説明

0.28から0.38G/MLのかさ密度を有する吸入用新規製剤、その製剤を調製する方法およびその使用

【課題】吸入を再現するために設計されたシステム中で、医薬の改善された分散を実現する改善された製剤の提供。
【解決手段】0.28から0.38g/mlの流動かさ密度を有する、全て微細粉末形である1つまたはそれ以上の医薬作用の強力な物質および担体物質を含む乾燥粉末組成物。医薬作用の強力な物質としては、好ましくはブデソニドとフォルモテロールとが挙げられ、担体物質としてはラクトースが挙げられる。本組成物は呼吸器系疾患、特に喘息の処置に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、新規医薬製剤、その調製およびその使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
吸入により投与される強力な医薬は、正確な投与量を計量する問題のために、一般にラクトースのような担体と組合せて製剤される。このように医薬を希釈したとき、希釈しなかったときと比較して、製剤の重量変化があっても、医薬投与量の変化率は小さいという結果をもたらす。このような製剤は一般に医薬の微細粒子を伴う担体の粗粒子からなり、この組合せは一般に秩序混合物として既知である。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、吸入を再現するために設計されたシステム中で、医薬の改善された分散を実現することが判明した、改善された製剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の詳細な説明
本発明に従い、1つまたはそれ以上の医薬作用の強力な物質および担体物質を全て微細粉末の形態で含む乾燥粉末組成物が提供され、製剤は0.28から0.38g/ml、好ましくは0.30から0.36g/mlのかさ密度を有する。
【0005】
本発明のかさ密度は、既知の方法、例えば“Powder testing guide:Methods of measuring the physical properties of Bulk powders”L. Svarovsky, Elsevier Applied Science 1987, pp84-86”に記載のものを使用して測定する。
【0006】
本発明の使用に適当な医薬作用の強力な物質は、例えば抗不整脈剤、精神安定剤、強心配糖体、ホルモン、高血圧剤、抗糖尿または抗癌剤、鎮静または鎮痛剤、抗生物質、抗リウマチ剤、免疫療法、抗真菌または抗低血圧剤、ワクチン、抗ウイルス剤、タンパク質(例えばインスリン)、ペプチド、ビタミンまたは細胞表面レセプターブロッカーである。好ましくは、グルココルチコステロイド、特に素早く新陳代謝するもの、例えばジプロピオン酸ベクロメタゾン(BDP)、モノプロピオン酸ベクロメタゾン(BMP)、フルニソリド(flunisolide)、トリアムシノロンアセトニド、プロピオン酸フルチカゾン(fluticasone propionate)、シクレソニド(ciclesonide)、ブデソニド、ロフレポニド(rofleponide)またはその誘導体、モメタソン(momethasone)、ティプレダン(tipredane)、RPR 106541および/またはテルブタリン、サルブタモール、フォルモテロール、サルメテロール、TA 2005、ピルクマロールもしくは薬学的に許容されるそれらの塩といったβ2-アゴニスト;および/またはソディウムクロモグリケート(sodium chromoglycate)またはネドクロミルナトリウム(nedocromil sodium)といった予防剤である。
【0007】
生理学的に許容される適当な塩には、無機酸および有機酸から得られる酸付加塩、例えば塩化物、臭化物、硫酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、4-メトキシ安息香酸塩、2-または4-ヒドロキシ安息香酸塩、4-クロロ安息香酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、アスコルビン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、グルタル酸塩(glutarate)、グルコン酸塩、トリカルバリル酸塩、ヒドロキシナフタレン-カルボン酸塩またはオレイン酸塩等、またはそれらの溶媒和物を含む。
【0008】
担体物質は、好ましくはモノ-、ジ-またはポリサッカライド、糖アルコールまたは他のポリオールである。適当な担体は、例えば、ラクトース、グルコース、ラフィノース、メレチトース、ラクチトール、マルチトール、トレハロース、スクロース、マンニトール;および澱粉である。ラクトース、特にその1水和物の形が特に好ましい。
【0009】
本発明の製剤の成分は、両方とも微細に粉砕されているべきであり、即ち、レーザー回折装置またはコールター・カウンターで測定して、その質量中央径が一般に10μmより小さい、好ましくは1から7μmであるべきである。各成分は、当業者に既知の方法、例えば製粉、微粉化または直接沈殿を使用して所望の粒子サイズに製造し得る。
【0010】
ブデソニドとフォルモテロールの組み合わせが特に好ましい。フォルモテロールは好ましくは、そのフマル酸塩の形、特に2水和物の形で使用する。
【0011】
