説明

2つの熱可塑性部品によって包囲された中空糸濾過装置を作成する方法

本発明は、バッチ式、連続的、及び半連続的プロセスを用いてハウジングのない中空糸濾過装置を製造する方法を提供する。また、装置の剛性を増大するための製造方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
中空糸フィルターは医薬、健康管理、水濾過、気体濾過、及び流体殺菌用途に広く使用されている。通例、中空糸フィルターは、剛性円筒状ハウジング内にきつく均一に適合する最大数の中空糸ストランドを用いて作成される。円筒状ハウジングは、損傷を受け易い繊細であり得る中空糸自体を保護するために使用される。
【0002】
中空糸濾過プロセスにおいて、所望の生成物は透過液であり、これは膜壁を通過する物質のことである。例えば、医薬産業では、標的のタンパク質は中空糸濾過により細胞培養物から取り出される。この濾過では、小さいタンパク質はフィルターの孔を貫通し、一方それよりずっと大きい細胞は排除される。従って、中空糸フィルターは、通例、洗浄又は濯ぐことにより透過液の回収を最大化でき、より大きい商業系にスケールアップできるように設計される。
【0003】
現在のところ、医薬の製造プラントにおける数千時間の使用を目的とした大きいフィルターと、短い使用寿命を目的とした小さい研究室規模のフィルターとで、フィルター設計上に差はあまりない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5282966号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、コスト又は設計の複雑さが問題となる用途で、フィルターの使用を拡大する設計の簡単化及びコスト制御の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一般に、本発明は、ハウジングのない濾過装置を製造する方法を提供する。方法には、バッチ式、連続的、及び半連続的プロセスが含まれる。
【0007】
一実施形態では、中空糸束を調製し、その束の端部を、硬化可能なポッティング材料を含有するポッティングカップ内に挿入し、ポッティング材料を硬化させ、切断して中空糸を露出させ、ポッティングカップの一部分を保持し、エンドキャップを挿入し、エンドキャップを2つの熱可塑性層の間に配置し、これらの層をメルト(溶融)シールして中空糸の回りに容器を形成する工程を含む、ハウジングのない中空糸濾過装置を製造する方法が提供される。
【0008】
一実施形態では、巻取装置に沿って縦方向に配置された中空糸の連続した束を形成し、ポッティング材料を中空糸に適用してポッティングスリーブを形成し、前記束を切断して中空糸を露出させ、エンドキャップを取り付け、エンドキャップを2つの熱可塑性層の間に配置し、これらの層を溶融シールして中空糸の回りに容器を形成する工程を含む、ハウジングのない中空糸濾過装置を製造する方法が提供される。
【0009】
別の実施形態では、巻取装置に沿って縦方向に配列された中空糸の連続した束を形成し、外部充填ポートを含むエンドキャップハウジングを巻取装置に沿った設定位置で中空糸の前記束に取り付け、ポッティング材料を前記外部充填ポート内に注入し、その材料を硬化させて、前記中空糸束の回りにポッティングスリーブを形成し、前記束を切断して中空糸を露出させ、前記エンドキャップを2つの熱可塑性層間に配置し、これらの層を溶融シールして中空糸の回りに容器を形成する工程を含む、ハウジングのない中空糸濾過装置を製造する方法が提供される。
【0010】
剛性フィルム又は追加の周辺区画を使用して剛性を増大する方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の上記及びその他の特徴、局面、及び利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むとより良く理解されるであろう。図面を通じて、類似の符号は類似の部分を表す。
【図1】図1は、Cell Sample Processor(CSP)システムの透過液バッグ部品内に直接中空糸を積層する本発明のシステムの1つの実施形態の概略図である。
【図2】図2は、垂直配置の、ハウジングのないフィルターの概略図である。
【図3】図3は、中空糸の回りに三次元の容器を形成するのに使用する剛性熱可塑性部品の概略図である。
【図4】図4は、剛性を加えるための三次元の区画の使用を示す概略図である。
