説明

(メタ)アクリル酸エステルの製造方法

【課題】 良好な収率、かつ生産性良く(メタ)アクリル酸エステルを簡便に製造し得る方法を提供すること。
【解決手段】 アルコールと(メタ)アクリル酸クロライドを含有する有機溶媒溶液と、塩基性物質を含有する水溶液とを、連続的に混合し反応させることを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル酸エステルの製造方法に関する。本発明の方法により得られる(メタ)アクリル酸エステルは、ビニル共重合樹脂を構成するモノマー群の1つであり、例えば半導体用ArFフォトレジスト材料、歯科用接着剤として有用である。
【背景技術】
【0002】
一般的なエステル化合物の製造方法としては、(1)アルコールおよびカルボン酸を酸触媒存在下でエステル化反応する方法、(2)アルコールおよび酸ハロゲン化物をトリエチルアミンまたはピリジン存在下でエステル化反応する方法、(3)アルコールおよび酸ハロゲン化物を塩基性水溶液中でエステル化反応する方法(以下、本明細書中では、ショッテンバウマン法と称する。)(非特許文献1参照)などが知られている。
これらの方法の中で、ショッテンバウマン法は、酸ハロゲン化物の加水分解を抑制するために低温で反応を行ったり、生成物のエステルを分解しない程度の塩基濃度下で反応を行うことにより、エステル化合物を高収率で得られることが知られている(非特許文献1参照)。また、ショッテンバウマン法による(メタ)アクリル酸エステルの製造方法としては、N,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン、N−メチルイミダゾール、炭酸カリウム、溶媒及び原料であるアルコールの混合液に、メタクリル酸クロライドおよび水酸化カリウム水溶液を、反応系のpHを11.5に制御しながら滴下して反応させる方法(非特許文献2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Chemical Reviews Vol 52,No.2,P.312−319,1953年
【非特許文献2】Advanced Synthesis & Catalysis Vol 348,NO.15,P.2057−2062,2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献2に記載の方法は、(メタ)アクリル酸クロライドを添加する際に反応熱が発生するため、(1)(メタ)アクリル酸クロライドの滴下に長時間を要し、(メタ)アクリル酸エステルの生産性が低い、(2)反応系中の塩基性物質が(メタ)アクリル酸クロライドおよび生成物である(メタ)アクリル酸エステルの加水分解を促進し、反応成績が低下しやすい、(3)(メタ)アクリル酸クロライドの重合反応が起き、目的の(メタ)アクリル酸エステルの収率低下を引き起こすという問題点を有しており、(メタ)アクリル酸エステルの製造方法としては、なお改良の余地があった。しかして、本発明の目的は、良好な収率、かつ生産性よく(メタ)アクリル酸エステルを簡便に製造し得る方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、上記の目的は、
(1)アルコールおよび(メタ)アクリル酸クロライドを含有する有機溶媒溶液と、塩基性物質を含有する水溶液とを、連続的に混合し反応させることを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法;
(2)アルコールが1級または2級アルコールである、(1)に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法;
(3)アルコールおよび(メタ)アクリル酸クロライドを含有する有機溶媒溶液と、塩基性物質を含有する水溶液とを、10mm以下の内径を有する管に連続的に送液することにより混合し反応させる(1)または(2)に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法;を提供することにより達成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、反応熱を大量に発生させることなく、良好な収率、かつ生産性よく(メタ)アクリル酸エステルを簡便に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の方法は、アルコールおよび(メタ)アクリル酸クロライドを含有する有機溶媒溶液と、塩基性物質を含有する水溶液とを、連続的に混合し反応させることによって行う。
【0008】
本発明の方法に使用するアルコールとしては、1級または2級アルコールが好ましく、例えば、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール、シクロオクタノール、ベンジルアルコール、イソボルネオール、エチレングリコール、5−ヒドロキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトンなどが挙げられる。これらの中でも、特に5−ヒドロキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトンが好ましい。
【0009】
(メタ)アクリル酸クロライドの使用量は、通常、アルコールが有する水酸基に対して1.0モル倍以上4.0モル倍以下であるのが好ましく、1.1モル倍以上2.0モル倍以下であるのがより好ましく、1.2モル倍以上1.5モル倍以下であるのが最も好ましい。(メタ)アクリル酸クロライドの使用量が、アルコールのヒドロキシル基に対して1.0モル倍以上の場合、(メタ)アクリル酸クロライドが反応液中に過剰に存在するため、加水分解されても十分に反応を進行させることができる。また、(メタ)アクリル酸クロライドの使用量が、アルコールが有する水酸基に対して4.0モル倍以下の場合、副生成物の(メタ)アクリル酸の量を低減できる。
【0010】
本発明の方法で、アルコールおよび(メタ)アクリル酸クロライドを溶解させる有機溶媒としては、反応に影響を及ぼさないものであれば特に制限は無く、例えばアセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらのうち、酢酸ブチル、ジエチルエーテルが好ましく、酢酸ブチルがより好ましい。溶媒は、1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。溶媒の使用量は、アルコール濃度が0.1mol/l以上1.0mol/l以下の範囲であり、かつ(メタ)アクリル酸クロライドの濃度が0.1mol/l以上4.0mol/l以下の範囲であるのが好ましい。
