説明

2’−デオキシヌクレオシドの製造方法

【課題】工業生産に適した2'−デオキシヌクレオシド(dNS)の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも下記(i)、(ii)及び(iii)のいずれか1つを実行することにより、2−デオキシリボース(dR)を経由してdNSを製造する方法である。(i)2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸(KDG)の二価金属塩を脱カルボキシル化反応に付してdRを合成し、得られるdRを反応中間体としてdNSを合成する;(ii)dR合成能を有する変異型酵素を使用して、KDG又はその塩からdRを合成し、得られるdRを反応中間体としてdNSを合成する;(iii)2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル(dR5P)合成能を有する変異型酵素を使用してdRからdR5Pを合成し、得られるdR5PからdNSを合成する。


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【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記(i)、(ii)及び(iii)のいずれか1つを実行することにより、2−デオキシリボースを経由して2'−デオキシヌクレオシドを製造する2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
(i)2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩を酵素による脱カルボキシル化反応に付して2−デオキシリボ−スを合成する;
(ii)基質ポケットを形成するアミノ酸残基が野生型と比して少なくとも一つ以上変異している2−デオキシリボ−ス合成能を有する変異型酵素を使用して、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸又はその塩から2−デオキシリボ−スを合成する;
(iii)2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成能を有する野生型酵素に対して少なくとも配列表の配列番号1で示す配列の57番目、68番目、89番目、122番目、126番目、130番目、131番目、136番目、171番目及び197番目のいずれかに相当するアミノ酸の1つ以上の変異を含み、かつ、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成能を有する変異型酵素を使用して2−デオキシリボ−スから2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩を合成し、得られる2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩から2'−デオキシヌクレオシドを合成し、
前記野生型酵素は、下記のアミノ酸配列(a)、(b)、(c)及び(d)を有し、前記野生型酵素において、前記アミノ酸配列(b)は、少なくとも1以上のアミノ酸を介して、アミノ酸配列(a)とアミノ酸配列(c)とを連結し、前記アミノ酸配列(c)は、少なくとも1以上のアミノ酸を介して、アミノ酸配列(b)とアミノ酸配列(d)とを連結している。
(a)GSIXFLNDQAMYEXGR
(b)DAOL(A/S)XGGVAXXFSXAFGJPI
(c)KLLTNMIEDAGDLATR(S/G)AKBXYMRIRPFAFYG
(d)NGSYPSGHTXIGWAJALVLXEUNPXXQOXILKRGYZLGXSRVICGYHWQSDVDAAR
[アミノ酸配列(a)、(b)、(c)及び(d)中、Bは、アスパラギン酸又はグルタミン酸であり、Jは、セリン、トレオニン又はチロシンであり、Uは、バリン、ロイシン又はイソロイシンであり、Oは、アスパラギン酸又はアスパラギンであり、Zは、グルタミン酸又はグルタミンであり、Xは任意のアミノ酸である。アミノ酸配列(b)中、A/Sは、アラニン又はセリンであることを示し、(c)中、S/Gは、セリン又はグリシンであることを示す。]
【請求項2】
2−デオキシリボースを出発物質又は中間体とし、複数の酵素反応を実行して2'−デオキシヌクレオシドを製造する、請求項1に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項3】
前記2'−デオキシヌクレオシドがチミジンである、請求項1又は2に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項4】
少なくとも前記(i)を実行する、請求項1乃至3いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項5】
前記(i)を実行するとき使用する2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩が、周期表第2族に属する金属から選択された少なくとも1種の二価金属の塩である、請求項4に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項6】
前記周期表第2族に属する金属が、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項5に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項7】
前記(i)で示す脱カルボキシル化反応が、ケト酸デカルボキシラ−ゼ活性を有する酵素により触媒される、請求項1乃至6いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項8】
ケト酸デカルボキシラ−ゼ活性を有する前記酵素が、ベンゾイルホルメ−トデカルボキシラ−ゼである、請求項7に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項9】
グルコン酸の二価金属塩を脱水反応に付する工程をさらに含み、
脱水反応に付する前記工程において、グルコン酸の二価金属塩から得られる2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩を用いて、脱カルボキシル化反応に付する前記(i)を実行する、請求項1乃至8いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項10】
少なくとも前記(ii)を実行する、請求項1乃至9いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項11】
前記(ii)で使用する前記変異型酵素が野生型のベンゾイルホルメ−トデカルボキシラ−ゼ(EC4.1.1.7)を変異させたものである、請求項1乃至10いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項12】
