説明

1を超える活性医薬成分の部位特異的デリバリーのための医薬剤形

本発明は、ヒトまたは動物体内の胃腸管内の異なる部位への1を超える活性医薬成分の部位特異的デリバリーのための医薬剤形に関する。剤形は、胃内で特異的な刺激に応答し、吸収のために胃内で分解し、第1の活性医薬成分を放出する第1の活性医薬成分を組み込む外部ポリマー層を有する。また、剤形は、一旦外部層が分解されならば、第2の層のポリマーが分解して第2の活性医薬成分を放出する腸に入る第2の活性医薬成分を組み込む少なくとも1つの内部ポリマー層を有する。剤形は、各々が、ポリマーの性質に依存して腸の異なる部分での放出のための活性医薬成分を組み込むさらなる層を有してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬剤形、特に、ヒトまたは動物体内における1を超える医薬組成物の部位特異的デリバリーのための医薬剤形に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の医学的疾患の治療、特に、胃腸管に関するものは、少なからず高用量において、しばしば胃腸管の異なる部分への局所的または全身的デリバリーのための複数の活性医薬成分(「API」)または薬物の投与をよく必要とする。
【0003】
一例として、過敏性大腸症候群、特に、潰瘍性大腸炎として知られる疾患の治療を考えるならば、2種のAPI治療計画が勧められる。第1のAPIは、好ましくは、患者の胃内の胃デリバリーを意図し、第2のAPIは、好ましくは結腸に放出し結腸により吸収されるか、あるいはGITの結腸領域内で局所的に作用する。これは、経口摂取されたならば、医薬剤形が、吸収された場合に第1のAPIが胃内へ放出されるのに十分な期間、胃内に保持されなければならないことを意味する。次いで、第2のAPIを含む剤形の残りは、かなりの量の第2のAPIを放出することなく、幽門括約筋から小腸に、小腸から大腸または結腸に行かなければならない。また、剤形の残りを、近位小腸に入るのに際して第2のAPIが容易に吸収される方法で処方し得る。
【0004】
従前には、かかる疾患は、その各々が異なるAPIを含む2つの別々の錠剤またはカプセル剤を経口投与することにより治療された。第2のAPIを含む錠剤は、それが胃および小腸内でその完全性を維持するが、結腸内で溶解して第2のAPIを放出するようにコーティングされた。単一のAPIを含む医薬剤形およびAPIの放出を促進または遅延させる手段についての保護を特許請求する多数の特許および特許出願が出願されている。出願人らが知るものの中で最も関連するものは以下である:
【0005】
1)PCT特許出願第PCT/US98/20779号、これは、位置および時間依存的に胃腸管中の単一の薬物またはAPIを放出するための胃腸薬物デリバリーシステムを開示する;
2)PCT特許出願第PCT/JP01/03229号は、胃腸管内の単一の薬物またはAPIをデリバリーするための時限放出コーティングされた固形製剤を開示する;
3)欧州特許出願第EP1275381号、これは、下部消化管への薬物の経口投与のために時限放出コーティングされた固形組成物を開示する。この開示は単回のAPIデリバリーに関する;
4)PCT特許出願第PCT/GB2005/002977号は、口腔粘膜表面に適用された場合、5分以内の単回のAPI口腔粘膜デリバリーのための組成物を開示する;および
5)米国特許出願公開第US2008/0193535号、これは、本願の優先日後に公開されたが、アレルゲン形態の単回のAPI急速デリバリーである本発明の主題に関して当該技術分野の現在の水準の表示を提供する。
【0006】
前記の全開示は、単回のAPIデリバリーに関し、かかる組成物を身体の異なる部分への1を超えるAPIのデリバリーを必要とする医学的疾患を治療する方法に用いるが、それらは処方の正確な充填および、患者の勤勉な協力にも依拠し、異なる錠剤またはカプセル剤を同時または処方された間隔で服用することが必須である。余り賢明でない患者を治療する場合、不十分な注意が患者によりしばしば示される結果、ある錠剤が、しばしば多数の投与時間、抜かされ、これは治療を無効とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】PCT/US98/20779
【特許文献2】PCT/JP01/03229
【特許文献3】欧州特許出願第EP1275381号
【特許文献4】PCT/GB2005/002977
【特許文献5】米国特許出願公開第US2008/0193535号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
医薬剤形を提供すること、特に、1を超える医薬組成物の部位特異的デリバリーのための医薬剤形を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明により、1を超えるAPIの部位特異的デリバリーのための医薬剤形が提供され、その剤形は、ヒトまたは動物体内の第1の部位へのデリバリーのための少なくとも1つのAPIを含む少なくとも1つの外部層、ならびにヒトまたは動物体内の第2の部位へのデリバリーのための少なくとも1つのAPIを含む少なくとも1つの内部層を含み、各層は、そのデリバリー部位に特有の特定の刺激に付された場合に、その部位におけるそのAPIの放出を可能とできる特性を有する。
【0010】
さらに、外部層と内部層との間に位置した少なくとも1つの中間層を有する剤形が提供され、その中間層は、第1および第2の部位間の部位へのデリバリーのための少なくとも1つのAPIを含む。
【0011】
また、使用において、実質的に外部層内の全てのAPIが放出されるまで内部層に含まれたAPIの放出を抑制する殻形態である外部層が提供される。
【0012】
また、プラットフォーム、好ましくはポリマープラットフォームである各層、ならびにポリマープラットフォームに組み込まれた各APIが提供される。
【0013】
また、天然および/または合成ポリマーから製造されたポリマープラットフォーム、ならびにそのポリマープラットフォームに組み込まれた各APIが提供される。
【0014】
また、多糖類ポリマーから選択されたポリマープラットフォームの天然ポリマー、好ましくは、キトサン、ペクチン、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ナトリウムカルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)のごときセルロース、およびデキストランよりなる群から選択される多糖類ポリマーが提供される。
【0015】
また、標準的な疎水性ポリマーを含むポリマープラットフォームの合成ポリマー;あるいは、親水性、膨潤性または浸食性ポリマー;さらにあるいは、標準的な疎水性ポリマー;あるいは、依然としてさらに、疎水性、膨潤性または浸食性ポリマー;あるいは、依然としてさらに、刺激応答性ポリマー;ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチルセルロース(EC)、ポリ(乳酸)コ−グリコール酸(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリメタアクリレート、ポリカプロラクトン、ポリエステルおよびポリアミドの少なくとも1つを含む種々のポリマー、および使用において、コポリマーと混合される該ポリマー、あるいは、それら自体で用いられるポリマーが提供される。
【0016】
また、ミクロおよび/またはナノ構造の形態にあるAPIまたは各API、ならびにそれらとポリマーおよび/または他の速度調節用の重要な処方補助剤とを混合することによりポリマープラットフォームに組み込まれたものが提供される。
【0017】
