説明

1組の製品に印を付ける装置及び方法

【解決手段】本発明は、一群の製品に印を付ける方法に関しており、本方法では、各製品に画像(20)の合成ホログラムを形成し、更に合成ホログラムを位相キーによって符号化し、画像は、一群の様々な製品に共通する第1の部分(22)と製品毎に異なる第2の部分(24)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば模造品を検出するために1組の製品に印を付ける装置及び方法に関する。より具体的には、本発明は、製品の適切な追跡を可能にする印付け装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの分野で、特に高級品に関する生産業(例えば香水類、宝石若しくは皮革製品)又は薬品の分野では、ブランド製品の模造品との戦いが日常茶飯事である。ブランド製品の信頼性を保証すべく、現在幾つかの方法が使用されている。最も簡単な方法は、製品に商標ロゴを複製するか又は貼り付けることである。しかしながら、悪意のある人はロゴを容易に複製することができる。
【0003】
検出してコピーするのが更に難しい他の印付け方法が知られている。これらの印付け方法の内の1つは、肉眼には見えない識別チップを一群の製品の夫々に取り付けることである。この識別チップが見えないようにするために、ホログラムが、製品に取り付けられる透明なチップ上に形成されてもよい。ホログラムは、例えば商標ロゴを表す画像のフーリエ変換を計算することにより得られてもよい。従って、製品の出所が、ホログラムの有無により保証される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5801857 号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1は、見えても見えなくてもよい印又は識別チップが取り付けられている製品の一例を図示している。
【0006】
例えば香水用の瓶10が、容器12及び蓋14から構成されている。示された例では、2つのチップ16が瓶10に取り付けられており、一方のチップ16が容器12上に取り付けられて他方のチップ16が蓋14の上に又は蓋14の内部に取り付けられている。チップ16は、ホログラム18が形成された薄い透明板から構成されている。
【0007】
図1に示されたチップ16のような識別チップは、あらゆるタイプの製品に、例えば腕時計のガラスに取り付けられてもよい。一般に、対象物の外観を変えないようにし、且つ印が検出されないようにするために、印は可能な限り目立たなくする必要がある。
【0008】
公知のホログラム印付け構造の不利点は、目に見えず小型であっても、印の存在を知っている人が、適切な手段及びリバースエンジニアリングを用いてホログラムを調べることにより印の最初の画像を得て、それによりコピー製品にホログラムを複製することである。
【0009】
米国特許第5801857号明細書は、製品、特に銀行カードに印を付ける方法について述べている。この方法では、ホログラムを有するラベルを一群の銀行カードの夫々に接着する。ホログラムは各ラベルで同一である。ラベルを夫々区別し、従って銀行カードの印を個別化するために、画像がホログラムに重ね合わせられる。しかしながら、このような印は容易に検出され複製される場合がある。
【0010】
本発明の実施形態の目的は、第三者による復号が不可能である符号化されたホログラムを用いて一群の製品に印をつける方法を提供することである。
【0011】
本発明の実施形態の別の目的は、符号化されたホログラムの正確な複製であっても検出可能な符号化されたホログラムによって印を付ける方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、本発明の実施形態は、一群の製品に印を付ける方法において、各製品に画像の合成ホログラムを形成し、該合成ホログラムを位相キーによって符号化し、前記画像は、一群の様々な製品に共通する第1の部分と製品毎に異なる第2の部分とを有することを特徴とする方法を提供する。
【0013】
本発明の実施形態によれば、前記合成ホログラムは、電子ビーム又はレーザによるエッチングによって形成される。
【0014】
本発明の実施形態によれば、前記画像の第2の部分は、製品毎に増加する1組の数字及び/又は文字をバーコード又はデータ行列に有する。
【0015】
本発明の実施形態によれば、符号化された合成ホログラムは、製品に直接形成される。
【0016】
本発明の実施形態によれば、符号化された合成ホログラムは、製品に取り付けられるチップに形成される。
【0017】
本発明の実施形態によれば、前記チップは、1cm2 未満の表面積を有し、薄いエッチングされた酸化白金層から形成されている。
【0018】
本発明の実施形態は、模造品の可能性がある製品を検出して、符号化された合成ホログラムを確認する方法であって、少なくとも2つの製品をサンプリングして、適宜の位相キーにより、前記製品の符号化された合成ホログラムを復号し、復号によって得られた画像が基準の差を有することを確認することを特徴とする方法を提供する。
【0019】
