説明

2つ以上のメソゲンが一定の結合角を有するネマチック液晶化合物の厚さ方向への配向がハイブリッド型である光学補償フィルム及びその製造方法

本発明は、光学補償フィルム及びその製造方法に関し、具体的には、2つ以上のメソゲンが一定の結合角を有する化合物を含むネマチック液晶化合物を含み、そのネマチック液晶化合物の配向方向が厚さ方向に徐々にねじられながら変化するハイブリッド型の光学補償フィルム及びその製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つ以上のメソゲンが一定の結合角を有して連結されたネマチック液晶化合物がハイブリッド液晶配向を有する光学補償フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(Liquid Crystal Display device;LCD装置)は、二枚のガラス基板の間に液晶物質が注入され、外部から電圧が印加される液晶の電気光学特性を用いた表示装置である。このような液晶表示装置は、外部から入射される光を用いるという点で、既存の他の表示装置とは区別され、軽量かつ薄型で、電力消費が少ないという長所を有している。また、テレビ(TV)、パソコン(PC)のモニター、カーナビゲーション、デジタルカメラ、携帯電話などの多様な用途で使用されている。
【0003】
液晶の駆動モード(mode)には、ネマチック(Nematic)液晶を用いたねじれネマチック(Twisted Nematic;TN)、超ねじれネマチック(Super Twisted Nematic;STN)、面内スイッチング(In−Plane Switching;IPS)、垂直配向(Vertical Alignment;VA)、光学補償ベンド(Optically Compensated Bend;OCB)などの方式がある。前記駆動形態を有する液晶は、光学的に、常屈折率(Ordinary refractive index)と異常屈折率(Extraordinary refractive index)の二つの屈折率を有する異方性物質であるため、入射光の入射角度に応じて光の経路と複屈折率が変化する。従って、画面を見る方向に応じて、コントラスト比(Contrast Ratio;CR)の変化と、階調反転(Gray scale inversion)現象が発生する。特に、ねじれネマチック(TN)液晶のような垂直配向を行う液晶は、光の進行方向による位相差(△nd)の変化が大きいため、視野角が狭く、コントラスト比(CR)が低いという短所がある。前記短所を改善するため、補償フィルムを用いることによりこのような位相差を補償して視野角を増加させる。
【0004】
これに対して、日本特許公開第2004−240012号公報において、波長550nmにおける位相差が実質的にπである第1の光学異方性層と、波長550nmにおける位相差が実質的にπ/2である第2の光学異方性層と、光学異方性が負の第3の光学異方性層とを積層してなり、波長450nm、550nm、及び650nmで測定したレターデーション値/波長の値がいずれも0.2〜0.3の範囲内であり、かつ第1の光学異方性層及び第2の光学異方性層の少なくとも一つが、液晶性分子のチルト角が5゜〜35゜の範囲で実質的に傾斜したネマチック配向を固定化した液晶性分子から形成された層である位相差板が提案された。しかし、前記積層においては粘着剤の塗布工程や接合工程が必要となるため処理工程が煩雑になり、軸がずれると品質の低下が起こりやすく、収率が低下し生産コストが増加する。また、それぞれの異方性の発現は、高分子の分子量、温度、あるいは延長速度などの多様な条件から影響を受けるため、各層の異方性を精密に制御することも難しい。
【0005】
前記の短所を補完するために、日本特許公開第2005−208414号公報において、分子中にディスコチック(discotic)メソゲンと末端に重合性基が結合したネマチック(nematic)メソゲンとを有する液晶モノマー(monomer)を、前記ディスコチック(discotic)メソゲンと前記ネマチックメソゲンとの光軸が実質的に平行になるように配向させ、該配向を維持したまま固定化させたことを特徴とする逆波長分散位相差フィルム(film)が提案されており、日本特許公開第2006−78670号公報において、三方向の屈折率主値が異なる光学異方性層および透明支持体を有する光学補償シートであって、前記光学異方性層が少なくとも一つの重合性基を有するディスコティック液晶性分子と複数の重合性基を有する化合物との重合反応により形成された層であることを特徴とする光学補償シートが提案されており、また、日本特許第3399705号公報と第2587398号公報において、ディスコチックネマチック液晶のハイブリッド配向により視野角補償の効果を得る方法が提案されている。
