説明

1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノン及びその精製方法

【課題】50%水溶液の水素イオン指数が中性を示すような1, 3−ジアルキル−2-イミダゾリジノンを提供することを目的とする。
【解決手段】
その50%水溶液の水素イオン指数が6〜8以外の水素イオン指数を示す一般式(1)


(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す)
で表される化合物を、次の(1)〜(8)の処理から選ばれる少なくとも一種以上の処理を施すことにより、その50%水溶液の水素イオン指数が6〜8を示す1, 3−ジアルキル−2-イミダゾリジノンを得ることができる。
(1)酸類で処理した後、不活性気体で処理
(2)塩基類で処理
(3)イオン交換樹脂で処理
(4)不活性気体で処理
(5)酸ハロゲン化物類で処理
(6)カルボジイミド類で処理
(7)アルコール類で処理
(8)アルデヒド類で処理

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は1, 3−ジアルキル−2-イミダゾリジノン及びその精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1, 3−ジアルキル−2-イミダゾリジノンは極性の高い非プロトン性溶媒であり、一般的な非プロトン性極性溶媒と比べて、酸、アルカリに対して極めて安定的であり、且つ各種の無機、有機化合物に対して強い溶解力をもつことから、医薬、農薬、染料、顔料等の合成溶媒、ポリ塩化ビフェニル類の分解溶媒、電子部品、モールド等の洗浄剤、高分子化合物の重合溶媒等として極めて有用な物質である。
【0003】
1, 3−ジアルキル−2-イミダゾリジノンを製造する方法としては、例えば、N,N´−ジアルキルエチレンジアミンを尿素で環化する方法(特許文献1を参照。)、ホスゲンで環化する方法(特許文献2を参照。)、二酸化炭素で環化する方法(特許文献3を参照。)、また、エチレン尿素をホルマリンと水素で還元アルキル化する方法(特許文献4を参照。)等が知られている。
【0004】
また、1, 3−ジアルキル−2-イミダゾリジノンの精製方法として、例えば、芳香族ジイソシアナートと芳香族ジカルボン酸でプロトン性不純物を除去する方法(特許文献5を参照。)、酸化マグネシウム及び/またはシリカゲルを含む複合塩と接触させプロトン性不純物を除去する方法(特許文献6を参照。)、更に尿素で環化する方法においてプロトン性物質である1, 3−ジアルキル−2-イミダゾリジンイミンを除去する方法(特許文献7を参照。)が知られている。
【0005】
一方、pH7以下の無水のジメチルアルキレン尿素中に特定構造の繰返単位からなるポリイミドを含有する成形及び紡糸を直接行うことができる透明な溶液の調製には、pH7以下の無水のジメチルアルキレン尿素を溶媒として用いることが重要であることが報告されている(特許文献8を参照。)
【特許文献1】特開昭61−236769号公報
【特許文献2】特開昭62−181264号公報
【特許文献3】特開2000−026427号公報
【特許文献4】特開昭53−98965号公報
【特許文献5】特開平2−115170号公報
【特許文献6】特開平2−1480号公報
【特許文献7】特開2000−063357号公報
【特許文献8】特開2003−48981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のように、1, 3−ジアルキル−2-イミダゾリジノンは種々の製造方法で製造できるが、例えば、N,N´−ジアルキルエチレンジアミンを尿素で環化する方法(特開平2000−63357号)により得られる1, 3−ジアルキル−2-イミダゾリジノンの水溶液が塩基性を示すこと、1,3−ビス(ヒドロキシアルキル)−2−イミダゾリジノンを蟻酸等の有機酸で還元する方法で得られた1, 3−ジアルキル−2-イミダゾリジノンの水溶液が酸性を示すことが判明した。
【0007】
その水溶液が酸性又は塩基性を示す1, 3−ジアルキル−2-イミダゾリジノンを前記のような種々の用途に使用する場合、例えば、前記の特許文献8に示されたように、塩基性を示すような1, 3−ジアルキル−2-イミダゾリジノンを特定の用途に使用する場合に、問題が発生する虞がある。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑み、その水溶液の水素イオン指数が中性を示すような1, 3−ジアルキル−2-イミダゾリジノンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記の課題を解決する為に鋭意検討した結果、その水溶液の水素イオン指数が6〜8以外の水素イオン指数を示す1, 3−ジアルキル−2-イミダゾリジノンに対して特定の処理を行うことにより、その水溶液の水素イオン指数が6〜8の水素イオン指数を示す1, 3−ジアルキル−2-イミダゾリジノンが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、その50%水溶液の水素イオン指数が6〜8を示す一般式(1)
