12Ca1−xSrxO・7Al2O3の組成式(X=0〜1)で表される複合金属酸化物の製造方法
【課題】12Ca1−xSrxO・7Al2O3の組成式(X=0〜1)で表される高純度の複合金属酸化物を、安価で簡便、且つ大量に製造できる方法の提供を課題とする。
【解決手段】12Ca1−xSrxO・7Al2O3の組成式(X=0〜1)で表される高純度の複合金属酸化物の製造方法であって、Ca及び/又はSrを含む原料粉末と、含水率が9重量%未満であるAlを含む原料粉末とを、C a及び/又はS rとAlとの原子当量比が、12.3:13.2〜11.7:15.0となるように配合した混合物を、1100℃超1800℃以下の温度範囲で加熱することを特徴とする複合金属酸化物の製造方法。
【解決手段】12Ca1−xSrxO・7Al2O3の組成式(X=0〜1)で表される高純度の複合金属酸化物の製造方法であって、Ca及び/又はSrを含む原料粉末と、含水率が9重量%未満であるAlを含む原料粉末とを、C a及び/又はS rとAlとの原子当量比が、12.3:13.2〜11.7:15.0となるように配合した混合物を、1100℃超1800℃以下の温度範囲で加熱することを特徴とする複合金属酸化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、12Ca1−xSrxO・7Al2O3の組成式(X=0〜1)で表される高純度の複合金属酸化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
12CaO・7Al2O3の組成式で表わされるカルシウムアルミネート(以下、適宜「C12A7」と略す。)は、同じ結晶構造をとりうる12SrO・7Al2O3(以下、適宜「S12A7」と略す。)を含むことができる。また、例えばO−、H−、e−等のさまざまな元素や電子を包摂できることが知られている(特許文献1,2)。種々の元素や電子を包摂したC12A7、S12A7はコールド電子エミッター、導電体、有機EL電子注入電極、還元剤、酸化剤、排ガス用触媒、熱電変換材料、熱電子発電材料などへの応用が期待されている。
【0003】
従来、一般的なガラスの作製法である溶融急冷法によって12CaO・7Al2O3組成を有するガラスが得られることが知られている。Liらは、空気中での溶融急冷法で得られた12CaO・7Al2O3ガラスの再結晶化で生成する主な結晶相が12CaO・7Al2O3であり、副生成物としてCaAl2O4が含まれることを報告している(非特許文献1)。
【0004】
カルシウムアルミネートには、上記12CaO・7Al2O3組成以外に、3CaO・Al2O3(以下、適宜「C3A」と表記),CaO・Al2O3(以下、適宜「CA」と表記),CaO・2Al2O3(以下、適宜「CA2」と表記),CaO・6Al2O3(以下、適宜「CA6」と表記),5CaO・3Al2O3(以下、適宜「C5A3」と表記)等の種類が存在し、12CaO・7Al2O3は、アルカリ金属、アルカリ土類金属やその他の元素を不純物として含有する場合がある。
また、C12A7はC3AからCAの組成のあいだで、いったん必ず晶出する準安定相であり、1360℃以下ではC3AとCAの混合物になることが知られている(例えば、非特許文献2を参照)。
また、C12A7はセメント鉱物であり、水分が存在すると水和反応を起こしカルシウムアルミネート水和物を生成することが知られている。
【0005】
従来の製法では、不純物相の少ないC12A7及びS12A7を合成するためには原料粉の仮焼成工程を必要とした。さらに、混合した原料粒子同士の反応性を向上させるために、仮焼成後の混合体を粉砕し、再混合、加圧成型する工程も必要であった。このためコスト面、簡便性といった点で工業的に安価に大量生産するのは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開2003/089373号パンフレット
【特許文献2】国際公開2005/000741号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】W.Li et.al. J.Non.Cryst.Sol.1999,255(2,3),199.
【非特許文献2】荒井康夫著「セメントの材料科学(改訂第2版)」、74〜76頁(1990).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、12Ca1−xSrxO・7Al2O3の組成式(X=0〜1)で表される高純度の複合金属酸化物を、安価で簡便、且つ大量に製造できる方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ね、本発明に至った。
すなわち本発明は、
<1>12Ca1−xSrxO・7Al2O3の組成式(X=0〜1)で表される複合金属酸化物の製造方法であって、Ca及び/又はSrを含む原料粉末と、含水率が9重量%未満であるAlを含む原料粉末とを、Ca及び/又はSrとAlとの原子当量比が、12.3:13.2〜11.7:15.0となるように配合した混合物を、1100℃超1800℃以下の温度範囲で加熱することを特徴とする複合金属酸化物の製造方法、
<2>前記Alを含む原料粉末として、酸化物または水酸化物を用いることを特徴とする前記<1>に記載の複合金属酸化物の製造方法、
<3>前記Alを含む原料粉末として、α-Al2O3を用いることを特徴とする前記<2>に記載の複合金属酸化物の製造方法、
<4>前記Alを含む原料粉末として、その中心粒子径が、前記Ca及び/又はSrを含む原料粉末の中心粒子径に対して25%以上125%未満であるものを用いることを特徴とする前記<1>〜<3>のいずれかに記載の複合金属酸化物の製造方法、
<5>前記Ca及び/又はSrを含む原料粉末が、CaCO3及び/又はSrCO3からなることを特徴とする前記<1>〜<4>のいずれかに記載の複合金属酸化物の製造方法、
<6>前記加熱において、酸素を含む雰囲気中で1100℃超1415℃未満の温度に保持して、前記混合物を焼成することを特徴とする前記<1>〜<5>のいずれかに記載の複合金属酸化物の製造方法、
<7>前記加熱において、酸素を含む雰囲気中で1415℃以上1600℃未満の温度に保持して、前記混合物を溶融することを特徴とする前記<1>〜<5>のいずれかに記載の複合金属酸化物の製造方法、
<8>前記混合物を加圧処理によって圧粉体にして用いることを特徴とする前記<1>〜<7>のいずれかに記載の複合金属酸化物の製造方法、
<9>前記<1>〜<8>のいずれかに記載の製造方法で得られた、12Ca1−xSrxO・7Al2O3の組成式(X=0〜1)で表される複合金属酸化物、である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の複合金属酸化物の製造方法によれば、工業的に安価で簡便に、高純度の又は実質的な不純物相のない12Ca1−xSrxO・7Al2O3の組成式(X=0〜1)で表される複合金属酸化物を大量生産することが可能である。
また、本発明の複合金属酸化物は高純度である(又は実質的な不純物相を含まない)ため、各種電子デバイスの材料や化学工業に応用可能である。
【0011】
すなわち、本発明の複合金属酸化物の製造方法によれば、アルカリ土類金属(Ca、Sr)を含む原料粉末(酸化物、水酸化物、炭酸塩)と、含水率が9重量%未満である、Alを含む原料粉末(酸化物、水酸化物)との混合物(化合物混合体)を一回、本焼成するだけで高純度の又は実質的な不純物相のない12Ca1−xSrxO・7Al2O3の組成式(X=0〜1)で表される複合金属酸化物が得られる。
【0012】
本発明の複合金属酸化物の製造方法は、原料の反応性を高める等の目的で通常行われる、原料粉末を個々で仮焼成する工程、原料粉末を混合した化合物混合体を仮焼成する工程、化合物混合体の仮焼成後に生じる仮焼成体の再粉砕工程、再混合工程、及び加圧成型工程を不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(A)1100℃、(B)1200℃、(C)1300℃、で焼成して得た析出結晶相のX線粉末回折スペクトルである。
