説明

2−[(3,5−ジフルオロ−3’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)アミノ]ニコチン酸の製造方法

本発明は、2−[(3,5−ジフルオロ−3’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)アミノ]ニコチン酸の製造方法であって、
a)3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンを提供し、
b)3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンのアミニウム塩を製造および単離し、そして
c)b)で得られた3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンのアミニウム塩をさらに反応させて、2−[(3,5−ジフルオロ−3’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)アミノ]ニコチン酸を得る工程
を含む、方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−[(3,5−ジフルオロ−3’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)アミノ]ニコチン酸の製造方法に関する。
【0002】
式(I)の構造を有する化合物、ならびにその製造方法は、国際特許出願WO2008/077639A1に記載されている。
【化1】

【背景技術】
【0003】
製剤原料中に存在する不純物は、製剤原料に関係する薬事規制のために、低減されるか、または可能であれば、排除されるべきであることは、一般的に公知である。
【0004】
特に、欧州医薬品庁(EMEA)のガイドライン「Guideline on the Specification Limits for Residues of Metal Catalysts or Metal Reagents」は、製剤原料を製造する合成工程において特定の金属触媒または金属反応材を使用するために、該製剤原料中に含まれる残留金属に関して濃度限界を規定している。
【0005】
さらに、欧州医薬品庁(EMEA)のガイドライン「Guideline on the Limits of Genotoxic Impurities of the Committee for Medicinal Products for Human Use (CHMP)」は、製剤原料中の遺伝毒性不純物の濃度限界を規定している。製剤原料中に残留することの多い不純物は、それらが、遺伝毒性および/または発癌性であることが公知であるか(例えば、アルキル化剤)、またはそれらが、遺伝毒性に関して“要注意構造”を有する物質であるため(Judson P, J Toxicol Sci, 2002, 27(4), 278)、遺伝毒性物質(反応材、中間体または副生成物)である可能性がある。
【0006】
WO2008/077639A1は、2−[(3,5−ジフルオロ−3’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)アミノ]ニコチン酸の2工程製造方法を記載している:
【化2】


【化3】

【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、今般、反応条件の好適な選択によって、特に3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンのアミニウム塩の形成および単離によって、WO2008/077639A1に記載の方法を、反応収率を維持または増大させる一方で、遺伝毒性となり得る、金属ベース触媒由来の金属残留物、反応工程の副生成物または未反応中間体であり得る不純物の含有量を減少させるために最適化し得ることを予期せず見出した。
【0008】
本発明はまた、4−ブロモ−2,6−ジフルオロアニリンと3−メトキシフェニルボロン酸とのカップリング反応のためにPd/C触媒を用いることにより、WO2008/077639に記載の方法と比較して、反応全体の収率が顕著に増加し得ることを予期せず見出した。
【0009】
故に、本発明の第一の面は、2−[(3,5−ジフルオロ−3’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)アミノ]ニコチン酸の製造方法であって、
a)3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンを提供し、
b)3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンのアミニウム塩を製造および単離し、
c)b)で得られた3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンのアミニウム塩をさらに反応させて、2−[(3,5−ジフルオロ−3’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)アミノ]ニコチン酸を得る工程
を含む方法を提供する。
【0010】
本発明のさらなる一面は、2−[(3,5−ジフルオロ−3’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)アミノ]ニコチン酸の製造方法であって、
i)Pd/C触媒の存在下で、4−ブロモ−2,6−ジフルオロアニリンと3−メトキシフェニルボロン酸を反応させて、3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンを得て、
ii)工程i)で得られた3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンをさらに反応させて、2−[(3,5−ジフルオロ−3’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)アミノ]ニコチン酸を得る工程
を含む方法を提供する。
【0011】
本発明のさらなる一面は、式(I)の化合物:
【化4】


[式中、Xは、鉱酸または有機酸のアニオンである。]
で示される化合物を提供する。
【0012】
