説明

鼻隠し材及び軒先構造

【課題】組立作業を簡略化できかつ強度的に優れた鼻隠し材を用いた軒先構造を提供する。
【解決手段】軒先構造は、繊維補強水硬性組成物が押出成形され曲げ載荷に際して多重亀裂を生じて破壊する性質を示す鼻隠し材1を用い、前記鼻隠し材1の上部が垂木4の軒先側端部4aに直接固定され、前記鼻隠し材1の下部裏面側に野縁2が固定され、前記野縁に軒天井材3が固定され、前記鼻隠し材の表面側に樋8を固定するための金具9が直接ビス留めされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軒先構造の組み立てを簡易にすることができかつ強固な鼻隠し材及び当該鼻隠し材を用いた軒天井の軒先構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の軒天井の取り付け等に関する軒先構造としては、特許文献1(特開平6−307002号公報)や特許文献2(特開昭62−189249号公報)に開示されているような構造が公知であった。
【0003】
例えば、特許文献1に示す軒先構造は垂木の軒先側端部に下地板材を取り付け、当該下地板材に鼻隠し材を固定する構成である。また、特許文献2に示す軒先構造は下側野縁に対して、上下方向に長い下地板材を取り付け、当該下地板材に鼻隠し材を固定していた。
【0004】
このように鼻隠し材の固定に、下地板材を設け、当該下地板材に鼻隠し材を固定するという構成を採用する。このように、下地板材を設ける理由の一つとしては、鼻隠し材の外側に樋が配置されるということが挙げられる。樋は野地板の軒先側端部に沿って鼻隠し材の外側に雨水などを通すために勾配を付けて配置される。従来の軒先構造では、樋を鼻隠し材に直接ビス留めなどで固定することは強度的な問題から不可能であり、鼻隠し材を貫通して鼻隠し材の下に設けられている下地材にビス留めするという構成を採用していた。
【特許文献1】特開平6−307002号公報
【特許文献2】特開昭62−189249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、鼻隠し材の固定のために、長尺の下地材を取り付け、さらにその下地材に鼻隠しを固定するという作業は重複労力を有し、作業性に乏しいものであった。
【0006】
したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、組立作業を簡略化できかつ強度的に優れた鼻隠し材及び当該鼻隠し材を用いた軒先構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の構成の鼻隠し材を提供する。
【0008】
本発明の第1態様によれば、繊維補強水硬性組成物が押出成形され、曲げ載荷に際して多重亀裂を生じて破壊する性質を示すことによって、ビス打ちにより表面に別部材を保持固定可能であること特徴とする鼻隠し材を提供する。
【0009】
本発明の第2態様によれば、繊維補強水硬性組成物が押出成形され曲げ載荷に際して多重亀裂を生じて破壊する性質を示す鼻隠し材を用い、
前記鼻隠し材の上部が垂木の軒先側端部に直接固定され、前記鼻隠し材の下部裏面側に野縁が固定され、前記野縁に軒天井材が固定され、前記鼻隠し材の表面側に樋が固定されていることを特徴とする、軒先構造を提供する。
【0010】
本発明の第3態様によれば、前記樋は、ビス留めにより前記鼻隠し材に固定されていることを特徴とする、第2態様の軒先構造を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の鼻隠し材によれば、垂木に固定するためにビス打ち等の取り付け方法を用いても、衝撃をよく吸収するため、ビスを強く叩いたとしても、またドリルで強く締めたとしても不具合が起こりにくい。また強度が高いため肉厚を薄くできるため軽量化できる。このような特徴を有するため、従来のセメント系またはセラミック系鼻隠し材と違って高所での作業性および施工の自由度が向上するという利点がある。
【0012】
また、多重亀裂を生じて破壊する性質を示すことによってビス保持強度が非常に高くなり、表面にビス留めして別部材を固定することができるため、例えば、樋などの部材を直接鼻隠し材に固定することができる。したがって、従来の軒先構造にあるように、樋を固定するための下地材が不要となる。よって、軒先の組み立て作業を軽減することができる。
【0013】