本発明の前述及び他の目的、特徴及び利点を、添付図面を参照して本発明を限定するものではない具体的な実施形態について以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】製品の認証を可能にする印が取り付けられた製品の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るホログラムの形成を可能にする画像の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係るホログラムを有するチップを形成する方法を示すフローチャートである。
【図4】ホログラムを有するチップの形成を可能にするエッチング装置の一例を示す図である。
【図5A】図2に示されたような最初の画像から得られたホログラムの一例を示す図である。
【図5B】図2に示されたような最初の画像から得られたホログラムの一例を示す図である。
【図6】図2に示されたような2つの画像から得られた2つのホログラム間の比較を示す図である。
【図7】符号化された合成ホログラムを伝送で読み取るための装置の一例を示す図である。
【図8】符号化された合成ホログラムを反射で読み取るための装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
明瞭化のために、同一の要素は異なる図面において同一の参照番号で示されてあり、更に、様々な図面は正しい縮尺で示されていない。
【0022】
本発明者は、製品に印を付ける装置及び方法を提供しており、この印のコピーは容易に検出可能である。これを達成するために、本発明者は、符号化されたホログラムを有して透明であることを問わないチップの一群の製品全てへの取付けを提供しており、ホログラムの符号化は、位相キーを必要とするステップを有している。そのため、ホログラムの復号は、符号化に使用された位相キーを使用しなければ不可能である。更に本発明者は、非常に正確な直接コピーでも検出可能なホログラムを提供する。このために、本発明者は、一群の様々な製品に共通する第1の部分と製品毎に異なる第2の部分とである2つの部分を有する最初の画像からのホログラムの形成を提供する。従って、製品に存在するホログラムの非常に正確なコピーと、このホログラムの他の複数の製品への複製とが検出可能である。このために、製品に関して、2つの製品間で異なることを意図したホログラムから復元された画像部分が実際は同一であることを確認するだけで十分である。
【0023】
図2は、実施形態に係る2つの部分を有する最初の画像の一例を図示している。
【0024】
最初の画像20は、第1の部分22及び第2の部分24を有している。第1の部分22は、示された例ではロゴ及び頭文字(CGH )を有している。第2の部分24は、製品毎に、従ってホログラム毎に異なる一連の数字及び文字(「AXB2008/00244 」)を有している。例えば、第2の部分24は、製品毎に増加するシリアル番号、バーコード又はデータ行列であってもよい。
【0025】
図3は、ホログラム、本件では符号化された合成ホログラムを有するチップを製品に形成する方法の実施形態を示すブロック図である。
【0026】
第1のステップ30では、図2に示された画像20のような最初の画像のフーリエ変換を計算して第1の画像32及び第2の画像34を得る。第1の画像32(振幅画像)は、フーリエ変換の振幅を示しており、第2の画像34(位相画像)は、フーリエ変換の位相を示している。
【0027】
符号化ステップ36では、位相キーにより第2の画像34を符号化する。位相キーは、第2の画像34の位相シフト領域に対応するラインを有するパターンから形成されている。そのため、同一の位相キーが、形成されたホログラムを復号するために必要である。
【0028】
次の計算ステップ38では、第1の画像32と、第2の画像34を符号化する符号化ステップ36で得られた画像とを集めた画像を計算する。計算は、様々な公知の方法で行なわれてもよく、例えば、以下の刊行物に述べられているホログラフィ計算方法により行われてもよい。エー.ダブリュ.ローマン(A. W. Lohmann)及びディー.ピー.パリス(D. P. Paris)共著,「コンピュータによって生成される2進法のフラウンホーファーホログラム(Binary Fraunhofer holograms, generated by computer)」,応用光学(Appl. Opt.),1967年,p.1739−1748。この方法では、画素振幅に応じた可変サイズの開口部を有し画素位相に応じて略中心に置かれる不透明な領域を、ホログラム画像の各画素と関連付けている。行われる計算に応じて、複数の階調(例えば256 階調)に取り込まれてもよい可能な状態を多数有する画素が形成される。非限定例として、第1の画像32及び第2の画像34、従って得られた符号化されたホログラムは、500 ×500 画素、800 ×800 画素又は1000×1000画素を有してもよい。符号化ステップ36及び計算ステップ38の連携により、符号化された合成ホログラムと呼ばれるホログラムが実現される。
【0029】