【図2】CaCO3と、アルミナ源として(A)AKP‐G15、(B)AKP‐50、(C)AKP‐30、(D)AKP‐20をそれぞれ混合した化合物混合体を、1300℃で焼成した析出結晶相のX線粉末回折スペクトルである。
【図3】CaCO3と、アルミナ源として(A)AKP‐G15、(B)AKP‐50、(C)AKP‐30、(D)AKP‐20を混合した化合物混合体を、プレス成型して圧粉体にしたのち、1300℃で焼成して出来た析出結晶相のX線粉末回折スペクトルである。
【図4】1500℃で溶融して得られた析出結晶相のX線粉末回折スペクトルである。
【図5】原料粉末のSEM像である。
【図6】原料粉末のSEM像である。
【図7】原料粉末のSEM像である。
【図8】原料粉末のSEM像である。
【図9】原料粉末のSEM像である。
【図10】原料粉末の含水率を求めるためのTG−DTA曲線である。
【図11】原料粉末の含水率を求めるためのTG−DTA曲線である。
【図12】原料粉末の含水率を求めるためのTG−DTA曲線である。
【図13】原料粉末の含水率を求めるためのTG−DTA曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳しく説明する。
本発明の複合金属酸化物の製造方法は、Ca及び/又はSrを含む原料粉末と、含水率が9重量%未満であるAlを含む原料粉末とを、Ca及び/又はSrとAlとの原子当量比が、12.3:13.2〜11.7:15.0となるように配合した混合物を、1100℃超1800℃以下の温度範囲で加熱することによって、高純度の又は実質的な不純物相の無い12Ca1−xSrxO・7Al2O3の組成式(X=0〜1)で表される複合金属酸化物を得る方法である。
【0015】
前記Ca及び/又はSrを含む原料粉末は、Ca及び/又はSrを含む化合物を主成分とするものであればよく、例えばCa及び/又はSrの酸化物、水酸化物、及び炭酸塩等が好ましいものとして挙げられる。前記化合物は、Caの単体、又はSrの単体に代えてもよい。
より具体的には、例えば炭酸カルシウム(CaCO3)及び/又は炭酸ストロンチウム(SrCO3)からなる化合物、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)及び/又は水酸化ストロンチウム(Sr(OH)2)からなる化合物、酸化カルシウム(CaO)及び/又は酸化ストロンチウム(SrO)からなる化合物などが挙げられるが、入手の安易さと取り扱いの安全性から、炭酸カルシウム(CaCO3)及び/又は炭酸ストロンチウム(SrCO3)からなる化合物が好ましい。
【0016】
前記Alを含む原料粉末は、Alを含む化合物を主成分とするものであればよく、例えばAlの酸化物、及び水酸化物等が好ましいものとして挙げられる。前記化合物は、Alの単体に代えてもよい。
より具体的には、例えば酸化アルミニウム(Al2O3)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、窒化アルミニウム、ボーキサイト、またはアルミ残灰などが挙げられる。
【0017】
前記Alを含む原料粉末は、その含水率が9重量%未満であるものを用いる。高純度の又は実質的な不純物相を含まない前記複合金属酸化物を得るためである。前記含水率が9重量%以上であると、得られる複合金属酸化物に不純物相が含まれるようになる。前記含水率は少ない程良く、6.0重量%未満が好ましく、3.0重量%未満がより好ましく、1.0重量%未満がさらに好ましい。
【0018】
一般的には、Alを含む原料粉末として、反応性の高いγ−Al2O3が用いられる。しかし、本発明では、高純度の又は実質的な不純物相を含まない前記複合金属酸化物を得る観点、水分との反応性の低さの観点、および入手の容易さの観点から、α−Al2O3の方がより好ましい。
前記γ−Al2O3は反応性が高い反面、吸水率が高く、秤量時にCaとAlとの化学量論比が崩れ易いため好ましくない。本発明において、前記混合物の仮焼成の工程を省くためには、前記Alを含む原料粉末としてα−Al2O3を用いることが好ましい。
ここで、前記α−Al2O3とはコランダム型構造を有するアルミナのことであり、前記γ−Al2O3とはスピネル型構造を有するアルミナのことである。
【0019】
前記混合物(化合物混合体)は、前記Ca及び/又はSrを含む原料粉末と、含水率が9重量%未満である前記Alを含む原料粉末とを混合して得られる。この際、該混合物のCa及び/又はSrとAlとの原子当量比が、12.3:13.2〜11.7:15.0の範囲となるように配合して調製される。
【0020】
前記原子当量比(Ca及び/又はSr:Al)は、12.3:13.5〜11.7:14.5が好ましく、12.2:13.8〜11.8:14.2がより好ましく、12.2:14.1〜11.8:13.9がさらに好ましい。
上記範囲であると、得られる複合金属酸化物中に12Ca1−xSrxO・7Al2O3(X=0〜1)以外の不純物相が生成することをより確実に防ぐことができる。
【0021】
前記Alを含む原料粉末は、その中心粒子径が、前記Ca及び/又はSrを含む原料粉末の中心粒子径に対して、25%以上125%未満であるものが好ましく、40%以上80%以下であるものがより好ましい。この範囲の中心粒子径を有する原料粉末を用いることによって、前記混合物における各原料粉末の混合ムラが発生することを防ぐことができ、より高純度の(実質的に不純物相を含まない)複合金属酸化物を得ることができる。
【0022】
前記混合物を加熱する方法としては、該混合物をキルンや電気炉内で加熱して焼成又は溶融する方法が挙げられる。所定時間の加熱処理後、室温まで冷却することによって、本発明の複合金属酸化物が得られる。
【0023】
前記加熱の温度範囲は、1100℃超1800℃以下であればよい。
上記温度範囲で前記混合物を加熱することによって、高純度の又は実質的な不純物相の無い前記複合金属酸化物を得ることができる。
一方、1100℃以下ではC12A7を主成分として含有する複合金属酸化物を得ることが困難であり、1800℃超に加熱しても得られる複合金属酸化物の純度を高めることにはほとんど寄与しない。
【0024】
前記加熱の条件としては、酸素を含む雰囲気中で1100℃超1415℃未満の温度に保持して加熱し、前記混合物を焼成又は溶融することが好ましい。通常、この温度範囲であれば、前記混合物は溶融せずに焼成される。
また、前記加熱の条件としては、酸素を含む雰囲気中で1415℃以上1600℃未満の温度に保持して加熱し、前記混合物を溶融又は焼成することが好ましい。通常、この温度範囲であれば、前記混合物は少なくとも部分的に溶融する。
前記加熱する際の雰囲気は、酸素を含む雰囲気であればよく、工業的には大気中(空気中)で実施するのが安価で好ましい。
【0025】
一般的に、セラミックス製品は原料粉末特性が焼結特性、焼結体の特性に非常に大きな影響を及ぼす。
【0026】
従来方法では、12Ca1−xSrxO・7Al2O3の組成式(X=0〜1)で表される複合金属酸化物を得るために、原料粉末を個々で仮焼成する工程、原料粉末を混合する工程、化合物混合体を仮焼成する工程、再粉砕工程、プレス処理工程、及び本焼成工程を踏む。場合によっては、再粉砕から本焼成の工程を数回繰り返すこともある。
【0027】
前記仮焼成とは一般的に、本焼成よりも低い温度(通常、400℃以上)で、原料粉の脱脂、脱炭酸、脱硝酸等を目的とした熱処理のことであり、本焼成工程での焼結反応を実施する前段階に実施するものである。
【0028】
一方、本発明では、原料粉末(混合物)の仮焼成工程、及び仮焼成体の再粉砕工程は不要であり、省略することができる。
