説明

1つ以上の鋲留めデバイスを使用してグラフト部材を組織に固定するためのシステム及び方法

本実施形態は、1つ以上の鋲留めデバイスを使用して組織を修復するためのシステム及び方法を提供している。1つの実施形態では、本システムは、グラフト部材と、鋲留めデバイスの少なくとも一部分を包囲するように構成されている少なくとも1つの保護部材と、を備えている。保護部材は、限定するわけではないが、内部空間を形成しているエンクロージャを有するポケット、材料の栓、又は障壁層を含むことができる。グラフト部材を組織に結合するべく少なくとも1つの鋲留めデバイスが配備されるとき、鋲留めデバイスの少なくとも一部分が保護部材によって包囲され、鋲留めデバイスの露出が低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2009年5月14日出願の「1つ以上の鋲留めデバイスを使用してグラフト部材を組織に固定するためのシステム及び方法」という名称の米国仮特許出願第61/178,234号の優先権の恩典を主張し、同仮出願の開示の全体を参考文献として援用する。
【0002】
本発明は、概括的には医療デバイスに、より厳密にはグラフト部材を組織に固定するための器械及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
組織又は体壁の穿孔は、意図的に形成されることもあれば、偶発的に形成されることもある。例えば、重い物の持ち上げ、咳、排便又は排尿中に加えられるいきみ、腹腔の体液、又は他の理由により、偶発的な腹部前壁ヘルニアが腹壁に形成されることがある。意図的な穿孔は、例えば、経管腔的処置の様な外科的処置中に形成されることがある。経管腔的処置では、内視鏡の様な1つ以上の器具が、胃壁の様な臓器壁を貫いて挿入されるかもしれない。経管腔的処置中、内臓壁の穿孔を閉合するのに、閉合器具が使用されることがある。穿孔を備える構造によっては、穿孔を的確に閉合し、体液の漏出を防ぐのが難しいこともある。
【0004】
穿孔を密閉する試みは、グラフト部材を組織に結合することによって行われてきた。例えば、ヘルニア修復時、メッシュ又はパッチの様なグラフト材料を、穿孔を覆うように配置することができる。グラフト材料は穿孔と完全に重なり合わされ、グラフト材料の縁部は穿孔を取り囲んでいる組織と部分的に重なり合わされる。次いで、グラフト材料は、穿孔を効果的に覆って密閉することを目的に周辺組織に固定される。
【0005】
グラフト材料を周辺組織に固定するには、縫合糸が、普通は手を使って、周辺組織の全層に通される。腹部前壁ヘルニアの症例では、縫合糸は腹壁の厚さを貫いて通され、次いで縛られ、結紮される。しかしながら、その様な手作業による縫合技法は、時間が掛かったり、施術が難しかったりする。
【0006】
ヘルニア処置中にグラフトを組織に結合するのに様々な鋲留めデバイスが使用されている。一般的に、鋲留めデバイスは、グラフトと組織に係合するか又はグラフトと組織を刺し貫いてそれらを密接に接触した状態に保持することを意図した1つ以上の面を備えている。鋲留めデバイスは縫合ほどの時間を必要としないが、多くの鋲留めデバイスは配備するのがなお難しく、正しい場所に配備されなかった場合、外科的合併症を引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、1つ以上の鋲留めデバイスを使用して組織を修復するためのシステム及び方法を提供する。1つの実施形態では、本システムは、グラフト部材と、鋲留めデバイスの少なくとも一部分を包囲するように構成されている少なくとも1つの保護部材と、を備えている。保護部材は、限定するわけではないが、内部空間を形成しているエンクロージャを有するポケット、材料の栓、又は障壁層を含むことができる。グラフト部材を組織に結合するべく少なくとも1つの鋲留めデバイスが配備されるとき、鋲留めデバイスの少なくとも一部分が保護部材によって包囲され、鋲留めデバイスの露出が低減される。
【0008】
好都合にも、1つ以上の保護部材は鋲留めデバイスの諸部分の露出を低減することができる。例えば、グラフト部材が腹部前壁ヘルニアを治療するのに使用されるとき、保護部材は鋲留めデバイスの腹膜の中への露出を低減又は排除することができ、それにより、腸が誤って引き裂かれるという様な合併症の危険性を低減することができる。
【0009】
保護部材は様々な形状とサイズを備えることができる。例えば、1つの実施形態では、保護部材は、グラフト部材に結合されてグラフト部材の周囲に沿って離間して配置されている複数の個別ポケットを備えている。ポケットはドーム形状のエンクロージャ、長手条片、又は他の構成を備えていてもよい。
【0010】
1つ以上の鋲留めデバイスは、送達状態で挿入器具の中空ルーメンに入れて送達され、複数の技法を使用して配備することができる。例えば、挿入器具を、腹腔鏡装置を通して前進させ、グラフト部材を刺し貫く前にポケットに通す、腹腔鏡的送達技法が使用されてもよい。代わりに、挿入器具を、直接、腹部の皮膚を貫いて前進させ、好適にはポケットを刺し貫かない経皮的送達技法が使用されてもよい。或る別の代わりのやり方として、内視鏡的技法又は開放性技法が使用されてもよい。上記技法の何れにおいても、複数の鋲留めデバイスは、挿入器具の中空ルーメン内に連段式に装填され、次いで、複数の異なった場所でグラフト部材を組織に固定するべく順次に配備されることになる。
【0011】
或る代わりの実施形態では、保護部材はグラフト部材の第2面より遠位に配置されている少なくとも1つの障壁層を備えていてもよい。挿入器具は、鋲留めデバイスを経皮的に送達させるときに、組織及びグラフト部材の少なくとも一部分を刺し貫くが、但し障壁層は刺し貫かないように構成されている尖った先端を備えたものとすることができる。挿入器具が障壁層に接触すると、医師は挿入器具の前進を中止するべき時であると知り、次いで鋲留めデバイスを配備することができる。
【0012】
当業者には、添付図面及び以下の詳細な説明を考察すれば、本発明の他のシステム、方法、特徴、及び利点が明らかであろう、又は明らかになってくるであろう。全てのその様な追加のシステム、方法、特徴、及び利点は、本発明の範囲に含まれ、付随の特許請求の範囲に網羅されるものとする。
【0013】
本発明は、添付図面及び以下の記述を参照することにより、より深く理解することができる。図中の構成要素は、必ずしも縮尺合わせされているわけではなく、むしろ本発明の原理を説明することに重点が置かれている。また、図中、同様の参照番号は、異なった図全部を通して対応する部分を表している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】グラフト部材及び複数の個別ポケットの斜視図である。