【0006】
これに対して本発明者らは、光学補償フィルムの視野角補償のために鋭意研究した結果、一定の結合角を有した2つ以上のメソゲンが新規のネマチック液晶化合物を用いるとともに、ハイブリッド型液晶配向を通じて視野角補償の効果が顕著に向上した液晶ディスプレイ装置の光学補償フィルムを製造することができると確認し、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】日本特許公開第2004−240012号公報
【特許文献2】日本特許公開第2005−208414号公報
【特許文献3】日本特許公開第2006−78670号公報
【特許文献4】日本特許第3399705号公報
【特許文献5】日本特許第2587398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、一定の結合角を有した2つ以上のメソゲンを有するネマチック液晶化合物を用いるとともに、ハイブリッド型液晶配向を通じて視野角補償の効果を得る光学補償フィルム及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために本発明は、2つ以上のメソゲンが一定の結合角を有する化合物を含むネマチック液晶化合物を提供する。
【0010】
ハイブリッド配向を有するコーティング層を含む液晶表示装置用光学補償フィルムであって、前記ハイブリッド配向において、化学式1で表される化合物を含有するネマチック液晶化合物の配向が、配向膜表面から厚さ方向に徐々に変化することを特徴とする、液晶表示装置用光学補償フィルムを提供する。
【0011】
[化学式1]
[A]−B−[A´]
【0012】
上記式中、
m及びnは、互いに独立して1〜12から選択された自然数を表し、
A及びA´は、互いに同一であるか異なって、それぞれディスコチック型又は棒状のメソゲンを表し、
前記A´とA´、又はAとAは、二つのメソゲン間の直接結合により連結されるか、スペーサー(spacer)を介して連結され、
Bは、幾何学的に一定の結合角を維持する官能基である。
【0013】
また、本発明は、基材フィルム上に配向膜を形成する段階と、前記配向膜の上部に、化学式1の化合物を含有するネマチック液晶化合物を含む液晶溶液をコーティングして、ハイブリッド液晶配向構造を有するフィルムを形成する段階と、形成した前記フィルムに50〜150℃において紫外線を照射して、ハイブリッド液晶配向構造を固定する段階と、を含む光学補償フィルムの製造方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、前記の光学補償フィルムを含む偏光板を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記の光学補償フィルムを用いる液晶ディスプレイ装置を提供する。
【0016】
以下、本発明の好ましい一実施例を詳細に説明する。また、本発明を説明するにあたり、援用される公知技術又は構成についての具体的な説明が本発明の要旨を不明瞭にする可能性があると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。
【0017】
本明細書で用いられる程度の用語「約」、「実質的に」などは、その記載に固有の製造及び物質の許容誤差が提示される場合、その数値又はその数値に近い意味として用いられ、本発明を容易に理解するために正確かつ絶対的な数値が記載された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために用いられる。
【0018】
即ち、本発明は、化学式1の化合物を含むネマチック液晶化合物を提供する。
【0019】
[化学式1]
[A]m−B−[A´]n
【0020】
上記式中、
m及びnは、互いに独立して1〜12から選択された自然数を表し、
A及びA´は、互いに同一であるか異なって、それぞれディスコチック型又は棒状のメソゲンを表し、
Bは、幾何学的に一定の結合角を維持する官能基である。
【0021】
上記式中、A及びA´は、互いに独立してディスコチック型又は棒状であり、両方とも棒状又はディスコチック型、ディスコチック型と棒状の混合形態であってもよく、A及びA´が両方ともディスコチック型であることがより好ましい。
【0022】
Bは、幾何学的に一定の結合角を維持する官能基である。
【0023】
上記Bは、歪み(strain)がなく、結合角の変形がない官能基であることを特徴とし、メソゲン間に一定の結合角を維持するようにすることで視野角を改善する。
【0024】
これに対する具体例として、前記Bは、


