説明

1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンとトリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタンとの相乗的抗微生物組成物

【課題】油田およびガス田注入、生産流体、破砕流体および機能性流体、油井およびガス井、油およびガス操作、分離、貯蔵並びに輸送システム、種々の産業用水のシステムなどにおいて微生物を制御する方法の提供。
【解決手段】1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンと、トリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタンとを含む相乗的抗微生物組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は殺生物剤の組み合わせに関し、この組み合わせは個々の抗微生物化合物について観察されるであろうよりも高い活性を有する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも2種類の抗微生物化合物の組み合わせの使用は潜在的な市場を広げることができ、使用濃度およびコストを低減させることができ、かつ廃棄物を低減させることができる。ある場合には、市販の抗微生物化合物は、ある種の微生物に対する弱い活性、または相対的に遅い抗微生物作用、または高温および高pHのような特定の条件下での不安定性のせいで、高い使用濃度でさえ微生物の効果的な制御を提供することができない。微生物の全体的な制御を提供するために、または特定の最終使用環境において低い使用割合で同じ水準の微生物の制御を提供するために、異なる抗微生物化合物の組み合わせが場合によっては使用される。例えば、米国特許第6,432,433号は1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(BIT)とホルムアルデヒド付加物との組み合わせを開示するが、この文献は本願で特許請求される組み合わせのいずれも示唆していない。さらに、微生物の効果的な制御を提供する増大した活性を有する抗微生物化合物のさらなる組み合わせについての必要性が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,432,433号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明によって取り組まれる課題は、抗微生物化合物のそのような組み合わせを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(a)1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンと、(b)トリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタン(Tris Nitro:トリスニトロ)とを含み、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン:トリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタンの重量比が12:1〜1:12である、相乗的抗微生物組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書において使用される場合、文脈が明らかに他のことを示さない限りは以下の用語は指定された定義を有する。用語「抗微生物化合物」とは、微生物の成長もしくは増殖を阻止し、および/または微生物を殺すことができる化合物をいい;抗微生物化合物には、適用される用量レベル、システム条件および望まれる微生物制御の水準に応じて、殺バクテリア剤、静バクテリア剤、殺真菌剤、静真菌剤、殺藻剤および静藻剤が挙げられる。用語「微生物」には、例えば、真菌(例えば、酵母およびカビなど)、バクテリアおよび藻類が挙げられる。以下の略語が本明細書を通して使用される:ppm=重量基準の100万分率(重量/重量)、mL=ミリリットル。他に特定されない限りは、温度は摂氏度(℃)であり、パーセンテージに関する言及は重量基準(重量%)である。本発明の組成物中の抗微生物化合物のパーセンテージは組成物中の活性成分の全重量、すなわち、溶媒、担体、分散剤、安定化剤もしくは存在しうる他の物質の量を除いた抗微生物化合物自体に基づく。抗微生物組成物中に他の殺生物剤が存在しうる。
【0007】
好ましくは、BIT:トリスニトロの重量比は10:1〜1:12、好ましくは10:1〜1:10、好ましくは9:1〜1:12、好ましくは9:1〜1:10、好ましくは9:1〜1:9、好ましくは9:1〜1:8.2である。好ましくは、嫌気性バクテリアの成長を阻止するために、この組成物はBIT:トリスニトロの重量比12:1〜1:7、好ましくは12:1〜1:6、好ましくは12:1〜1:5、好ましくは10:1〜1:4、好ましくは10:1〜1:3、好ましくは10:1〜1:5、好ましくは9:1〜1:5、好ましくは9:1〜1:4、好ましくは9:1〜1:3で使用される。好ましくは、好気性バクテリアの成長を阻止するために、この組成物はBIT:トリスニトロの重量比1:2〜1:12、好ましくは1:2〜1:10、好ましくは1:2〜1:9、好ましくは1:2〜1:8.5、好ましくは1:2.5〜1:10、好ましくは1:2.5〜1:9、好ましくは1:2.5〜1:8.5、好ましくは1:2.5〜1:8.2、好ましくは1:2.9〜1:8.2で使用される。
【0008】
好ましくは、本発明の抗微生物組成物は油田およびガス田注入、生産流体、破砕流体および機能性流体、油井およびガス井、油およびガス操作、分離、貯蔵並びに輸送システム、油およびガスパイプライン、油およびガス容器、並びに燃料において有用である。この組み合わせは、油およびガス井に添加されるもしくは油およびガス井によって生産される水性流体において特に有用である。本組成物は他の産業用水および水含有/汚染マトリックス、例えば、冷却水、エアウォッシャー、熱交換器、ボイラー水、パルプおよびペーパーミル水、他の産業プロセス水、バラスト水、廃水、金属加工用流体、ラテックス、塗料、コーティング、接着剤、インク、テープジョイント成分、顔料、水系スラリー、パーソナルケア用品および家庭用品、例えば、洗剤、ろ過システム(逆浸透システムおよび超濾過システムなど)、便器、布、皮革および皮革製造システム、またはこれらと共に使用されるシステムにおいて微生物を制御するのにも有用である。
【0009】
典型的には、微生物の成長を制御するための本発明の殺生物剤の組み合わせの量は10ppm〜5,000ppm活性成分である。好ましくは、組成物の活性成分は少なくとも20ppm、好ましくは少なくとも50ppm、好ましくは少なくとも100ppm、好ましくは少なくとも150ppm、好ましくは少なくとも200ppmの量で存在する。好ましくは、組成物の活性成分は2,000ppm以下、好ましくは1,000ppm以下、好ましくは500ppm以下、好ましくは400ppm以下、好ましくは300ppm以下、好ましくは250ppm以下、好ましくは200ppm以下、好ましくは100ppm以下、好ましくは50ppm以下の量で存在する。上で言及された濃度は殺生物剤の組み合わせを含む液体組成物中のものである。高スルフィドおよび高温環境における殺生物剤濃度は典型的には他の環境におけるよりも高い。
【0010】
本発明は、特許請求された殺生物剤の組み合わせを材料に組み込むことによって、上記使用領域において、特に油もしくは天然ガス生産操作において、微生物の成長を低減、もしくは阻止、もしくは妨げるための方法も包含する。
【実施例】
【0011】
実施例1.嫌気性バクテリアに対するBITおよびトリスニトロの相乗効果
嫌気チャンバー(バクトロン(Bactron)嫌気チャンバー)内で、脱気滅菌塩溶液(1Lの水中に3.1183gのNaCl、1.3082mgのNaHCO、47.70mgのKCl、72.00mgのCaCl、54.49mgのMgSO、172.28mgのNaSO、43.92mgのNaCO)が、油田から単離された嫌気性集団、主としてSRBで、10〜10CFU/mLの最終バクテリア濃度で汚染された。次いで、この汚染水のアリコートがBIT、トリスニトロ、またはBIT/トリスニトロ組み合わせで、様々な活性物濃度レベルで処理された。この混合物が40℃で24時間インキュベートされた後で、このアリコートにおいてバクテリアを殺すための最小の試験殺生物剤濃度(MBC)によって、殺微生物有効性が決定された。表1は各殺生物剤およびそのブレンドの有効性、並びに各組み合わせの相乗指数をまとめる。
【0012】
表1.BIT、トリスニトロ、BIT/トリスニトロ組み合わせの有効性および相乗指数
【表1】