【0015】
【図2】腹壁ヘルニアの在る組織に隣接する図1のグラフト部材を示している側面断面図である。
【0016】
【図3】例示としての鋲留めデバイスの斜視図である。
【0017】
【図4】送達形態にある複数の鋲留めデバイスを示している斜視破断図である。
【0018】
【図5】腹壁ヘルニアを治療するのに図3−図4の鋲留めデバイスの1つ以上を配備する場合の例示としての腹腔鏡的配備の一段階を示している側面断面図である。
【図6】上記例示としての腹腔鏡的配備の別の段階を示している側面断面図である。
【図7】上記例示としての腹腔鏡的配備の別の段階を示している側面断面図である。
【0019】
【図8】腹壁ヘルニアを治療するのに図3−図4の鋲留めデバイスの1つ以上を配備する場合の例示としての経皮的配備の一段階を示している側面断面図である。
【図9】上記例示としての経皮的配備の別の段階を示している側面断面図である。
【図10】上記例示としての経皮的配備の別の段階を示している側面断面図である。
【0020】
【図11】ポケットの或る代わりの実施形態の上面図である。
【図12】前記ポケットの代わりの実施形態の側面図である。
【0021】
【図13】一連のポケットを有する別の代わりの実施形態の上面図である。
【0022】
【図14】グラフト部材及びポケットの別の代わりの実施形態の上面図である。
【0023】
【図15】グラフト部材に隣接する障壁層を有する或る代わりの実施形態の側面図である。
【0024】
【図16】実質的にグラフト部材内に形成されている保護部材を有する或る代わりの実施形態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本出願では、「近位」という用語は、概して医療処置中の医師に向かう方向を指し、一方「遠位」という用語は、概して医療処置中の患者の解剖学的構造内の目標部位に向かう方向を指す。よって、デバイス又は身体領域の「近位」部分と「遠位」部分は、処置での進入点(例えば、経皮的対腹腔鏡的)次第で変わり得る。
【0026】
これより図1を参照すると、グラフト部材及び少なくとも1つの保護部材の第1の実施形態が示されている。この実施形態では、保護部材は、少なくとも1つの複合デバイスを受け入れるためのポケットの形をしている。以下に更に説明されている様に、保護部材はポケットを形成している必要はなく、例えば、グラフト部材内か又はグラフト部材に隣接して結合されている材料の栓又は障壁層であってもよい。
【0027】
グラフト部材10は第1面11と第2面12を有している。腹部前壁ヘルニアを治療するのに使用される場合、以下に説明されている様に、第1面11は腹部組織74に隣接して配置され、一方、第2面12は腹膜に面することになる。図1の実施形態では、グラフト部材10は、側面13a−13dによって画定されている四面から成る周囲13を有する略矩形状からなる。しかしながら、グラフト部材10は図14に示されている楕円形の様な他の形状又は組織を覆うのに適した他の如何なる形状であってもよい。
【0028】
図1の実施形態では、複数の保護部材は、グラフト部材10を組織74へ取り付けるのに使用されている鋲留めデバイス又は他の部材を受け入れるための、グラフト部材10に結合されている4つのポケット14a−14dの形で設けられている。この例では、4つのポケット14a−14dのそれぞれは、リム15とエンクロージャ16と内部領域17を含んでいる略ドーム形状の構成となっている。しかしながら、以下に更に説明されているように、ポケットは、単一の矩形又は楕円形の形状をしたポケットや複数の長手条片などを含む別の形状であってもよい。
【0029】
図1のポケット14a−14dは、矩形形状のグラフト部材10の4つの角付近の位置に置かれ、グラフト部材10の第2面12上に配置されている。それぞれのポケット14a−14dのリム15は、グラフト部材10の第2面12に、限定するわけではないが、生体適合性接着剤、熱接合、又は機械的取付装置を含め、如何なる適した技法を使用して結合されていてもよい。
【0030】
ポケット14a−14dは、剛性が所望の用途に基づく範囲にある材料で形成することができる。例えば、以下に図5−図7に関連して説明されている様に、腹腔鏡的送達手法が使用される場合、ポケット14a−14dは、以下に示されている様に挿入器具50の尖った先端52で刺せる材料とすることができる。対照的に、以下に図8−図10に関連して説明されている様に、経皮的送達手法が使用される場合、ポケット14a−14dは、挿入器具50で刺せない材料とすることができ、それにより挿入器具50の尖った先端52が腹膜の中まで前進する可能性を低減又は排除することができる。限定するわけではなく単に例として、ポケット14a−14dは、シリコン、ウレタン、金属、プラスチック、硬質ポリエチレン、コラーゲン材料(架橋結合以外)、生物ポリマー、又は如何なる他の適した材料から形成されていてもよい。
【0031】
更に、ポケット14a−14dは、一時的なポケット保護しか必要とされない事例であって、例えば、鋲留めデバイスが分解吸収性である場合や鋲留めデバイスによる引き裂きが配備中又は配備直後しか懸念されない場合には、分解吸収性ポリマーからなっていてもよい。しかしながら、処置の性質によっては、ポケット14a−14dの永久的な保護又はかなり長期に亘る保護が提供されることもある。
【0032】
随意的に、1つ以上のポケット14a−14dは、グラフト部材10の第2面12に隣接して配置されている基底部材18を備えていてもよい。図1−図2では、ポケット14bはリム15内に形成されている円盤形状の基底部材18を備えている。基底部材18が使用されている場合、当該基底部材18は、鋲留めデバイス及び/又は挿入器具で医師に触覚的フィードバックを提供するように所定レベルの抵抗を与えながら穿通できる半剛性の材料を備えたものであってもよい。更なる選択枝として、1つ以上のポケット14a−14dの内部空間17は、以下に更に説明されている様に、鋲留めデバイスの位置合わせ中及び送達中に医師に触覚的フィードバックを提供するために、シリコンの様な穿通できる物質が充填されていてもよい。
【0033】
