説明

(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)トリアルキルアンモニウム塩

【課題】 熱安定性が優れた樹脂用帯電防止剤として有用で、新規な(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)トリアルキルアンモニウム塩を提供することを課題とすること。
【解決手段】 式(1):
【化1】


(式中、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rは炭素数6〜18のアルキル基を示し、Rは2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル基を示す。Aはヘキサフルオロホスファート、トリフルオロアセタ−ト又はチオシアナ−トを示す。)で表されるアンモニウム塩

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)トリアルキルアンモニウム塩に関する。
【背景技術】
【0002】
(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)トリアルキルアンモニウム塩としては、アニオンがパークロレートであるものが公知であり、その用途としてゴム及び合成樹脂用の帯電防止剤が知られている(例えば、特許文献1参照)。ゴム及び合成樹脂は幅広い温度範囲で使用されるので、それらに用いられる帯電防止剤は熱的に安定なものが求められる。しかしながら、(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)トリアルキルアンモニウム=パークロレートは、加熱すると爆発の危険性があり熱的に安定ではない。このため、合成樹脂などの絶縁体に対して帯電防止性を与え、かつ熱的に安定な化合物が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−221474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、熱的に安定で、より安価に製造できる新規な(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)トリアルキルアンモニウム塩を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが上記課題を解決するために鋭意検討を行ったところ、式(1)で表わされるアンモニウム塩がアニオンとしてパークロレートを有していないので熱的に安定であり、合成樹脂などの絶縁体に帯電防止性を付与できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち本発明は、式(1):
【0007】
【化1】

(式中、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rは炭素数6〜18のアルキル基を示し、Rは2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル基を示す。Aはヘキサフルオロホスファ−ト、トリフルオロアセタ−ト又はチオシアナ−トを示す。)で表されるアンモニウム塩(以下アンモニウム塩(1)という)に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアンモニウム塩(1)は、優れた帯電防止性を付与できるため、有用な化合物である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を具体的に説明する。
式(1)中、R及びRで示される炭素数1〜4のアルキル基としては、直鎖又は分枝鎖状の炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、好ましくは直鎖のアルキル基である。具体的には例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等が挙げられ、メチル基が好ましい。Rで示される炭素数6〜18のアルキル基としては、直鎖又は分枝鎖状のアルキル基が挙げられ、好ましくは直鎖のアルキル基である。具体的には例えば、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ラウリル基、オクタデシル基等が挙げられ、オクチル基が好ましい。Rは2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル基である。
【0010】
アンモニウム塩(1)の具体例としては、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチル−N−ヘキシルアンモニウム=へキサフルオロホスファ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチル−N−ヘプチルアンモニウム=へキサフルオロホスファ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニウム=へキサフルオロホスファ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチル−N−デシルアンモニウム=へキサフルオロホスファ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチル−N−ラウリルアンモニウム=へキサフルオロホスファ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチル−N−オクタデシルアンモニウム=へキサフルオロホスファ−ト、
【0011】
