.Infect.Dis.162:1036−42(1990))。PRN値を抗体濃度に対して標準化した。2用量および3用量のIVX908:MV抗原ワクチンを投与した後に動物から得られた血清試料の中和活性のグラフによる表示を、それぞれ、図13Aおよび図13Bに示す。全てのMV分割抗原濃度で、2用量のIVX908−MVが、有意な血清中和活性を誘発するために十分であった。さらなる用量のIVX908−MVによって、血清中和応答が増強された。鼻洗浄液および肺洗浄液中に存在する抗体による有意な中和はまた、最も高いMV分割抗原濃度(6μg)を投与したグループにおいて、および3μg/用量の肺洗浄液中でも観察された。対照グループに由来する血清および粘膜試料は、いずれの時点においても中和活性を有していなかった。
【0092】
(血清中の抗Hタンパク質抗体の検出)
血清を、3用量の高い中和活性を有している、1用量あたり6μgのIVX908−MVを投与した動物から回収し、MV抗原に特異的な抗体を検出するための免疫ブロットによって分析した。HおよびF MV抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体を使用したMV分割抗原の免疫ブロット分析(上記の調製方法を参照のこと)もまた行った。MV分割抗原、Veroタンパク質、およびOMPプロテオソームの調製物をSDS−PAGEによって分離し、分離した抗原の免疫ブロットを上記のように行った。図14に示すように、IVX908−MVで免疫化したマウスから回収した血清は、麻疹ウイルスHタンパク質(80kDa);麻疹ウイルスF0タンパク質(50〜60kDa);麻疹ウイルスF1タンパク質(41kDa);髄膜炎菌(N.meningitidis)OMP Por A(45kDa);および髄膜炎菌(N.meningitidis)OMP Por B(33kDa)を認識した。
【0093】
(ELISPOTによるサイトカインの検出)
マウスにおいては、血清IgG1はTH2型応答に関係しており、一方、血清IgG2aはTH1型応答に関係している(Maassen et al.,Vaccine 21:2751−57(2003))。最後のワクチン用量の10日後に、脾臓を全てのマウスから得た。単核細胞を、70μmのNylon細胞ストレーナー(BD Falcon)を通して処理することによって脾臓から単離し、単細胞懸濁液を得た。1つの実験グループあたり5匹の動物(表1を参照のこと)に由来する脾細胞をプールした。脾細胞によるIFNγ分泌のMV特異的刺激を、ELIPSOTによって定量した(Enzyme Linked ImmunoSPOT)(MABTECH,Nacka、Sweden)。脾細胞を、炭酸/重炭酸緩衝液(pH9.6)中に希釈した抗IFNγモノクローナル抗体クローンAN−18の5μg/mlでコーティングしたMultiScreen(商標)Immunobilon−Pベース96ウェルプレート(Millipore,Billerica,MA)中に100,000細胞/ウェルの密度で播種した。脾細胞を、種々の濃度のMV分割抗原(0.1から10μg)で72時間刺激した。PHA(5μg/mL)を陽性対照として使用した。Veroタンパク質調製物(10μg/mL)と培養培地を陰性対照として使用した。結果を、陰性対照の値を引き算した後、スポット形成細胞(SFC)/100万個の脾細胞として表す。陰性対照は、ほとんどの実験において1つのウェルあたり5未満のスポットを生じた(平均=1.3±1.2)。実験用のウェルは、5より多いスポット/ウェルが存在する(平均よりも>3 SD)場合に、ポジティブとみなした。Veroタンパク質調製物のみによって誘導されたスポットの平均数(陰性対照値)を、種々の濃度のMV分割抗原によって誘導されたスポットの平均数から引き算し、これを、100,000個の細胞あたりのサイトカインスポット形成T細胞サブセットの数に対して較正した(図15)。MV分割抗原の、対照グループ(IVXのみ、MVのみ、PBS)に由来する脾細胞とのインキュベーションによっては、スポット形成は生じなかった。これらのデータは、鼻腔内に投与されたIVX908−MVがMV特異的IFNγ応答を誘導する能力を有していることを示している。値は、3連の実験の平均を表す(*p<0.05 不等分散の片側t検定)。
【0094】
この実施例の実験についての統計学的分析を、Instat(GraphPad Software,San Diego,CA)を使用して行った。種々の試験グループについて得られた平均を、ボンフェローニ多重比較ANOVAを使用して比較した。全ての試験において、<0.05のp値を統計学的に有意とみなした。
【0095】
(実施例19)
(DNAワクチンで感作し、IVX908で追加免疫したサルにおける免疫応答)
この実施例では、麻疹DNAワクチンで免疫し、その後、IVX908を鼻腔内に追加免疫した幼若アカゲザルにおける免疫応答を記載する。この研究の全ての動物を、実験用動物の適切な世話についての手順およびプロトコールにしたがって世話し、処置した。
【0096】