典型的に、工程a)において、3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンは、4−ブロモ−2,6−ジフルオロアニリンと3−メトキシフェニルボロン酸を反応させて得られる。本方法の工程a)は、典型的に、ハロアレーンとアリールボロン酸のカップリング反応に対応し、鈴木反応(Miyaura, N.; Suzuki, A. Chem. Rev. 1995, 95, 2475)またはWO2008/077639A1に記載の条件下で実行され得る。典型的に、該反応は、ジオキサン、トルエン、ジメチルホルムアミド(DMF)またはジメトキシエタン(DME)のような非プロトン性有機溶媒中、炭酸セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムまたはリン酸カリウムの存在下、70℃ないし140℃の温度で、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン]ジクロロパラジウム(II)とジクロロメタンの複合体(1:1)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)−パラジウム(0)、塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)またはトリス(ジベンジリデンアセトン)−ジパラジウム(0)のようなパラジウム触媒により触媒される。
【0013】
好ましい態様において、工程a)、すなわち、4−ブロモ−2,6−ジフルオロアニリンと3−メトキシフェニルボロン酸を反応させて3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンを得る工程は、炭素触媒に担持させた不均一パラジウム(Pd/C触媒)により触媒される。典型的に、該Pd/C触媒におけるパラジウムの炭素に対するモル比は、0.5ないし20%、好ましくは1ないし15%の範囲である。典型的に、Pd/C触媒は、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウム水溶液に懸濁して用いる。Pd/C触媒は、典型的に、基質の1ないし20重量%、好ましくは2ないし15重量%の範囲の量で用いる。
【0014】
工程a)が、Pd/C触媒により触媒されるとき、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、tert−ペンチルアルコール(tert−アミルアルコール)、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールまたはグリセロールのような極性溶媒が、反応媒体中に存在し得る。特に好ましい溶媒はエタノールである。
【0015】
典型的に、工程a)で得られた3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンは、工程b)、すなわちアミニウム塩(すなわち、非四級アンモニウム塩)の形成を行う前に標準的精製技術を用いて単離および精製される。標準的精製法は、Purification of Laboratory Chemicals, third edition, 1988, Ed. Pergamon Pressに記載され、溶媒中での酸−塩基抽出、その後の該溶媒の蒸留を含む。
【0016】
工程b)のアミニウム塩は、典型的に、鉱酸または有機酸と3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンとを混合すること、好ましくは該酸と、C−Cアルカン、C−Cハロアルカン、アルコール、エステル、エーテル、水およびそれらの混合物からなる群から選択される溶媒または溶媒の混合物中、3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンの溶液または懸濁液とを混合することにより形成される。
【0017】
本発明で用いる用語「鉱酸」は、無機鉱物から化学反応により誘導される酸を意味する。好ましい鉱酸は、臭化水素酸、塩酸、フッ化水素酸、硝酸、リン酸、硫酸およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0018】
本発明で用いる用語「有機酸」は、酸性特性を有する有機化合物を意味する。好ましい有機酸は、シクラミン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、メタンスルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、チオシアン酸、ギ酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、4−ブロモベンゼンスルホン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0019】
好ましくは、該酸は、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される。特に好ましい酸は、塩酸、p−トルエンスルホン酸およびそれらの混合物である。
【0020】
好ましい態様において、該酸(鉱酸または有機酸)は、水溶液の形態である。典型的に、該水溶液の濃度は、5ないし50重量%、好ましくは10ないし40重量%の範囲である。
【0021】
好ましい溶媒は、ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、クロロメタン、ジクロロメタン、テトラクロロメタン、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、tert−ペンチルアルコール(tert−アミルアルコール)、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルグリコール、水およびそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、溶媒は、n−ヘキサン、ジクロロメタン、エチレングリコール、プロピレングリコール、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、水およびそれらの混合物からなる群から選択される。特に好ましい溶媒は、酢酸イソプロピルである。
【0022】
一態様において、工程b)のアミニウム塩は、5ないし50重量%、好ましくは10ないし40重量%の水溶液形態の、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される酸と、3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンとの混合により形成される。
【0023】
別の態様において、工程b)のアミニウム塩は、n−ヘキサン、ジクロロメタン、エチレングリコール、プロピレングリコール、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピルおよびそれらの混合物からなる群から選択される溶媒中、5ないし50重量%、好ましくは10ないし40重量%の水溶液形態の、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される酸と、3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンの溶液または懸濁液との混合により形成される。
【0024】
