説明

黒色粒子及びその製造方法、それを用いた黒トナー、並びに、粒子容器及びトナー容器

【課題】黒色の色味にばらつきの少ない黒色表示を得ることができる黒色粒子及びその製造方法、それを用いた黒トナー、並びにそれらを収容する粒子容器及びトナー容器を提供する。
【解決手段】黒顔料とサイアン顔料とを含み、複数の試料について波長420nmの光に対する反射率及び波長770nmの光に対する反射率をそれぞれ測定したときの測定値の標準偏差(1σ)が、両波長とも1以下であること、または、黒顔料とサイアン顔料とが塊状に一体化してなることを特徴とする黒色粒子である。さらに、該黒色粒子の製造方法、該黒色粒子を用いた黒トナー、並びにそれらを収容する粒子容器及びトナー容器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒色粒子及びその製造方法、それを用いた黒トナー、並びに、粒子容器及びトナー容器に関する。
【背景技術】
【0002】
黒色粒子は様々な用途で使用されている。例えば、インクジェット,複写機,印刷機等のインク,トナーや、塗料、プラスチック等に黒い色を着ける用途で使用される。黒色粒子には、入手が容易で、高濃度であって、安価なため一般にカーボンブラックが使用される。例えば、黒インク、黒トナー、黒色塗料の着色源として、カーボンブラックが広く用いられている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0003】
また、カーボンブラック等の黒顔料における長波長での吸収低下を補足して純粋な黒を発現させるべく、長波長の吸収を多く持つサイアン顔料を添加する技術が知られている(例えば、特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2006−308302号公報
【特許文献2】特開2008−216624号公報
【特許文献3】特開2003−119417号公報
【特許文献4】特開2008−3360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、黒色の色味にばらつきの少ない黒色表示を得ることができる黒色粒子及びその製造方法、それを用いた黒トナー、並びにそれらを収容する粒子容器及びトナー容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の<1>〜<8>に示す本発明により達成される。
<1> 黒顔料とサイアン顔料とを含み、複数の試料について波長420nmの光に対する反射率及び波長770nmの光に対する反射率をそれぞれ測定したときの測定値の標準偏差(1σ)が、両波長とも1以下であることを特徴とする黒色粒子。
【0007】
<2> 黒顔料とサイアン顔料とが塊状に一体化してなることを特徴とする黒色粒子。
【0008】
<3> 複数の試料について波長420nmの光に対する反射率及び波長770nmの光に対する反射率をそれぞれ測定した時、波長420nmの光に対する反射率の平均と、波長770nmの光に対する反射率の平均との差が、5%以内であることを特徴とする<1>または<2>に記載の黒色粒子。
【0009】
<4> 黒顔料及びサイアン顔料を混合して、これに負荷を加えながら圧蜜成形することを特徴とする黒色粒子の製造方法。
【0010】
<5> 黒顔料及びサイアン顔料の混合物に負荷を加えながら圧蜜成形する器具として、ボールミルを用いることを特徴とする<4>に記載の黒色粒子の製造方法。
【0011】
<6> 少なくとも、<1>〜<3>のいずれかに記載の黒色粒子と、結着樹脂とを含むことを特徴とする黒トナー。
【0012】
<7> <1>〜<3>のいずれかに記載の黒色粒子が収容されてなることを特徴とする粒子容器。
【0013】
<8> <6>に記載の黒トナーが収容されてなることを特徴とするトナー容器。
【発明の効果】
【0014】
<1>にかかる発明によれば、本発明の構成を具備しない場合に比べて、黒色の色味にばらつきの少ない黒色表示を提供することができる。
【0015】
<2>にかかる発明によれば、黒顔料とサイアン顔料とを単に混ぜて用いた場合に比べて、黒色の色味にばらつきの少ない黒色表示を提供することができる。
【0016】
<3>にかかる発明によれば、本発明の構成を具備しない場合に比べて、赤味の少ない純粋な黒に近い黒色表示を提供することができる。
【0017】
<4>にかかる発明によれば、他の製造方法に比して容易に、黒色の色味にばらつきの少ない黒色表示が得られる黒色粒子の製造方法を提供することができる。
【0018】
<5>にかかる発明によれば、他の器具に比して容易に、黒顔料とサイアン顔料とを塊状に一体化させ得る条件を設定することができる。
【0019】
<6>にかかる発明によれば、本発明の構成を具備しない場合に比べて、黒色の色味にばらつきの少ない黒色トナー画像を提供することができる。
【0020】
<7>にかかる発明によれば、本発明の構成を具備しない場合に比べて、黒色の色味にばらつきの少ない黒色粒子を収容した粒子容器を提供することができる。
【0021】
<8>にかかる発明によれば、本発明の構成を具備しない場合に比べて、黒色の色味にばらつきの少ない黒トナーを収容したトナー容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】各種顔料を用いて表示画像を形成した場合の光の吸収スペクトルを示すグラフであり、横軸に光の波長(nm)を、縦軸に光の反射率(%)をプロットしたものである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明について、以下詳細に説明する。
【0024】
<黒色粒子>
本発明の黒色粒子は、黒色の顔料として有用な組成物であり、以下の2種類がある。
【0025】
<1> 黒顔料とサイアン顔料とを含み、複数の試料について波長420nmの光に対する反射率及び波長770nmの光に対する反射率をそれぞれ測定したときの測定値の標準偏差(1σ)が、両波長とも1以下であることを特徴とするもの。
【0026】
<2> 黒顔料とサイアン顔料とが塊状に一体化してなることを特徴とするもの。
【0027】
<1>の発明と<2>の発明とは別個独立したものであり、一方の発明に該当しても他方に該当しない場合がある他、双方の発明に該当する場合がある。勿論、<1>の発明と<2>の発明の双方に該当することが好ましく、<1>の発明の黒色粒子を容易に得るためには<2>の発明の黒色粒子を製造することが適切であり、<2>の発明の黒色粒子であれば<1>の発明の黒色粒子の条件を満たす可能性が高い。
【0028】
次に、本発明の原理について説明する。
