説明

1−アダマンタンの芳香族誘導体の調製方法

【課題】1−アダマンタン(トリシクロ[3.3.1.1(3,7)]デカン)誘導体、又はその薬理学的に許容できる塩の調製方法の提供。
【解決手段】好適な離脱基を有する前駆体化合物の、メタル化を経たカルボキシル化反応に基づく方法。更に、対応するホウ素、マグネシウム又は亜鉛誘導体と、対応する二置換芳香族誘導体との選択的なカップリングによる、前記前駆体化合物の調製方法を含んでなる。特に良好な収率及び高純度で、産業スケールによるアダプレネの調製に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間体であるハロゲン化芳香族化合物からの、1−アダマンタンの芳香族誘導体(特にアダプレネ)を得る方法の提供に関する。また、前記中間体の調製方法の提供にも関する。
【背景技術】
【0002】
アダプレネは、製薬成分としての国際一般名(INN)であり、その化学名は6−[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−2−ナフトエ酸であり、式(Ia)で表される。
【0003】
【化1】

【0004】
アダプレネは、ナフトエ酸に由来する、抗炎症特性及び角質溶解特性を有する抗ざ瘡剤である。
【0005】
特許文献1は、ベンゾナフタレン誘導体、並びにそれらの治療用と及び美顔用途を記載している。また、それらの調製方法も記載している。記載されている幾つかの1−アダマンタン誘導体化合物(アダプレネなど)は、2−(アダマンチル)−4−ハロゲンアニソールをそのマグネシウム、リチウム又は亜鉛誘導体に変換し、更にメチル6−ブロモ−2−ナフトエートとカップリングさせ、塩基性条件下で、得られたエステルを加水分解することにより得られる。但しこの工程には、メチルナフトエートのハロゲン化誘導体の調製が困難であり、その収率が低いという欠点が存在する。
【0006】
一方では、特許文献2は、1−アダマンタンの幾つかの芳香族誘導体(アダプレネなど)、並びにその癌の治療及び/又は予防への使用に関して記載している。
【特許文献1】欧州特許出願公開第199636A1号
【特許文献2】国際公開第01/56563A1号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上より、効率的かつ工業化が簡便な1−アダマンタンの芳香族誘導体の調製工程を提供することは、これらの化合物の産業的な調製にとって大きな注目の的といえる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは鋭意研究の結果、合成の終了時に、ハロゲン化された1−アダマンタンの芳香族誘導体にカルボキシル基を導入することを特徴とする、新規かつ簡便な1−アダマンタン誘導体の調製方法を見出し、本発明を完成させるに至った。当該方法は特に、市販の、及び公知のハロゲン化ナフタレンから得られる、新規な1−アダマンチルベンゾナフタレン誘導体からのアダプレネの調製に有利である。なぜなら、調製が困難であり、かつ費用のかかるナフタレンカルボン酸誘導体の調製が必要ないからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
すなわち、本発明の一態様は、式(I)の化合物又はその薬理学的に許容できる塩の調製方法の提供に関する。
【0010】
【化2】

式中、Wは以下からなる群:−CH−、−O−及び−SO−から選択されるビラジカルであり、R及びRは同じ又は異なる基であり、独立に水素、ハロゲン及び(C−C)−アルキル基からなる群から選択され、Rは、ヒドロキシル、アシル、アミド基、ハロゲン、1つ以上のヒドロキシル基又はアシル基によって任意に置換されてもよい(C−C)アルキル基、及び任意に1つ以上のヒドロキシル基、(C−C)−アルコキシル基又はアミドにより置換されてもよく、及び/又は1つ以上の酸素原子によって任意に中断されてもよい(C−C)−アルコキシル基からなる群から選択される基であり、Rは水素、ヒドロキシル基、(C−C)−アルキル及び(C−C)−アルコキシルからなる群から選択される基であるか、又は、R及びRは共にビラジカル−OCHO−を形成し、Rは水素、(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシル及びハロゲンからなる群から選択される基であり、Sは以下の(S)−1及び(S)−2から選択される基であり、
【0011】
【化3】

式中、Rは水素、(C−C)−アルキル及びハロゲンから選択される基であり、Rは水素、ヒドロキシル基及びハロゲンから選択される基であり、Vはビラジカル−CH−でありV’はO原子であるか、又は、VはN原子でありV’はビラジカル−NH−であり、前記方法は、式(II)の化合物
【0012】
【化4】