から選択されることができる。
【0025】
A´とA´やAとAは、二つのメソゲン間の直接結合により連結されるか、スペーサ(spacer)を介して連結されてもよく、二つのメソゲンが線形結合されることが好ましい。二つのメソゲンの線形結合については、Chem.Rev.1999,Vol.99,1863;J.Am.Chem.Soc.2003,Vol.125,11062;J.Am.Chem.Soc.1985,Vol.107,4192;J.Org.Chem.2005,Vol.70,2745;Science,2001,Vol.293,79;J.Am.Chem.Soc.2006,Vol.128,7670;Accounts of Chemical Research,2004,Vol.37,735;及びEur.J.Org.Chem.2006,3087に説明されている。
【0026】
他方の実施態様によれば、本発明の液晶化合物は、前記mが1であり、nが1であって、AとA´の両方とも化学式2で表される化合物であるものを含むが、これに限定されるものではない。
【0027】
[化学式2]

【0028】
上記式中、
〜Rは、互いに独立して、(C1−C14)アルキル、(C1−C14)アルコキシ、(C1−C14)アルキルカルボニル、(C6−C20)アリール、(C6−C20)アリールカルボニル、(C1−C14)アルコキシカルボニル、(C6−C20)アリールオキシカルボニル、カルバモイル、スルファモイルを表し、
前記R〜Rのアルキル、アルキルカルボニルのアルキル及びアルコキシ、アルコキシカルボニルのアルコキシは、直鎖又は分岐鎖の、飽和又は不飽和結合を含んでもよく、
前記R〜Rのアルキル、アリール、アルカノイル、アルケノイル、アルキノイル、アリーロイル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルバモイル、スルファモイルは、ハロゲン、シアノ、及びヒドロキシルからなる群から選択された一つ以上の置換基によってさらに置換されてもよい。
【0029】
上記式中、R〜Rは(C1−C14)アルキル、(C6−C20)アリール、(C1−C14)アルカノイル、(C3−C20)アルケノイル、(C3−C20)アルキノイル、(C7−C20)アリーロイル、(C1−C14)アルコキシカルボニル、(C6−C20)アリールオキシカルボニル、カルバモイル、スルファモイルであり、
前記R〜Rのアルキル、アリール、アルカノイル、アルケノイル、アルキノイル、アリーロイル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルバモイル、スルファモイルは、ハロゲン、シアノ、及びヒドロキシルからなる群から選択された一つ以上の置換基によってさらに置換されてもよい。
【0030】
図1は、本発明に関する液晶のハイブリッド構造及び光補償原理の概略図である。図1を参照すると、前記二つのメソゲンが連結されて形成される化学式1の化合物を含むネマチック液晶化合物の配向が、配向膜表面から厚さ方向に徐々に変化する液晶層が上下層に位置する。さらに、ねじれネマチック(Twisted Nematic)液晶の配向が前記のように厚さ方向に徐々に変化する液晶層が、中問層に位置する。このとき、上下層の各メソゲンと中問層の各ねじれネマチック液晶化合物との間に補償関系が成立するように各液晶を位置させる。これにより、光学補償かつ視野角向上の効果を示すことができる。
【0031】
本発明は、前記化学式1の化合物を含むネマチック液晶化合物の配向が、図1に示したように、配向膜面から厚さ方向に徐々に変化するハイブリッド(hybrid)配向を有するコーティング層を含む液晶表示装置用光学補償フィルムを提供する。
【0032】
本発明は、前記のネマチック液晶化合物を含む光学補償フィルムを提供し、下記のような工程を通じて本発明の光学補償フィルムを提供することができる。
【0033】
本発明は、基材フィルムの上部に配向膜を形成する段階と、前記形成された配向膜の上部に、2つ以上のメソゲンが連結されたネマチック液晶化合物が含まれた溶液をコーティングして、ハイブリッド液晶配向構造を有するフィルムを形成する段階と、前記形成されたフィルムを50〜150℃において紫外線を照射してハイブリッド液晶配向構造を固定する段階と、を含む光学補償フィルムの製造方法を提供する。
【0034】
具体的に本発明は、基材フィルム上に配向膜を形成する段階と、前記配向膜の上部に、化学式1の化合物を含むネマチック液晶化合物を含む液晶溶液をコーティングして、ハイブリッド液晶配向構造を有するフィルムを形成する段階と、形成した前記フィルムに50〜150℃において紫外線を照射して、化学式1の化合物を含むネマチック液晶化合物が、配向膜面から厚さ方向に徐々に変化するハイブリッド配向を有するように、ハイブリッド液晶配向構造を固定する段階と、を含む光学補償フィルムの製造方法を提供する。