図1は、各種顔料を用いて表示画像を形成した場合の光の吸収スペクトルを示すグラフであり、横軸に光の波長(nm)を、縦軸に光の反射率(%)をプロットしたものである。実際には、各種顔料を用いて表示画像を形成した場合の光の吸収スペクトルの代表的な例示であり、グラフの形状は各種諸条件により厳密には異なってくるが、何れの場合も当該図1のグラフと同様乃至近似した傾向を示す。
【0029】
カーボンブラック等の黒顔料は、可視領域(380〜780nm)全域に高い吸収を持っているが、図1の「カーボンブラックのみ」のグラフ(点線)からわかるとおり、長波長になるほど徐々に吸収が低下する(すなわち、長波長になるほど徐々に反射率が増加する。)特性を有する。そのため、カーボンブラック単独で使用すると、長波長側の吸収が足りない分、赤みがかった黒になりやすいので、サイアン(シアン)顔料を添加することで純粋な黒を発現させることが行われている。
【0030】
図1の「サイアン顔料のみ」のグラフ(破線)からわかるとおり、サイアン顔料は長波長の吸収を多く持つため、カーボンブラックの長波長部分の反射率の高い領域を相殺し、そのため、カーボンブラックにサイアン顔料を添加することで、長波長側の吸収を補足することができる。図1の「カーボンブラック+サイアン顔料混合使用」のグラフ(一点鎖線)が、カーボンブラックにサイアン顔料を添加して混合した場合の光の吸収スペクトルを示すものである。
【0031】
カーボンブラック等の黒顔料及びサイアン顔料を混合して、インク、トナー、塗料等を製造した場合、その製造の度にその製造条件によって、原料内の顔料の存在比率が変動しやすい。即ち複数の顔料を1つの系の中に存在させることにより、顔料の凝集度合いが変化する。例えばカーボンブラックとサイアン顔料であれば、それらを1つの系の中に存在させると、双方異なる構造のため、カーボンブラックとサイアンが互いに近接することは難しく、同じ構造であるカーボンブラック同士またはサイアン顔料同士で凝集する場合が多い。
【0032】
そのようになると、原料混合物内で不均一な状態で顔料が存在することになり、目的のスペクトルが得られにくくなる。更に、各種製造条件(pH、温度(熱)、混合攪拌条件等)により、顔料の凝集挙動が変化するため、製造ごとに光の吸収スペクトルのばらつきが大きい製品(インク、トナー、塗料等)が得られることになる。その結果、例えば、インクやトナーの場合、特に薄い濃度の画像を打ち出す時に、製品の製造ロットごとに、色味が変化する可能性が高い。
【0033】
<1>の発明においては、このような不具合を抑制するため、複数の試料について波長420nmの光に対する反射率及び波長770nmの光に対する反射率をそれぞれ測定したときの測定値の標準偏差(1σ)が、両波長とも1以下となる黒色粒子を得て、これを用いることで、製品やその製造時の溶液や樹脂等の中においても、色味のばらつきが少ない黒色粒子が無数に存在する状態になるため、光の吸収スペクトルのばらつきの少ない製品を製造することができる。
【0034】
なお、測定波長である420nm及び770nmは、黒顔料とサイアン顔料とを混合させて用いた場合に、その混合状態に応じて最もばらつきが大きくなる波長を代表させたものである。
【0035】
試料の数としては、5つの試料について測定すれば十分である。5つの試料について波長420nmの光に対する反射率及び波長770nmの光に対する反射率をそれぞれ測定し、得られた測定値から標準偏差(1σ)を求めればよい。波長420nmと波長770nmの両光について標準偏差(1σ)が1以下であれば<1>の発明の条件を満たすが、この標準偏差(1σ)としては、0.9以下であることが好ましく、0.8以下であることがより好ましい。
【0036】
測定に供する試料は、測定対象となる黒色粒子を1mmの厚みとなるようにホルダに敷き詰めて、その表面の光の反射率(%)を求めればよい。また、黒色粒子をトナーに用いる場合には、得られたトナーにより100%ベタ画像を形成して、当該ベタ画像の光の反射率(%)を求めてもよい。この場合、トナー量(TMA)としては、4(×10-4g/cm2)程度にすることが適当である。
【0037】
反射率の測定には、一般的な分光光度計を問題なく使用することができる。本明細書においては、日立製作所製、U−4000を用いて測定した。
【0038】
なお、本明細書において、反射率と吸収率とが併用されているが、両者の関係は下記式(1)に示すとおりである。
(吸収率%)=100%−(反射率%) ・・・(1)
【0039】
<2>の発明においては、前記不具合を抑制するため、黒顔料及びサイアン顔料の2種の顔料を製品の製造前の段階で1つの塊状の粒子にして、これを1つの黒色粒子として用いることにより、製品やその製造時の溶液や樹脂等の中においても、これら2種の顔料が塊状に一体化して均一に混合された1つの粒子が無数に存在する状態になるため、光の吸収スペクトルのばらつきの少ない製品を製造することができるものと推測される。なお、図1の「本発明の黒色粒子」のグラフ(実線)が、<2>の発明の場合の光の反射スペクトルを示すものである。
【0040】
ここで「塊状に一体化」とは、それぞれの顔料の結晶性等の特性を失うことなく渾然一体となって1つの粒子を形成した状態を指す。1つの粒子中に、黒顔料とサイアン顔料の少なくとも2種の結晶性を示すことを定性的に求めることで、「塊状に一体化」しているか否かは容易に見極めることができる。簡易的には、粒子の色味のばらつきが小さくなることから、複数の試料について波長420nmの光に対する反射率及び波長770nmの光に対する反射率をそれぞれ測定したときの測定値の標準偏差(1σ)が、両波長とも1以下となる否かで判断することができる。
【0041】
本発明においては、<1>及び<2>の何れの発明であっても、黒顔料及びサイアン顔料が用いられる。
使用可能な黒顔料としては、黒色を示す顔料であれば特に制限なく用いることができる。具体的には、カーボンブラック、アニリンブラック、ペリレン、ニグロシン、イカスミ等を例示することができる。これらの中でも、入手が容易で低コストであり、黒色度が比較的高いカーボンブラックが最も好適である。
【0042】
好適なカーボンブラックとしては、ファーネスブラックが、大量生産に向いており、尚且つ吸油量、粒子径やストラクチャーを制御し易いので、好ましい。具体的には、♯5・10・25(三菱化学社製)、トーカブラック♯7400・#7550SB/F・#7360SB(東海カーボン社製)、NIPex35・60・70・90・170IQ(エボニック・デグサジャパン社製)等を用いることができる。上記カーボンブラックは、一例であり、本発明においてはこれらに限定されるものではない。
【0043】