(式中、Uは(U)−1及び(U)−2から選択される基であり、
【0013】
【化5】

式中、Xは、メタル化(metalation)/カルボキシル化の実施に十分な離脱基であり、W、V、V’、R、R、R、R、R、R及びRは上記定義と同じ意味を有する)を、メタル化剤を使用して、式(II)の前記化合物をメタル化し、更にカーボンジオキシドで処理することを含んでなるカルボキシル化反応を実施し、更に任意に酸処理を実施し、当該酸処理の後、得られた化合物を任意にその薬理学的に許容できる塩に変換させる工程を含んでなる。
【0014】
好ましい実施形態では、式(I)の化合物はアダプレネ(Ia)であり、式(II)の化合物は式(IIa)の化合物であり、式中、Xはメタル化/カルボキシル化の実施に適する離脱基である。
【0015】
【化6】

より好ましい態様では、XはCl、Br及びIから選択され、好ましくはXはBrである。
【0016】
例えば、反応式1は、式(IIa)の化合物(X=Br)からのアダプレネ(Ia)の調製方法を要約するものである。任意に水素化ナトリウムを反応溶媒に添加してもよい。アダプレネは、カルボキシル化された生成物の酸処理によって調製できる。
【0017】
反応式1:
【0018】
【化7】

【0019】
他の好ましい実施形態では、当該メタル化剤は(C−C)−アルキル−リチウム又はマグネシウムである。より好ましくは(C−C)−アルキルリチウムであり、好ましくはn−ブチルリチウム(n−BuLi)及びter−ブチルリチウム(t−BuLi)から選択される。
【0020】
好ましくは、当該メタル化及びその後のCO処理(ガス又は固体)は、−40℃〜−78℃の温度で実施する。好ましくは、前記工程は−40℃〜−60℃の温度で実施する。また、好ましくは、当該カルボキシル化は、十分な溶媒(例えばエーテル、(C−C)炭化水素又はそれらの混合物)の存在下で実施する。好ましくは、当該溶媒はテトラヒドロフランである。
【0021】
反応の実施に適する条件は、例えば使用する溶媒、メタル化剤、温度、メタル化時間などの当業者により考慮されるパラメータを適宜変化させて調整する。これらの条件は、ルーチン試験、及びこの明細書に存在する実施例の教示内容を基に、本技術分野の当業者であれば容易に決定できる。
【0022】
最後に、本発明の方法によって得られる式(I)の化合物を、その薬理学的に許容できる塩に変換させることができ、また当該薬理学的に許容できる塩を用いて、フリーの化合物に変換させてもよく、又は従来技術において公知の方法を用いて他の薬理学的に許容できる塩に変換させてもよい。
【0023】
本発明の別の態様は、式(II)の中間体化合物の調製方法の提供に関する。当該方法は、式(III)の化合物と、2,4,6−トリス[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−1,3,5,2,4,6−トリオキサトリボリナン又は式(IV)の化合物のいずれかをカップリング反応させることを含んでなる。
【0024】
【化8】

式中、RはMgZ、ZnZ及び以下の群から選択される式で表される基であり、
【0025】
【化9】

式中、Zはハロゲン(好ましくはCl及びBr)であり、T及びTはヒドロキシル基、(C−C)−アルコキシル基及びフェノキシ基からなる群から各々独立に選択され、最後の基は(C−C)−アルコキシル基、(C−C)−アルキル基又はハロゲンで任意に置換されてもよいか、又は、T及びTはホウ素原子と共に以下から選択される環状構造を形成してもよく、
【0026】
【化10】

Mが(CH、(CHCR(CH及びCR(CHCRからなる群から選択され、nは2から4の整数であり、r及びsは0から4の整数であり、但しr及びsが両方とも0でなく、tは0から1の整数であり、R及びRは水素、(C−C)−アルキル、フェニル及び一置換若しくは二置換フェニル基(当該置換基はハロゲン、(C−C)−アルキル及び(C−C)−アルコキシル基である)からなる群から各々独立に選択される。
【0027】
式(III)及び(IV)において、U、W、R、R、R、R、Rは上記の定義と同じ意味を有し、Yはカップリングの実施に適する離脱基である。
【0028】
ホウ素誘導体の場合、この反応はスズキカップリングとして公知である。通常、十分な溶媒の存在下、好ましくは遷移金属化合物及び塩基の存在下で実施する。Zn誘導体の場合、当該反応はネギシカップリングとして公知である。
【0029】
好ましい実施態様において、式(II)の化合物は化合物(IIa)であり、当該カップリング反応は、式(IIIa)の化合物と、2,4,6−トリス[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−1,3,5,2,4,6−トリオキサトリボリナン又は式(IVa)の化合物のいずれかとの反応により実施し、式中、Rは上記と同じ意味を有する。
【0030】
【化11】