【図5】図5は、中空糸ユニットを構築するのに使用するバッチ式プロセスを示す一実施形態の概略図である。
【図6】図6は、半連続製造プロセスを示す一実施形態の概略図である。
【図7】図7は、連続製造プロセスで断続的インクジェットタイプのスプレーノズルを使用してポッティング材料が中空糸束に適用されるところを示す概略図である。
【図8】図8は、引き込み可能なモールドと共に熱い樹脂充填材料を使用してポッティング材料が適用されるところを示す概略図である。
【図9】図9は、組合せ硬化性コンパウンド及び高温溶融シールプロセスを示す概略図である。
【図10】図10は、可撓性バッグ内の中空糸の連続シールのためのプロセス構成である。
【図11】図11は、様々なバッグ-シール構想の図解である。
【図12】図12は、U字形フィルターの組み立て法の概略図である。
【図13】図13は、直線貫通フィルターの組み立て法の概略図である。
【図14】図14は、エンドキャップフィルターデザインの概略図である。
【図15】図15は、エンドキャップを取り付け、可撓性バッグ中に挿入するプロセスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一般に、本明細書中に記載されている本発明は、構成要素及び製造コストを低減するように設計された中空糸濾過装置に係る。中空糸が支持又は保護のための別個の円筒状ハウジング内にシールされている中空糸ユニットの代わりに、中空糸は、濾過システムの一体型部品である可撓性バッグ又は剛性容器内に直接シールされる。この可撓性バッグ又は剛性容器は出発材料、透過液、廃棄濾液又は標的保持液のための受器として使用し得る。標的保持液とは、出発材料から分離され、別途回収されることになる1以上の副素材(submaterial)を意味する。
【0013】
いくつかの実施形態では、中空糸濾過ユニットは直接可撓性バッグ内に配置され、このバッグでは、中空糸の内部の管腔への流れの入口及び出口が、バッグの外に延びるフローポートで覆われている。この装置設計では、ハウジング及び透過ポートが省かれるので、材料コストが低減し得る。さらに、このハウジングのない又はバッグフィルターデザインでは、補助の配管、備品、及びハウジング構成要素のような使い捨て型フィルターセットの他の非濾過構成要素の数又は大きさを低減し得る。また、この設計により、製造法を簡略化することも可能である。
【0014】
本発明の一実施形態を図1に示す。ここで、ハウジングのない濾過ユニットは、この濾過ユニットが、濾過された物質を分離又は貯蔵するのに使用される濾過デバイスのユニット内に配置されるように設計し得る。図に示されているように、フィルター1は「U」字形状であり、フィルターへの入口及び出口は可撓性バッグ2の同じ側に配置されている。例示されているように、可撓性バッグはCell Sample Processor(CSP)システムの透過液回収バッグとして使用し得、ここでハウジングのないフィルターはバッグ内に配置される。本発明は、CSPシステムに使用し得るが、より広く中空糸濾過システムを使用する用途にも使用し得る。この構成のフィルターは、フィルターが別途収容される標準的な設計のものと同等に機能し得るが、フィルターハウジング及び2つの透過ポートを使用する必要がなく、フィルター材料コストが大幅に低減する。濾過中、中空糸の内部の管腔には正の圧力がかかるので、ハウジングの代わりにバッグを使用することで問題が生じることはない。
【0015】
バッグ内の中空糸の配置は流体の取り扱いに影響を及ぼし得、濡れた又は濡れてない中空糸外面に依存し得るプロセス条件に合うように選択される。いくつかの実施形態では、フィルターユニット1はまた、図2に示されているようにバッグ2の対向する辺上に配置してもよい。かかる直線貫通の配置では、フィルターを予め濡らす際の容易さのようないくつかの利点が得られ得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、外から流入する流れ(outside-in flow)を使用し得、それに応じて濾過ユニットを配置し得る。例えば、出発材料が血液のような生物学的材料である場合、濾過ユニットを含有するバッグは血液バッグであり得る。吸引を使用して含有されている血液を精製し、廃棄物を血液バッグ内に残す(すなわち、外から流入する流れを利用する)ことができよう。この場合、中空糸は連続的に液体中に浸されるように血液バッグの底部に配置することができ、このシステムは逆流を使用して中空糸を洗浄することができる。これは、汚れがひどいか又は粘性が高過ぎて内部管腔まで押し通すことができないかもしれない流入する材料を前濾過するのが望ましい場合に有用であり得る。
