説明

黒色から色彩へ変化するセキュリティー要素

本発明は、紙幣、価値のある文書、権利文書または身分証明文書、切符、ラベル、ブランド商品の識別書、あるいは税小旗のためのセキュリティー要素を開示する。この要素は、実質的に見る角度に応じた色彩変化を示す少なくとも一つの光学的に可変の顔料を含むコーティングと、直交入射においてこの光学的に可変の顔料によって反射される可視スペクトル成分を遮断する少なくとも一つの選択的なスペクトル吸収材料との組み合わせを含む。このセキュリティー要素は、直交する角度で見るときには黒色に見え、そしてかすめ角度で見るときには色彩を呈する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明はセキュリティー(安全保護)文書または物品に関する。より具体的には、それは、セキュリティー文書または物品において用いるために、直交視野(orthogonal view)の下で黒色に見える色彩変化セキュリティー要素であって、それにより偽造や違法な複製に対して保護されるものを開示する。
【0002】
発明の背景
色彩が変化するセキュリティー要素は多くの用途に用いられていて、例えば、紙幣、身分証明文書、価値のある文書、権利文書、税小旗(tax banderole)、セキュリティーラベル、ブランド商品、その他同種類のものにおけるセキュリティーのための特徴として、偽造や違法な複製に対してそれらを保護するために用いられている。色彩が変化するセキュリティー要素は、適当な基材の表面上に、例えばUS 4,424,010、US 5,084,351、US 5,171,363、EP 227 423、US 5,653,792、US 5,279,657、US 7,766,738、US 5,571,624、US 5,569,535、US 5,383,995、US 5,278,590、US 5,059,245、US 4,838,648、US 5,214,530 に開示されているフレーク顔料などの光学的に可変の顔料(OVP)を含むコーティング組成物(例えば、光学的に可変のインク)を塗布することによって製造することができる。光学的に可変のインク(OVI(登録商標))を用いて作り出される印刷は、観察する角度が変わると色彩が変化する特性を示す。
【0003】
光学的に可変の顔料は、実質的に角度に応じた色彩変化を示す、すなわち、例えば直交視野とかすめ視野(grazing view)の下で明確に観察可能な異なる色彩を示す干渉顔料である。このことにより、低い屈折率の干渉層(2.0よりも小さい屈折率n)を有する顔料が適用される。高い屈折率の干渉層(2.0よりも大きいn)を有する顔料(TiO2をコーティングした雲母顔料など)は、実質的に角度に応じた色彩変化を示さない。
【0004】
光学的に可変のインクの色彩範囲を増大させるために、EP-B1-0 227 423に開示されているように、インク配合物に可溶性染料または不溶性顔料を添加し、それにより、所定の色彩特性を得るために光学的に可変の顔料の反射特性の変更および/または望ましくないスペクトル領域の遮断を行うのが有利であるかもしれない。例えば、金色から緑色への光学可変インクにクロモフタル(Cromophtal)黄色顔料(Ciba-Geigyから)を添加することにより、400nmで反射した青色のスペクトル部分を遮断することができ、従って、その金色-緑色OVI(登録商標)の金色の直交視野の色彩に鮮やかな外観が与えられる。
【0005】
現在、直交視野からかすめ視野へ移行すると第一の色彩から第二の色彩へ変化するコーティングや、第一の色彩から黒色へ変化するコーティングが、肉眼での認証のために流通している。かすめ視野における黒色は、光学的に可変の顔料を通常の染料または顔料と混合することによって得られ、その通常のものは、かすめ視野において光学的に可変の顔料の色彩に対する補色を有する。US 5,059,245は光学的に可変のフレークと顔料を含むインクを開示し、そのフレークと顔料は、第一の入射角と第二の入射角よりも大きな入射角での望ましくない色彩を遮断するためにインクのビヒクルの中に分散される。
【0006】
黒色印刷(black printing)は、困難な光の条件下であっても印刷物に良好な視認性を与え、また特定のタイプのセキュリティー要素に容易に組み入れることができるので、現在流通しているデザインにおいてかなり重要なものである。従って、デザイン上の理由から、その外観のうちの一つとして黒色を有する光学的に可変のインクに対する需要がある。
【0007】
しかし、直交視野における第一の色彩からかすめ視野における黒色へ変化するそのようなコーティングは、かすめ視野における黒色が見えにくいという欠点を有する。実際に、システムの物理的性質のために、そのようなコーティングにおける黒色は極めて狭い範囲の観察角度において見えるだけであり(下記参照)、そして人間の視覚の生理と心理のために、かすめ視野において本来はほとんど黒色となるものが、赤紫色、薄緑色あるいはすみれ色などの特定の色彩に見える。
【0008】
発明の概要
本発明の目的は、黒色と色彩の間の明白な変化を示し、そのために先行技術の欠点を克服する色彩が変化するセキュリティー要素を提供することであった。
【0009】