本発明に使用する1つまたはそれ以上の医薬作用の強力な物質がフォルモテロールおよびブデソニドであるとき、本発明の組成物においてブデソニドに対するフォルモテロールのモル比は、好ましくは1:2500から12:1、さらに好ましくは1:555から2:1、最も好ましくは1:133から1:6である。本発明の組成物は、好ましくは、フォルモテロールの一日量が2から120nmol(さらに好ましくは7から70nmol)となるように製剤される。フォルモテロールをフマル酸フォルモテロール2水和物の形で使用するとき、組成物は好ましくはフマル酸フォルモテロール2水和物の一日量が1から50μg、さらに好ましくは3から30μgとなるように製剤される。本発明の組成物は、好ましくは、ブデソニドの一日量が45から2200μg、さらに好ましくは65から1700μgとなるように製剤される。
【0012】
さらに好ましくは本発明の組成物には、単位用量として、6μgのフマル酸フォルモテロール2水和物および100μgのブデソニド、または4.5μgのフマル酸フォルモテロール2水和物および80μgのブデソニドを含み、どちらの場合であっても1日4回まで投与され得る。他に本発明の組成物には、単位用量として、12μgのフマル酸フォルモテロール2水和物および200μgのブデソニド、または9μgのフマル酸フォルモテロール2水和物および160μgのブデソニドを含み、どちらの場合であっても1日1回または2回投与され得る。
【0013】
最も好ましくは、本発明に使用する組成物は、単位用量として、6μgのフマル酸フォルモテロール2水和物および200μgのブデソニド、または4.5μgのフマル酸フォルモテロール2水和物および160μgのブデソニドを含み、どちらの場合であっても1日4回まで投与され得る。他に本発明の組成物は、単位用量として、12μgのフマル酸フォルモテロール2水和物および400μgのブデソニド、または9μgのフマル酸フォルモテロール2水和物および320μgのブデソニドを含み、どちらの場合であっても1日1回または2回投与され得る。
【0014】
本発明に従って、
(a)1つまたはそれ以上の医薬作用の強力な物質および担体物質を微粉化し;
(b)所望によりその生産物をコンディショニング(conditioning)し;そして
(c)所望のかさ密度を得るまで球形化すること(spheronizing)
を含む、本発明の組成物の製造法が更に提供される。本方法は、好ましくは更に工程(b)の後に低エネルギー再微粉化を含む。
【0015】
本発明の製剤は、それ自体既知の慣用法で製造し得る。このような製造法は一般に各成分の所望のサイズへの微粉化、得られた粒子からの、例えば、WO92/18110またはWO95/05805に記載の方法による無定形成分の除去、および続く得られた粉末の凝集化(agglomerate)、球形化および篩過を含む。得られた凝集粒子のサイズは、好ましくは100から2000μm、より好ましくは100から800μmの範囲である。製造した製剤のかさ密度は、成分および方法を経験的に変化させることより調節することができ、例えば、粒子を球形化装置(spheronizing device)中で回転させる時間の延長によりかさ密度を増加できる。
【0016】
固体−固体混合において、最も重要な性質の1つは成分均質性の確保である。微粉末の粉末混合において遭遇する主要な問題は、ミキサーが粉末凝集塊を破砕することができないことである。微粉末のコンディショニング段階後の低エネルギーインプットでの再微粉化が有利であることが判明した。これは、一般に、粉末凝集塊を破砕するのに十分なエネルギーであるが、粒子自体のサイズに影響する程大きくはないエネルギーを使用して行う。このような段階は、活性物質および担体物質が実質的に均質に分散され、例えば、微細粒子の結晶性の妨害することなしに、3%より小さい(好ましくは1%より小さい)相対的標準偏差を有する組成物を提供する。
【0017】
本発明の製剤は、既知の乾燥粉末吸入器を使用して投与し得、例えば吸入器は単回または複数回投与吸入器であり得、呼吸作動性乾燥粉末吸入器、例えばTurbuhaler(商標登録)であり得る。本発明は更に治療に使用する医薬の製造における本発明の組成物の使用を提供する。本発明の組成物は呼吸器系疾患、特に喘息の処置に有用である。本発明はまた、患者に本発明の組成物の有効量を投与することを含む、呼吸器系疾患に罹患している患者の処置法も提供する。
【0018】
本発明を、以下の実施例を参照して、限定的でなく、説明する。
【実施例】
【0019】
実施例1
フマル酸フォルモテロール2水和物0.0315部およびラクトース1水和物2.969部をタンブルミキサー(Turbula)で均質に分散した混合物となるまで混合し、その後、適当な供給速度(feeding rate)および圧力を用いスパイラル・ジェット・ミルで微粉化すると3μmより小さい粒子サイズが得られる(コールター・カウンターで測定した質量中央径)。それから微粉化した粒子をWO95/05805に開示の方法を用い処理すると、結晶構造の無定形成分が除去される。次いでツイン・スクリュー・フィーダー(K-Tron)に粉末を入れて凝集化し、振動篩過(0.5mmメッシュサイズ)し、周速0.5m/sの回転パンで4分間球形化し、そして同じふるいを用いて再び篩過し、さらにもう一度6分間球形化し、最後にふるい(メッシュサイズ1.0mm)にかけ、0.32g/mlのかさ密度の粉末とすることにより、粉剤を得た。
