説明

(メタ)アクリルモノマーの転換安定化方法

フェノチアジン含有(メタ)アクリルモノマーからフェノチアジンを活性炭への吸着により取り除き、任意に、引き続き、適度に有効な重合抑制剤を添加する、(メタ)アクリルモノマーの転換安定化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、(メタ)アクリルモノマーの転換安定化(Umstabilisierung)方法に関する。
【0002】
本発明の意味合いにおいて、(メタ)アクリルモノマーとの概念には、アクロレイン、メタクロレイン、アクリル酸、メタクリル酸及び/又はこの両方の前記酸からのエステルからなる物質が理解される。(メタ)アクリルとはこの刊行物において一般的にアクリル及び/又はメタクリルについての略称として使用される。
【0003】
(メタ)アクリルモノマーは、ラジカル重合できるエチレン性不飽和化合物である。一度開始すると、このラジカル重合は通常は際だって発熱性に、すなわち、強力な熱発生下で進行し、その際、放出される重合熱は、これが排出されない場合には、ラジカル重合を更に促進する。
【0004】
意図的なラジカル重合で前述の熱排出が不十分に行われる場合には、したがって、重合があまりに急激に進行するため、制御不能に陥る重合に対抗しない場合に、この重合混合物を含む容器が爆発する、という恐れが存在する。
【0005】
この種の有効な対抗手段は、特に、意図的でなく開始させたラジカル重合の場合に必要となる。意図的でなく開始させたラジカル重合は、例えば、モノマーを含有する物質の貯蔵及び/又は輸送の場合に発生することがあり、というのも、熱や光又は不所望なラジカルも、モノマーのラジカル重合を開始させることができるからである。確かに、このような意図的でないラジカル重合を通常は、モノマーに少量(通常は1000ppmまでの)の重合抑制剤を添加することにより予防的に対抗することが試みられている。しかし、この抑制作用は際だったものであってはならず、というのも、モノマーはその後の使用のために意図的なラジカル重合に供せられなくてはならないからである。適度な抑制作用、例えば、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)が有するような作用は、しかし、ラジカル重合開始剤により通常は制圧されることができ、そのために、MEHQはモノマーにとって特に頻繁な貯蔵安定剤及び/又は輸送安定剤である。しかし、経験により、貯蔵安定剤及び/又は輸送安定剤で安定化されたモノマーですら、意図的でないそのラジカル重合を完全には排除できないことが明らかになった。このことは、特に、特殊に重合しやすい(メタ)アクリルモノマー、特に(メタ)アクリル酸に当てはまる。
【0006】
(メタ)アクリルモノマーの重合傾向は、特に、このような物質が輸送及び/又は貯蔵の際に極度の外部の条件に曝露されている(例えば、様々な気候区域を超えての船舶による輸送の場合の極度の高温、これは例えばヨーロッパから東南アジア又は南アメリカへの輸送の場合である)場合に生じる。
【0007】
(メタ)アクリルモノマーの安心できる輸送のためには、これらは通常はフェノチアジン(PTZ)又はPTZと他の重合抑制剤との混合物で安定化される。PTZは(メタ)アクリルモノマーのための最も有効な安定剤である。しかし、PTZ含有(メタ)アクリルモノマーの更なる加工は、ほぼ不可能であり、というのも、重合はPTZの存在下では阻止されるからである。したがって、PTZ含有(メタ)アクリルモノマーは、更なる加工前に精製しなくてはならず、ここでPTZは完全に取り除かれる。この除去は通常は蒸留又は結晶化により行われ、例えばWO05/007610A1及びWO02/090299A2に記載されるとおりである。
【0008】
この欠点は、蒸留及び結晶化による(メタ)アクリルモノマーからのPTZの分離が極めて手間がかかり、というのも特に、(メタ)アクリルモノマーは、PTZを完全に取り除くことができるように、まずはガス状又は固体のアグレゲート状態に移行されなくてはならないからである。引き続き、他の、適度に抑制性の安定剤、例えばMEHQが添加されなくてはならず、これによって、意図的でないラジカル重合は計画された更なる加工の前になお回避される。
【0009】
EP0775686A1からは、アクリル酸からのPTZの吸着分離のための方法が知られている。これに応じて、PTZ含有アクリル酸溶液は、PTZ含有量を100ppm未満に減少させるために、ベントナイトと接触させられる。この方法の欠点は、PTZ含有量が吸着後に、アクリル酸を更なる加工に供給するにはまだなお高すぎることである。
【0010】
したがって、本発明の課題は、フェノチアジン含有(メタ)アクリルモノマーからフェノチアジンを効率的かつ簡易に取り除き、必要な場合には、引き続き、更なる加工を実質的に妨げない、適度に有効な重合抑制剤を添加する、(メタ)アクリルモノマーの転換安定化方法を提供することであった。
【0011】
この課題は、フェノチアジン含有(メタ)アクリルモノマーからフェノチアジンを活性炭への吸着により取り除き、任意に、引き続き、適度に有効な重合抑制剤を添加する、(メタ)アクリルモノマーの転換安定化方法により解決された。
