説明

2−ベンジル−4−ナフチルイミダゾール化合物

【課題】銅表面の酸化防止剤、エポキシ樹脂の硬化剤、あるいは医農薬中間体等として有用な化合物の提供。
【解決手段】化学式(I)等の化合物。


(式中、X1は水素原子または塩素原子を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な2−ベンジル−4−ナフチルイミダゾール化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明に類似のイミダゾール化合物として、例えば特許文献1には、化1の化学式で示されるイミダゾール化合物が開示され、種々のイミダゾール化合物が例示されているが、本願発明の2−ベンジル−4−ナフチルイミダゾール化合物の開示はない。
【0003】
【特許文献1】特表2003−500357号公報(第7頁、第51〜55頁)
【0004】
【化1】

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新規な2−ベンジル−4−ナフチルイミダゾール化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、前記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、化2の化学式(I)および化3の化学式(II)で示される新規な2−ベンジル−4−ナフチルイミダゾール化合物を合成し得ることを認め、本発明を完成するに至ったものである。
【0007】
【化2】

(式中、Xは水素原子または塩素原子を表す。)
【0008】
【化3】

【発明の効果】
【0009】
本発明の2−ベンジル−4−ナフチルイミダゾール化合物は、プリント配線板の導電部を構成する金属、特に銅(銅合金を含む)の表面の酸化防止剤や、エポキシ樹脂の硬化剤または硬化促進剤として、また医農薬分野の中間原料としても有用なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の2−ベンジル−4−ナフチルイミダゾール化合物は、前記化2の化学式(I)および前記化3の化学式(II)で示されるものであり、
2−ベンジル−4−(1−ナフチル)イミダゾール、
2−ベンジル−4−(2−ナフチル)イミダゾール、
2−(2−クロロベンジル)−4−(1−ナフチル)イミダゾール、
2−(2−クロロベンジル)−4−(2−ナフチル)イミダゾール、
2−(3−クロロベンジル)−4−(1−ナフチル)イミダゾール、
2−(3−クロロベンジル)−4−(2−ナフチル)イミダゾール、
2−(4−クロロベンジル)−4−(1−ナフチル)イミダゾール、
2−(4−クロロベンジル)−4−(2−ナフチル)イミダゾールおよび
2−(2,4−ジクロロベンジル)−4−(1−ナフチル)イミダゾールである。
【0011】
本発明の2−ベンジル−4−ナフチルイミダゾール化合物は、公知の方法に準拠して合成することができる。即ち、化4の反応式に示されるように、2位ハロゲン化アセトナフトン化合物とアリールアセトアミジン化合物を脱ハロゲン化水素剤の存在下、有機溶媒中で加熱反応をさせることにより合成することができる。
【0012】
【化4】

(式中、XおよびXは同一または異なって水素原子もしくは塩素原子を表す。Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す。)
【0013】
前述の反応において、アリールアセトアミジン化合物の使用量は、2位ハロゲン化アセトナフトン化合物に対して、0.8〜1.5倍モルが好ましく、より好ましくは0.9〜1.1倍モルの割合とすればよい。脱ハロゲン化水素剤の使用量は、2位ハロゲン化アセトナフトン化合物に対して、1〜10倍当量の割合が好ましい。
【0014】
前記の2位ハロゲン化アセトナフトン化合物としては、2−クロロ−1′−アセトナフトン、2−ブロモ−1′−アセトナフトン、2−ヨード−1′−アセトナフトン、2−クロロ−2′−アセトナフトン、2−ブロモ−2′−アセトナフトンおよび2−ヨード−2′−アセトナフトンが挙げられる。
【0015】
これらの2位ハロゲン化アセトナフトン化合物の内、2−ブロモ−2′−アセトナフトンは試薬として入手できるが、その他のものはアセトナフトン化合物の2位をハロゲン化することにより合成することができる。ハロゲン化としては、塩素化またはヨウ素化も可能であるが、アセトナフトン化合物1モルに対し、1モルの臭素を反応させる臭素化反応が最も簡便である。
【0016】
アセトナフトン化合物としては、1′−アセトナフトンおよび2′−アセトナフトンが挙げられ、何れも試薬または工業薬品として入手できる。
【0017】
前記のアリールアセトアミジン化合物は、公知の方法に準拠して合成することができる。例えば、化5の反応式に示されるように、ベンジルシアニド化合物を塩化水素ガスおよびエタノール等の低級アルコールと反応させ、アリールアセトイミデート塩酸塩に変換し、更にアンモニアと反応させることによって、アリールアセトアミジンの塩酸塩を合成することができる。
【0018】
【化5】