【0031】
式(IIIa)において、Xはメタル化/カルボキシル化の実施に適する離脱基を意味し、Yは例えばCl、Br及びIであるか、又は式−OSOのスルホネートなどの、カップリングの実施に適する離脱基であり、式中、RはCF、(C−C)−アルキル基、フェニル基、並びに(C−C)−アルキル基、ハロゲン及びニトロ基から選択される基で一置換若しくは二置換されてもよいフェニルから選択される基である。好ましくは、当該スルホネートは、メシレート(R=−CH)、トシレート(R=−CCH)、ベシレート(R=−C)及びトリフレート(R=−CF)から選択され、最後の基が最も好ましい。
【0032】
より好ましい実施形態では、式(IIIa)の開始化合物は、YがBrである化合物である。他の好ましい実施形態では、式(IIIa)の開始化合物は、Yがトリフルオロメタンスルホネートである。他の好ましい実施形態では、式(III)の開始化合物は、XがBrである化合物である。好ましくは、アダプレネの調製の場合、2,6−ジブロモナフタレン(市販品)、又は6−ブロモ−2−ナフタレニルトリフルオロメタンスルホネートを用いる。最後の化合物は、6−ブロモ−2−ナフトールから、通常第3級アミン(例えばトリエチルアミン)の存在下で、トリフレート無水物と反応させることにより容易に調製される。
【0033】
好ましくは、式(IIIa)の化合物(Y=Br又はトリフルオロメタンスルホネート、及びX=Br)を、2,4,6−トリス[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−1,3,5,2,4,6−トリオキサトリボリナン、又は、3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニルホウ酸、[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナン及び3−(1−アダマンチル)−4−メトキシベンゼン塩化亜鉛から選択される式(IVa)の化合物とカップリングさせる。
【0034】
例えば、市販品の3−(1−アダマンチル)−1−ブロモ−4−メトキシベンゼンのリチウム化、それに続くトリイソプロピルボレート(B(O−i−Pr))による処理及び酸加水分解を行い、3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニルホウ酸を調製する。この生成物は、約60℃で加熱することにより環状生成物2,4,6−トリス[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−1,3,5,2,4,6−トリオキサトリボリナンに変換させることができ、又は、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素(C−C)を用いて処理することにより、低温(0〜5℃)で反応させてもよい。
【0035】
[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナンなどの式(IVa)の他のホウ素誘導体の調製は、例えば生成物2,4,6−トリス[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−1,3,5,2,4,6−トリオキサトリボリナンと、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールとの、芳香族炭化水素(C−C)などの適切な溶媒中における、高温下での反応によって実施できる。
【0036】
3−(1−アダマンチル)−4−メトキシベンゼン塩化亜鉛などの式(VIa)の亜鉛誘導体の調製は、例えば3−(1−アダマンチル)−1−ブロモ−4−メトキシベンゼンの低温でのリチウム化、続くZnClによる処理によって実施できる。
【0037】
好ましくは、式(III)の化合物と式(IV)の化合物とのカップリングにより式(II)の化合物を調製する際に用いる遷移金属化合物は、パラジウム及びニッケルの金属塩及び金属錯体から選択される。好適な金属化合物の例としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh)、ジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィン)フェロセン]パラジウム(II)(PdCl(dppf))、ジクロロ[1,4−ビス(ジフェニルホスフィン)ブタン]パラジウム(PdCl(dppb))、ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(II)(PdCl(PCy)、ジクロロ[1,1’−ビス(ジ−terc−ブチルホスフィン)フェロセン]パラジウム(II)(PdCl(dtbp))、パラジウム、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)NiCl(PPh及び上述した触媒とホスフィンとの混合物、並びにパラジウム触媒/ポリマー支持体が挙げられる。好ましくは、当該金属化合物はテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh)である。
【0038】
好ましくは、スズキカップリングに使用する塩基は、ナトリウム又は炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩、並びにアルカリ金属リン酸塩(例えばリン酸ナトリウム又はリン酸カリウム)から選択される。好ましくは、当該塩基はリン酸カリウムである。好ましくは、室温〜使用する溶媒の還流温度で反応を実施する。
【0039】
式(II)の化合物は、1−アダマンタン誘導体、又はその薬理学的に許容できる塩の調製に有用な中間体である。特に式(IIa)の化合物は、特にアダプレネの調製に有用である。
【0040】
本発明の第3の態様は、式(IIa)の化合物の提供に関し、式中、Xはメタル化/カルボキシル化の実施に適する離脱基であり、Cl、Br及びIから選択される。好ましくは、式(IIa)の化合物は、XがBrである。
【0041】
【化12】