幼若アカゲザル(麻疹血清反応陰性)のグループに、DNAワクチン構築物での2回の感作免疫を投与し、その後、弱毒化麻疹ワクチンまたはIVX908−MVのいずれかで追加免疫した。DNAワクチン構築物には、MV Hタンパク質をコードするDNAを含むプラスミド(pMSINH)と、MV Hタンパク質およびFタンパク質をコードするDNAを含む2シストロン性プラスミド(pMSINH−FdU)を含めた。プラスミドを、当該分野で公知の方法にしたがって調製した。第3のDNAワクチン、CVD 1208(pMSIN/HF)を、赤痢菌(Shigella flexneri)2a株CVD 1208を、Hタンパク質とFタンパク質をコードするプラスミドで、Pasetti et al.(J.Virol.77:5209−17(2003))に記載されている方法と同様の手順にしたがってトランスフェクトすることによって調製した。動物に、0日目と28日目に、DNAワクチンで2回の感作免疫を受けさせた。pMSINHおよびpMSINH−FdUのそれぞれの感作用量は、全部で1mgであり、2本の異なる脚にBiojector(登録商標)(Bioject Medical Technologies,Inc.,Bedminster,NJ)を使用して500μgのアリコートを皮内に(i.d.)投与した。CVD 1208(pMSIN/HF)細菌を、鼻腔内に(i.n.)投与した。59日目に、動物に弱毒化麻疹ワクチン(例えば、標準的なプロトコールにしたがって弱毒化したSchwarz株またはEdmonston株(ATCC,Manassan,VA))のいずれかを、当該分野で公知の方法にしたがってエアゾールによって追加免疫を投与したか、あるいは、鼻腔内(i.n.)に投与したIVX908−MV(全部で50μg、片側の鼻孔に25μg)で追加免疫した。追加免疫を、59日目に投与した。対照には、(1)PBSでの2回の感作免疫、その後の弱毒化麻疹ワクチンのエアゾール投与による追加免疫;(2)PBSでの2回の感作免疫、その後のIVX908での追加免疫を含めた。免疫化プロトコールの概要を表2に示す。
【0097】
(表2 動物のグループと免疫化スケジュール)
【0098】
【表2】
血清試料を、感作免疫の前に、−7日目および0日目(採決前)にサルから得た。その後、動物に最初の感作免疫を投与した後に、数日おき、1週間おき、または2週間に1回、血清を回収した。
【0099】
血清中のMV抗原特異的IgG抗体の存在を、ELISAによって決定した。ELISAは、当業者に公知の標準的な手順にしたがって行った。MV溶解物(Advanced Biotechnology,Colmbia,MD)。表3は、0日目から73日目まで、および0日目から91日目までの抗MV抗原力価の倍加を示す。
【0100】
(表3 麻疹抗原特異的IgG応答)
【0101】
【表3】
麻疹ウイルス抗原特異的IFNγを、血液を分画するための当該分野で公知の方法にしたがって動物から単離した末梢血単核細胞(PBMC)を使用して決定した。PBMCをMV溶解物(Advanced Biotechnology,Colmbia,MD)(5μg/ml)で、予めIFNγ抗体(Mabtech)でコーティングしておいたニトロセルロースプレート中で刺激した。106個のPBMCあたりのスポット形成細胞の平均数として表した結果を、表4に示す。
【0102】
(表4 幼若アカゲザルにおける麻疹ウイルス特異的IFNγ応答)
【0103】
【表4】
動物から回収した血清を、当該分野で公知であり実施例18に記載する方法にしたがって行ったPRNアッセイにおいて中和活性について分析した。個々のサルについての結果を、表5に示す。比較のために、ヒトの血清防御は、PRN値>120として定義されている(Chen et al.,J.Infect.Dis.162:1036−42(1990))。
【0104】
7匹の動物にIVX908−MVを投与し、全ての動物が全く症状を示さなかった。このことは、IVX908−MV処方物には全く毒性がなく、動物に有害な反応を全く生じないことを示している。したがって、IVX908−MV麻疹ワクチンは、動物に安全に投与され、特異的なウイルス中和免疫応答を誘導する。
【0105】
IVX908−MV麻疹ワクチンの、動物が麻疹感染の臨床的な症状を発現することを防ぐ能力を、追加免疫のおよそ1年後に、麻疹ウイルス株で、表2に示したグループにおいてサルをチャレンジすることによって決定した。動物を、麻疹感染を示す兆候についてモニターし、ウイルス負荷を決定した。体液性免疫応答(全身性および粘膜の両方)を、血清と、鼻洗浄液および肺洗浄液中の免疫グロブリンレベルを測定するための本明細書中に記載した方法によって決定した。動物において誘導される細胞性応答は、当該分野で公知であり、本明細書中に記載される方法によって決定した。
【0106】
(表5 免疫化マカク由来血清中のMV中和抗体)
【0107】
【表5−1】
【0108】
【表5−2】
上記から、本発明の特異的な実施形態が、説明の目的のために本明細書中に記載されているが、種々の変更を、本発明の精神および範囲を逸脱することなく行うことができることが明らかである。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲による場合を除いて、限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1A】図1AおよびBは、プロテオソームのバルク材料の製造についての2つの実施形態を示す(それぞれ、フローチャート1Aおよびフローチャート1B)