(式中、XおよびXは前記と同様である。)
【0019】
このような反応で得られるアリールアセトアミジンの塩酸塩は、
フェニルアセトアミジン塩酸塩、
(2−クロロフェニル)アセトアミジン塩酸塩、
(3−クロロフェニル)アセトアミジン塩酸塩、
(4−クロロフェニル)アセトアミジン塩酸塩及び
(2,4−ジクロロフェニル)アセトアミジン塩酸塩である。
【0020】
アリールアセトアミジン化合物として、前記のアリールアセトアミジン塩酸塩を使用できるが、該塩酸塩とアルカリ等を反応させることにより塩酸を除いたフリーのアリールアセトアミジン化合物を使用できることは云うまでもない。
なお、前記のアリールアセトアミジン塩酸塩に限らず、フリーのアリールアセトアミジン化合物と、従来知られた無機酸または有機酸との塩も使用可能である。
【0021】
前記の脱ハロゲン化水素剤は公知のものを制限なく使用できる。このような脱ハロゲン化水素剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムのような無機アルカリ類、トリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)のような有機塩基類、ナトリウムメトキシド、カリウムtert−ブトキシドのような金属アルコキシド化合物などが挙げられる。
【0022】
前記の反応溶媒は、2位ハロゲン化アセトナフトン化合物とアリールアセトアミジン化合物を溶解することができ、かつ反応に関与しないものであれば公知のものを制限なく使用できる。このような溶媒として、例えば、イソプロピルアルコール、tert−ブタノールなどのアルコール類、ヘキサン、トルエンなどの炭化水素類、クロロホルム、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトニトリルなどのニトリル類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)などのアミド類、ジメチルスルホキシド(DMSO)などが挙げられ、これらの溶媒を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
反応温度は室温〜還流温度が好ましく、反応時間は1〜10時間が好ましい。反応は、通常大気圧下で行えばよい。
【0024】
以上の反応条件下で生成した2−ベンジル−4−ナフチルイミダゾール化合物は、通常の後処理によって単離することができる。
例えば、反応終了後の反応混合物を水層と有機溶媒層に分配し、有機溶媒層を水洗浄後、塩酸塩等として有機溶媒から析出させ、アルカリでフリー化して粗製の当該化合物を得ることができ、さらに再結晶操作等により精製することができる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、フェニルアセトアミジン塩酸塩および2−ブロモ−2′−アセトナフトンの合成例を、各々参考例1と参考例2に示す。
【0026】
〔参考例1〕
<フェニルアセトアミジン塩酸塩の合成>