さらに、胃腸管、好ましくは、胃および結腸の領域であるAPIがデリバリーされる部位特異的な領域、ならびに胃内容物の表面で初期に浮揚性であるか、または浮揚性になる胃内浮揚性(gastrofloatable)特性、あるいは、胃洞に沈む(buoyant)場合の胃液よりも高密度である胃内沈降特性、さらにあるいは、膨潤性の寸法の剤形に基づいて、剤形が膨潤し、胃の幽門括約筋を介して急速な胃内容排出を防止する場合、および依然としてさらに、使用において、GITの胃またはもう一つの領域の壁に付着し、かくして、付着部位に依存して早期の胃内容排出、十二指腸内容排出、小腸内容排出または結腸内容排出を防止する場合の胃膨潤特性を有する医薬剤形が提供される。
【0018】
また、胃における部位特異的な刺激、好ましくはペプシンに応答して溶解する剤形の外部プラットフォームが提供され、一旦溶解すると、剤形の残りが使用において小腸に移り、小腸を通過して、最終的に、胃腸管の結腸領域に入り、そこでは、剤形の内部プラットフォームが、結腸領域における部位特異的な刺激に応答して溶解し、APIを放出する。
【0019】
また、結腸領域におけるAPIの吸収を増強する単一または複数の化合物を含み放出する剤形の内部プラットフォームが提供される。
【0020】
また、各プラットフォームに組み込まれたAPIを放出する剤形が提供され、そのプラットフォームは溶解し、かくして、APIをそれが放出される部位における吸収に利用可能とする、および/またはAPIをその標的部位にて局所的に作用するのに利用可能とする。
【0021】
さらに、抗炎症物質、コルチコステロイド、抗下痢物質(antidiarrhoeal)、オピオイド、免疫抑制物質、抗生物質、鎮吐物質、抗真菌物質、抗ウイルス物質、抗マラリア物質、抗TB物質、抗レトロウイルス物質、抗高血圧物質、タンパク質、ペプチド、化学療法物質、診断用物質、プロバイオティクス、プレバイオティクス、複合ビタミン物質、ミネラル、微量元素および植物性栄養素よりなる群から選択される1以上のいくつかのAPIから選択されるAPIを提供する。
【0022】
さらに、医薬剤形に組み込まれる電解質または塩とインサイチュ(in situ)架橋されたポリマープラットフォームを形成するポリマーが提供され、電解質または塩は、ホフマイスターシリーズの塩から選択され、いずれかまたは全てのプラットフォームからの医薬剤形からのAPIおよび/またはグルタルアルデヒドおよびホルムアルデヒドの放出を遅延させるように作動可能である。
【0023】
また、マイクロ波照射、UV照射または化学的架橋を用いて架橋されたポリマーが提供される。
【0024】
また、その中に埋め込まれた少なくとも1つのAPIを含む単一の区別されるペレットを形成する少なくとも1つのインサイチュ架橋されたポリマーである医薬剤形の作動可能な最内部層、または多数のインサイチュ架橋されたポリマーを有する医薬剤形の作動可能な最内部層、および種々の刺激応答性ポリマーおよび/または選択されたポリマーまたは複数のポリマーの性質に依存して他の重要な処方補助剤および所望の置換のポリマーマトリックスを形成するためのポリマーまたは複数のポリマーが提供される。
【0025】
また、剤形の少なくとも1つの成分における種々の濃度のポリマー、医薬賦形剤、好ましくはステアリン酸マグネシウムのごとき滑沢剤、および/またはカルボキシメチルセルロース(CMC)のごとき結合剤および/または所望の塩のごとき架橋剤、および少なくとも1つの有効成分を混合することにより形成される剤形が提供される。
【0026】
また、使用された架橋剤、架橋剤の電離度、溶液pH、乾燥ポリマー−対−ペプシンの比および架橋の程度により決定される医薬剤形の外部ポリマー層からのAPIまたは各APIの放出が提供される。
【0027】
また、ポリマープラットフォーム内で創製された拡散路程における変形の結果として、好ましくは、急速、あるいはゆっくりであり得る相制御された部位特異的な方法における、多数の適用および投与方法に適するような構造化可能である最内部ポリマープラットフォーム、最外部ポリマープラットフォーム内に埋め込まれた最内部ポリマープラットフォーム、好ましくは、使用において、いずれかのポリマープラットフォームからのAPIが所望の期間にわたり放出できるように低密度の胃内浮揚性プラットフォームが提供される。
【0028】
また、少なくとも1つのディスクに処方される医薬活性化合物、および多数の同一または交互ポリマー層により囲まれたディスクが提供される。
【0029】
また、内部錠剤様(inner tablet-like)成分を全体的または部分的に被包する殻形態である外部ポリマープラットフォームが提供され、かくして、外部ポリマープラットフォームは、胃腸管の一領域における特定の刺激、特に、ペプシンに応答して、胃腸管、特に胃の該領域における第1のAPIの放出を可能とする。
【0030】
また、種々の天然および合成ポリマーを含む殻の組成物が提供され、そのポリマーは、キトサン、ゼラチンおよびポリアクリルアミドから選択され、ならびに架橋剤はスクロース−6−1’−ジアクリレートを含む群の中から選択される。
【0031】
付着特性を持つポリマーを用いて内部錠剤様成分、例えば、限定されるものではないが、ポリビニルアルコール(PVA)を含む群の中からのポリマーまたは化合物に付着した外部殻が提供される。
【0032】
また、種々の天然および合成ポリマー、例えば、ペクチン、ポリエチレンオキシド(PEO)およびキサンタンガムのマトリックス内に分散した架橋API負荷顆粒を含む錠剤様成分が提供され、その顆粒は、胃腸管、特に、結腸の種々の領域における特異的な酵素に応答性のアルギン酸塩、ペクチン、キサンタンガムおよびキトサンよりなる群から好ましくは選択される天然の多糖類ポリマーを含む。かかるポリマーの例は、種々の電解質/塩または特にトリポリリン酸塩のごとき多価の塩と架橋する顆粒のための、β−グルコシダーゼ、ペクチナーゼおよび他のポリサッカリダーゼのごとき結腸酵素により消化/切断され易い多糖類ポリマーを含む。
【0033】
さらに、電解質/塩のごとき種々の架橋剤を用いてインサイチュ架橋された錠剤様マトリックスが提供される。
【0034】
また、pH応答性あるいはpH非依存性のコーティング、溶液または、エチルセルロースおよび酢酸フタル酸セルロースよりなる群から選択される少なくとも1つの疎水性ポリマーラテックスでコーティングされた錠剤様成分が提供される。かかるコーティング溶液は、水性分散液であっても、アセトンまたはエタノールのごとき溶液中に分散されていてもよく、疎水性ポリマーは、錠剤様成分のマトリックス内に分散される。
【0035】
また、単独または組み合わせて医薬剤形に適用されるpH応答性またはpH非依存性のコーティング、溶液または疎水性ポリマーラテックスが提供される。
【0036】
また、所望のpH/時間/酵素応答性コーティングを形成するための種々の比および組合せにおける種々の多糖類または酵素応答性ポリマーと組み合わせたコーティングが提供される。
【0037】
また、医薬剤形のポリマー成分を使用にpH応答性とさせ、かくして、作用または吸収の所望の部位へのAPIの正確なデリバリーを促進するように選択されたコーティング溶液およびポリマーの組合せが提供される。あるいは、医薬剤形のポリマー成分を作用または吸収の所望の部位に存在する1以上の酵素に応答性とさせ、かくして、作用または吸収の所望の部位へのAPIの正確なデリバリーを促進するように選択されたコーティング溶液およびポリマーの組合せが提供される。さらにあるいは、時間依存性にヒトまたは動物の身体の特定の領域内で分解し、かくして、作用または吸収の所望の部位へのAPIの正確なデリバリーを促進するように選択されたコーティング溶液およびポリマーの組合せが提供される。
【0038】
錠剤形状である医薬剤形の内部ポリマー層、および多糖類ポリマーまたは、ポリマーおよびAPIの組合せの湿式または乾式造粒により調製された顆粒を圧縮することにより形成された錠剤が提供される。
【0039】
また、錠剤形状である医薬剤形の内部ポリマー層、および顆粒を圧縮することにより形成された錠剤が提供され、顆粒は、脱イオン水またはエタノールのごとき種々の溶媒およびAPIを用いて、多価の塩または他の化学試薬のごとき架橋剤の単一または組合せでの、多糖類ポリマーまたはポリマーの組合せの湿式造粒または乾式造粒により調製される。