【0011】
また、本発明の方法において、副反応である(メタ)アクリル酸クロライドの重合反応を抑制するために、アルコールおよび(メタ)アクリル酸クロライドを含有する有機溶媒溶液に重合禁止剤を添加しても良い。重合禁止剤としてはハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)、フェノール、カテコール、tert−ブチルカテコール等のフェノール類;フェノチアジン、p−フェニレンジアミン、ジフェニルアミン等のアミン類;ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅等の銅錯体類;硫酸銅、酸化銅、塩化銅等の無機銅化合物類などが挙げられる。これらは単独で、または2種以上を混合して使用してもよい。重合禁止剤の添加量は通常(メタ)アクリル酸クロライドに対して10〜1000ppmの範囲である。
【0012】
本発明で用いる塩基性物質は、水溶液として使用し、一般にショッテンバウマン法で用いられる塩基性物質を使用でき、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基;ピリジン、トリエチルアミン等の有機塩基が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を混合して使用してもよい。中でも、無機塩基が好ましく、水への溶解性および反応性の観点から水酸化ナトリウム、水酸化カリウムがより好ましく、水酸化ナトリウムが最も好ましい。塩基性物質の使用量は、通常(メタ)アクリル酸クロライドに対し1.0モル倍以上2.0モル倍以下が好ましく、1.0モル倍以上1.5モル倍以下がより好ましい。塩基性物質の水溶液中の濃度は、加水分解反応の抑制の観点から、0.1mol/l〜8mol/lの範囲が好ましく、0.5mol/l〜4mol/lの範囲がより好ましい。(メタ)アクリル酸クロライドに対し1.0モル倍以上の場合、反応により発生する塩化水素を十分に中和することができる。また、(メタ)アクリル酸クロライドに対し2.0モル倍以下の場合、(メタ)アクリル酸クロライドの加水分解を抑えることができる。
【0013】
本発明において、アルコールおよび(メタ)アクリル酸クロライドを含有する有機溶媒溶液、および塩基性物質を含有する水溶液を連続的に混合する方法としては、液体の供給口および排出口を有し、かつ別々の供給口から供給された液体が接触する接触部を有する混合器を使用することが好ましい。混合器の構成は、2以上の供給口および1以上の排出口を有し、かつ1以上の混合部を有することが好ましい。混合器の形状は特に限られるものではなく、液体の流れ方向に垂直な断面の形状は円形であっても良いし、四角形であっても良い。また、混合器の内径は、好ましくは10μm以上10mm以下、より好ましくは100μm以上8mm以下、最も好ましくは500μm以上4mm以下である。
【0014】
接触部の形状は特に限定されないが、流路がT字またはY字に形成された構造が好ましく、T字またはY字に形成された構造が多層に積層した構造がより好ましい。また、接触部の内径は、好ましくは10μm以上10mm以下、より好ましくは100μm以上8mm以下、最も好ましくは500μm以上4mm以下である。
【0015】
混合器で混合したアルコールおよび(メタ)アクリル酸クロライドを含有する有機溶媒溶液と、塩基性物質を含有する水溶液の混合液は、混合器排出口より連続反応部に導入される。連続反応部の形状は特に限られるものではなく、1以上の入口および1以上の排出口を有する管が好ましい。混合液の流れる方向に垂直な断面の形状は円形であっても良いし、四角形であっても良い。また、連続反応部の内径は好ましくは10μm以上10mm以下、より好ましくは100μm以上8mm以下、最も好ましくは500μm以上4mm以下である。連続反応部の長さは、0.01m以上100m以下、より好ましくは0.1m以上10m以下、最も好ましくは0.5m以上5m以下である。連続反応部の長さが、0.01m以上100m以下であると、原料の滞留時間が充分となり、(メタ)アクリル酸クロライドの転化率、(メタ)アクリル酸エステルの収率が良好となる。
【0016】
連続反応部内での混合液の状態は、レイノルズ数で規定することができる。レイノルズ数とは、「流れの中にある物体の代表的な長さL、速度U、密度ρ、粘性率η、動粘性率ν=η/ρから作られる無次元の数R=ρLU/η=LU/ν」(岩波理化学辞典第5版、1490頁右下に記載)である。
[レイノルズ数の計算式]
Re=連続反応部内の液体の線速度×配管内径/液体の動粘性率
[連続反応部内の動粘性率νの計算方法]
連続反応部内の動粘性率ν=(有機溶媒溶液の粘度/有機溶媒溶液の密度+水溶液の粘度/水溶液の密度)/2
本発明の方法では、連続反応部での混合液のレイノルズ数を、好ましくは50以上1000以下、より好ましくは100以上600以下、最も好ましくは100以上300以下になるように、アルコールおよび(メタ)アクリル酸クロライドを含有する有機溶媒溶液ならびに塩基性物質を含有する水溶液の送液量を適宜調整する。レイノルズ数が50以上1000以下であると連続反応部の流体の流れが安定し、反応収率が良い。
【0017】
混合器および連続反応部は温度制御された水浴等の媒体槽中に浸漬して、温度制御を行うことが好ましい。媒体槽中の温度は、0℃以上25℃以下であることが好ましく、5℃以上10℃以下であることがより好ましい。0℃より低い場合、塩基性物質を含有する水溶液が凍結する場合があり、混合器および連続反応部の閉塞が生じやすくなり、25℃より高い場合、(メタ)アクリル酸クロライドの加水分解反応および重合反応が進行するため好ましくない。
【0018】
混合器および連続反応部の素材はステンレス鋼、ハステロイ(登録商標)等の金属、フッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ガラスなどを使用することができる。
【0019】
本発明により得られた(メタ)アクリル酸エステルは、従来公知の方法で分離・精製が可能である。例えば蒸留や晶析などにより(メタ)アクリル酸エステルを容易に得ることができる。
【実施例】
【0020】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。なお、本実施例において、ガスクロマトグラフィー分析は以下の条件で行い、アルコールおよび(メタ)アクリル酸クロライドの転化率、(メタ)アクリル酸エステルの収率、および空時収量は以下の式により求めた。なお、空時収量とは反応時間1時間、連続反応器1L当たりの収量のことを示す。

