説明

2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランの製造方法

【課題】 高純度で着色のきわめて少ない2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランを高収率で製造する方法を提供する。
【解決手段】 2−(4−ジブチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸と4−メトキシ−2−メチルジフェニルアミンとを濃硫酸中で縮合反応させ、得られた縮合反応物を閉環反応させる2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランの製造方法において、
(1)縮合反応液を氷水中に排出して縮合反応物を得、
(2)得られた縮合反応物をトルエンとアルカリ水溶液との混合液を用いて加熱処理することにより得られた2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランのトルエン抽出液を、トルエン残量が、使用した2−(4−ジブチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸重量の1.4〜2.0倍容量となるまで常圧で濃縮し、
(3)トルエン抽出液の濃縮残分に、73〜77℃で2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランの種晶を添加し、20℃以下に冷却して析出物を得る
ことを特徴とする、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度の2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランの製造方法に関し、より詳しくは着色の原因となる副生物の生成を抑えた2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランは、現在感圧記録材料、感熱記録材料のための黒色発色性ロイコ色素として広く用いられている。感圧記録材料、感熱記録材料は、その地肌の白色度が高いことが、重要な特性の一つである。特に感熱記録材料においては、使用するロイコ色素の品質が地肌白色度に鋭敏に影響を与えるため、純度が高く着色成分の混入が非常に少ない2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランを使用することが望ましい。着色の少ないフルオラン化合物を製造するために、種々の方法が試みられてきた。
一般的にフルオラン化合物は、2−(ヒドロキシベンゾイル)安息香酸化合物と4−メトキシジフェニルアミン化合物とを濃硫酸中で縮合反応させ、次いで得られた縮合反応物をアルカリ条件下で加熱して閉環反応を行う方法により製造される。
【0003】
後記特許文献1では、2−(ヒドロキシベンゾイル)安息香酸化合物と4−メトキシジフェニルアミン化合物とを95%硫酸中で縮合反応させた反応液を、炭酸ナトリウムを含有するアルカリ水溶液に70℃以下で注加して中和し、次いでフタライド化合物をトルエンにて抽出後、該トルエン溶液を水酸化ナトリウム水溶液と加熱処理することで閉環反応を行ない、着色の少ないフルオラン化合物を得ることが開示されている。しかしながらこの方法でも、得られるフルオラン化合物の着色度は十分低くはなく、またフルオラン化合物の収率も満足できるものではない。
【0004】
また、後記特許文献2では、2−(ヒドロキシベンゾイル)安息香酸化合物と4−メトキシジフェニルアミン化合物とを濃硫酸中で縮合反応させた反応液を、アルカリ水溶液と有機溶剤との混合液に加えることにより、分散時に閉環反応を同時に進行させ、かつ着色の少ないフルオラン化合物が得られることが開示されている。しかしながらこの方法でも、得られるフルオラン化合物の着色度は十分に低くはない。
これらの特許文献記載の方法で製造されたフルオラン化合物を用いて感熱記録材料を作製すると、地肌白色度の点において満足できる製品を得ることができない。
【特許文献1】特開平03−251585号公報
【特許文献2】特開平05−086299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、着色の原因となる副生物の生成を抑えた2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記した課題を解決するために鋭意検討した結果、硫酸縮合反応液の排出方法と、閉環反応後のトルエン抽出液より最終生成物を析出させる条件を改良することにより、前記した課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、
2−(4−ジブチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸と4−メトキシ−2−メチルジフェニルアミンとを濃硫酸中で縮合反応させ、得られた縮合反応物を閉環反応させる2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランの製造方法において、
(1)縮合反応液を氷水中に排出して縮合反応物を得、
(2)得られた縮合反応物をトルエンとアルカリ水溶液との混合液を用いて加熱処理することにより得られた2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランのトルエン抽出液を、トルエン残量が、使用した2−(4−ジブチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル) 安息香酸重量の1.4〜2.0倍容量となるまで常圧で濃縮し、
(3)トルエン抽出液の濃縮残分に、73〜77℃で2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランの種晶を添加し、20℃以下に冷却して析出物を得る
ことを特徴とする、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法により、高純度で着色が少ない2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランを高収率で製造することができる。また本発明の製造方法で得られた2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランは、特に感熱記録材料において着色の原因となるローダミン化合物の混入が非常に少ないため、発色剤として用いることで、地肌白色度の高い感熱記録材料を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の製造方法を以下に詳細に説明する。
本発明の製造方法は、下記式(2)で表される2−(4−ジブチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸(以下ケト酸と略称することもある)と下記式(3)で表される4−メトキシ−2−メチルジフェニルアミン(以下ジフェニルアミンと略称することもある)とを濃硫酸中で縮合反応させてフタリド化合物を得る第一反応段階と、第一反応段階で得られた縮合反応物(フタリド化合物)をトルエンとアルカリ水溶液との混合液を用いて加熱処理して目的の下記式(1)表される2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランにする第二反応段階から成る。
【0009】

