説明

黒鉛とカーボン繊維強化炭素との複合材製の接続部品

黒鉛電極を接続するための接続部品であって、少なくとも1つの黒鉛領域、および少なくとも1つのカーボン繊維強化炭素領域を含み、その際、該黒鉛は10質量%未満の繊維を含有し、且つ該カーボン繊維強化炭素は、20質量%より多くのカーボン繊維を含有する。有利には、該接続部品は、シリンダーまたは双円錐形の形態の黒鉛体を含み、その際、該黒鉛体に複数の溝形状の凹部が備えられており、該凹部は、20質量%より多くのカーボン繊維の質量割合を有するカーボン繊維強化炭素製の材料で満たされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素電極の接続のための接続部品に関する。
【0002】
炭素に基づく電極は、とりわけ、電熱法において、および殊に製鋼の際に電気アーク炉内で溶融物の溶融のために使用される。黒鉛の、良好な熱伝導率、低い電気抵抗、高い温度衝撃強度、および化学耐性に基づき、この目的のために、殊に黒鉛電極が使用される。
【0003】
アーク炉内での使用の際、黒鉛電極に電圧が印加され、その結果、黒鉛電極の下端から溶融物に至るアークが発生され、それが、溶融物、例えば鋼スクラップまたは鉄スポンジを溶融するために充分な高温、例えば1500℃を発生させる。アーク炉内部の高温に基づき、且つ、アークによって、黒鉛電極の下端が次第に焼け落ちて、黒鉛電極が消耗することが起きる。この理由から、この利用の際、一般に、互いに接続される黒鉛電極の複数個からなる電極線が使用され、その際、電極線は、オーブンの稼働の間に電極下端が焼け落ちる分だけ、アーク炉内に送りこまれる。電極線が規定された最短長を下回るやいなや、電極線の上端に、1つまたはそれより多くの新しい電極が取り付けられる。
【0004】
電極線の個々の電極は、ニップルとして示され且つ一般に黒鉛から構成される接続部品を介して互いに機械的に且つ電気伝導的に接続されている。その際、個々の、従来のシリンダー状の電極は、接続部品の収容のためにその両方の正面にそれぞれ、雌ねじを備える窪み、もしくは、接続部品の外形に対して相補的である幾何学的形状を有するねじ箱(Gewindeschachtel)を有している。両方の電極をその都度、その正面を介して互いに接続するために、ねじ箱にその都度、雄ねじを備えた接続部品をねじ込む。その際、接続部品は一般に、二重円錐台形状もしくは双円錐の形態、またはシリンダー形状に形成されている。
【0005】
アーク炉の稼働の際、電極線は、機械的、熱的および電気的に非常に酷使される。例えば、鋼溶融物において非常に不均一である際(例えばそこで浮遊しているスクラップ部分によって引き起こされる)、電極線に強く曲がる力が生じ、そのことが接続部品または電極の破壊をみちびくことがある。
【0006】
加えて、黒鉛電極線の直径は、アーク炉の稼働の際、側壁の酸化に基づいて低減し、このために、殊に、鋼溶融物槽に向いた電極線の端部の直径が非常に減少する。説明された通り、電極はアーク炉の稼働の際に消耗し、このために、個々の接続部品が溶融槽のレベルに降りてくる。そのために、電極接続部においてかなりの熱勾配が生じ、それがねじ穴(Gewindeschacht)の壁で著しい周辺応力をみちびき、それによってまた、ねじ穴の壁にクラックが生じる。酸化に基づき、ねじ穴の壁が薄くなるほど、周辺応力は大きくなる。ねじ穴の壁がより厚い際、即ち、より小さなニップルが使用される際、より小さな周辺応力が発生する。
【0007】
この理由から、ねじ穴の壁をより厚く形成することが望ましく、それは、同じねじ穴直径の際の電極直径が大きくなるか、または同じ電極直径の際のねじ穴直径が小さくなるという意味である。ただし、黒鉛電極の外径は一般に、計画されている用途によって予め設定されており、電極直径の増大は考慮に入らない。ねじ穴の直径の減少は、他方で、接合物の機械的強度を、殊に電極線の上の部分において、非常に減少させ、なぜなら、その際、より小さな直径を有する接続部品もしくは黒鉛ニップルが使用されることになり、それは、必然的に、より大きな直径を有するものよりも低い強度を有するからである。これはまた、電極線の上部の領域における破壊についての可能性を高め、それに続いて、破壊された電極線が溶融物中に落下し、そのことが著しい製造の損失につながりかねない。