本発明において、前記加熱(本焼成)前の、個々の原料粉末を所定の割合で配合した混合物(化合物混合体)の形態は、粉末そのままであっても良く、粉末の静水圧プレス成型体、一軸プレス成型体等の圧粉体であっても良い。このようなプレス処理は、求める材料の形状に応じて適宜行うことができる。
【0029】
本発明の特許請求の範囲および明細書において、原料粉末の「中心粒子径」は、原料粉末のSEM像における外見上の幾何学的形態から判断される。すなわち、該SEM像において、単位粒子(1個の粒子)と考えられるものを任意に10個選び出し、それらの直径の平均値を「中心粒子径」と定義する。
【0030】
また、本発明の特許請求の範囲および明細書において、原料粉末の「含水率」は、{(使用する原料粉末を加熱する前の室温における原料粉末の重量)−(使用する原料粉末を500℃まで加熱した際の原料粉末の重量)}÷(使用する原料粉末を加熱する前の室温における原料粉末の重量)×100(%)として定義する。
なお、加熱前の室温(25℃)における原料粉末に吸着していた水分の重量は、(使用する原料粉末を加熱する前の室温における原料粉末の重量)−(使用する原料粉末を500℃まで加熱した際の原料粉末の重量)で求められる。
【0031】
前記水分の重量および前記含水率は、示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、TG/DTA6300)を用いて測定できる。
TG−DTA測定(熱重量測定と示差熱分析とを組み合わせて、単一の装置で同時に測定する方法)は、所定のプログラムに従って、測定試料および基準物質の温度を変化させながら、測定試料の重量を温度の関数として測定し,同時に基準物質との間の温度差を温度の関数として測定する方法である。熱的に安定な基準物質として、空のPtパンを用いた。
【0032】
前記Alを含む原料粉末の含水率は、該原料粉末を、空気を導入した雰囲気で、室温から600℃まで温度上昇させて得られるTG−DTA曲線から求められる。
まず、室温から100℃付近、100℃から200℃付近まで、そして230℃付近に見られるDTAの吸熱ピークとTGの重量減少を主要な吸着水の蒸発ピークとする。さらに、より高温域でみられる微量重量減少については強固に吸着した水分量の蒸発分とする。最終的には、室温〜500℃までに見られる重量減少を、前記原料粉末の吸着水の蒸発であると定義した。なお、500℃以上の温度域では、脱炭酸等が起こり、正確な含水率を求めることが難しくなる。従って、前記含水率とは、500℃までの原料粉末の重量減少を、温度上昇前の試料重量で除することで定義した。
【実施例】
【0033】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
以下の実施例及び比較例で用いた市販の酸化アルミニウム粉末(純度99.99%以上)について、その中心粒径はSEM像で確認し、その含水率(重量%)は示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、TG/DTA6300)を用いて確認した。
【0035】
[実施例1〜2、比較例1]
市販の炭酸カルシウム粉末(宇部マテリアルズ株式会社製、CS・3N−A、中心粒子径400nm)と市販の酸化アルミニウム(α型)粉末(住友化学株式会社製、AKP−50、中心粒子径200nm、含水率0.5重量%)を12:7のモル比で秤量し、これらの粉末をエタノールを用いて湿式混合し、 乾燥した。
得られた乾燥粉末を白金るつぼ中に充填し、市販の電気炉にて、大気中、1100℃、1200℃、および1300℃、6時間の焼成処理を行った後、室温まで冷却し、目的の焼成物を得た。電気炉の冷却速度は300[℃/h]であった。
次に、白金るつぼ内より焼成物を取り出して、破砕した。その一部をさらに粉砕し、粉末状とした後にX線回折(XRD)により相の同定を行った。
【0036】
その結果、1200℃以上の焼成温度域でC12A7単相の焼結体が得られた(表1、図1 参照)。一方、1100℃の焼成温度では、C12A7相を主成分として含む焼結体は得られなかった。
【0037】
表1において、XRD結果は次の評価に基づいて示した。
○:C12A7単相の焼結体が得られた。
△:C12A7相を主成分とし、それ以外の相を含む焼結体が得られた。
×:C12A7相を主成分とする焼結体は得られなかった。
【0038】
図1中、(A),(B),(C)はそれぞれ1100℃,1200℃,1300℃の焼成処理で得られた焼成物のXRDの結果である。図1(A)において、「●」は、CA相が存在することを示すピークであり、「×」は、C5A3相が存在することを示すピークである。
【0039】
【表1】
【0040】
[実施例3〜5、比較例2]
市販の炭酸カルシウム粉末(宇部マテリアルズ株式会社製、CS・3N−A:中心粒子径400nm)と、市販の酸化アルミニウム(α型)粉末{住友化学株式会社製、AKP−20(中心粒子径500nm、含水率0.3重量%),AKP−30(中心粒子径300nm、含水率0.55重量%),AKP−50(中心粒子径200nm、含水率0.5重量%)}又は市販の酸化アルミニウム(γ型){住友化学株式会社製、AKP−G15(中心粒子径100nm未満、含水率9.2重量%)}とを12:7のモル比で秤量し、これらの粉末をエタノールを用いて湿式混合し、 乾燥した。
得られた乾燥粉末を白金るつぼ中に充填し、市販の電気炉にて、大気中、1300℃、6時間の焼成処理を行った後、室温まで冷却し、目的の焼成物を得た。電気炉の冷却速度は300[℃/h]であった。
次に、白金るつぼ内より焼成物を取り出して、破砕した。その一部をさらに粉砕し、粉末状とした後にX線回折(XRD)により相の同定を行った。
【0041】
その結果、AKP−50、AKP−30を用いた場合では、C12A7単相の焼結体が得られた(表2、図2 参照)。一方、AKP−20を用いた焼結体には、C12A7相が主成分として含まれ、それ以外にC5A3相およびCA相が含まれていた。AKP−G15を用いた場合には、C12A7相を主成分として含む焼結体は得られなかった。
【0042】
図2中、(A),(B),(C),(D)はそれぞれAKP−G15,AKP−50,AKP−30,AKP−20を用いて得られた焼成物のXRDの結果である。図2(A),(D)において、「●」は、CA相が存在することを示すピークであり、「□」は、C3A相が存在することを示すピークである。
【0043】
表2において、XRD結果は次の評価に基づいて示した。
○:C12A7単相の焼結体が得られた。
△:C12A7相を主成分とし、それ以外の相を含む焼結体が得られた。
×:C12A7相を主成分とする焼結体は得られなかった。
【0044】
【表2】
【0045】
[実施例6〜8、比較例3]
市販の炭酸カルシウム粉末(宇部マテリアルズ株式会社製、CS・3N−A:中心粒子径400nm)と、市販の酸化アルミニウム(α型)粉末{住友化学株式会社製、AKP−20(中心粒子径500nm、含水率0.3重量%),AKP−30(中心粒子径300nm、含水率0.55重量%),AKP−50(中心粒子径200nm、含水率0.5重量%)}又は市販の酸化アルミニウム(γ型){住友化学株式会社製、AKP−G15(中心粒子径100nm未満、含水率9.2重量%)}とを12:7のモル比で秤量し、これらの粉末をエタノールを用いて湿式混合し、 乾燥した。
得られた乾燥粉末を20φの金型成型器で、185kg/cm2を30秒間、さらに370kg/cm2を1分間でプレス処理をしてペレット状にした後、冷間静水圧加圧(CIP)で1000kg/cm2を3分間で加圧処理した成型体を、Ptるつぼ中に充填し、市販の電気炉にて、大気中、1300℃、6時間の焼成処理を行った後、室温まで冷却し、目的の焼成物を得た。電気炉の冷却速度は300[℃/h]であった。
次に、白金るつぼ内より焼成物を取り出して、破砕した。その一部をさらに粉砕し、粉末状とした後にX線回折(XRD)により相の同定を行った。
【0046】
その結果、AKP−50、AKP−30を用いた場合では、C12A7単相の焼結体が得られた(表3、図3 参照)。一方、AKP−G15,AKP−20を用いた焼結体体には、C12A7相が主成分として含まれ、それ以外にC5A3相およびCA相が含まれていた。