【0040】
さらに、分散される顆粒、湿式造粒により調製された顆粒および、単一ポリマーまたはポリマーの組合せにおいてではなく、単独または組み合せて適用し得るpH応答性またはpH非依存性のコーティング溶液あるいは種々の疎水性ポリマーラテックスでコーティングした顆粒が提供される。
【0041】
また、錠剤形状である医薬剤形の内部ポリマー層、および製剤のポリマー成分の直接圧縮により形成される錠剤が提供される。
【0042】
さらに、特有のpH/時間/酵素応答性コーティングを形成するための種々の比および組合せで種々の多糖類または酵素応答性ポリマーと組み合わせるコーティングまたは複数のコーティングが提供される。
【0043】
さらに、使用におけるペプシンのキトサン分解活性のための最適な環境を促進し、かくして、外部ポリマー殻の酵素反応性を改善し、APIの十分または完全でかつ部位特異的にデリバリーすることを確かにする外部ポリマー殻の微小環境を変更することが提供される。あるいは、種々の濃度の水酸化ナトリウム溶液、種々の濃度の水酸化アンモニウム溶液のごとき種々のアルカリ性溶液を加えることにより;または炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムのごとき塩を直接的に使用することによって外部ポリマー殻の微小環境を変更することが提供される。
【0044】
また、溶液pHによって決定される該医薬剤形の関連するポリマーおよび架橋塩の電荷密度が提供され、使用において、より低い溶液pHは、架橋塩のイオン化の程度の十分な減少を生成し、その結果、ポリマーまたは複数のポリマーと架橋剤または複数の架橋剤との間のポリマー架橋を弱めて、医薬剤形の外部ポリマー層の膨潤を促進し、その層へのペプシンと共に流体の拡散を可能とし、キトサンの切断および/または分解を生じさせ、その結果、医薬剤形からAPI放出を生じさせる。
【0045】
本発明の具体例は、例示的にのみおよび添付図面を参照して以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、24時間にわたる疑似胃液中の架橋または非架橋ペクチンAM901からの薬物放出を示すプロフィールのグラフ分析である。
【図2】図2は、24時間にわたる疑似胃液中の架橋または非架橋ペクチンAMID CF 005からの薬物放出を示すプロフィールのグラフ分析である。
【図3】図3は、24時間にわたる疑似胃液中の架橋または非架橋ペクチンAMID CF 020からの薬物放出を示すプロフィールのグラフ分析である。
【図4】図4は、24時間にわたる疑似腸液中の架橋または非架橋ペクチンAM901からの薬物放出を示すプロフィールのグラフ分析である。
【図5】図5は、3種の異なるインサイチュ架橋剤、すなわち、硫酸亜鉛、塩化アルミニウムまたは塩化バリウムを組み込む処方からの薬物放出を示すプロフィールのグラフ分析である。
【図6】図6は、種々のポリマー、すなわち、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ(エチレンオキシド)またはヒドロキシエチルセルロースを組み込む処方の薬物放出を示すプロフィールのグラフ分析である。
【図7】図7は、疑似胃液中の種々の比のアルギン酸塩、キトサンおよびZnSOにおける顆粒よりなる処方の薬物放出を示すプロフィールのグラフ分析である。
【図8】図8は、造粒溶媒としてのEudragit(登録商標)または脱イオン水を含む処方からの薬物放出を比較するプロフィールのグラフ分析である。
【図9】図9は、SGFおよびSIF中のキトサン/クエン酸塩フィルムの薬物放出についてのプロフィールを示すグラフである。
【図10】図10は、ペプシンの有無によるSGF中のゼラチン/キトサンフィルムの薬物放出についてのプロフィールを示すグラフである。
【図11】図11は、ペプシンの有無によるSGF中のゼラチンフィルムの薬物放出についてのプロフィールを示すグラフである。
【図12】図12は、ペプシンの有無によるSGF中の架橋キトサン殻の薬物放出についてのプロフィールを示すグラフである。
【図13】図13は、ペプシンの有無によるSGF中の非架橋キトサン殻の薬物放出についてのプロフィールを示すグラフである。
【図14】図14は、インサイチュ架橋された、刺激応答性の医薬剤形からの薬物放出の提案される機序の模式図である。
【図15】図15は、インサイチュ架橋された、刺激応答性の医薬剤形からのAPIの放出について生じる事象の順序を記載する流れ図である。
【図16】図16は、インサイチュ架橋された刺激応答性の医薬剤形の構成的変更の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
経口経路は、薬物投与の最も一般的でかつ最も便利な方法であり、60%を超える市販薬が経口的に用いられる(Masaokaら, 2006)。持続性放出の薬物デリバリーシステムは、典型的には、より単純化された投与スケジュールにより、慢性疾患の処置、副作用の低減およびより大きな患者コンプライアンスにおいて、より高い有効性を含めた、即時放出製剤を超えるかなりの利点を提供する(Vermaら, 2002)。また、副作用を低減し、薬物の薬理学的応答を増大させるために体内の特定部位で薬物をデリバリーまたは活性化する方法に対する重要性が増大している。部位特異的デリバリーは、埋込型ポンプ、薬物含浸の粘着パッチ、薬物封入ビヒクル、薬物担体およびプロドラッグを用いることにより達成可能であると提唱されている。
【0048】
胃保持性の剤形は、胃における局所の病態、例えば、消化性および十二指腸潰瘍を治療する、および/または余り頻繁でない薬物投与を可能とするために、上部胃腸管における薬物の部位特異的デリバリーに有益であり得る。胃内の長期間の保持は、胃において局所的に最も有効に吸収される薬物に有益であり得る。胃内容排出時間は、通常、胃および腸上部の主要な吸収域を通って平均的には2〜3時間となる。この比較的短い胃内容排出時間の結果、不完全な薬物放出および投与用量の効力の減少を生じ得る(KimおよびSingh, 2000)。
【0049】
胃内浮揚性薬物デリバリーシステムは、薬物の胃滞留時間を増加させることにより持続性の薬物放出を達成するための魅力的なアプローチとして出現した。この概念は、胃液よりも低いかさ密度を有し、長期間胃内で浮揚性のままであるシステムを含む(KimおよびSingh, 2000; Streubelら, 2006)。この時間の間に、徐々の薬物放出が所望の速度で生じる。胃内のデリバリーシステムの滞留時間の延長は、特に、狭い吸収窓を有する薬物、または腸内で安定性問題を持つ薬物または胃作用の局所化について、多数の利点を提供する(KimおよびSingh, 2000; GargおよびSharma, 2003)。
【0050】
たとえこれらの浮揚性システムが、胃保持についての固有の能力を所有するとしても、それらはより胃内容排出を遅らせる食物の存在に依拠する。従って、デリバリーシステムが食事サイズに非依存性である場合にだけ、それは、広範囲の食習慣を持った患者に適当であろう(SinghおよびKim, 2000)。前提条件である食物なくして、最適な薬物放出および吸収を可能とする浮揚性薬物デリバリーシステムは、通常の食物摂取を有しない患者について非常に有利になり得る。また、薬物バイオアベイラビリティーは、患者が摂食したか否かに依存しないであろう。Aroraら(2005)によれば、胃の休止容量は、25〜50mLである。従って、胃に入るいずれのシステムもこの水性媒体と接触し、食物が摂取されるか否かに非依存性にある時間浮揚性のままであろう。
【0051】