【0042】
本発明の利点としては、この1−アダマンタン誘導体の調製工程により、迅速かる効率的かつ選択性の高い合成が可能となる点が挙げられる。この工程によるアダプレネの調製は、特に産業レベルでの実用化にとり有利である。なぜなら、これらのベンゾナフタレン中間体は、一般的に用いられる市販のハロゲン化ナフタレン中間体から調製されるからであり、言い換えると、高コストで調製が困難なナフタレンのカルボン酸誘導体の使用が必要ないからである。更に、最終製品が高い化学純度で得られるという利点も挙げられる。また本発明の方法の更なる効果として、カルボキシル基の保護/脱保護処理が必要ないという点も挙げられる。
【0043】
本発明の更なる課題、効果及び特徴は、本願明細書中の記載の検討により当業者にとり明らかとなり、また本発明の実施によって習得されうる。本願明細書及び特許請求の範囲における用語「含んでなる」という用語、並びにその活用形は、他の技術的特徴、添加物、構成要素又は処理を除外することを目的として用いられる用語ではない。本発明に添付される要約書の開示内容は、参考として本願明細書に援用される。以下に実施例及び図面を例示するが、それらは本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0044】
特に明記しない限り、化学品業者から市販されている化合物を反応物質として用いた。テトラヒドロフラン(THF)及びジオキサンはNa/ベンゾフェノンで生成し、トルエンはNaで精製した。KPOは、使用前に微粉末化した。乾燥COフローは、CaClを含有するチューブで粗COを純化して調製した。
【0045】
<実施例1:6−ブロモ−2−ナフタレニルトリフルオロメタンスルホネートの調製>
トリフレート無水物[(CFSOO、1.8ml、3.03g、10.8mmol]を、6−ブロモ−2−ナフトール(2g、9.0mmol)及びトリエチルアミン(NEt)(1.52ml、1.09g、10,8mmol)のジクロロメタン(CHCl)(40ml)中溶液に、−10℃で不活性雰囲気下で添加した。−10℃で2時間撹拌した後、反応混合物をHO(50ml)で希釈し、CHCl(3×40ml)で抽出した。全ての有機相をHCl水溶液(50ml、0.1M)、HO(50ml)で洗浄し、更にNaSOで乾燥させた。濾過し、蒸発させ、カラムクロマトグラフィ(SiO、CHCl)で精製し、無色の油状物として標題化合物(3.25g)を得た。IR(KBr)3090、1590、1501、1425、1363、1251、1212、1182、1141、1111、1065、960、915、882、850、801、786、767、714、653 y 609。M/Z(IQ、NH)356[M+(81Br)53%]354[M79Br)63]223[M−SOCF81Br)63]y 221[M−SOCF79Br)100]
【0046】
<実施例2:2,4,6−トリス[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−1,3,5,2,4,6−トリオキサトリボリナンの調製>
n−BuLi(ヘキサン中2.5M、9ml、22.4mmol)を、3−(1−アダマンチル)−1−ブロモ−4−メトキシベンゼン(6g、18.7mmol)のTHF(90ml)中の溶液に、−78℃で10分間、不活性雰囲気下で添加した。反応混合物を1時間、同じ温度で撹拌し、その間、白い沈殿物が形成された。沈殿物にB(O−i−Pr)(15ml、65.4mmol)を−78℃で添加し、溶解させた。−78℃で1時間撹拌させた後、反応混合物を室温にし、更に16時間撹拌した。次に、混合物を0℃に冷却し、HO(6ml)及びHCl(6ml、2M)を添加した。5分後に、HCl(120ml、2M)を再度添加し、10分間に激しく撹拌した。最後に、AcOEt(3×100ml)で抽出した。全ての有機相をNaSO4で乾燥させ、濾過し、蒸発乾燥させた後、黄色の固体として粗3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニルホウ酸を得た(6.46g)。若干の三量体を含有していた。得られた固体をヘキサン(60ml)に懸濁し、得られた懸濁液を50℃で30分間加熱した。次に、懸濁液を室温に冷却し、濾過し、固体をヘキサン(30ml)で洗浄した。真空乾燥した後、標題化合物が白色固体として得られ(5.53g)、それを事前精製を行わずに以下のスズキカップリングに供した。IR(KBr)3228、2902、2846、1597、1453、1400、1339、1281、1235、1181、1138、1100、1022、820、758 y 724。H RMN(400MHz、CDCl)8,15(s、1H)8,05(d、J=8.4Hz、1H)7,00(d、J=8,4Hz、1H)3,92(s、3H)2,21(s、6H)2,10(s、3H)y 1.82(s、6H)。
【0047】
<実施例3:[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル1−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナンの調製>
2,4,6−トリス[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−1,3,5,2,4,6−トリオキサトリボリナン(1g、3.73mmol)及び2,2−ジメチル−プロパン−1,3−ジオール(388mg、3.73mmol)のトルエン(10ml)中の溶液を、Dean−Starkシステムを用い、不活性雰囲気下で6時間還流加熱した。トルエンを減圧蒸発させ、シクロヘキサン(2ml)を添加した。溶液を10分間還流加熱した後、室温に冷却し、濾過し、標記生成物を白色固体(904mg、68%)として得、更に事前精製をせずに以下のスズキカップリングに供した。IR(KBr)3217、2958、2900、1596、1477、1416、1377、1310、1283、1233、1177、1136、1100、1032、990、816、694、676 y 633。M/Z(エレクトロスプレー)355(M)。
【0048】
<実施例4:6−[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル1−2−ブロモナフタレンの調製>
3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニルホウ酸(150mg、0.32mmol)、6−ブロモ−2−ナフタレニル トリフルオロメタンスルホネート(93mg、0.26mmol)、KPO(222mg、1.05mmol)、KBr(34mg、0.29mmol)及びTHF(2ml)をSchlenk管に添加した。次に、反応混合物から遊離酸素を除去した(3回の凍結/解凍サイクル)。次に、Pd(PPh(15mg、0.013mmol)を添加し、混合物から再び遊離酸素を除去した(2回の凍結/解凍サイクル)。18時間還流加熱した後、混合物を室温にし、CHCl(5ml)で希釈した。溶液をセライトで濾過し、CHCl(2×5ml)で洗浄した。全ての有機相を蒸発させ、得られた残余物をCHCl(5ml)に再溶解させ、HO(2×5ml)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥させ、蒸発乾固の後、粗製の油状物を得(97mg)、更に還流しながら最小量のトルエンを用いて再結晶させた。標題化合物を淡黄色の粉末として得た(68mg、58%)。IR(KBr)2900、2847、1600、1489、1456、1442、1262、1237、1178、1142、1103、1061、1026、877、809 y 470。IWZ(El)448[M81Br)76%]y 446[M79Br)100]
【0049】
<実施例5:6−[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル1−2−ブロモナフタレンの調製>