N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジエチル−N−ヘキシルアンモニウム=へキサフルオロホスファ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジエチル−N−ヘプチルアンモニウム=へキサフルオロホスファ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジエチル−N−オクチルアンモニウム=へキサフルオロホスファ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジエチル−N−デシルアンモニウム=へキサフルオロホスファ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジエチル−N−ラウリルアンモニウム=へキサフルオロホスファ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジエチル−N−オクタデシルアンモニウム=へキサフルオロホスファ−ト、
【0012】
N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジプロピル−N−ヘキシルアンモニウム=へキサフルオロホスファ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジプロピル−N−ヘプチルアンモニウム=へキサフルオロホスファ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジプロピル−N−オクチルアンモニウム=へキサフルオロホスファ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジプロピル−N−デシルアンモニウム=へキサフルオロホスファ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジプロピル−N−ラウリルアンモニウム=へキサフルオロホスファ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジプロピル−N−オクタデシルアンモニウム=へキサフルオロホスファ−ト、
【0013】
N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジブチル−N−ヘキシルアンモニウム=へキサフルオロホスファ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジブチル−N−ヘプチルアンモニウム=へキサフルオロホスファ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジブチル−N−オクチルアンモニウム=へキサフルオロホスファ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジブチル−N−デシルアンモニウム=へキサフルオロホスファ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジブチル−N−ラウリルアンモニウム=へキサフルオロホスファ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジブチル−N−オクタデシルアンモニウム=へキサフルオロホスファ−ト、
【0014】
N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチル−N−ヘキシルアンモニウム=トリフルオロアセタ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチル−N−ヘプチルアンモニウム=トリフルオロアセタ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニウム=トリフルオロアセタ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチル−N−デシルアンモニウム=トリフルオロアセタ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチル−N−ラウリルアンモニウム=トリフルオロアセタ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチル−N−オクタデシルアンモニウム=トリフルオロアセタ−ト、
【0015】
N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジエチル−N−ヘキシルアンモニウム=トリフルオロアセタ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジエチル−N−ヘプチルアンモニウム=トリフルオロアセタ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジエチル−N−オクチルアンモニウム=トリフルオロアセタ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジエチル−N−デシルアンモニウム=トリフルオロアセタ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジエチル−N−ラウリルアンモニウム=トリフルオロアセタ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジエチル−N−オクタデシルアンモニウム=トリフルオロアセタ−ト、
【0016】
N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジプロピル−N−ヘキシルアンモニウム=トリフルオロアセタ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジプロピル−N−ヘプチルアンモニウム=トリフルオロアセタ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジプロピル−N−オクチルアンモニウム=トリフルオロアセタ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジプロピル−N−デシルアンモニウム=トリフルオロアセタ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジプロピル−N−ラウリルアンモニウム=トリフルオロアセタ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジプロピル−N−オクタデシルアンモニウム=トリフルオロアセタ−ト、