【0010】

【0011】

【0012】
第一反応段階では、ケト酸とジフェニルアミンとを濃硫酸中で縮合反応させた後、硫酸縮合反応液を氷水中に排出する。析出物を濾過により分取し、フタリド化合物を得る。
第一反応段階で用いるケト酸とジフェニルアミンの量は、モル比で、ケト酸:ジフェニルアミン=1:1〜1:1.1、好ましくは1:1.03〜1:1.05である。
濃硫酸の量は、使用するケト酸重量の3〜10倍、好ましくは3.3〜7倍である。
縮合反応の反応温度は10〜20℃、好ましくは14〜16℃である。
縮合反応の反応時間は4〜48時間、好ましくは10〜24時間である。
この第一反応段階において、硫酸縮合反応液を氷水中に排出して反応を終了させることがする重要なポイントである。氷水中に排出することにより硫酸と水の混合による発熱を抑制し、着色副生物の生成を低減することができると考えられる。
用いられる氷水の量は、ケト酸重量の5〜15倍が好ましく、9.5〜10.5倍がより好ましい。排出液の水温は、縮合反応液全量を氷水中に排出し終えるまで0〜5℃を保つことが好ましく、0〜2℃を保つことがより好ましい。
縮合反応液を氷水中に排出して析出する沈殿を濾過し、水洗することで縮合反応物(フタリド化合物)の濾過ケーキを得ることができる。
【0013】
第二反応段階では、第一反応段階で得られた縮合反応物(フタリド化合物)の濾過ケーキをアルカリ水溶液、トルエンと共に加熱して閉環し、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランのトルエン抽出液を得る。このトルエン抽出液を特定条件下で濃縮し、73〜77℃で種晶を添加し、20℃以下に冷却して2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランを析出させる。
アルカリとしては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが使用でき、水酸化ナトリウムが好ましい。
アルカリの使用量は、使用するケト酸重量の1.0〜1.4倍重量が好ましく、1.1〜1.2倍重量がより好ましい。
アルカリ水溶液としては、アルカリ使用量の2〜10倍容量、好ましくは3〜3.5倍容量の水を使用して溶液とする。
トルエンの使用量は、ケト酸重量の8〜30倍容量が好ましく、10〜12倍容量がより好ましい。
第一反応段階で得られた縮合反応物(フタリド化合物)の濾過ケーキをアルカリ水溶液とトルエンと共に60〜100℃、好ましくは80〜85℃で30〜120分間、好ましくは50〜80分間攪拌する。次いで分液操作によりトルエン層を分取後、このトルエン抽出液を温水で洗浄する。
【0014】
得られた2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランのトルエン抽出液を、トルエン残量が、使用したケト酸重量の1.4〜2.0倍容量、好ましくは1.6〜1.8倍容量となるまで常圧で濃縮する。
トルエン残量が使用したケト酸重量の1.4倍容量未満では着色副生物の混入が増加し、2.0倍容量より多いと2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランの収率が低下する。
トルエン濃縮時のトルエン抽出液の温度は、100〜110℃が好ましい。このような条件下でトルエン抽出液を濃縮することにより、濃縮操作が終わるまでトルエン溶液中から結晶が析出しない状態を保つことができる。
トルエン抽出液の濃縮残分を73〜77℃、好ましくは75℃まで冷却し、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランの種晶を添加する。種晶の添加温度が77℃より高いと種晶が溶解してしまい、73℃より低いと着色副生物の混入が増加する。種晶としては、結晶型の最も安定な高融点結晶(融点:183〜185℃)が好ましく、添加量は反応に用いたケト酸重量の0.01〜0.1%が好ましい。種晶添加後、トルエン抽出液の濃縮残分を20℃以下、好ましくは15〜20℃に冷却し、同温度で2時間以上、好ましくは3〜5時間攪拌して2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランの結晶を析出させる。結晶を濾過し、好ましくは使用したケト酸重量と同容量程度のトルエンで洗浄後、好ましくは減圧下に乾燥することによって、目的とする高純度で着色の低い2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランを高収率で得ることが出来る。
【0015】
2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン製造時の主要な着色副生物は、ローダミン化合物(3,6−ビス(ジ−n−ブチルアミノ)フルオラン)である。ローダミン化合物は混入量が少量であっても、感熱記録材料において地肌が赤味に着色する原因となるため、できる限り生成を抑えることが望ましい。一般的に、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランに対するローダミン化合物の混入量が100ppmより多いと、感熱記録材料における地肌の着色が問題視されるようになる。このため、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン製造時のローダミン化合物の混入量が100ppm以下であることが望ましい。本発明の製造方法によれば、ローダミン化合物の混入量が100ppm以下である2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランを、再結晶等の更なる精製操作なしに、高収率で製造することができる。