【0017】
いくつかの用途においてバッグフィルターを使用することの可能な不利点は、フィルターを通過する活性な前進流がない場合の透過液の逆漏出であり得る。これは、適正なバッグフィルターの設計で回避し得る。例えば、いくつかの実施形態では、U字型構成の使用により又はバッグの頂部に水平に配置することにより、バッグ内の透過液プールから中空糸を隔離して、中空糸が透過液に浸らないようにし得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、容器は、標準的な中空糸フィルターで起こるような線形の円筒状幾何学的形状に制約されないように、特定のプロセスに合致するような大きさとするか又は切断し得る。いくつかの実施形態では、容器は、可撓性バッグキャビティーを形成するように溶融シールされる平面状の可撓性フィルムからなり得る。他の実施形態では、可撓性バッグはブロー成形されたバッグのような三次元の形状をとり得る。このバッグはまた、中空糸濾過ユニットで使用されるものに加えて複数の入口及び出口ポートも含有し得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、中空糸濾過ユニット1は、予め形成された三次元形状を有する剛性容器内に配置し得る。いくつかの実施形態では、容器は、限定されることはないが射出成形、圧縮成形又はブロー成形された部品のような2つの別個の熱可塑性部品8を溶融シールすることで形成される。製造の際、フィルター構成要素及び追加の備品は、一方の剛性部品の適正な領域に配置される。第2の剛性部品をフィルター及び備品構成要素並びに第1の剛性部品の上に配置し、溶融シールして、シールされた容器を形成する。この容器の剛性壁は可撓性バッグフィルターと比較して、中空糸に対してより大きな保護を付与し得る。剛性容器の代表的な実施形態を図3に示す。
【0020】
フィルターは使用中でも可撓性を保持するように設計し得る。この特徴は、軍事分野の救急キットのような空間が制約される用途で有利であり得る。他の用途において、ハウジングのないフィルターを中空糸の損傷の可能性から保護するのが望ましいことがあり得る。ある種の用途においては、バッグ内フィルターを包装トレー内に固定するのが望ましいことがあり得る。包装トレーは剛性又は半剛性設計とし得る。その他の用途においては、強化中空糸を使用し得る。
【0021】
最初は可撓性バッグフィルターを、輸送及び使用中の損傷から中空糸を保護するように剛性に設計し得る。これは、製造中に空気が充填されシールされる追加のチャンバーをバッグ内に作成することによって達成し得る。代わりの実施形態では、その他のガス、液体又は泡を使用してその区画を充填してもよい。これにより追加の構成要素を使用することなくフィルターシステムに剛性を付与し、追加の保護構造体を必要とする系より低いコストの解決策が提供され得る。図4に示されているように、いくつかの実施形態では、製造プロセスで、可撓性バッグを形成するのに使用し得る可撓性フィルムの対向する辺に沿って縦方向に追加の溶融シール31を提供することによって、追加のチャンバーを形成する。これらの溶融シールは前記可撓性バッグの周辺縁部に沿って2つの追加の区画を作り出す。
【0022】
図4にさらに示されているように、入口及び出口ポートが可撓性バッグの一つの縁に沿って並列して配置されている場合同様なプロセスを使用し得る。バッグを形成するのに使用される2つの平面状可撓性フィルムを入口及び出口ポートと対向する辺に沿って溶融シールして(31)可撓性バッグの下端部に沿って区画を形成し得、これに気体、液体又はフォームを充填して支持を提供することもできる。
【0023】
いくつかの実施形態では、中空糸濾過装置の構成要素は、殺菌することができ生体適合性のためのFDA及びUSPの要件の少なくとも1つを満たす材料から構成し得る。これには、中空糸束、ポッティング材料、エンドキャップ、及び可撓性バッグの製造に使用される材料が含まれる。また、濾過又は加工処理を受ける材料と接触し得る保持クリップ、シーラント、及び接着剤のような補助構成要素も含まれ得る。
【0024】
中空糸濾過装置は各種の製造方法を用いて製造し得る。製造法にはバッチ式、半連続的又は連続的プロセスがあり得る。
【0025】