好ましい態様において、工程b)の溶媒の容量(L)と工程a)の4−ブロモ−2,6−ジフルオロアニリンの重量(Kg)との比は、2:1ないし50:1、好ましくは4:1ないし25:1、より好ましくは5:1ないし18:1、さらにより好ましくは6:1ないし9:1の範囲である。この比は、収量と不純物の最適比を示す。より高い溶媒量は、結晶収量を減少させ得るが、より低い溶媒量は、不純物の量、特にパラジウム含量を増加させ得る。
【0025】
典型的に、工程b)の3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンのアミニウム塩は、濾過により単離され、工程c)を行う前に適当な溶媒で洗浄される。好ましくは、該溶媒は、工程b)で用いる溶媒に対応する。
【0026】
典型的に、工程c)は、c1)工程b)で得られた3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンのアミニウム塩と2−クロロニコチン酸を反応させるか、またはc2)工程b)で得られた3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンのアミニウム塩を加水分解して、3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンを得て、こうして得られた3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンと2−クロロニコチン酸を反応させることを含む。
【0027】
一態様(工程c1)において、工程b)からの3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンのアミニウムを乾燥させるか、または半乾燥させて、溶媒を除去または部分的に除去し、次いで、それを2−クロロニコチン酸と反応させて2−[(3,5−ジフルオロ−3’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)アミノ]ニコチン酸を得る。
【0028】
別の態様(工程c2)において、工程b)からの3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンのアミニウム塩を、所望により乾燥させるか、または半乾燥させて、溶媒を除去または部分的に除去する。その後、該アミニウム塩を、周知の反応条件下、水の存在下で加水分解して、3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンとし、最後に、アミン形態の3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンを2−クロロニコチン酸と反応させて、2−[(3,5−ジフルオロ−3’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)アミノ]ニコチン酸を得る。
【0029】
本発明によれば、工程c1)またはc2)を溶媒または溶媒の混合物中で行うことが好ましい。典型的に、溶媒は、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、tert−ペンチルアルコール(tert−アミルアルコール)、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジオキサン、1,3−ジオキサンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、溶媒は、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールおよびそれらの混合物からなる群から選択される。特に好ましい溶媒はエタノールである。
【0030】
一態様において、工程c2)は、水中で、好ましくはアミニウム塩の加水分解反応により得られたアミン形態の3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンを単離することなく、行われ得る。
【0031】
本発明によれば、工程c1)またはc2)において、鉱酸または有機酸が反応混合物に添加されることが好ましい。
【0032】
しかしながら、工程c2)を水中で行うとき、所望により、鉱酸または有機酸が反応混合物に添加されてもよい。
【0033】
工程c1)またはc2)に用いられる好ましい鉱酸は、臭化水素酸、塩酸、フッ化水素酸、硝酸、リン酸、硫酸およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0034】
好ましい有機酸は、シクラミン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、メタンスルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、チオシアン酸、ギ酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、4−ブロモベンゼンスルホン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0035】
好ましくは、該酸は、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される。特に好ましい酸は、塩酸、p−トルエンスルホン酸およびそれらの混合物である。
【0036】
好ましい態様において、酸(鉱酸または有機酸)は、水溶液形態である。典型的に、該水溶液の濃度は、5ないし50重量%、好ましくは7ないし40重量%、より好ましくは8ないし20重量%の範囲である。
【0037】
好ましい態様において、溶媒と酸との容量比は、1:5ないし1:15、好ましくは1:2ないし1:10、より好ましくは1:1ないし1:5の範囲である。
【0038】
典型的に、工程c1)またはc2)で得られた2−[(3,5−ジフルオロ−3’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)アミノ]ニコチン酸は、溶媒の蒸留、濾過、抽出および/または浸出のような標準的精製技術を用いてさらに精製される。
【0039】
一態様において、本発明の方法は、
a)4−ブロモ−2,6−ジフルオロアニリンを3−メトキシフェニルボロン酸と反応させて、3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンを得て、
b)工程a)で得られた3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンのアミニウム塩を形成し、単離し、
c1)工程b)からの3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンのアミニウム塩と2−クロロニコチン酸を反応させるか、または、
c2)工程b)からの3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンのアミニウム塩を加水分解して、3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンを得て、こうして得られた3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンを2−クロロニコチン酸と反応させる工程