部位特異的な薬物デリバリーを達成する比較的新しいアプローチは、いわゆる「スマート」ポリマーの使用による。これらのポリマーは、環境のpH、温度、電場または磁場における小さな変化に応答でき、それらの微構造における速い可逆性の変化を受けることができる。薬物デリバリーシステムへのこれらの刺激応答性ポリマーの組込みは、化学的シグナル(例えば、基質の存在)を環境的シグナル(例えば、pH変化)に、次いで、機械的シグナルに、すなわち、ヒドロゲルの縮小または膨潤および薬物放出の制御に変換するであろう(GalaevおよびMattiasson, 1999)。ヒドロゲルからの薬物放出速度を制御する有効なアプローチは、架橋剤に対するポリマーの曝露時間の変更を用いることによるマトリックスの架橋密度の変更である(Patilら, 1997; Ayら, 2007)。
【0052】
胃腸管で膨潤したヒドロゲルを完全に消化できるいくらかの酵素分解性架橋剤が知られている。例えば、アゾ架橋剤はアゾレダクターゼによって分解でき、アクリル酸グリシジルで修飾されたアルブミンは、種々のタンパク分解酵素によって分解できる。しかしながら、これらの架橋剤は部位特異的な薬物デリバリーに適していない(Park, 1998)。生物分解性架橋剤スクロース−6−1’−ジアクリレート(SDA)を用いて、変化する比でポリ(アクリルアミド)を架橋した。その研究は、その双方が酸性pHが最適で胃内に存在するペプシンおよびリパーゼがSDA加水分解を触媒するのに有効であり、ヒドロゲル分解に対する触媒と考えることができることを示した(Patilら, 1997)。ヒトの胃および小腸は、およそ10〜10コロニー形成単位(CFU/mL)を含み、この数は、結腸に入ると劇的に増加する。薬物デリバリーシステムにこれらの刺激応答性ポリマーを組み入れることによって、薬物は特定の刺激、特に、ペプシンに応答してのみ放出されることを確実にし、それによって、胃内の部位特異的薬物デリバリーを確実にする。
【0053】
結腸の細菌は、広範囲の基質、例えば、多糖類、ムコ多糖等を発酵させる(Friend, 2005)。これらの細菌酵素は、刺激応答システムの基礎として用いることができ、それらはこれらの酵素に応じてのみポリマーマトリックスの分解を可能とし、薬物放出をトリガーする。結腸に対する選択的な薬物デリバリーは、以下のいくらかの利点:1)結腸の疾患、例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病、結腸癌の局所治療を可能とする、2)薬物が疾患部位に直接的に作用できるように、用量低下を可能とする、3)全身吸収に起因する望ましくなくかつ潜在的に有害な副作用における低減を生じる、4)胃粘膜に対して刺激性である薬物、例えば、NSAIDの投与、または胃液または胃酵素により分解される薬物、例えば、タンパク質およびペプチドに有用である、5)薬物が他の消化器よりも結腸により長く存在し、従って、薬物吸収時間が延長され、薬物の合計のバイオアベイラビリティーが増加する、を有する。
【0054】
材料および方法
材料
ペクチンAM 901 (LM)(リンゴペクチン) DE 38〜44%; ペクチンAMID CF 005 (LM)(アミド化シトラスペクチン) DE 33〜39%、DA 11〜17%; ペクチンAMID CF 020 (LM)(アミド化シトラスペクチン) DE 25〜31%、DA 19〜23%; 硫酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、GENU(登録商標)ペクチンタイプLM 102 AS、塩化アルミニウム六水和物、塩酸ジフェンヒドラミン(Aldrich)、塩化バリウム(二水和物)(Saarchem)、硫酸亜鉛 (Rochelle)、ステアリン酸マグネシウム、アルギン酸ナトリウムProtanal(登録商標)(BioPolymer)、Polyox(登録商標)WSR-303、ヒドロキシプロピルメチルセルロース (Sigma)、Natrosol(登録商標)(Hercules)、キトサン、Eudragit S100。
【0055】
ペクチンの等級を変更させたインサイチュ架橋可能な錠剤の調製
初期の研究において、3種の異なる等級のペクチンを、胃および腸領域におけるそれらの有効なインサイチュ架橋能力につき分析した。硫酸亜鉛(架橋剤)を、乳棒および乳鉢を用いて粉砕し、ステアリン酸マグネシウム、ジフェンヒドラミンHCl(モデル薬物)およびペクチンと組み合わせた。このプロセスは、2:1の比(ペクチン:塩)で種々の等級のペクチンで行なった。粉末は、ベンチトップ液圧プレスを用いる直径13mmおよび幅5mmの錠剤に直接的な圧縮によって錠剤に圧縮した。架橋剤を含まない錠剤の別個のバッチを調製して、薬物放出に対する効果を比較した。
【0056】
薬物放出に対する直接的圧縮により調製された種々の塩の影響の評価
一旦望ましい等級のペクチンが同定されたならば、異なる塩をそれらの架橋能力につき評価した。各架橋剤、すなわち、硫酸亜鉛、塩化アルミニウムまたは塩化バリウムを含む3セットの処方を調製した。各錠剤は、以下のもの:1:1の比のペクチンおよび塩、塩酸ジフェンヒドラミンおよび1%ステアリン酸マグネシウムを含んだ。錠剤は、Beckman液圧プレス(登録商標)(直径13mmおよび幅5mm)を用いて、5Nの力で圧縮した。溶解研究は、疑似胃液(SGF)(pH1.2;37℃)中で行い、UV分光法を用いて、薬物含量につき分析した。
【0057】
薬物放出に対するEudragit(登録商標)の影響の評価
一旦、インサイチュ架橋のための望ましい塩、すなわち、BaClが同定されたならば、さらなる評価を、処方中にEudragit(登録商標)(親水性pH依存性ポリマー)を含めることにより行い、薬物放出に対するその影響を決定した。11:1比のペクチンおよびBaCl、塩酸ジフェンヒドラミン(モデル薬物)およびステアリン酸マグネシウムよりなる対照処方セットを生成し、Eudragit(登録商標)L100を組み込むテスト処方セットと比較した。これらは5Nにて直接的圧縮によって調製し、SGF(pH1.2;37℃)中の溶解研究を受けた。
【0058】
薬物放出に対する種々の親水性および疎水性ポリマーの影響の評価
異なる3種のポリマー、すなわち、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)およびヒドロキシエチルセルロース(HEC)を3種の処方セットに組み込み、その各々は、10:1の比のペクチンおよびBaCl、塩酸ジフェンヒドラミン(モデル薬物)、Eudragit(登録商標)L100およびステアリン酸マグネシウムを含んだ。錠剤は5Nで圧縮され、SGF(pH1.2;37℃)および疑似腸液(SIF)(pH6.8;37℃)の双方における溶解研究を受け、UV分光法を用いて、薬物含量につき分析した。
【0059】
薬物放出に対する架橋剤−対−ポリマーの比の影響の評価
架橋剤(塩)−対−ポリマー(アルギン酸塩)の比が薬物放出に対して有した効果を決定するために、異なる4種の処方セットを生成した。各セットは、乾燥粉末の直接的圧縮または圧縮に先立って湿式製粒法のいずれかで調製した処方を含む。顆粒剤は、湿式造粒法(2mmの篩)により調製し、2:1、3:1、4:1および5:1の比の塩酸ジフェンヒドラミン(モデル薬物)、アルギン酸ナトリウム、キトサンおよびZnSOよりなった。脱イオン水を溶媒として用い、顆粒剤を40℃で12時間乾燥させた。直接的な圧縮混合は、ペクチンおよびBaCl(2:1)、PEO、Eudragit(登録商標)L100およびステアリン酸マグネシウムよりなった。次いで、調製した顆粒剤は、直接的な圧縮混合物と組み合せ、その中に分散させて、8Nで圧縮した。全ての試料がSGF(pH1.2;37℃)中の溶解研究を受け、UV分光法を用いて、薬物含量につき分析した。
【0060】