図5は、後に可撓性バッグ内に配置し得る中空糸ユニットを構築するのに使用し得るバッチ式プロセスを示す一実施形態の概略図である。図に示されているように、中空糸3の束を所望の装置内に適合するような大きさにし、ブロック工程を実施する。ブロック工程はいくつかの方法、すなわち熱的(レーザー、ヒートガン、火炎、ホットワックス、ホットナイフ等)又は化学的(UV又は熱硬化性エポキシ、ポリウレタン、シリコーン、アクリル樹脂、等)方法の一つであり得、これにより中空糸束の端部は比較的なめらかな断面を有する。2つのポッティングカップ4にポッティング材料を充填し得、中空糸束の2つの端部を各々挿入し得る。ポッティング材料は、中空糸束の回りにシールを形成し接着させるのに部分的に使用される硬化可能な接着剤である。ポッティング材料はUV硬化性接着剤、可視光硬化性接着剤、熱硬化性接着剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又はこれらの組合せからなり得る。いくつかの実施形態では、ポッティング材料はUV又は熱硬化性エポキシ、シリコーン、ポリウレタン又はアクリル樹脂であり得る。
【0026】
ポッティングカップは非円筒状に設計し得る。先細頂部のような非円筒状のデザインでは、未硬化のポッティング材料を流出させることなく単一の中空糸挿入工程が可能になり得る。時間がたつと、ポッティング材料は繊維間の空間内に入り得、良好なシールを提供し得る。ポッティングカップは、中空糸束の迅速な浸漬を可能にする一方で、カップから流出する材料の量を制限し、かつポッティング材料に露出される繊維の長さを制限するように構成され得る。
【0027】
図5にさらに示されているように、各ポッティングカップに近い端部を切断してポッティングスリーブ5を形成し、開放中空糸を露出させる。従って、ポッティングスリーブはポッティング材料からなる。切断はポッティング材料の硬化の前、硬化中又は硬化後に行い得る。次に、エンドキャップ6を各々のポッティングスリーブの上に挿入し得る。エンドキャップは、可撓性バッグ2の入口及び出口ポート7中に挿入できるように様々な設計とし得る。
【0028】
図6は、中空糸の連続した束が巻取装置に沿って縦方向に並んでいる半連続的製造プロセスを示す一実施形態の概略図である。図に示されているように、エンドキャップハウジング9を製造プロセスに沿った設定位置で中空糸の束に取り付け得る。この位置は所望の濾過ユニットの大きさに基づいて選択し得る。エンドキャップハウジングは、貝殻型の配置で互いに噛み合う2つの部品からなり得、外部充填ポート10も含み得る。ポッティング材料は、下にある中空糸の束とポッティング材料が接触するようにして外部充填ポート内に注入し得る。次に、このポッティング材料を硬化させてポッティングスリーブを形成する。エンドキャップハウジングは、エンドキャップハウジングの一部分を保持したままで開放中空糸を露出させるように切断し得る。一回より多くの切断を使用して充填ポートを除去し得る。
【0029】
エンドキャップは、限定されることはないが接着剤、溶剤接合、ネジ式シール、保持クリップ、溶融シール、圧入又はこれらの組合せを始めとする様々な方法によってポッティングスリーブに取り付け得る。
【0030】
代わりの実施形態では、ポッティングスリーブ及びエンドキャップの機能は、中空糸束への接着及び可撓性バッグへの取り付け点を提供する機能を有する単一のユニットに組み合わせ得る。
【0031】
バッグは中空糸ユニットを覆って構築され得る。図に示されているように、中空糸ユニットを2つの可撓性シートフィルムの間に配置し得、2つの平面状可撓性フィルムの周辺縁部を互いにシールして可撓性バッグを形成する。いくつかの実施形態では、中空糸ユニットの位置決めを補助するために、シールされたときに入口及び出口ポートを形成するようにフィルムの縁に沿って合わせ穴を有する2つのフィルム層を提供する。中空糸ユニットは、エンドキャップハウジングがこれらの穴に挿入されるように2つの可撓性シートフィルムの間に配置し得る。これら2つの平面状の可撓性フィルムの周辺縁部をシールして可撓性バッグを形成し得る。代わりの実施形態では、可撓性フィルムの代わりに剛性三次元部品を使用して中空糸のための剛性容器を提供し得る。
【0032】
他の実施形態では、中空糸ユニットは別途予め形成された容器内に配置し得、その後エンドキャップを容器の入口及び出口ポート内に挿入し得る。中空糸ユニットはシールする前に容器内に配置し得る。他の実施形態では、中空糸ユニットは入口又は出口ポートを通して容器内に挿入し得る。各実施形態では、容器は可撓性バッグ又は剛性容器であり得、その結果閉鎖された濾過装置が得られる。
【0033】