フェニルアセトニトリル117.8g(1.006mol)及び脱水エタノール55.8g(1.21mol)からなる溶液へ、冷却下、5〜10℃にて、塩化水素ガス44.6g(1.22mol)を4時間かけて吹き込んだ。該混合物を4℃にて1日間、さらに室温に戻して2日間置くと、白色固体としてフェニルアセトイミド酸エチル塩酸塩が得られた。該塩酸塩を砕き、氷冷下に振とうしながら、アンモニア35.6g(2.09mol)及び脱水エタノール246gからなる溶液を少しずつ加えた。加え終わった後、氷冷下にて2時間、さらに室温に戻して一晩撹拌し、白色固体の不溶物をろ去後、ろ液を減圧乾固して、淡黄色アメ状のフェニルアセトアミジン塩酸塩172.5g(1.011mol、収率100.5%)を得た。
【0027】
〔参考例2〕
<2−ブロモ−2′−アセトナフトンの合成>
2′−アセトナフトン56.2g(0.33mol)、エタノール110g及びクロロベンゼン35gからなる溶液に、40〜45℃にて、臭素52.9g(0.331mol)を35分かけて滴下した。滴下終了後、反応液を150gまで減圧濃縮し、この濃縮物をトルエン250gに溶解し、水洗(200ml×3回)後、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下にトルエンを留去し、淡褐色固体状の2−ブロモ−2′−アセトナフトン70.3g(0.282mol、収率95%)を得た。
【0028】
〔実施例1〕
<2−ベンジル−4−(2−ナフチル)イミダゾールの合成>
フェニルアセトアミジン塩酸塩34.4g(0.20mol)、炭酸カリウム69g(0.50mol)及びN,N−ジメチルホルムアミド90mlからなる懸濁液を50〜55℃にて30分撹拌後、同温度にて、2−ブロモ−2′−アセトナフトン49.8g(0.20mol)及びN,N−ジメチルホルムアミド40mlからなる溶液を50分かけて滴下し、さらに同温度で4時間撹拌した。次いで、反応懸濁液を冷却後、水800ml及びトルエン200mlに分配し、トルエン層を水で2回洗浄した後、18%塩酸300mlを加えて振とうすることによりタール状の固体が生成した。水層及びトルエン層をデカンテーションで除き、該タール状固体をトルエン次いでアセトンで加熱下洗浄して、ベージュ色の結晶として目的物の塩酸塩が得られた。該塩酸塩をメタノールに加温下懸濁し、28%ナトリウムメトキシド−メタノール溶液を、アルカリ性になるまで十分加えたのち、メタノールを減圧留去し、アメ状の濃縮物を4回熱水で洗浄することにより、粉末状の粗製物が得られた。該粉末をアセトニトリルより再結晶して、乳白色粉末状の結晶18.4g(0.065mol、収率32.4%)を得た。
【0029】
得られた結晶の融点、薄層クロマトグラフィーのRf値、H−NMR及びマススペクトルデータは、以下のとおりであった。
・mp.145−147℃
・TLC (シリカゲル,アセトン) : Rf = 0.71
1H-NMR (d6-DMSO) δ: 4.07(s,
2H), 7.22−8.28(m, 13H)
・MS
m/z(%) : 284(M+, 100), 207(4), 166(5), 153(4), 139(10),
127(4), 115(1), 103(2), 91(3), 77(2).
これらのスペクトルデータから、得られた化合物は、化6で示される2−ベンジル−4−(2−ナフチル)イミダゾールであるものと同定した。
【0030】
【化6】

