説明

黒酢入りぽん酢醤油

【課題】黒酢本来の味覚や香りを残したまま、酸味や塩かどをやわらげるとともに、発酵臭、化学薬品臭、ムレ臭等の不快臭を強くマスキングし、マイルドなぽん酢醤油を提供する。
【解決手段】黒酢と醤油とを含有するぽん酢醤油に昆布のだし汁を添加するだけで、黒酢本来の味覚や香りを残したまま、酸味や塩かどをやわらげるとともに、発酵臭、化学薬品臭、ムレ臭等の不快臭を強くマスキングし、マイルドなぽん酢醤油を調製できる。このような効果は、かつお節や椎茸のだし汁では発揮されず、昆布のだし汁を使用することで初めて実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、黒酢、醤油及び昆布のだし汁を含有する黒酢入りぽん酢醤油に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
黒酢は、米や玄米などを原料に、長期間熟成させて発酵させた醸造酢で、色が黒く、独特の風味を持ったお酢である。
最近の研究によると、酢としての食欲増進、殺菌・静菌効果以外にも、黒酢には脂質代謝改善、抗アレルギー作用、血圧及び血糖調節等多くの生体調節機能を有することが確認されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような黒酢を用いたぽん酢醤油は既に市販されているものの、黒酢特有の苦み及び発酵臭等のために消費者からは敬遠される傾向にあった。
さらに、黒酢と醤油とを混合すると、それぞれ単独ではそれほど感じられない、化学薬品臭、ムレ臭等のいわゆる不快臭が新たに生成され、このような不快臭の抑制が課題とされていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記問題点を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、驚いたことに、だし汁の中でも特に昆布のだし汁が、黒酢本来の味覚や香りを残したまま、酸味や塩かどをやわらげるとともに、発酵臭、化学薬品臭、ムレ臭、刺激臭等のいわゆる不快臭を強くマスキングし、マイルドなぽん酢醤油を調製できることを見いだし、本発明を完成させた。
したがって、本発明は、黒酢、醤油及び昆布のだし汁を含有する黒酢入りぽん酢醤油に関するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明のぽん酢醤油は、少なくとも黒酢、醤油及び昆布のだし汁を含有するぽん酢醤油である。上記成分以外にも、ゆず、すだち、かぼす、レモンなどの柑橘果汁、みりんなどの発酵調味料、砂糖等の糖類、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウムなどのうま味調味料、かつお節など風味成分、大根おろしなどのおろし野菜などが配合されていてもかまわない。
【0006】
添加する昆布のだし汁としては、特に制限されるものではなく、通常の方法で得られたものを使用することができる。すなわち、昆布としては、真昆布、利尻昆布、日高昆布、羅臼昆布などのだし用昆布として市販されているものを使用することができ、このような昆布を使用し、水あるいは熱水で抽出したものをだし汁とし、本発明に使用する。
【0007】
昆布のだし汁の添加量は、官能的に黒酢と醤油とを含有するぽん酢醤油の不快臭を抑制でき、香味をマイルド化できる量であればよく、使用する黒酢、醤油、だし汁の種類や濃度により変化するものであるので一概には規定できないものであるが、たとえば、だし汁としてはぽん酢醤油の全体の1〜80%相当量、好ましくは5〜60%相当量、さらに好ましくは10〜40%相当量の範囲から官能試験を基に適宜選定することができる。また、昆布のだし汁以外にもかつお節、椎茸などのだし汁などの他の風味成分を複数種併用してもよく、このような場合、使用する風味成分のうち一番含量の多いものが昆布のだし汁であり、2種類の風味成分を使用する場合には、だし汁の50%以上が昆布のだし汁であることが不快臭を抑制し、香味をマイルド化するのには肝要である。
【0008】
【発明の効果】
後述の実施例に示すように、黒酢と醤油とを含有するぽん酢醤油に昆布のだし汁を添加するだけで、黒酢本来の味覚や香りを残したまま、酸味や塩かどをやわらげるとともに、発酵臭、化学薬品臭、ムレ臭等の不快臭を強くマスキングし、マイルドなぽん酢醤油を調製できる。
【0009】
【実施例】
以下、実施例を示し本発明を具体的に説明するが、本発明がこれに限定されないことは明らかである。
【0010】
実施例1
濃口醤油1部に対して黒酢1部、ゆず果汁0.5部を加え、更に各種だし汁0.5部を加え、混合撹拌してぽん酢醤油A〜Cを調製した。このようにして調製した各ぽん酢醤油とだし汁の代わりに水を使用して調製したぽん酢醤油Dをコントロールとして官能試験を行ったところ、下記表1に示す結果を得た。なお、香味の評価は、コントロールと比較して、強い=5点、弱い=1点として5段階で評価し、総合評価は、コントロールと比較して、良い5点、同じ3点、悪い1点で評価した。
ぽん酢醤油A:昆布だし汁を使用
ぽん酢醤油B:鰹節のだし汁を使用
ぽん酢醤油C:椎茸のだし汁を使用
ぽん酢醤油D:コントロール
【0011】
【表1】



この表に示すように、かつお節や椎茸のだし汁と比較して、昆布のだし汁の方が、黒酢本来の味覚や香りを残したまま、酸味や塩かどをやわらげるとともに、発酵臭、化学薬品臭、ムレ臭等の不快臭を強くマスキングし、マイルドなぽん酢醤油を調製できることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒酢、醤油及び昆布のだし汁を含有する黒酢入りぽん酢醤油。
【請求項2】
さらに、柑橘果汁を含有する、請求項1記載のぽん酢醤油。
【請求項3】
さらに、おろし野菜を含有する、請求項1または2記載のぽん酢醤油。

【公開番号】特開2004−49104(P2004−49104A)
【公開日】平成16年2月19日(2004.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−210718(P2002−210718)
【出願日】平成14年7月19日(2002.7.19)
【出願人】(000006770)ヤマサ醤油株式会社 (56)
【Fターム(参考)】