図7は、連続的製造プロセスを使用することにより巻取装置に沿った設定位置でポッティング材料が中空糸の束に適用される実施形態を示す。図7に示されているように、UV硬化可能なポッティング材料11は断続的インクジェットタイプスプレーノズルを用いて適用される。限定されることはないがスプレーコーティング、ロールコーティング、及びブレードコーティングを始めとする中空糸束に直接ポッティング材料を適用する代わりの方法も使用し得る。ポッティング材料をオンラインで硬化させてポッティングスリーブ12を形成する。次いで、中空糸をポッティングスリーブに沿って切断して、ポッティングスリーブの一部分を保持しながら開放中空糸を露出させ得る。エンドキャップハウジングをポッティングスリーブの端部部分に取り付けて中空糸ユニットを形成し得る。他の実施形態では、ポッティングスリーブはエンドキャップハウジングとして機能し得、バッグの入口及び出口ポートに直接挿入し得る。
【0034】
図7にさらに示されているように、いくつかの実施形態では、ノズル13を中空糸束内に配置し、内側部分にシーラントコーティングを染み込ませ得る。このシーラントコーティングは繊維間の接着を提供し得る。シーラントはポッティング材料と同じ又は異なる材料であり得る。いくつかの実施形態では、ポッティング材料を使用し得るが、加工助剤又は溶媒を添加して、分散を補助するように粘度又はその他の性質を変化させ得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、中空糸をインライン巻き取りプロセス中の様々なときに添加して束の完全性又は強度を維持しながら中空糸束の大きさを増大し得る。シーラントコーティングはまた、製造プロセス中、ポッティング材料の上流又は下流のいろいろな時点で添加し得る。
【0036】
図8は、ポッティング材料が引き込み可能なモールド14で熱い熱可塑性樹脂充填物として適用される実施形態の概略図である。このプロセスの1つの利点は、モールドがエンドキャップと合致するのに良好な円筒状形状を提供することである。中空糸をつぶしたり溶融させたりすることなく中空糸をシールするのに充分なモールド充填速度を有する注入可能な樹脂をポッティング材料として選択し得る。この材料はまた、良好な離型性も有するべきである。注入可能な樹脂には、限定されることはないが、ハイフローポリプロピレン又はエチレン酢酸ビニルが含まれ得る。
【0037】
他の実施形態では、スプレーコーティングとインライン成形の両方を組み合わせて中空糸ユニットを形成し得る。これは図9に示されており、中空糸束15の内側及び外側にUV硬化性樹脂を使用した後熱い熱可塑性樹脂16を射出オーバー成形する(injection over molding)。オーバー成形を使用してポッティングスリーブの形状と外径に関する寸法規格を確保し得、エンドキャップとの適切な接合を可能にし、一方初期UVスプレーコーティングが成形工程中の中空糸管腔の完全性を維持するのに充分な剛性を与え得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、中空糸ユニットを予め形成した可撓性バッグ内に配置し、エンドキャップを可撓性バッグの入口及び出口ポートに取り付け得る。バッグへのエンドキャップの取り付けには、限定されることはないが溶剤接合、ネジ式シール、溶融シール又はこれらの組合せを始めとする様々な方法を使用し得る。
【0039】
図10は、中空糸ユニット1をバッグ2にシールする方法の一実施形態を示す。この方法は貝殻型のプレスを使用し得、すなわち、急速冷却したプラテンを用いて中空糸をバッグにシールし得る。
【0040】
代わりのバッグシール概念を図11に示し、様々な中空糸束のシール技術を描く。図に示されているように、束は、直接エンドキャップに設けられたシールであるエンドキャップ溶融シール19、ハウジング溶融シール20又はいくつかの実施形態では使用し得る複合溶融シール21法を用いて接着し得る。エンドキャップ溶融シールは、フィルターユニットが破裂したときに無菌状態を維持するのに使用し得る。エンドキャップ溶融シールはバッグに収容されている物質を保証し、完全に無菌の回収及び異なる濾過セットでの試験を可能にするであろう。また、組み合わせた複合溶融シールも無菌状態を維持すると共に溶媒接合又はネジ式接続の必要性を省くであろう。各実施形態では、バッグの代わりに剛性熱可塑性部品を使用し得る。
【実施例】
【0041】
実験