[ガスクロマトグラフィー分析条件]
分析機器:島津製作所社製 GC−14A
検出器:FID
使用カラム:島津製作所社製 CBP−1
分析条件:注入口温度280℃、検出口温度280℃
初期温度100℃(5分保持)、昇温速度10℃/分、最終温度280℃
注入量:0.4μL

[アルコールの転化率の計算式]
収率(%)={(供給したアルコールのモル数)−(残存したアルコールのモル数)}/(供給したアルコールのモル数)×100

[(メタ)アクリル酸クロライドの転化率の計算式]
(メタ)アクリル酸クロライド転化率(%)={(供給した(メタ)アクリル酸クロライドのモル数)−(残存した(メタ)アクリル酸クロライドのモル数)}/(供給した(メタ)アクリル酸クロライドのモル数)×100

[生成した(メタ)アクリル酸エステルの収率の計算式]
収率(%)=(生成した(メタ)アクリル酸エステルのモル数)/(供給したアルコールのモル数)×100

[生成した(メタ)アクリル酸エステルの空時収量の計算式]
空時収量(g/h・L)={(1時間当たり供給したアルコールのモル数)×(生成した(メタ)アクリル酸エステルの分子量)×(収率(%)/100)}/(連続反応部の体積)
【0021】
実施例1
5−ヒドロキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン7.7g(50mmol)およびアクリル酸クロライド(MEHQ100ppm含有)6.8g(75mmol)を酢酸ブチル95mLに溶解させた溶液1、ならびに水酸化ナトリウム3.0g(75mmol)を水100mLに溶解させた水溶液2を、それぞれシリンジポンプ(kdScientific製)で、混合器(ステンレス鋼(SUS316)のユニオン・ティー、外径4mm、Swagelok社製)に連続反応部としてステンレス鋼(SUS316)の配管(外径4mm×内径3mm×長さ3m)を接続し5℃の水浴で冷却した反応器に、流速10mL/分で送液した。反応混合液は連続反応部の排出口より回収し、水層と有機層とに分離してガスクロマトグラフィーで分析したところ、5−アクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンラクトンの収率は79%であった。ここで、5−アクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンラクトンの収率はジエチレングリコールジメチルエーテルを内部標準物質として定量した。また、アクリル酸クロライドの転化率は70%、5−ヒドロキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトンの転化率は79%であり、5−アクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンラクトン由来の副生物は確認できなかった。レイノルズ数は119であり、空時収量は1730g/h・Lであった。
【0022】
実施例2
混合器(ステンレス鋼(SUS316)のユニオン・ティー、外径1/8inch、Swagelok社製)、連続反応部にステンレス鋼(SUS316)の配管(外径1/8inch×内径2.17mm×長さ3m)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。5−アクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンラクトンの収率は72%であった。また、アクリル酸クロライドの転化率は50%、5−ヒドロキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトンの転化率は72%であった。レイノルズ数は164であり、空時収量は3009g/h・Lであった。
【0023】
実施例3
混合器(ステンレス鋼(SUS316)のユニオン・ティー、外径1/16inch、Swagelok社製)、連続反応部にステンレス鋼(SUS316)の配管(外径1/16inch×内径0.8mm×長さ3m)を用い、シリンジポンプによる送液を1.35mL/分とした以外は実施例1と同様の操作を行った。5−アクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンラクトンの収率は66%であった。また、アクリル酸クロライドの転化率は64%、5−ヒドロキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトンの転化率は66%であった。レイノルズ数は60であり、空時収量は2825g/h・Lであった。
【0024】
実施例4
混合器(ステンレス鋼(SUS316)のユニオン・ティー、外径4mm、Swagelok社製)、連続反応部にステンレス鋼(SUS316)の配管(外径4mm×内径3mm×長さ3m)を用い、シリンジポンプによる送液を19mL/分とした以外は実施例1と同様の操作を行った。5−アクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンラクトンの収率は73%であった。また、アクリル酸クロライドの転化率は56%、5−ヒドロキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトンの転化率は73%であった。レイノルズ数は226であり、空時収量は3009g/h・Lであった。
【0025】