なお、鼻隠し材に固定される樋は、雨水などを流れやすくするために勾配を付けて取り付けられるため、鼻隠し材の取り付け高さが、その長手方向において異なることが多くなる。そこで、直接鼻隠し材にビス留めすることができるような軒先構造とすることにより、樋の取り付け作業を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る鼻隠し材及び軒先構造について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態にかかる軒先構造の例を示す図である。本実施形態にかかる軒先構造においては、図1に示すように、繊維補強水硬性組成物が押出成形され、曲げ載荷に際して多重亀裂を生じて破壊する性質を示す鼻隠し材1の上部を垂木4にビス留めにより直接固定する。ビス30は、予め鼻隠し材1に設けられた下孔を貫通して、垂木4に対して固定される結果、鼻隠し材を垂木4に強固に固定する。
【0016】
また、鼻隠し材1の下部には、同様にビス30を用いて野縁2をビス留めし、当該野縁2に軒天井材3を固定する。また、鼻隠し材1には、樋8が樋取り付け用金具9を介して取り付けられている。
【0017】
垂木4の上には、野地板5を敷いて瓦などの屋根化粧材6を載せ、屋根化粧材6と野地板5の間に水切り板7の上限を挟み込む。
【0018】
鼻隠し材1の表面には、樋取り付け用金具9をビス31によって取り付ける。ビス31は、鼻隠し材1の裏側に突出するように取り付けられており、上記繊維補強水硬性組成物により構成されることによって、ビス打ちにより表面に別部材を保持固定可能な性質を有する鼻隠し材に直接固定されている。なお、上記ビスは、裏面に突出しなくても問題はない。また、ビス31の取付位置によっては上記ビス31が垂木4にかかる場合があるが、何ら差し支えはない。
【0019】
鼻隠し材1は、上記の通り、セメント系押出成形体からなり、曲げ載荷に際して、好ましくは引張応力の作用に対しても、多重亀裂を生じて破壊する高い靭性を有するものである。
【0020】
ここで、「多重亀裂」とは次のことを意味する。曲げや引っ張り応力が印加されてセメント成形体に最初の亀裂が入った段階で、その亀裂部に応力が集中して、通常のセメント成形体ではそのまま破断に至る。すなわち応力−歪曲線が直線となる弾性変形の段階で破断に至る。そのためエネルギー吸収能が低く、脆性破壊を呈する。これに対して最初の亀裂が入ったのちも、直ちに材料全体の破断に至らず、最初の亀裂に続いて複数の亀裂が発生する現象が存在する。これを多重亀裂という。多重亀裂が発生すると、応力が分散されるため、最初の亀裂発生後も増加する荷重に耐えて大きな歪に至るまで破壊せず、高いエネルギー吸収能と高い靭性を示す。
【0021】
なお、このような多重亀裂性能は、鼻隠し材から長さ500mmの試験片を採取し、支点間距離は400mm、クロスヘッド速度は5mm/minの条件にて3点曲げ試験を行い、応力−撓み曲線を得ることで確認することができる。
【0022】
このような多重亀裂が起こる本実施形態にかかる鼻隠し材は、少なくとも水硬性セメントを含むマトリックスに繊維を配合・補強してなる繊維補強水硬性組成物を押出成形してなるものである。マトリックスは好ましくは、シリカ質原料、パルプおよび水溶性セルロースを含み、また更に、減水剤などの混和剤、鉱物繊維および軽量骨材が配合されてもよい。
【0023】
鼻隠し材に配合される繊維は、配合によってセメント成形体に、曲げ載荷時、好ましくは引張応力が加えられた場合にも、多重亀裂を起こさせ得る補強繊維であれば、特に制限されず、例えば、ポリビニルアルコール系繊維(PVA繊維)、ポリプロピレン系繊維(PP繊維)、ポリエチレン系繊維(PE繊維)、アラミド繊維、アクリル繊維、炭素繊維、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維等が挙げられる。製造コストを低減し、多重亀裂をより有効に起こす観点から好ましくはPE繊維、PP繊維またはPVA繊維であり、特に、樋を保持するうえで有効な強度発現の観点からPVA繊維が好ましい。
【0024】
これらの繊維は繊維長が3〜100mm、繊維径が5〜200μm、アスペクト比が100〜1000である。繊維長がより短い、繊維径がより大きい、またはアスペクト比がより小さい場合は、曲げ応力が負荷された状態において、最初に亀裂が生じたときに、繊維が架橋しても応力を負担することができず、すぐに引き抜け、多重亀裂を発生する前に破壊してしまう。一方、繊維長がより長い、繊維径がより小さい、またはアスペクト比がより大きい場合は、曲げ応力が負荷された状態において、繊維の引き抜けよりも先に、繊維自体が破断してしまうために多重亀裂が発生しない。
【0025】
なお、繊維の「アスペクト比」とは、繊維長を繊維断面の面積と同面積を有する相当円の直径で除した値である。
【0026】