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す)で表される化合物、及びその50%水溶液の水素イオン指数が6〜8を示す一般式(1)で表される化合物を得るための精製方法に関するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、その50%水溶液の水素イオン指数が6〜8を示す一般式(1)で表される化合物及びこれを得るための精製方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の一般式(1)で表される化合物は、その50%水溶液の水素イオン指数が6〜8を示すことを特徴とする。
【0015】
一般式(1)中のRは炭素数1〜4のアルキル基を示す。
【0016】
一般式(1)で表される化合物としては、例えば、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジプロピル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジブチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。
【0017】
一般式(1)で表される化合物の製造方法に制限はなく、例えば、前記の特許文献1〜4に記載された、N,N´−ジアルキルエチレンジアミンを尿素で環化する方法、ホスゲンで環化する方法、二酸化炭素で環化する方法、エチレン尿素をアルデヒド化合物と水素で還元アルキル化する方法及び1,3−ビス(ヒドロキシアルキル)−2−イミダゾリジノンを蟻酸等の有機酸で還元する方法で製造することができる。
【0018】
前記の製造方法等により得られる、その50%水溶液の水素イオン指数が6〜8以外の水素イオン指数を示す一般式(1)で表される化合物に対して、次の(1)〜(8)の処理から選ばれる少なくとも一種以上の処理を施すことにより、その50%水溶液の水素イオン指数が6〜8を示す一般式(1)で表される化合物を得ることができる。
【0019】
(1)酸類及び不活性気体で処理する
(2)塩基類で処理する
(3)イオン交換樹脂で処理する
(4)不活性気体で処理する
(5)酸ハロゲン化物類で処理する
(6)カルボジイミド類で処理する
(7)アルコール類で処理する
(8)アルデヒド類で処理する
前記の(1)〜(8)の処理のうちのどの処理を選択するかは、適宜決めることができるが、通常、これらの処理を施す前の一般式(1)で表される化合物の水溶液が示す水素イオン指数に応じて適宜選択する。例えば、N,N´−ジアルキルエチレンジアミンを尿素で環化する方法、エチレン尿素をアルデヒド化合物と水素で還元アルキル化する方法などで得られる、その水溶液が塩基性(pH8を超える)を示す一般式(1)で表される化合物の処理には、例えば、酸類及び不活性気体で処理する方法、陽イオン交換樹脂で処理する方法、不活性気体で処理する方法、酸ハロゲン化物類で処理する方法、カルボジイミド類で処理する方法、アルデヒド類で処理する方法が採用される。
【0020】
一方、1,3−ビス(ヒドロキシアルキル)−2−イミダゾリジノンを蟻酸等の有機酸で還元する方法などで得られる、その水溶液が酸性(pH6未満)を示す一般式(1)で表される化合物の処理には、例えば、塩基類で処理する方法、陰イオン交換樹脂で処理する方法、不活性気体で処理する方法、アルコール類で処理する方法が採用される。
【0021】
前記の(1)〜(8)の各処理は、これらから選択される一つの処理、又は二つ以上の処理を組み合わせて用いることができる。例えば、その水溶液が塩基性を示す一般式(1)で表される化合物をアルデヒド類で処理した後にイオン交換樹脂で処理することができる。
【0022】
前記の(1)〜(8)の各処理は、その50%水溶液の水素イオン指数が6〜8を示す一般式(1)で表される化合物(以下、「目的物」と略記する。)が得られる限り、処理する条件は制限されないが、目的物が分解されない条件で処理するのが好ましい。
【0023】
(1)の処理に用いられる酸類としては、目的物を与えるものであれば制限されない。このような酸類としては、例えば、鉱酸、有機酸、固体酸などが挙げられる。これらの酸類を具体的に示すとすれば、例えば、塩酸、硫酸、燐酸、酢酸、酪酸、シュウ酸、安息香酸、p−トルエンスルホン酸、トリクロロ酢酸、ポリ燐酸、リンタングステン酸などが挙げられる。これらの酸類は単独で用いることができるが、二種以上を併用することもできる。