【0047】
図3中、(A),(B),(C),(D)はそれぞれAKP−G15,AKP−50,AKP−30,AKP−20を用いて得られた焼成物のXRDの結果である。図3(A),(D)において、「●」は、CA相が存在することを示すピークであり、「□」は、C3A相が存在することを示すピークである。
【0048】
表3において、XRD結果は次の評価に基づいて示した。
○:C12A7単相の焼結体が得られた。
△:C12A7相を主成分とし、それ以外の相を含む焼結体が得られた。
×:C12A7相を主成分とする焼結体は得られなかった。
【0049】
【表3】
【0050】
[実施例9]
市販の炭酸カルシウム粉末(宇部マテリアルズ株式会社製、CS・3N−A:中心粒子径400nm)と、市販の酸化アルミニウム(α型)粉末{住友化学株式会社製、AKP−50(中心粒子径200nm、含水率0.5重量%)}とを12:7のモル比で秤量し、これらの粉末をエタノールを用いて湿式混合し、 乾燥した。
得られた乾燥粉末を白金るつぼ中に充填し、市販の電気炉にて、大気中、1500℃、1時間の溶融処理を行った後、室温まで冷却し、目的の凝固体を得た。電気炉の冷却速度は300[℃/h]であった。
次に、白金るつぼ内より凝固体を取り出して、破砕した。その一部をさらに粉砕し、粉末状とした後にX線回折(XRD)により相の同定を行った。
【0051】
その結果、C12A7単相の凝固体が得られた(表4、図4 参照)。
図4の各ピークは、C12A7相が存在することを示すピークである。
表4において、XRD結果は次の評価に基づいて示した。
○:C12A7単相の焼結体が得られた。
【0052】
【表4】
【0053】
以下に、実施例又は比較例で使用した酸化アルミニウム粉末の中心粒子径を求めるために得たSEM像を示す。
図5は、市販の炭酸カルシウム粉末(宇部マテリアルズ株式会社製、CS・3N−A:中心粒子径400nm)のSEM像(×20,000)である。SEM像中、各単位粒子の直径を両方矢印で示した。これらの直径の平均値は400nmであった。
【0054】
図6は、市販の酸化アルミニウム(γ型){住友化学株式会社製、AKP−G15(中心粒子径100nm未満、含水率9.2重量%)}のSEM像(×10,000)である。SEM像中、各単位粒子の直径は明確には判別できなかった。これは含水率が高いため、各単位粒子が凝集してしまったことが原因であると考えられる。比較的凝着が少ない領域の粒子形状から、乾燥時の単位粒子の直径の平均値は100nm未満であると推定された。
【0055】
図7は、市販の酸化アルミニウム(α型)粉末{住友化学株式会社製、AKP−50(中心粒子径200nm、含水率0.5重量%)}のSEM像(×10,000)である。SEM像中、各単位粒子の直径を両方矢印で示した。これらの直径の平均値は200nmであった。
【0056】
図8は、市販の酸化アルミニウム(α型)粉末{住友化学株式会社製、AKP−30(中心粒子径300nm、含水率0.55重量%)}のSEM像(×10,000)である。SEM像中、各単位粒子の直径を両方矢印で示した。これらの直径の平均値は300nmであった。
【0057】
図9は、市販の酸化アルミニウム(α型)粉末{住友化学株式会社製、AKP−20(中心粒子径500nm、含水率0.3重量%)}のSEM像(×10,000)である。SEM像中、各単位粒子の直径を両方矢印で示した。これらの直径の平均値は500nmであった。
【0058】
以下に、実施例又は比較例で使用した酸化アルミニウム粉末の含水率を求めるために測定したTG−DTA曲線を示す。測定方法は前述の通りである。
図10は、市販の酸化アルミニウム(γ型){住友化学株式会社製、AKP−G15(中心粒子径100nm未満、含水率9.2重量%)}のTG−DTA曲線である。含水率は9.2重量%であった。
【0059】
図11は、市販の酸化アルミニウム(α型)粉末{住友化学株式会社製、AKP−50(中心粒子径200nm、含水率0.5重量%)}のTG−DTA曲線である。含水率は0.5重量%であった。
【0060】
図12は、市販の酸化アルミニウム(α型)粉末{住友化学株式会社製、AKP−30(中心粒子径300nm、含水率0.55重量%)}のTG−DTA曲線である。含水率は0.55重量%であった。
【0061】
図13は、市販の酸化アルミニウム(α型)粉末{住友化学株式会社製、AKP−20(中心粒子径500nm、含水率0.3重量%)}のTG−DTA曲線である。含水率は0.3重量%であった。
【0062】
本発明にかかる実施例1〜9では、12Ca1−xSrxO・7Al2O3の組成式(X=0〜1)で表される高純度の複合金属酸化物が得られた。特に実施例1,2,4,5,7,8,9では、不純物相を含まないC12A7単相が得られた。
一方、比較例1〜3では、C12A7を主成分とする複合金属酸化物は得られなかった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、12Ca1−xSrxO・7Al2O3の組成式(X=0〜1)で表される高純度の複合金属酸化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
12CaO・7Al2O3の組成式で表わされるカルシウムアルミネート(以下、適宜「C12A7」と略す。)は、同じ結晶構造をとりうる12SrO・7Al2O3(以下、適宜「S12A7」と略す。)を含むことができる。また、例えばO−、H−、e−等のさまざまな元素や電子を包摂できることが知られている(特許文献1,2)。種々の元素や電子を包摂したC12A7、S12A7はコールド電子エミッター、導電体、有機EL電子注入電極、還元剤、酸化剤、排ガス用触媒、熱電変換材料、熱電子発電材料などへの応用が期待されている。
【0003】
従来、一般的なガラスの作製法である溶融急冷法によって12CaO・7Al2O3組成を有するガラスが得られることが知られている。Liらは、空気中での溶融急冷法で得られた12CaO・7Al2O3ガラスの再結晶化で生成する主な結晶相が12CaO・7Al2O3であり、副生成物としてCaAl2O4が含まれることを報告している(非特許文献1)。
【0004】
カルシウムアルミネートには、上記12CaO・7Al2O3組成以外に、3CaO・Al2O3(以下、適宜「C3A」と表記),CaO・Al2O3(以下、適宜「CA」と表記),CaO・2Al2O3(以下、適宜「CA2」と表記),CaO・6Al2O3(以下、適宜「CA6」と表記),5CaO・3Al2O3(以下、適宜「C5A3」と表記)等の種類が存在し、12CaO・7Al2O3は、アルカリ金属、アルカリ土類金属やその他の元素を不純物として含有する場合がある。
また、C12A7はC3AからCAの組成のあいだで、いったん必ず晶出する準安定相であり、1360℃以下ではC3AとCAの混合物になることが知られている(例えば、非特許文献2を参照)。
また、C12A7はセメント鉱物であり、水分が存在すると水和反応を起こしカルシウムアルミネート水和物を生成することが知られている。
【0005】
従来の製法では、不純物相の少ないC12A7及びS12A7を合成するためには原料粉の仮焼成工程を必要とした。さらに、混合した原料粒子同士の反応性を向上させるために、仮焼成後の混合体を粉砕し、再混合、加圧成型する工程も必要であった。このためコスト面、簡便性といった点で工業的に安価に大量生産するのは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開2003/089373号パンフレット
【特許文献2】国際公開2005/000741号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】W.Li et.al. J.Non.Cryst.Sol.1999,255(2,3),199.