図に示されているバッチ式プロセスを用いてハウジングのないフィルターを構築した。図に示されているように、中空糸束3をブロックし、ポッティング材料を含有するポッティングカップ4に挿入し、束の回りにポッティングスリーブ5を形成する。エンドキャップ6を取り付け、フィルターバッグの入口及び出口ポート7に挿入する。このフィルターを、標準的なハウジングタイプのフィルターと共に対合試験(paired test)にかけた。結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

表1に示されているように、ハウジングのない濾過装置による細胞回収率は、本質的に対照と同じであり、小さい差は関連のないプロセス変数に帰因し得る。TNCは全有核細胞であり、MNCは単核細胞である。濾過中、ハウジングのないフィルターで重大な操作上の問題は観察されなかった。ハウジングのないフィルターで少し低めの濾過時間と共に少し高い供給圧力が認められた。これらの効果はいずれも、おそらく、ハウジングのないフィルターが対照と比較して少し大きい繊維の長さを有することに起因する。
【0043】
図13に示したプロセスに従って第2のバッグフィルターを構築した。中空糸の熱ブロックを使用した。また、バッグフィルターは、「直線貫通の」配置にして中空糸を濡らすのを補助した。濾過工程中の流路はトップダウンとした。表2に、フィルターを通る流れの結果を対照と比較して示す。
【0044】
【表2】

手作業によるポッティング操作及び試験のための典型的なエンドキャップ設計を図14に示す。ユニット22は壊れやすいポッティングカップ23と接合したエンドキャップ24の組みあわせであり、オペレーターによるポッティングカップ高さの調節を必要としない手作業のポッティング工程を可能にする。このポッティングカップのデザインは閉鎖した円筒状の低部と開放した漏斗形状の上部とを有して非対称であり、ポッティング材料があふれたり中空糸の高過ぎるところまで上昇することなく、中空糸束の単一の繊維挿入工程が可能になる。エンドキャップハウジングは、中空糸束と反対側でエンドキャップハウジングの内径が低減するように先細設計となっている。このエンドキャップの設計は、濾過のこの領域における材料の停滞体積を低減し得る。この設計により、エンドキャップ内に存在する材料をより完全に排除するための空気パージが可能になり得る。
【0045】
エンドキャップを取り付けるプロセスを図15に示す。全部で21の数の中空糸を、低減装置(reducing device)25、この場合は漏斗を用いて1つの束にした。所望の長さで、円筒状の金属バー26を用いて中空糸束を縮ませ、スコッチテープの小片を用いてきつく束ねる。ホットナイフ27(Thermo−Schneider 20 ZTS、ナイフ温度およそ400°F)を用いて束を切断した。この切断は、中空糸が切断点の両側で溶融シールされるようにして行うことができる。次に、中空糸束を、カスタマイズされたポッティングカップ28内に配置する。このスコッチテープによりきつく束ねた束では、中空糸をカップ内に容易に挿入することが可能になる。
【0046】
中空糸束の端部は溶融シールにより互いにきつく保持されているので、EPON(登録商標)樹脂828(Shell Chemical Company)2部及びEpi−cure(登録商標)3140(Shell Chemical Company)1部の標準的なポッティングエポキシは粘性が高過ぎて、硬化前に繊維間の領域に十分に浸入することができない。本発明者は、標準的なエポキシを混合し、その混合物を40℃で15分加熱し、ポッティングカップに注ぎ、中空糸を挿入し、40℃に保持すると、束内の繊維間の領域に十分浸透し、24時間後良好なシールが得られることを見出した。硬化後、カップの端部を折り(カップのタブによりこの工程が容易になる)、エンドキャップ29を挿入する。エンドキャップを小量のポリスルホン接着剤(塩化メチレン中に熔解したポリスルホンチップ)でシールした。この中空糸アセンブリを、バッグポートを通してエンドキャップを押し込み、バッグを溶融シールすることによってバッグ30に挿入する。代わりの製造において、エンドキャップの回りに2つのEVAシートを積層して可撓性バッグを形成し得る。
【0047】
本明細書では本発明のいくつかの特徴のみを例示し説明して来たが、当業者には多くの修正及び変更が自明であろう。従って、特許請求の範囲はかかる修正と変更のすべてを本発明の真の思想の範囲内に入るものとして包含することと了解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングのない中空糸濾過装置を製造する方法であって、
中空糸の束の端部を圧縮し、切断し、ヒートシールし、