一旦架橋剤:ポリマーの望ましい比を確立すれば(4:1:1の比のアルギン酸塩:キトサン:ZnSOが選択された)、湿式造粒法に対して異なるアプローチを評価して、胃環境内の薬物放出の最高の遅延を確実にした。塩酸ジフェンヒドラミン(モデル薬物)、顆粒形態のアルギン酸塩:キトサン:ZnSO(4:1:1)、直接的圧縮混合物におけるペクチン、BaCl、Eudragit(登録商標)L100、PEOおよびステアリン酸マグネシウムよりなる2種の処方セットを調製した。第1のセットの処方において、Eudragit S100(登録商標)の腸溶コーティングラテックス溶液を造粒用溶媒として用い、脱イオン水を第2のセットの処方のための造粒溶媒として用いた。顆粒剤は15分間硬化(cure)させた後、Eudragit S100(登録商標)溶液を顆粒にスプレーし、次いで、40℃にて12時間乾燥させた後、Carverプレス(登録商標)を用いて8Nで圧縮した。
【0061】
低密度のpH応答性ポリマー成分の処方
低密度のポリマー成分をキャスティング/溶媒蒸発技術によって製剤化した。略言すると、10%w/vキトサン溶液を4M酢酸中で調製した。2gのモデル薬物をこの溶液に添加し、30分間撹拌させて、全ての薬物が溶解することを確実にした。上記の溶液をさらに撹拌せずに30分間静置し、全ての捕捉された空気泡を除去することを確実にした。直径13mmのウェルを持つポリスチレントレーを円滑にした。1mlの試料溶液を各ウェルに入れた。試料を一定重量まで室温で48時間換気フード下で乾燥させた。
次いで、乾燥したキトサンフィルムをクエン酸三ナトリウムの水溶液に各フィルムを浸漬することにより架橋した。架橋条件は以下の通りであった:クエン酸三ナトリウムの10%w/v水溶液、溶液pH5および1時間の架橋時間。次いで、架橋キトサン/クエン酸塩フィルムを蒸留水で洗浄し、ガラス製ペトリ皿に入れ、さらに室温にて24時間換気フード下で乾燥させた。
【0062】
ペプシンに対する応答性についてのゼラチンの評価
ゼラチンの21%w/v溶液を水にゼラチンを溶解することにより調製した。20%w/vキトサン溶液を1M酢酸にキトサンを溶解することにより調製した。76mLのゼラチンを20mLのキトサン溶液と合わせ、完全に混合した。モデル薬物をこの溶液に溶解した。1mlアリコートを予め円滑にした円筒状の型に入れ、換気フード下で乾燥させた。得られた処方をペプシンの有無により疑似胃液中でテストした。
前記と同様の処方を調製したが、しかしながら、キトサンを除外した。試料を換気フード下で乾燥させ、ペプシンの有無によりSGF中でテストした。
【0063】
ペプシンのキトサン分解活性を増強するための微小環境の変更
研究は、ペプシンの最適なキトサン分解活性がpH4.5で生じることを示した。胃環境のpHはめったにこのpHに達しないので、キトサンフィルムの微小環境の変更の検討を行った。また、より一貫し、容易に除去可能でかつより強いキトサン殻を生成するためにキトサン溶液中への可塑剤の包含を調べた。キトサンの10%w/v溶液を1M酢酸中で生成した。このモデルには、薬物が含まれた。2:1の比のキトサン重量−対−グリセロール中の可塑剤、すなわち、グリセロールを含んだ。炭酸水素ナトリウムを添加して、pH5.5を生成した。7を超えるpHは溶液からのキトサンの沈澱を生じるであろう。1mLアリコートを予め円滑にしたポリスチレントレーに入れ、40℃にて24時間オーブン中で乾燥させた。殻を10%w/v硫酸亜鉛溶液で架橋し、再度乾燥させた。次いで、架橋殻を洗浄して、表面の薬物および塩を除去した。薬物放出研究をペプシンの有無により、SGF中の架橋および非架橋殻につき行った。
【0064】
in vitroでの薬物放出研究
in vitroでの溶解研究は、SGF(pH1.2;37℃)およびSIF(pH6.8;37℃)において回転翼装置中で行った。5mLの試料を最初の12時間は毎時および再び24時間にて回収し、UV吸光度測定法によって分析した。
【0065】
結果および考察
SGF(pH1.2;37℃)中の薬物放出は、全ての等級のペクチンにつき経時的に吸光度の安定した増加を示した(図1、2および3)。ZnSOとインサイチュ架橋したペクチンAM 901は、塩を含まない同一等級のペクチンに比較した場合、薬物放出の遅延を示した(6時間後43.7%−対−56.16%)が、しかしながら、ZnSOとインサイチュ架橋したペクチンAMID CF 005およびペクチンAMID CF 020は、架橋剤を含まない処方に比較して、より大きな薬物放出を示した。
【0066】
SIF(pH6.8;37℃)中の薬物放出は、SGF(pH1.2;37℃)中で行った研究と同様の結果を示した(図4)。ペクチンAM 901は、インサイチュ架橋した場合、薬物放出に遅延を示した。ペクチンAMID CF 005は、ZnSOに組み込まれた場合、再びより大きな薬物放出を示した。架橋および非架橋ペクチンAMID CF 020は、最初の5時間同様の薬物放出を示したが、しかしながら、6時間後には、架橋ペクチンは、非架橋ペクチンAMID CF 020に比較して、より低い薬物放出を有した。
【0067】
平均の胃通過時間が約2時間であるので、薬物投与後の最初の2時間は、特に胃領域の薬物放出を分析する場合に最も重要なままである。従って、胃内の薬物デリバリーを制限することを試みる場合には、in vitroでの薬物放出研究の最初の2時間も最も重要なままである。この研究において、ZnSOおよびAl2Cl3を組み込んだ処方の双方は、2時間でSGF中で95%の薬物放出を示した。しかしながら、BaClはこの時点でかなりより低い薬物放出を示した(81%)。たとえこの数値が許容可能な0〜10%の薬物放出範囲内になくても、それは、依然として、BaClをインサイチュ架橋のための最も効率的な塩と同定する(図5)。
【0068】
Eudragit(登録商標)L100を欠く対照処方セットは、最初の2時間の溶解研究において、37%の薬物放出を示した。完全な薬物放出は、24時間の溶解試験後だけで達成した。Eudragit(登録商標)L100を含む処方は、最初の2時間で27%の薬物放出を有し、完全な薬物放出は24時間後に達成した。
【0069】
種々のポリマーがSGF中で薬物放出に対して有した効果の決定においては、HPMCおよびHECの双方が、2時間で28%の薬物放出を提供したことが判明した。6時間後に、HPMCは50%の薬物放出を供し、HECは、同一の期間に52%の薬物放出を供した。PEOは、2時間にて23%の薬物放出を供し、6時間にて51%の薬物放出を供した(図6)。
【0070】
SIF中では、2時間後にこの媒体中でPEOおよびHPMCの双方は21%の薬物放出を供したが、しかしながら、HECは、29%の薬物放出を供した。これらの結果から、HPMCおよびHECと比較した場合、PEOは、SGFおよびSIFの双方において、薬物放出の最も効率的な遅延を供したと結論付けることができる。
【0071】
顆粒剤が、種々の比のアルギン酸塩:キトサン:ZnSOで生成される場合、SGF中で行った溶解研究は、2:1:1の比および3:1:1の比であった顆粒剤が、同様の放出プロフィールを有した、例えば、5時間の溶解後に、2:1:1の比の顆粒剤は、32.2%の薬物放出を供し、3:1:1の比の顆粒剤は、30.4%の薬物放出を供することを示した。4:1:1の比の顆粒剤は薬物放出の最良の遅延を示し、2時間で10.6%の薬物を放出し、5:1:1の比の顆粒剤は同一の期間に14.4%の薬物放出を示した(図7)。
【0072】
4:1:1の所望の比の顆粒剤で、異なる造粒溶媒を用いた。溶媒としてEudragit(登録商標)S100ラテックスを用いて調製した顆粒剤は、最初の2時間で8.9%の薬物放出を有し、5時間で21.5%の薬物放出を有した。顆粒剤を溶媒として脱イオン水を用いて調製し、結果的にラテックス溶液でスプレーした場合、5.6%の薬物放出を最初の2時間にて達成し、5時間にて18%の薬物放出を達成した(図8)。
【0073】
関連する溶解媒体中のキトサン/クエン酸塩フィルムについての観察においては、フィルムがin vitroでの放出研究の期間にSGF中で浮揚性のままであったことが明らかであったが、しかしながら、これは、フィルムが溶解容器の底まで直ちに沈むSIFにおける事実とは違った。SGF中の溶解研究の第1の時間後、フィルムはかなり膨潤し、第2の時間後に、それは完全に崩壊した。SIF中のフィルムは、テストの5時間後にさえ依然として無傷であり、膨潤を示さなかった。