【非特許文献2】荒井康夫著「セメントの材料科学(改訂第2版)」、74〜76頁(1990).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、12Ca1−xSrxO・7Al2O3の組成式(X=0〜1)で表される高純度の複合金属酸化物を、安価で簡便、且つ大量に製造できる方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ね、本発明に至った。
すなわち本発明は、
<1>12Ca1−xSrxO・7Al2O3の組成式(X=0〜1)で表される複合金属酸化物の製造方法であって、Ca及び/又はSrを含む原料粉末と、含水率が9重量%未満であるAlを含む原料粉末とを、Ca及び/又はSrとAlとの原子当量比が、12.3:13.2〜11.7:15.0となるように配合した混合物を、1100℃超1800℃以下の温度範囲で加熱することを特徴とする複合金属酸化物の製造方法、
<2>前記Alを含む原料粉末として、酸化物または水酸化物を用いることを特徴とする前記<1>に記載の複合金属酸化物の製造方法、
<3>前記Alを含む原料粉末として、α-Al2O3を用いることを特徴とする前記<2>に記載の複合金属酸化物の製造方法、
<4>前記Alを含む原料粉末として、その中心粒子径が、前記Ca及び/又はSrを含む原料粉末の中心粒子径に対して25%以上125%未満であるものを用いることを特徴とする前記<1>〜<3>のいずれかに記載の複合金属酸化物の製造方法、
<5>前記Ca及び/又はSrを含む原料粉末が、CaCO3及び/又はSrCO3からなることを特徴とする前記<1>〜<4>のいずれかに記載の複合金属酸化物の製造方法、
<6>前記加熱において、酸素を含む雰囲気中で1100℃超1415℃未満の温度に保持して、前記混合物を焼成することを特徴とする前記<1>〜<5>のいずれかに記載の複合金属酸化物の製造方法、
<7>前記加熱において、酸素を含む雰囲気中で1415℃以上1600℃未満の温度に保持して、前記混合物を溶融することを特徴とする前記<1>〜<5>のいずれかに記載の複合金属酸化物の製造方法、
<8>前記混合物を加圧処理によって圧粉体にして用いることを特徴とする前記<1>〜<7>のいずれかに記載の複合金属酸化物の製造方法、
<9>前記<1>〜<8>のいずれかに記載の製造方法で得られた、12Ca1−xSrxO・7Al2O3の組成式(X=0〜1)で表される複合金属酸化物、である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の複合金属酸化物の製造方法によれば、工業的に安価で簡便に、高純度の又は実質的な不純物相のない12Ca1−xSrxO・7Al2O3の組成式(X=0〜1)で表される複合金属酸化物を大量生産することが可能である。
また、本発明の複合金属酸化物は高純度である(又は実質的な不純物相を含まない)ため、各種電子デバイスの材料や化学工業に応用可能である。
【0011】
すなわち、本発明の複合金属酸化物の製造方法によれば、アルカリ土類金属(Ca、Sr)を含む原料粉末(酸化物、水酸化物、炭酸塩)と、含水率が9重量%未満である、Alを含む原料粉末(酸化物、水酸化物)との混合物(化合物混合体)を一回、本焼成するだけで高純度の又は実質的な不純物相のない12Ca1−xSrxO・7Al2O3の組成式(X=0〜1)で表される複合金属酸化物が得られる。
【0012】
本発明の複合金属酸化物の製造方法は、原料の反応性を高める等の目的で通常行われる、原料粉末を個々で仮焼成する工程、原料粉末を混合した化合物混合体を仮焼成する工程、化合物混合体の仮焼成後に生じる仮焼成体の再粉砕工程、再混合工程、及び加圧成型工程を不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(A)1100℃、(B)1200℃、(C)1300℃、で焼成して得た析出結晶相のX線粉末回折スペクトルである。
【図2】CaCO3と、アルミナ源として(A)AKP‐G15、(B)AKP‐50、(C)AKP‐30、(D)AKP‐20をそれぞれ混合した化合物混合体を、1300℃で焼成した析出結晶相のX線粉末回折スペクトルである。
【図3】CaCO3と、アルミナ源として(A)AKP‐G15、(B)AKP‐50、(C)AKP‐30、(D)AKP‐20を混合した化合物混合体を、プレス成型して圧粉体にしたのち、1300℃で焼成して出来た析出結晶相のX線粉末回折スペクトルである。
【図4】1500℃で溶融して得られた析出結晶相のX線粉末回折スペクトルである。
【図5】原料粉末のSEM像である。
【図6】原料粉末のSEM像である。
【図7】原料粉末のSEM像である。
【図8】原料粉末のSEM像である。
【図9】原料粉末のSEM像である。
【図10】原料粉末の含水率を求めるためのTG−DTA曲線である。
【図11】原料粉末の含水率を求めるためのTG−DTA曲線である。
【図12】原料粉末の含水率を求めるためのTG−DTA曲線である。
【図13】原料粉末の含水率を求めるためのTG−DTA曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳しく説明する。
本発明の複合金属酸化物の製造方法は、Ca及び/又はSrを含む原料粉末と、含水率が9重量%未満であるAlを含む原料粉末とを、Ca及び/又はSrとAlとの原子当量比が、12.3:13.2〜11.7:15.0となるように配合した混合物を、1100℃超1800℃以下の温度範囲で加熱することによって、高純度の又は実質的な不純物相の無い12Ca1−xSrxO・7Al2O3の組成式(X=0〜1)で表される複合金属酸化物を得る方法である。
【0015】
前記Ca及び/又はSrを含む原料粉末は、Ca及び/又はSrを含む化合物を主成分とするものであればよく、例えばCa及び/又はSrの酸化物、水酸化物、及び炭酸塩等が好ましいものとして挙げられる。前記化合物は、Caの単体、又はSrの単体に代えてもよい。
より具体的には、例えば炭酸カルシウム(CaCO3)及び/又は炭酸ストロンチウム(SrCO3)からなる化合物、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)及び/又は水酸化ストロンチウム(Sr(OH)2)からなる化合物、酸化カルシウム(CaO)及び/又は酸化ストロンチウム(SrO)からなる化合物などが挙げられるが、入手の安易さと取り扱いの安全性から、炭酸カルシウム(CaCO3)及び/又は炭酸ストロンチウム(SrCO3)からなる化合物が好ましい。
【0016】
前記Alを含む原料粉末は、Alを含む化合物を主成分とするものであればよく、例えばAlの酸化物、及び水酸化物等が好ましいものとして挙げられる。前記化合物は、Alの単体に代えてもよい。
より具体的には、例えば酸化アルミニウム(Al2O3)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、窒化アルミニウム、ボーキサイト、またはアルミ残灰などが挙げられる。
【0017】
前記Alを含む原料粉末は、その含水率が9重量%未満であるものを用いる。高純度の又は実質的な不純物相を含まない前記複合金属酸化物を得るためである。前記含水率が9重量%以上であると、得られる複合金属酸化物に不純物相が含まれるようになる。前記含水率は少ない程良く、6.0重量%未満が好ましく、3.0重量%未満がより好ましく、1.0重量%未満がさらに好ましい。
【0018】