ことを含む。
【0040】
好ましい態様において、2−[(3,5−ジフルオロ−3’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)アミノ]ニコチン酸の製造方法は、
a)4−ブロモ−2,6−ジフルオロアニリンを3−メトキシフェニルボロン酸と反応させて、3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンを得て、
b)塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される酸を、n−ヘキサン、ジクロロメタン、エチレングリコール、プロピレングリコール、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピルおよびそれらの混合物からなる群から選択される溶媒中、3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンの溶液または懸濁液と混合することにより、工程a)で得られた3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンのアミニウム塩を形成し、単離し、
c1)工程b)からの3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンのアミニウム塩と2−クロロニコチン酸を反応させる工程
ことを含む。
【0041】
本発明によれば、工程c1)において、鉱酸または有機酸が反応混合物に添加されることが好ましい。
【0042】
好ましい鉱酸は、臭化水素酸、塩酸、フッ化水素酸、硝酸、リン酸、硫酸およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0043】
好ましい有機酸は、シクラミン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、メタンスルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、チオシアン酸、ギ酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、4−ブロモベンゼンスルホン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0044】
好ましくは、該酸は、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される。特に好ましい酸は、塩酸、p−トルエンスルホン酸およびそれらの混合物である。
【0045】
好ましい態様において、該酸(鉱酸または有機酸)は、水溶液の形態である。典型的に、該水溶液の濃度は、5ないし50重量%、好ましくは7ないし40重量%、より好ましくは8ないし20重量%の範囲である。
【0046】
本発明によれば、工程c1)は、溶媒または溶媒の混合物中で行うのが好ましい。
【0047】
好ましい溶媒は、ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、クロロメタン、ジクロロメタン、テトラクロロメタン、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、tert−ペンチルアルコール(tert−アミルアルコール)、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルグリコールおよびそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、溶媒は、n−ヘキサン、ジクロロメタン、エチレングリコール、プロピレングリコール、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、水およびそれらの混合物からなる群から選択される。特に好ましい溶媒は、酢酸イソプロピルである。
【0048】
別の好ましい態様において、2−[(3,5−ジフルオロ−3’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)アミノ]ニコチン酸の製造方法は、
a1)4−ブロモ−2,6−ジフルオロアニリンを3−メトキシフェニルボロン酸と反応させて、3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンを得て、
a2)3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンを精製し、
b)塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される酸と、n−ヘキサン、ジクロロメタン、エチレングリコール、プロピレングリコール、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピルおよびそれらの混合物からなる群から選択される溶媒中、3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンの溶液または懸濁液を混合することにより、工程a2)で得られた3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンのアミニウム塩を形成し、単離し、
c1)工程b)からの3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンのアミニウム塩と、2−クロロニコチン酸を反応させて、溶媒または溶媒の混合物中、2−[(3,5−ジフルオロ−3’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)アミノ]ニコチン酸を得て、該反応混合物に鉱酸または有機酸を添加し、
d)2−[(3,5−ジフルオロ−3’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)アミノ]ニコチン酸を精製する工程
ことを含む。
【0049】
典型的に、3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミン(工程a2)および2−[(3,5−ジフルオロ−3’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)アミノ]ニコチン酸(工程d)は、好適な溶媒中、酸−塩基抽出のような標準的精製技術を用いて精製される。さらに、必要であれば、その後に、該溶媒の蒸留を行い得る。
【0050】
用語「蒸留」は、沸騰する液体混合物中で、混合物の揮発性の相違に基づいてそれらを分離する方法を意味する。典型的に、蒸留は、溶媒を除去するために用いる。
【0051】