【0074】
図9から、架橋キトサンフィルムが胃内の条件に刺激応答性であると理解できる。より詳細には、それは胃のpHに応答性である。SIF中では、キトサンフィルムは、pH1.2のSGF中で経験した100%の薬物放出と比較して53%だけの薬物放出を有した。
【0075】
図10から、キトサンおよびゼラチンの組合せの処方からの薬物放出が、ペプシンを含有する疑似胃液中で、処方からの薬物放出がペプシンを含まないSGF中よりも高いことを示すと理解できる。しかしながら、第1の時間に、全ての薬物を放出した。
【0076】
ゼラチンはSGF中でペプシンに応答性でないことが示された(図11)。組合せ処方の応答性は処方中のキトサンの存在によるためであると推論できる。
【0077】
架橋されたキトサン殻は、ペプシンの有無により、SGF中で同一の薬物放出プロフィールを有した(図12)。
【0078】
図13は、キトサン殻の微小環境の変更の結果、放出研究の全体にわたってペプシンを含まないSGFと比較して、SGF中でより速い薬物放出を生じ、一方、ゼラチン/キトサン処方は、薬物放出がペプシン存在下で増加した場合に短期間だけを有したことを示す。これは、SGF中のペプシンに対する非架橋キトサン殻の応答性を示した。
【0079】
自然発生の多糖類は豊富にあり、広範囲に利用可能で、安価であり、種々の特性を持った種々の構造で生じる。大部分の多糖類は容易に修飾可能で、高度に安定で、安全で、非毒性で、親水性でかつ生物分解性である。従って、それらは、「一般的に安全とみなされる」(GRAS)物質である(Sinha および Kumria, 2003)。胃腸管における薬物放出の遅延の手段として多糖類を用いることはよく知られているが、しかしながら、このアプローチを用いた生成物は、まだ利用可能ではない(Friend, 2005)。結腸は、タンパク質薬物が多数のプロテアーゼの攻撃がない胃腸管領域であり、血流および免疫系への薬物デリバリーのための理想的な部位であると考えられる。しかしながら、組み込まれた薬物を化学的および酵素的な分解から保護するために、上部GI管を介して移行する場合に無傷のままであることが必要であり、それらは、下部GI管の結腸部分に達すると直ちに、組み込まれた薬物を放出できるであろう(Liuら, 2003)。ペクチンは、胃および小腸の生理学的条件において無傷のままである非デンプン線形多糖類であり、ヒト大腸の細菌性居住者(inhabitant)により分解され、従って、結腸を標的とする薬物デリバリーのための理想的なポリマーである。ペクチンの水溶解度を低下させるために、それは、ペクチン酸カルシウムの形態で用いられている(SinhaおよびKumria, 2003)。塩へのペクチンの架橋は、架橋マトリックスからの薬物の逃避を遅らせて、かくして、早期の薬物放出を防止し得る。
【0080】
この仕事の結果、単回剤形における複数の薬物の部位特異的デリバリーのためのインサイチュ架橋され、かつ刺激応答性デバイスの設計を成功させた。in vitroでの研究は、薬物の望ましい放出の可能性を示した。また、これらの研究は、用いたポリマー間の組合せの可能性をさらに網羅し、これは、異なるポリマー/塩/他の処方賦形剤が薬物放出を制御する外部および内部プラットフォームに導入される場合のさらなる研究に導いた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1を超えるAPIの部位特異的デリバリーのための医薬剤形であって、剤形は、ヒトまたは動物体内の第1の部位へのデリバリー用の少なくとも1つのAPIを含む少なくとも1つの外部層、およびヒトまたは動物体内の第2の部位へのデリバリー用の少なくとも1つのAPIを含む少なくとも1つの内部層を含み、各層は、そのデリバリー部位に特有な特定の刺激に付された場合に、該APIの該部位における放出を可能とする特徴を有する該医薬剤形。
【請求項2】
外部層と内部層との間に位置した少なくとも1つの中間層を有する、請求項1記載の医薬剤形。
【請求項3】
中間層が、第1の部位と第2の部位との間の部位へのデリバリー用の少なくとも1つのAPIを含む、請求項2記載の医薬剤形。
【請求項4】
外部層が、使用において、外部層中の実質的に全てのAPIが放出されるまで内部層中に含まれるAPIの放出を抑制する殻形態である、請求項1〜3のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項5】
プラットフォームであり、各APIのための各層が、該プラットフォームに組み込まれた、請求項1〜4のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項6】
プラットフォームがポリマープラットフォームである、請求項5記載の医薬剤形。
【請求項7】
ポリマープラットフォームが、天然および/または合成ポリマーから製造された、請求項6記載の医薬剤形。
【請求項8】
ポリマープラットフォームが、多糖類ポリマーの群から選択される天然ポリマーから製造された、請求項7記載の医薬剤形。
【請求項9】
多糖類ポリマーが、キトサン、ペクチン、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ナトリウムカルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)のごときセルロース、およびデキストランよりなる群から選択される、請求項8記載の医薬剤形。
【請求項10】
ポリマープラットフォームが、標準的な親水性ポリマーを含む合成ポリマーから製造された、請求項7記載の医薬剤形。
【請求項11】
ポリマープラットフォームが、親水性、膨潤性または侵食性ポリマーを含む合成ポリマーから製造された、請求項7記載の医薬剤形。
【請求項12】
ポリマープラットフォームが、標準的な疎水性ポリマーを含む合成ポリマーから製造された、請求項7記載の医薬剤形。
【請求項13】
ポリマープラットフォームが、疎水性、膨潤性または侵食性ポリマーを含む合成ポリマーから製造された、請求項7記載の医薬剤形。
【請求項14】
ポリマープラットフォームが、刺激応答性ポリマーを含む合成ポリマーから製造された、請求項7記載の医薬剤形。
【請求項15】
ポリマープラットフォームが、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチルセルロース(EC)、ポリ(乳酸)コ−グリコール酸(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリメタアクリレート、ポリカプロラクトン、ポリエステルおよびポリアミドの少なくとも1つを含むポリマーから製造された、請求項7〜14のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項16】
ポリマープラットフォームが、使用において、コポリマーと混合されるポリマーから製造された、請求項7〜14のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項17】
ポリマープラットフォームが、単独で用られるポリマーから製造された、請求項7〜14のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項18】
APIまたは各APIが、マイクロおよび/またはナノ構造の形態であり、これらの構造が、ポリマーおよび/または他の速度調節の重要な処方補助剤と混合することによりポリマープラットフォームに組み込まれた、請求項1〜17のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項19】
APIが胃腸管領域にデリバリーされる、請求項1〜18のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項20】
APIがデリバリーされる胃腸管領域が、胃および結腸である、請求項19記載の医薬剤形。