一般的には、Alを含む原料粉末として、反応性の高いγ−Al2O3が用いられる。しかし、本発明では、高純度の又は実質的な不純物相を含まない前記複合金属酸化物を得る観点、水分との反応性の低さの観点、および入手の容易さの観点から、α−Al2O3の方がより好ましい。
前記γ−Al2O3は反応性が高い反面、吸水率が高く、秤量時にCaとAlとの化学量論比が崩れ易いため好ましくない。本発明において、前記混合物の仮焼成の工程を省くためには、前記Alを含む原料粉末としてα−Al2O3を用いることが好ましい。
ここで、前記α−Al2O3とはコランダム型構造を有するアルミナのことであり、前記γ−Al2O3とはスピネル型構造を有するアルミナのことである。
【0019】
前記混合物(化合物混合体)は、前記Ca及び/又はSrを含む原料粉末と、含水率が9重量%未満である前記Alを含む原料粉末とを混合して得られる。この際、該混合物のCa及び/又はSrとAlとの原子当量比が、12.3:13.2〜11.7:15.0の範囲となるように配合して調製される。
【0020】
前記原子当量比(Ca及び/又はSr:Al)は、12.3:13.5〜11.7:14.5が好ましく、12.2:13.8〜11.8:14.2がより好ましく、12.2:14.1〜11.8:13.9がさらに好ましい。
上記範囲であると、得られる複合金属酸化物中に12Ca1−xSrxO・7Al2O3(X=0〜1)以外の不純物相が生成することをより確実に防ぐことができる。
【0021】
前記Alを含む原料粉末は、その中心粒子径が、前記Ca及び/又はSrを含む原料粉末の中心粒子径に対して、25%以上125%未満であるものが好ましく、40%以上80%以下であるものがより好ましい。この範囲の中心粒子径を有する原料粉末を用いることによって、前記混合物における各原料粉末の混合ムラが発生することを防ぐことができ、より高純度の(実質的に不純物相を含まない)複合金属酸化物を得ることができる。
【0022】
前記混合物を加熱する方法としては、該混合物をキルンや電気炉内で加熱して焼成又は溶融する方法が挙げられる。所定時間の加熱処理後、室温まで冷却することによって、本発明の複合金属酸化物が得られる。
【0023】
前記加熱の温度範囲は、1100℃超1800℃以下であればよい。
上記温度範囲で前記混合物を加熱することによって、高純度の又は実質的な不純物相の無い前記複合金属酸化物を得ることができる。
一方、1100℃以下ではC12A7を主成分として含有する複合金属酸化物を得ることが困難であり、1800℃超に加熱しても得られる複合金属酸化物の純度を高めることにはほとんど寄与しない。
【0024】
前記加熱の条件としては、酸素を含む雰囲気中で1100℃超1415℃未満の温度に保持して加熱し、前記混合物を焼成又は溶融することが好ましい。通常、この温度範囲であれば、前記混合物は溶融せずに焼成される。
また、前記加熱の条件としては、酸素を含む雰囲気中で1415℃以上1600℃未満の温度に保持して加熱し、前記混合物を溶融又は焼成することが好ましい。通常、この温度範囲であれば、前記混合物は少なくとも部分的に溶融する。
前記加熱する際の雰囲気は、酸素を含む雰囲気であればよく、工業的には大気中(空気中)で実施するのが安価で好ましい。
【0025】
一般的に、セラミックス製品は原料粉末特性が焼結特性、焼結体の特性に非常に大きな影響を及ぼす。
【0026】
従来方法では、12Ca1−xSrxO・7Al2O3の組成式(X=0〜1)で表される複合金属酸化物を得るために、原料粉末を個々で仮焼成する工程、原料粉末を混合する工程、化合物混合体を仮焼成する工程、再粉砕工程、プレス処理工程、及び本焼成工程を踏む。場合によっては、再粉砕から本焼成の工程を数回繰り返すこともある。
【0027】
前記仮焼成とは一般的に、本焼成よりも低い温度(通常、400℃以上)で、原料粉の脱脂、脱炭酸、脱硝酸等を目的とした熱処理のことであり、本焼成工程での焼結反応を実施する前段階に実施するものである。
【0028】
一方、本発明では、原料粉末(混合物)の仮焼成工程、及び仮焼成体の再粉砕工程は不要であり、省略することができる。
本発明において、前記加熱(本焼成)前の、個々の原料粉末を所定の割合で配合した混合物(化合物混合体)の形態は、粉末そのままであっても良く、粉末の静水圧プレス成型体、一軸プレス成型体等の圧粉体であっても良い。このようなプレス処理は、求める材料の形状に応じて適宜行うことができる。
【0029】
本発明の特許請求の範囲および明細書において、原料粉末の「中心粒子径」は、原料粉末のSEM像における外見上の幾何学的形態から判断される。すなわち、該SEM像において、単位粒子(1個の粒子)と考えられるものを任意に10個選び出し、それらの直径の平均値を「中心粒子径」と定義する。
【0030】
また、本発明の特許請求の範囲および明細書において、原料粉末の「含水率」は、{(使用する原料粉末を加熱する前の室温における原料粉末の重量)−(使用する原料粉末を500℃まで加熱した際の原料粉末の重量)}÷(使用する原料粉末を加熱する前の室温における原料粉末の重量)×100(%)として定義する。
なお、加熱前の室温(25℃)における原料粉末に吸着していた水分の重量は、(使用する原料粉末を加熱する前の室温における原料粉末の重量)−(使用する原料粉末を500℃まで加熱した際の原料粉末の重量)で求められる。
【0031】
前記水分の重量および前記含水率は、示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、TG/DTA6300)を用いて測定できる。
TG−DTA測定(熱重量測定と示差熱分析とを組み合わせて、単一の装置で同時に測定する方法)は、所定のプログラムに従って、測定試料および基準物質の温度を変化させながら、測定試料の重量を温度の関数として測定し,同時に基準物質との間の温度差を温度の関数として測定する方法である。熱的に安定な基準物質として、空のPtパンを用いた。
【0032】
前記Alを含む原料粉末の含水率は、該原料粉末を、空気を導入した雰囲気で、室温から600℃まで温度上昇させて得られるTG−DTA曲線から求められる。
まず、室温から100℃付近、100℃から200℃付近まで、そして230℃付近に見られるDTAの吸熱ピークとTGの重量減少を主要な吸着水の蒸発ピークとする。さらに、より高温域でみられる微量重量減少については強固に吸着した水分量の蒸発分とする。最終的には、室温〜500℃までに見られる重量減少を、前記原料粉末の吸着水の蒸発であると定義した。なお、500℃以上の温度域では、脱炭酸等が起こり、正確な含水率を求めることが難しくなる。従って、前記含水率とは、500℃までの原料粉末の重量減少を、温度上昇前の試料重量で除することで定義した。
【実施例】
【0033】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
以下の実施例及び比較例で用いた市販の酸化アルミニウム粉末(純度99.99%以上)について、その中心粒径はSEM像で確認し、その含水率(重量%)は示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、TG/DTA6300)を用いて確認した。
【0035】
[実施例1〜2、比較例1]
市販の炭酸カルシウム粉末(宇部マテリアルズ株式会社製、CS・3N−A、中心粒子径400nm)と市販の酸化アルミニウム(α型)粉末(住友化学株式会社製、AKP−50、中心粒子径200nm、含水率0.5重量%)を12:7のモル比で秤量し、これらの粉末をエタノールを用いて湿式混合し、 乾燥した。