一方、使用可能なサイアン顔料としては、特に制限はなく、紺青(プルシアンブルー)、コバルトブルー等の無機顔料や、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファストスカイブルー、インダスレンブルーBC、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオクサレレート等の有機顔料を例示することができる。黒顔料と塊状に一体化させる相性から、サイアン顔料として有機顔料を選択することが好ましく、なかでも、低コスト・耐水性及び耐光性の観点から、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンがさらに好ましい。
【0044】
黒顔料とサイアン顔料としては、それぞれ1種ずつ用いればよいが、いずれか一方もしくは双方とも2種以上の顔料を併用しても構わない。
【0045】
黒顔料とサイアン顔料の配合割合としては、用いるこれら顔料の種類や目標とする色味等により一概には言えず、可視域の光の吸収が全域にわたってできる限り平準化されるような配合割合とすることが望ましい。黒顔料とサイアン顔料の一般的な吸収スペクトル波形から見て、配合割合により最も変動しやすい波長である波長420nmの光に対する反射率及び波長770nmの光に対する反射率が近い状態になるようにすることで、実質的に可視域の光の吸収が全域にわたって平準化された状態であると推定でき、得られる黒色粒子が赤味の少ない純粋な黒に近いものであると判断し得る。
【0046】
したがって、波長420nmの光に対する反射率の平均と、波長770nmの光に対する反射率の平均との差が小さくなるように、両顔料の配合割合を設定すればよい。具体的には、複数の試料について波長420nmの光に対する反射率及び波長770nmの光に対する反射率をそれぞれ測定した時、波長420nmの光に対する反射率の平均と、波長770nmの光に対する反射率の平均との差が、5%以内になるようにすることが望ましく、3%以内になるようにすることがより望ましい。試料の準備及び測定方法は、それぞれの波長における反射率のばらつきを求める場合と同様である。
【0047】
黒顔料とサイアン顔料の実際の配合割合としては、質量比で、10:1〜2 :1の範囲から選択することが好ましく、8:1〜3:1の範囲から選択することがより好ましい。
【0048】
本発明の黒色粒子の個数平均粒径としては、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましい。個数平均粒径が1μmを超える場合、黒色粒子の光の吸収性が低下し易くなるので、より多くの黒色粒子が必要になるか、あるいは、光の吸収スペクトルが広くなりより長波長部分の反射が生じ易くなる場合があるため好ましくない。
【0049】
<黒色粒子の製造方法>
黒顔料及びサイアン顔料の2種の顔料を塊状に一体化するためには、化学的に接着させる方法や、物理的に圧縮する方法が考えられる。しかし、例えば、アシッドペースト法,溶剤に溶解させ溶出させる方法等のように化学的に接着させる方法では、液体中で一体化させる際に溶液やその他成分との間で化学反応を生じて変質したり、液体中での凝集により狙いの均質化が実現できなかったり、液中に溶解乃至分散させその後脱水乃至硬化させる一連の操作において、顔料の結晶構造に影響を与えたりといった懸念があり、これら2種の顔料を均質に一体化させることが困難である。
【0050】
そのため、本発明の黒色粒子の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」という場合がある。)においては、物理的に衝撃を与える方法、すなわち、黒顔料及びサイアン顔料を混合して、これに負荷を加えながら圧蜜成形する方法が採用される。
【0051】
一般に加圧力を粒子に伝達するのは下記式(2)のヤンセンの式で表すことができる。
(Fa/Fb)=exp(4μωk(L/D)) ・・・(2)
【0052】
上記式(2)中、Fa、Fbは顔料層上面の加圧力と顔料層下面へ伝達した力、μωは壁面の摩擦係数、kは半径方向と軸方向の応力の比、Lは層の高さ、Dは層の径である。
【0053】
したがって、Fa/Fbの値を小さくすることで顔料に圧力がかかり、塊状に一体化した粒子(黒色粒子)を得ることができる。
【0054】
本発明の製造方法に適用し得る具体的な装置としては、乾式の粉砕機であれば特に制限はない。具体的にはジョークラッシャー、ジャイレトリー・クラッシャー、コーンクラッシャー、ハンマークラッシャー、シュレッダー、ロールクラッシャー、ハンマーミル、ディスインテグレーター、カッターミル、円板ミル、ロッドミル、ロールミル、エロフォールミル、ターボ形粉砕機、スクリーンミル、ジェット粉砕機、ボールミル等が挙げられる。これら乾式の方法であれば、後処理も容易となる。
【0055】
これらの装置を用いて、Fa/Fbの値を小さくするためには、より顔料の層を小さくするべく、粉砕部分における顔料の体積比を小さくする方法や、ボールミルのようにメディアを用いるものを採用することが好ましい。後者の場合、衝撃を加えるメディアの大きさや、質量を増加させることにより、Fa/Fbの値を小さくすることができる。
【0056】
なお、顔料を塊状に一体化するために粉砕機を用いるのは、一般に顔料の粒径は粉砕機で粉砕される粒子の大きさよりも小さく、粉砕により顔料そのものの結晶構造を変えることなく、二次、三次粒径の顔料のみが破壊され、且つ複数の顔料を塊状に一体化にするのに適した圧力、衝撃を加えることができるためである。
【0057】
これらの装置の中でも、黒顔料とサイアン顔料とを塊状に一体化させ得る条件、すなわちより微粉砕に適したボールミル、ターボ形粉砕機、スクリーンミル及びジェット粉砕機からなる群より選ばれるいずれかの器具が好ましい。特に、メディアとしてのボールの大きさや、質量を適宜選択することにより、簡便に、本発明の黒色粒子を製造し得る製造条件を最適に設定することができため、ボールミルを用いること、すなわちミリング法によることが好ましい。
【0058】
ミリング法とは、物理的な方法であり、容器中に顔料とボールを入れ、容器を回転させ、ボールが顔料にぶつかる(=圧力をかける)ことにより、顔料同士を圧着させる方法である。
【0059】
ミリング法においては、実質円筒形の容器中に原料となる顔料(黒顔料及びサイアン顔料)と、ジルコニア、ガラス、ステンレス等のボールとを入れ、円筒形の容器を横にすると、ボールは重力によって容器の下部に集まるが、これを回転させると、遠心力により容器の壁に沿って動きやすくなり、さらに回転を調整すると遠心力によって容器の壁の最上部付近から、落下するようになる。この落下によってボールに顔料が挟まれ、この作用により塊状に一体化させやすくなる。
【0060】
ボールミルを行う時間は、任意に変えることが出来るが、短すぎると顔料が塊状に一体化するに不十分となり、濃度の濃い黒が得られにくくなる。適切な時間は、各種条件により適宜選択することが望ましいが、30分〜1440分程度の範囲から選択することが望ましい。