切断した中空糸束の両方の端部を、硬化可能なポッティング材料が充填された別々のポッティングカップに挿入し、
ポッティング材料を硬化させ、
ポッティングカップ及び中空糸の束を切断して開放中空糸を露出させる一方でポッティングカップの一部分を保持し、
ポッティングカップの保持された一部分にエンドキャップハウジングを取り付け、
2つの熱可塑性部品を準備し(ここで、前記熱可塑性部品は、シールされたとき入口及び出口ポートを形成するように合わせ穴を熱可塑性部品の縁部に沿って有する)、
エンドキャップハウジングが前記穴に挿入されるように、中空糸ユニットを2つの熱可塑性部品間に配置し、
2つの熱可塑性部品の周辺縁部を共にシールして閉鎖された濾過装置を形成する
工程を含んでなる、前記方法。
【請求項2】
熱可塑性部品が平面状の可撓性フィルムからなる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
さらに、
可撓性フィルムの対向する辺に沿って縦方向に追加のメルトシールを形成して前記可撓性バッグの周辺縁部に沿って2つの追加の区画を有する可撓性バッグを形成し、
前記区画を空気、液体又は泡の少なくとも1種で充填する
工程を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
入口及び出口ポートを可撓性バッグの1つの縁部に沿って並列して配置し、2つの平面状の可撓性フィルムを入口及び出口ポートの反対側の辺に沿って溶融シールして可撓性バッグの下端に沿って区画を形成し、前記区画を空気、液体又は泡の少なくとも1種で充填する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
熱可塑性部品が剛性三次元部品からなる、請求項1記載の方法。
【請求項6】
ポッティング材料がUV硬化性接着剤、可視光硬化性接着剤、熱硬化性接着剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又はこれらの組合せからなる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
エンドキャップハウジングが、中空糸束の反対側で前記エンドキャップハウジングの内径が低減するように先細設計を有する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
ポッティングカップが、閉鎖部分が円筒状であり、開放部分が漏斗形状を有するように設計されている、請求項1記載の方法。
【請求項9】
エンドキャップハウジングが、独立して、接着剤、溶剤接合、ネジ式シール、保持クリップ、メルトシール、圧縮シール、圧入又はこれらの組合せによりポッティングスリーブ、入口ポート、及び出口ポートに取り付けられる、請求項1記載の方法。
【請求項10】
ハウジングのない中空糸濾過装置を製造する方法であって、
巻取装置に沿って縦方向に並んだ中空糸の連続した束を形成し、
巻取装置の設定位置で前記中空糸の束にポッティング材料を適用し、
ポッティング材料を硬化させてポッティングスリーブを形成し、
ポッティングスリーブ及び中空糸の束を切断して開放中空糸を露出させる一方でポッティングスリーブの一部分を保持し、
ポッティングスリーブの保持された一部分にエンドキャップハウジングを取り付け、
2つの熱可塑性部品を準備し(ここで、前記熱可塑性部品は、シールされたとき入口及び出口ポートを形成するようにフィルムの縁部に沿って合わせ穴を有する)、
エンドキャップハウジングが前記穴に挿入されるように、2つの熱可塑性部品の間に中空糸ユニットを配置し、
前記2つの熱可塑性部品の周辺縁部を共にシールして閉鎖された濾過装置を形成する
工程を含んでなる、前記方法。
【請求項11】
熱可塑性部品が平面状の可撓性フィルムからなる、請求項10記載の方法。
【請求項12】
さらに、
平面状の可撓性フィルムの対向する辺に沿って縦方向に追加のメルトシールを形成して、可撓性バッグの周辺縁部に沿って2つの追加の区画を有する前記可撓性バッグを形成し、
前記区画を空気、液体又は泡の少なくとも1種で充填する
工程を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
入口及び出口ポートを可撓性バッグの1つの縁部に沿って並列して配置し、平面状の可撓性フィルムを入口及び出口ポートの対向する辺に沿って溶融シールして可撓性バッグの下端に沿って区画を形成し、前記区画を空気、液体又は泡の少なくとも1種で充填する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
