説明

2つの導体を備えた溶接ガン

【課題】導体に不具合が生じたか否かを工程制御装置に知らせるアラームを発生させることができる溶接ガンを提供する。
【解決手段】2つの導体を備えた溶接ガンは、トーチ本体(1)と、各導体(3)に位置するセンサー(6)の電流強度を測定する電子測定装置(2)と、2つの導体内を循環する電流強度の不均衡が生じた場合にアラームを発生させるメカニズムとを含む。導体内の電流強度センサー(6)及び温度センサー(8)に接続されたマイクロコントローラ(5)を不具合又は異常の表示器と共に使用する。マイクロコントローラ(5)のプログラムは、2つの電流強度信号の振幅の差を算出し、2つの振幅のいずれが大きいかを判定し、所定のパラメータに基づいて対応するアラーム信号を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の2つの導体を備えた溶接ガンは、電気エネルギー変換器への接続のための所定の産業用電気ペグと、絶縁ホース内の導体と、先端を溶接に使用する溶接ガン(「トーチ」ともいう)と、からなり、導体に不具合が生じたか否かを工程制御装置に知らせるアラームを発生させることができるように構成要素が設けられている。
【0002】
本発明の溶接ガンの適用分野は産業用溶接である。
【背景技術】
【0003】
現在、産業用の手動及び自動溶接では、導体の不具合によって生産性の損失が生じる。そのような不具合が、作業員が監視していない時に発生すると、問題が解決されるまで溶接工程が当該時点で停止し、製造ライン位置調整コストが発生する。不具合は、導電性材料の腐食による劣化、機械的摩耗による破損、過熱等の様々な原因によって生じ得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、導体に不具合が生じたか否かを工程制御装置に知らせるアラームを発生させることができる溶接ガンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のガン(トーチ)は、10〜40ボルトの電圧、1〜400アンペアの電流強度、500アンペアの最大許容電流強度を有する直流電源装置に接続されるように設計されている。
【0006】
本発明者は、2つの導体を使用することによって生じる上述した問題の解決手段を提案する。導体の一方の不具合が生じると、自発的に工程を停止及び/又は同様の使用条件下で工程を続行するために使用することができるアラームを発生させる。すなわち、各導体は通常動作条件下で必要な電流強度に耐えることができるためである。
【0007】
2つの導体は、ペグ内の同一の接触点に接続され、冷却可能又は冷却不可能な別々の導電体(conduct)内を平行に延び、ガン(トーチ)に到達する位置で再び接続され、溶接先端において十分な電流強度をもたらす。この解決手段の利点は、同量の銅を使用し、導体を2つの等しい部分に分割する場合には、冷却流体(好ましく水)に接触する総表面が2の平方根と等しい比率で増加するということである。
【0008】
この利点は2つの方法で利用することができる。第1の方法は、通常の量の銅を使用し、ケーブルの冷却装置に対する要求を減少させ、冷却装置を省略する。
【0009】
この利点を利用する第2の方法は、ケーブルの冷却装置を維持し、銅の量を半減させることにより、水との同一な接触面を達成し、銅の使用量を節約することである。トーチの正確な動作は、2つの導体を流れる電流の強度の正確なバランスに依存する。すなわち、各導体の容量は総電流強度の2分の1に制限されるためである。
【0010】
導体の一方に不具合が生じると、他方の導体には総電流強度の2分の1よりも大きな強度の電流が流れ、過熱を引き起こし、最終的には導体の不具合が発生する。そのような不具合を回避するために、溶接工程制御装置に電流強度の不均衡が導体において生じたことを知らせるアラームを発生させるメカニズムを利用することができる。
【0011】
工程制御装置は、溶接工程を停止及び/又は修理の必要はあるが溶接工程を停止する必要はない装置の不具合をオペレータに警告することができる。
【0012】
説明を補足し、本発明の特徴をより良く理解することができるように、本発明を限定するものではない添付図面を参照して本発明について説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