PP繊維を使用する場合は、繊維長が3〜15mm、好ましくは6〜12mm、繊維径が5〜40μm、好ましくは10〜30μm、アスペクト比が150〜1000、好ましくは200〜700であることが望ましい。
【0027】
PE繊維を使用する場合は、繊維長が3〜15mm、好ましくは6〜12mm、繊維径が5〜40μm、好ましくは10〜30μm、アスペクト比が150〜1000、好ましくは200〜700であることが望ましい。
【0028】
PVA繊維を使用する場合は、繊維長が3〜100mm、好ましくは3〜50mm、より好ましくは3〜15mm、繊維径が5〜200μm、好ましくは10〜100μm、アスペクト比が100〜1000、好ましくは150〜400であることが望ましい。
【0029】
上記繊維は硬化後の成形体における体積混入率が1〜10%、好ましくは2〜7%となるように配合される。繊維の体積混入率がより小さいと亀裂が入ったときにそこに集中する応力を支えることができず、架橋作用を発揮できない。また体積混入率がより大きいと繊維同士の接触部分が増加してセメントとの一体化を妨害するため十分な補強効果が得られなくなる。
【0030】
繊維の「体積混入率」とは、以下の方法によって測定された値を用いている。セメント硬化体を押出方向に対して直角方向に裁断し、その裁断面を走査電子顕微鏡を用いて、加速電圧25kVで反射電子像を観察した。セメント硬化体中の繊維混入率Vfは、顕微鏡の視野にある観察面の繊維の断面積の合計を、電子顕微鏡の視野の面積で除した値として求めた。繊維混入率Vfは、試験片の裁断面中の異なる3つの視野について測定した値の平均値を採用した。
【0031】
本実施形態にかかる鼻隠し材に使用される水硬性セメントは、水との反応により硬化体を形成できる限り、特に限定されず、例えば、各種ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、アルミナセメント、シリカセメント、マグネシアセメント、硫酸塩セメント等をすべて含む。
【0032】
シリカ質原料としては、珪石粉、高炉スラグ、珪砂、フライアッシュ、珪藻土、シリカヒューム、非晶質シリカ等を使用することができる。好ましくは、建築用役物の強度向上および寸法安定性に寄与する点から、珪石粉、珪砂である。これらのシリカ質原料として好ましくは比表面積(JIS R 5201に記載の方法による)が3000〜15000cm/gのものを使用する。シリカ質原料は水硬性セメント100重量部に対して40〜100重量部、好ましくは50〜80重量部の割合で配合される。
【0033】
パルプは、綿パルプまたは木材パルプ等の天然パルプが好ましい。天然パルプであれば特に限定されず、バージンパルプのみならず古紙からの再生パルプも使用できる。また木材パルプの場合、木材の組織からリグニンを化学的に取り除いた化学パルプ、木材を機械的に処理した機械パルプのいずれも使用できる。パルプは繊維長が0.05〜10mmのものが好ましい。パルプは水硬性セメント100重量部に対して1.0〜80重量部、好ましくは2.0〜30重量部の割合で配合される。1.0重量部より少ないと補強効果を発揮できず、また80重量部より多いと分散不良となる。
【0034】
水溶性セルロースとしては、メチルセルロース、エチルセルロース等のアルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を例示することができる。水溶性セルロースは、後述する水硬性組成物の各成分を混合・混練し、押出成形する際に、混練物に粘性を付与し、成形性を向上させるものである。水溶性セルロースは水硬性セメント100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは2〜7重量部の割合で配合される。0.1重量部より少ないと可塑性がなく成形できない。一方10重量部より多い場合にはコストの上昇を招くだけであり、これ以上の効果の向上は期待できない。
【0035】
本発明で用いる繊維補強水硬性組成物には、上記成分に加えて、必要に応じて鉱物繊維、軽量骨材を加えてもよい。鉱物繊維としては、セピオライト、ワラストナイト、タルク、アタパルジャイト、ロックウール等を例示することができる。鉱物繊維は水硬性セメント100重量部に対して0〜40重量部、好ましくは3〜25重量部の割合で配合される。鉱物繊維が40重量部より多いと強度が低下するので好ましくない。
【0036】
軽量骨材としては、火山れきなどの天然軽量骨材、焼成フライアッシュバルーンなどの人工軽量骨材、真珠岩パーライト、黒曜石パーライト、バーミキュライトなどの超軽量骨材、膨張スラグなどの副産物軽量骨材を使用することができる。好ましくは、比重を0.06〜0.5に設定できる真珠岩パーライト、黒曜石パーライト、バーミキュライトである。
【0037】