実施例5
混合器(ステンレス鋼(SUS316)のユニオン・ティー、外径1/16inch、Swagelok社製)、連続反応部にステンレス鋼(SUS316)の配管(外径1/16inch×内径0.8mm×長さ3m)を用い、シリンジポンプによる送液を10mL/分とした以外は実施例1と同様の操作を行った。5−アクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンラクトンの収率は59%であった。また、アクリル酸クロライドの転化率は49%、5−ヒドロキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトンの転化率は59%であった。レイノルズ数は445であり、空時収量は18327g/h・Lであった。
【0026】
実施例6
混合器(ステンレス鋼(SUS316)のユニオン・ティー、外径4mm、Swagelok社製)、連続反応部にステンレス鋼(SUS316)の配管(外径4mm×内径3mm×長さ3m)を用い、シリンジポンプによる送液を5mL/分とした以外は実施例1と同様の操作を行った。5−アクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンラクトンの収率は79%であった。また、アクリル酸クロライドの転化率は73%、5−ヒドロキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトンの転化率は79%であった。レイノルズ数は59であり、空時収量は861g/h・Lであった。
【0027】
比較例1
還流管付きの100mL三つ口フラスコに5−ヒドロキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン1.5g(10mmol)およびアクリル酸クロライド(MEHQ1000ppm含有)1.35g(15mmol)を溶解した酢酸ブチル溶液20mLを加え、5℃の水浴中で20分攪拌後、0.75M水酸化ナトリウム水溶液20mLを10分かけて滴下した。滴下終了後、直ちに水相および有機相をガスクロマトグラフィーで分析したところ、5−アクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンラクトンの収率は18%であった。また、アクリル酸クロライドの転化率は97%、5−ヒドロキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトンの転化率は20%であり、5−アクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンラクトン由来の副生物は2%であった。
【0028】
比較例2
還流管付きの100mL三つ口フラスコに5−ヒドロキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン1.5g(10mmol)およびアクリル酸クロライド(MEHQ1000ppm含有)3.6g(40mmol)を溶解した酢酸ブチル溶液20mLを加え、5℃の水浴中で20分攪拌後、2M水酸化ナトリウム水溶液20mLを10分かけて滴下した。滴下終了後、直ちに水相および有機相をガスクロマトグラフィーで分析したところ、5−アクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンラクトンの収率は40%であった。また、アクリル酸クロライドの転化率は47.5%であった。5−ヒドロキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトンの転化率は50%であり、5−アクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンラクトン由来の副生物は10%であった。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の方法により得られる(メタ)アクリル酸エステルは、ビニル共重合樹脂を構成するモノマー群の1つであり、例えば半導体用ArFフォトレジスト材料、歯科用接着剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコールおよび(メタ)アクリル酸クロライドを含有する有機溶媒溶液と、塩基性物質を含有する水溶液とを、連続的に混合し反応させることを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【請求項2】
アルコールが1級または2級アルコールである、請求項1に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【請求項3】
アルコールおよび(メタ)アクリル酸クロライドを含有する有機溶媒溶液と、塩基性物質を含有する水溶液とを、10mm以下の内径を有する管に連続的に送液することにより混合し反応させる請求項1または2に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。

【公開番号】特開2011−195472(P2011−195472A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61357(P2010−61357)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】