添付図面に示すように、溶接用ガン/トーチ本体(1)は、各導体(3)の電流強度を測定し、電荷の不均衡が生じた場合にアラームを発生させるために電子測定装置(2)を有する。このために、マイクロコントローラ(5)が、各導体と電気的に接触することなく各導体の電流強度を測定する電流強度ホール効果(Hall Effect)センサー(6)に接続されている。
【0014】
マイクロコントローラ(5)は、平均電流強度とそれらの差の絶対値を算出するようにプログラミングされている。差の絶対値が予め設定された所与の閾値を超える場合にアラームを発生させる。
【0015】
マイクロコントローラ(5)は最大で500アンペアの電流が流れる導体(3)に隣接しているため、電子装置の動作条件は非常に厳しい。従って、装置には電流の影響から装置を保護するあらゆる手段を組み込まなければならない。
【0016】
電子測定装置(2)は、2つの導体(3)の電流強度を測定するように設計されている。
【0017】
測定装置(2)は、トーチ(1)の2つの導体(3)を流れる電流の強度を測定することができる2つの装置(6)を有する。電流強度計の信号には、プロセスに適した処理が行われる。処理は、明確に定義された2つのステージを有する。
【0018】
第1のステージは、4次ベッセルフィルタによって5Hz未満の周波数を通過させ、信号に重畳された全ての高周波電気ノイズを除去する能動フィルタからなる。また、フィルタは脈動電流の平均値を生成する。これは溶接用途における通常の技術である。
【0019】
処理の第2のステージは、入力点における信号と同じ振幅の正極性信号を出力点において示す機能を有する能動整流器からなり、入力点における信号は正極性又は負極性である。次のステージでは正極性信号のみを使用することができるため、第2のステージが必要となる。能動整流器により、測定装置(2)内での導体(3)の方向に関わらず電流強度を正確に測定することができる。製造時には導体を正確な位置に取り付けるため、これは非常に重要である。
【0020】
適切に処理された信号は、アナログ信号を数値又はデジタル信号に変換する回路を有するマイクロコントローラ(5)に入力される。マイクロコントローラ(5)のプログラムは、2つの電流強度信号の振幅の差を算出し、2つの振幅のいずれが大きいかを判定する。
【0021】
次に、差を2つの振幅のうちの大きい方の振幅で除算した商を得る。商が所定の値(例えば25%)を超えている場合には、アラーム信号が生成され、公知の方法により電流強度アラームを発生させる。また、電流強度の低下した導体に対応するLED(7)を点灯させる。
【0022】
マイクロコントローラ(5)は、溶接トーチ(1)のハンドルの過熱が生じているか否かを検出する温度センサー(8)に接続することができる。マイクロコントローラは、温度センサー(8)からの信号を測定し、サーモスタットとして動作するようにプログラミングされている。プログラミングされた温度閾値を超えた場合には、アラーム信号を発生させて過熱アラームリレーを作動させる。また、溶接トーチハンドル過熱アラームに対応するLEDパイロットライト(9)を点灯させる。
【0023】
トーチ(1)は、装置内で達する温度に対する抵抗性を向上させるために、冷却流体(好ましくは水)の流入点及び流出点を備えた冷却装置(11)を有することができる。
【0024】
使用と動作は非常に簡単である。ガン(1)を溶接機及び直流電源(10)に接続し、入力電流を動作電流に調整する変成器(4)の機能によって対応する電流強度で電気が導体(3)内を循環する。この場合、電流強度計(6)によって測定装置(2)を有するマイクロコントローラ(5)は2つの導体内を循環する電流強度を測定する。両方の測定値の絶対差と最高電流強度の商が所定の値を超えている場合には、マイクロコントローラ(5)は光及び/又は音を発して導体(3)の異常が発生していることを通知する。
【0025】
マイクロコントローラ(5)が電流強度の異常を検出しない場合には、温度計(8)は導体の温度を測定する。この測定値が所定の値を超えている場合には、マイクロコントローラ(5)は必要なメカニズムによって同様に光及び/又は音を発して異常を警告する。
【0026】