グラフト部材10は、穿孔を覆い、且つ腹腔内容物の突出を実質的又は完全に阻止するのに適した如何なる材料であってもよい。1つの実施形態では、グラフト部材10は、インディアナ州ブルーミントンのCook Medical,Inc.社から入手できるSURGISIS(登録商標)BIODESIGN(商標)軟組織グラフトの様なブタ小腸粘膜下組織(SIS)からなっていてもよく、その様な組織は、その3次元細胞外基質(ECM)を介したスマートな又は「現場適合型」の組織再建を提供するものであって、宿主組織細胞及び血管をコロニー形成させるとともに足場となって結合組織及び上皮組織を当該ECM構成要素と一体に成長及び分化させる。グラフト部材10は、幾つもの組織工学製品から作られた1層乃至4層の凍結乾燥軟組織グラフトであろう。再生又は天然由来コラーゲン材料を使用することもでき、その様な材料は少なくとも生体分解吸収性であり、それらが生体再建性で細胞の侵入と内方成長を促して特定の利点を提供する材料と共に用いられれば或る利点がもたらされることになろう。適した生体再建性材料は、向生物性を持つコラーゲンECMによって提供することができ、それには一部の特定の形態では血管由来コラーゲン細胞外基質材料が含まれる。例えば、適したコラーゲン材料には、粘膜下組織、腎被膜、真皮コラーゲン、硬膜、心膜、大腿筋膜、漿膜、腹膜、又は肝臓基底膜を含む基底膜層の様なECMが含まれる。これらの目的に適した粘膜下組織材料には、例えば、小腸粘膜下組織を含む腸粘膜下組織、胃粘膜下組織、膀胱粘膜下組織、及び子宮粘膜下組織が含まれる。グラフト部材10は、生体材料と生体分解性ポリマーの複合材を備えることもできる。更なる詳細はCookらへの米国特許第6,206,931号に見出すことができ、同特許の開示の全体をここに参考文献として援用する。
【0034】
次に図2を参照すると、ポケット14a−14dが結合されているグラフト部材10が、穿孔75を覆うために使用されている。示されている例では、穿孔75は腹壁の組織74に在る腹壁ヘルニアである。説明を目的として腹壁ヘルニアの治療が示されているが、ここに記載されているグラフト部材及び保護部材は、ここに記載されているあらゆる例示としての処置を含め、但しそれらに限定されることなく、広範囲の医療処置で使用することができることが自明であろう。以下に更に詳細に説明されている様に、1つ以上の鋲留めデバイスは、少なくとも部分的に、ポケット14a−14dのうちの1つ以上の内部に配備することができ、ポケット14a−14dは、鋲留めデバイスが誤って腸の様な器官を引き裂くという様な合併症の危険性を低減又は排除することができる。
【0035】
一例として、図1−図2の実施形態では、ポケット14a−14dは、それぞれ、内部空間17内体積を生む高さhと幅wを備えている。内部空間17内体積はその中に配置される鋲留めデバイスの部分より大きく、それにより、以下に図7、図9、及び図10に描かれている様に内部空間17内に鋲留めデバイスの遠位部分を配備することが可能になる。1つの実施形態では、内部空間17は、鋲留めデバイスが完全に配備されたときに、少なくとも30%の空き空間を有しており、即ち、空き空間は鋲留めデバイスで完全に埋め尽くされているのではない。エンクロージャ16内に空き空間の余裕があるおかげで、そこでの鋲留めデバイスの配備が容易になっており、エンクロージャ16が他の点で鋲留めデバイスの妨げとなることはないであろう。
【0036】
図1−図2の実施形態では、ポケット14bはエンクロージャ16の面を貫通形成されている事前形成孔19を備えている。腹腔鏡的手法又は内視鏡的手法では挿入器具50が腹膜からエンクロージャ16を通り且つグラフト部材10を通る方向に進められることから、好適にはこれらの手法が使用される場合には、事前形成孔19はポケット14a−14dの何れか又は全部に設けられていてもよい。事前形成孔19は、腹腔鏡的手法及び内視鏡的手法で挿入器具50が進められる際にそこを通して挿入器具を進めなくてはならないという案内を医師に提供する。しかしながら、事前形成孔19は省略されてもよく、ポケット14a−14dのエンクロージャ16は、単に、挿入器具で刺し貫くことのできる穿通できる層からなっているだけであってもよい。
【0037】
次に図3を参照すると、グラフト部材10及びポケット14a−14dと関連付けて使用することができる鋲留めデバイス20の第1の実施形態が示されている。図示の鋲留めデバイス20は、2009年4月22日出願の米国特許出願第12/428,226号(以下「’226号出願」)に更に詳細に記載されており、同出願をこれにより参考文献としてそっくりそのまま援用する。’226号出願の鋲留めデバイス20は、グラフト部材を組織に結合することができる鋲留めデバイスの一例にすぎず、グラフト部材10及びポケット14a−14dと共に使用することができるが、螺旋状、剛性、半剛性、展開であるもの又は一定の形状を維持するものを含め他の多くの鋲留めデバイスの構成が可能であることを指摘しておく。
【0038】
’226号出願に詳細に記載されている様に、鋲留めデバイス20は、近位端24と遠位端26を有する少なくとも1つの管部材22を備えたものとすることができる。鋲留めデバイス20は、更に近位展開機構32と遠位展開機構42を備えている。図3の実施形態では、近位展開機構32は3つの近位展開部材35−37を備え、一方、遠位展開機構42は3つの遠位展開部材45−47を備えている。図3に示されている様に、近位展開部材35−37は管部材22の近位端24から近位方向に伸びており、一方、遠位展開部材45−47は管部材22の遠位端26から遠位方向に伸びている。図3の実施形態では、デバイスは対称であるため、どちらの端を先頭に挿入器具の中へ装填されてもよい。
【0039】
近位展開部材35−37及び遠位展開部材45−47は、それぞれ、管部材22に対して固定されていてもよい。1つの実施形態では、近位展開部材35−37及び遠位展開部材45−47のそれぞれは別体で個別の要素とすることができる。従って6つの別々の展開部材が提供されていてもよい。具体的には、3つの近位展開部材35−37は、管部材22に、同管部材22の近位端24付近で結合されていてもよい。3つの近位展開部材35−37は、管部材22の近位端24に、接着剤、摩擦嵌め、機械的装置、又は他の適したメカニズム又はプロセスを使用して結合することができる。同様に、3つの遠位展開部材45−47は、管部材22の遠位端26に、接着剤、摩擦嵌め、機械的装置、又は他の適したメカニズムを使用して結合することができる。或る別の実施形態では、6つの個別の展開部材を提供する代わりに3本のワイヤが管部材22全体を通して配置されており、これについては’226号出願に更に説明されている。
【0040】
