説明

2−オキソ−4−メチルチオブタン酸又はその塩の製造方法

【課題】2−オキソ−4−メチルチオブタン酸又はその塩を製造できる新たな方法を提供すること。
【解決手段】メタンチオールと有機塩基とを反応させる工程(1)と、前記工程(1)で得られた生成物と2−オキソ−3−ブテン酸とを反応させる工程(2)とを有することを特徴とする2−オキソ−4−メチルチオブタン酸又はその塩の製造方法。有機塩基としては、例えば、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、N−メチルモルホリン等の第三アミン、ピリジン、キノリン、N−メチルイミダゾール等の含窒素複素環芳香族化合物が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−オキソ−4−メチルチオブタン酸又はその塩の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2−オキソ−4−メチルチオブタン酸又はその塩は、必須アミノ酸であるメチオニンの原料として有用であることが知られている(例えば特許文献1参照)。2−オキソ−4−メチルチオブタン酸又はその塩は、飼料添加物として有用であることも知られている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
2−オキソ−4−メチルチオブタン酸又はその塩の製造方法として、例えば、特許文献2には、2−オキソ−3−ブテン酸の水溶液と、気体又は液体のメチルメルカプタン(メタンチール)とを触媒の存在下で混合する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2006/113085号パンフレット
【特許文献2】特表2008−526720号公報(段落〔0056〕〜〔0067〕)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、2−オキソ−4−メチルチオブタン酸又はその塩を製造できる新たな方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、2−オキソ−4−メチルチオブタン酸又はその塩の製造方法について鋭意検討した結果、本発明に至った。
【0007】
即ち本発明は、以下の通りである。
〔1〕 メタンチオールと有機塩基とを反応させる工程(1)と、
前記工程(1)で得られた生成物と2−オキソ−3−ブテン酸とを反応させる工程(2)と
を有することを特徴とする2−オキソ−4−メチルチオブタン酸又はその塩の製造方法。
〔2〕 前記工程(2)が、水の存在下で、前記工程(1)で得られた生成物と2−オキソ−3−ブテン酸とを反応させる工程である前記〔1〕記載の製造方法。
〔3〕 前記工程(1)における有機塩基が第三アミン又は含窒素複素環芳香族化合物である前記〔1〕又は〔2〕記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、2−オキソ−4−メチルチオブタン酸又はその塩を製造できる新たな方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明は、メタンチオールと有機塩基とを反応させる工程(1)と、
前記工程(1)で得られた生成物と2−オキソ−3−ブテン酸とを反応させる工程(2)とを有することを特徴とする。工程(1)と工程(2)とを行なうことにより、2−オキソ−4−メチルチオブタン酸又はその塩が生成する。
まず、工程(1)について説明する。工程(1)は、メタンチオールと有機塩基とを反応させる工程である。
【0011】
工程(1)に用いられるメタンチオールは、市販のものであってもよいし、例えばメタノールと硫化水素との反応等の公知の方法により調製したものであってもよい。
【0012】
工程(1)に用いられる有機塩基としては、例えば、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、N−メチルモルホリン等の第三アミン、ピリジン、キノリン、N−メチルイミダゾール等の含窒素複素環芳香族化合物が挙げられる。有機塩基は、好ましくは、トリエチルアミン又はピリジンである。
有機塩基の使用量は、メタンチオール1モルに対して、例えば0.8〜2モルであり、好ましくは0.9〜1.5モルであり、より好ましくは0.95〜1.1モルである。
【0013】