【0008】
そのような接続部品の機械的強度を高めるために、既に、例えばEP1460883号A2内に、黒鉛からなるニップルの代替として、カーボン繊維で強化された黒鉛製のニップルが提案されており、そこでは、表面が酸化活性化され且つさらに炭化被覆を備えられている0.2ないし10%のカーボン繊維が、黒鉛マトリックス中に均一に分布している。ただし、このニップルの機械的強度は充分に高くないので、上記の問題を克服するために、ニップルの機械的強度が不充分とならないでニップルの直径を減少することはできない。
【0009】
従って、本発明の課題は、黒鉛ベースの接続部品であって、改善された機械的強度を有して、黒鉛電極を、アーク炉内で使用するために充分に安定な電極線に接続でき、それにしかも、殊に、従来技術から公知の接続部品にとって必須である直径よりも小さい直径を有する場合であっても該電極線に接続できる黒鉛ベースの接続部品を提供することである。
【0010】
本発明によれば、この課題は、黒鉛電極を接続するための接続部品であって、少なくとも1つの黒鉛領域、および少なくとも1つのカーボン繊維強化炭素領域を含み、その際、該黒鉛は10質量%未満の繊維を含有し、且つ該カーボン繊維強化炭素は、20質量%より多くのカーボン繊維を含有する、前記接続部品を提供することによって解決される。
【0011】
この解決策は、単独の領域または複数の個々の領域が、20%より多いカーボン繊維の質量割合を有するカーボン繊維強化炭素(CFC)製の材料からなり、且つ、単数もしくは複数の残りの領域が(繊維含有率10質量%未満を有する)黒鉛から構成される、複合材製の接続部品が、従来技術から公知の黒鉛ニップルと比較して、しかも殊に、カーボン繊維がニップル全体に渡って均一に分布しているものと比較しても、はるかにより高い機械的強度、殊により高い引っ張り強度およびより高い曲げ強度を有するという、驚くべき知見に基づく。加えて、驚くべきことに、互いに異なる熱膨張係数を有しているにもかかわらず、個々の領域の離層が生じない。これに基づき、本発明による接続部品は、黒鉛電極を電極線に接続させるために抜群に適している。殊に本発明による接続部品を、この用途のために、優れた機械的強度に基づいて、比較的小さな直径で使用することができる、即ち、殊に、従来技術から公知の黒鉛ニップルについて充分な強度を達成するために少なくとも必要な直径の半分で使用することができる。これに基づき、本発明による接続部品を用いて、黒鉛電極を、相応してより小さな直径を有するねじ穴を用いて、アーク炉内において利用するために充分に安定な電極線に接続できる。ねじ穴の直径がより小さいので、電極中に備えられたねじ穴の壁における周辺応力、およびこれによるねじ穴の壁におけるクラック形成、およびそこから生じる材料損失を、アーク炉内での電極線における電極の利用の際に、著しく減少できる。
【0012】
本発明によれば、該接続部品は、1つまたはそれより多くの黒鉛領域もしくはドメイン、および1つまたはそれより多くのCFC領域もしくはドメインを含み、その際、前記黒鉛は、これがそもそも繊維を含有する場合は、10質量%未満の繊維を含有し、前記CFC材料は、20質量%より多くのカーボン繊維を含有する。有利には、少なくとも1つの黒鉛領域は5質量%未満の繊維を含有し、且つ、特にとりわけ特に好ましくは繊維を全く含有せず、他方で、CFC材料は好ましくは少なくとも30質量%のカーボン繊維を含有する。
【0013】
従って、本発明による接続部品は繊維の豊富な領域と、繊維の乏しい領域もしくは繊維のない領域を含む。その際、個々の領域はそれぞれ、任意の幾何学的形状を有することができ、且つ、これらが互いに隣接している限りは、重なり合って任意に配置されている。ただし、単数もしくは複数のCFC材料領域が、少なくとも部分的に、単数もしくは複数の黒鉛領域で取り囲まれていることが好ましい。
【0014】