2,4,6−トリス[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−1,3,5,2,4,6−トリオキサトリボリナン(151mg、0.56mmol)、6−ブロモ−2−ナフタレニルトリフルオロメタンスルホネート(100mg、0.28mmol)、KPO(239mg、1.13mmol)、THF(2ml)及びHO(0.4ml)をSchlenk管に添加した。次に、反応混合物から遊離酸素を除去した(3回の凍結/解凍サイクル)。次に、Pd(PPh(16mg、0.014mmol)を添加し、混合物から再び遊離酸素を除去した(2回の凍結/解凍サイクル)。15時間還流加熱した後、まだ熱いうちに混合物をトルエン(5ml)で希釈した。溶液をセライトで濾過し、高温のトルエン(2×5ml)で洗浄した。全ての有機相を加熱したHO(2×5ml)で洗浄した。有機相を蒸発乾燥させ、粗製の油状物(201mg)を得、更に最小量のトルエン(1.2ml)で還流して再結晶化させ、淡黄色の粉末として標題化合物(107mg、85%)を得た。分光測定データは、実施例4のデータと一致した。
【0050】
<実施例6:6−[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−2−ブロモナフタレンの調製>
[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナン(100mg、0.28mmol)、6−ブロモ−2−ナフタレニルトリフルオロメタンスルホネート(67mg、0.19mmol)、KPO(160mg、0.75mmol)、THF(2ml)及びHO(0.4ml)をSchlenk管に添加した。次に、反応混合物から遊離酸素を除去した(3回の凍結/解凍サイクル)。次に、Pd(PPh(11mg、0.009mmol)を添加し、混合物から再び遊離酸素を除去した(2回の凍結/解凍サイクル)。17時間還流加熱した後、まだ熱いうちに混合物をトルエン(5ml)で希釈した。溶液をセライトで濾過し、高温のトルエン(2×5ml)で洗浄した。全ての有機相を加熱したHO(2×5ml)で洗浄した。有機相を蒸発乾燥させ、粗製の油状物(59mg)を得、更に最小量のトルエン(0.55ml)で還流して再結晶化させ、淡黄色の粉末として標題化合物(20mg、24%)を得た。分光測定データは、実施例4のデータと一致した。
【0051】
<実施例7:6−[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル1−2−ブロモナフタレンの調製>
2,4,6−トリス[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−1,3,5,2,4,6−トリオキサトリボリナン(187mg、0.70mmol)、2,6−ジブロモナフタレン(100mg、0.35mmol)、KPO(296mg、1.4mmol)、THF(2ml)及びHO(0.4ml)は、Schlenk管に添加した。次に、反応混合物から遊離酸素を除去した(3回の凍結/解凍サイクル)。次に、Pd(PPh(20mg、0.017mmol)を添加し、混合物から再び遊離酸素を除去した(2回の凍結/解凍サイクル)。15時間還流加熱した後、まだ熱いうちに混合物をトルエン(5ml)で希釈した。混合液をセライトで濾過し、高温のトルエン(2×5ml)で洗浄した。全ての有機相を加熱したHO(2×5ml)で洗浄した。有機相を蒸発乾燥させ、粗製の油状物(128mg)を得、更に最小量のトルエン(0.75ml)で還流して再結晶化させ、淡黄色の粉末として標題化合物(39mg、25%)を得た。分光測定データは、実施例4のデータと一致した。
【0052】
<実施例8:6−[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−2−ブロモナフタレンの調製>
常圧下及び−78℃において、t−BuLi(159μl、1.4M、0.22mmol)を、滴下して3−(1−アダマンチル)−1−ブロモ−4−メトキシベンゼン(50mg、0.16mmol)及び無水THF(1ml)の混合物へ添加し、混合液を1時間撹拌した。その後、反応液を室温にし、ZnCI(21mg、0.16mmol)の無水THF(0.4mL)中の溶液を添加し、更に1時間撹拌した。次に、6−ブロモナフタレニルトリフルオロメタンスルホネート(40mg、0.13mmol)、Pd(PPh(9mg、0.008mmol)及び無水THF(0.2ml)の混合溶液を添加し、反応液を16時間室温に維持した。最後に、反応液をHCl(1M)で中和し、EtO(3×2ml)で抽出した。有機相を飽和NaCl(3×3ml)水溶液及びHO(3×3ml)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、蒸発乾燥させた。黄色の固体状の粗生成物(58mg)が得られ、更に最小量のトルエン(0.2ml)で還流させ、再結晶化させ、淡黄色の粉末として標題化合物(20mg、29%)を得た。分光測定データは、実施例4のデータと一致した。
【0053】
<実施例9:アダプレネの調製>
THF(1ml)中の6−[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−2−ブロモナフタレン(50mg、0.11mmol)の混合物をSchlenk管に添加し、完全に溶解するまで加熱した。次に、NaH(4,5mg、鉱油中60%分散、0.11mmol)をアルゴン雰囲気下、室温で添加し、当該混合液を10分間撹拌した。得られた混合液を−60℃に冷却し、t−BuLi(ペンタン中1.7M、0.22mmol)を30分間にわたり滴下して添加した。次に、反応液に同じ温度でCO(無水ガス)を1時間にわたり連続供給した。COの連続供給をしながら30分間かけて反応液を室温にした後、混合液をHCl水溶液(5ml、2M)で希釈し、10分間激しく撹拌した。得られる混合物をCHCl(3×5ml)で抽出し、全ての有機相をNaSOで乾燥蒸発させ、粗製の油状のアダプレネを得た。
【0054】
得られた粗製の油状物をジクロロメタン(DCM)(3mL)及びHO(3mL)に溶解させ、NaOH(75μL、1当量、1.5M)を添加した。混合物を55℃に加温し、20分間還流させた。次に、HO(2×3mL)で抽出を行った。水性相をDCM(2×3mL)で洗浄した。DCM(3mL)を再び添加し、HCl(1M)を用いて混合液をpH=3〜4に酸性化し、10分間還流しながら撹拌した。最後に、相を分離させ、水性相をDCM(2×3mL)で抽出した。全ての有機相をNaSOで蒸発乾燥させ、アダプレネ(19mg、41%)を得た。
【0055】
<実施例10:アダプレネの調製>
6−[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−2−ブロモナフタレン(50mg、0.11mmol)のTHF(1ml)中の混合液をSchlenk管に添加し、完全に溶解するまで加熱した。次に、NaH(4,5mg、鉱油中60%分散、0.11mmol)をアルゴン雰囲気下、室温で添加し、混合液を10分間撹拌した。溶液を−40℃に冷却し、n−BuLi(139.5μlヘキサン中1.6M、0.22mmol)を滴下して30分間にわたり添加した。次に、反応液に同じ温度でCO(無水ガス)を1時間にわたり連続供給した。COの連続供給をしながら30分間かけて反応液を室温にした後、混合液をHCl水溶液(5ml、2M)で希釈し、10分間激しく撹拌した。得られる混合物をCHCl(3×5ml)で抽出し、全ての有機相をNaSOで乾燥蒸発させ、粗製の油状のアダプレネを得た。実施例8と同様に粗製の油状物を精製した。白色固体として15mgのアダプレネ(30%)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物又はその薬理学的に許容できる塩の調製方法
【化1】