【0012】
本発明の方法の利点は、PTZの吸着による分離が簡易かつほぼ完全に行われることにある。特別な利点は、(メタ)アクリルモノマーを、輸送の際に存在するような液状のアグリゲート状態において、直接的に吸着に供給できることにある。
【0013】
通常、(メタ)アクリルモノマーは1000ppmまでの、好ましくは500ppmまでの、特に200ppmのフェノチアジンを重合抑制剤として含有する。この種の安定化した(メタ)アクリルモノマーは、危険なく、広範な距離にわたっても輸送されることできる。
【0014】
本発明の、活性炭での吸着による(メタ)アクリルモノマーの精製のためには、例えばUllmann's Enzyklopaedie der Technischen Chemie, 第4版, Vol. 2, 600-619頁及びここに引用される文献に記載され、当業者に知られている吸着方法が使用されることができる。ここではこれは例えば、活性炭が固定して配置され、かつ、精製すべき(メタ)アクリルモノマーが流動した状態において又は細流相(Rieselphase)において下方へ、又は下から上へと貫流される固定床方法である。
【0015】
固定床吸着機の構造様式のうち、例えば水平吸着機又は垂直吸着機と簡易な吸着槽とは区別される。他の吸着方法は、その代わりに、可動する吸着剤を用いて、例えば移動層(Wanderschicht)中又は流動層中で作業する。粉末状活性炭の使用の場合には、更に、吸着剤を精製すべき(メタ)アクリルモノマーと撹拌容器中で撹拌し、引き続きフィルタープレス中で濾別するかき混ぜ方法と、最初に浮遊(Aufschwemmen)によりフィルター上で吸着剤層が形成され、これに精製すべき(メタ)アクリルモノマーを圧入(hindurchdruecken)させる層濾過の方法が区別される。
【0016】
本発明の、活性炭での吸着による(メタ)アクリルモノマーの精製のためには、好ましくは固定床方法が考慮される。好ましいやり方では、1つの吸着床の消費の場合に他の吸着床に切り換えられ、消費される活性炭が再生又は置き換えられる2つの吸着床が予定される。したがって、2つの吸着床の並列接続も、好ましくは2つの吸着床の直列の配置も考慮できる。特に好ましくは、そのつど2つの直列の吸着床の、並列配置の形の4つの吸着床の使用である。この特に好ましい実施態様により、第1の吸着床の消費の際にこのそのつど直列に接続した第2の吸着床が残りのPTZを(メタ)アクリルモノマーから十分に取り除くことが保証されることができる。選択される方法に応じて、吸着による(メタ)アクリルモノマーの本発明による精製には濾過工程が後接続しなくてはならない。
【0017】
吸着による(メタ)アクリルモノマーの本発明による精製で調節すべきパラメーター、例えば温度、圧力、滞留時間は、吸着方法の選択に依存し、かつ、当業者に知られているようにこの精製の結果に影響を及ぼす。例えば(メタ)アクリルモノマーの精製のためには、そのつどの(メタ)アクリルモノマーの融点を超える温度が維持されなくてはならない。そのつどの(メタ)アクリルモノマーの沸騰温度が最大可能である。アクリル酸の場合には、この融点は、標準条件下で14℃、沸騰温度は141℃である。そのつど精製すべき(メタ)アクリルモノマーの融点及び沸点は、無論、その精製度と共に変動する。
【0018】
原則的に、吸着温度としては15〜140℃、好ましくは20〜100℃、特に好ましくは20〜80℃に調節される。特に好ましくは、吸着は雰囲気温度で実施される。この圧力は1〜100bar、好ましくは1〜10bar、特に好ましくは1〜5barの範囲内にあることが好ましい。
【0019】
活性炭とは、本発明の意味合いにおいて、様々な、炭素を供給する予備生成物から製造されることができる、活性化した炭素が理解されるべきである。活性のある形への移行のための方法は、同様に極めて多様であることができる。このような製造方法では、BET表面積200〜3000m2/g、好ましくは300〜2000m2/g、特に好ましくは500〜1800m2/g、かさ質量(Schuettgewichte)250〜550g/lを有する活性炭が得られる。
【0020】
活性炭の製造のための出発材料としては、例えば次のものが挙げられる。おがくず及び他の木材廃棄物、わら、様々な石炭種、例えばビチューメン又は褐炭、ナッツの殻、例えばココナッツ、ミネラルオイルタール、リグニン、多糖、ポリアクリルニトリル、骨又はピート。さらに、褐炭及び石炭からのコークス生成物も使用できる。好ましくは次のものが挙げられる:木材、セルロース、リグニン、ビチューメン又は褐炭、ナッツの殻、ピート又は石炭コークス。
【0021】