最後に挙げた実施態様を、以下のように具体的に示すことができる: 本発明による接続部品が少なくとも1つの黒鉛体を含み、その中に少なくとも1つの凹部が備えられており、その少なくとも1つの凹部内にカーボン繊維強化炭素製の材料が備えられており、該黒鉛は10質量%未満の繊維を含有し、且つ、該カーボン繊維強化炭素は20質量%より多くのカーボン繊維を含有する。有利には、少なくとも1つの凹部は完全にCFC材料で満たされている、もしくは塞がれている。その際、その少なくとも1つの凹部は、黒鉛体に、例えばそれを製造の際に相応の形状に成形することによって、始めから備えられてもよく、または、その少なくとも1つの凹部は、例えばシリンダー形状の黒鉛体に溝形状(nutfoermig)の凹部をフライス削りすることによって、後で黒鉛体にもたらされてもよい。
【0015】
黒鉛体と、カーボン繊維強化炭素製の材料との間の固い結合を達成するために、本発明の思想のさらなる形態において、少なくとも1つの凹部内に備えられたカーボン繊維強化炭素製の材料を、黒鉛体と、結合剤を介して結合することが提案される。このために、カーボン繊維強化炭素製の材料を、凹部の形状に加工し、その後、結合剤と共に、例えばCFC製の材料をその外表面上に結合剤をコーティングすることによって、黒鉛体の凹部内にはめ込むことができ、その後、そのように得られた接続部品を、例えば100ないし300℃の熱処理に供して、CFC材料を黒鉛体と固く結合させる。
【0016】
原則的に、この目的のために、それぞれ、炭素含有材料に基づく結合剤が使用され、その際、良好な結果は、殊に、結合剤が、フェノール樹脂、ピッチ、フラン樹脂、フェニルエステル、および2つまたはそれより多くの上記の化合物の任意の混合物からなる群から選択される場合に得られる。
【0017】
黒鉛体の少なくとも1つの凹部内に備えられる、カーボン繊維強化炭素製の材料は、炭素マトリックスから構成され、その中にカーボン繊維が含有されている。CFC材料のマトリックスのための出発材料として、炭素含有材料、殊にフェノール樹脂、ピッチ、フラン樹脂、フェニルエステルおよび上記の化合物の2つまたはそれより多くの任意の混合物からなる群から選択されるものを使用することができ、他方で、カーボン繊維のための出発材料としては、好ましくはピッチ、ポリアクリロニトリル、過酸化ポリアクリロニトリルまたはセルロースを使用できる。上記の材料製の繊維混合物、または2つまたはそれより多くの上記の出発材料製のバイフィラメントを使用することもできる。
【0018】
カーボン繊維は、例えば長さ5〜250mm、好ましくは5〜100mmを有する、エンドレスファイバーまたはステープルファイバーであってよい。同様に好ましく、カーボン繊維は、繊維束、ニット、結ばれた物(Gestrick)、フリース、網状のもの、または一方向または多軸のいずれかで配列された束層状化物(Gelege)の形態で存在することが可能である。
【0019】
本発明のさらに特に好ましい実施態様によれば、CFC材料のカーボン繊維は織物の形態で形成されているか、またはとりわけ特に好ましくは、複数の織物層が重なり合って配置され且つ互いに結合されている織物積層体の形態で形成される。このCFC織物材料は、有利には、少なくとも150MPa、特に好ましくは少なくとも200MPa、およびとりわけ特に好ましくは少なくとも250MPaの3点曲げ強さを有する。
【0020】
かかる織物積層体を、例えば、炭化および/または黒鉛化繊維、殊にエンドレスファイバーから、織物を製造し、その際、プリプレグに樹脂を含浸させた後、複数のプリプレグを重ね合わせて積層化することによって製造できる。その際、個々のプリプレグを、例えば平行または90°だけ互いにずらして重なり合わせて配置できる。引き続き、該積層体をプレスし、硬化させ、炭化し、且つ随意に黒鉛化する。その際、炭化を、有利には600〜1200℃の温度で実施し、且つ、随意の黒鉛化を1800〜3000℃、並びに特に好ましくは2000〜2500℃の温度で実施する。炭化の後、且つ随意の黒鉛化の前に、該積層体に、随意に1回または複数回、例えば3回または4回、樹脂またはピッチを含浸させることができ、その際、個々の含浸段階の後、その都度、新たな炭化を行う。この実施態様の際も、結合剤もしくはマトリックス材料としては、有利にはフェノール樹脂、ピッチ、フラン樹脂および/またはフェニルエステルが使用され、且つ、カーボン繊維のための出発材料としては、有利にはピッチ、ポリアクリロニトリル、過酸化ポリアクリロニトリルまたはセルロースが使用される。