驚くべきことに、以下で説明するセキュリティー要素であって、直交視野における黒色の外観からかすめ視野における色彩へ変化するものを提供することによって、上記の目的が都合よく解決されることが見いだされた。
【0010】
本発明によるセキュリティー要素は、光学的に可変の顔料と、直交入射において前記の光学的に可変の顔料によって反射される可視スペクトル成分を実質的に遮断する光吸収材料との組み合わせに基づくものであり、その結果として、セキュリティー要素は直交視野において黒色の外観を呈する。
【0011】
ここにおいて、そのような組み合わせは、光吸収材料と光学的に可変の顔料との結合によって生み出される協働的な光学的効果の機能的な意味において理解されるはずである。
直交入射において光学的に可変の顔料によって反射される可視スペクトル成分を実質的に遮断するということは、CIELab 1976カラーシステムに従って測定されて決定されるとき、前記の組み合わせの結果が、50単位よりも小さな明度(L*)と15単位よりも小さな彩度(C*)を有することを意味する。
【0012】
従って、本発明は、紙幣、価値のある文書、権利文書または身分証明文書、切符、ラベル、ブランド商品の識別書、あるいは税小旗のためのセキュリティー要素を開示し、このセキュリティー要素は、
i)実質的に見る角度に応じた色彩変化を示し、真空蒸着した薄膜の干渉顔料、干渉層をコーティングした粒子、およびコレステリック液晶顔料からなる群から選択される少なくとも一つの光学的に可変の顔料を含むコーティング、および
ii)直交入射において前記の光学的に可変の顔料によって反射される可視スペクトル成分を実質的に遮断するようなスペクトル吸収特性を有する少なくとも一つの選択的なスペクトル吸収材料、
の組み合わせを有していて、これにより前記セキュリティー要素は、直交する角度で見るときには黒色の外観を呈し、そしてかすめ角度で見るときには色彩のある外観を呈する。
【0013】
本発明によれば、前記の光学的に可変の顔料は好ましくは、反射層、誘電層および吸収層を含む多層の干渉顔料であり、そして前記の選択的なスペクトル吸収材料は、可溶性の有機染料、不溶性の有機顔料および不溶性の無機顔料からなる群から選択される化合物または化合物の混合物である。
【0014】
直交視野における黒色から始まるものである本発明の色彩が変化するセキュリティー要素は、かすめ視野において黒色に変化する先行技術のセキュリティー要素と比べて、はるかに顕著な明確性(下記参照)を有し、また容易に確認可能なものである。注目すべきことに、見る角度が直交から斜めへ変化するときの黒色の外観から色彩への変化は、反対の場合よりも容易に知覚できて、何故ならば、人間の視覚は(困難な照明条件の下であっても)かすめ視野における色彩の予期せざる外観に対して非常に敏感であり、しかるに、かすめ視野において目に見える物体が暗い外観または黒色の外観へ変化することは、かなり一般的な現象だからである。
【0015】
本発明のセキュリティー要素のさらなる利点は、黒色の表面の外観はしばしばセキュリティー文書のデザインの一部であるという事実にあり、それにより、対象とする文書または保護される物品の既知の直交視野像に著しい影響を及ぼすことなく、本発明のセキュリティー要素とともに現行のデザインの品質を向上させることができる。そのような品質が向上したセキュリティー要素を組み込んで、幾何学的色彩(geometameric color)の対を形成することもできる。
【0016】
この開示の文脈において、直交視野または直交入射とは、支持体の平面に対して90°±15°の角度であることを意味し、そしてかすめ視野とは、支持体の平面に対して0°と30°の間の角度であることを意味する。斜め視野は直交でない視野を意味する。
【0017】
この開示の文脈において、幾何学的な対(geometameric pair)の色彩とは、並置されているか、または重なっているか、または互いにあまり遠くない位置に印刷されている二つの印刷領域として定義され、それらは直交する視野角度において類似した視覚上の外観(CIELabの色調、彩度および明度によって定義される外観)を有し、そしてかすめ視野角度において著しく異なる外観を有する。
【0018】
本発明の文脈において、「選択的なスペクトル吸収材料」とは、可視スペクトルの特定の領域においてのみ電磁放射線を吸収する材料を意味する。
この開示の文脈において、黒色とは、CIELab 1976カラーシステム(当分野で知られている拡散照明(鏡面を除く)および8°検出測定条件の下で分光光度計において特徴づけられるもの)において50単位よりも小さな明度(L*)と15単位よりも小さな彩度(C*)を有することとして理解されるべきである。
【0019】
発明の詳細な説明
本発明のセキュリティー要素は、i)実質的に見る角度に応じた色彩変化を示す反射性で光学的に可変の顔料であって、コーティング中に含まれるもの、およびii)選択的なスペクトル吸収材料、の組み合わせに基づくものである。特に、前記の選択的なスペクトル吸収材料は、直交入射において前記の光学的に可変の顔料によって反射される可視スペクトル成分を実質的に遮断するように選択される。その結果として、セキュリティー要素は直交視野において黒色の外観を呈する。
【0020】