【実施例】
【0016】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1)2−(3−メチルアニリノ)−3−メチル−6−(ジ−n−ブチルアミノ)フルオランの製造
98%硫酸26.3gに、2−(4−ジブチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸7.60gを40℃以下で、1時間要して少量ずつ加え、溶解させた。これに、4−メトキシ−2−メチルジフェニルアミン4.56gを、20℃以下で、3時間要して徐々に加えた。
14〜16℃で20時間攪拌後、この反応混合物を氷水74.5g中に、攪拌下徐々に排出した。この間の混合液の温度は、0〜2℃に保った。その後、析出した固形物を濾過により分取し、30mLの水で3回洗浄した。
この濾過ケーキを、トルエン79mL、50%苛性ソーダ17.7g、水20mLと、80℃で1時間攪拌下に還流した。トルエン層を分取し、温水14mLで4回洗浄した。
このトルエン抽出液より、常圧で、66mLのトルエンを回収した。この間のトルエン抽出液の温度は、100〜110℃であった。トルエン抽出液の濃縮残分を75℃まで冷却し、2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオランの高融点結晶の種晶3.8mgを加えた。次いで20℃以下に冷却し、15〜20℃で3時間攪拌後、析出した結晶を濾取した。トルエン8mLで洗浄した後、減圧下に乾燥し、2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン10.0g(収率:91.2%)を得た。融点:183.4〜184.8℃であった。
得られた2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオランのローダミン化合物(3,6−ビス(ジ−n−ブチルアミノ)フルオラン)含有量を、クロマトスキャナー(CS−9300PC:島津製作所製)を用いて測定したところ、10ppmであった。
【0017】
(比較例1)
特開平05−086299号公報(特許文献2)記載の操作法にそった2−(3−メチルアニリノ)−3−メチル−6−(ジ−n−ブチルアミノ)フルオランの製造
98%硫酸26.3g中に、2−(4−ジブチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸7.60gを40℃以下で、1時間要して少量ずつ加え、溶解させた。これに、4−メトキシ−2−メチルジフェニルアミン4.56gを、20℃以下で、3時間要して徐々に加えた。
20℃以下で20時間攪拌後、この反応混合物を、水163gに水酸化ナトリウム32.2gを溶解させたアルカリ水溶液とトルエン48mLとの混合液に、1時間で加えた。この間の混合液の温度は、75〜90℃に保った。その後、30分間攪拌下に還流させた。トルエン層を分取し、温水30mLで2回洗浄した。
このトルエン抽出液より、常圧で、25mLのトルエンを回収した。トルエン抽出液の濃縮残分を、15〜20℃で3時間攪拌後、析出した結晶を濾取した。トルエン8mLで洗浄した後、減圧下に乾燥し、2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン9.59g(収率:87.5%)を得た。
融点:181.4〜183.5℃であった。
得られた2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオランのローダミン化合物含有量を、実施例1と同様にクロマトスキャナーを用いて測定したところ、150ppmであった。
【0018】
(比較例2)
特開平03−251585号公報(特許文献1)記載の操作法にそった2−(3−メチルアニリノ)−3−メチル−6−(ジ−n−ブチルアミノ)フルオランの製造
95%硫酸95.7g中に、2−(4−ジブチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸20gと4−メトキシ−2−メチルジフェニルアミン12gとを加え、10〜15℃で20時間攪拌した。この反応混合物を、冷却したアルカリ水溶液(水403.8gに炭酸水素ナトリウム20gと水酸化ナトリウム66.2gとを溶解)に、1時間で加えた。この間アルカリ水溶液の温度は、70℃以下に保った。その後、トルエン120mLを加え、80℃まで加熱昇温した後、静置してトルエン層を分取した。
このトルエン溶液を、水酸化ナトリウム5.8g、水150g、トルエン60mLと混合し、2時間攪拌下に還流させた。トルエン層を分取し、温水75mLで2回洗浄した。このトルエン溶液より常圧で、120mLのトルエンを回収し、15〜20℃で3時間攪拌後、析出した結晶を濾取した。トルエン20mLで洗浄した後、減圧下に乾燥し、2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン25.2g(収率:87.5%)を得た。
融点:181.3〜183.3℃であった。
得られた2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオランのローダミン化合物含有量を、実施例1と同様にクロマトスキャナーを用いて測定したところ、180ppmであった。
【0019】
【表1】