【0021】
本発明の思想のさらなる形態において、CFC材料が厚さ1.2〜1.8g/cm3、特に好ましくは1.4〜1.6g/cm3、およびとりわけ特に好ましくは約1.5g/cm3を有することが提案される。
【0022】
有利には、カーボン繊維強化炭素製の材料中でのカーボン繊維の質量割合は、20より上〜80%、特に好ましくは30〜70%、およびとりわけ特に好ましくは40〜60%、例えば約50%である。
【0023】
原則的に、少なくとも1つの凹部、ひいては少なくとも1つのCFC材料領域が、黒鉛体のそれぞれの位置に配置されており、且つ、全ての考えられる幾何学的形状を有するが、しかしながら、好ましくは、その少なくとも1つの凹部は溝もしくはスリットの形態で形成されている。特に好ましくは、少なくとも1つの凹部が、接続部品の縦方向、即ち、接続部品の接続方向に延びており、且つ、接続部品の縦方向に垂直な面において、即ち、接続部品の縦方向に対して横切って、黒鉛体の外側から内側に延びている。言い換えれば、シリンダー形状の黒鉛体の場合、少なくとも1つの凹部は、黒鉛体の外周面から内部に延びる直方体形またはくさび形の形態を有する。
【0024】
一般に、少なくとも1つの凹部、ひいては少なくとも1つのCFC材料領域は、黒鉛体の縦寸法の、即ち、接続部品における黒鉛体の寸法の、任意の長さの部分にわたって、または黒鉛体の縦寸法にわたって完全に延びていてよい。良好な結果は殊に、少なくとも1つの凹部が、黒鉛体の縦寸法の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、特に好ましくは少なくとも90%、およびとりわけ特に好ましくは100%にわたって延びている場合に得られる。ただし、あまり好ましくない場合、少なくとも1つの凹部が、黒鉛体の縦寸法の50%未満にわたって延びていることも可能である。
【0025】
上記の説明の通り、少なくとも1つの凹部、ひいてはCFC材料領域は、有利には黒鉛体の外周面から内部に延びている。原則的に、これがまたあまり好ましくない場合、少なくとも1つの凹部が黒鉛体を通じて横切って延びていることも可能である。ただし、少なくとも1つの凹部が、黒鉛体の外側もしくは外周面から、黒鉛体の中心軸を超えずに、内部に延びていることが好ましい。有利には、少なくとも1つの凹部は、接続部品の縦方向に対して横切る面から見て、黒鉛体の外側もしくは外周面から、黒鉛体の外側と中心軸との間の距離の10%超ないし100%未満、有利には20%ないし80%、特に好ましくは30〜70%、とりわけ特に好ましくは40〜70%、および極めて好ましくは約50%にわたって、内側に延びている。
【0026】
本発明のさらに好ましい実施態様によれば、全ての凹部の全体の体積、ひいてはカーボン繊維強化炭素の全体の体積は、接続部品の全体の体積に対して5ないし75%、好ましくは10ないし50%、およびとりわけ特に好ましくは20ないし40%である。
【0027】
凹部もしくはカーボン繊維強化炭素領域の数に関して、本発明による接続部品は限定されない。これが少なくとも2つの凹部を有する場合、個々の凹部は有利にはほぼ同一の大きさであり、且つ殊に接続部品の横断面にわたって一様に分布していることが好ましい。良好な結果は、殊に、黒鉛体が、2ないし50個の凹部、特に好ましくは2〜32個の凹部、とりわけ特に好ましくは5ないし32個の凹部、および極めて好ましくは8ないし24個の凹部、例えば16または24個の凹部を有し、それらがカーボン繊維強化炭素製の材料で満たされている場合に得られる。有利には、個々の凹部がそれぞれくさび形に、接続部品の外周面から内部に延びており、且つ、これが好ましくはほぼ同一の大きさであり、且つ接続部品の横断面にわたって一様に分布している。