前述の炭素を供給する予備生成物は、多様な方法により活性化されることができ、例えばリン酸又は塩化亜鉛を用いた化学的活性化により、蒸気、酸素又はニトロース含有ガスを用いたガス活性化により活性化されることができる。このような予備活性化した予備生成物は、それから、熱により、すなわちコークス化により活性炭へと、本発明の方法のために移行させられる。この製造方式は当業者に知られており、かつ、この場合に得られる様々な種類の活性炭のより詳細な説明と同じように文献中に詳説されている(Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th Ed., Vol. A5 (1986), 124-140頁及びここに引用されている文献を参照のこと)。
【0022】
この適用形態に関して、成形石炭(Formkohle)、粒状石炭(Kornkohle)又は粉末石炭が本発明の方法に使用されることができる。成形石炭は、大抵はストランドプレスにより粉末から製造されて円柱形を有するか、又はより希な場合にはペレットとして存在し、大抵は1〜数mmの範囲内にある直径が考慮される。粉末石炭では、十分な濾過能が特別に注意されなくてはならない。
【0023】
当業者には、吸着方法の選択に依存した、活性炭の最適な適用形態が知られている。
【0024】
活性炭の再生は原則的に可能であり、かつ、経済性に依存して実施もできる。吸着される塩及び着色付与性化合物は任意に、水、メタノール、メタノール/水、グリコール、又はグリコール−水−混合物を用いて、活性炭から洗浄除去され、このようにして再生が達成されることができる。連続的作業方式では、使用される活性炭は長期間吸着機中に残存することができる。不溶性有機堆積物は、任意にささいな量の空気(使用される水蒸気量に対して約0.1〜20質量%)の添加下での過熱した水蒸気の導通により150〜800℃で又は、0.01〜5質量%の酸素を含有する希釈ガス、例えば窒素、一酸化炭素又は二酸化炭素の導通により、又は二酸化炭素単独により200〜800℃で取り除かれることができる。好ましい再生温度は250〜700℃、特に好ましくは250〜600℃である。
【0025】
本発明の方法のためには、特に市販されている活性炭、例えば、Chemviron Carbon社のCPG(R) LF(BET950−1050m2/g)、Chemviron Carbon社のCAL(R)(BET1050m2/g)、Donau Carbon社のEpibon(R) Y 12 x 40(BET1000m2/g)、Norit社のNorit(R) GAC 1240 N(BET1125 m2/g)、Norit社のNorit(R) ROX 0,8 Supra(BET1225m2/g)、Ceca Chemicals社のActicarbone(R) BGX(BET表面積に関する記載無し)、Carl Roth社の活性炭、粉末(Aktivkohle, pulv.)(BET表面積に関する記載無し)、Norit社のNorit(R) CAP Super(BET1800m2/g)及びNorit社のNorit(R) CA1(BET1400m2/g)が適している。
【0026】
吸着により精製された(メタ)アクリルモノマーは、ほぼPTZ不含であり、すなわち、吸着後にPTZ含有量は通常、(メタ)アクリルモノマーに対して10ppm未満、好ましくは5ppm未満、特に好ましくは3ppm未満(そのつど(メタ)アクリルモノマーに対して)である。
【0027】
必要な場合には、引き続き、他の、適度に有効な重合抑制剤が添加されることができ、これによって、(メタ)アクリルモノマーは、更なる加工前に、意図的でないラジカル重合に曝されない。適度に有効な重合抑制剤は、吸着処理の間に吸着処理前にも吸着処理の間にも添加されることができる(適度に有効な重合抑制剤が吸着処理の間に吸着されないか又は些細な程度でしか吸着されない場合)。適度に有効な重合抑制剤は著しい範囲において吸着される場合には、これは好ましくは前記処理の直後に添加される。例えば、この適度に有効な重合抑制剤は通常の量で添加されることができ、この結果、この抑制剤含有量は、そのつど(メタ)アクリルモノマーに対して、1000ppmまで、好ましくは500ppmまで、特に好ましくは200ppmまで、特にとりわけ好ましくは100ppmまで、とりわけ50ppmである。
【0028】
適度に有効な重合抑制剤の添加が必要でないことも同様に可能であり、これは特に、(メタ)アクリルモノマーが既に十分に、意図的でないラジカル重合を更なる加工前に回避できるような量の抑制剤で安定化されている場合にである。このような十分な安定化は、抑制剤含有量が既に、そのつど(メタ)アクリルモノマーに対して、250ppmまで、好ましくは最高130ppm、特に好ましくは最高70ppm、好ましくは少なくとも10ppm、特に好ましくは少なくとも30ppm、とりわけ50ppmの適度に有効な重合抑制剤である場合に存在する。
【0029】
適度に有効な重合抑制剤は本発明の意味合いにおいて、フェノール性化合物及びキノンからなる群から選択されている。
【0030】
フェノール性化合物は、これは任意に1以上のアルキル基を有するが、例えばアルキルフェノール、例えば、o−、m−又はp−クレゾール(メチルフェノール)、2−tert−ブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−メチル−4−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−tert−ブチル−4−メチルフェノール、4−tert−ブチル−2,6−ジ−メチルフェノール又は6−tert−ブチル−2,4−ジメチルフェノールが理解される。