実質的に見る角度に応じた色彩変化を示す光学的に可変の顔料は、当分野で知られている。前記の光学的に可変の顔料は、真空蒸着した薄膜の干渉顔料(例えばUS 4,434,010、US 4,879,140による)、干渉層をコーティングした粒子(例えばDE 195 25 503、EP 0 338 428による)、およびコレステリック液晶顔料(例えばDE 195 02 413による)からなる群から選択することができる。特に、前記の光学的に可変の顔料は、反射層、誘電層および吸収層を含む多層の干渉顔料として選択することができる。特に好ましいものは、例えばUS 4,424,010、US 5,084,351、US 4,838,648、US 5,214,530、US 5,281,480、US 5,383,995、US 5,569,535、またはUS 5,571,624に開示されている光学的に可変の顔料である。
【0021】
選択的なスペクトル吸収材料は、可溶性の有機染料、不溶性の有機顔料および不溶性の無機顔料からなる群から選択される化合物または化合物の混合物である。染料は塗布媒体中で可溶性の(すなわち溶解する)着色剤であり、一方、顔料は塗布媒体中で不溶性の(すなわち分散する)着色剤である。有用な染料と顔料はインク製造の当業者に知られていて、例えば、O. Luckert, Pigment + Fullstoff Tabellen, 5. Ed., Laatzen, 1994 において見いだすことができる。この文献は本明細書中に参考文献として援用される。
【0022】
適当な吸収材料、すなわち吸収性染料または顔料あるいは適当な混合物は、光学的に可変の顔料のスペクトル反射特性に応じて選択される。吸収材料は、スペクトルの少なくとも可視範囲、すなわち少なくとも450nm〜650nmの間の波長、また可能であれば400nm〜700nmの間の波長において光学的に可変の顔料を反射するスペクトル範囲を含むスペクトル吸収特性を有している必要がある。このことは、この範囲における各々の波長について、その波長において光学的に可変の顔料によって反射される光の強さを補うのに十分なだけの吸光度を吸収材料が有している必要がある、ということを意味する。要素の「黒色から色彩への」変化が維持される限り、スペクトルの部分においてもっと高い吸光度が随意に存在していてもよい。唯一の条件は、直交視野において、スペクトルの可視範囲におけるセキュリティー要素の正味の反射光の強さR[l]が、「黒色」についてすでに述べた条件、すなわち50単位よりも小さなCIELab明度(L*)と15単位よりも小さなCIELab彩度(C*)を有するという条件を満たすことである。
【0023】
開示されるセキュリティー要素の正味の反射光の強さR[λ] は、波長λの関数として、次の表現で記述することができることに注目されたい:
【0024】
【数1】

【0025】
ここで、
a[λ] は吸収材料の吸光度、すなわち、現在注目している吸収体の層を通る光の単一の通路での吸収材料の存在による光の減衰量である。a[λ] の項は2乗として入る。というのは、関係する吸収体を通る光については、入射するときのものと反射した後のものと二つの通路があるからである。
r[λ] は光学的に可変の顔料の反射率、すなわち、光学的に可変の顔料によって反射される入射光の割合である。
I0 は入射光の強さである。
I は反射光の強さである。
全ては、当分野で知られている方法に従って、波長λにおいて測定される。
【0026】
前記の選択的なスペクトル吸収材料は、本発明において、次のもののうちの一つとしてセキュリティー要素の中に取り込むことができる:すなわちi)前記の反射性で光学的に可変の顔料を含むコーティング中に含まれる少なくとも一つの吸収性染料または顔料あるいはそれらの混合物;ii)前記の反射性で光学的に可変の顔料を含む第一のコーティングの少なくとも一部分の上に塗布される第二のコーティングであって、この第二のコーティングは少なくとも一つの吸収性染料または顔料あるいはそれらの混合物を含む;iii)前記の反射性で光学的に可変の顔料を含む第一のコーティングの少なくとも一部分の上面に塗布される箔またはデカルコマニアであって、この箔またはデカルコマニアは少なくとも一つの吸収性染料または顔料あるいはそれらの混合物を含む。
【0027】
本発明によるセキュリティー要素のさらなる利点は、その良好な鮮明度である。すなわち、それは要素の平面に直交する方向の回りのかなり大きな範囲の視野角度にわたって黒色の外観を呈し、このことが、かすめ視野において黒色になる先行技術のセキュリティー要素の場合と異なる。光学的に可変の干渉顔料の色彩は、直交視野のあたりで角度に伴ってゆっくりとしか変化しないことがわかった。従って、前記のかなり大きな範囲の視野角度にわたって、顔料によって反射したスペクトル成分を有効に補うことが可能である。
【0028】
図1aを参照すると、薄膜状の干渉顔料の粒子について、入射角度(θ)の関数としての最大反射波長(λ)は次の式[1]によって与えられることに注目されたい:
【0029】
【数2】

【0030】
ここで、
d =誘電層の物理的厚さ、
n2 =誘電層の屈折率、
m =1、2、3、...回折の順序。
【0031】