【0028】
原則的に、接続部品はそれぞれ任意の幾何学的形態を取ることができるのだが、好ましくは、それらはシリンダー形状または特に好ましくは双円錐形、即ち、2つの円錐台がその底面で互いに結合されている二重円錐台形状の形態で形成されている。
【0029】
説明された通り、本発明による接続部品は、カーボン繊維が接続部品の体積全体にわたって均一に分布している従来技術から公知の黒鉛製ニップルと比較して、より高い機械的強度および殊により高い引っ張り強度および曲げ強度を有する。この理由から、たとえ且つ殊に、本発明による接続部品が従来技術から公知の接続部品と比較して小さい、例えば25ないし75%だけ小さい、および殊に少なくとも50%だけ小さい直径を有する場合でも、本発明による接続部品を用いて黒鉛電極を互いに安定に接続できる。例えば従来の接続部品が、2700mmの長さおよび600mmの直径を有する標準的な黒鉛電極の接続のために、電極の充分に安定な接続を達成するために317mmの直径を有する一方で、本発明による接続部品が150mmの直径を有する場合、同一の黒鉛電極を、本発明による接続部品を用いて、同一の安定性で接続できる。
【0030】
本発明による接続部品の少なくとも1つの黒鉛もしくは黒鉛体領域のための黒鉛用の出発材料として、それぞれ、当業者に公知の黒鉛前駆体、殊にコークスと結合剤との混合物を使用できる。有利には、使用されるコークスは、10mm未満、特に好ましくは5mm未満、およびとりわけ特に好ましくは0.01ないし3mmの粒径を有する。コークスとしては、例えばピッチコークス、製司コークス、または石油コークス、殊にニードルコークスを使用でき、他方で、結合剤としては、好ましくはピッチを使用できる。コークスと結合剤との間の混合比は、有利には5:1ないし2:1、および特に好ましくは約4:1である。この混合物に、添加剤として、0.1〜0.5質量%の少量の酸化鉄を添加できる。該混合物内に、10%未満の質量割合までの繊維が含有されることができ、しかしながらその際、前記で説明した通り、好ましくは、これは最大で5質量%の繊維を含有し、且つ特に好ましくは繊維を含有しない。該混合物はその後、例えば押出によって望ましい形態に成形され、且つその後、炭化および黒鉛化される。黒鉛化前に、1つまたはそれより多くの含浸段階を実施でき、その際、その成形体を含浸剤、例えば含浸ピッチで含浸させ、引き続き、新たに炭化する。
【0031】
随意に、黒鉛化の後にも、1またはそれより多くの(後)含浸を行ってもよく、その都度、炭化が続く。
【0032】
本発明のさらなる対象は、先に記載された本発明による接続部品の製造方法であって、以下の段階:
i) 繊維を含有しないか、または10質量%未満の繊維を含有する、黒鉛体を準備する段階、
ii) 20質量%より多くの繊維を含有する、カーボン繊維強化炭素製の材料を準備する段階、
iii) 該黒鉛体と、該カーボン繊維強化炭素製の材料とを、結合剤を用いて結合する段階、および
iv) 段階iii)で得られた構造物にねじを取り付ける段階
を含む、製造方法である。
【0033】
有利には、CFC材料は少なくとも部分的に黒鉛体によって取り囲まれている。この実施態様の際、該方法は有利には以下の段階:
a) 有利にはシリンダーまたは双円錐形の形態の黒鉛体を準備する段階、
b) 該黒鉛体を加工することによって、少なくとも1つの凹部を該黒鉛体に備える段階、
c) 少なくとも1つの凹部の形態のカーボン繊維強化炭素を準備する段階、
d) 結合剤およびカーボン繊維強化炭素を少なくとも1つの凹部にもたらす段階、
e) 段階d)において得られた構造物を熱処理する段階、および
f) 段階e)において得られた構造物にねじを取り付ける段階
を含む。
【0034】
工程段階a)による黒鉛体の準備のために、例えば、結合剤とコークスとの混合物を、シリンダーまたは双円錐形の形態に成形でき、且つ、そのように得られた物体をその後、炭化し且つ黒鉛化する。随意に、その際、成形と黒鉛化との間に、含浸剤、例えばピッチを用いた少なくとも1つの含浸段階を行うことができる。含浸を、例えば真空下で2ないし10時間の間、行い、その際、その含浸の後に、有利には熱処理を例えば600〜1000℃、殊に700〜900℃で、例えば2〜10時間、殊に4〜6時間の間、行う。