【0031】
キノンは同様に適度に有効な重合抑制剤として適しており、例えばヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2−メチルヒドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン又はベンゾキノンである。
【0032】
前述の適度に有効な重合抑制剤のうちキノンが好ましく、特に好ましくはヒドロキノン及びヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)、とりわけ好ましくはMEHQである。
【0033】
意外なことに、本発明の方法を用いて、特別に効率的かつ選択的にPTZが取り除かれ、しかし、任意に同様に存在する適度に有効な重合抑制剤、例えばMEQHは大量に(メタ)アクリルモノマー中に残存することが確認された。このことは、特にWO03/051940A1、WO2004/052819A2並びにJP48−43331を考慮すると意外である。WO03/051940A1の教示によれば、MEHQは中和していないアクリル酸では活性炭への吸着による分離によって10〜160ppmの含有量へと減少される。WO04/0552819A2並びにJP48−43331は、部分ないし完全に中和されたアクリル酸での活性炭へのMEHQの吸着による除去を開示する。しかし、本発明は、PTZが、例えばMEHQに比較して、遙かにより効率的に取り除かれることを示す。
【0034】
本発明の方法は、特に(メタ)アクリル酸、特にとりわけアクリル酸に適している。アクリル酸は大量に貯蔵され、かつ、例えば他の国で超吸収性ポリマーをここから製造するために、世界中に輸送される。アクリル酸の製造は自体公知であり、例えばWO02/090299A2、WO05/007610A1及びWO06/092410A1に記載されている。
【0035】
超吸収性ポリマーの製造には、例えば以下の規格を有するアクリル酸が使用される:アクリル酸99.8460質量%、酢酸0.0950質量%、水0.0332質量%、プロピオン酸0.0203質量%、フルフラール0.0001質量%、無水マレイン酸0.0001質量%、ジアクリル酸0.0003質量%、及びヒドロキノンモノメチルエーテル0.0050質量%。
【0036】
超吸収性ポリマーの製造には、前述のアクリル酸の他になお適した架橋剤、開始剤並びに任意に共重合可能なエチレン性不飽和モノマーが添加される。この種の化合物並びに超吸収性ポリマーの製造は、当業者には例えばUllmanns's Encyclopedia of Industrial Chemistry. 6th Ed., Viley VCH, 2003 Vol. 35, "Superabsorbents", p. 73-93から知られている。
【0037】
通常、超吸収性ポリマーの製造のためにはアクリル酸水溶液が使用される。このアクリル酸溶液の水含有量は、好ましくは40〜75質量%、特に好ましくは45〜70質量%、特にとりわけ好ましくは50〜65質量%である。したがって、本発明の方法は、相応する水含有量40〜75質量%を有するアクリル酸溶液のためにも適する。
【0038】
しかし好ましくは、水が添加されておらず、したがって水不含であるアクリル酸溶液に対して本発明の方法は実施される。水不含とは、通常の、前述のアクリル酸規格の範囲内にある水含有量、すなわち、1質量%より少ない、好ましくは0.5質量%より少ない、特に好ましくは0.05質量%より少ない水含有量を意味する。
【0039】
さらに、この得られる超吸収性ポリマーの酸基は部分的に中和されていることが通常である。この中和は、好ましくは、アクリル酸モノマーの段階で実施される。通常これは、中和剤を水溶液として又は好ましくは固形物質として混合導入することにより行われる。この中和度は好ましくは25〜95mol%、特に好ましくは30〜80mol%、特にとりわけ好ましくは40〜75mol%であり、その際、通常の中和剤、好ましくはアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属カーボネート又はアルカリ金属ヒドロゲンカーボネート並びにその混合物が使用されることができる。アルカリ金属塩の代わりに、アンモニウム塩を使用することもできる。ナトリウム及びカリウムはアルカリ金属として特に好ましく、しかしながら特に好ましいのは水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウム並びにこれらの混合物である。
【0040】
本発明の方法の一実施態様において、したがってこれは、その酸基が部分的に、例えば25〜95mol%、好ましくは30〜80mol%、特にとりわけ好ましくは40〜75mol%の範囲内において前述の中和剤で中和されているアクリル酸モノマー溶液のためにも適している。
【0041】