【0024】
(1)の処理に用いられる不活性気体としては、例えば、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン及びラドンが挙げられる。これらの不活性気体は単独で用いることができるが、二種以上を併用することもできる。
酸類及び不活性気体のそれぞれの使用量は、一般式(1)で表される化合物の50%水溶液の水素イオン指数が6〜8となるようにそれぞれの使用量を決めればよい。
【0025】
酸類及び不活性ガスで処理する際の温度は、目的物が分解しない温度であれば制限されないが、通常、温度は室温である。
【0026】
酸類及び不活性ガスで処理する際の圧力に制限はないが、通常、その圧力は大気圧である。
【0027】
酸類及び不活性ガスで処理する方法としては、例えば、一般式(1)で表される化合物を含む反応マスを撹拌しながら、これに酸類を添加した後、蒸留精製して得られた回収液中に水素イオン指数が中性を示すまで不活性気体をバブリングする方法、一般式(1)で表される化合物を含む反応マスを撹拌しながら、これに酸類を添加するのと同時に不活性気体を吹き込む方法などが挙げられる。
【0028】
(2)の処理に用いられる塩基類としては、目的物を与えるものであれば制限されない。このような塩基類としては、例えば、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、有機塩基などが挙げられる。これらの塩基類を具体的に示すとすれば、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリメチルアミン、ジエチルアミン、テトラエチレンペンタミン、アニリン、ピリジン、ピペリジンなどが挙げられる。これらの塩基は単独で用いることができるが、二種以上を併用することもできる。
【0029】
塩基類の使用量は、一般式(1)で表される化合物の50%水溶液の水素イオン指数が6〜8となる量を使用する。
【0030】
塩基類で処理する際の温度は、一般式(1)で表される化合物が分解しない温度であれば制限されないが、通常、その温度は室温である。
【0031】
塩基類で処理する際の圧力は何ら制限されることはないが、通常、その圧力は大気圧である。
【0032】
塩基類で処理する方法としては、例えば、該処理前の一般式(1)で表される化合物の50%水溶液を撹拌しながら、これにアルカリ金属化合物を添加した後、蒸留する方法などが挙げられる。
【0033】
(3)の処理に用いられるイオン交換樹脂としては、目的物を与えるものであれば制限されない。このようなイオン交換樹脂としては、例えば、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂などが挙げられる。これらのイオン交換樹脂を具体的に示すとすれば、例えば、市販されている陽イオン交換樹脂としては、Rohm and Haas社製のアンバーリスト15、アンバーリストIR120B、Bayer社製のレバチットS110H、レバチッットCNP80、Dupont社製のNafion−NR、Nafion−SAC13などが挙げられ、陰イオン交換樹脂としては、Rohm and Haas社製のアンバーリストIRA67、アンバーリストIRA400TCl、Bayer社製のレバチットMP500、レバチットMP64などが挙げられる。これらのイオン交換樹脂は単独で用いることができきるが、二種以上を併用することもできる。
【0034】
イオン交換樹脂の使用量は、一般式(1)で表される化合物の50%水溶液の水素イオン指数が6〜8となる量を使用する。
【0035】
イオン交換樹脂で処理する際の温度は一般式(1)で表される化合物が分解しない温度であれば制限されないが、通常、その温度は室温である。
【0036】
イオン交換樹脂で処理する際の圧力は何ら制限されることはないが、通常、その圧力は大気圧である。
【0037】
イオン交換樹脂で処理する方法としては、例えば、該処理前の一般式(1)で表される化合物またはその水溶液をイオン交換樹脂が充填された塔に通液する方法、該処理前の一般式(1)で表される化合物またはその水溶液にイオン交換樹脂を添加する方法などが挙げられる。
【0038】
(4)の処理に用いられる不活性気体としては、例えば、前記の(1)の処理に用いられる不活性気体が挙げられる。それぞれの不活性気体は単独で用いることができるが、二種以上を併用することもできる。
【0039】
不活性気体の使用量は、一般式(1)で表される化合物の50%水溶液の水素イオン指数が6〜8となる量を使用する。
【0040】
不活性気体で処理する際の温度は、一般式(1)で表される化合物が分解しない温度であれば制限されないが、通常、その温度は室温である。
【0041】