得られた乾燥粉末を白金るつぼ中に充填し、市販の電気炉にて、大気中、1100℃、1200℃、および1300℃、6時間の焼成処理を行った後、室温まで冷却し、目的の焼成物を得た。電気炉の冷却速度は300[℃/h]であった。
次に、白金るつぼ内より焼成物を取り出して、破砕した。その一部をさらに粉砕し、粉末状とした後にX線回折(XRD)により相の同定を行った。
【0036】
その結果、1200℃以上の焼成温度域でC12A7単相の焼結体が得られた(表1、図1 参照)。一方、1100℃の焼成温度では、C12A7相を主成分として含む焼結体は得られなかった。
【0037】
表1において、XRD結果は次の評価に基づいて示した。
○:C12A7単相の焼結体が得られた。
△:C12A7相を主成分とし、それ以外の相を含む焼結体が得られた。
×:C12A7相を主成分とする焼結体は得られなかった。
【0038】
図1中、(A),(B),(C)はそれぞれ1100℃,1200℃,1300℃の焼成処理で得られた焼成物のXRDの結果である。図1(A)において、「●」は、CA相が存在することを示すピークであり、「×」は、C5A3相が存在することを示すピークである。
【0039】
【表1】
【0040】
[実施例3〜5、比較例2]
市販の炭酸カルシウム粉末(宇部マテリアルズ株式会社製、CS・3N−A:中心粒子径400nm)と、市販の酸化アルミニウム(α型)粉末{住友化学株式会社製、AKP−20(中心粒子径500nm、含水率0.3重量%),AKP−30(中心粒子径300nm、含水率0.55重量%),AKP−50(中心粒子径200nm、含水率0.5重量%)}又は市販の酸化アルミニウム(γ型){住友化学株式会社製、AKP−G15(中心粒子径100nm未満、含水率9.2重量%)}とを12:7のモル比で秤量し、これらの粉末をエタノールを用いて湿式混合し、 乾燥した。
得られた乾燥粉末を白金るつぼ中に充填し、市販の電気炉にて、大気中、1300℃、6時間の焼成処理を行った後、室温まで冷却し、目的の焼成物を得た。電気炉の冷却速度は300[℃/h]であった。
次に、白金るつぼ内より焼成物を取り出して、破砕した。その一部をさらに粉砕し、粉末状とした後にX線回折(XRD)により相の同定を行った。
【0041】
その結果、AKP−50、AKP−30を用いた場合では、C12A7単相の焼結体が得られた(表2、図2 参照)。一方、AKP−20を用いた焼結体には、C12A7相が主成分として含まれ、それ以外にC5A3相およびCA相が含まれていた。AKP−G15を用いた場合には、C12A7相を主成分として含む焼結体は得られなかった。
【0042】
図2中、(A),(B),(C),(D)はそれぞれAKP−G15,AKP−50,AKP−30,AKP−20を用いて得られた焼成物のXRDの結果である。図2(A),(D)において、「●」は、CA相が存在することを示すピークであり、「□」は、C3A相が存在することを示すピークである。
【0043】
表2において、XRD結果は次の評価に基づいて示した。
○:C12A7単相の焼結体が得られた。
△:C12A7相を主成分とし、それ以外の相を含む焼結体が得られた。
×:C12A7相を主成分とする焼結体は得られなかった。
【0044】
【表2】
【0045】
[実施例6〜8、比較例3]
市販の炭酸カルシウム粉末(宇部マテリアルズ株式会社製、CS・3N−A:中心粒子径400nm)と、市販の酸化アルミニウム(α型)粉末{住友化学株式会社製、AKP−20(中心粒子径500nm、含水率0.3重量%),AKP−30(中心粒子径300nm、含水率0.55重量%),AKP−50(中心粒子径200nm、含水率0.5重量%)}又は市販の酸化アルミニウム(γ型){住友化学株式会社製、AKP−G15(中心粒子径100nm未満、含水率9.2重量%)}とを12:7のモル比で秤量し、これらの粉末をエタノールを用いて湿式混合し、 乾燥した。
得られた乾燥粉末を20φの金型成型器で、185kg/cm2を30秒間、さらに370kg/cm2を1分間でプレス処理をしてペレット状にした後、冷間静水圧加圧(CIP)で1000kg/cm2を3分間で加圧処理した成型体を、Ptるつぼ中に充填し、市販の電気炉にて、大気中、1300℃、6時間の焼成処理を行った後、室温まで冷却し、目的の焼成物を得た。電気炉の冷却速度は300[℃/h]であった。
次に、白金るつぼ内より焼成物を取り出して、破砕した。その一部をさらに粉砕し、粉末状とした後にX線回折(XRD)により相の同定を行った。
【0046】
その結果、AKP−50、AKP−30を用いた場合では、C12A7単相の焼結体が得られた(表3、図3 参照)。一方、AKP−G15,AKP−20を用いた焼結体体には、C12A7相が主成分として含まれ、それ以外にC5A3相およびCA相が含まれていた。
【0047】
図3中、(A),(B),(C),(D)はそれぞれAKP−G15,AKP−50,AKP−30,AKP−20を用いて得られた焼成物のXRDの結果である。図3(A),(D)において、「●」は、CA相が存在することを示すピークであり、「□」は、C3A相が存在することを示すピークである。
【0048】
表3において、XRD結果は次の評価に基づいて示した。
○:C12A7単相の焼結体が得られた。
△:C12A7相を主成分とし、それ以外の相を含む焼結体が得られた。
×:C12A7相を主成分とする焼結体は得られなかった。
【0049】
【表3】
【0050】
[実施例9]
市販の炭酸カルシウム粉末(宇部マテリアルズ株式会社製、CS・3N−A:中心粒子径400nm)と、市販の酸化アルミニウム(α型)粉末{住友化学株式会社製、AKP−50(中心粒子径200nm、含水率0.5重量%)}とを12:7のモル比で秤量し、これらの粉末をエタノールを用いて湿式混合し、 乾燥した。
得られた乾燥粉末を白金るつぼ中に充填し、市販の電気炉にて、大気中、1500℃、1時間の溶融処理を行った後、室温まで冷却し、目的の凝固体を得た。電気炉の冷却速度は300[℃/h]であった。
次に、白金るつぼ内より凝固体を取り出して、破砕した。その一部をさらに粉砕し、粉末状とした後にX線回折(XRD)により相の同定を行った。
【0051】
その結果、C12A7単相の凝固体が得られた(表4、図4 参照)。
図4の各ピークは、C12A7相が存在することを示すピークである。
表4において、XRD結果は次の評価に基づいて示した。
○:C12A7単相の焼結体が得られた。
【0052】
【表4】
【0053】
以下に、実施例又は比較例で使用した酸化アルミニウム粉末の中心粒子径を求めるために得たSEM像を示す。
図5は、市販の炭酸カルシウム粉末(宇部マテリアルズ株式会社製、CS・3N−A:中心粒子径400nm)のSEM像(×20,000)である。SEM像中、各単位粒子の直径を両方矢印で示した。これらの直径の平均値は400nmであった。
【0054】
図6は、市販の酸化アルミニウム(γ型){住友化学株式会社製、AKP−G15(中心粒子径100nm未満、含水率9.2重量%)}のSEM像(×10,000)である。SEM像中、各単位粒子の直径は明確には判別できなかった。これは含水率が高いため、各単位粒子が凝集してしまったことが原因であると考えられる。比較的凝着が少ない領域の粒子形状から、乾燥時の単位粒子の直径の平均値は100nm未満であると推定された。
【0055】
図7は、市販の酸化アルミニウム(α型)粉末{住友化学株式会社製、AKP−50(中心粒子径200nm、含水率0.5重量%)}のSEM像(×10,000)である。SEM像中、各単位粒子の直径を両方矢印で示した。これらの直径の平均値は200nmであった。