【請求項21】
胃内容物の表面で最初に浮揚性であるか、または浮揚性になり、早期の胃内容排出を防止する胃内浮揚性特性を有する、請求項19記載の医薬剤形。
【請求項22】
胃液より高密度であり、使用において胃洞に沈む胃沈降特性を有する、請求項19記載の医薬剤形。
【請求項23】
使用において、膨潤し、剤形の膨潤性寸法に基づいて胃の幽門括約筋を介して急速な胃内容排出を防止する胃膨潤性特性を有する、請求項19記載の医薬剤形。
【請求項24】
使用においてGITの胃またはもう一つの領域の壁に付着し、付着部位に依存して早期の胃内容排出、十二指腸内容排出または結腸内容排出を防止する、請求項19記載の医薬剤形。
【請求項25】
剤形の外部プラットフォームが、胃内で部位特異的な刺激、好ましくはペプシンに応答して溶解し、一旦溶解すると、使用において、剤形の残りが小腸に移動し、小腸を通過し、最終的には胃腸管の結腸領域に入り、ここに、剤形の内部プラットフォームは、結腸領域における部位特異的な刺激に応答して溶解し、APIを放出する、請求項1〜24のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項26】
剤形の外部プラットフォームが、胃内でペプシンに応答して溶解する、請求項25記載の医薬剤形。
【請求項27】
剤形の内部プラットフォームが、結腸領域のAPIの吸収を増強する少なくとも1つの化合物を含み、かつ放出する、請求項1〜26のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項28】
プラットフォームが溶解し、APIを部位中の吸収に利用可能とし、ここに、それが放出され、および/またはAPIをその標的部位で局所的に作用するのに利用可能とするように、剤形が、各プラットフォームに組み込まれたAPIを放出する、請求項1〜27のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項29】
APIが、抗炎症物質、コルチコステロイド、抗下痢物質、オピオイド、免疫抑制物質、抗生物質、鎮吐物質、抗真菌物質、抗ウイルス物質、抗マラリア物質、抗TB物質、抗レトロウイルス物質、抗高血圧物質、タンパク質、ペプチド、化学療法物質、診断用物質、プロバイオティクス、プレバイオティクス、複合ビタミン物質、ミネラル、微量元素および植物性栄養素よりなる群から選択される1以上のいくらかのAPIから選択された、請求項1〜28のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項30】
ポリマーが、医薬剤形に組み込まれた電解質または塩とインサイチュ架橋するポリマープラットフォームを形成し、電解質または塩が、ホフマイスターシリーズの塩から選択され、いずれかまたはすべてのプラットフォームからの医薬剤形からのAPIおよび/またはグルタルアルデヒドおよびホルムアルデヒドの放出を遅延させるように作動可能である、請求項1〜29のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項31】
ポリマーが、マイクロ波照射、UV照射または化学的架橋を用いて架橋される、請求項1〜30のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項32】
医薬剤形の作動可能な最内部層が、その中に埋め込まれた少なくとも1つのAPIを含む単一の区別されるペレットを形成する少なくとも1つのインサイチュ架橋されたポリマーである、請求項1〜31のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項33】
医薬剤形の作動可能な最内部層が、多数のインサイチュ架橋されたポリマーを有し、ポリマーまたは複数のポリマーが、選択されたポリマーまたは複数のポリマーの性質に依存して、種々の刺激応答性ポリマーのポリマーマトリックスおよび/または、他の重要な処方補助剤、および所望の置換を形成する、請求項1〜31のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項34】
剤形の少なくとも1つの成分中に、種々の濃度のポリマー、医薬賦形剤および/またはカルボキシメチルセルロース(CMC)のごとき結合剤、および/または所望の塩のごとき架橋剤、および少なくとも1つの有効成分を混合することにより形成される、請求項1〜33のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項35】
医薬賦形剤がステアリン酸マグネシウムのごとき滑沢剤である、請求項34記載の医薬剤形。
【請求項36】
医薬剤形の外部ポリマー層からのAPIまたは各APIの放出が、使用された架橋剤、架橋剤の電離度、溶液pH、乾燥ポリマー−対−ペプシンの比および架橋の程度によって決定される、請求項26〜35のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項37】
最内部ポリマープラットフォームが、多数の適用および投与方法に適するように構造化可能である、請求項1〜36のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項38】
最内部ポリマープラットフォームが、最外部の胃内浮揚性ポリマープラットフォーム内に埋め込まれ、使用において、いずれかのポリマープラットフォームからのAPIが、ポリマープラットフォーム内に創製された拡散路程における変形の結果として、好ましくは、急速、あるいはゆっくりであり得る層制御された部位特異的な方法で、所望の期間にわたり放出できる、請求項1〜37のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項39】
最外部のポリマープラットフォームが低密度を有する、請求項38記載の医薬剤形。
【請求項40】
医薬活性化合物が少なくとも1つのディスクに処方され、ディスクが多数の同一または交互ポリマー層により囲まれる、請求項1〜39のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項41】
外部ポリマープラットフォームが、内部錠剤様成分を全体的または部分的に被包する殻形態であり、外部ポリマープラットフォームが、胃腸管の領域における特定の刺激、特に、ペプシンに応答して、使用において、胃腸管、特に、胃の1つの領域において第1のAPIの放出を可能とさせる、請求項1〜40のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項42】
殻の組成物が、種々の天然および合成ポリマーを含む、請求項41のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項43】
ポリマーが、キトサン、ゼラチンおよびポリアクリルアミド、ならびにスクロース−6−1’−ジアクリレートを含む群からの架橋剤よりなる群から選択される、請求項42記載の医薬剤形。
【請求項44】
外部殻が、限定されるものではないが、ポリビニルアルコール(PVA)を含む群からのポリマーまたは化合物のごとき付着特性を持つポリマーを用いて内部錠剤様成分に付着する、請求項41〜43のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項45】
錠剤様成分が、種々の天然および合成ポリマーのマトリックス内で分散した架橋API負荷顆粒を含む、請求項44記載の医薬剤形。
【請求項46】
ポリマーが、ペクチン、ポリエチレンオキシド(PEO)およびキサンタンガムから選択された、請求項45記載の医薬剤形。
【請求項47】
顆粒剤が、胃腸管の種々の領域、特に、結腸における特異的な酵素に使用において応答性である天然の多糖類ポリマーを含む、請求項45または請求項46記載の医薬剤形。
【請求項48】
天然の多糖類ポリマーが、アルギン酸塩、ペクチン、キサンタンガムおよびキトサンよりなる群から選択される、請求項47記載の医薬剤形。