ホログラムの符号化及び計算にかかる時間は、ホログラムが有するピクセル数によって決まる。例えば、500 ×500 画素を有するホログラムの符号化及び計算にかかる時間は、64ビットのDell Precision 490 MT Dual Core Xeon 515タイプのパーソナルデスクトップコンピュータ上でMatlab(マトラボ)プログラムを用いて約0.1秒間である。
【0030】
次のエッチングステップ40では、符号化によって得られたホログラムが、チップにエッチングされるか、又は対象物に直接エッチングされる。エッチングは、電子ビーム、又は1マイクロメートルの何分の1かより高い精度を与えるレーザビームによって行なわれてもよい。一例として、500×500 画素を有するホログラムでは、エッチングが1.25×1.25mmのチップに行われてもよい。エッチングされたチップは、1cm2 未満の表面積を有することが好ましい。レーザビームのエッチングによって、約200 個のチップが約30分でエッチングされ、すなわち、1チップ当たりのエッチング時間は数秒である。電子ビームのエッチングは同様の結果を与える。従って、計算時間は、エッチング時間と比較して無視できる程度である。従って、ここに提供された方法は、ホログラムをウエハ上に形成する公知の方法に比べてもそれ程時間がかからないことが有利である。
【0031】
好ましくは、エッチングステップ40の前に、ステップ30乃至ステップ38が数回繰り返されて、第2の部分24で互いに異なる様々な最初の画像に対応する一組の符号化された合成ホログラムを得る。その後、印が付けられるべき対象物に取り付けられるべき多くのチップであり、異なるホログラムを夫々有する前記チップが単一のウエハエッチングステップで得られる。
【0032】
次のステップ42では、様々なチップのダイシングが行われて、ステップ42の後のステップ44で、チップは、認証されるべき製品に夫々貼り付けられる。一例として、チップは、分子結合により製品に貼り付けられてもよい。
【0033】
図4は、ホログラムを有するチップの形成を可能にするエッチング装置の一例を図示している。ホログラムの形成が望まれるウエハ50が、回転台(不図示)に置かれる。電子ビーム又はレーザによるエッチングを可能にするエッチングポイント52がウエハ50に位置合わせされる。ウエハ50の直径に沿って可動するエッチングポイント52は、ウエハ50の薄い環状細片54へのエッチングを可能にする。ウエハ50が回転させられるとき、エッチングポイント52は細片54の様々な部分の前に置かれる。従って、細片54がエッチングされて、エッチングの後、エッチングポイント52は細片54と平行な細片上で移動する。1つの細片から別の細片への通過は連続的であってもよく、従ってエッチングポイントはウエハ上で螺旋状の経路をたどる。例えば、ウエハは、酸化白金層が形成されているガラスウエハであってもよい。レーザの照射を受けて熱的作用により酸化白金が白金に変化し、その後白金は化学エッチングによって取り除かれる。酸化白金が反射性物質であるので、ホログラムは反射又は伝送で作動可能である。尚、この工程は単に一例であり、多くのエッチング工程がホログラムを形成すべく用いられてもよい。
【0034】
図5Aは、図2に示されたような画像に基づき図3に示された方法によって得られた符号化された合成ホログラム64を図示している。図5Bは、図5Aに示された合成ホログラム64の中央部分66の拡大図であり、図5Aではエッチングされるべき領域を一点に集めている。
【0035】
図5A及び5Bに示されたホログラムは、強く印が付けられた中央領域とより軽く印が付けられた周辺領域とを有している。尚、フーリエ変換によって、最初の画像の全ての要素がホログラム全体に分散されるので、符号化された合成ホログラムは、該合成ホログラムを形成すべく使用される最初の画像を表していない。しかしながら、最初の画像内に存在する小さな寸法の細部がホログラム全体に分散される。従って、2つの僅かに異なる画像(例えば、異なるシリアル番号)に対応する2つのホログラムから、使用された最初の画像を復元することは不可能である。更に、ホログラムが欠陥、例えば一片のほこり又は薄い引っ掻き傷を有する場合、この欠陥は、復号の際に復号によって得られた画像全体に分散されることが有利である。従って、ホログラムの符号化は非常に堅牢である。
【0036】
図6は、2つの僅かに異なる画像、例えば、シリアル番号で数字が1つ異なる図2に示されたような2つの画像から得られた2つのホログラムの2つの中央部分間の差を図示している。解像度が800×800 画素である場合を検討する。
【0037】
差画像70では、灰色の画素は夫々、2つの対象のホログラムの対応する画素間の差が2.3 %と等しい最大誤差値より小さい、すなわち画像が256 階調を有する場合には6階調より小さい画素に相当する。尚、灰色の画素は画像の略全表面に分散されており、最大誤差は低いままである。従って、最初の画像の僅かな変更が、得られたホログラム全体に分散される。従って、複数のホログラムから、人為的に増やされた異なる第2の部分24を有するホログラムを復元することは不可能である。
【0038】