イオン交換樹脂で処理する際の圧力は何ら制限されることはないが、通常、その圧力は大気圧である。
【0042】
不活性気体で処理する方法としては、例えば、該処理前の一般式(1)で表される化合物中に不活性気体をバブリングする方法などが挙げられる。
【0043】
(5)の処理に用いられる酸ハロゲン化物類としては、目的物を与えるものであれば制限されない。このような酸ハロゲン化物類としては、例えば、芳香族酸ハロゲン化物類、脂肪族酸ハロゲン化物類などが挙げられる。これらの酸ハロゲン化物類の具体例を示すとすれば、例えば、p−トルエンスルホニルクロライド、p−トルエンスルホニルブロマイド、塩化ベンゾイル、臭化ベンゾイル、アセトカルボニルクロライド、アセトカルボニルブロマイド等が挙げられる。これらの酸ハロゲン化物は単独で用いることもできるが、二種以上を併用することもできる。
【0044】
酸ハロゲン化物類の使用量は、一般式(1)で表される化合物の50%水溶液の水素イオン指数が6〜8となる量を使用する。
【0045】
酸ハロゲン化物類で処理する際の温度は、一般式(1)で表される化合物が分解しない温度であれば制限されないが、通常、その温度は室温である。
【0046】
酸ハロゲン化物類で処理する際の圧力は何ら制限されることはないが、通常、その圧力は大気圧である。
【0047】
酸ハロゲン化物類で処理する方法としては、例えば、該処理前の一般式(1)で表される化合物を撹拌しながら、これに酸ハロゲン化物類を添加した後、蒸留する方法などが挙げられる。
【0048】
(6)の処理に用いられるカルボジイミド類としては、目的物を与えるものであれば制限されない。このようなカルボジイミド類としては、例えば、芳香族酸カルボジイミド類、脂肪族酸カルボジイミド類などが挙げられる。これらのカルボジイミド類を具体的に示すとすれば、例えば、ジベンジルカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド等が挙げられる。これらのカルボジイミドは単独で用いることもできるが、二種以上を併用することもできる。
【0049】
カルボジイミド類の使用量は、一般式(1)で表される化合物の50%水溶液の水素イオン指数が6〜8となる量を使用する。
【0050】
カルボジイミド類で処理する際の温度は、一般式(1)で表される化合物が分解しない温度であれば制限されないが、通常、その温度は室温である。
【0051】
カルボジイミド類で処理する際の圧力は何ら制限されることはないが、通常、その圧力は大気圧である。
【0052】
カルボジイミド類で処理する方法としては、例えば、該処理前の一般式(1)で表される化合物を撹拌しながら、これにカルボジイミド類を添加した後、蒸留する方法などが挙げられる。
【0053】
(7)の処理に用いられるアルコール類としては、目的物を与えるものであれば制限されない。このようなアルコール類としては、例えば、芳香族酸アルコール類、脂肪族酸アルコール類などが挙げられる。これらのアルコール類の具体例を示すとすれば、例えば、メタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール等が挙げられる。これらのアルコールは単独で用いることができるが、二種以上を併用することもできる。
【0054】
アルコール類の使用量は、一般式(1)で表される化合物の50%水溶液の水素イオン指数が6〜8となる量を使用する。
【0055】
アルコール類で処理する際の温度は、一般式(1)で表される化合物が分解しない温度であれば制限されないが、通常、その温度は室温である。
【0056】
アルコール類で処理する際の圧力は何ら制限されることはないが、通常、その圧力は大気圧である。
【0057】
アルコール類で処理する方法としては、例えば、その50%水溶液の水素イオン指数が6〜8以外の水素イオン指数を示す一般式(1)で表される化合物を撹拌しながら、これにアルコール類を添加した後、蒸留する方法などが挙げられる。
【0058】
(8)の処理に用いられるアルデヒド類としては、目的物を与えるものであれば制限されない。このようなアルデヒド類としては、例えば、芳香族酸アルデヒド類、脂肪族酸アルデヒド類などが用いられる。これらのアルデヒド類を具体的に示すとすれば、例えば、ホルマリン、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド等が挙げられる。これらのアルデヒドは単独で用いることができるが、二種以上を併用することもできる。
【0059】
アルデヒド類の使用量は、一般式(1)で表される化合物の50%水溶液の水素イオン指数が6〜8となる量を使用する。
【0060】
アルデヒド類で処理する際の温度は、一般式(1)で表される化合物が分解しない温度であれば制限されないが、通常、その温度は室温である。
【0061】