用語「酸−塩基抽出」は、連続的液体−液体抽出を用いて、それらの化学的特性に基づき、混合物から酸および塩基を精製する方法を意味する。通常、混合物は、好適な溶媒に溶解され、分液漏斗に注がれる。酸または塩基の水溶液を添加し、水層のpHを、目的の化合物が所望の形態になるように調整する。振とうし、層を分離させた後、目的の化合物を含む層を集める。その後、該方法を、この層を用いて反対のpH範囲で繰り返す。工程の順序は重要ではなく、該方法は、分離を増進するために繰り返され得る。
【0052】
典型的に、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムまたはそれらの混合物を、pHをアルカリ性条件に合わせるために用いる。本発明によれば、好ましい塩基は、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、アンモニアまたはそれらの混合物である。塩基(または、塩基の混合物)を水溶液の形態で用いることが好ましい。典型的に、該水溶液の濃度は、2ないし50重量%、好ましくは3ないし40重量%、より好ましくは3ないし30重量%の範囲である。
【0053】
典型的に、クエン酸、リン酸、塩酸、硝酸、硫酸またはそれらの混合物を、pHを酸性条件に合わせるために用いる。本発明によれば、好ましい酸は、塩酸、リン酸、硫酸またはそれらの混合物である。酸(または、酸の混合物)を水溶液の形態で用いることが好ましい。典型的に、該水溶液の濃度は、5ないし50重量%、好ましくは10ないし40重量%の範囲である。
【0054】
典型的に、酸−塩基抽出に用いるのに好適な溶媒は、ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、クロロメタン、ジクロロメタン、テトラクロロメタン、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルグリコールのような水と混和しない溶媒、およびベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、p−キシレン、m−キシレン、o−キシレン、スチレン、イソプロピルベンゼン、n−プロピルベンゼン、2−クロロトルエン、3−クロロトルエン、4−クロロトルエン、tert−ブチルベンゼン、s−ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、n−ブチルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジイソプロピルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、2−ニトロトルエン、3−ニトロトルエン、4−ニトロトルエンおよびそれらの混合物のような芳香族性溶媒である。好ましい溶媒は、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、トルエン、2−ニトロトルエン、3−ニトロトルエン、4−ニトロトルエンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0055】
好ましい態様において、3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミン(工程a2)は、2ないし50重量%、好ましくは3ないし40重量%、より好ましくは3ないし30重量%の、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピルおよびそれらの混合物から選択される溶媒中、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、アンモニアおよびそれらの混合物から選択される塩基の水溶液を用いて酸−塩基抽出し、次いで溶媒を蒸留することにより精製される。
【0056】
好ましい態様において、2−[(3,5−ジフルオロ−3’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)アミノ]ニコチン酸(工程d)は、2ないし50重量%、好ましくは3ないし40重量%、より好ましくは3ないし30重量%の、n−ヘキサン、シクロヘキサン、p−キシレン、m−キシレン、o−キシレン、トルエン、2−ニトロトルエン、3−ニトロトルエン、4−ニトロトルエンおよびそれらの混合物から選択される溶媒中、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、アンモニアおよびそれらの混合物から選択される塩基の水溶液を用いて酸−塩基抽出し、その後、5ないし50重量%、好ましくは10ないし40重量%の塩酸、リン酸、硫酸およびそれらの混合物から選択される酸の水溶液を用いて沈殿させて精製する。
【0057】
別の好ましい態様において、2−[(3,5−ジフルオロ−3’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)アミノ]ニコチン酸は、その後の、30ないし210℃の沸点を有する溶媒または溶媒の混合物中、浸出(工程e)によりさらに精製される。
【0058】
用語「浸出」は、可溶性物質を水または他の溶媒に溶解して、それを不溶性物質から分離する方法を意味する。
【0059】
好ましい態様において、浸出工程(e)中、30ないし210℃の沸点を有する溶媒または溶媒の混合物は、ケトン、環状エーテルを含むエーテル、C−Cシクロアルカンを含むC−Cアルカンおよびアルコールからなる群から選択される。
【0060】
浸出を行うために用いられ得る溶媒のいくつかの例を以下に記載する:アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIK)、フェニルエチルケトン、シクロペンタノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルテトラヒドロフラン、エチルテトラヒドロフラン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールおよびtert−ペンチルアルコール(tert−アミルアルコール)。好ましい溶媒は、アセトン、n−ヘキサンまたはエタノールからなる群から選択される。特に好ましい溶媒はアセトンである。
【0061】
本発明の方法の工程(i)は、不均一パラジウム炭素触媒(Pd/C触媒)により触媒される。典型的に、該Pd/C触媒のパラジウムの炭素に対するモル比が0.5ないし20%、好ましくは1ないし15%の範囲である。典型的に、Pd/C触媒は、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウム水溶液に懸濁して用いる。Pd/C触媒は、典型的に、基質の1ないし20重量%、好ましくは2ないし15重量%の範囲の量で用いる。典型的に、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、tert−ペンチルアルコール(tert−アミルアルコール)、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールまたはグリセロールのような極性溶媒が、反応媒体に存在し得る。特に好ましい溶媒はエタノールである。