【0035】
少なくとも1つの凹部を、工程段階b)において、それぞれ公知の加工技術、例えばフライスによって施与することができる。その代替として、該黒鉛体を、成形段階の際に、例えば押出によって、既に少なくとも1つの凹部を含む形態に成形することができる。
【0036】
本発明の思想のさらなる形態において、工程段階b)において、黒鉛体に2ないし50個の凹部、好ましくは2ないし32個の凹部、特に好ましくは5ないし32個の凹部、およびとりわけ特に好ましくは8ないし24個の凹部が備えられ、有利には、それらが接続部品の横断面にわたって一様に分布していることが提案される。その際、好ましくは、個々の凹部は、接続部品の縦方向に延びており、且つ、接続部品の縦方向を横切って、接続部品の外側から内部へ延びている。
【0037】
工程段階c)におけるカーボン繊維強化炭素の製造のために、カーボン繊維、例えば過酸化ポリアクリロニトリル繊維、ポリアクリロニトリル繊維、セルロース繊維および/またはピッチ繊維を炭化および/または黒鉛化でき、その後、そのように得られたカーボン繊維を特に好ましくは織物または織物積層体に加工し、引き続き、それに結合剤を含浸させ、その後、そのように得られた構成物を炭化し、且つ、場合によっては黒鉛化する。その際、例えば、結合剤として、フェノール樹脂、ピッチ、フラン樹脂、フェニルエステル、および上記の化合物の2つまたはそれより多くの任意の混合物からなる群から選択されるものが使用される。
【0038】
工程段階d)において、カーボン繊維強化炭素と共にもたらされる結合剤も、有利には、フェノール樹脂、ピッチ、フラン樹脂、フェニルエステルおよび上記の化合物の2つまたはそれより多くの任意の混合物からなる群から選択される。
【0039】
本発明のさらに好ましい実施態様によれば、工程段階e)における熱処理を100〜300℃の温度で実施する。
【0040】
本発明のさらなる対象は、上述の本発明による方法によって得られる接続部品である。
【0041】
さらに、本発明は、2つの電極を接続するための、有利には2つの黒鉛電極を接続するための、先述の本発明による接続部品の使用、もしくは、複数の電極、有利には黒鉛電極を、電極線に接続するための、複数の先述の本発明による接続部品の使用に関する。
【0042】
最終的に、本発明は、2つまたはそれより多くの黒鉛電極を含み、そのそれぞれ2つの黒鉛電極が、それぞれ本発明による接続部品によって互いに接続されている、電極線に関する。
【0043】
以降で、本発明を単に例示的に、有利な実施態様を用いて、添付図を参照して説明する。その際、図は以下を示す:
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第一の実施例による接続部品の透視図である
【図2】図1に描かれる接続部品を上から見た図である
【図3】本発明の第二の実施例による接続部品を上から見た図である
【図4】本発明の第三の実施例による接続部品の透視図である。
【0045】
図1および2に描かれる接続部品10は、黒鉛体12から構成され、前記黒鉛体は10個のくさび形の凹部14、14’を有し、前記凹部はカーボン繊維強化炭素製の材料で満たされている。その際、くさび状の凹部14、14’は、黒鉛体12の縦寸法全体にわたって、且つ、接続部品10の縦軸に対して横切る方向に見て、黒鉛体12の外周面もしくは外面16から、黒鉛体12の外側16と中心軸18との間の距離の約50%にわたって、内部に延びている。
【0046】
黒鉛体12が、繊維を有さない黒鉛からなる一方、カーボン繊維強化炭素は20質量%より多くのカーボン繊維を含有する。カーボン繊維強化炭素製の材料は、黒鉛体12と、結合剤(図示されない)を介して結合されている。接続部品10の外周面に、雄ねじ(図示されない)が取り付けられている。
【0047】