【0056】
図8は、市販の酸化アルミニウム(α型)粉末{住友化学株式会社製、AKP−30(中心粒子径300nm、含水率0.55重量%)}のSEM像(×10,000)である。SEM像中、各単位粒子の直径を両方矢印で示した。これらの直径の平均値は300nmであった。
【0057】
図9は、市販の酸化アルミニウム(α型)粉末{住友化学株式会社製、AKP−20(中心粒子径500nm、含水率0.3重量%)}のSEM像(×10,000)である。SEM像中、各単位粒子の直径を両方矢印で示した。これらの直径の平均値は500nmであった。
【0058】
以下に、実施例又は比較例で使用した酸化アルミニウム粉末の含水率を求めるために測定したTG−DTA曲線を示す。測定方法は前述の通りである。
図10は、市販の酸化アルミニウム(γ型){住友化学株式会社製、AKP−G15(中心粒子径100nm未満、含水率9.2重量%)}のTG−DTA曲線である。含水率は9.2重量%であった。
【0059】
図11は、市販の酸化アルミニウム(α型)粉末{住友化学株式会社製、AKP−50(中心粒子径200nm、含水率0.5重量%)}のTG−DTA曲線である。含水率は0.5重量%であった。
【0060】
図12は、市販の酸化アルミニウム(α型)粉末{住友化学株式会社製、AKP−30(中心粒子径300nm、含水率0.55重量%)}のTG−DTA曲線である。含水率は0.55重量%であった。
【0061】
図13は、市販の酸化アルミニウム(α型)粉末{住友化学株式会社製、AKP−20(中心粒子径500nm、含水率0.3重量%)}のTG−DTA曲線である。含水率は0.3重量%であった。
【0062】
本発明にかかる実施例1〜9では、12Ca1−xSrxO・7Al2O3の組成式(X=0〜1)で表される高純度の複合金属酸化物が得られた。特に実施例1,2,4,5,7,8,9では、不純物相を含まないC12A7単相が得られた。
一方、比較例1〜3では、C12A7を主成分とする複合金属酸化物は得られなかった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
12Ca1−xSrxO・7Al2O3の組成式(X=0〜1)で表される複合金属酸化物の製造方法であって、
Ca及び/又はSrを含む原料粉末と、含水率が9重量%未満であるAlを含む原料粉末とを、C a及び/又はS rとAlとの原子当量比が、12.3:13.2〜11.7:15.0となるように配合した混合物を、1100℃超1800℃以下の温度範囲で加熱することを特徴とする複合金属酸化物の製造方法。
【請求項2】
前記Alを含む原料粉末として、酸化物または水酸化物を用いることを特徴とする請求項1に記載の複合金属酸化物の製造方法。
【請求項3】
前記Alを含む原料粉末として、α-Al2O3を用いることを特徴とする請求項2に記載の複合金属酸化物の製造方法。
【請求項4】
前記Alを含む原料粉末として、その中心粒子径が、前記Ca及び/又はSrを含む原料粉末の中心粒子径に対して25%以上125%未満であるものを用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合金属酸化物の製造方法。
【請求項5】
前記Ca及び/又はSrを含む原料粉末が、CaCO3及び/又はSrCO3からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合金属酸化物の製造方法。
【請求項6】
前記加熱において、酸素を含む雰囲気中で1100℃超1415℃未満の温度に保持して、前記混合物を焼成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の複合金属酸化物の製造方法。
【請求項7】
前記加熱において、酸素を含む雰囲気中で1415℃以上1600℃未満の温度に保持して、前記混合物を溶融することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の複合金属酸化物の製造方法。
【請求項8】
前記混合物を加圧処理によって圧粉体にして用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合金属酸化物の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造方法で得られた、12Ca1−xSrxO・7Al2O3の組成式(X=0〜1)で表される複合金属酸化物。
【請求項1】
12Ca1−xSrxO・7Al2O3の組成式(X=0〜1)で表される複合金属酸化物の製造方法であって、
Ca及び/又はSrを含む原料粉末と、含水率が9重量%未満であるAlを含む原料粉末とを、C a及び/又はS rとAlとの原子当量比が、12.3:13.2〜11.7:15.0となるように配合した混合物を、1100℃超1800℃以下の温度範囲で加熱することを特徴とする複合金属酸化物の製造方法。
【請求項2】
前記Alを含む原料粉末として、酸化物または水酸化物を用いることを特徴とする請求項1に記載の複合金属酸化物の製造方法。
【請求項3】
前記Alを含む原料粉末として、α-Al2O3を用いることを特徴とする請求項2に記載の複合金属酸化物の製造方法。
【請求項4】
前記Alを含む原料粉末として、その中心粒子径が、前記Ca及び/又はSrを含む原料粉末の中心粒子径に対して25%以上125%未満であるものを用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合金属酸化物の製造方法。
【請求項5】
前記Ca及び/又はSrを含む原料粉末が、CaCO3及び/又はSrCO3からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合金属酸化物の製造方法。
【請求項6】
前記加熱において、酸素を含む雰囲気中で1100℃超1415℃未満の温度に保持して、前記混合物を焼成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の複合金属酸化物の製造方法。
【請求項7】
前記加熱において、酸素を含む雰囲気中で1415℃以上1600℃未満の温度に保持して、前記混合物を溶融することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の複合金属酸化物の製造方法。
【請求項8】
前記混合物を加圧処理によって圧粉体にして用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合金属酸化物の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造方法で得られた、12Ca1−xSrxO・7Al2O3の組成式(X=0〜1)で表される複合金属酸化物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−207648(P2011−207648A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76035(P2010−76035)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
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