【0013】
相乗指数=Ca/CA+Cb/CB
Ca=殺生物剤Bとの組み合わせにおいて使用される場合に、完全にバクテリアを殺すのを達成するのに必要な殺生物剤Aの濃度
CA=単独で使用される場合に、完全にバクテリアを殺すのを達成するのに必要な殺生物剤Aの濃度
Cb=殺生物剤Aとの組み合わせにおいて使用される場合に、完全にバクテリアを殺すのを達成するのに必要な殺生物剤Bの濃度
CB=単独で使用される場合に、完全にバクテリアを殺すのを達成するのに必要な殺生物剤Bの濃度
【0014】
相乗指数<1:相乗作用
相乗指数=1:相加作用
相乗指数>1:拮抗作用
【0015】
表1に示されるように、トリスニトロとの組み合わせでのBITは、少なくとも9:1〜1:3のBIT:トリスニトロの活性物重量比で相乗効果を有していた。
【0016】
実施例2.好気性バクテリアに対するBITおよびトリスニトロの相乗効果
滅菌NaCl溶液(0.85%)が緑膿菌(Psedomonas aeruginosa)ATCC10145および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ATCC6538で、〜10CFU/mlの最終バクテリア濃度で汚染された。この汚染水のアリコートがBIT、トリスニトロ、またはBIT/トリスニトロ組み合わせで、様々な活性物濃度レベルで処理された。この混合物が37℃で24時間インキュベートされた後で、このアリコートにおいてバクテリアを完全に殺すための最小の試験殺生物剤濃度(MBC)によって、殺微生物有効性が決定された。表2は各殺生物剤およびそのブレンドの有効性、並びに各組み合わせの相乗指数をまとめる。
【0017】
表2.BIT、トリスニトロ、BIT/トリスニトロ組み合わせの有効性および相乗指数
【表2】

【0018】
表2に示されるように、トリスニトロとの組み合わせでのBITは、少なくとも1:29〜1:8.2のBIT:トリスニトロの活性物重量比で強い相乗効果を有しており、組み合わせで使用される場合には別々に使用されるよりもかなり低い用量が、好気性バクテリアの良好な制御のために必要とされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンと、(b)トリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタンとを含み、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン:トリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタンの重量比が12:1〜1:12である、相乗的抗微生物組成物。
【請求項2】
前記重量比が9:1〜1:8.2である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(a)1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンと、(b)トリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタンとを水性媒体に添加することを含み、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン:トリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタンの重量比が12:1〜1:12である、水性媒体における微生物の成長を阻止する方法。
【請求項4】
水性媒体が嫌気性バクテリアを含み、前記重量比が12:1〜1:7である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
水性媒体が好気性バクテリアを含み、前記重量比が1:2〜1:12である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記重量比が9:1〜1:3である請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記重量比が1:1〜1:8.2である請求項5に記載の方法。

【公開番号】特開2012−106990(P2012−106990A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−222431(P2011−222431)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】