他の一実施態様において、無論、中和されていないアクリル酸モノマー溶液を、活性炭への吸着分離によりPTZから精製することも可能である。
【0042】
実施例
次の実施例は本発明の特性を説明するが、それにより本発明は制限されない。
【0043】
特に記載がない場合には、パーセントは常に質量パーセントを、部は常に質量部を意味する。
【0044】
モノマー溶液1:72mol%の中和度及び41質量%の固形物質含有量を有するアクリル酸溶液の製造
ステンレス容器中に、80質量部の50質量%の苛性ソーダ液及び117.6質量部の、凍結した、脱イオン水を装入した。撹拌しながら100質量部のアクリル酸(これは317ppmのフェノチアジン(PTZ)及び100ppmのヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)を含有する)を添加した。この場合に、この添加の速度を、温度がこの混合物中35℃を超えないように調節した。中和反応の間に沈殿物が形成され、これを紙折り畳みフィルターを介して濾別した。濾過したモノマー溶液をHPLCを用いて分析し、これは27ppmのPTZ及び29ppmのMEHQを含有した。
【0045】
モノマー溶液2:50mol%の中和度及び47質量%の固形物質含有量を有するアクリル酸溶液の製造
ステンレス容器中に、55.56質量部の50質量%の苛性ソーダ液及び89.72質量部の、凍結した、脱イオン水を装入した。撹拌しながら100質量部のアクリル酸(これは317ppmのフェノチアジン(PTZ)及び100ppmのヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)を含有する)を添加した。この場合に、この添加の速度を、温度がこの混合物中35℃を超えないように調節した。中和反応の間に沈殿物が形成され、これを紙折り畳みフィルターを介して濾別した。濾過したモノマー溶液をHPLCを用いて分析し、これは70ppmのPTZ及び38ppmのMEHQを含有した。
【0046】
実施例1
活性炭を用いたPTZ含有モノマー溶液1及び2の吸着
実施例1のために、6つの異なる、市販されている活性炭を使用した。詳細には次のものである:
活性炭1:Chemviron Carbon社のCPG(R)LF(BET950−1050m2/g)
活性炭2:Chemviron Carbon社のCAL(R)(BET1050m2/g)
活性炭3:Donau Carbon社のEpibon(R) Y 12 x 40(BET1000m2/g)
活性炭4:Norit社のNorit(R) GAC 1240 N(BET1125m2/g)
活性炭5:Norit社のNorit(R) ROX 0,8 Supra(BET1225m2/g)
活性炭6:Ceca Chemicals社のActicarbone(R) BGX(BET表面積について記載なし)。
【0047】
そのつど使用した活性炭を一晩乾燥棚中で120℃で乾燥させた。そのつど150gのモノマー溶液に各々0.15g、0.75g及び1.5gの活性炭を添加し、温度調節した振盪棚中で20℃で約18時間振盪した。活性炭を引き続き濾過によって青色バンドフィルターを介して分離した。この濾過した溶液をHPLCを用いてPTZ及びMEHQについてのその含有量について分析し、この結果は第1表(モノマー溶液1)及び2(モノマー溶液2)にまとめてある。
【0048】
第1表
活性炭を用いた吸着後のPTZ含有モノマー溶液1の結果
【表1】

【0049】
第2表
活性炭を用いた吸着後のPTZ含有モノマー溶液2の結果
【表2】

【0050】
実施例2
PTZを含有する中和していないアクリル酸溶液の吸着(0質量%又は20質量%の水含有量)
実施例2のために、2つの異なる、市販されている活性炭を使用した。詳細には次のものである:
活性炭7:Carl Roth社の活性炭、粉末(Aktivkohle, pulv.)(BET表面積について記載無し)
活性炭8:Norit社のNorit(R) CAP Super(BET1800m2/g)。
【0051】
50mlのペニシリンガラス(Penicillinglas)中にそのつど20.0gのアクリル酸を秤量した。0質量%の水含有量を有するアクリル酸溶液は、安定化のために239ppmのPTZを含有し、20質量%の水含分で196ppmPTZである。この溶液をマグネチック撹拌機で400rpmで撹拌した。引き続きアクリル酸含有量に対して5質量%の活性炭を添加した。この混合物を3時間にわたって室温で撹拌した。引き続き、まずシリンジフィルターで濾過し、次にHPLCを用いてそのPTZ含有量について分析した試料をそのつど取り出した。この結果を第3表にまとめる。
【0052】
比較例1
実施例2を繰り返したが、177ppm(0質量%の水含有量)又は140ppm(20質量%の水含有量)MEHQでアクリル酸溶液を安定化してある。この結果を第3表にまとめる。
【0053】
第3表:
活性炭を用いた吸着後のPTZ又はMEHQ含有アクリル酸溶液の結果
【表3】

【0054】
実施例3
PTZを含有する、部分中和したアクリル酸溶液(60質量%の水含有量)の吸着