【0017】
N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジブチル−N−ヘキシルアンモニウム=トリフルオロアセタ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジブチル−N−ヘプチルアンモニウム=トリフルオロアセタ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジブチル−N−オクチルアンモニウム=トリフルオロアセタ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジブチル−N−デシルアンモニウム=トリフルオロアセタ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジブチル−N−ラウリルアンモニウム=トリフルオロアセタ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジブチル−N−オクタデシルアンモニウム=トリフルオロアセタ−ト、
【0018】
N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチル−N−ヘキシルアンモニウム=チオシアナ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチル−N−ヘプチルアンモニウム=チオシアナ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニウム=チオシアナ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチル−N−デシルアンモニウム=チオシアナ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチル−N−ラウリルアンモニウム=チオシアナ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチル−N−オクタデシルアンモニウム=チオシアナ−ト、
【0019】
N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジエチル−N−ヘキシルアンモニウム=チオシアナ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジエチル−N−ヘプチルアンモニウム=チオシアナ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジエチル−N−オクチルアンモニウム=チオシアナ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジエチル−N−デシルアンモニウム=チオシアナ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジエチル−N−ラウリルアンモニウム=チオシアナ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジエチル−N−オクタデシルアンモニウム=チオシアナ−ト、
【0020】
N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジプロピル−N−ヘキシルアンモニウム=チオシアナ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジプロピル−N−ヘプチルアンモニウム=チオシアナ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジプロピル−N−オクチルアンモニウム=チオシアナ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジプロピル−N−デシルアンモニウム=チオシアナ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジプロピル−N−ラウリルアンモニウム=チオシアナ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジプロピル−N−オクタデシルアンモニウム=チオシアナ−ト、
【0021】
N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジブチル−N−ヘキシルアンモニウム=チオシアナ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジブチル−N−ヘプチルアンモニウム=チオシアナ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジブチル−N−オクチルアンモニウム=チオシアナ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジブチル−N−デシルアンモニウム=チオシアナ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジブチル−N−ラウリルアンモニウム=チオシアナ−ト、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジブチル−N−オクタデシルアンモニウム=チオシアナ−ト等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
本発明のアンモニウム塩(1)は、種々の方法で製造することができる。その代表的な方法を以下に示す。
【0023】
【化2】

【0024】
式(2)で表されるアミン類(式中、R、R及びRは前記に同じ。以下、アミン類(2)という。)と式(3)で表されるアルキルハライド類(式中、Xはハロゲン原子を表す。以下、アルキルハライド類(3)という。)を反応させることにより、式(4)で表されるアンモニウム塩(式中、R〜R及びXは前記に同じ。以下、アンモニウム塩(4)という。)が製造できる。次にアンモニウム塩(4)と式(5)で表される酸類(式中、Mは水素又はアルカリ金属を表す。Aは前記に同じ。以下、酸類(5)という。)とのイオン交換反応によりアンモニウム塩(1)が製造できる。