近位展開部材35−37及び遠位展開部材45−47は、それぞれ、図3に示されている展開した配備形態を備えており、更に、図4に示されている収縮した送達形態を備えている。1つの実施形態では、展開部材35−37及び45−47のそれぞれは、展開状態ではフック状の形態を備えている。例えば、展開部材35−37及び45−47は、展開状態では、約90度から360度にわたる湾曲、更に好適には図3に示されているように約180度の湾曲部を備えることができる。展開部材35−37及び45−47が「後に曲がって」、約180度の湾曲部を備えている場合、近位及び遠位の展開部材の端領域39及び49は、管部材22に実質的に平行な向きに配置されている。更に、端領域39及び49は、図3に示されている様に、展開状態では周方向に互いから離間されている。この形態では、端領域39及び49は、組織又はグラフト材料に係合、把持、穿刺、及び/又は当接するのに巧い具合に適している。
【0041】
更に、鋲留めデバイス20の端領域39と49の間の長手方向距離Lは、望ましいやり方で組織に係合させるために変えられてもよい。例えば、長手方向距離Lは、以下に図7に示されている組織74とグラフト部材10それぞれの厚さtとtを合わせた厚さに実質的に等しいか未満となる寸法とすることができ、それにより組織74とグラフト部材10への所望の圧縮力を提供することができる。’226号出願に更に説明されている様に、鋲留めデバイス20の寸法は、特定の外科的処置、特定の患者の解剖学的構造、及び/又はその他の要因に基づき、特注仕様とすることもできる。
【0042】
展開部材35−37及び45−47は、ニッケル‐チタン合金(ニチノール)の様な形状記憶材料をからなっていてもよい。ニチノールの様な形状記憶材料が採用されている場合、展開部材35−37及び45−47は、或る特定の冷媒体又は温媒体を適用すると図3に示されている事前に設定されている展開状態をとることができるように製造されていてもよい。より具体的には、形状記憶材料には、同材料に以前の形状又は形態を「思い出させ」その形状又は形態に復帰させる実質的に可逆性の相変態をさせてもよい。例えば、ニチノールの場合、オーステナイト相とマルテンサイト相の間の変態は、冷却及び/又は加熱すること(形状記憶効果)によって、又は応力を等温的に印加及び/又は除去すること(超弾性効果)によって起こすことができる。オーステナイトは、特質的には、より強い相であり、マルテンサイトはより簡単に変形させることのできる相である。
【0043】
形状記憶効果の一例では、初期形態がオーステナイト相であるニッケル‐チタン合金を変態温度(M)以下に冷却してマルテンサイト相へ変態させ、次いで第2の形態へ変形させることができる。材料は、もう1つの変態温度(A)へ加熱されると、図3に示されている様に、その初期の既定の形態に自発的に復帰する。一般的に、記憶効果は一方行性であり、つまりは1つの形態からもう1つの形態への自発的な変化は加熱された場合にのみ起こるという意味である。しかしながら、形状記憶材料が加熱された場合同様に冷却された場合にも自発的に形状を変化させる二方向性の形状記憶効果を得ることは可能である。
【0044】
代わりに、展開部材35−37及び45−47は、配備に先立って挿入器具50によって拘束できるように付勢され、配備されると各々の弛緩展開形態に復帰しようとする他の金属及び合金から作られていてもよい。単に一例として、展開部材35−37及び45−47は、ステンレス鋼、コバルト‐クロム合金、アモルファス金属、タンタル、白金、金、及びチタンの様な他の材料からなっていてもよい。展開部材35−37及び45−47は同様に、熱可塑性プラスチック及び他のポリマーの様な非金属材料から作られていてもよい。上で指摘されている様に、展開部材35−37及び45−47は、以下に更に説明されている目的で、組織に係合、穿通、及び/又は当接するのに適した如何なる形状を備えていてもよく、必ずしも図3に描かれている湾曲形状をとる必要はない。
【0045】
図4を参照して、1つ以上の鋲留めデバイス20を、挿入器具50を使用して、患者の解剖学的構造の目標部位へ送達することができる。1つの実施形態では、挿入器具50は、図4に描かれ、また’226号出願に更に説明されている様に、4つの鋲留めデバイス20a−20dの様な複数の異なった鋲留めデバイスを担持することができる。
【0046】
1つの実施形態では、挿入器具50は、図4に示されている様に尖った遠位先端52と中空ルーメン54とを有する針様の本体を備えていてもよい。挿入器具50は、ステンレス鋼又は他の適した如何なる材料から製造されていてもよく、内視鏡超音波(EUS)又はエコー源性の針を備えていてもよい。単に一例として、挿入器具は、何れもノースカロライナ州ウインストン・セーレムのCook Endoscopy社製であるEchoTip(登録商標)超音波針又はEchoTip(登録商標)超内視鏡超音波針を備えていてもよい。
【0047】
挿入器具50の中空ルーメン54は、鋲留めデバイス20の外径より大きい内径を備えるものとすることができる。その結果、1つ以上の鋲留めデバイスを図4に示されている様に送達形態で中空ルーメン54の中へ装填することができる。送達構成では、それぞれの鋲留めデバイス20a−20dの近位展開部材35−37及び遠位展開部材45−47は、実質的に長手方向に向いた、即ち挿入器具50の長手方向軸に沿った向きの外形とされることになる。複数の鋲留めデバイス20a−20dは、挿入器具50の中空ルーメン54の中へ連段式に挿入することができ、それにより図4に描かれている様に1段目の鋲留めデバイス20aの近位展開機構32aが2段目の鋲留めデバイス20bの遠位展開機構42bに当接することになる。
【0048】
図4に示されている様に、スタイレット60を挿入器具50の中空ルーメン54内に、長手方向に動かせるように配置することができる。スタイレット60は、連なりの最後尾の鋲留めデバイス20dの近位展開機構32dに近接して配置されている。使用時は、以下に更に説明されている様に鋲留めデバイス20a−20dのそれぞれの順次配備を容易にするために、スタイレット60を長手方向に固定保持したまま、挿入器具50を近位方向に後退させる。
【0049】
挿入器具50は、図4に示されている様に1つ以上のマーカー56を備えていてもよく、マーカーは挿入器具50の遠位端付近に配置されていてもよい。マーカー56は、例えば、医師が挿入器具50を、図5−図6及び図8−図9に描かれている様に組織74、グラフト部材10、及び/又はポケット14a−14dの中へどれくらい深くまで穿通させたかを見極めることができるように、挿入器具の遠位端の位置確定を容易にするべく蛍光透視法下または他の画像化技法で可視化されるように構成することができる。
【0050】