アルデヒド類で処理する際の圧力は何ら制限されることはないが、通常、その圧力は大気圧である。
【0062】
アルデヒド類で処理する方法としては、例えば、該処理前の一般式(1)で表される化合物を撹拌しながら、これにアルデヒド類を添加した後、蒸留する方法などが挙げられる。
【0063】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0064】

なお収率の算出はガスクロマトグラフィー(以下、「GC」と略記する)分析に依った。水素イオン指数の測定はpH測定装置(HORIBA社製、F−22型)を用いた。水素イオン指数(pH)の測定には純水で50%に希釈した試料を用い、試料の温度30℃で測定した。
【実施例1】
【0065】
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン309.1gと尿素147.7gを1Lフラスコに仕込み、120℃に加温してN,N´−ジメチルエチレンジアミン88.16gを同温度で2時間かけてフラスコ内に滴下装入した。その後210℃まで昇温し、同温度で1,3−ジメチルエチレンジアミン88.16gを3時間かけてフラスコ内に滴下装入した後、さらに同温度で1時間保持し、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン523.9gを含む反応マス542.7gを得た。最初に仕込んだ1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンの量(309.1g)を差引いて求めた1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンの収率は1,3−ジメチルエチレンジアミンに対し、94.1モル%であった。
【0066】
得られた反応マスにイソシアヌル酸を7.0g添加して室温で1時間処理を行なった後に10段の蒸留塔を用い減圧蒸留で精製し1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン342.6gを得た。このものの水素イオン指数(pH)は10であった。
【0067】
得られた1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンに窒素を0.5NL/Hrで2時間液中に導入してバブリング処理を行ない、水素イオン指数(pH)が7.6の1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを得た。
【実施例2】
【0068】
実施例1と同様に反応を行い、10段の蒸留塔を用い減圧蒸留で精製し、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを得た。このものの水素イオン指数(pH)は12であった。
【0069】
得られた1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンをRohm and Haas社製アンバーリスト15H(D)を50g仕込んだ充填塔に通液し、水素イオン指数(pH)が7.2の1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを得た。
【実施例3】
【0070】
実施例1と同様に反応および減圧蒸留精製を行い、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを得た。このものの水素イオン指数(pH)は12であった。
【0071】
得られた1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンの50%水溶液を調製した。この水溶液にpH計で水素イオン指数(pH)が7となるまでp−トルエンスルホニルクロライドを添加した。次いで、トルエン50gを添加し、10段の蒸留塔を用いて大気圧下で水とトルエンの共沸液を留出させた。この際、分留器で分離した水を抜き出し、トルエンは還流して蒸留系内に戻し脱水処理を行なった。脱水処理した後、トルエンを大気圧下で留去し、次いで減圧蒸留することにより、水素イオン指数(pH)が6.9の1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを得た。
【実施例4】
【0072】
実施例1と同様に反応および減圧蒸留精製を行い、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを得た。このものの水素イオン指数(pH)は12であった。
【0073】