工程(1)は、溶媒の非存在下で行うこともできるし、例えば、溶媒の存在下で行うこともできる。溶媒としては、例えば、水;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン等の鎖式炭化水素溶媒;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素溶媒;ベンゼン、スチレン、エチルベンゼン、トルエン、キシレン、イソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;ジブチルエーテル、1−イソプロポキシブタン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1−エトキシブタン、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;ブチロニトリル、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒;シクロペンタノン、ジプロピルケトン、ヘプタノン、メチルイソプロピルケトン、5−メチルヘキサン−2−オン、2−ペンタノン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒;およびこれらの混合溶媒が挙げられ、好ましくは水が挙げられる。溶媒の使用量は、メタンチオール1重量部に対して、例えば0.1〜20重量部であり、また例えば1〜10重量部である。
工程(1)は、容積効率の点で好ましくは溶媒の非存在下で行われる。
【0014】
工程(1)を行なう方法としては、例えば、メタンチオールを含む溶液又は液化したメタンチオールに、有機塩基を添加する方法、有機塩基に、メタンチオールを含む溶液又は液化したメタンチオールを添加する方法が挙げられる。メタンチオールを含む溶液又は液化したメタンチオールに、有機塩基を添加する温度、及び、有機塩基に、メタンチオールを含む溶液又は液化したメタンチオールを添加する温度は、例えば−50℃〜50℃の範囲、好ましくは−25℃〜25℃の範囲から選択される。
工程(1)における反応温度は、例えば−25℃〜45℃の範囲、好ましくは−10℃〜35℃の範囲から選択される。工程(1)における反応時間は、例えば、10分〜24時間であり、好ましくは30分〜10時間である。
【0015】
工程(1)により、メタンチオールと有機塩基との付加化合物が生成する。即ち、工程(1)で得られる生成物は、メタンチオールと有機塩基との付加化合物である。
メタンチオールと有機塩基との付加化合物は、例えば、pH試験紙による呈色試験により、その生成を確認することができる。例えば、メタンチオールと第三アミンとの付加化合物は、pH試験紙による呈色試験においてpH9〜pH10を示す。また、例えば、メタンチオールと含窒素複素環芳香族化合物との付加塩は、pH試験紙による呈色試験においてpH5〜pH6を示す。
【0016】
工程(1)で得られる生成物は、濃縮処理、精製処理等に付した後に、後述する工程(2)に用いることもできるし、濃縮処理、精製処理等に付さずに、工程(2)にそのまま用いることもできる。かかる生成物は、生産効率の点で、好ましくは、濃縮処理、精製処理等に付さずに、工程(2)にそのまま用いられる。
【0017】
工程(1)で得られる生成物としては、具体的には、例えば、メタンチオールとトリエチルアミンとの付加化合物、メタンチオールとトリメチルアミンとの付加化合物、メタンチオールとジイソプロピルエチルアミンとの付加化合物、メタンチオールとトリ−n−ブチルアミンとの付加化合物、メタンチオールとN−メチルモルホリンとの付加化合物、メタンチオールとピリジンとの付加化合物、メタンチオールとキノリンとの付加化合物、メタンチオールとN−メチルイミダゾールとの付加化合物が挙げられ、好ましくは、メタンチオールとトリエチルアミンとの付加化合物又はメタンチオールとピリジンとの付加化合物である。
【0018】
次いで、工程(2)について説明する。工程(2)は、前記工程(1)で得られた生成物と2−オキソ−3−ブテン酸とを反応させる工程である。工程(2)を行なうことにより、2−オキソ−4−メチルチオブタン酸又はその塩が生成する。
【0019】
工程(2)に用いられる2−オキソ−3−ブテン酸は、例えば、1,2−ジヒドロキシ−3−ブテンを酸化する方法により製造することができる。1,2−ジヒドロキシ−3−ブテンを酸化する方法としては、例えば、特表2008−526720号公報に記載される方法が挙げられ、具体的には、例えば、1,2−ジヒドロキシ−3−ブテンを、触媒の存在下で酸化する方法が挙げられる。
【0020】
1,2−ジヒドロキシ−3−ブテンを酸化する方法に用いられる触媒(以下、酸化触媒ということがある。)としては、例えば、貴金属を含む触媒が挙げられ、好ましくは、パラジウム、白金、ルテニウム、イリジウム及びロジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の貴金属を含む触媒が挙げられ、より好ましくはパラジウム及び白金からなる群より選ばれる少なくとも一種の貴金属を含む触媒が挙げられる。触媒は、担体に担持された触媒(以下、担持触媒ということがある。)であってもよい。担体としては、アルミナ、シリカ、活性炭及びグラファイト等が挙げられる。担持触媒を用いる場合、担持触媒に対する貴金属の含有量は、例えば0.1〜20重量%であり、好ましくは0.5〜10重量%である。