【図1B】図1AおよびBは、プロテオソームのバルク材料の製造についての2つの実施形態を示す(それぞれ、フローチャート1Aおよびフローチャート1B)
【図2】図2は、フレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)2a LPSの製造のためのスキームを示す(フローチャート2)。
【図3】図3は、IVX−908プロテオソーム−LPSアジュバントの製造のためのスキームを示す(フローチャート3)。
【図4】図4Aおよび4Bは、麻疹ウイルスFタンパク質とHタンパク質が、免疫ブロット分析において麻疹ウイルス分割抗原調製物中で検出可能であることを示す。麻疹ウイルス分割抗原調製物の免疫ブロットを、Hタンパク質に特異的に結合する抗体で(図4A、「H」で示したレーン)、そしてFタンパク質に特異的に結合する抗体(図4A、「F」で示したレーン)でプローブした。抗Fタンパク質抗体もまた、Vero細胞抽出物の免疫ブロットをプローブするためにも使用した。麻疹ウイルス分割抗原調製物のクマシーブルーで染色したゲルは、図4Aの一番右寄りのレーンに示されている。図4Bは、クマシーブルーで染色したゲルの定量的デンシトメトリー分析を示す。
【図5A】図5は、プロジュバントまたはOMP−LPSを用いた、およびそれらを用いない、SDS−PAGEおよび電子顕微鏡によるMV抗原調製物の分析を示す。図5Aでは、左側のパネルは、以下に列挙された試料のクマシーブルーで染色したSDS−PAGEゲルであり、中央のパネルは抗Hタンパク質モノクローナル抗体でプローブした免疫ブロットを示し、右側のパネルは、抗Fタンパク質モノクローナル抗体でプローブした免疫ブロットを示す。レーン1:MV;レーン2:MVの可溶性画分;レーン3:MVの不溶性画分;レーン4:MV+OMP;レーン5:MV+OMPの可溶性画分;レーン6:MV+OMPの不溶性画分;レーン7:OMPのみ。図5Bは、プロテオソーム:MV調製物(Pro−MV)中、およびOMP−LPS−MV調製物中のHタンパク質の存在を示す。
【図5B】図5は、プロジュバントまたはOMP−LPSを用いた、およびそれらを用いない、SDS−PAGEおよび電子顕微鏡によるMV抗原調製物の分析を示す。図5Aでは、左側のパネルは、以下に列挙された試料のクマシーブルーで染色したSDS−PAGEゲルであり、中央のパネルは抗Hタンパク質モノクローナル抗体でプローブした免疫ブロットを示し、右側のパネルは、抗Fタンパク質モノクローナル抗体でプローブした免疫ブロットを示す。レーン1:MV;レーン2:MVの可溶性画分;レーン3:MVの不溶性画分;レーン4:MV+OMP;レーン5:MV+OMPの可溶性画分;レーン6:MV+OMPの不溶性画分;レーン7:OMPのみ。図5Bは、プロテオソーム:MV調製物(Pro−MV)中、およびOMP−LPS−MV調製物中のHタンパク質の存在を示す。
【図6A】図6A〜6Cは、MV分割抗原ワクチンを投与した動物中での血清IgGおよび粘膜IgAのレベルのグラフ表示を示す。図6Aは、プロテオソーム:MVを鼻腔内に(IN)投与したマウスにおける免疫グロブリンレベルを示す。図6Bは、プロテオソーム:MVを筋肉内に(IM)投与したマウスにおける免疫グロブリンレベルを示す。図6Cは、OMP−LPS−MVを鼻腔内に(IN)投与したマウスにおける免疫グロブリンレベルを示す。
【図6B】図6A〜6Cは、MV分割抗原ワクチンを投与した動物中での血清IgGおよび粘膜IgAのレベルのグラフ表示を示す。図6Aは、プロテオソーム:MVを鼻腔内に(IN)投与したマウスにおける免疫グロブリンレベルを示す。図6Bは、プロテオソーム:MVを筋肉内に(IM)投与したマウスにおける免疫グロブリンレベルを示す。図6Cは、OMP−LPS−MVを鼻腔内に(IN)投与したマウスにおける免疫グロブリンレベルを示す。
【図6C】図6A〜6Cは、MV分割抗原ワクチンを投与した動物中での血清IgGおよび粘膜IgAのレベルのグラフ表示を示す。図6Aは、プロテオソーム:MVを鼻腔内に(IN)投与したマウスにおける免疫グロブリンレベルを示す。図6Bは、プロテオソーム:MVを筋肉内に(IM)投与したマウスにおける免疫グロブリンレベルを示す。図6Cは、OMP−LPS−MVを鼻腔内に(IN)投与したマウスにおける免疫グロブリンレベルを示す。
【図7】図7は、プロテオソーム:MVで鼻腔内に(Pro−MV IN)(上段のパネル);プロテオソーム:MVで筋肉内に(Pro−MV IM)(中段のパネル);およびOMP−LPS−MVで鼻腔内に(IN)(下段のパネル)免疫化した動物の、血清中の抗体と、鼻および肺の洗浄液中の粘膜抗体のプラーク減少中和(PRN)活性のグラフ表示を示す。
【図8】図8は、TH応答のタイプの指標としての特異的IgGイソ型のレベルのグラフ表示を示す。動物は、プロテオソーム:MVで鼻腔内に(Pro−MV IN)(上段のパネル);プロテオソーム:MVで筋肉内に(Pro−MV IM)(中段のパネル);およびOMP−LPS−MVで鼻腔内に(IN)(下段のパネル)免疫化した。