マイクロコントローラ(5)に組み込まれたプログラムに応じて、上述した不具合が発生すると、マイクロコントローラ(5)は、トーチ(1)の導体(3)への電源を遮断するか、動作条件を変更する。
【0027】
このような事態が生じていない場合には、電源(10)は電流を導体(3)に供給し、電流の2分の1が各導体内を循環するように電流を2分割する。そのため、端部では2つの導体が再び接続され、電流強度が加算され、トーチの先端では溶接作業に必要な動作電力が得られる。
【0028】
完成した溶接トーチによれば、各導体(3)の動作電流強度は装置の先端で必要な電流強度の2分の1であり、電子測定装置(2)が電流の不均衡を検出した場合や、導体の温度が通常の範囲を超えている場合には、トーチは視覚的な警告を生成する。予め設定されたパラメータはマイクロコントローラ(5)にプログラミングされている。
【0029】
本発明の特徴とその実際の使用について説明したが、実質的に請求項に記載された特徴に影響を与えない限りにおいて、形状、材料、製造に関してあらゆる変形を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】手段と安全装置を有する本発明に係るガンの実用モデルの概略図である。
【符号の説明】
【0031】
1…溶接トーチ
2…電子測定装置
3…導体
4…変成器
5…マイクロコントローラ
6…電流強度センサー
7…LED
8…温度センサー
9…アラーム手段
10…電源
11…冷却装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接機に接続し、直流電流を供給して使用する2つの導体を備えた溶接ガンであって、トーチ本体(1)と、電流強度を測定する電子測定装置(2)と、各導体(3)のセンサー(6)と、電荷の不均衡が生じた場合にアラームを発生させるメカニズムと、を含み、前記導体の前記電流強度センサー(6)及び温度センサー(8)に接続されたマイクロコントローラ(5)を不具合又は異常の表示器と共に使用し、前記マイクロコントローラ(5)におけるデータ処理によってアナログ信号を数値又はデジタル表現に変換し、前記マイクロコントローラ(5)のプログラムは、2つの電流強度信号の振幅の差を算出し、2つの明確に区分されたステージによって2つの振幅のいずれが大きいかを判定し、前記トーチは冷却装置(11)によって冷却することができ、前記ガンの本体は入力直流電流の適当な処理のための対応する変成器(4)を有する溶接ガン。
【請求項2】
請求項1において、
第1のステージが、脈動電流の平均値を発生する4次ベッセルフィルタによって5Hz未満の周波数を通過させる能動フィルタからなる溶接ガン。
【請求項3】
請求項1において、
前記処理の第2のステージが、入力点における信号と同じ振幅の正極性信号を出力点において示す機能を有する能動整流器からなり、前記入力点における信号が正極性又は負極性である溶接ガン。
【請求項4】
請求項1において、
前記マイクロコントローラ(5)によって得られた測定電流強度の差と前記2つの振幅のうちの大きな方の振幅の商に応じて、前記商が所定の値を超えている場合には、対応するアラーム信号を発生させる溶接ガン。
【請求項5】
請求項1において、
対応する前記センサー(8)によって測定された温度が所定の値よりも高い場合には前記マイクロコントローラ(5)がアラーム手段(9)を作動させる溶接ガン。

【図1】
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【公表番号】特表2009−505839(P2009−505839A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528540(P2008−528540)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際出願番号】PCT/ES2006/000143
【国際公開番号】WO2007/026033
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(508032011)
【氏名又は名称原語表記】HISPAMIG, S.L.
【住所又は居所原語表記】Pol. Ind. Rafelbunol  C/L‘Horteta, 52, E−46138 Rafelbunol, Spain
【Fターム(参考)】