【0025】
アミン類(2)としては、例えば、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチルアミン、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジエチルアミン、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジプロピルアミン、N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジブチルアミン等が挙げられる。
【0026】
アルキルハライド類(3)としては、例えば、ヘキシルクロリド、ヘプチルクロリド、オクチルクロリド、デシルクロリド、ラウリルクロリド、オクタデシルクロリド、ヘキシルブロミド、ヘプチルブロミド、オクチルブロミド、デシルブロミド、ラウリルブロミド、オクタデシルブロミド、ヘキシルヨージド、ヘプチルヨージド、オクチルヨージド、デシルヨージド、ラウリルヨージド、オクタデシルヨージド等が挙げられる。
【0027】
アミン類(2)とアルキルハライド類(3)との反応は、溶媒を使用しなくても進行するが、溶媒を使用するのが好ましく、溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトニトリル、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。溶媒の使用量は特に制限はないが、アミン類(2)1重量部に対して通常10重量部以下、好ましくは0.1〜5重量部であり、特に好ましくは0.1〜2重量部である。
【0028】
アルキルハライド類(3)の使用量は、アミン類(2)1モルに対して0.9モル以上であれば良く、好ましくは1〜2モルである。
【0029】
アミン類(2)とアルキルハライド類(3)との反応を溶媒中で実施するには、例えば、アミン類(2)とアルキルハライド類(3)及び溶媒の混合物を通常20℃以上、好ましくは60℃〜140℃で加熱攪拌するだけで良い。
【0030】
上記操作によりアンモニウム塩(4)を含む反応混合物を得た後、得られた反応混合物を本発明のアンモニウム塩(1)を製造するための反応にそのまま用いてもかまわない。また必要であれば、反応混合物をそのまま、又は抽出操作に付して反応混合物から未反応のアルキルハライド類(3)を抽出除去して得られる抽出残を濃縮してアンモニウム塩(4)を主成分とする残渣を得、この残渣を本発明のアンモニウム塩(1)を製造するための反応にそのまま用いてもかまわない。
【0031】
イオン交換反応に使用される酸類(5)としては、ヘキサフルオロリン酸類、トリフルオロ酢酸類、チオシアン酸類等が挙げられる。
【0032】
ヘキサフルオロリン酸類としては、例えば、ヘキサフルオロリン酸、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム、ヘキサフルオロリン酸カリウム、ヘキサフルオロリン酸アンモニウム等が挙げられる。
【0033】
ヘキサフルオロリン酸類の使用量は、アンモニウム塩(4)1モルに対して、通常0.8モル以上、好ましくは0.9モル〜1.5モルであり、より好ましくは0.95〜1.2モルである。
【0034】
ヘキサフルオロリン酸類を用いるイオン交換反応は通常水溶媒中で行われる。水の使用量は特に制限はないが、アンモニウム塩(4)1重量部に対して通常10重量部以下、好ましくは1〜10重量部であり、特に好ましくは1〜4重量部である。
【0035】
アンモニウム塩(4)、ヘキサフルオロリン酸類及び水の混合順序は特に限定されず、アンモニウム塩(4)と水を混合した後にヘキサフルオロリン酸類を添加してもよいし、ヘキサフルオロリン酸類と水を混合した後にアンモニウム塩(4)を添加してもよい。また、着色が問題となる場合には、アンモニウム塩(4)と水を混合した後に、活性炭等の脱色剤を用いて処理し、濾過して得られた濾液をイオン交換反応に用いることもできる。
【0036】
イオン交換反応における反応温度は、通常10℃以上、好ましくは10〜60℃、特に好ましくは10〜30℃である。
【0037】
反応終了後の反応液は、アンモニウム塩(1)の水溶解性が低いので、水層と有機層とに分液している。この反応液からアンモニウム塩(1)を分離するには、得られた有機層を所望により水洗し、次いで有機溶剤を留出除去して抽出層を濃縮すれば残渣として、アンモニウム塩(1)が得られる。また、必要であれば、反応液に水不溶の有機溶剤(例えば、トルエン、酢酸エチル、塩化メチレン等)を添加し、アンモニウム塩(1)を抽出してもよい。
【0038】
トリフルオロ酢酸類としては、例えばトリフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸ナトリウム、トリフルオロ酢酸カリウム、トリフルオロ酢酸リチウム等が挙げられる。
【0039】
トリフルオロ酢酸類の使用量は、アンモニウム塩(4)1モルに対して、通常0.8モル以上、好ましくは0.9モル〜1.5モルであり、より好ましくは0.95〜1.05モルである。
【0040】
トリフルオロ酢酸類を用いるイオン交換反応は、通常溶媒中で行われる。溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類、t−ブチルメチルエ−テル、アセトニトリル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。溶媒の使用量は特に制限はないが、アンモニウム塩(4)1重量部に対して通常10重量部以下、好ましくは1〜10重量部であり、特に好ましくは1.5〜4重量部である。
【0041】
アンモニウム塩(4)、トリフルオロ酢酸類及び溶媒の混合順序は特に限定されず、アンモニウム塩(4)と溶媒を混合した後にトリフルオロ酢酸類を添加してもよいし、トリフルオロ酢酸類と溶媒を混合した後にアンモニウム塩(4)を添加してもよい。
【0042】