【0061】
メディアとしてのボールは、顔料を塊状に一体化するためには大きい方がよいが、あまりに大きいと効率が悪くなり、また顔料が非結晶化されてしまい、濃度の濃い黒が得られにくくなる場合がある。顔料混合物における結晶度としては10〜80、より好ましくは20〜60である。
【0062】
ここで、「結晶度」とは、X線回折装置を用いて、結晶の最大ピーク2θの強度の変化率から求める。具体的には、下記式(3)から算出することができる。
結晶度=(圧着後の最大ピーク2θの強度/圧着前の最大ピーク2θの強度)×100 ・・・(3)
【0063】
このような結晶度の顔料を得るためには、ボールの径が1mm〜50mmの範囲内であることが好ましく、5mm〜20mmの範囲内であることがより好ましい。
【0064】
また、ボールミルの容器中において、容積に対する顔料(黒顔料及びサイアン顔料の総量)の体積割合としては5〜20%の範囲が、ボールの体積割合としては10〜60%の範囲が、それぞれ効率的であり好ましい。
【0065】
以上説明した本発明の黒色粒子は、インク、トナー等の画像形成材料やその他塗料等の工業製品に適時利用することができる。何れの用途においても、赤味の少ない純粋な黒に近い色合いの黒色を少ないばらつきで表現することができる。
【0066】
<黒トナー>
次に、以上説明した本発明の黒色粒子の好適な利用例として、当該黒色粒子を用いた黒トナー(本発明の黒トナー)について説明する。
【0067】
本発明の黒トナーは、少なくとも、以上説明した本発明の黒色粒子と、結着樹脂とを含むことを特徴とする。本発明の黒トナーには、その他必要に応じて、ワックス(離型剤)、各種内部添加剤(内添剤)を含有させても構わない。また、得られた本発明の黒トナーの粒子に外添剤を添加して、外添トナーとして用いても勿論構わない。
【0068】
本発明の黒トナーは、トナーとして使用するには特に限定はないが、トナー特性を考慮すると、単色の白黒画像を形成する黒トナーとしての使用に適している。本発明の黒トナーの製造方法としては、混合条件や熱条件に大きく左右され易い混練粉砕法を適用することが望ましい。
【0069】
本発明の黒トナーにおいて使用される結着樹脂としては、特に限定されず、各種の天然または合成高分子物質よりなる熱可塑性樹脂を用いることができ、例えば以下のような樹脂を例示することができる。
【0070】
スチレン、クロロスチレン等のスチレン類;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン;等の単独重合体あるいは共重合体を例示することができる。
【0071】
特に、本発明の黒トナーを混練粉砕法で製造する場合に、より好ましい結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等を挙げることができる。更に、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィン、ワックス類等を挙げることができる。
【0072】
これらの中でも、より好ましく使用される結着樹脂としては、ポリエステル樹脂を例示することができる。特にポリオール成分及びポリカルボン酸成分から、重縮合により合成されるポリエステル樹脂を結着樹脂として用いるのが好ましく、例えば、ビスフェノールAと多価芳香族カルボン酸とを主たる単量体成分とした重縮合物よりなる線状ポリエステル樹脂が好ましく使用できる。
【0073】
ポリエステル樹脂の合成に用いられるポリオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物、ビスフェノールA−プロピレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0074】
ポリエステル樹脂の合成に用いられるポリカルボン酸成分としては、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、ドデセニルコハク酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチレンカルボキシプロパンテトラメチレンカルボン酸等およびそれらの無水物が挙げられる。
【0075】
さらに、これらポリエステル系の結着樹脂としては、軟化点が90℃〜150℃、ガラス転移点(Tg)が50℃〜80℃、数平均分子量が2000〜7000、質量平均分子量が8000〜15000、酸価が5〜40、水酸基価が5〜50の範囲である樹脂が、定着性の観点で特に好ましい。
【0076】
本発明の黒トナーに用いられる顔料は、既述の本発明の黒色粒子であり、その配合割合としては、トナーを構成する固体分総質量に対して1質量%以上15質量%以下の範囲とすることが好ましく、3質量%以上10質量%以下の範囲とすることがより好ましい。
【0077】
本発明の黒トナーに添加可能なワックスとしては、次のようものが例示できる。例えば、パラフィンワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、マイクロクリスタリンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュワックス及びその誘導体、ポリオレフィンワックス及びその誘導体等である。この誘導体には、酸化物、ビニルモノマーとの重合体、グラフト変性物が含まれる。この他にも、アルコール、脂肪酸、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、エステルワックス、酸アミド等も利用できる。
【0078】
当該ワックスの黒トナーに対する添加量は、1質量%〜25質量%の範囲が好ましく、3質量%〜10質量%の範囲がより好ましい。ワックスの添加量が、1質量%より少ないと定着ラチチュード(トナーのオフセットなしに定着できる定着ロールの温度範囲)が不十分になる場合があり、25質量%より多いとトナーの粉体流動性が悪化し、静電潜像を形成する感光体表面に遊離ワックスが付着して静電潜像が正確に形成できなくなる場合がある。当該ワックスとしては、着色に影響しない範囲において使用されることが好ましい。
【0079】
更に、該黒トナーの長期保存性、流動性、現像性、転写性をより向上させる為に、内添剤として、無機粉、樹脂粉等を単独で又は複数併用して用いてもよい。この無機粉としては例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化亜鉛;樹脂粉としてはポリメチルメタクリレート(PMMA)、アミド系樹脂(ナイロン=登録商標)、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フッ素系樹脂等の球状粒子、そして、ポリ塩化ビニリデン、脂肪酸金属塩等の不定形粉末等が挙げられる。これら内添剤の添加量は、黒トナーの粒子に対して、好ましくは0.1質量%〜5質量%の範囲、より好ましくは0.5〜3質量%の範囲(内割り)で添加される。