(式中、Wは−CH−、−O−及び−SO−からなる群から選択されるビラジカルであり、R及びRは同じ又は異なる基であり、独立に水素、ハロゲン及び(C−C)−アルキル基からなる群から選択され、Rは、ヒドロキシル、アシル、アミド基、ハロゲン、1つ以上のヒドロキシル基又はアシル基によって任意に置換されてもよい(C−C)アルキル基、及び任意に1つ以上のヒドロキシル基、(C−C)−アルコキシル基又はアミドにより置換されてもよく、及び/又は1つ以上の酸素原子によって任意に中断されてもよい(C−C)−アルコキシル基からなる群から選択される基であり、Rは水素、ヒドロキシル基、(C−C)−アルキル及び(C−C)−アルコキシルからなる群から選択される基であるか、又は、R及びRは共にビラジカル−OCHO−を形成し、Rは水素、(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシル及びハロゲンからなる群から選択される基であり、Sは、以下の式から選択される基であり、
【化2】

式中、Rは水素、(C−C)−アルキル及びハロゲンから選択される基であり、Rは水素、ヒドロキシル基及びハロゲンから選択される基であり、Vはビラジカル−CH−でありV’はO原子であるか、又は、VはN原子でありV’はビラジカル−NH−である)
であって、式(II)の化合物
【化3】