式[1]はブラッグの法則 2n2d sin(θ’) =mλ とスネルの屈折の法則 n1・cos(θ) =n2・cos(θ’) を組み合わせること(n1 =1とする)によって得られる。
図1bは、選択された厚さ(d =200nm)を有する選択された誘電体(n2 =1.5)についての最大反射(m =1)の波長の視野角度への依存性について得られた結果を表している。図1bにおいて、最大反射の波長は直交入射のあたりでほぼ一定であるが(90°±15°:Δλ<10nm)、しかし低い入射において急激に減少する(75°〜30°:Δλ>100nm)ということが容易にわかる。
【0032】
ここで本発明は、光学的に可変の顔料の色彩の変化は、直交入射のあたりのかなり大きな範囲の視野角度の中で小さいままである、という上述の確認された事実による利益を受ける。従って、適切に選択される吸収材料を利用して、前記の顔料によって反射したスペクトル成分を選択的に吸収することができ、それにより、前記のかなり大きな範囲の視野角度にわたって黒色の外観が生じる。
【0033】
直交視野における黒色の外観の前記の生成は、実際には、以下の方法のうちの一つによって達成されうる:i)前記の光学的に可変の顔料を含む色彩が変化するコーティング組成物(例えば、光学的に可変のインク(OVI(登録商標)))に、特定の染料、顔料またはそれらの混合物を添加すること;ii)色彩が変化するコーティングに、特定の染料、顔料またはそれらの混合物を含む第二のコーティング組成物を重ね刷りするか、またはコーティングすること;あるいはiii)前記の色彩が変化するコーティングの上に、特定の染料、顔料またはそれらの混合物を含む箔またはデカルコマニアを塗布すること。これらは全て、入射する光の反射される可視スペクトル成分を直交する視野の角度において前記の吸収材料によって選択的に吸収することにより、黒色の外観を生じさせるものである。
【0034】
前記の染料、顔料またはそれらの混合物を含む選択的なスペクトル吸収材料は、そのスペクトル吸収領域が、直交入射において前記の光学的に可変の顔料によって反射される可視スペクトルの成分と実質的に一致するか、あるいはこれを含み、それにより、直交する角度においてセキュリティー要素を見たときに知覚される外観が黒色となるように、選択される。
【0035】
従って、本発明によれば、直交入射において光学的に可変の顔料によって反射される可視スペクトルの成分が、吸収材料によって実質的に遮断される。しかし、45°〜75°などの斜めの入射の下では、光学的に可変の顔料の反射特性はもっと短い波長に移行し(式1)、前記の吸収材料は光学的に可変の顔料によって反射される全てのスペクトル成分をもはや吸収しない。従って、セキュリティー要素は、見る角度が直交視野からかすめ視野へ変化すると、その外観が黒色から色彩へ変化する。
【0036】
本発明のセキュリティー要素は、例えば、i)直交入射において550nmの波長のあたりで最大反射率のピークを有している緑色からマゼンタ(赤紫色)へ光学的に変化しうるコーティングと、ii)550nmの波長のあたりで最大吸光度のピークを有している適当な濃度のマゼンタ染料を組み合わせることによって実現させることができる。マゼンタ染料のスペクトル吸収特性はさらに、波長において、光学的に可変の顔料のスペクトル反射特性と少なくとも同じ大きさであるべきであり、それにより直交視野において黒色の外観が生じる。斜めの視野においては、セキュリティー要素は赤紫色の色彩のものに見える。
【0037】
別の態様において、同じ緑色−マゼンタコーティングは適当な濃度の赤色染料と組み合わされ、この赤色染料はおよそ600nmの波長において吸収端を有する、すなわち、それは600nm未満の波長を有する可視放射線を吸収する。この場合も、セキュリティー要素は直交視野において黒色に見えるが、しかし斜めの視野においては赤色に変化する。
【0038】
さらに別の態様において、同じ緑色−マゼンタコーティングは適当な濃度の青色染料と組み合わされ、この青色染料はおよそ500nmの波長において吸収端を有する、すなわち、それは500nmよりも長い波長を有する可視放射線を吸収する。セキュリティー要素は直交視野において黒色に見えるが、斜めの視野においては今度は青色に変化する。
【0039】
本開示から、光学的に可変のコーティングと吸収性染料との多くのさらなる組み合わせを用い、それによって得られるセキュリティー要素が直交視野において黒色に見えて、斜めの視野において色彩を示すようにすることを熟練者であれば理解できることは、明らかである。注目すべきことは、単純な反射の最大値ではなく、もっと複雑なスペクトル反射率の特性を有する光学的に可変の顔料、例えば可視範囲において2以上の反射の最大値を有するか、あるいはさらには、滑らかなものではなく強調された反射特性を有する顔料を、適当な吸収特性を有する吸収材料と組み合わせて用いることもできる。
【0040】
光学的に可変の顔料と吸収材料のそれぞれの量は、所望の光学的効果に応じて選択されるが、ただし、本発明に従う色彩の変化、すなわち直交視野における黒色からかすめ視野における色彩への変化が観察可能でなければならない。使用すべき典型的な量は、前記の光学的に可変の顔料について5〜50wt.%、好ましくは10〜25wt.%の範囲であり、前記の吸収材料について0.1〜20wt.%、好ましくは0.2〜10wt.%の範囲である。