【請求項49】
多糖類ポリマーが、β−グルコシダーゼ、ペクチナーゼおよび他のポリサッカリダーゼのごとき結腸酵素により消化/切断され易い、請求項47または請求項48記載の医薬剤形。
【請求項50】
顆粒ポリマーが、種々の電解質/塩または特にトリポリリン酸塩のごとき多価の塩と架橋する、請求項47〜49のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項51】
錠剤様マトリックスが、電解質/塩のごとき種々の架橋剤を用いてインサイチュ架橋される、請求項41〜49のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項52】
錠剤様成分が、pH応答性コーティング溶液でコーティングされる、請求項41〜50のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項53】
錠剤様成分が、pH非依存性コーティング溶液でコーティングされる、請求項41〜50のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項54】
錠剤様成分が、エチルセルロースおよび酢酸フタル酸セルロースよりなる群から選択される少なくとも1つの疎水性ポリマーラテックスでコーティングされる、請求項41〜50のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項55】
コーティング溶液が水性分散液である、請求項52〜54のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項56】
コーティング溶液が、アセトンまたはエタノールのごとき溶媒に分散する、請求項52〜54のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項57】
疎水性ポリマーが、錠剤様成分のマトリックス内に分散する、請求項54〜56のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項58】
pH応答性またはpH非依存性コーティング溶液または疎水性ポリマーラテックスが、単独または組み合わせて医薬剤形に適用される、請求項52〜57のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項59】
コーティング溶液が、種々の比および組合せで種々の多糖類または酵素と組み合わせて、所望のpH/時間/酵素応答性コーティングを形成する、請求項52〜58のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項60】
医薬剤形のポリマー成分を、使用においてpH応答性とし、作用または吸収の所望の部位へのAPIの正確なデリバリーを促進するようにコーティング溶液およびポリマーの組合せが選択される、請求項52〜59のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項61】
コーティング溶液およびポリマーが、医薬剤形のポリマー成分を作用または吸収の所望の部位に存在する1以上の酵素に応答性とし、作用または吸収の所望の部位へのAPIの正確なデリバリーを促進するように選択される、請求項52〜59のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項62】
コーティング溶液およびポリマーの組合せが、時間依存性にヒトまたは動物身体の特定領域内で分解し、作用または吸収の所望の部位へのAPIの正確なデリバリーを促進するように選択される、請求項52〜59のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項63】
医薬剤形の内部ポリマー層が錠剤形状である、請求項1〜62のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項64】
コーティング溶液および錠剤のために、多糖類ポリマーまたはポリマーおよびAPIの組合せの湿式または乾式造粒法により調製された顆粒剤の圧縮により形成される、請求項63記載の医薬剤形。
【請求項65】
医薬剤形の内部ポリマー層が、脱イオン水またはエタノールのごとき種々の溶媒およびAPIを用いて、多価塩または他の化学試薬のごとき架橋剤の単一または組合せで多糖類ポリマーまたはポリマーの組合せの顆粒剤を圧縮することにより形成される、請求項63記載の医薬剤形。
【請求項66】
顆粒剤が湿式造粒方法により調製される、請求項65記載の医薬剤形。
【請求項67】
顆粒剤が乾式造粒方法により調製される、請求項65記載の医薬剤形。
【請求項68】
単独または組合せで、あるいは単一ポリマーまたはポリマーの組合せのマトリックス中ではなく、適用し得るpH応答性もしくはpH非依存性のコーティング溶液または種々の疎水性ポリマーラテックスで顆粒剤がコーティングされる、請求項66または請求項67記載の医薬剤形。
【請求項69】
医薬剤形の錠剤形状の内部ポリマー層が、処方のポリマー成分の直接的な圧縮により形成される、請求項63〜68のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項70】
剤形のコーティングまたは複数のコーティングが、特有のpH/時間/酵素を形成するような種々の比および組合せで種々の多糖類または酵素応答性ポリマーと組み合わされる、請求項1〜69のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項71】
外部ポリマー殻の微小環境が、使用において、ペプシンのキトサン分解活性に最適な環境を促進するように変更され、外部ポリマー殻の酵素応答性を改善し、APIの十分または完全で部位特異的なデリバリーを確実にする、請求項1〜70のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項72】
外部ポリマー殻の微小環境が、種々の濃度の水酸化ナトリウム溶液、種々の濃度の水酸化アンモニウム溶液のごとき種々のアルカリ性溶液を添加すること;または炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムのごとき塩を直接的に使用することにより変更される、請求項1〜70のいずれか1記載の医薬剤形。
【請求項73】
該医薬剤形の関連するポリマーおよび架橋塩の電荷密度が、より低い溶液pHを持つ溶液pHにより決定され、使用において、架橋塩の電離度の十分な減少の結果、ポリマーまたは複数のポリマーと架橋剤または複数の架橋剤との間でポリマー架橋を弱め、医薬剤形の外部ポリマー層の膨潤を促進し、その層へのペプシンと共の流体の拡散を可能とし、キトサンの切断および/または分解を生じさせる結果、医薬剤形からのAPI放出を生じさせる、請求項1〜72のいずれか1記載の医薬剤形。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2011−524890(P2011−524890A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514138(P2011−514138)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【国際出願番号】PCT/IB2009/005830
【国際公開番号】WO2009/153633
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(507198875)ユニバーシティ・オブ・ジ・ウィトウォーターズランド・ヨハネスブルク (7)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF THE WITWATERSRAND, JOHANNESBURG
【Fターム(参考)】