【0080】
上記内添剤を、黒トナーの粒子内部に添加する方法としては公知の手法を用いることができるが、特に熱溶融混練処理が好適に用いられる。この時の混練としては、各種の加熱混練機を用いて行うことができる。加熱混練機としては、三本ロール型、一軸スクリュー型、二軸スクリュー型、バンバリーミキサー型が挙げられる。
【0081】
また、黒トナーの粒子を混練物の粉砕により製造する場合、例えば、マイクロナイザー、ウルマックス、JET−O−マイザー、KTM(以上、クリプトン社製)等により行うことができる。更にその後工程として、ハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所製)、メカノフュージョンシステム(ホソカワミクロン社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)等を用いて、機械的外力を加えることで粉砕後のトナー形状を変化させることができる。また、熱風による球形化も挙げることができる。さらには、分級処理を施してトナー粒度分布を調整してもよい。
【0082】
本発明の黒トナーの体積平均粒径としては、3μm〜12μmの範囲が好ましく、5μm〜10μmの範囲がより好ましい。体積平均粒径が3μmより小さいと、静電的付着力が重力と比べて大きくなり粉体としてハンドリングするのが困難になる可能性が高くなる。一方、体積平均粒径が12μmより大きいと、高精細な画像が得られ難くなる可能性が高くなる。
【0083】
なお、体積平均粒径D50v及び体積平均粒度分布指標GSDvは、コールターマルチサイザー−II型(ベックマン−コールター社製)を用いて、100μmのアパーチャ径で測定することにより求めることができる。この時測定は、トナーを電解質水溶液(アイソトンII水溶液)に分散させ、超音波により30秒以上分散させた後に行う。測定されるトナーの粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積D16v、数D16p、累積50%となる粒径を体積D50v、数D50p、累積84%となる粒径を体積D84v、数D84pと定義する。この際、D50vは体積平均粒径を表し、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v1/2として求められる。なお、(D84p/D16p1/2は、数平均粒度分布指標(GSDp)を表す。
【0084】
外添剤としては、特に制限はなく、無機粒子や有機粒子等の公知の外添剤を用いることができるが、その中でも、シリカ、チタニア、アルミナ、酸化セリウム、チタン酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグウネシウムおよびリン酸カルシウム等の無機粒子、ステアリン酸亜鉛のような金属石鹸、フッ素含有樹脂粒子、シリカ含有樹脂粒子および窒素含有樹脂粒子等の有機樹脂粒子が好ましい。また、目的に応じて外添剤表面に表面処理を施してもよい。表面処理剤としては、疎水化処理を行うためのシラン化合物、シランカップリング剤、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0085】
外添剤の添加量としては、黒トナーの粒子に対して外割りで1〜10質量%の範囲が好ましく、3〜8質量%の範囲がより好ましい。
【0086】
黒トナー中に含まれる顔料の平均分散径としては、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましい。平均分散径が1μmを超える場合、黒色粒子の吸収性が低下し易くなるため、より多くの黒色粒子が必要になるか、あるいは、光の吸収スペクトルがブロードになり易くなる場合があるため好ましくない。
【0087】
なお、「平均分散径」とは、トナー中に分散している個々の黒色粒子の平均粒径を意味する。この平均分散径は、TEM(透過型電子顕微鏡:日本電子データム(株)製、JEM−1010)観察により、トナー中に分散している1000個の粒子状の黒色粒子について、その断面積から個々の粒径を算出し、これを平均して求めることができる。
【0088】
<粒子容器及びトナー容器>
本発明の粒子容器は、前記本発明の黒色粒子が収容されてなることを特徴とするものである。また、本発明のトナー容器は、前記本発明の黒トナーが収容されてなることを特徴とするものである。
【0089】
本発明において、「粒子容器」及び「トナー容器」としては、顔料あるいはトナーを保存、運搬、陳列、販売等の目的で収容する容器の他、使用時にこれらを収容する容器をもその概念に含むものである。したがって、例えば、使用時に画像形成装置に装着するトナー収容容器は勿論、感光体や現像剤保持体、その他クリーニング部材等がセットで一体化され、内部にトナーを収容するいわゆるトナーカートリッジ(「現像カートリッジ」、「現像剤カートリッジ」等ともいう。)も本発明に言う「トナー容器」の範疇に含まれる。
【0090】
以下、「粒子容器」及び「トナー容器」の両容器を指す場合には「顔料乃至トナー容器」と表現する。
顔料乃至トナー容器は、一般にポリスチレンやポリプロピレン、ポリカーボネートあるいはABS樹脂といったプラスチック材料からなる。そのため、粉体を収容した場合、その内壁と粉体との間で帯電が起こりやすい。
【0091】
収容されるのが顔料の場合、顔料の種類によってその帯電性が異なる。そのため、単に複数種の顔料を混合して使用するために予め混合させて容器に収容してもその帯電性の違いから不具合が生じやすい。
【0092】
例えば、容器に収容する際にいずれかの顔料のみが容器内に入りづらく、また、収容後に帯電して弾き出されることにより、顔料の配合割合が所定の値にならかなったり、容器内で顔料の種類ごとに凝集や偏在が生じたり、容器から取り出す際にも帯電性の違いから取り出しやすさが顔料の種類ごとに異なってしまう場合がある。これらの現象が生じた場合、使用時の顔料の配合割合にばらつきが生じたり、狙った配合割合にならない懸念がある。
【0093】
しかし、既述の本発明の黒色粒子では、含まれる黒顔料とサイアン顔料の配合割合にばらつきが小さく、粒子ごとの帯電特性に開きが少ないため、これを容器に収容した本発明の粒子容器においては上記不具合が生じにくくなり、顔料としての色味のばらつきの少ない黒色粒子を粒子容器内に収容しておくことができる。
【0094】