【図9】図9は、Hタンパク質に特異的なモノクローナル抗体(1番目のレーン);Fタンパク質に特異的なモノクローナル抗体(2番目のレーン);Mタンパク質に特異的なモノクローナル抗体でプローブしたMV抗原の免疫ブロットを示す。PRNアッセイにおいて高い中和活性を有していた血清試料を、MVタンパク質(4番目のレーン)およびVeroタンパク質(5番目のレーン)の免疫ブロットに使用し、低い中和抗体または低い中和活性を有している血清試料を、MVタンパク質(6番目のレーン)およびVeroタンパク質(7番目のレーン)に使用した。
【図10A】図10は、麻疹ウイルス分割抗原調製物の免疫ブロット分析と電子顕微鏡分析を示す。図10Aは、麻疹ウイルス分割抗原調製物を抗Hタンパク質モノクローナル抗体で(レーン「H」)または抗Fタンパク質モノクローナル抗体で(レーン「F」)でプローブした免疫ブロットを示す。麻疹ウイルス抗原調製物はまた、クマシーブルーでも染色した(レーン「クマシー」)。図10Bには、SDS−PAGEによって検出したタンパク質バンドのデンシトメトリー分析を示す。図10Cは、IVX908のみ(左側のパネル)と、麻疹ウイルス抗原調製物と組み合わせ、抗Hタンパク質モノクローナル抗体で検出したIVX908の電子顕微鏡分析を示す。
【図10B】図10は、麻疹ウイルス分割抗原調製物の免疫ブロット分析と電子顕微鏡分析を示す。図10Aは、麻疹ウイルス分割抗原調製物を抗Hタンパク質モノクローナル抗体で(レーン「H」)または抗Fタンパク質モノクローナル抗体で(レーン「F」)でプローブした免疫ブロットを示す。麻疹ウイルス抗原調製物はまた、クマシーブルーでも染色した(レーン「クマシー」)。図10Bには、SDS−PAGEによって検出したタンパク質バンドのデンシトメトリー分析を示す。図10Cは、IVX908のみ(左側のパネル)と、麻疹ウイルス抗原調製物と組み合わせ、抗Hタンパク質モノクローナル抗体で検出したIVX908の電子顕微鏡分析を示す。
【図10C】図10は、麻疹ウイルス分割抗原調製物の免疫ブロット分析と電子顕微鏡分析を示す。図10Aは、麻疹ウイルス分割抗原調製物を抗Hタンパク質モノクローナル抗体で(レーン「H」)または抗Fタンパク質モノクローナル抗体で(レーン「F」)でプローブした免疫ブロットを示す。麻疹ウイルス抗原調製物はまた、クマシーブルーでも染色した(レーン「クマシー」)。図10Bには、SDS−PAGEによって検出したタンパク質バンドのデンシトメトリー分析を示す。図10Cは、IVX908のみ(左側のパネル)と、麻疹ウイルス抗原調製物と組み合わせ、抗Hタンパク質モノクローナル抗体で検出したIVX908の電子顕微鏡分析を示す。
【図11】図11は、種々の用量のIVX908−MVで免疫化したマウスの血清中のIgGのELISAによる定量を示す。図11A:免疫化後14日、28日、および38日目に動物から得た血清中のMV特異的IgG(ng/ml)。図11B、左側のパネル:血清中のIgG1およびIgG2aの検出;図11B、右側のパネル:マウスにおけるIgG1:IgG2aの割合。
【図12】図12は、2用量を投与した動物については24日目(図12A)、また、3用量を投与した動物については38日目(図12B)である、IVX908−MVでの最後の免疫化の10日後に動物から得た鼻および肺の洗浄液中のIgAのレベルを示すELISAデータを示す。*によって示す統計学的優位性は、一元配置分散分析(ANOVA)およびボンフェローニ多重比較試験によるp<0.05を示す。
【図13】図13は、2用量(図13A)および3用量(図13B)のIVX908−MVを投与した後に動物から得た血清試料のプラーク減少中和活性のグラフ表示を示す。*によって示す統計学的優位性は、一元配置分散分析(ANOVA)およびボンフェローニ多重比較試験によるp<0.05を示す。
【図14】図14は、IVX908−MVで免疫化したマウスから採取した血清中の麻疹ウイルス抗原に特異的に結合する抗体の存在を決定するための免疫ブロット分析を示す。1番目のレーン:抗Hタンパク質モノクローナル抗体でブロットした分割MV抗原調製物;2番目のレーン:抗Fタンパク質モノクローナル抗体でブロットした分割MV抗原調製物;3番目のレーン:マウスの血清でブロットした分割MV抗原調製物;4番目のレーン:マウスの血清でブロットしたVero細胞調製物;5番目のレーン:マウスの血清でブロットしたプロテオソーム。検出したタンパク質の分子量は以下のとおりである:麻疹ウイルスHタンパク質(80kDa);麻疹ウイルスF0タンパク質(50〜60kDa);麻疹ウイルスF1タンパク質(41kDa);髄膜炎菌(N.meningitidis)OMP Por A(45kDa);および髄膜炎菌(N.meningitidis)OMP Por B(33kDa)。
【図15】図15は、2用量(図15A)および3用量(図15B)のIVX908−MVを投与したマウスから単離し、その後、MV分割抗原で刺激した脾細胞中でのインターフェロンγ(IFNγ)の生産を示す。*によって示す統計学的優位性は、不等分散の片側t検定によるp<0.05を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アジュバントと、1つ以上の麻疹ウイルス抗原とを含む免疫原性組成物であって、該アジュバントは、プロテオソームとリポ糖とを含み、少なくとも1つの麻疹抗原がHタンパク質である、免疫原性組成物。
【請求項2】
前記アジュバントと、Fタンパク質およびHタンパク質を含む2つ以上の麻疹ウイルス抗原とを含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