熱可塑性部品が剛性三次元部品からなる、請求項10記載の方法。
【請求項15】
ポッティング材料がUV硬化性接着剤、可視光硬化性接着剤、熱硬化性接着剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又はこれらの組合せからなる、請求項10記載の方法。
【請求項16】
エンドキャップハウジングが、中空糸束の反対側で前記エンドキャップハウジングの内径が低減するように、先細設計を有する、請求項10記載の方法。
【請求項17】
エンドキャップハウジングが、独立して、接着剤、溶剤接合、ネジ式シール、保持クリップ、メルトシール、圧縮シール、圧入又はこれらの組合せによってポッティングスリーブ、入口ポート、及び出口ポートに取り付けられる、請求項10記載の方法。
【請求項18】
さらに、シーラントコーティングを中空糸の束に適用して中空糸間の接着を提供する工程を含む、請求項10記載の方法。
【請求項19】
ハウジングのない中空糸濾過装置を製造する方法であって、
巻取装置に沿って縦方向に並んだ中空糸の連続した束を形成し、
外部充填ポートを含むエンドキャップハウジングを、巻取装置に沿った設定位置で中空糸の束に取り付け、
中空糸の束に接触するようにポッティング材料を外部充填ポート中に注入し、
ポッティング材料を硬化させてポッティングスリーブを形成し、
エンドキャップハウジングを切断して開放中空糸を露出させる一方でエンドキャップハウジングの一部分を保持し、
2つの熱可塑性部品を準備し(ここで、前記熱可塑性部品は、シールされたとき入口及び出口ポートを形成するように合わせ穴を熱可塑性部品の縁部に沿って有する)、
エンドキャップハウジングが前記穴に挿入されるように、前記2つの熱可塑性部品の間に中空糸ユニットを配置し、
前記2つの熱可塑性部品の周辺縁部を共に溶融シールして閉鎖された濾過装置を形成する
工程を含んでなる、前記方法。
【請求項20】
エンドキャップハウジングを、2つの部品のロッキング接続、オーバーモールディング又はこれらの組合せを使用して取り付ける、請求項19記載の方法。
【請求項21】
ポッティング材料がUV硬化性接着剤、可視光硬化性接着剤、熱硬化性接着剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又はこれらの組合せからなる、請求項19記載の方法。
【請求項22】
さらに、中空糸の束にシーラントコーティングを適用して中空糸間の接着を提供する工程を含む、請求項19記載の方法。
【請求項23】
熱可塑性部品が平面状の可撓性フィルムからなる、請求項19記載の方法。
【請求項24】
さらに、
平面状の可撓性フィルムの対向する辺に沿って縦方向に追加のメルトシールを形成して可撓性バッグの周辺縁部に沿って2つの追加の区画を有する前記可撓性バッグを形成し、
前記区画を空気、液体又は泡の少なくとも1種で充填する
工程を含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
入口及び出口ポートを可撓性バッグの1つの縁部に沿って近接して配置し、平面状の可撓性フィルムを入口及び出口ポートの対向する辺に沿って溶融シールして可撓性バッグの下端に沿って区画を形成し、前記区画を空気、液体又は泡の少なくとも1種で充填する、請求項24記載の方法。
【請求項26】
熱可塑性部品が剛性三次元部品からなる、請求項19記載の方法。
【請求項27】
エンドキャップハウジングを接着剤、溶剤接合、ネジ式シール、保持クリップ、メルトシール、圧縮シール、圧入又はこれらの組合せによって入口ポート及び出口ポートに取り付ける中空糸間の、請求項19記載の方法。
【請求項28】
さらに、シーラントコーティングを中空糸の束に適用して接着を提供する工程を含む、請求項19記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2013−513466(P2013−513466A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542531(P2012−542531)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069127
【国際公開番号】WO2011/070046
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】