得られた1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンンにジシクロヘキシルカルボジイミドを少量ずつ添加し処理を行なった。該処理の際、ジシクロヘキシルカルボジイミドの添加量は、処理マスの一部を少量サンプリングし、その50%水溶液が水素イオン指数(pH)が7を示したところで添加終了とした。その後、10段の蒸留塔で減圧蒸留して、水素イオン指数(pH)が6.8の1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを得た。
【実施例5】
【0074】
実施例1と同様に反応させ、減圧蒸留して、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを得た。このものの水素イオン指数(pH)は12であった。
【0075】
得られた1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンの処理を37%ホルマリンで行なった以外は実施例3と同様に処理して、水素イオン指数(pH)が7.4の1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを得た。
【実施例6】
【0076】
2−イミダゾリジノン430.5gと80%蟻酸2876.9gおよび37%ホルマリン909.0gをフラスコに仕込み、還流温度で48時間反応を行なった。その後、過剰のホルマリンおよび蟻酸を留去して、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン342.5gを含む反応マスを得た。この反応マスに32%水酸化ナトリウム水溶液993.8gを加えて単蒸留を行なった。得られた留出液に酸化バリウムを添加した後に10段の蒸留塔を用い減圧蒸留して1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン102.7gを得た。このものの水素イオン指数(pH)は2.9であった。
【0077】
得られた1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンンを32%水酸化ナトリウムで処理した以外は実施例3と同様に処理して、水素イオン指数(pH)6.5の1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを得た。
【実施例7】
【0078】
実施例6と同様に反応させ、減圧蒸留して、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを得た。このものの水素イオン指数(pH)は2.9であった。
【0079】
得られた1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンをメタノールで処理した以外は実施例3と同様に処理して、水素イオン指数(pH)が6.4の1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを得た。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の50%水溶液の水素イオン指数が6〜8を示す1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンは、高分子化合物の重合等に用いる溶媒として有用である。また、本発明の精製方法は、50%水溶液の水素イオン指数が6〜8を示す1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンを得るのに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その50%水溶液の水素イオン指数が6〜8を示す一般式(1)
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す)
で表される化合物。
【請求項2】
その50%水溶液の水素イオン指数が6〜8以外の水素イオン指数を示す一般式(1)
【化2】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す)
で表される化合物に対して、次の(1)〜(8)の処理から選ばれる少なくとも一種以上の処理を施す、1, 3−ジアルキル−2-イミダゾリジノンの精製方法。
(1)酸類及び不活性気体で処理
(2)塩基類で処理、
(3)イオン交換樹脂で処理、
(4)不活性気体で処理、
(5)酸ハロゲン化物類で処理、
(6)カルボジイミド類で処理、
(7)アルコール類で処理、
(8)アルデヒド類で処理

【公開番号】特開2006−316027(P2006−316027A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142951(P2005−142951)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)