【0020】
実施例2
微粉化後に低圧(約1バール)のスパイラル・ジェット・ミルで再微粉化する以外は、実施例1を繰り返すと、WO95/05805に記載の方法によって粒子を処置する工程のようなコンディショニングを必要とせずにかさ密度0.32g/mlの粉剤が得られた。
【0021】
実施例3
ブデソニド9部およびラクトース1水和物91部を別々にスパイラル・ジェット・ミルで、約6-7バールの圧力で微粉化し、3μmより小さい粒子サイズとし、その後Turbulaミキサーで激しく混合した。混合前にラクトース1水和物粉末をWO95/05805に記載の方法に従ってコンディショニングした。混合物を、スパイラル・ジェット・ミルでわずか約1バールの圧力で再微粉化し、均質な混合物を得た。次いで粉末を実施例1の記載の通りに凝集化し球形化すると、0.35g/mlのかさ密度が得られた。
【0022】
実施例4
硫酸テルブタリン60部をAlpin mill 100AFGで2μmより小さい質量中央径となるまで微粉化し、その後US5562923に記載の方法によりコンディショニングした。ラクトース1水和物40部を3μmより小さい質量中央径となるまで微粉化(Alpin mill 100AFG)し、その後WO95/05805に記載の方法によりコンディショニングした。微粉化しコンディショニングした硫酸テルブタリンおよびラクトース1水和物をTurbulaミキサーで完全に混合した。その混合物をわずか約1バールの圧力のスパイラル・ジェット・ミルで再微粉化すると、均質に分散した混合物となった。次いでその粉末を実施例1の記載の通りに凝集化し球形化すると、0.28g/mlのかさ密度が得られた。
【0023】
実施例5
硫酸テルブタリン30部およびラクトース1水和物70部を用いて実施例4を繰り返すと、0.31g/mlのかさ密度の粉剤が得られた。
【0024】
実施例6
フマル酸フォルモテロール2水和物5.2部およびラクトース1水和物896.8部をタンブルミキサーで均質に分散した混合物となるまで混合し、その後、適当な供給速度(feeding rate)および圧力を用いスパイラル・ジェット・ミルで微粉化すると3μmより小さい粒子サイズが得られる(コールター・カウンターで測定した質量中央径)。それから微粉化した粒子をWO95/05805に開示の方法を用い処理すると、結晶構造の無定形成分が除去される。微粉化したブデソニド98部を加え、その混合物が均質な混合物となるまで低圧のスパイラル・ジェット・ミルで再微粉化した。次いでスクリュー・フィーダー(K-Tron)に粉末を入れて凝集化し、振動篩過(0.5mmメッシュサイズ)し、スピード23rpmの回転パンで10分間球形化し、そして再び篩過(0.5mmメッシュサイズ)し、さらにもう一度球形化し、最後にふるい(0.8mmメッシュサイズ)にかけ、0.34g/mlのかさ密度の粉末とすることにより、粉剤を得た。
【0025】
実施例7
微粉化したフマル酸フォルモテロール2水和物、微粉化したラクトース1水和物798.8部および微粉化したブデソニド196部を用いる以外は、実施例6を同一条件で繰り返した。得られたかさ密度は0.34g/mlであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.28から0.38g/mlのかさ密度を有する、1つまたはそれ以上の医薬作用の強力な物質および担体物質を全て微細粉末の形態で含む乾燥粉末組成物。
【請求項2】
1つまたはそれ以上の医薬作用の強力な物質がブデソニドおよびフォルモテロールである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
かさ密度が0.30から0.36g/mlである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
活性物質および担体物質が実質的に均質に分散している請求項1、2または3に記載の組成物。
【請求項5】
呼吸器系疾患の処置に使用するための、請求項1〜4の何れかに記載の組成物。
【請求項6】
(a)1つまたはそれ以上の医薬作用の強力な物質および担体物質を微粉化し;
(b)所望によりその生産物をコンディショニングし;そして
(c)所望のかさ密度を得るまで球形化すること
を含む、請求項1に記載の組成物の製造方法。
【請求項7】
工程(b)の後に低エネルギー再微粉化を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
治療に使用するための医薬の製造における、請求項1〜4の何れかに記載の組成物の使用。
【請求項9】
患者に請求項1〜4の何れかに記載の組成物の有効量を投与することを含む、呼吸器系疾患に罹患している患者を処置する方法。

【公開番号】特開2010−59181(P2010−59181A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255070(P2009−255070)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【分割の表示】特願平10−534218の分割
【原出願日】平成10年1月13日(1998.1.13)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】