実施例3のために3つの異なる、市販されている活性炭を使用した。詳細には次のものである:
活性炭7:Carl Roth社の活性炭、粉末(Aktivkohle, pulv.)(BET表面積について記載無し)
活性炭8:Norit社のNorit(R) CAP Super(BET1800m2/g)
活性炭9:Norit社のNorit(R) CA1(BET 1400m2/g)。
【0055】
そのつど100gの99.6質量%アクリル酸溶液(185ppmのPTZで安定化してある)に、79.61gの50質量%の苛性ソーダ液を添加した(中和度72mol%)。引き続き169.90gの水を添加し、この結果、この生じる溶液の水含有量は60質量%であった。細かい沈殿物が形成されたが、これを濾別した。この濾過した溶液にアクリル酸含有量に対してそのつど0.5質量%の活性炭を添加した。この混合物を3時間室温で撹拌した。引き続き、まずシリンジフィルターで濾過し、次にHPLCを用いてそのPTZ含有量について分析した試料を取り出した。
【0056】
中和前のPTZ含有量:185ppm
濾過後、活性炭の添加前のPTZ含有量 21ppm
PTZ含有量(活性炭7):<<1ppm
PTZ含有量(活性炭8):<<1ppm
PTZ含有量(活性炭9):<<1ppm。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノチアジン含有(メタ)アクリルモノマーからフェノチアジンを活性炭への吸着により取り除き、任意に、引き続き、適度に有効な重合抑制剤を添加することを特徴とする(メタ)アクリルモノマーの転換安定化方法。
【請求項2】
活性炭がBET表面積200〜3000m2/gを有することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
活性炭がBET表面積300〜2000m2/gを有することを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
活性炭が、成形石炭、粒状石炭又は粉末石炭であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
フェノチアジン含有量が吸着後に10ppm未満であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
フェノチアジン含有量が吸着後に5ppm未満であることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
適度に有効な重合抑制剤が、フェノール性化合物及びキノンの群から選択されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
適度に有効な重合抑制剤としてヒドロキノンモノメチルエーテルを使用することを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
適度に有効な重合抑制剤の含有量が100ppmまでであることを特徴とする請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
適度に有効な重合抑制剤の含有量が50ppmであることを特徴とする請求項7から9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
(メタ)アクリルモノマーが(メタ)アクリル酸であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
(メタ)アクリルモノマーが超吸収性ポリマーの製造のためのアクリル酸であることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
アクリル酸が40〜75質量%の水含有量を有することを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
アクリル酸が水不含であることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項15】
アクリル酸の酸基が20〜95mol%の範囲内に中和されていることを特徴とする請求項12から14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
アクリル酸の酸基が中和されていないことを特徴とする請求項12から14のいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2012−529454(P2012−529454A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514416(P2012−514416)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057519
【国際公開番号】WO2010/142546
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】