(式中、Uは、以下の式から選択される基であり、
【化4】

式中、Xは、メタル化/カルボキシル化の実施に適する離脱基であり、W、V、V’、R、R、R、R、R、R及びRは式(I)の化合物において定義したのと同じ意味を有する)
を、メタル化剤を使用してメタル化し、更に二酸化炭素で処理することを含んでなるカルボキシル化反応を実施し、更に任意に酸処理を実施し、当該酸処理の後、得られた化合物を任意にその薬理学的に許容できる塩に変換させる工程を含んでなる方法。
【請求項2】
式(I)の化合物が式(Ia)の化合物であって、式(II)の化合物が式(IIa)の化合物
(式中、Xがメタル化/カルボキシル化の実施に適する離脱基である)
である、請求項1記載の調製方法。
【化5】

【化6】

【請求項3】
XがCl、Br及びIからなる群から選択されるハロゲンである、請求項1又は2記載の調製方法。
【請求項4】
前記ハロゲンがBrである、請求項3記載の調製方法。
【請求項5】
前記メタル化剤が(C−C)−アルキルリチウム又は(C−C)−アルキルマグネシウムである、請求項1から4のいずれか1項記載の調製方法。
【請求項6】
前記メタル化剤が(C)−アルキルリチウムである、請求項5記載の調製方法。
【請求項7】
請求項1記載の式(II)の化合物の調製方法であって、式(III)の化合物と、2,4,6−トリス[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−1,3,5,2,4,6−トリオキサトリボリナン又は式(IV)の化合物のいずれかをカップリング反応させることを含んでなる方法。
【化7】