前記(ii)で使用する前記変異型酵素が、配列表の配列番号2で示す配列の281番目に相当するアミノ酸を芳香族アミノ酸に置換したものである、請求項1乃至11いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項13】
前記芳香族アミノ酸がフェニルアラニン又はチロシンである、請求項12に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項14】
少なくとも前記(iii)を実行する、請求項1乃至13いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項15】
前記(iii)で示す前記野生型酵素が野生型の酸性ホスファタ−ゼ(EC 3.1.3.2)である、請求項1乃至14いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項16】
前記(iii)で使用する前記変異型酵素が、配列表の配列番号1で示す配列の57番目に相当するアミノ酸をトレオニンに置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の68番目に相当するアミノ酸をアスパラギン酸に置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の89番目に相当するアミノ酸をグリシンに置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の122番目に相当するアミノ酸をグリシンに置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の126番目に相当するアミノ酸を脂肪族アミノ酸又は分岐鎖アミノ酸に置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の130番目に相当するアミノ酸をヒスチジンに置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の131番目に相当するアミノ酸をアスパラギン、フェニルアラニン又はイソロイシンに置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の136番目に相当するアミノ酸をフェニルアラニンに置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の171番目に相当するアミノ酸を酸性アミノ酸に置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の197番目に相当するアミノ酸を芳香族アミノ酸に置換したものである、請求項1乃至15いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項17】
前記脂肪族アミノ酸がグリシンであり、分岐鎖アミノ酸がバリン又はロイシンである、請求項16に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項18】
前記酸性アミノ酸がアスパラギン酸又はグルタミン酸である、請求項16又は17に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項19】
前記芳香族アミノ酸がフェニルアラニン又はチロシンである、請求項16乃至18いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項20】
Pseudomonas属に由来する2−デオキシリボ−ス合成酵素を用いて、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸又はその塩から2−デオキシリボ−スを合成する、請求項1乃至19いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項21】
グルコン酸又はその塩を脱水反応に付して2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸又はその塩を得る工程をさらに含み、得られた2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸又はその塩を用いて2−デオキシリボ−スを合成する、請求項1乃至20いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項22】
グルコン酸又はその塩を脱水反応に付して2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸又はその塩を得る前記工程において、前記脱水反応を酵素反応により実行する、請求項21に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項23】
脱水反応に付する前記工程における前記酵素反応が、グルコン酸デヒドラタ−ゼ活性を有する酵素により触媒される、請求項22に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項24】
グルコン酸デヒドラタ−ゼ活性を有する前記酵素が、Achromobacter xylosoxidansに由来する酵素である、請求項23に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項25】
前記脱水反応と、前記脱水反応により得られる2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸又はその塩を用いて2−デオキシリボ−スを合成する反応とをワンポットで行う、請求項22乃至24いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項26】
2−デオキシリボ−スから2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩を合成し、リン酸転移酵素及びヌクレオシド合成酵素を用いて、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩から2'−デオキシヌクレオシドを合成する、請求項1乃至25いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項27】
前記ヌクレオシド合成酵素がヌクレオシドホスホリラ−ゼである、請求項26に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項28】
前記ヌクレオシド合成酵素が、チミジンホスホリラ−ゼ(EC2.4.2.4)、ウリジンホスホリラ−ゼ(EC2.4.2.3)及びプリンヌクレオシドホスホリラ−ゼ(EC2.4.2.1)からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項26又は27に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項29】
前記リン酸転移酵素がホスホペントムタ−ゼである、請求項26乃至28いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項30】