【0021】
酸化触媒は、さらに、例えば、ビスマス、鉛、アンチモン、スズ、ニオブ、テルル、インジウム、ガリウム、亜鉛、銅、ニッケル、コバルト、タングステン、モリブデン、レニウム、バナジウム、クロム、マンガン及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも一種の助触媒を含んでいてもよく、ビスマス及び鉛からなる群より選ばれる少なくとも一種の助触媒を含んでいてもよい。助触媒の量は、貴金属1重量部に対して、例えば0.00005〜5重量部、好ましくは0.00005〜1重量部である。
【0022】
酸化触媒は、さらに好ましくは、パラジウム及び白金からなる群より選ばれる少なくとも一種の貴金属と、ビスマス及び鉛からなる群より選ばれる少なくとも一種の助触媒とを含む担持触媒である。
【0023】
酸化触媒は、例えば、含浸法により調製した触媒前駆体を、還元する方法により得ることができる。還元に用いる試剤としては、例えば、ホルムアルデヒド、ギ酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素、次亜リン酸、ヒドラジン及び還元糖が挙げられる。還元温度は、例えば、20℃〜400℃の範囲から選択される。
【0024】
1,2−ジヒドロキシ−3−ブテンの酸化は、好ましくは、溶媒の存在下で行われる。溶媒としては、1,2−ジヒドロキシ−3−ブテンを溶解できるものであれば限定されず、例えば、水;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン等の鎖式炭化水素溶媒;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素溶媒;ベンゼン、スチレン、エチルベンゼン、トルエン、キシレン、イソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;ギ酸エチル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、酢酸エチル、酢酸アリル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、イソブタン酸メチル、ブタン酸メチル等のエステル溶媒;ジブチルエーテル、1−イソプロポキシブタン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1−エトキシブタン、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;ブチロニトリル、アセトニトリル、アクリロニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒;シクロペンタノン、ジプロピルケトン、ヘプタノン、メチルイソプロピルケトン、5−メチルヘキサン−2−オン、2−ペンタノン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒が挙げられ、好ましくは水が挙げられる。
【0025】
1,2−ジヒドロキシ−3−ブテンの酸化には、酸素が用いられる。酸素としては、例えば、分子状酸素、空気、酸素と不活性ガスとの混合ガスが挙げられる。
【0026】
1,2−ジヒドロキシ−3−ブテンの酸化は、例えば、1,2−ジヒドロキシ−3−ブテンと、酸化触媒と、溶媒とを混合し、得られる混合物を酸素の存在下、加圧条件下又は常圧条件下で攪拌する方法により行われる。
1,2−ジヒドロキシ−3−ブテンの酸化は、好ましくはpH4〜11の条件下で行なわれ、より好ましくはpH5.5〜7.5の条件下で行なわれる。pHの調整は、上述の混合物に、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩を添加することにより行なうことができる。
反応温度は、例えば10℃〜95℃の範囲、好ましくは25℃〜70℃の範囲から選択される。反応時間は、例えば、20分〜15時間である。
【0027】