【0062】
本発明の方法の工程(ii)は、典型的に、上記の工程b)およびc)を含む。故に、本発明の方法の工程(ii)は、典型的に、
b)工程a)で得られた3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンのアミニウム塩を形成し、単離し、
c)b)で得られた3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンのアミニウム塩をさらに反応させて、2−[(3,5−ジフルオロ−3’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)アミノ]ニコチン酸を得る工程
ことを含む。
【0063】
工程b)およびc)の好ましい態様は上記の通りである。
【0064】
本発明の化合物において、Xは、典型的に、上記の鉱酸または有機酸のアニオンである。Xは、好ましくはClである。
以下の実施例は、本発明の化合物の製造法を例示しており、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例】
【0065】
実施例
実施例1
1)3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンの製造(工程a)
10kgの4−ブロモ−2,6−ジフルオロアニリン(48.08mol)および67Lのトルエンを、窒素雰囲気下で反応器に仕込み、完全に溶解するまで20℃で撹拌した。1.67kgのPd(PPh(1.44mol)を加え、10分間撹拌した。次いで、48Lの20重量%NaCO水溶液を加え、次いで3−メトキシボロン酸(8.77kg、57.7mol)のメタノール溶液(32L)を20分かけて添加した。混合物を72℃で4時間加熱し、次いで20℃まで冷却した。
【0066】
2)3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンの精製
2.1.123Lの10%NaCO水溶液、1.5Lの25重量%アンモニア水溶液および2.0kgの濾過樹脂(Dicalite)の溶液を、反応器に仕込み、混合物を5分間撹拌した。混合物を、該溶液の澄明化まで(35分)、フィルターを通して再循環させ、反応器に加えた。60Lの酢酸イソプロピルを添加し、混合物を10分間撹拌し、層(A1+O1)を分離させた。水層(A1)を別の反応器に移し、60Lの酢酸イソプロピルを加えた。混合物を撹拌し、層(A2+O2)を分離させた。両有機層(O1+O2)を反応器に加え、108Lの10重量%NaCO水溶液を添加した。混合物を撹拌し、層(A3+O3)を分離させた。有機層(O3)を108Lの10重量%NaCO水溶液と共に撹拌し、層(A4+O4)を分離させた。有機層(O4)を100Lの脱塩水と共に撹拌し、層(A5+O5)を分離させた。有機層(O5)を、フィルター中、濾過樹脂(Dicalite)を通して濾過し、反応器に仕込んだ。
【0067】
2.2.蒸留:有機層(O5)を、蒸留混合物の温度を65℃以下に維持しながら、減圧下(およそ750mmHg)で、2時間蒸留した。
【0068】
3)アミニウム塩の製造(工程b)
蒸留残渣を100Lの酢酸イソプロピルに溶解し、混合物を0−5℃まで冷却し、4.2Lの35重量%HCl水溶液を、pHが2より低くなるまで滴下した。アミニウム塩が、暗褐色溶液から白色固体として沈殿した。スラリーを、0−5℃で2時間撹拌し、濾過し、濾過ケーキを、50Lの予め冷却した酢酸イソプロピルで2回洗浄した。該ケーキを減圧下で乾燥させた。3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミニウムクロライドをベージュ色固体として単離した。湿潤ケーキの重量は13.83kgであって、10.25kgの乾燥生成物(37.73mol)に相当し、収率78.5%に相当する。
【0069】
4)2−[(3,5−ジフルオロ−3’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)アミノ]ニコチン酸の製造(工程c1)
湿潤ケーキとしての3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミニウムクロライド(10.25kgの乾燥物に相当、37.73mol)および30Lの96%エタノールを反応器に仕込み、20℃で激しく撹拌した(150rpm)。次いで、以下の物質を添加した:100Lの10重量%HCl水溶液、3.5kgのp−トルエンスルホン酸(18.4mol)および11.6kgの2−クロロニコチン酸(73.6mol)。スラリーを、激しい撹拌下で加熱還流(90−95℃)させた。反応の8時間後、2.9kgの2−クロロニコチン酸(18.4mol)を充填し、混合物をさらに8時間撹拌した。
【0070】
反応物を、蒸留温度が100℃に達し、全てのエタノールが除去されたことが確認されるまで蒸留した。エタノールの蒸留完了後、150Lの脱塩水を添加し、混合物を95℃に加熱し、温スラリーを、密閉濾過器を用い、95℃で濾過した。濾過ケーキを温水で2回洗浄した(2x100L)。
【0071】
5)2−[(3,5−ジフルオロ−3’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)アミノ]ニコチン酸の精製
5.1.80Lの4重量%NaOH水溶液および予め15℃まで冷却した50Lのトルエンの混合物を、該ケーキの溶解が完了するまでフィルターを通して再循環させ、反応器に移した。層を分離した(A1+O1)。水層(A1)を50Lのトルエンと共に撹拌し、層を分離させ(A2+O2)、水層(A2)を、濾過樹脂(Dicalite)を通して濾過し、反応器に移した。フィルターを10Lの4重量%NaOH水溶液で洗浄し、15Lの脱塩水で洗浄し、両濾液を、水層A2を含む反応器に加えた。
【0072】
水層A2を0−5℃まで冷却し、35重量%水溶液の形態のHClを、温度を15℃以下に維持しながら、混合物のpHが1になるまで添加した。スラリーを1時間撹拌し、濾過し、濾過ケーキを予め冷却した脱塩水で3回洗浄した(3x100L)。
【0073】
5.2.固体をアセトン80Lに懸濁し、30分間還流し、混合物を0−5℃に冷却した。1時間後、スラリーを濾過し、ケーキを予め冷却したアセトンで2回洗浄した(2x10L)。
【0074】
該ケーキを、一定重量まで、減圧下、60℃で乾燥させ、0.8mm篩目を用いて1600rpmで粉砕した。
2−[(3,5−ジフルオロ−3’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)アミノ]ニコチン酸を、白色固体として単離し、収率66.2%に相当する収量8.9kg(24.98mol)を得た。