次に図5−図7を参照すると、以上に記載されている1つ以上の鋲留めデバイス20は、腹壁の組織74の穿孔75の治療を容易にするために、グラフト部材10及びポケット14a−14dと共に使用されている。図5−図7の例では、腹腔鏡的技法が採用されており、当技法によって、ヘルニア部位にアクセスするのに複数の比較的小さい切開が作成される。第1の腹腔鏡装置(図示されず)を使用して腹膜を視覚化し、その間に第2の腹腔鏡装置90を使用して挿入器具50を送達するようにしてもよい。
【0051】
腹壁ヘルニア修復の最初の段階は、知られている技法を使用して施行することができる。1つの例示としての技法では、複数の縫合糸(図示せず)を、グラフト部材10に、好適にはグラフト部材10の4つの側面13a−13dによって画定されている周囲13に沿って、結び付ける。グラフト部材10は、既知の方法を使用して、丸められ、そして腹膜の中へ挿入されてもよい。腹膜に挿入されたら、医師は、第1の腹腔鏡装置を使用してグラフト部材10を視覚化することができ、そうしてグラフト部材10が広げられる。腹腔鏡の代わりに別の適した視覚化装置が使用されてもよい。続いて、1つ以上の針を経皮的に腹膜に向けて前進させ、1つ以上の把持装置を、針を通して前進させることができる。把持装置はグラフト部材10に取り付けられている複数の縫合糸を把持することができる。次いで、縫合糸を張って、広げられたグラフト部材10を組織74に向かう方向に引っ張り、グラフト部材10が処置中に所定の場所に保持されるようにする。
【0052】
次に図5を参照すると、グラフト部材10が穿孔75を覆うように設置された後、腹腔鏡装置90が腹膜内の所望の位置まで操縦されている。腹腔鏡装置90の遠位端は、図5に示されている様に、グラフト部材10に対向して位置付けられる。次の段階では、挿入器具50を腹腔鏡装置90のルーメンを通して遠位方向に前進させ、第1のポケット14aのエンクロージャ16を刺し貫いて、第1のポケット14aの内部領域17の中へ入れる。上述の様に、エンクロージャ16は何れも、挿入器具50の直径程度の大きさである挿入器具50のための事前形成案内として使用することのできる事前形成孔19を備えていてもよい。
【0053】
次に、図5に描かれている様に、挿入器具50を更に前進させてグラフト部材10を刺し貫き、更に穿孔75の周囲周りの第1の場所で組織74の中へ少なくとも途中まで穿刺する。医師は、腹膜に設置された腹腔鏡又は内視鏡、或いは別の適した視覚化デバイスを使用して、ポケット14a−14dの場所を識別することができる。
【0054】
この例では、挿入器具50は4つの連続する鋲留めデバイス20a−20dを担持しており、それらデバイスは先に図4に関連して説明されている様に、挿入器具50の中空ルーメン54内に配置されている。鋲留めデバイス20a−20dを収縮送達状態にさせたまま、挿入器具50の尖った先端52を組織74の中へ所定の深さまで前進させる。図4のマーカー56は、挿入器具50を組織74の中へどれほど深く穿通させたかを見極めるのに役立つ。また、穿通できる基底部材18が提供されている場合、或いは上述の様にシリコンの様な物質が内部空間17内に配置されている場合には、何れも、医師には挿入器具50の位置付けを容易にする触覚的フィードバックが提供される。
【0055】
次の段階では、図4のスタイレット60を挿入器具50に関して固定保持し、その間に挿入器具50を近位方向に、即ち組織74から遠ざかり腹膜に向かう方向に後退させる。これにより、最遠位の鋲留めデバイス20aの遠位展開部材45−47が、図6に描かれている様に挿入器具50の尖った先端52より遠位に伸ばされる。遠位展開部材45−47は、もはや挿入器具50によって半径方向に拘束されなくなると、組織74に係合、穿通、及び/又は当接することのできる各自の既定の展開形態をとる。挿入器具50を鋲留めデバイス20aに関して近位方向に更に後退させてゆくと、近位展開部材35−37が、図7に示されている様に、もはや半径方向に拘束されなくなって各自の既定の展開形態をとる。
【0056】
注目すべきこととして、図5−図7の腹腔鏡的技法を使用した場合、医師は、確実に、近位展開部材35−37がポケット14a−14d内の正確な場所に配備され、挿入器具50から出されたらグラフト部材10に係合することになるように、好適にはマーカー56の支援を受けながら、遠位展開部材45−47を組織74内の所定の距離に位置付けることになる。好適には、挿入器具50内の近位展開部材35−37の場所を識別するのに少なくとも1つの特定のマーカー56aが使用される。従って、図5に示されているように、マーカー56aがポケット14aの内部空間17の中又は内部空間付近に位置付けられたら、医師は、鋲留めデバイス20の配備を開始して近位展開部材35−37を内部空間17内に接地させるべきであることを知る。
【0057】
近位展開部材35−37は、展開形態では、グラフト部材に係合、穿通、及び/又は当接することができ、随意的には組織74の中へ穿通していてもよい。この様にして、鋲留めデバイス20aは、グラフト材料10を組織74に押し当てて固定するのを助ける。具体的には、近位展開部材35−37の実質的に180度のフック状の形態がグラフト部材10を遠位方向に組織74に向かって推す。
【0058】
1段目の鋲留めデバイス20aが配備された後、穿孔75の周囲周りに別の鋲留めデバイスを配備するために挿入器具50の位置を移動する。後続のそれぞれの鋲留めデバイス20b−20dは、鋲留めデバイス20aと同じやり方で配備することができる。この様にして、鋲留めデバイス20a−20dはグラフト部材10を穿孔75の周囲周りに固定することができる。自明である様に、使用される鋲留めデバイスはより多くても少なくてもよく、鋲留めデバイスの位置付けは、穿孔75を実質的に密閉するためにグラフト部材10の組織74への固定が最適化されるように変えられてもよい。
【0059】
好適にも、ポケット14a−14dは、グラフト部材10が腹部組織74に結合されるときに鋲留めデバイス20a−20dのどの部分についても腹膜内への露出を実質的に低減又は排除する。鋲留めデバイス20が腹膜の中へ露出することが低減又は排除されるために、鋲留めデバイスが誤って腸を引き裂くという様な合併症の危険性は低減される。
【0060】
次に図8−図10を参照すると、腹壁ヘルニアの治療のための経皮的手法が記載されている。経皮的手法は、以上に図5−図7に記載されている腹腔鏡的手法と似ているが、幾つかの注目すべき相違点がある。第1に、経皮的手法では、挿入器具50は腹部組織74からグラフト部材10へ向かう方向に進められる。また、挿入器具50は直接患者の腹部の皮膚を貫いて進められる。
【0061】