イオン交換反応における反応温度は、通常10℃以上、好ましくは10〜60℃、特に好ましくは10〜30℃である。
【0043】
反応終了後の反応液からアンモニウム塩(1)を分離するには、溶媒及び生成する無機塩を反応液から除去する。反応液を濃縮して得られた残渣にアセトニトリル、酢酸エチル等の溶媒を加え、析出した結晶を濾過して除き、濃縮する。濃縮後得られた残渣にアセトニトリル等の溶媒を加え、析出した結晶を濾過して除き、濃縮すれば残渣として、アンモニウム塩(1)が得られる。
【0044】
チオシアン酸類としては、例えばチオシアン酸、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸リチウム等が挙げられる。
【0045】
チオシアン酸類の使用量は、アンモニウム塩(4)1モルに対して、通常0.8モル以上、好ましくは0.9モル〜3モルであり、より好ましくは1〜2モルである。
【0046】
チオシアン酸類を用いるイオン交換反応は通常水溶媒中で行われる。水の使用量は特に制限はないが、アンモニウム塩(4)1重量部に対して通常10重量部以下、好ましくは0.1〜10重量部であり、特に好ましくは0.1〜1重量部である。
【0047】
アンモニウム塩(4)、チオシアン酸類及び水の混合順序は特に限定されず、アンモニウム塩(4)と水を混合した後にチオシアン酸類を添加してもよいし、チオシアン酸類と水を混合した後にアンモニウム塩(4)を添加してもよい。また、着色が問題となる場合には、アンモニウム塩(4)と水を混合した後に、活性炭等の脱色剤を用いて処理し、濾過して得られた濾液をアニオン交換反応に用いることもできる。
【0048】
イオン交換反応における反応温度は、通常10℃以上、好ましくは10〜80℃、特に好ましくは20〜60℃である。
【0049】
反応終了後の反応液からアンモニウム塩(1)を分離するには、反応液にアセトン、n−ブタノール等の溶媒を加え、析出した結晶を濾過して除去し、濾液を濃縮する。濃縮後、得られた残渣にアセトン等の溶媒を加え、析出した結晶を濾過して除き、得られた濾液を濃縮し残渣として、アンモニウム塩(1)が得られる。又は、反応液に、例えば、n−ブタノール、トルエン、酢酸エチル、塩化メチレン等の有機溶剤で、アンモニウム塩(1)を抽出しても良い。得られた抽出層を所望により水洗し、抽出層を濃縮すれば残渣として、アンモニウム塩(1)が得られる。
【実施例】
【0050】
つぎに、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はなんらこれらに限定されるものではない。下記の実施例中、H−NMRは日本電子データム株式会社製の「AL−400」を使用し、溶媒にCDCl3を用いて400MHzで測定した。また、表面抵抗値は三菱化学株式会社製ヒレスタHT−210を用い、印加電圧500Vにて測定した。
【0051】
実施例1
N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチルアミン20.0g(0.150モル)、オクチルブロミド34.8g(0.180モル)及びアセトニトリル30.0gを混合し、81〜83℃で24時間攪拌して反応させた。反応終了後、得られた反応混合物を濃縮し、得られた残渣とn−ヘキサン50.0gを混合して60℃に加熱、静置した。静置した混合液が2層に分液したことを確認したのち、上澄みのn−ヘキサン層をデカンテーションで除いた。この「n−ヘキサンの混合、加熱、静置及びn−ヘキサン層のデカンテーションによる除去」操作をもう一度繰り返した。洗浄後の残渣に含まれる溶媒を減圧下で除去してN−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニウム=ブロミド49.8g(収率100%)を得た。
【0052】
実施例2
実施例1で得たN−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニウム=ブロミド33.3g(0.10モル)にヘキサフルオロリン酸カリウム20.8g(0.11モル)及び水100gを加え、得られた混合物を1時間室温で攪拌して反応させた。反応終了後、得られた反応液を30〜40℃で分液して、得られた有機層を1回につき50.0gの水で2回洗浄した。洗浄後の有機層に含まれる水を減圧下で除去して、液体のN−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニウム=へキサフルオロホスファ−ト34.0g(収率85.1%)を得た。得られたN−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニウム=へキサフルオロホスファ−トのH−NMRの分析結果を次に示す。
【0053】
H−NMR(CDCl) δ:ppm3.97−3.85(m,2H)、3.78−3.69(m,2H)、3.65−3.57(m,2H)、3.55−3.47(m,2H)、3.36−3.26(m,2H)、3.12(s,6H)、2.62−2.50(br,1H)、1.80−1.65(m,2H)、1.40−1.20(m,10H)、0.88(t,3H)
【0054】
実施例3
N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチルアミン30.0g(0.225モル)、1−クロロオクタン36.8g(0.248モル)及びメチルイソブチルケトン18.0gを混合し、120℃で24時間攪拌して反応させた。反応終了後、得られた反応混合物を濃縮し、得られた残渣とn−ヘキサン50.0gを混合、静置した。静置した混合液が2層に分液したことを確認したのち、上澄みのn−ヘキサン層をデカンテーションで除いた。この「n−ヘキサンの混合、静置及びn−ヘキサン層のデカンテーションによる除去」操作をもう一度繰り返した。洗浄後の残渣に含まれる溶媒を減圧下で除去してN−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニウム=クロリド58.9g(収率92.8%)を得た。
【0055】
実施例4