(式中、U、W、R、R、R、R、Rは上記の定義と同じ意味を有し、Yはカップリングの実施に適する離脱基であり、Rは式のMgZ、ZnZ及び以下の群から選択される基であり、
【化8】

式中、ZはCl及びBrから選択されるハロゲンであり、T及びTはヒドロキシル基、(C−C)−アルコキシル基及びフェノキシ基からなる群から各々独立に選択され、最後の基は(C−C)−アルコキシル基、(C−C)−アルキル基又はハロゲンで任意に置換されてもよいか、又は、T及びTはホウ素原子と共に以下から選択される環状構造を形成してもよく、
【化9】

Mが(CH、(CHCR(CH及びCR(CHCRからなる群から選択され、nは2から4の整数であり、r及びsは0から4の整数であり、但しr及びsが両方とも0でなく、tは0から1の整数であり、R及びRは水素、(C−C)−アルキル、フェニル及び一置換若しくは二置換フェニル基(当該置換基はハロゲン、(C−C)−アルキル及び(C−C)−アルコキシル基である)からなる群から各々独立に選択される。)
【請求項8】
式(II)の化合物が式(IIa)の化合物であり、前記カップリング反応が、式(IIIa)の化合物と、2,4,6−トリス[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−1,3,5,2,4,6−トリオキサトリボリナン又は式(IVa)の化合物のいずれかとの間で行われ、Rが請求項7の記載のそれと同じ意味を有する、請求項7記載の調製方法。
【化10】

【請求項9】
YがCl、Br、Iから選択されるハロゲン、式−OSOのスルホネートから選択され、式中、RがCF、(C−C)−アルキル基、フェニル基、並びに(C−C)−アルキル基、ハロゲン及びニトロ基から選択される基で一置換若しくは二置換されてもよいフェニルから選択される基である、請求項7又は8記載の調製方法。
【請求項10】
前記ハロゲンがBrである、請求項9記載の調製方法。
【請求項11】
前記スルホネートが式OSOCFのトリフルオロメタンスルホネートである、請求項9記載の調製方法。
【請求項12】
式(IIIa)の化合物を、2,4,6−トリス[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−1,3,5,2,4,6−トリオキサトリボリナン、又は、3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニルホウ酸、[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナン及び3−(1−アダマンチル)−4−メトキシベンゼン塩化亜鉛から選択される式(IVa)の化合物とカップリングさせる、請求項8から11のいずれか1項記載の調製方法。
【請求項13】
前記カップリングが、遷移金属化合物の存在下で実施される、請求項7から12のいずれか1項記載の調製方法。
【請求項14】
前記遷移金属化合物がパラジウム化合物及びニッケル化合物から選択される、請求項13記載の調製方法。
【請求項15】
前記遷移金属化合物がテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)である、請求項14記載の調製方法。
【請求項16】
前記カップリングが、2,4,6−トリス[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−1,3,5,2,4,6−トリオキサトリボリナン又は式(IV)の化合物(Rが以下の式で表される基
【化11】

で表され、式中、T及びTは請求項7で定義したそれらと同じ意味を有する)
を用いて行われ、前記カップリングがアルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属リン酸塩からなる群から選択される塩基の存在下で実施される、請求項15記載の調製方法。
【請求項17】
更に、請求項1から9のいずれか1項記載の方法により、式(II)の化合物を、式(I)の化合物及び、任意に、その薬理学的に許容できる塩へ転換する工程を含んでなる、請求項7から16のいずれか1項記載の調製方法。
【請求項18】
式(IIa)の化合物。
【化12】

(式中、Xはメタル化/カルボキシル化の実施に適する離脱基である。)
【請求項19】
XがCl、Br及びIから選択される、請求項18記載の化合物。
【請求項20】
XがBrである、請求項19記載の化合物。

【公表番号】特表2009−517456(P2009−517456A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542929(P2008−542929)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【国際出願番号】PCT/IB2006/054547
【国際公開番号】WO2007/063522
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(508161894)フィノルガ ソシエテ パル アクションス シンプリフィ (2)
【Fターム(参考)】