【0041】
ここに開示されるセキュリティー要素の偽造防止性をさらに向上させるために、色彩が変化するコーティングおよび/または前記の第二のコーティングおよび/または前記の箔またはデカルコマニアは、発光性、磁性、赤外線吸収性などの追加の特性を示すように製造することができる。これは、前記セキュリティー要素の少なくとも一つの部分、すなわち前記の色彩が変化するコーティングおよび/または前記の第二のコーティングおよび/または前記の箔またはデカルコマニアのいずれかに、発光材料、磁性材料および赤外線吸収材料からなる群から選択される少なくとも一つの材料を添加することによって達成することができる。
【0042】
黒色から鮮明な色彩へ変化するものである本発明による色彩が変化するセキュリティー要素(複数のもの)は、直交する視野角度の下で実質的に同一の色調(黒色)を有し、そしてかすめ視野において二つの明確に異なる色彩を有する幾何学的色彩(geometameric color)の対を形成するように結合させることができる(例えば、並置させて印刷することができる)。
【0043】
本発明の色彩が変化するセキュリティー要素を用いるための別の方法は、それを、直交視野において類似する黒色の外観または暗い外観を有する非色彩変化要素と近接した位置に適用し、それにより、かすめ視野において知覚される色彩の変化が増大して見えるようにすることである。
【0044】
さらに、本発明によるセキュリティー要素は、あらゆるタイプの証印(indicia)と組み合わせることができて、あるいはそのような証印の形態で適用することができる。そのような証印はここでは、印刷、レーザーマーキング、磁気配向などによって製造することができる。
【0045】
さらに開示されるものは、本発明のセキュリティー要素を支持体の上に形成するための方法であって、この方法は支持体に次のi)およびii)のものの組み合わせ、すなわち、
i)前記支持体の上に塗布されるコーティングであって、このコーティングは、実質的に見る角度に応じた色彩変化を示し、真空蒸着した薄膜の干渉顔料、干渉層をコーティングした粒子、およびコレステリック液晶顔料からなる群から選択される少なくとも一つの光学的に可変の顔料を含む、および
ii)直交入射において前記の光学的に可変の顔料によって反射される可視スペクトル成分を実質的に遮断するようなスペクトル吸収特性を有する少なくとも一つの選択的なスペクトル吸収材料、このときこの選択的なスペクトル吸収材料は、光学的に可変の顔料を含む前記コーティングの中か、光学的に可変の顔料を含むコーティングの少なくとも一部分の上面に塗布されるコーティング組成物の中か、あるいは光学的に可変の顔料を含むコーティングの少なくとも一部分の上面に塗布される箔またはデカルコマニアの中のいずれかに存在する、
を付与する工程を含み、この組み合わせにより前記セキュリティー要素は、直交する角度で見るときには黒色の外観を呈し、そしてかすめ角度で見るときには色彩のある外観を呈する。
【0046】
本発明のコーティングは当分野で知られている印刷方法、例えば彫刻スチールプレート印刷(凹版印刷)、シルクスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷またはフレキソ印刷などを用いて適用することができる。箔またはデカルコマニアに適用する場合は、加熱スタンピングまたは常温スタンピングの一般的に知られた方法を用いることができる。
【0047】
さらに開示されるものは、直交視野において黒色の外観を呈し、そして斜めの視野において色彩を呈する本発明による少なくとも一つのセキュリティー要素を含むセキュリティー文書である。このセキュリティー文書は好ましくは、紙幣、価値のある文書、権利文書または身分証明文書、ラベル、ブランド商品の識別書、および税小旗からなる文書の群から選択される。
【0048】
本発明による第二のセキュリティー要素を、前記のセキュリティー要素と並置させて同じ文書の上に適用してもよく、このときこれら二つのセキュリティー要素は、直交する視野角度において黒色の外観を呈し、そしてかすめ視野において二つの異なる色彩を呈する幾何学的色彩(geometameric color)の対を形成する。
【0049】
この文書はさらに、前記のセキュリティー要素の近くに、直交視野において類似する黒色の外観または暗い外観を有する非色彩変化要素を有していてもよい。
ここで本発明を、図面と典型的な具体例を用いてさらに説明する。
【0050】
図1aは、薄い層の干渉顔料(P)の表面に角度θで入射する光線(B)の反射を概略的に示す。光線(B1)の第一の部分は第一の表面(1)で反射され、そして物理的厚さdおよび屈折率n2を有する誘電層(3)を通過した後の第二の表面または境界面(2)で反射された光線(B2)の第二の部分と干渉する。外部の媒体(空気)の屈折率(n1)は1.0であると仮定される。
【0051】
図1bは、式[1]に従って、入射角度(θ)の関数としての計算された最大反射波長(λ)をグラフで示していて、このときn2 =1.5、d=200nmそしてm=1と仮定している。λの変化量は直交入射のあたりで最少であり(θ=90°±15°;Δλ<10nm)、そして斜めの入射において最大である(75°>θ>30°:Δλ>100nm)。