位相キーの使用により、模造者が、製品にホログラムの存在を検出してホログラムの復号を試みても成功しない。2つの僅かに異なる画像から得られた2つのホログラム間の差によって符号化技術を知ることもできない。従って、合成ホログラムによる印をコピーするために残された唯一の解決法は、対象物に形成されたホログラムを可能な限り正確に直接コピーすることである。本発明者は、このようなホログラムから復号された画像は不鮮明であり、画質が劣るので、ホログラムの不完全なコピーは容易に検出され得ることに注目した。
【0039】
模造者が符号化された合成ホログラムを完全にコピーすることができても、このようなホログラムのコピーも検出され得る。実際コピーを検出するには、2つのコピー製品を押収してこれらの製品に形成された合成ホログラムを復号するだけで十分である。復号によって得られた画像のシリアル番号が同一である場合、これは、ホログラムがコピーであることを意味する。
【0040】
図7は、符号化された合成ホログラムを復号して読み取ることを可能にする装置の一例を図示している。
【0041】
ここでは、伝送読み取り装置を検討する。光ビーム80が、復号に使用された位相キーを有するブレード82を横切って、その後チップ86に形成されたホログラム84を横切る。ホログラム84によって回折されたビーム88が、面94での復号画像92の形成を可能にするレンズ90を横切る。ホログラムのサンプリングにより、複数の画像が面94に復元される。取得を行なうカメラが1つの画像を選択する。
【0042】
図8は、符号化された合成ホログラムを反射で読み取るための装置の一例を図示している。
【0043】
レーザビーム94が、位相キーを有するブレード96を横切り、その後ビームスプリッタ98に入る。ビームスプリッタ98は、レーザビーム94に垂直なビームを合成ホログラム100 に向かって与える。合成ホログラム100に反射したビームが、ビームスプリッタ98に再度入り、読み取り面104 での復号画像の形成を可能にするレンズ102 に達する。ビームスプリッタ98は、合成ホログラム100 を正確に照射することを可能にする可動性支持体に配置されていることが好ましい。
【0044】
尚、位相キー及びホログラムの位置合わせは、ホログラムから復号画像を得るために正確である必要がある。このために、ホログラムは、位置合わせを可能にする特徴点を有してもよい。
【0045】
本発明の具体的な実施形態が述べられている。様々な変更及び調整が当業者に想起される。特に、図7及び8に図示された読み取り装置は単なる例であり、いかなる適合された読み取り装置がここに述べられた合成ホログラムを復号すべく使用されてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一群の製品に印を付ける方法において、
各製品に画像(20)の合成ホログラム(64)を形成し、
該合成ホログラム(64)を位相キーによって符号化し、
前記画像(20)は、一群の様々な製品に共通する第1の部分(22)と製品毎に異なる第2の部分(24)とを有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記合成ホログラムは、電子ビーム又はレーザによるエッチングによって形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記画像(20)の第2の部分(24)は、製品毎に増加する1組の数字及び/又は文字をバーコード又はデータ行列に有することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
符号化された合成ホログラムは、製品に直接形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
符号化された合成ホログラムは、製品に取り付けられるチップに形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記チップは、1cm2未満の表面積を有し、薄いエッチングされた酸化白金層から形成されていることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
模造品の可能性がある製品を検出して、符号化された合成ホログラムを確認する方法であって、
少なくとも2つの製品をサンプリングして、
適宜の位相キーにより、前記製品の符号化された合成ホログラムを復号し、
復号によって得られた画像が基準の差を有することを確認する
ことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−515363(P2012−515363A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545782(P2011−545782)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050041
【国際公開番号】WO2010/081986
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(507362786)コミサリア ア エナジー アトミック エ オックス エナジーズ オルタネティヴ (22)
【Fターム(参考)】