【0031】
〔実施例2〕
<2−ベンジル−4−(1−ナフチル)イミダゾールの合成>
まず、参考例2の2′−アセトナフトンを1′−アセトナフトンに代えて、参考例2の方法に準拠して2−ブロモ−1′−アセトナフトンを合成した。
次いで、実施例1の2−ブロモ−2′−アセトナフトンを2−ブロモ−1′−アセトナフトンに代えて、実施例1の方法に準拠して合成試験を実施し、ベージュ色粉末状の結晶を得た。
【0032】
得られた結晶の融点、薄層クロマトグラフィーのRf値、H−NMR及びマススペクトルデータは、以下のとおりであった。
・mp. 174−177℃
・TLC (シリカゲル,アセトン) : Rf = 0.64
1H-NMR (d6-DMSO) δ: 4.11(s, 2H), 7.16−8.79(m,
13H)
・MS m/z(%) :284(M+, 100), 254(3), 205(3), 167(71), 153(5),
139(12), 127(5), 103(3), 91(6).
これらのスペクトルデータから、得られた化合物は、化7で示される2−ベンジル−4−(1−ナフチル)イミダゾールであるものと同定した。
【0033】
【化7】

【0034】
〔実施例3〕
<2−(2−クロロベンジル)−4−(1−ナフチル)イミダゾールの合成>
まず、参考例1のフェニルアセトニトリルを(2−クロロフェニル)アセトニトリルに代えて、参考例1の方法に準拠して(2−クロロフェニル)アセトアミジン塩酸塩を合成し、参考例2の2′−アセトナフトンを1′−アセトナフトンに代えて、参考例2の方法に準拠して2−ブロモ−1′−アセトナフトンを合成した。
次いで、実施例1のフェニルアセトアミジン塩酸塩を(2−クロロフェニル)アセトアミジン塩酸塩に代え、また2−ブロモ−2′−アセトナフトンを2−ブロモ−1′−アセトナフトンに代えて、実施例1の方法に準拠して合成試験を実施し、桃白色粉末状の結晶を得た。
【0035】
得られた結晶の融点、薄層クロマトグラフィーのRf値、H−NMR及びマススペクトルデータは、以下のとおりであった。
・mp. 184−185℃
・TLC (シリカゲル,酢酸エチル/ヘキサン(1:1)) : Rf = 0.42
1H-NMR (d4-メタノール) δ: 4.28(s, 2H), 7.19−8.27(m,
12H)
・MS m/z(%) : 318(M+, 59),
283(100), 254(5), 205(2), 167(38), 153(5), 139(11), 127(7), 113(1), 101(2),
89(2).
これらのスペクトルデータから、得られた化合物は、化8で示される2−(2−クロロベンジル)−4−(1−ナフチル)イミダゾールであるものと同定した。
【0036】
【化8】

【0037】
〔実施例4〕
<2−(2−クロロベンジル)−4−(2−ナフチル)イミダゾールの合成>
まず、参考例1のフェニルアセトニトリルを(2−クロロフェニル)アセトニトリルに代えて、参考例1の方法に準拠して(2−クロロフェニル)アセトアミジン塩酸塩を合成した。
次いで、実施例1のフェニルアセトアミジン塩酸塩を(2−クロロフェニル)アセトアミジン塩酸塩に代えて、実施例1の方法に準拠して合成試験を実施し、乳白色粉末状の結晶を得た。
【0038】
得られた結晶の融点、薄層クロマトグラフィーのRf値、H−NMR及びマススペクトルデータは、以下のとおりであった。
・mp. 153−154℃
・TLC (シリカゲル,酢酸エチル/ヘキサン(1:1)) : Rf = 0.42
1H-NMR (d4-メタノール) δ: 4.25(s, 2H), 7.21−8.15(m,
12H)
・MS m/z(%) : 318(M+, 45),
283(100), 254(4), 166(5), 153(3), 141(11), 127(5), 113(1), 101(2), 89(1).
これらのスペクトルデータから、得られた化合物は、化9で示される2−(2−クロロベンジル)−4−(2−ナフチル)イミダゾールであるものと同定した。
【0039】
【化9】

【0040】
〔実施例5〕
<2−(3−クロロベンジル)−4−(1−ナフチル)イミダゾールの合成>
まず、参考例1のフェニルアセトニトリルを(3−クロロフェニル)アセトニトリルに代えて、参考例1の方法に準拠して(3−クロロフェニル)アセトアミジン塩酸塩を合成し、参考例2の2′−アセトナフトンを1′−アセトナフトンに代えて、参考例2の方法に準拠して2−ブロモ−1′−アセトナフトンを合成した。
次いで、実施例1のフェニルアセトアミジン塩酸塩を(3−クロロフェニル)アセトアミジン塩酸塩に代え、また2−ブロモ−2′−アセトナフトンを2−ブロモ−1′−アセトナフトンに代えて、実施例1の方法に準拠して合成試験を実施し、乳白色粉末状の結晶を得た。
【0041】
得られた結晶の融点、薄層クロマトグラフィーのRf値、H−NMR及びマススペクトルデータは、以下のとおりであった。
・mp. 138−139℃
・TLC (シリカゲル,酢酸エチル/ヘキサン(1:1)) : Rf = 0.36
1H-NMR (CDCl3) δ: 3.94(s, 2H), 7.00−8.29(m,
12H)
・MS m/z(%) : 318(M+, 100),
282(8), 254(3), 207(3), 192(2), 167(86), 153(7), 139(15), 127(9), 113(2),
101(2), 89(2).
これらのスペクトルデータから、得られた化合物は、化10で示される2−(3−クロロベンジル)−4−(1−ナフチル)イミダゾールであるものと同定した。
【0042】
【化10】