経皮的手法では、図8に示されている様に、挿入器具50を、直接、患者の腹部の皮膚を貫き、組織74を貫き、グラフト部材10より僅かに遠位まで前進させて、少なくとも部分的に第1のポケット14aの中へ進入させる。挿入器具50の尖った先端52が第1のポケット14aのエンクロージャ16に接触し、それによって尖った先端52が図8に描かれている様に第1のポケット14aの内部空間17内にあることを医師に知らせる。挿入器具50を最適に視覚化するために、腹腔鏡的視認装置を腹膜に配置してもよいし、又は内視鏡を経管腔的にポケット14a−14dの近傍まで前進させてもよい。代わりに、挿入器具50、特にマーカー56を、螢光透視法又は他の適した技法を使用して視認することもできる。
【0062】
次の段階では、図4のスタイレット60を挿入器具50に関して固定保持し、その間に挿入器具50を近位方向に、即ち腹膜から遠ざかり組織74に向かう方向に後退させる。これにより、最遠位の鋲留めデバイス20aの遠位展開部材45−47が、図9に描かれている様に挿入器具50の尖った先端52より遠位に伸ばされる。遠位展開部材45−47は、もはや挿入器具50によって半径方向に拘束されなくなると、グラフト部材10に係合、穿通、及び/又は当接することのできる、そして随意的には組織74の中へ穿通することのできる各自の既定の展開形態をとる。挿入器具50を鋲留めデバイス20aに関して近位方向に更に後退させてゆくと、近位展開部材35−37が、図10に示されている様に、もはや半径方向に拘束されなくなって各自の既定の展開形態をとる。近位展開部材35−37は、展開形態では、組織74に係合、穿通、及び/又は当接することができる。この様にして、鋲留めデバイス20aは、グラフト材料10を組織74に押し当てて固定するのを助け、具体的には、遠位展開部材45−47の実質的に180度のフック状の形態がグラフト部材10を組織74に向かう方向に推す。
【0063】
注目すべきこととして、近位展開部材35−37がグラフト部材10に係合する図5−図7の腹腔鏡的手法とは反対に、図8−図10の経皮的手法では、逆の方向に、挿入器具が進入し、鋲留めデバイス20を配備するので、遠位展開部材45−47がグラフト部材10に係合する。更に、以上に概説されている様に、1段目の鋲留めデバイス20aが配備された後、穿孔75の周囲周りに追加の鋲留めデバイスを配備するために挿入器具50の位置を移動する。
【0064】
図8−図10の経皮的手法では、挿入器具50が腹膜の中まで進められてしまう可能性を低減又は排除するための事前形成孔19は省略されている。むしろ、経皮的手法を用いた場合、ポケット14a−14dのエンクロージャ16は中実の比較的剛性のある材料を備えるか、又は挿入器具50で穿通できない障壁を有することができる。従って、挿入器具50がエンクロージャ16に接触したら、医師は挿入器具50の前進を中止するべき時であることを知る。
【0065】
更に別の技法では、腹壁ヘルニアの治療のための内視鏡的手法を使用することができる。内視鏡的手法は、以上に図5−図7に記載されている腹腔鏡的手法に似ているが、但し、腹腔鏡装置90の代わりに内視鏡が使用され、患者の皮膚には目に見える切開は形成されない。具体的には、内視鏡を、消化管の様な身体管腔を通して前進させながら消化管を貫くアクセス孔を作成して、腹腔側からの腹壁ヘルニアへのアクセスを得る。次いで、挿入器具50の様な1つ以上の構成要素を、内視鏡の作業ルーメンを通して前進させる。挿入器具50の遠位端は、内視鏡の光学素子を介して視認することができる。光源と接眼レンズを使用した適切な可視化の下に、医師は挿入器具50を使用して複数の鋲留めデバイスを1度に1つずつ配備する。この内視鏡的手法が採用される場合、挿入器具50は、後で消化管のアクセス孔を閉鎖するために追加の鋲留めデバイス20を担持していてもよい。
【0066】
次に図11−図14を参照すると、本図には保護部材の例示としての変化形態が示されている。図11−図12には、単一のポケット104が、グラフト材料10の第2面12の周囲13に沿って、好適には4つの側面13a−13dによって画定されている周囲13から内方に一定の距離を空けて配置されている。ポケット104は、高さhと幅wを備えており、それらは上述のポケット14a−14dの様に鋲留めデバイスの少なくとも一部分を受け入れるサイズとすることができる。図11−図12の実施形態では、複数の鋲留めデバイスは、単一ポケット104内の離間されている場所に順次配備することができる。
【0067】
図13では、複数のポケット114a−114cは、以上に記載のやり方で1つ以上の鋲留めデバイスの少なくとも一部分を受け入れるサイズの高さと幅を有する長手方向条片の形で提供されている。図14では、代わりのグラフト部材10’は楕円形の形状を備えており、単一ポケット124はグラフト材料10’の第2面12’上に、好適には周囲13’から内方に配置されている楕円形の形状を備えている。
【0068】
図1及び図11−図14の実施形態では、内部空間を形成しているエンクロージャを有するポケットに代わるものとして、保護部材は、配備された鋲留めデバイス20の諸部分を包囲する材料の栓を備えることができる。例えば、保護部材は、ドーム形状のエンクロージャ16の代わりに、グラフト部材10の第2面12に接着されているドーム形状の栓を備えていてもよいし、又は長手方向の条片114a−114cを有するポケットの代わりに、長手方向の材料の栓がグラフト部材10の第2面12上に配置されていてもよい。長手方向の栓は、シリコンか、又は図1及び図11−図14に記載されているポケットと実質的に同じ機能を果たすように、具体的には鋲留めデバイスの少なくとも一部分を包囲し保護するように構成されている別の適した材料で、形成することができる。
【0069】
次に図15を参照すると、図8−図10の経皮的送達手法と共に使用するのに適した或る代わりのシステムが記載されている。図15では、保護部材はグラフト部材10の第2面12より遠位に配置されている少なくとも1つの障壁層135を備えている。以上に説明されている経皮的送達では、挿入器具50は、組織74及びグラフト部材10の少なくとも一部分を刺し貫くように構成されている尖った先端52を備えている。しかしながら、図15の実施例では、尖った先端52は障壁層135を刺し貫くことはできない。障壁層135は、挿入器具50で実質的に又は全く穿通できない材料からなっていてもよいが、当該材料はグラフト部材10の送達時に障壁層135が丸められるようになっている。単に一例として、障壁層135は、比較的薄くて剛性のあるポリエチレン又はその他の生体適合性材料であってもよい。また、障壁層135は、図15に描かれているように、グラフト部材10の第2面12全体を実質的に覆う材料の単一シートであってもよい。