2−デオキシリボ−スと、ピロリン酸又はその塩とを反応させることにより、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩を合成し、得られる2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩から2'−デオキシヌクレオシドを合成する、請求項1乃至29いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項31】
2−デオキシリボ−スに酸性ピロリン酸ナトリウムを作用させて、2−デオキシリボ−スから2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルナトリウムを合成し、得られた2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルを含む反応終了物から、前記酸性ピロリン酸ナトリウムに由来するナトリウムイオンが除去されていないとき、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルナトリウムとナトリウムイオンとを含む粗精製物を用いてpH調整剤によってpHを調整しながら2'−デオキシヌクレオシドを製造する、請求項30に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項32】
前記pH調整剤が二価金属塩である、請求項31に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項33】
前記二価金属塩が硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム又はこれらの混合物である、請求項32に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項34】
2−デオキシリボ−スから2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルナトリウムを合成する反応の反応生成物から、前記ピロリン酸ナトリウムに由来するナトリウムイオンを除去されたとき、得られる2−デオキシリボ−ス−5−リン酸ナトリウムを用いた2'−デオキシヌクレオシドを合成する反応において、前記pH調整剤によるpHの調整を実行しない、請求項31乃至33いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項35】
2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルナトリウムから2'−デオキシヌクレオシドを合成する前記反応を行う前に、陽イオン交換樹脂を用いて前記反応生成物からナトリウムイオンを除去する、請求項34に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項36】
2−デオキシリボ−スに対して過剰のピロリン酸又はその塩を用いて2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩を合成したとき、二価金属の水酸化物を用いて、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルを含む水溶液から、前記ピロリン酸又はその塩に由来するリン酸を沈殿により除去し、得られる2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩を用いて2'−デオキシヌクレオシドを合成する、請求項30乃至35いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項37】
前記二価金属の水酸化物が水酸化マグネシウム又は水酸化カルシウムである、請求項36に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
【請求項38】
請求項1乃至37いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法に用いる、変異型2−デオキシリボ−ス合成酵素。
【請求項39】
2−デオキシリボ−ス合成能を有し、配列表の配列番号2乃至4いずれかに示す配列において、少なくとも1以上のアミノ酸から他のアミノ酸に置換したアミノ酸配列を持つことを特徴とする請求項38記載の変異型2−デオキシリボ−ス合成酵素。
【請求項40】
請求項1乃至37いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法に用いる、変異型2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成酵素。
【請求項41】
2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成能を有する野生型酵素に対して少なくとも配列表の配列番号1で示す配列の57番目、68番目、89番目、122番目、126番目、130番目、131番目、136番目、171番目及び197番目のいずれかに相当するアミノ酸の1つ以上の変異を含み、かつ、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成能を有し、
前記野生型酵素は、下記のアミノ酸配列(a)、(b)、(c)及び(d)を有し、前記野生型酵素において、前記アミノ酸配列(b)は、少なくとも1以上のアミノ酸を介して、アミノ酸配列(a)とアミノ酸配列(c)とを連結し、前記アミノ酸配列(c)は、少なくとも1以上のアミノ酸を介して、アミノ酸配列(b)とアミノ酸配列(d)とを連結している変異型2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成酵素。
(a)GSIXFLNDQAMYEXGR
(b)DAOL(A/S)XGGVAXXFSXAFGJPI
(c)KLLTNMIEDAGDLATR(S/G)AKBXYMRIRPFAFYG
(d)NGSYPSGHTXIGWAJALVLXEUNPXXQOXILKRGYZLGXSRVICGYHWQSDVDAAR
[アミノ酸配列(a)、(b)、(c)及び(d)中、Bは、アスパラギン酸又はグルタミン酸であり、Jは、セリン、トレオニン又はチロシンであり、Uは、バリン、ロイシン又はイソロイシンであり、Oは、アスパラギン酸又はアスパラギンであり、Zは、グルタミン酸又はグルタミンであり、Xは任意のアミノ酸である。アミノ酸配列(b)中、A/Sは、アラニン又はセリンであることを示し、(c)中、S/Gは、セリン又はグリシンであることを示す。]

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−80875(P2012−80875A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115231(P2011−115231)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】