【0043】
〔実施例6〕
<2−(3−クロロベンジル)−4−(2−ナフチル)イミダゾールの合成>
まず、参考例1のフェニルアセトニトリルを(3−クロロフェニル)アセトニトリルに代えて、参考例1の方法に準拠して(3−クロロフェニル)アセトアミジン塩酸塩を合成した。
次いで、実施例1のフェニルアセトアミジン塩酸塩を(3−クロロフェニル)アセトアミジン塩酸塩に代えて、実施例1の方法に準拠して合成試験を実施し、淡褐色ガラス状の固体を得た。
【0044】
得られた固体の軟化点、薄層クロマトグラフィーのRf値、H−NMR及びマススペクトルデータは、以下のとおりであった。
・軟化点 64−69℃(シュウ酸塩の融点:201−203℃)
・TLC (シリカゲル,酢酸エチル/ヘキサン(1:1)) : Rf = 0.48
1H-NMR (CDCl3) δ: 3.96(s, 2H), 6.96−8.14(m,
12H)
・MS m/z(%) : 318(M+, 100),
282(8), 254(2), 207(6), 192(1), 180(1), 166(6), 153(4), 139(12), 127(5),
102(1), 89(1).
これらのスペクトルデータから、得られた化合物は、化11で示される2−(3−クロロベンジル)−4−(2−ナフチル)イミダゾールであるものと同定した。
【0045】
【化11】

【0046】
〔実施例7〕
<2−(4−クロロベンジル)−4−(1−ナフチル)イミダゾールの合成>
まず、参考例1のフェニルアセトニトリルを(4−クロロフェニル)アセトニトリルに代えて、参考例1の方法に準拠して(4−クロロフェニル)アセトアミジン塩酸塩を合成し、参考例2の2′−アセトナフトンを1′−アセトナフトンに代えて、参考例2の方法に準拠して2−ブロモ−1′−アセトナフトンを合成した。
次いで、実施例1のフェニルアセトアミジン塩酸塩を(4−クロロフェニル)アセトアミジン塩酸塩に代え、また2−ブロモ−2′−アセトナフトンを2−ブロモ−1′−アセトナフトンに代えて、実施例1の方法に準拠して合成試験を実施し、黄白色粉末状の結晶を得た。
【0047】
得られた結晶の融点、薄層クロマトグラフィーのRf値、H−NMR及びマススペクトルデータは、以下のとおりであった。
・mp. 179−182℃
・TLC (シリカゲル,アセトン) : Rf = 0.63
1H-NMR (d6-DMSO) δ: 4.11(s, 2H), 7.36−8.77(m,
12H)
・MS m/z(%) : 318(M+,100),
282(8), 254(3), 205(4), 192(2), 167(98), 152(8), 139(17), 127(11), 125(9),
113(2), 101(3), 89(5), 75(4).
これらのスペクトルデータから、得られた化合物は、化12で示される2−(4−クロロベンジル)−4−(1−ナフチル)イミダゾールであるものと同定した。
【0048】
【化12】

【0049】
〔実施例8〕
<2−(4−クロロベンジル)−4−(2−ナフチル)イミダゾールの合成>
まず、参考例1のフェニルアセトニトリルを(4−クロロフェニル)アセトニトリルに代えて、参考例1の方法に準拠して(4−クロロフェニル)アセトアミジン塩酸塩を合成した。
次いで、実施例1のフェニルアセトアミジン塩酸塩を(4−クロロフェニル)アセトアミジン塩酸塩に代えて、実施例1の方法に準拠して合成試験を実施し、黄白色粉末状の結晶を得た。
【0050】
得られた結晶の融点、薄層クロマトグラフィーのRf値、H−NMR及びマススペクトルデータは、以下のとおりであった。
・mp. 185−186℃
・TLC (シリカゲル,酢酸エチル/ヘキサン(1:1)) : Rf = 0.29
1H-NMR (d4-メタノール) δ: 4.10(s, 2H), 7.25−8.14(m,
12H)
・MS m/z(%) : 318(M+, 100),
283(9), 254(2), 207(4), 166(6), 153(4), 139(11), 127(5), 113(1), 101(2), 89(2).
これらのスペクトルデータから、得られた化合物は、化13で示される2−(4−クロロベンジル)−4−(2−ナフチル)イミダゾールであるものと同定した。
【0051】
【化13】