工程(2)は、溶媒の存在下で行うことができる。工程(2)に用いられる溶媒としては、例えば、水;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン等の鎖式炭化水素溶媒;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素溶媒;ベンゼン、スチレン、エチルベンゼン、トルエン、キシレン、イソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;ジブチルエーテル、1−イソプロポキシブタン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1−エトキシブタン、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;ブチロニトリル、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒;シクロペンタノン、ジプロピルケトン、ヘプタノン、メチルイソプロピルケトン、5−メチルヘキサン−2−オン、2−ペンタノン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒;およびこれらの混合溶媒が挙げられ、好ましくは水である。溶媒の使用量は、2−オキソ−3−ブテン酸1重量部に対して、例えば、0.1〜100重量部であり、好ましくは、1〜50重量部である。
【0028】
工程(2)における反応温度は、例えば−30℃〜30℃の範囲、好ましくは−20℃〜20℃の範囲から選択される。反応温度が−30℃よりも低い場合は、工程(2)における反応が遅くなる傾向にあり、30℃よりも高い場合は、工程(2)における反応に用いられる2−オキソ−3−ブテン酸が分解する傾向にある。
工程(2)における反応時間は、例えば、10分〜24時間であり、好ましくは1〜10時間である。
工程(2)における反応は、好ましくはpH5〜10の範囲で行なわれる。
【0029】
工程(2)は、触媒の非存在下で行うことができ、好ましくは、
(A)2−オキソ−3−ブテン酸又はその溶液を上述の工程(2)における反応温度に調整し、そこへ工程(1)で得られた生成物を添加する方法、
(B)工程(1)で得られた生成物を上述の工程(2)における反応温度に調整し、そこへ2−オキソ−3−ブテン酸又はその溶液を添加する方法、
(C)2−オキソ−3−ブテン酸又はその溶液に工程(1)で得られた生成物を添加し、得られる混合物を、上述の工程(2)における反応温度に調整する方法、或いは
(D)工程(1)で得られた生成物に2−オキソ−3−ブテン酸又はその溶液を添加し、得られる混合物を、上述の工程(2)における反応温度に調整する方法
により行なわれ、より好ましくは(A)記載の方法により行なわれる。即ち工程(2)は、より好ましくは、−30℃〜30℃の範囲から選択される温度に調整した2−オキソ−3−ブテン酸又はその溶液に、前記工程(1)で得られた生成物を添加する方法により行なわれ、さらに好ましくは、−20℃〜20℃の範囲から選択される温度に調整した2−オキソ−3−ブテン酸又はその溶液に、前記工程(1)で得られた生成物を添加する方法により行なわれる。
【0030】
工程(2)における反応の進行度合いは、例えばガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、核磁気共鳴スペクトル分析、赤外吸収スペクトル分析等の分析手段により確認することができる。
【0031】
工程(2)における反応終了後、例えば、反応混合物に硫酸、塩酸等の鉱酸を添加し、得られる酸性混合物と、水に非混和性の有機溶媒とを混合し、抽出処理を施すことで、2−オキソ−4−メチルチオブタン酸を取り出すことができる。水に非混和性の有機溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化溶媒、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒が挙げられる。
取り出した2−オキソ−4−メチルチオブタン酸は、例えば、水洗等の洗浄処理に付すこともできるし、例えば、蒸留、カラムクロマトグラフィー、結晶化等の精製処理に付することもできる。
【0032】
工程(2)で得られる反応混合物には、工程(1)で用いた有機塩基が含まれている。かかる有機塩基は、上述の抽出処理を行った後、得られる水相を中和処理することにより、回収することができる。回収した有機塩基は、例えば、工程(1)において再利用することができる。
【0033】
かくして得られる2−オキソ−4−メチルチオブタン酸は、そのカルボキシ基から解離し得るHが任意の陽イオンに置き換わった塩であってもよい。陽イオンとしては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属イオン、トリエチルアンモニウムイオン等のアンモニウムイオンが挙げられる。
【実施例】
【0034】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