【0070】
この例では、医師は、経皮的に、挿入器具50を遠位方向に腹膜に向けて前進させ、ひとたび、挿入器具50の尖った先端52が障壁層135に接触したことによる抵抗に遭遇したら、医師は、挿入器具50が以上に図8−10に説明されている様に鋲留めデバイスの配備手順を開始するのに適した深さにあると知ることができる。更に、1つ以上の障壁層135は、以上に記載されているポケット14a−14d、104、114a−114c、又は124と共に使用することもでき、その場合には、障壁層135は、挿入器具が腹膜に到達する可能性を低減するべく少なくとも1つのポケット14a−14d、104、114a−114c、又は124のエンクロージャ16より遠位に配置することができる。
【0071】
次に図16を参照すると、更に別の実施形態では、保護部材は実質的にグラフト部材内に形成されている。この例では、代わりのグラフト部材210は、第1面211と第2面212を有している。保護部材214は、第1側壁215及び第2側壁215に加え端壁217を備えている。3つの壁215−217は、鋲留めデバイスの一部分を受け入れるための、図16に描かれている様に一方の側が開口している部分的な矩形形状を形成している。壁215−217の間に形成されている内部空間218は、グラフト材料又は物質219を備えていてもよい。物質219は、鋲留めデバイス及び/又は挿入器具で医師に触覚的フィードバックを提供するように所定レベルの抵抗を与えながら穿通できるものであってもよい。1つの例として、物質219はシリコンからなっているが、他の適した材料が使用されていてもよい。
【0072】
第1側壁215及び第2側壁216と端壁217は、剛性又は半剛性の材料で形成されていてもよく、例えば、縫合糸を使用してグラフト部材210に結合されていてもよい。保護部材214は実質的に第1面211と第2面212の間のグラフト部材210内に形成されている。
【0073】
使用に際し、医師は、経皮的に、挿入器具50を、遠位方向に腹膜に向けて、組織を貫き、グラフト部材210に結合されている第1側壁215と第2側壁216の間へ前進させる。ひとたび、挿入器具50の尖った先端52が保護部材214の端壁217に接触することによる抵抗に遭遇したら、医師は、挿入器具50が以上に図8−図10に説明されている鋲留めデバイスの配備手順を開始するのに適した深さにあると知ることができる。配備されると、鋲留めデバイスの少なくとも一部分が保護部材214の内部空間217内に配置されるが、空間内部にはグラフト部材210の一部又は物質219が配置されていて、それによりグラフト部材210を組織に固定し、鋲留めデバイスを部分的に包囲する。
【0074】
代わりに、剛性又は半剛性の壁215−217は省略され、保護部材214がシリコンの様な材料の中実栓を取り巻いていてもよい。この実施形態では、材料の中実栓は、実質的に第1面211と第2面212の間のグラフト部材210内に配置されていて、穿通可能でありながらなお確実に鋲留めデバイスが最適に設置されるように医師に触覚的フィードバックを提供する。
【0075】
例示としての実施形態は、ここでは、グラフト部材及び保護部材の使用について、腹部腹壁に形成された穿孔75を覆うのに1つ以上の鋲留めデバイス20と関連付けて使用する場合を説明しているが、ここに開示されているグラフト部材及び保護部材は、他の多くの処置で有用であろう。単に一例として、1つ以上のグラフト部材及び保護部材は、胃壁の様な内臓壁の穿孔を治療するのに使用することができる。更に、グラフト部材及び保護部材は、局所組織を再建するなどで組織にグラフト部材を固定するのに鋲留めデバイスと関連付けて使用することもできる。グラフト部材及び保護部材の更に別の適用が実施可能であることは自明であろう。最後に、例示としての腹腔鏡的、内視鏡的、及び経皮的な送達技法を記載してきたが、ここに記載されているグラフト部材及び保護部材は開放性医療処置中に目標部位に配備させてもよいことを指摘しておく。
【0076】
当業者には認識される様に、以上に記載されている方法は、概して、デバイスを、体内管腔を通して組織に設置することを含んでいるが、本システム、デバイス、及び方法は、人間又は動物の身体及び身体管腔に関連し得る材料かそうでないかを問わず、如何なる材料(例えば、織物、布、ポリマー、エラストマー、プラスチック、及びゴム)の層に使用されてもよいことが認識されるであろう。例えば、本システム、デバイス、及び方法に関しては、研究施設及び産業環境で、人間又は動物の身体への適用が見出され得る材料かそうでないかを問わず、1層以上の材料の層を通してデバイスを設置する場合の利用、及び同様に、身体組織ではない材料の層の孔又は穿孔を閉合する場合の利用を見出すことができる。幾つかの例として、縫製又は縫合及び関連の製造工程、合成組織を用いた作業、ポリマーシートの接続又は修復、動物の研究、獣医学的適用、及び死体解剖活動が挙げられる。
【0077】
本発明の様々な実施形態を記載してきたが、本発明は、付随の特許請求の範囲及びそれらの等価物に照らした場合を除き限定されるものではない。更に、ここに記載されている利点は必ずしも本発明の唯一の利点というわけではなく、また必ずしも本発明のあらゆる実施形態が、記載されている利点の全てを実現できるものと期待されているわけではない。
【符号の説明】
【0078】
10、10’ グラフト部材、グラフト材料
11 グラフト部材の第1面
12、12’ グラフト部材の第2面
13、13’ グラフト部材の周囲
13a、13b、13c、13d グラフト部材の側面
14a、14b、14c、14d ポケット
15 リム
16 エンクロージャ
17 内部空間
18 基底部材
19 事前形成孔
20、20a、20b、20c、20d、20e、20f 鋲留めデバイス
22、22a 管部材
24 管部材の近位端
26 管部材の遠位端
32、32a、32d 近位展開機構
35、36、37 近位展開部材
39 近位展開部材の端領域
42、42a、42b 遠位展開機構
45、46、47 遠位展開部材
49 遠位展開部材の端領域
50 挿入器具
52 挿入器具の尖った先端
54 挿入器具のルーメン
56、56a マーカー
60 スタイレット
74 組織
75 穿孔
90 腹腔鏡装置
104、114a、114b、114c、124 ポケット
135 障壁層
210 グラフト部材
211 グラフト部材第1面
212 グラフト部材第2面
214 保護部材
215 保護部材の第1側壁
216 保護部材の第2側壁
217 保護部材の端壁
218 保護部材の内部空間
219 充填物質
h ポケットの内部空間の高さ