本実施形態の鼻隠し材1の繊維補強水硬性組成物には、上記以外の添加剤として、必要に応じて、マイカ、アルミナ、炭酸カルシウム等のシリカ以外の無機質材料、減水剤、界面活性剤、増粘剤、養生促進剤等を配合することもできる。
【0038】
本実施形態の鼻隠し材は、水硬性組成物を構成する上記成分の混合物に水を加え、硬化することによって得られる。水硬性組成物に加える水の配合量は一般に水硬性セメント100重量部に対して40〜90重量部が好適である。
【0039】
本実施形態の鼻隠し材は、上記の、水を配合した繊維補強水硬性組成物を押出成形機によって成形することによって製造することができる。押出成形は、通常のセメント系組成物用の押出成形機をいずれも使用することができる。例えば、1軸または2軸式のスクリュー式押出成形機から金型を通して押出成形することができる。成形体に含まれる気泡を極力少なくするために、真空式の押出機はより好ましいタイプである。建築用役物の場合、多くは異型断面形状であるため、一般には用途に応じた異型断面金型が使用される。押出成形された成形体はそのまま自然硬化させてもよいし、高温水蒸気中で促進硬化してもよい。また、成形体物性に問題が生じない範囲で高温高圧のオートクレーブ中で水熱硬化してもよい。
【0040】
なお、鼻隠し材は屋根端部に用いられるものであり、その施工においては、鼻隠し材の重量も作業性に大きく影響する。鼻隠し材の強度及び作業性を考慮すれば、比重0.9〜1.5程度、特に1.0〜1.4程度のものが好ましい。
【0041】
図2A及び図2Bは、本実施形態にかかる軒先構造に用いられる鼻隠し材の外観構成を示す図である。鼻隠し材1は、上記の通り、例えば、長さ寸法が3030mmであり、幅寸法が150〜300mm程度、厚みが16mm程度の長尺の部材である。なお、繊維補強水硬性組成物の構成例は、ポルトランドセメント100重量部、珪石粉60重量部、パーライト50重量部、パルプ5重量部、PVA繊維8.0重量部(アスペクト比:150、繊維長6mm)、水溶性セルロース6.0重量部に所望量の水を投入したものである。なお、得られた押出成形体の比重は1.2であり、PVA繊維の体積混入率は3.0%である。また、得られた押出成形体の気乾条件におけるビス(コーススレッドφ4.2)引抜き荷重は、2000Nを越えるものであった。
【0042】
鼻隠し材1の表面18には、垂木4にビス留めする場合に用いられるビス留め位置用の溝10及び、野縁2を固定するためのビス留め位置を示すビス留め位置用の溝11がその長手方向に沿って設けられている。また、裏面19には、軒天井3の軒先側端部を嵌入させて、軒天井3の寸法誤差を吸収するための軒天井嵌入溝12が設けられている。
【0043】
次に、本実施形態にかかる鼻隠し材1を用いた軒先構造の施工方法について説明する。図3Aは、図2Aの鼻隠し材を垂木に固定する工程を示す図である。上記のように、鼻隠し材1は長尺の部材であり、1つの部材が必ずしも取り付け位置の幅寸法に一致しているとは限らない。したがって、図3Aに示すように、施工現場において、鼻隠し材1の長さ寸法を調整するために、破線で示した不要な部分1aを切断する。
【0044】
長さ調整された鼻隠し材1は、所定ピッチで設けられている複数の垂木4の軒先側端面4aを被覆するように割付される。割付を行う場合、図3Bに示すように鼻隠し材1の両端部1bは、垂木4の中心に到達しないように少しずらして割付することが好ましい。なお、この場合、鼻隠し材1の端部に隙間ができるが、当該隙間は、組み立て完了後にシーリング材で埋めておく。
【0045】
割付を行った後、鼻隠し材1を垂木4にビス留めする。ビス留めにおいては、鼻隠し材1の溝10に下孔20を開け、図4Aに示すように、当該下孔に下孔寸法に応じたビス30を用いて、鼻隠し材1を垂木4に固定する。図4Bは、鼻隠し材1を垂木に固定させた状態を示す図である。この状態では、鼻隠し材1は、垂木4から下端部分が垂下された状態に保持される。なお、垂木に直接固定する場合は、図3Bに示すように鼻隠し材端部近くにビスを打つ必要があり、ビスの打ち込み方によっては、鼻隠し材に損傷を及ぼす恐れがあるが、本実施形態にかかる鼻隠し材1は、ビスの打ち込みによる不具合が少ないため、このような垂木に直接固定することが容易となる。
【0046】
次に、鼻隠し材1の垂木4からの垂下部分に野縁2を固定する。野縁2は、鼻隠し材の裏面19に鼻隠し材1の長手方向に沿って設けられる長尺の部材であり、軒天井材3を固定するために用いられる。
【0047】
野縁2の鼻隠し材1の取り付け位置は、用いられる軒天井材3の厚み寸法によって異なるが、具体的には、野縁2の下端位置と軒天井嵌入溝12下端との距離が、軒天井材3の厚み寸法に2,3mm加えた距離となるように配置することが好ましい。いずれの位置においても、鼻隠し材1の溝11の対応位置に野縁2が位置するように野縁2の高さ寸法を決定する。