実施例3で得たN−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニウム=クロリド20.0g(0.071モル)にトリフルオロ酢酸ナトリウム9.7g(0.071モル)、アセトン40ml、t−ブチルメチルエ−テル10mlの混合溶液を滴下し、得られた混合物24時間室温で攪拌して反応させた。反応終了後、得られた反応液を濃縮し、残渣に酢酸エチル10.0gとアセトニトリル10.0gを加えて析出した結晶を濾過した。濾過により得た結晶をアセトニトリル10.0gで2回洗浄し、濾液及び洗浄液を混合した後に濃縮した。得られた残渣にアセトニトリル20.0gを加え析出した結晶を濾過して除き、得られた濾液を濃縮することにより液体のN−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニウム=トリフルオロアセタ−ト25.2g(収率98.7%)を得た。得られたN−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニウム=トリフルオロアセタ−トのH−NMRの分析結果を次に示す。
【0056】
H−NMR(CDCl) δ:ppm5.22−5.08(br,1H)、4.01−3.92(m,2H)、3.76−3.65(m,4H)、3.65−3.56(m,2H)、3.45−3.37(m,2H)、3.24(s,6H)、1.77−1.64(m,2H)、1.38−1.20(m,10H)、0.88(t,3H)
【0057】
実施例5
N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニウム=クロリド35.0g(0.124モル)、チオシアン酸ナトリウム11.1g(0.137モル)及び水10.0gを混合し、50℃で3時間攪拌して反応させた。得られた反応液にチオシアン酸ナトリウム4.0g(0.049モル)及び水5.0gを加え、50℃で3時間攪拌して反応させた。得られた反応液にアセトン60.0gを加えて結晶を析出させた後、析出した結晶を濾過し、結晶をアセトニトリル10.0gで洗浄した。得られた濾液及び洗浄液を混合して濃縮し、得られた残渣にアセトン30.0gを加えて0℃まで冷却した。冷却によって析出した結晶を濾過により除去した後、濾液を濃縮し、得られた残渣にn−ブタノ−ル220.7g及び水212.3gを加えて撹拌した後分液し、有機層を得た。得られた有機層を濃縮し、残渣にn−ブタノ−ル44.6g及び水66.9gを加え攪拌した後分液し、有機層を得た。得られた有機層にn−ブタノ−ル22.3g及び水35.7gを加え攪拌した後分液し、得られた有機層を濃縮して、液体のN−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニウム=チオシアナ−ト30.3g(収率80.1%)を得た。得られたN−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニウム=チオシアナ−トのH−NMRの分析結果を次に示す。
【0058】
H−NMR(CDCl) δ:ppm4.44−4.22(br,1H)、4.13−4.03(m,2H)、3.82−3.65(m,6H)、3.58−3.48(m,2H)、3.35(s,6H)、1.88−1.75(m,2H)、1.45−1.22(m,10H)、0.88(t,3H)
【0059】
応用例1
総研化学株式会社製のアクリル系粘着剤SKダイン909A 100重量部を用い、これに本発明のアンモニウム塩であるN−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニウム=へキサフルオロホスファ−ト5重量部及び希釈溶剤として酢酸エチル100重量部を加えて溶解してコート液を調製した。このコ−ト液をポリエステルフィルム上にバーコーダを用いて粘着剤の乾燥時の厚みが約10μmになるようにコートし、80℃で3分間加熱、乾燥させて試験片を作成した。得られた試験片を21℃、43%RHの雰囲気中に3時間保持した後、21℃、43%RHで試験片の粘着剤の表面抵抗値を測定した。その結果を表1に示す。
【0060】
応用例2〜3及び比較例1
応用例1のN−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニウム=へキサフルオロホスファ−トの代わりに表1に示す本発明のアンモニウム塩を用いた以外は、応用例1と同様にして試験片を作成し、かかる試験片の粘着剤の表面抵抗値を応用例1と同様にして測定した。それらの結果を表1に示す。
【0061】
また、応用例1のN−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチル−N−オクチルアンモニウム=へキサフルオロホスファ−トを用いなかった以外は、応用例1と同様にして試験片を作成し、かかる試験片の粘着剤の表面抵抗値を応用例1と同様にして測定した。その結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
表1の結果から、本発明のアンモニウム塩を配合した粘着剤は、これを配合しないときの粘着剤が1.0×1013以上という絶縁状態に比べ、1×10〜5×10の極めて低い表面抵抗値が得られることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

(式中、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rは炭素数6〜18のアルキル基を示し、Rは2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル基を示す。Aはヘキサフルオロホスファ−ト、トリフルオロアセタ−ト又はチオシアナ−トを示す。)で表されるアンモニウム塩。

【公開番号】特開2011−153110(P2011−153110A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16939(P2010−16939)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000167646)広栄化学工業株式会社 (114)
【Fターム(参考)】