1つ以上の麻疹ウイルス抗原が組換え麻疹抗原である、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
1つ以上の麻疹抗原が麻疹分割抗原である、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
前記麻疹分割抗原が、Moraten株、Schwarz株、Zagreb株、またはEdmonston株に由来する、請求項4に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
プロテオソームタンパク質の重量パーセントとしてのリポ糖の最終含有量が約10%から500%までの範囲である、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
前記プロテオソームと前記リポ糖とが同じ細菌から得られる、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
前記プロテオソームと前記リポ糖とが異なる細菌から得られる、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
前記プロテオソームがナイセリア属(Neisseria)の種から得られる、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
前記リポ糖が、赤痢菌属(Shigella)、プレシオモナス属(Plesiomonas)、エシェリキア属(Escherichia)、またはサルモネラ属(Salmonella)の種から得られるものである、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
前記免疫原性組成物が、1つ以上のさらなる微生物抗原をさらに含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
前記1つ以上のさらなる微生物抗原が、ウイルス抗原、細菌抗原、寄生虫抗原、またはそれらの組み合わせである、請求項11に記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
麻疹ウイルス抗原に対するプロテオソームの割合が、少なくとも4:1である、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
麻疹ウイルス抗原に対するプロテオソームの割合が、少なくとも2:1である、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
アジュバントと、1つ以上の麻疹ウイルス抗原とを含む免疫原性組成物であって、該アジュバントはプロテオソームを含み、該少なくとも1つの麻疹ウイルス抗原がHタンパク質である、免疫原性組成物。
【請求項16】
前記アジュバントと、Fタンパク質およびHタンパク質を含む2つ以上の麻疹ウイルス抗原とを含む、請求項15に記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
1つ以上の麻疹ウイルス抗原が組換え麻疹抗原である、請求項15に記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
1つ以上の麻疹ウイルス抗原が麻疹分割抗原である、請求項15に記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
前記麻疹分割抗原が、Moraten株、Schwarz株、Zagreb株、またはEdmonston株に由来する、請求項18に記載の免疫原性組成物。
【請求項20】
前記プロテオソームが髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来である、請求項15に記載の免疫原性組成物。
【請求項21】
麻疹ウイルス抗原に対するプロテオソームの割合が、少なくとも4:1である、請求項15に記載の免疫原性組成物。
【請求項22】
麻疹ウイルス抗原に対するプロテオソームの割合が、少なくとも2:1である、請求項15に記載の免疫原性組成物。
【請求項23】
前記免疫原性組成物が、少なくとも1つのさらなる微生物抗原をさらに含む、請求項15に記載の免疫原性組成物。
【請求項24】
前記少なくとも1つのさらなる微生物抗原が、ウイルス抗原、細菌抗原、寄生虫抗原、またはそれらの組み合わせである、請求項23に記載の免疫原性組成物。
【請求項25】
前記プロテオソームが髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)から得られる、請求項21に記載の免疫原性組成物。
【請求項26】
前記プロテオソームが髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)から得られ、そして前記リポ糖がフレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)から得られる、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項27】
薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤を含む、請求項1から26のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項28】
請求項1から4、13から18、21、および22のいずれか一項に記載の免疫原性組成物を、それが必要である被験体に投与する工程を包含する、麻疹感染を処置または予防する方法。
【請求項29】
前記免疫原性組成物が、粘膜、腸内、非経口、経皮、経粘膜、鼻腔内、および吸入からなる群より選択される経路によって投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記免疫原性組成物が鼻腔内に投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
請求項1から4、13から18、21、および22のいずれか一項に記載の免疫原性組成物を、それが必要である被験体に投与する工程を包含する、免疫応答を誘発する方法。
【請求項32】
前記免疫原性組成物が非経口的にまたは鼻腔内に投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記免疫応答が粘膜免疫応答を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記粘膜免疫応答が、IgA免疫グロブリンの産生を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記免疫応答が、細胞性応答を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記免疫応答が、全身性体液性応答を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
免疫応答を誘発するための方法であって、(a)少なくとも1つの麻疹ウイルス抗原をコードするポリヌクレオチドに対して動作可能に連結された少なくとも1つのプロモーターを含む組み換え発現ベクターを、それが必要である被験体に投与する工程、該工程に続く(b)請求項1から4、13から18、21、および22のいずれか一項に記載の免疫原性組成物を少なくとも1回投与する工程を包含する、方法。
【請求項38】
工程(b)において、請求項1から4のいずれか一項に記載の免疫原性組成物が投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記免疫原性組成物が非経口的にまたは鼻腔内に投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記免疫応答が、粘膜免疫応答を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記粘膜免疫応答が、IgA免疫グロブリンの産生を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記免疫応答が、細胞性応答を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
前記免疫応答が、全身性体液性応答を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項44】
麻疹感染を処置または予防するための方法であって、(a)少なくとも1つの麻疹ウイルス抗原をコードするポリヌクレオチドに対して動作可能に連結された少なくとも1つのプロモーターを含む組み換え発現ベクターを、それが必要である被験体に投与する工程、該工程に続く(b)請求項1から4、13から18、21、および22のいずれか一項に記載の免疫原性組成物を少なくとも1回投与する工程を包含する、方法。
【請求項45】
工程(b)において、請求項1から4のいずれか一項に記載の免疫原性組成物が投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記組成物が、粘膜、腸内、非経口、経皮、経粘膜、鼻腔内、および吸入からなる群より選択される経路によって投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記免疫原性組成物が鼻腔内に投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項1】
アジュバントと、1つ以上の麻疹ウイルス抗原とを含む免疫原性組成物であって、該アジュバントは、プロテオソームとリポ糖とを含み、少なくとも1つの麻疹抗原がHタンパク質である、免疫原性組成物。
【請求項2】
前記アジュバントと、Fタンパク質およびHタンパク質を含む2つ以上の麻疹ウイルス抗原とを含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
1つ以上の麻疹ウイルス抗原が組換え麻疹抗原である、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
1つ以上の麻疹抗原が麻疹分割抗原である、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