【0048】
具体的には、図5Aに示すように厚み寸法が大きい軒天井材3aを用いる場合は、野縁2の下端は溝12をほとんど被覆しないように配置される。一方、図5Bに示すように厚み寸法が小さい軒天井材3bを用いる場合は、野縁2の下端は軒天井嵌入溝12の上側を被覆するように配置される。
【0049】
このようにして位置決めされた野縁2は、鼻隠し材1にビス留めされる。ビス留めにおいては、鼻隠し材1の溝11に下孔(図示なし)を開け、当該下孔に下孔寸法に応じたビス30を用いて、鼻隠し材1に野縁2を固定する(図6参照)。なお、野縁2は構造設計の都合で梯子状に組まれたりする場合もあり、野縁2の他端は建物躯体側に固定されていることが多い。
【0050】
次に、図6に示すように野縁2の下面に軒天井材3を固定する。軒天井材3は、溝12に嵌入するように配置する。このように軒天井嵌入溝12に軒天井材3を嵌め込むことにより、軒天井材固定時の仮固定が容易になり、また軒天井の寸法誤差をこの溝により吸収することができ、外観の乱れを目立たなくすることが可能となる。
【0051】
次に、鼻隠し材1の表面に雨樋8を取り付ける。雨樋8の取り付けにおいては、樋取り付け用金具9を鼻隠し材1の表面にビス留めして固定し、当該樋取り付け用金具9に樋8を取り付ける。
【0052】
上記のように本実施形態にかかる鼻隠し材1は、曲げ載荷に際して多重亀裂を生じて破壊する性質を示すため、ビス留めした部分にモーメントが加わったとしても、鼻隠し材1が割れることがない。したがって、下地材を設けることなく、鼻隠し材1に直接ビス留めすることができる。また、上記性質により鼻隠し材のビス保持強度が高いため、雨樋等を直接取り付けて保持することも可能となる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態にかかる鼻隠し材によれば、直接垂木に固定することが可能であるとともに、直接樋などを鼻隠し材に固定することができるため、従来鼻隠しの固定や樋の固定のために設けられていた下地材を省略することができる。よって、軒先の組み立て作業を軽減することができる。
【0054】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態にかかる軒先構造の例を示す図である。
【図2A】本実施形態にかかる軒先構造に用いられる鼻隠し材の外観構成を示す正面図である。
【図2B】図2Aの鼻隠し材の断面図である。
【図3A】図2Aの鼻隠し材を垂木に固定する工程を示す図である。
【図3B】鼻隠し材と垂木の割付位置を示す図である。
【図4A】鼻隠し材を垂木にビス留めする工程を示す図である。
【図4B】鼻隠し材を垂木に固定させた状態を示す図である。
【図5A】厚み寸法が大きい軒天井材を用いる場合の野縁と鼻隠し材の位置関係を示す図である。
【図5B】厚み寸法が小さい軒天井材を用いる場合の野縁と鼻隠し材の位置関係を示す図である。
【図6】鼻隠し材及び野縁に軒天井材を固定する状態を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1 鼻隠し材
2 野縁
3 軒天井材
4 垂木
5 野地板
6 屋根化粧材
7 水切り板
8 樋
9 樋取り付け用金具
10、11,12 溝
30,31 ビス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維補強水硬性組成物が押出成形され、曲げ載荷に際して多重亀裂を生じて破壊する性質を示すことによって、ビス打ちにより表面に別部材を保持固定可能であることを特徴とする鼻隠し材。
【請求項2】
繊維補強水硬性組成物が押出成形され曲げ載荷に際して多重亀裂を生じて破壊する性質を示す鼻隠し材を用い、
前記鼻隠し材の上部が垂木の軒先側端部に直接固定され、前記鼻隠し材の下部裏面側に野縁が固定され、前記野縁に軒天井材が固定され、前記鼻隠し材の表面側に樋が固定されていることを特徴とする、軒先構造。
【請求項3】
前記樋は、ビス留めにより前記鼻隠し材に固定されていることを特徴とする、請求項2に記載の軒先構造。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−7371(P2010−7371A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168741(P2008−168741)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)