【0075】
実施例2
1)Pd/C触媒を用いる、3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンの製造(工程a)
100gの4−ブロモ−2,6−ジフルオロアニリン(0.481mol)を、窒素雰囲気下で750mLの96%エタノールに溶解し、15分間20℃で撹拌した。次いで、38.85g(18mmol、3.75%モル)の50重量%湿潤Pd/Cを添加し、その後、1.25Lの20重量%NaCO水溶液を、反応温度を30℃以下に維持しながら添加した。最後に、87.67g(0.577mmol、1.2当量)の3−メトキシボロン酸を添加し、反応物を60℃で8時間加熱し、次いで、20℃まで冷却した。
【0076】
2)3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンの精製
2.1.600mLの酢酸イソプロピルを添加し、混合物を10分間撹拌し、層(A1+O1)を分離させた。水層(A1)を、600mLの酢酸イソプロピルと共に10分間撹拌し、層(A2+O2)を分離させた。両方の有機層(O1+O2)を、600mLの脱塩水と共に撹拌し、層(A3+O3)を分離させた。有機層(O3)を、濾過樹脂(Dicalite)を通して濾過器で濾過した。
【0077】
2.2.蒸留:有機層(O3)を、混合物の温度を65℃以下に維持しながら、減圧下(約750mmHg)で蒸留して、暗色の油状残渣を得た。
【0078】
3)アミニウム塩の製造(工程b)
該蒸留残渣を、800Lの酢酸イソプロピル(8vol/w)に溶解し、混合物を0−5℃まで冷却し、50mLの35重量%HCl水溶液を、pHが2より低くなるまで滴下した。アミニウム塩が、暗褐色溶液から白色固体として沈殿した。スラリーを、0−5℃で2時間撹拌し、濾過し、濾過ケーキを50mLの予め冷却した酢酸イソプロピルで2回洗浄した。該ケーキを減圧下で吸引乾燥させ、減圧下(約750mmHg)、60℃で定重量になるまで乾燥させた。全量117g(0.431mmol、89%収率)の3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミニウムクロライドを、ベージュ色固体として単離した。
【0079】
4)2−[(3,5−ジフルオロ−3’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)アミノ]ニコチン酸の製造(工程c1)
実施例1に記載の実験方法を行った。
【0080】
5)2−[(3,5−ジフルオロ−3’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)アミノ]ニコチン酸の精製
該ケーキをアセトンに懸濁した。固体を650mLのアセトンに懸濁し、30分間還流し、混合物を0−5℃まで冷却した。1時間後、スラリーを濾過し、濾過ケーキを予め冷却したアセトンで2回洗浄した(2x65mL)。
2−[(3,5−ジフルオロ−3’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)アミノ]ニコチン酸を、白色固体として単離し、収率75%に相当する収量129g(0.362mol、84%収率)を得た。
【0081】
比較例1
33.44gの2−[(3,5−ジフルオロ−3’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)アミノ]ニコチン酸(収率53.4%に相当する)を得て、WO2008/077639A1に記載の方法に従い精製した。
【0082】
実施例1および2で得られた2−[(3,5−ジフルオロ−3’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)アミノ]ニコチン酸(本発明の化合物)および比較例1(C1)の不純物およびパラジウムの全量を、表1に示す。該不純物は、高速液体クロマトグラフ(HPLC)および/またはキャピラリー電気泳動(CE)により決定した。さらに、反応物収率も示す。
【0083】
【表1】

【0084】
実験結果から、本発明の方法が、反応物収率を増大させる一方、2−[(3,5−ジフルオロ−3’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)アミノ]ニコチン酸中の不純物の量を減らすことを可能にすることが結論付けられ得る。この不純物の減少は、特に、Pd含量に関して明確である。
【0085】
さらに、4−ブロモ−2,6−ジフルオロアニリンと3−メトキシフェニルボロン酸とのカップリング反応により3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンを得るとき、該反応はPd/C触媒によって触媒され、反応物収率はさらに向上する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−[(3,5−ジフルオロ−3’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)アミノ]ニコチン酸の製造方法であって、
a)3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンを提供し、
b)3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンのアミニウム塩を製造および単離し、
c)b)で得られた3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンのアミニウム塩をさらに反応させて、2−[(3,5−ジフルオロ−3’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)アミノ]ニコチン酸を得る工程
を含む、方法。
【請求項2】
工程a)において、3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンが、4−ブロモ−2,6−ジフルオロアニリンと3−メトキシフェニルボロン酸を反応させて得られる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程c)が、c1)工程b)で得られた3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンのアミニウム塩と2−クロロニコチン酸を反応させる工程、またはc2)工程b)で得られた3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンのアミニウム塩を加水分解して3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンを得て、こうして得られた3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンと2−クロロニコチン酸を反応させる工程を含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