一方、収容されるのがトナーの場合にも、含まれる顔料の種類や配合割合によってその帯電性が異なる。そのため、トナーの個々の粒子間での帯電性の違いから不具合が生じやすい。特に、トナーは帯電させて現像に供するため、個々の粒子に帯電性の相違が生ずることは、現像性乃至その安定性に大きな影響を与えかねない。
【0095】
個々の粒子間の帯電性の違いから生じ得る不具合として、顔料そのものが異なるもの同士を混合して収容させた上記粒子容器の場合と同様、容器内への入れ易さに差や収容後の弾き出されにより配合割合に変動を来したり、容器からの取り出し易さに差が生じたりといった問題が生じ得る。特にトナーの場合には、その帯電特性のばらつきが、現像性にも影響を及ぼし、画像濃度のばらつきなど画質に影響を及ぼす可能性がある。
【0096】
しかし、既述の本発明の黒トナーでは、個々のトナーの粒子に含まれる黒顔料とサイアン顔料の配合割合のばらつきが小さく、粒子ごとの帯電特性に開きが少ないため、これを容器に収容した本発明のトナー容器においては上記不具合が生じにくくなり、トナー画像としての色味のばらつきや現像特性の振れからくる画質低下が起り難い黒トナーをトナー容器内に収容しておくことができる。
【実施例】
【0097】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、単に「部」「%」とあるのは全て質量基準である。
【0098】
[各測定方法]
まず、本実施例において、各測定は次のように行った。
【0099】
<反射スペクトル>
分光光度計(日立製作所製、U−4000)を使用して、トナー画像の反射率のスペクトル(反射スペクトル)を測定した。
【0100】
<結晶度>
理学電気株式会社製のX線回折装置を利用して、最大ピークに対して処理前と処理後の比から、結晶度を求めた。
【0101】
[実施例1]
(黒色粒子の製造)
サイアン顔料としてC.I.Pigment Blue15:3(大日精化社製)を0.2質量部、カーボンブラック顔料として、ナイペックス170IQ(デグサ社製)を0.8質量部、直径1cmのメノウ球50部を100ml蓋つきビンに投入した。この時、ビンの容積に対するサイアン顔料及びカーボンブラック顔料の総量の体積割合は10%、メノウ球の体積割合は45%であった。その後ボールミルにより50回転/分の条件で0.5時間ミリング処理を行い、黒色粒子(1)を得た。得られた黒色粒子(1)の顔料特性を下記表1にまとめて示す。
【0102】
(黒トナーの調製1)
結着樹脂として線状ポリエステル(テレフタル酸/ビスフェノールA・エチレンオキシド2モル付加物/シクロヘキサンジメタノールから得られた線状ポリエステル:ガラス転移点(Tg)=62℃、数平均分子量(Mn)=4,000、質量平均分子量(Mw)=35,000、酸価=12、水酸基価=25)を87質量部と、上記黒色粒子(1)を8質量部、添加剤としてワックス(長鎖直鎖脂肪酸長鎖直鎖飽和アルコール;ベベン酸ステアリル)を5質量部からなるトナー原料の混合物をエクストルーダーで混練し、粉砕した後、風力式分級機により細粒と粗粒とを分級し、体積平均粒径(平均粒径D50)が9.6μmの黒トナー粒子(1−a)を得た。
【0103】
上記の黒トナー粒子(1−a)50部に対し、疎水性シリカ(キャボット社製、TS720。粒径16nm)1.2部を添加し、サンプルミルで混合して外添トナー(1−a)を得た。
【0104】
(現像剤の調製1)
ポリメチルメタアクリレート(綜研化学社製)を1%被覆した平均粒径50μmのフェライトキャリアを用い、トナー濃度が5%になるように外添トナー(1−a)を秤量し、両者をボールミルで5分間撹拌、混合して現像剤(1−a)を調製した。
【0105】
(黒トナー及び現像剤の調製2)
上記の(黒トナーの調製1)及び(現像剤の調製1)の操作をさらに合計4回繰り返し、それぞれ黒トナー粒子(1−b)、(1−c)、(1−d)、(1−e)、外添トナー(1−b)、(1−c)、(1−d)、(1−e)、並びに、現像剤(1−b)、(1−c)、(1−d)、(1−e)を調製し、合計5ロットの黒トナー粒子、外添トナー及び現像剤を得た。それぞれの黒トナー粒子のトナー特性を下記表2にまとめて示す。
【0106】
(評価試験)
5ロットの現像剤(1−a)〜(1−e)を用いてトナー量(TMA)が4(×10-4g/cm2)になるように、画像形成装置として、富士ゼロックス社製のDocuColor500CP改造機を用いて、50mm×50mmのトナー画像を形成した。このとき、A4サイズ白色紙(富士ゼロックス製、J−A4紙、幅:210mm、長さ:297mm)を記録媒体として用いた。
【0107】
形成されたトナー定着画像の表面について分光反射率測定機(日立製:U−4000)を使用して、420nm及び770nmにおける反射率(ΔR)を測定し、その値から、それぞれ標準偏差(σ)を算出した、結果を下記表2にまとめて示す。
【0108】
[実施例2]
(黒色粒子の製造)
実施例1において、ボールミルでのミリング時間を0.5時間から24時間に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を実施して黒色粒子(2)を得た。得られた黒色粒子(2)の顔料特性を下記表1にまとめて示す。
【0109】
(黒トナー及び現像剤の調製)
続いて、実施例1と同様の操作を実施して、合計5ロットの黒トナー粒子(2−a)、(2−b)、(2−c)、(2−d)、(2−e)、外添トナー(2−a)、(2−b)、(2−c)、(2−d)、(2−e)及び現像剤(2−a)、(2−b)、(2−c)、(2−d)、(2−e)を調製した。それぞれの黒トナー粒子のトナー特性を下記表2にまとめて示す。
【0110】
(評価試験)
さらに、5ロットの現像剤(2−a)〜(2−e)を用いて実施例1と同様にして評価試験を実施し、420nm及び770nmにおける反射率(ΔR)の値から、標準偏差(σ)を算出した、結果を下記表2にまとめて示す。
【0111】
[実施例3]
(黒色粒子の製造)
実施例1において、用いた黒顔料をカーボンブラックからアニリンブラック(ダイアモンドブラックS、野間化学株式会社製)に代えたこと以外は、実施例1と同様の操作を実施して黒色粒子(3)を得た。得られた黒色粒子(3)の顔料特性を下記表1にまとめて示す。
【0112】
(黒トナー及び現像剤の調製)
続いて、実施例1と同様の操作を実施して、合計5ロットの黒トナー粒子(3−a)、(3−b)、(3−c)、(3−d)、(3−e)、外添トナー(3−a)、(3−b)、(3−c)、(3−d)、(3−e)及び現像剤(3−a)、(3−b)、(3−c)、(3−d)、(3−e)を調製した。それぞれの黒トナー粒子のトナー特性を下記表2にまとめて示す。
【0113】
(評価試験)
さらに、5ロットの現像剤(3−a)〜(3−e)を用いて実施例1と同様にして評価試験を実施し、420nm及び770nmにおける反射率(ΔR)の値から、標準偏差(σ)を算出した、結果を下記表2にまとめて示す。