【0052】
図2は、本発明によるセキュリティー要素の原理を概略的に示す。
a)曲線Roは、直交視野において光学的に可変の顔料(OVP)の反射したスペクトル成分を表す。吸収材料の吸収特性Aは、スペクトルの可視部分(400nm〜700nm)においてOVPの反射特性と実質的に重なり合う。要素の視覚上の外観は黒色である。
b)曲線Rgは、かすめ視野においてOVPの反射したスペクトル成分を表す。反射特性Rgのかなりの部分は、スペクトルの可視部分において吸収材料の吸収特性Aからはずれる。要素は色彩を帯びて見える。
【0053】
図3は、本発明によるセキュリティー要素(2)を概略的に示し、これは単一の印刷工程によって支持体(1)の表面に塗布されている。光学的に可変の顔料(P)と吸収材料(A)は共に同じコーティング組成物の中に含まれている。
【0054】
図4は、本発明によるセキュリティー要素(2)を概略的に示し、この場合、少なくとも一つの光学的に可変の顔料(P)を含むコーティング組成物(3)が支持体(1)の表面に塗布されていて、そしてその少なくとも一部は、吸収材料(A)を含む第二のコーティング組成物(4)で被覆されている。
【0055】
図5は、本発明によるセキュリティー要素(2)を概略的に示し、この場合、少なくとも一つの光学的に可変の顔料(P)を含むコーティング組成物(3)が支持体(1)の表面に塗布されていて、そしてその少なくとも一部は、吸収材料(A)を含む箔またはデカルコマニア(5)で被覆されている。
【0056】
図6は、実施例2による本発明の実際の具体例を示す。光学的に可変の顔料、吸収性染料、および得られた黒色から赤色へ変化するセキュリティー要素のスペクトルは、マルチアングル分光計を用いて測定された。
a)は、表面の垂線(直交する線)に対して22.5°の照明角度と、0°(すなわち表面に対して垂直な角度)の検出角度において記録された反射スペクトルを示す。太い線は、色彩が変化する顔料と選択的なスペクトル吸収材料(この場合、C.I.(カラーインデックス番号):ソルベントレッド92およびソルベントイエロー79を含む7%の染料混合物)を組み合わせたものの反射スペクトルを表す。この反射スペクトルは400〜650nmの可視スペクトルの全体において平坦で最少であり、セキュリティー要素は黒色に見える。
b)は、45°の照明角度と67.5°の検出角度(両者とも表面の垂線(直交する線)に対する角度)において記録された反射スペクトルを示す。太い線は、色彩が変化する顔料と前記の染料混合物を組み合わせたものの反射スペクトルを表す。反射の最大量は640nmで現れ、すなわち、セキュリティー要素は赤色に見える。
【0057】
従って、このセキュリティー要素の全体的な視覚上の印象は、直交視野における黒色から斜めの視野における赤色への変化である。
図3を参照すると、セキュリティー要素(2)の第一の態様において、染料または顔料またはそれらの混合物などの吸収材料(A)が、色彩が変化するコーティング組成物と混合されていて、得られた組成物は支持体(1)の表面に塗布されている。吸収材料(A)はここでは、直交入射において色彩が変化する顔料(P)によって反射される可視光の実質的に全てを吸収するように選択され、従って、セキュリティー要素(2)は直交する角度において見たときに黒色に見える。
【0058】
図4を参照すると、セキュリティー要素(2)の第二の態様において、第一の色彩が変化するコーティング組成物(3)が支持体(1)の表面に塗布されて、次いで、この色彩が変化するコーティング組成物(3)はその少なくとも一部が、染料、顔料またはそれらの混合物などの吸収材料(A)を含む第二のコーティング組成物(4)で被覆されている。吸収材料(A)はここでは、直交入射において色彩が変化する顔料(P)によって反射される可視光の実質的に全てを吸収するように選択され、従って、セキュリティー要素(2)は直交する角度において見たときに黒色に見える。
【0059】
図5を参照すると、セキュリティー要素(2)の第三の態様において、第一の色彩が変化するコーティング組成物(3)が支持体(1)に塗布されて、次いで、この第一の色彩が変化するコーティング組成物(3)はその少なくとも一部が、染料、顔料またはそれらの混合物などの吸収材料(A)を含む箔またはデカルコマニア(5)で被覆されている。前記の吸収材料はここでは、前記の箔またはデカルコマニアの本体(5a)の中か、この箔またはデカルコマニアに付与されるコーティング(接着剤)の層(5b)の中か、あるいは両者の中のいずれかに含まれる。前記のコーティング(接着剤)は、前記の光学的に可変の顔料を含んでいる前記支持体に前記の箔またはデカルコマニアを付着させるために用いられる。吸収材料(A)はここでは、直交入射において色彩が変化する顔料(P)によって反射される可視光の実質的に全てを吸収するように選択され、従って、セキュリティー要素(2)は直交する角度において見たときに黒色に見える。
【0060】