前記麻疹分割抗原が、Moraten株、Schwarz株、Zagreb株、またはEdmonston株に由来する、請求項4に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
プロテオソームタンパク質の重量パーセントとしてのリポ糖の最終含有量が約10%から500%までの範囲である、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
前記プロテオソームと前記リポ糖とが同じ細菌から得られる、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
前記プロテオソームと前記リポ糖とが異なる細菌から得られる、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
前記プロテオソームがナイセリア属(Neisseria)の種から得られる、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
前記リポ糖が、赤痢菌属(Shigella)、プレシオモナス属(Plesiomonas)、エシェリキア属(Escherichia)、またはサルモネラ属(Salmonella)の種から得られるものである、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
前記免疫原性組成物が、1つ以上のさらなる微生物抗原をさらに含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
前記1つ以上のさらなる微生物抗原が、ウイルス抗原、細菌抗原、寄生虫抗原、またはそれらの組み合わせである、請求項11に記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
麻疹ウイルス抗原に対するプロテオソームの割合が、少なくとも4:1である、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
麻疹ウイルス抗原に対するプロテオソームの割合が、少なくとも2:1である、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
アジュバントと、1つ以上の麻疹ウイルス抗原とを含む免疫原性組成物であって、該アジュバントはプロテオソームを含み、該少なくとも1つの麻疹ウイルス抗原がHタンパク質である、免疫原性組成物。
【請求項16】
前記アジュバントと、Fタンパク質およびHタンパク質を含む2つ以上の麻疹ウイルス抗原とを含む、請求項15に記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
1つ以上の麻疹ウイルス抗原が組換え麻疹抗原である、請求項15に記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
1つ以上の麻疹ウイルス抗原が麻疹分割抗原である、請求項15に記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
前記麻疹分割抗原が、Moraten株、Schwarz株、Zagreb株、またはEdmonston株に由来する、請求項18に記載の免疫原性組成物。
【請求項20】
前記プロテオソームが髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来である、請求項15に記載の免疫原性組成物。
【請求項21】
麻疹ウイルス抗原に対するプロテオソームの割合が、少なくとも4:1である、請求項15に記載の免疫原性組成物。
【請求項22】
麻疹ウイルス抗原に対するプロテオソームの割合が、少なくとも2:1である、請求項15に記載の免疫原性組成物。
【請求項23】
前記免疫原性組成物が、少なくとも1つのさらなる微生物抗原をさらに含む、請求項15に記載の免疫原性組成物。
【請求項24】
前記少なくとも1つのさらなる微生物抗原が、ウイルス抗原、細菌抗原、寄生虫抗原、またはそれらの組み合わせである、請求項23に記載の免疫原性組成物。
【請求項25】
前記プロテオソームが髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)から得られる、請求項21に記載の免疫原性組成物。
【請求項26】
前記プロテオソームが髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)から得られ、そして前記リポ糖がフレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)から得られる、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項27】
薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤を含む、請求項1から26のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項28】
請求項1から4、13から18、21、および22のいずれか一項に記載の免疫原性組成物を、それが必要である被験体に投与する工程を包含する、麻疹感染を処置または予防する方法。
【請求項29】