【0114】
[実施例4]
(黒色粒子の製造)
実施例1において、用いた黒顔料をカーボンブラックからペリレン(S0084、BASF社製)に代えたこと以外は、実施例1と同様の操作を実施して黒色粒子(4)を得た。得られた黒色粒子(4)の顔料特性を下記表1にまとめて示す。
【0115】
(黒トナー及び現像剤の調製)
続いて、実施例1と同様の操作を実施して、合計5ロットの黒トナー粒子(4−a)、(4−b)、(4−c)、(4−d)、(4−e)、外添トナー(4−a)、(4−b)、(4−c)、(4−d)、(4−e)及び現像剤(4−a)、(4−b)、(4−c)、(4−d)、(4−e)を調製した。それぞれの黒トナー粒子のトナー特性を下記表2にまとめて示す。
【0116】
(評価試験)
さらに、5ロットの現像剤(4−a)〜(4−e)を用いて実施例1と同様にして評価試験を実施し、420nm及び770nmにおける反射率(ΔR)の値から、標準偏差(σ)を算出した、結果を下記表2にまとめて示す。
【0117】
[実施例5]
(黒色粒子の製造)
実施例1において、用いた黒顔料をカーボンブラックからイカスミ(アイカブラック、東洋インキ社製)に代えたこと以外は、実施例1と同様の操作を実施して黒色粒子(5)を得た。得られた黒色粒子(5)の顔料特性を下記表1にまとめて示す。
【0118】
(黒トナー及び現像剤の調製)
続いて、実施例1と同様の操作を実施して、合計5ロットの黒トナー粒子(5−a)、(5−b)、(5−c)、(5−d)、(5−e)、外添トナー(5−a)、(5−b)、(5−c)、(5−d)、(5−e)及び現像剤(5−a)、(5−b)、(5−c)、(5−d)、(5−e)を調製した。それぞれの黒トナー粒子のトナー特性を下記表2にまとめて示す。
【0119】
(評価試験)
さらに、5ロットの現像剤(5−a)〜(5−e)を用いて実施例1と同様にして評価試験を実施し、420nm及び770nmにおける反射率(ΔR)の値から、標準偏差(σ)を算出した、結果を下記表2にまとめて示す。
【0120】
[実施例6]
(黒色粒子の製造)
実施例1において、用いた黒顔料をカーボンブラックからチタンブラック(13M−C、三菱マテリアル社製)に代えたこと以外は、実施例1と同様の操作を実施して黒色粒子(6)を得た。得られた黒色粒子(6)の顔料特性を下記表1にまとめて示す。
【0121】
(黒トナー及び現像剤の調製)
続いて、実施例1と同様の操作を実施して、合計5ロットの黒トナー粒子(6−a)、(6−b)、(6−c)、(6−d)、(6−e)、外添トナー(6−a)、(6−b)、(6−c)、(6−d)、(6−e)及び現像剤(6−a)、(6−b)、(6−c)、(6−d)、(6−e)を調製した。それぞれの黒トナー粒子のトナー特性を下記表2にまとめて示す。
【0122】
(評価試験)
さらに、5ロットの現像剤(6−a)〜(6−e)を用いて実施例1と同様にして評価試験を実施し、420nm及び770nmにおける反射率(ΔR)の値から、標準偏差(σ)を算出した、結果を下記表2にまとめて示す。
【0123】
[比較例1]
(顔料混合物の調製)
サイアン顔料としてC.I.Pigment Blue15:3を0.2質量部と、カーボンブラック顔料として、ナイペックス170IQ(デグサ社製)を0.8質量部とを混合し、ミリング処理は行わず、エクストルーダーの混練時の撹拌のみ実施して顔料混合物を調製した。得られた顔料混合物の顔料特性を下記表1にまとめて示す。
【0124】
(黒トナー及び現像剤の調製)
続いて、実施例1において、黒色粒子(1)に代えて上記得られた顔料混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例1の(黒トナーの調製1)以降の操作を実施し、比較例1の合計5ロットの黒トナー粒子(H−a)、(H−b)、(H−c)、(H−d)、(H−e)、外添トナー(H−a)、(H−b)、(H−c)、(H−d)、(H−e)及び現像剤(H−a)、(H−b)、(H−c)、(H−d)、(H−e)を調製した。それぞれの黒トナー粒子のトナー特性を下記表2にまとめて示す。
【0125】
(評価試験)
さらに、5ロットの現像剤(H−a)〜(H−e)を用いて実施例1と同様にして評価試験を実施し、420nm及び770nmにおける反射率(ΔR)の値から、標準偏差(σ)を算出した、結果を下記表2にまとめて示す。
【0126】
[実施例7]
(黒色粒子の製造)
実施例1において、サイアン顔料の配合量を0.09質量部、カーボンブラック顔料の配合量を0.91質量部、に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を実施して黒色粒子(7)を得た。得られた黒色粒子(7)の顔料特性を下記表1にまとめて示す。
【0127】
(黒トナー及び現像剤の調製)
続いて、実施例1と同様の操作を実施して、合計5ロットの黒トナー粒子(7−a)、(7−b)、(7−c)、(7−d)、(7−e)、外添トナー(7−a)、(7−b)、(7−c)、(7−d)、(7−e)及び現像剤(7−a)、(7−b)、(7−c)、(7−d)、(7−e)を調製した。それぞれの黒トナー粒子のトナー特性を下記表3にまとめて示す。
【0128】
(評価試験)
さらに、5ロットの現像剤(7−a)〜(7−e)を用いて実施例1と同様にして評価試験を実施し、420nm及び770nmにおける反射率(ΔR)の値から、標準偏差(σ)を算出した、結果を下記表3にまとめて示す。
【0129】
[実施例8]
(黒色粒子の製造)
実施例1において、サイアン顔料の配合量を0.1質量部、カーボンブラック顔料の配合量を0.9質量部、に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を実施して黒色粒子(8)を得た。得られた黒色粒子(8)の顔料特性を下記表1にまとめて示す。
【0130】
(黒トナー及び現像剤の調製)
続いて、実施例1と同様の操作を実施して、合計5ロットの黒トナー粒子(8−a)、(8−b)、(8−c)、(8−d)、(8−e)、外添トナー(8−a)、(8−b)、(8−c)、(8−d)、(8−e)及び現像剤(8−a)、(8−b)、(8−c)、(8−d)、(8−e)を調製した。それぞれの黒トナー粒子のトナー特性を下記表3にまとめて示す。
【0131】
(評価試験)
さらに、5ロットの現像剤(8−a)〜(8−e)を用いて実施例1と同様にして評価試験を実施し、420nm及び770nmにおける反射率(ΔR)の値から、標準偏差(σ)を算出した、結果を下記表3にまとめて示す。
【0132】
[実施例9]
(黒色粒子の製造)