図3に描かれる接続部品10は、図2および3に描かれるものと、個々の、カーボン繊維強化炭素製の材料で満たされている凹部14、14’が、くさび形ではなく、平坦な直方体形態で形成されている点で異なる。
【0048】
図1に描かれる接続部品10とは異なり、図4に描かれる接続部品は双円錐形、即ち、2つの円錐台がその底面で互いに結合されている二重円錐台形状の形態に構成されている。接続部品10の外周面に、雄ねじ(図示されない)が取り付けられている。
【符号の説明】
【0049】
10 接続部品
12 黒鉛体/黒鉛領域
14、14’ 凹部(CFC材料で満たされている)/CFC材料領域
16 黒鉛体の外周面もしくは外面
18 黒鉛体の中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒鉛電極を接続するための接続部品(10)であって、少なくとも1つの黒鉛領域(12)および少なくとも1つのカーボン繊維強化炭素領域(14、14’)を含み、該黒鉛が10質量%未満の繊維を含有し、且つ該カーボン繊維強化炭素が20質量%より多くのカーボン繊維を含有する、接続部品(10)。
【請求項2】
黒鉛が、5質量%未満の繊維を含有し、好ましくは繊維を含有しないことを特徴とする、請求項1に記載の接続部品(10)。
【請求項3】
少なくとも1つのカーボン繊維強化炭素領域(14、14’)が、少なくとも部分的に、少なくとも1つの黒鉛領域(12)によって取り囲まれていることを特徴とする、請求項1または2に記載の接続部品(10)。
【請求項4】
少なくとも1つの黒鉛領域(12)が黒鉛体(12)であり、該黒鉛体に少なくとも1つの凹部(14、14’)が備えられており、その少なくとも1つの凹部(14、14’)内にカーボン繊維強化炭素が備えられていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の接続部品(10)。
【請求項5】
少なくとも1つの凹部(14、14’)内に備えられているカーボン繊維強化炭素製の材料が、黒鉛体(12)と、結合剤を介して結合されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の接続部品(10)。
【請求項6】
カーボン繊維が、カーボン繊維強化炭素製の材料中に、織物、または複数の織物層が重なり合って配置され且つ互いに結合されている織物積層体の形態で存在することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の接続部品(10)。
【請求項7】
カーボン繊維強化炭素製の材料中でのカーボン繊維の質量割合が、20%より多く80%まで、特に好ましくは30%ないし70%、且つとりわけ特に好ましくは40%ないし60質量%であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の接続部品(10)。
【請求項8】
少なくとも1つの凹部(14、14’)が、接続部品(10)の縦方向に延びており、且つ、接続部品(10)の縦方向に対して横切って、黒鉛体(12)の外側(16)から内部に延びていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の接続部品(10)。
【請求項9】
少なくとも1つの凹部(14、14’)が、黒鉛体(12)の縦方向の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、特に好ましくは少なくとも90%、およびとりわけ特に好ましくは100%にわたって延びていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の接続部品(10)。
【請求項10】
少なくとも1つの凹部(14、14’)が、黒鉛体(12)の縦方向に対して横切って、黒鉛体(12)の外側(16)から、黒鉛体(12)の外側(16)と中心軸(18)との間の距離の10%超ないし100%未満、有利には20%ないし80%、特に好ましくは30%ないし70%、およびとりわけ特に好ましくは40%ないし70%にわたって、内部に延びていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の接続部品(10)。