【0035】
<製造例1> (2−オキソ−3−ブテン酸の製造)
1,2−ジヒドロキシ−3−ブテンを、特表2008−526720号公報実施例7記載の方法に準じて酸化することにより、2−オキソ−3−ブテン酸の水溶液を調製した。得られた水溶液を、濃縮することなく、後述する実施例1にそのまま使用した。
【0036】
<実施例1>
工程(1) (メタンチオレートとトリエチルアミンとの付加化合物の調製)
−10℃に冷却液化したメタンチオール1.2g(25mmol)に、同温で攪拌しながらトリエチルアミン2.5g(25mmol)を添加した後、得られた混合物を室温(約25℃)に昇温した。昇温後、混合物をさらに1時間攪拌することにより、無色透明の油状物を得た。得られた無色透明の油状物は、pH試験紙による呈色試験において、pH9〜10を示していた。
工程(2) (2−オキソ−4−メチルチオブタン酸の製造)
製造例1で得られた2−オキソブタ−3−エン酸の水溶液1mLを−10℃以下に冷却し、そこへ工程(1)で得られた、メタンチオレートとトリエチルアミンとの付加化合物20mgを添加した。得られた混合物を0℃で3.5時間攪拌した。
得られた反応混合物を液体クロマトグラフィー/質量分析装置により分析し、目的とする2−オキソ−4−メチルチオブタン酸が得られたことを確認した。
また、得られた反応混合物を、高液体クロマトグラフィー(株式会社島津製作所製)を用いて下記分析条件により分析したところ、2−オキソ−4−メチルチオブタン酸が23.6%(液体クロマトグラフィー面積百分率法)生成していた。
(分析条件)
LCカラム :Sumipax Lichrosob RP−18
(30cmx4.0mm、10μm)
カラム温度 :40℃
移動相 :アイソクラティック
移動相A:1−ペンタンスルホン酸 2.64g/2850mL水
移動相B:アセトニトリル
0分 B 5%
60分 B 5% STOP
流速 :1mL/分
検出波長 :210nm
測定時間 :60分
【0037】
<実施例2>
工程(1) (メタンチオレートとピリジンとの付加化合物の調製)
−10℃に冷却液化したメタンチオール1.7g(35mmol)に、同温で攪拌しながらピリジン2.8g(35mmol)を添加した後、得られた混合物を室温(約25℃)に昇温した。昇温後、混合物をさらに1時間攪拌することにより、無色透明の油状物を得た。得られた無色透明の油状物は、pH試験紙による呈色試験において、pH5〜6を示していた。別途ピリジンのpH試験紙による呈色試験を行なったところ、pH7〜8を示していた。
工程(2) (2−オキソ−4−メチルチオブタン酸の製造)
製造例1で得られた2−オキソブタ−3−エン酸の水溶液1mLを−10℃以下に冷却し、そこへ工程(1)で得られた、メタンチオレートとピリジンとの付加化合物20mgを添加した。得られた混合物を0℃で3.5時間攪拌した。
得られた反応混合物を液体クロマトグラフィー/質量分析装置により分析し、目的とする2−オキソ−4−メチルチオブタン酸が得られたことを確認した。
また、得られた反応混合物を、高液体クロマトグラフィー(株式会社島津製作所製)を用いて実施例1に記載した分析条件により分析したところ、2−オキソ−4−メチルチオブタン酸が9.2%(液体クロマトグラフィー面積百分率法)生成していた。
【産業上の利用可能性】
【0038】
2−オキソ−4−メチルチオブタン酸又はその塩は、必須アミノ酸であるメチオニンの原料として有用であることが知られている。また、飼料添加物として有用であることも知られている。本発明は、2−オキソ−4−メチルチオブタン酸又はその塩の新たな製造方法として産業上利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタンチオールと有機塩基とを反応させる工程(1)と、
前記工程(1)で得られた生成物と2−オキソ−3−ブテン酸とを反応させる工程(2)と
を有することを特徴とする2−オキソ−4−メチルチオブタン酸又はその塩の製造方法。
【請求項2】
前記工程(2)が、水の存在下で、前記工程(1)で得られた生成物と2−オキソ−3−ブテン酸とを反応させる工程である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記工程(1)における有機塩基が第三アミン又は含窒素複素環芳香族化合物である請求項1又は2記載の製造方法。

【公開番号】特開2012−136467(P2012−136467A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289607(P2010−289607)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】