実施例1において、サイアン顔料の配合量を0.14質量部、カーボンブラック顔料の配合量を0.86質量部、に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を実施して黒色粒子(9)を得た。得られた黒色粒子(9)の顔料特性を下記表1にまとめて示す。
【0133】
(黒トナー及び現像剤の調製)
続いて、実施例1と同様の操作を実施して、合計5ロットの黒トナー粒子(9−a)、(9−b)、(9−c)、(9−d)、(9−e)、外添トナー(9−a)、(9−b)、(9−c)、(9−d)、(9−e)及び現像剤(9−a)、(9−b)、(9−c)、(9−d)、(9−e)を調製した。それぞれの黒トナー粒子のトナー特性を下記表3にまとめて示す。
【0134】
(評価試験)
さらに、5ロットの現像剤(9−a)〜(9−e)を用いて実施例1と同様にして評価試験を実施し、420nm及び770nmにおける反射率(ΔR)の値から、標準偏差(σ)を算出した、結果を下記表3にまとめて示す。
【0135】
[実施例10]
(黒色粒子の製造)
実施例1において、サイアン顔料の配合量を0.25質量部、カーボンブラック顔料の配合量を0.75質量部、に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を実施して黒色粒子(10)を得た。得られた黒色粒子(10)の顔料特性を下記表1にまとめて示す。
【0136】
(黒トナー及び現像剤の調製)
続いて、実施例1と同様の操作を実施して、合計5ロットの黒トナー粒子(10−a)、(10−b)、(10−c)、(10−d)、(10−e)、外添トナー(10−a)、(10−b)、(10−c)、(10−d)、(10−e)及び現像剤(10−a)、(10−b)、(10−c)、(10−d)、(10−e)を調製した。それぞれの黒トナー粒子のトナー特性を下記表3にまとめて示す。
【0137】
(評価試験)
さらに、5ロットの現像剤(10−a)〜(10−e)を用いて実施例1と同様にして評価試験を実施し、420nm及び770nmにおける反射率(ΔR)の値から、標準偏差(σ)を算出した、結果を下記表3にまとめて示す。
【0138】
[実施例11]
(黒色粒子の製造)
実施例1において、サイアン顔料の配合量を0.33質量部、カーボンブラック顔料の配合量を0.64質量部、に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を実施して黒色粒子(11)を得た。得られた黒色粒子(11)の顔料特性を下記表1にまとめて示す。
【0139】
(黒トナー及び現像剤の調製)
続いて、実施例1と同様の操作を実施して、合計5ロットの黒トナー粒子(11−a)、(11−b)、(11−c)、(11−d)、(11−e)、外添トナー(11−a)、(11−b)、(11−c)、(11−d)、(11−e)及び現像剤(11−a)、(11−b)、(11−c)、(11−d)、(11−e)を調製した。それぞれの黒トナー粒子のトナー特性を下記表3にまとめて示す。
【0140】
(評価試験)
さらに、5ロットの現像剤(11−a)〜(11−e)を用いて実施例1と同様にして評価試験を実施し、420nm及び770nmにおける反射率(ΔR)の値から、標準偏差(σ)を算出した、結果を下記表3にまとめて示す。
【0141】
[実施例12]
(黒色粒子の製造)
実施例1において、サイアン顔料の配合量を0.4質量部、カーボンブラック顔料の配合量を0.6質量部、に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を実施して黒色粒子(12)を得た。得られた黒色粒子(12)の顔料特性を下記表1にまとめて示す。
【0142】
(黒トナー及び現像剤の調製)
続いて、実施例1と同様の操作を実施して、合計5ロットの黒トナー粒子(12−a)、(12−b)、(12−c)、(12−d)、(12−e)、外添トナー(12−a)、(12−b)、(12−c)、(12−d)、(12−e)及び現像剤(12−a)、(12−b)、(12−c)、(12−d)、(12−e)を調製した。それぞれの黒トナー粒子のトナー特性を下記表3にまとめて示す。
【0143】
(評価試験)
さらに、5ロットの現像剤(12−a)〜(12−e)を用いて実施例1と同様にして評価試験を実施し、420nm及び770nmにおける反射率(ΔR)の値から、標準偏差(σ)を算出した、結果を下記表3にまとめて示す。
【0144】
【表1】

【0145】
【表2】

【0146】
【表3】

【0147】
上記表2の結果を見ればわかるように、本発明の黒色粒子を用いた実施例1〜12の黒トナーは、繰り返しトナーを作製しても、得られるトナー表示画像が光の反射スペクトルのばらつきが少ないトナーであることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒顔料とサイアン顔料とを含み、複数の試料について波長420nmの光に対する反射率及び波長770nmの光に対する反射率をそれぞれ測定したときの測定値の標準偏差(1σ)が、両波長とも1以下であることを特徴とする黒色粒子。
【請求項2】
黒顔料とサイアン顔料とが塊状に一体化してなることを特徴とする黒色粒子。
【請求項3】
複数の試料について波長420nmの光に対する反射率及び波長770nmの光に対する反射率をそれぞれ測定した時、波長420nmの光に対する反射率の平均と、波長770nmの光に対する反射率の平均との差が、5%以内であることを特徴とする請求項1または2に記載の黒色粒子。
【請求項4】
黒顔料及びサイアン顔料を混合して、これに負荷を加えながら圧蜜成形することを特徴とする黒色粒子の製造方法。
【請求項5】
黒顔料及びサイアン顔料の混合物に負荷を加えながら圧蜜成形するに際し、ボールミル、ターボ形粉砕機、スクリーンミル及びジェット粉砕機からなる群より選ばれるいずれかの器具を用いることを特徴とする請求項4に記載の黒色粒子の製造方法。
【請求項6】
少なくとも、請求項1〜3のいずれかに記載の黒色粒子と、結着樹脂とを含むことを特徴とする黒トナー。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載の黒色粒子が収容されてなることを特徴とする粒子容器。
【請求項8】
請求項6に記載の黒トナーが収容されてなることを特徴とするトナー容器。

【図1】
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【公開番号】特開2011−6622(P2011−6622A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153165(P2009−153165)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】