【請求項11】
全ての凹部(14、14’)の全体の体積が、接続部品(10)の全体の体積に対して、5%ないし75%、好ましくは10%ないし50%、およびとりわけ特に好ましくは20%ないし40%であることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の接続部品(10)。
【請求項12】
黒鉛体(12)が、2ないし50個の凹部(14、14’)、好ましくは2ないし32個の凹部(14、14’)、特に好ましくは5ないし32個の凹部(14、14’)、および極めて好ましくは8ないし24個の凹部(14、14’)を有し、該凹部はカーボン繊維強化炭素製の材料で満たされていることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の接続部品(10)。
【請求項13】
シリンダー形状または双円錐の形態に構成されていることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の接続部品(10)。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項に記載の接続部品(10)の製造方法であって、以下の段階:
i) 繊維を含有しないか、または10質量%未満の繊維を含有する黒鉛体(12)を準備する段階、
ii) 20質量%より多くの繊維を含有する、カーボン繊維強化炭素製の材料を準備する段階、
iii) 該黒鉛体(12)と該カーボン繊維強化炭素製の材料とを、結合剤を用いて結合する段階、および
iv) 段階iii)で得られた構造物にねじを取り付ける段階
を含む製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、以下の段階:
a) 有利にはシリンダーまたは双円錐形の形態の黒鉛体(12)を準備する段階、
b) 黒鉛体(12)を加工することによって、少なくとも1つの凹部(14、14’)を黒鉛体(12)に備える段階、
c) 少なくとも1つの凹部(14、14’)の形態のカーボン繊維強化炭素を準備する段階、
d) 結合剤およびカーボン繊維強化炭素を少なくとも1つの凹部(14、14’)内にもたらす段階、
e) 段階d)において得られた構造物を熱処理する段階、および
f) 段階e)において得られた構造物にねじを取り付ける段階
を含む方法。
【請求項16】
段階e)における熱処理を、100〜300℃の温度で実施することを特徴とする、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
2つの電極、有利には2つの黒鉛電極を接続するための、請求項1から13までのいずれか1項に記載の接続部品(10)の使用。
【請求項18】
2つまたはそれより多くの黒鉛電極を含み、それぞれ2つの黒鉛電極が、請求項1から13までのいずれか1項に記載の接続部品(10)によって互いに接続されている電極線。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2013−508901(P2013−508901A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534609(P2012−534609)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064677
【国際公開番号】WO2011/047947
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(501090803)エスゲーエル カーボン ソシエタス ヨーロピア (47)
【氏名又は名称原語表記】SGL CARBON SE
【住所又は居所原語表記】Rheingaustrasse 182, D−65203 Wiesbaden, Germany
【Fターム(参考)】