工程b)のアミニウム塩が、C−Cアルカン、C−Cハロアルカン、アルコール、エステル、エーテル、水およびそれらの混合物からなる群から選択される溶媒中、鉱酸または有機酸と3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンの溶液または懸濁液を混合することにより形成される、請求項1から3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
−鉱酸が、臭化水素酸、塩酸、フッ化水素酸、硝酸、リン酸、硫酸およびそれらの混合物からなる群から選択され;そして/または
−有機酸が、シクラミン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、メタンスルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、チオシアン酸、ギ酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、4−ブロモベンゼンスルホン酸およびそれらの混合物からなる群から選択され;そして/または
−溶媒が、ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、クロロメタン、ジクロロメタン、テトラクロロメタン、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、tert−ペンチルアルコール(tert−アミルアルコール)、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルグリコール、水およびそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、n−ヘキサン、ジクロロメタン、エチレングリコール、プロピレングリコール、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、水およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
工程b)の溶媒の容量と工程a)からの4−ブロモ−2,6−ジフルオロアニリンの重量の比が、2:1ないし50:1、好ましくは5:1ないし25:1である、請求項2から5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
工程c1)またはc2)を、溶媒または溶媒の混合物中で行う、請求項3から6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
溶媒が、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、tert−ペンチルアルコール(tert−アミルアルコール)、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジオキサン、1,3−ジオキサンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
工程c1)またはc2)において、請求項4または5記載の鉱酸または請求項4または5記載の有機酸が、反応混合物に添加される、請求項3から8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
該酸が、水溶液形態で添加され;そして/または、溶媒と酸の量比が、1:5ないし1:15、好ましくは1:2ないし1:10である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
a)4−ブロモ−2,6−ジフルオロアニリンと3−メトキシフェニルボロン酸を反応させて、3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンを得て、
b)n−ヘキサン、ジクロロメタン、エチレングリコール、プロピレングリコール、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピルおよびそれらの混合物からなる群から選択される溶媒中、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される酸と、3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンの溶液または懸濁液を混合することにより、工程a)で得られた3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンのアミニウム塩を形成させ、単離し、
c1)工程b)からの3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンのアミニウム塩と2−クロロニコチン酸を反応させる工程
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
工程a)が、Pd/C触媒で触媒される、請求項2から11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
2−[(3,5−ジフルオロ−3’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)アミノ]ニコチン酸の製造方法であって、
i)Pd/C触媒の存在下、4−ブロモ−2,6−ジフルオロアニリンと3−メトキシフェニルボロン酸を反応させて、3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンを得て、
ii)工程i)で得られた3,5−ジフルオロ−3’−メトキシビフェニル−4−アミンをさらに反応させて、2−[(3,5−ジフルオロ−3’−メトキシ−1,1’−ビフェニル−4−イル)アミノ]ニコチン酸を得る工程
を含む、方法。
【請求項14】
工程ii)が、請求項1および3から12のいずれか一項記載の工程b)およびc)を含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
式(I):
【化1】


[式中、Xは、鉱酸または有機酸のアニオンである。]
で示される化合物。

【公表番号】特表2013−507407(P2013−507407A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533527(P2012−533527)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/006283
【国際公開番号】WO2011/045059
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(598032139)アルミラル・ソシエダッド・アノニマ (69)
【氏名又は名称原語表記】Almirall, S.A.
【Fターム(参考)】