図3に関連する第一の態様のセキュリティー要素(実施例1)は、スクリーン印刷によって製造される。光学的に可変のインクは、光学的に可変の顔料を5〜50重量パーセント、好ましくは10〜25重量パーセントの範囲で含んでいる。光学的に可変のインクは、染料または顔料またはそれらの混合物などの吸収材料と、0.1〜20重量パーセント、好ましくは0.2〜10重量パーセントの範囲で混合される。
【0061】
図3に関連する第一の態様の別の形態のセキュリティー要素(実施例2、3)は、グラビア印刷によって製造される。光学的に可変のインクは、光学的に可変の顔料を5〜50重量パーセントの範囲で含み、好ましくは25重量パーセント含んでいる。光学的に可変のインクは、染料または顔料またはそれらの混合物などの吸収材料と、0.1〜20重量パーセント、好ましくは0.2〜10重量パーセントの範囲で混合される。
【0062】
実施例1(シルクスクリーン印刷)
黒色から赤色へ色彩が変化するセキュリティー要素を提供する溶液型シルクスクリーンインク組成物。
【0063】
【表1】

【0064】
ジエチルケトンとエチルジグリコールの配合物を用いて粘度が調整され、それにより25℃において500〜1000mPa・sの値に達した。インクは塗布棒を用いて塗布され、コーティングされた紙の上に24μmの理論未乾燥塗膜(theoretical wet film)の堆積が形成され、そして熱風を用いて乾燥された。
【0065】
実施例2(グラビア印刷)
黒色から赤色へ色彩が変化するセキュリティー要素を提供するグラビア印刷インク組成物。
【0066】
【表2】

【0067】
エタノールと酢酸エチルの配合物を用いて粘度が調整され、それにより25℃においてDIN 4 カップを用いて測定したとき20〜40sの値に達した。インクは塗布棒を用いて塗布され、コーティングされた紙の上に24μmの理論未乾燥塗膜の堆積が形成され、そして熱風を用いて乾燥された。
【0068】
実施例3(グラビア印刷)
黒色から緑色へ色彩が変化するセキュリティー要素を提供するグラビア印刷インク組成物。
【0069】
【表3】

【0070】
エタノールと酢酸エチルの配合物を用いて粘度が調整され、それにより25℃においてDIN 4 カップを用いて測定したとき20〜40sの値に達した。インクは塗布棒を用いて塗布され、コーティングされた紙の上に24μmの理論未乾燥塗膜の堆積が形成され、そして熱風を用いて乾燥された。
【0071】
実施例4(凹版印刷−彫刻スチールプレート印刷)
黒色から緑色へ色彩が変化するセキュリティー要素を提供する凹版印刷インク組成物。
【0072】
【表4】

【0073】
インク溶媒27/29(Shell)を用いて粘度が調整され、それにより40℃において6.5〜9.5Pa・sの値に達した。インクはOrmag実験室用プルーフプレス(proofing press)を用いてセキュリティーペーパーに塗布され、そして周囲温度においてオキシ重合によって乾燥された(3日間)。
【0074】
実施例5(グラビア印刷、第一のインクの上面に重ね刷りされる第二のインク)
黒色から金色へ色彩が変化するセキュリティー要素を提供するグラビア印刷インク組成物で、第一のインクの上に第二のインク組成物が重ね刷りされる。
【0075】
【表5】

【0076】
【表6】

【0077】
エタノールと酢酸エチルの配合物を用いて粘度が調整され、それにより25℃においてDIN 4 カップを用いて測定したとき20〜40sの値に達した。インクは塗布棒を用いて連続して塗布され、コーティングされた紙の上にそれぞれの回に24μmの理論未乾燥塗膜の堆積が形成され、そしてそれぞれの回に熱風を用いて乾燥された。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1a】図1aは、薄い層の干渉顔料(P)の表面に角度θで入射する光線(B)の反射を概略的に示す。
【図1b】図1bは、式[1]に従って、入射角度(θ)の関数としての計算された最大反射波長(λ)をグラフで示していて、このときn2 =1.5、d=200nmそしてm=1と仮定している。
【図2】図2は本発明によるセキュリティー要素の原理を概略的に示すグラフである。図2aにおいて、曲線Roは直交視野において光学的に可変の顔料(OVP)の反射したスペクトル成分を表す。図2bにおいて、曲線Rgはかすめ視野においてOVPの反射したスペクトル成分を表す。
【図3】図3は本発明によるセキュリティー要素(2)を概略的に示す。
【図4】図4は本発明によるセキュリティー要素(2)を概略的に示す。
【図5】図5は本発明によるセキュリティー要素(2)を概略的に示す。
【図6】図6は実施例2による本発明の実際の具体例を示す。図6Aは、表面の垂線(直交する線)に対して22.5°の照明角度と、0°(すなわち表面に対して垂直な角度)の検出角度において記録された反射スペクトルを示す。図6Bは、45°の照明角度と67.5°の検出角度(両者とも表面の垂線(直交する線)に対する角度)において記録された反射スペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣、価値のある文書、権利文書または身分証明文書、切符、ラベル、ブランド商品の識別書、あるいは税小旗のためのセキュリティー要素であって、このセキュリティー要素は、