前記免疫原性組成物が、粘膜、腸内、非経口、経皮、経粘膜、鼻腔内、および吸入からなる群より選択される経路によって投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記免疫原性組成物が鼻腔内に投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
請求項1から4、13から18、21、および22のいずれか一項に記載の免疫原性組成物を、それが必要である被験体に投与する工程を包含する、免疫応答を誘発する方法。
【請求項32】
前記免疫原性組成物が非経口的にまたは鼻腔内に投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記免疫応答が粘膜免疫応答を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記粘膜免疫応答が、IgA免疫グロブリンの産生を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記免疫応答が、細胞性応答を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記免疫応答が、全身性体液性応答を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
免疫応答を誘発するための方法であって、(a)少なくとも1つの麻疹ウイルス抗原をコードするポリヌクレオチドに対して動作可能に連結された少なくとも1つのプロモーターを含む組み換え発現ベクターを、それが必要である被験体に投与する工程、該工程に続く(b)請求項1から4、13から18、21、および22のいずれか一項に記載の免疫原性組成物を少なくとも1回投与する工程を包含する、方法。
【請求項38】
工程(b)において、請求項1から4のいずれか一項に記載の免疫原性組成物が投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記免疫原性組成物が非経口的にまたは鼻腔内に投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記免疫応答が、粘膜免疫応答を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記粘膜免疫応答が、IgA免疫グロブリンの産生を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記免疫応答が、細胞性応答を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
前記免疫応答が、全身性体液性応答を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項44】
麻疹感染を処置または予防するための方法であって、(a)少なくとも1つの麻疹ウイルス抗原をコードするポリヌクレオチドに対して動作可能に連結された少なくとも1つのプロモーターを含む組み換え発現ベクターを、それが必要である被験体に投与する工程、該工程に続く(b)請求項1から4、13から18、21、および22のいずれか一項に記載の免疫原性組成物を少なくとも1回投与する工程を包含する、方法。
【請求項45】
工程(b)において、請求項1から4のいずれか一項に記載の免疫原性組成物が投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記組成物が、粘膜、腸内、非経口、経皮、経粘膜、鼻腔内、および吸入からなる群より選択される経路によって投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記免疫原性組成物が鼻腔内に投与される、請求項44に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2007−505836(P2007−505836A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526431(P2006−526431)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/030361
【国際公開番号】WO2005/027964
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(506013829)アイディー バイオメディカル コーポレイション オブ ケベック (7)
【出願人】(597051654)マクギル ユニバーシティ (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/030361
【国際公開番号】WO2005/027964
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(506013829)アイディー バイオメディカル コーポレイション オブ ケベック (7)
【出願人】(597051654)マクギル ユニバーシティ (3)
【Fターム(参考)】
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