【0020】
(参考例1)感熱記録材料の作製
発色剤分散液の作製
実施例1で得た2−(3−メチルアニリノ)−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン3gを2%ポリビニルアルコール水溶液70g中、サンドミルを用いて、平均粒径が1ミクロンになるように粉砕し、発色剤分散液を得た。
顕色剤および増感剤分散液の作製
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン6gと増感剤のp−ベンジルビフェニル3gとを、2%ポリビニルアルコール水溶液75g中で、サンドミルを用いて平均粒径が3ミクロンになるように粉砕して、分散液を得た。
発色像安定剤分散液の作製
発色像安定剤として、2−ベンジルオキシナフタレン6gを、2%ポリビニルアルコール水溶液75g中で、サンドミルを用いて平均粒径が3ミクロンになるように粉砕して、発色像安定剤分散液を得た。
感熱塗液の作製
上記の発色剤分散液、顕色剤および増感剤分散液、発色像安定剤分散液を全量混合した後、炭酸カルシウム15gを水50mlに分散させた分散液とパラフィンワックス30%分散液15gとを添加し、よく混合して感熱塗液を得た。
感熱記録材料の作製
得られた感熱塗液を上質紙上に固形分塗布量が約5g/mになるように塗布し、乾燥後、カレンダー処理により感熱記録層表面のベック平滑度が約300秒になるように調整して、感熱記録材料を得た。
【0021】
(参考例2)感熱記録材料の作製
実施例1で得た2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオランの代わりに比較例1で得た2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオランを用いた以外は参考例1と同様の操作を行って、感熱記録材料を作製した。
【0022】
(参考例3)
実施例1で得た2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオランの代わりに比較例2で得た2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオランを用いた以外は参考例1と同様の操作を行って、感熱記録材料を作製した。
(感熱記録材料の地肌白色度評価)
参考例1、参考例2および参考例3で得た各感熱記録材料に対して、反射濃度計RD−914(マクベス製)を用いて地肌白色度を測定した。結果を下記表2に示す。
【0023】
【表2】

参考例1で得た感熱記録材料の地肌は白色であったが、参考例2および参考例3で得た感熱記録材料の地肌は薄いピンク色であった
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の製造方法により、高純度で着色のきわめて少ない2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランを高収率で製造することができる。また本発明の製造方法で得られた2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランを発色剤として用いることで、地肌白色度の高い感熱記録材料を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−(4−ジブチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸と4−メトキシ−2−メチルジフェニルアミンとを濃硫酸中で縮合反応させ、得られた縮合反応物を閉環反応させる2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランの製造方法において、
(1)縮合反応液を氷水中に排出して縮合反応物を得、
(2)得られた縮合反応物をトルエンとアルカリ水溶液との混合液を用いて加熱処理することにより得られた2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランのトルエン抽出液を、トルエン残量が、使用した2−(4−ジブチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸重量の1.4〜2.0倍容量となるまで常圧で濃縮し、
(3)トルエン抽出液の濃縮残分に、73〜77℃で2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランの種晶を添加し、20℃以下に冷却して析出物を得る
ことを特徴とする、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオランの製造方法。

【公開番号】特開2010−59135(P2010−59135A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229159(P2008−229159)
【出願日】平成20年9月6日(2008.9.6)
【出願人】(000179904)山本化成株式会社 (70)
【Fターム(参考)】