i)実質的に見る角度に応じた色彩変化を示し、真空蒸着した薄膜の干渉顔料、干渉層をコーティングした粒子、およびコレステリック液晶顔料からなる群から選択される少なくとも一つの光学的に可変の顔料を含むコーティング、および
ii)直交入射において前記の光学的に可変の顔料によって反射される可視スペクトル成分を実質的に遮断するようなスペクトル吸収特性を有する少なくとも一つの選択的なスペクトル吸収材料、
の組み合わせを有していて、これによりセキュリティー要素は、直交する角度で見るときには黒色の外観を呈し、そしてかすめ角度で見るときには色彩のある外観を呈する、前記セキュリティー要素。
【請求項2】
前記の光学的に可変の顔料は、反射層、誘電層および吸収層を含む多層の干渉顔料である、請求項1に記載のセキュリティー要素。
【請求項3】
前記の選択的なスペクトル吸収材料は、可溶性の有機染料、不溶性の有機顔料および不溶性の無機顔料からなる群から選択される化合物または化合物の混合物である、請求項1または2に記載のセキュリティー要素。
【請求項4】
選択的なスペクトル吸収材料は、光学的に可変の顔料を含むコーティングの中に含まれる、請求項1から3のいずれかに記載のセキュリティー要素。
【請求項5】
選択的なスペクトル吸収材料は、光学的に可変の顔料を含むコーティングの少なくとも一部分の上面に塗布されるコーティング組成物の中に含まれる、請求項1から3のいずれかに記載のセキュリティー要素。
【請求項6】
選択的なスペクトル吸収材料は、光学的に可変の顔料を含むコーティングの少なくとも一部分の上面に塗布される箔またはデカルコマニアの中に含まれる、請求項1から3のいずれかに記載のセキュリティー要素。
【請求項7】
発光材料、磁性材料および赤外線吸収材料からなる群から選択される少なくとも一つの材料をさらに含む、請求項1から6のいずれかに記載のセキュリティー要素。
【請求項8】
証印をさらに含む、請求項1から7のいずれかに記載のセキュリティー要素。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載のセキュリティー要素を支持体の上に形成するための方法であって、支持体に次のi)およびii)のものの組み合わせ、すなわち、
i)前記支持体の上に塗布されるコーティングであって、実質的に見る角度に応じた色彩変化を示し、真空蒸着した薄膜の干渉顔料、干渉層をコーティングした粒子、およびコレステリック液晶顔料からなる群から選択される少なくとも一つの光学的に可変の顔料を含むコーティング、および
ii)直交入射において前記の光学的に可変の顔料によって反射される可視スペクトル成分を実質的に遮断するようなスペクトル吸収特性を有する少なくとも一つの選択的なスペクトル吸収材料であって、光学的に可変の顔料を含む前記コーティングの中か、光学的に可変の顔料を含むコーティングの少なくとも一部分の上面に塗布されるコーティング組成物の中か、あるいは光学的に可変の顔料を含むコーティングの少なくとも一部分の上面に塗布される箔またはデカルコマニアの中のいずれかに存在する選択的なスペクトル吸収材料、
を付与する工程を含み、この組み合わせにより前記セキュリティー要素は、直交する角度で見るときには黒色の外観を呈し、そしてかすめ角度で見るときには色彩のある外観を呈する、前記方法。
【請求項10】
請求項1から8のいずれかに記載の少なくとも一つのセキュリティー要素を含むセキュリティー文書。
【請求項11】
前記セキュリティー文書は、紙幣、価値のある文書、権利文書または身分証明文書、ラベル、ブランド商品の識別書、および税小旗からなる文書の群から選択される、請求項10に記載のセキュリティー文書。
【請求項12】
前記のセキュリティー要素と並置させて請求項1から8のいずれかに記載の第二のセキュリティー要素をさらに含み、このときこれら二つのセキュリティー要素は、直交する視野角度において黒色の外観を呈し、そしてかすめ視野において二つの異なる色彩を呈する幾何学的色彩の対を形成する、請求項10または11に記載のセキュリティー文書。
【請求項13】
前記のセキュリティー要素の近くに、直交視野において類似する黒色の外観または暗い外観を有する非色彩変化要素をさらに有している、請求項10から12のいずれかに記載のセキュリティー文書。
【請求項14】
紙幣、価値のある文書、権利文書または身分証明文書、ラベル、ブランド商品の識別書、または税小旗についての偽造および違法な複製に対して保護するものとしての、請求項1から9のいずれかに記載のセキュリティー要素の使用。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−540161(P2008−540161A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−509402(P2008−509402)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【国際出願番号】PCT/EP2006/061322
【国際公開番号】WO2006/117271
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(500269417)シクパ・ホールディング・ソシエテ・アノニム (23)
【Fターム(参考)】