w ポケットの内部空間の幅
鋲留めデバイスの端領域間長手方向距離
組織の厚さ
グラフト部材の厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの鋲留めデバイスを使用して組織を修復するための医療装置において、
第1面及び第2面を有するグラフト部材と、
前記グラフト部材に結合されていて、前記グラフト部材を組織に固定する鋲留めデバイスの少なくとも一部分を包囲するように構成されている少なくとも1つの保護部材と、を備えている医療装置。
【請求項2】
前記保護部材は、内部空間を形成するエンクロージャを有する少なくとも1つのポケットを備えており、前記鋲留めデバイスの少なくとも一部分は、前記エンクロージャの前記内部空間内に展開状態で配置される、請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
前記ポケットは、実質的に前記第1面と前記第2面の間の前記グラフト部材内に形成されている、請求項2に記載の医療装置。
【請求項4】
前記ポケットは、2つの側壁と1つの端壁を備えている、請求項3に記載の医療装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つのポケットは、ドーム形状のエンクロージャを備えており、前記エンクロージャのリムが前記グラフト部材の前記第2面に結合されている、請求項2に記載の医療装置。
【請求項6】
複数のポケットが、前記グラフト部材の前記第2面に別々に結合されている、請求項2に記載の医療装置。
【請求項7】
前記複数のポケットは、前記グラフト材料の周囲に沿って離間して配置されている、請求項6に記載の医療装置。
【請求項8】
前記ポケットの前記内部空間の少なくとも一部分は、穿通できる物質が充填されている、請求項2に記載の医療装置。
【請求項9】
前記鋲留めデバイスの少なくとも1つは、近位展開部材と遠位展開部材とを備えており、前記近位展開部材と前記遠位展開部材のそれぞれは、前記展開状態ではフック形状の形態を備え、前記近位展開部材又は前記遠位展開部材の少なくとも一方は、前記鋲留めデバイスが前記展開状態にあるときには、少なくとも部分的に、前記エンクロージャにより形成される前記内部空間内に配置されている、請求項2に記載の医療装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つのポケットの前記内部空間は、前記鋲留めデバイスが前記展開状態にあるときには、少なくとも30%の空き空間を有する体積を備えている、請求項2に記載の医療機器。
【請求項11】
前記保護部材は、穿通できる材料で形成されている栓からなる、請求項1に記載の医療機器。
【請求項12】
前記保護部材は、前記グラフト部材の前記第2面より遠位に配置されている少なくとも1つの障壁層を備えている、請求項1に記載の医療機器。
【請求項13】
グラフト部材を材料の層に固定するための方法において、
第1面と第2面を有するグラフト部材を準備する段階と、
前記グラフト部材の前記第2面を、前記材料の層の選択された領域に位置合わせする段階と、
前記グラフト部材を前記材料の層に結合するために少なくとも1つの鋲留めデバイスを配備して、該鋲留めデバイスの少なくとも一部分が前記グラフト部材に結合されている保護部材に包囲されるようにする段階と、を含む方法。
【請求項14】
前記保護部材が内部空間を形成しているエンクロージャを有する少なくとも1つのポケットを備えており、当該方法が、前記鋲留めデバイスの少なくとも一部分を前記エンクロージャにより形成される前記内部空間内に配備する段階を更に備えている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの鋲留めデバイスの配備に先立ち、前記少なくとも1つの鋲留めデバイスを担持する挿入器具を、前記ポケットの前記内部空間を通し、前記グラフト部材を貫いて前進させ、次いで少なくとも部分的に前記材料の層を刺し貫かせる技法が使用されている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの鋲留めデバイスの配備に先立ち、前記少なくとも1つの鋲留めデバイスを担持する挿入器具を、前記ポケットの前記内部空間を通して前進させ、前記グラフト部材そして次いで少なくとも部分的に前記材料の層を刺し貫かせる送達技法が使用されている、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの鋲留めデバイスの配備に先立ち、挿入器具を、直接、前記グラフト部材へ向けて前進させる送達技法が使用されている、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの鋲留めデバイスの配備に先立ち、前記挿入器具の尖った先端が前記少なくとも1つのポケットの前記エンクロージャを刺し貫かずに前記内部空間内に位置付けられる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
グラフト部材を組織に固定するためのシステムにおいて、
第1面及び第2面を有するグラフト部材と、
前記グラフト部材の前記第2面より遠位に配置されている少なくとも1つの障壁層と、
前記グラフト部材を前記組織に結合するように構成されている少なくとも1つの鋲留めデバイスと、
前記少なくとも1つの鋲留めデバイスを送達するための挿入器具と、を備え、
前記挿入器具は、経皮的に前記組織及び前記グラフト部材の少なくとも一部分は刺し貫くが前記障壁層は刺し貫かないように構成されている尖った先端を備えている、システム。
【請求項20】
前記障壁層は、前記グラフト部材の実質的に前記第2面全体に隣接している材料の単一シートからなる、請求項19に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2012−526628(P2012−526628A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510972(P2012−510972)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/034508
【国際公開番号】WO2010/132545
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(511152957)クック メディカル テクノロジーズ エルエルシー (76)
【氏名又は名称原語表記】COOK MEDICAL TECHNOLOGIES LLC
【Fターム(参考)】