【0052】
〔実施例9〕
<2−(2,4−ジクロロベンジル)−4−(1−ナフチル)イミダゾールの合成>
まず、参考例1のフェニルアセトニトリルを(2,4−ジクロロフェニル)アセトニトリルに代えて、参考例1の方法に準拠して(2,4−ジクロロフェニル)アセトアミジン塩酸塩を合成し、参考例2の2′−アセトナフトンを1′−アセトナフトンに代えて、参考例2の方法に準拠して2−ブロモ−1′−アセトナフトンを合成した。
次いで、実施例1のフェニルアセトアミジン塩酸塩を(2,4−ジクロロフェニル)アセトアミジン塩酸塩に代え、また2−ブロモ−2′−アセトナフトンを2−ブロモ−1′−アセトナフトンに代えて、実施例1の方法に準拠して合成試験を実施し、ベージュ色粉末状の結晶を得た。
【0053】
得られた結晶の融点、薄層クロマトグラフィーのRf値、H−NMR及びマススペクトルデータは、以下のとおりであった。
・mp. 160−165℃
・TLC (シリカゲル,酢酸エチル/ヘキサン(2:1)) : Rf = 0.47
1H-NMR (d6-DMSO) δ: 4.20(s, 2H), 7.40−8.72(m,
11H)
・MS m/z(%) : 356(M+4,9), 354(M+2, 54), 352(M+, 82), 319(34), 317(100), 282(32), 254(4), 205(3),
192(2), 167(68), 158(11), 153(8), 140(21), 127(10), 113(2), 103(2), 89(2),
75(2).
これらのスペクトルデータから、得られた化合物は、化14で示される2−(2,4−ジクロロベンジル)−4−(1−ナフチル)イミダゾールであるものと同定した。
【0054】
【化14】

【0055】
〔実施例10〕
実施例1〜9において合成したイミダゾール化合物および2−フェニルイミダゾールを有効成分とする表面処理液を調製し、該処理液に銅を接触させることにより銅の表面に化成皮膜を形成させ、銅に対する溶融半田の濡れ時間を測定して、各々のイミダゾール化合物が作用する銅表面への酸化防止性能を評価した。この場合、濡れ時間が短い程、イミダゾール化合物の酸化防止性能が優れているものと判定される。
評価試験の詳細は、次のとおりである。
(1)表面処理液の調製
イミダゾール化合物、酸、金属塩およびハロゲン化合物を、表1記載の組成となるようにイオン交換水に溶解させた後、アンモニア水でpHを調整して表面処理液を調製した。
(2)表面処理方法
材質が金属銅の試験片(5mm×50mm×0.3mmの銅板)を脱脂し、次いでソフトエッチングを行い、所定温度の表面処理液に所定時間浸漬して、銅の表面に化成皮膜を形成させた後、水洗して乾燥した。
(3)濡れ時間の測定
表面処理を行った試験片を、ポストフラックス〔商品名「JS−64MSS」(株)弘輝製〕に浸漬して、半田濡れ性試験器(SAT−2000、(株)レスカ製)を使用して半田濡れ時間(秒)を測定した。使用した半田は錫−鉛系共晶半田(商品名:H63A、千住金属工業製)であり、測定条件は半田温度240℃,浸漬深さ2mm,浸漬スピード16mm/秒とした。
なお、半田濡れ時間を測定した試験片は、(A)表面処理直後のものと、(B)温度40℃、湿度90%RHの恒温恒湿器に入れて96時間放置したものと、(C)さらに(B)を200℃で10分間加熱したものである。
得られた試験結果は、表1に示したとおりであった。
【0056】
【表1】

【0057】
表1に示した試験結果によれば、本願発明の2−ベンジル−4−ナフチルイミダゾール化合物を有効成分として含有する表面処理液は、銅の表面に耐湿性および耐熱性に優れた化成皮膜を形成させることができるので、銅表面の酸化防止に有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
化1の化学式(I)および化2の化学式(II)で示される2−ベンジル−4−ナフチルイミダゾール化合物。
【化1】

(式中、Xは水素原子または塩素原子を表す。)
【化2】


【公開番号】特開2010−90105(P2010−90105A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45588(P2009−45588)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000180302)四国化成工業株式会社 (167)
【Fターム(参考)】