【0035】
前記の方法で製造された本発明の前記光学補償フィルムは、基材層;前記基材層の上部に配向膜層;及び、配向膜層の上部に、化学式1の化合物を含有するネマチック液晶化合物が含まれたコーティング層;を含む。
【0036】
本発明の光学補償フィルムを製造するために、基材フィルムに配向溶液をコーティングした後、乾燥して配向膜を形成する段階を含んでもよい。
【0037】
本発明は、前記基材層、即ち基材フィルムが透明であることを特徴とするが、光透過率が80%以上あれば透明であるとする。本発明の基材層は、ガラス、オレフィン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、エステル系樹脂、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリスルホン、これらの混合物及び共重合体からなる群から選択されてもよく、例として、セルロースエステル(cellulose ester)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリスルホン(polysulfone)、ポリエーテルスルホン(polyether sulfone)、ポリアクリレート(polyacrylate)、ポリメタクリレート(polymethacrylate)又はノルボルネン樹脂などを挙げることができる。より具体的には、トリアセチルセルロース(triacetyl cellulose;TAC)、ポリエチレンテレフタレートなどのフィルム形態のものを挙げることができる。
【0038】
前記基材層、即ち基材フィルムの厚さは、20〜500μmであることが好ましく、40〜200μmであることがより好ましい。また、基材層を延長して光学異方性を付与したものであってもよく、セルロースエステルフィルムの場合、リタデーション上昇剤を添加してもよく、基材層にグロー放電、コロナ放電、紫外線処理、フレーム処理、アルカリ処理、酸処里などを行ったり粘着層を付与してもよい。
【0039】
前記基材フィルムの上部に配向膜を形成する段階を有してもよく、本発明の配向膜は、ポリイミド、ポリスチレン系重合体、ゼラチン、ポリビニルアルコール系重合体、これらの混合物及び共重合体からなる群から選択される樹脂を含むことを特徴とし、ポリビニルアルコール系重合体を用いることがより好ましい。
【0040】
本発明の配向膜は、溶液状で基材フィルムの上部にコーティングして乾燥した後、磁場付与、光処理又はラビング処理を行って形成されてもよい。配向膜の形成に用いられる樹脂は、0.1〜10重量%含まれる溶液であってもよく、配向調節機能を有する添加剤が含まれてもよい。
【0041】
前記溶液を前記基材フィルムに塗布して、バーコーティング、グラビアコーティング、ダイコーティング又はロールコーティング、メニスカスロールコーティングなどの方法によりコーティングした後、40〜200℃、好ましくは50〜100℃で乾燥し、ラビング処理を行って本発明の配向膜層を提供する。
【0042】
その後、前記形成された配向膜の上部に2つ以上のメソゲンが一定の結合角を有する化学式1の化合物を含むネマチック液晶化合物が含まれた溶液をコーティングしてフィルムを形成する段階を有してもよい。
【0043】
[化学式1]
[A]m−B−[A´]n
【0044】
上記式中、
m及びnは、互いに独立して1〜12から選択された自然数であり、
A及びA´は、ディスコチック型又は棒状のメソゲンであって、互いに同一であるか異なっており、
Bは、幾何学的に一定の結合角を維持する官能基である。
【0045】
前記A´とA´やAとAは、二つのメソゲン間の直接結合により連結されるか、スペーサ(spacer)を介して連結されてもよく、二つのメソゲンが線形結合されることが好ましい。
【0046】
前記2つ以上のメソゲンが一定の結合角を有する化合物を含むネマチック液晶化合物は、それぞれのメソゲンが、全てディスコチック型又は棒状であるかこれらの混合形態であることを特徴とし、ディスコチック型を含む形態が好ましく、2つ以上のメソゲン全てがディスコチック型であることがより好ましい。前記の形態から選択された2つ以上のメソゲンを連結したネマチック液晶化合物を添加することにより、視野角補償だけでなく、色ずれが改善された光学補償フィルムを得ることができる。前記2つ以上のメソゲンが連結され一定の角度を維持して光照射により液晶配向を安定的に固定して光学異方性を得ることができる。
【0047】
前記2つ以上のメソゲンが一定の結合角を有する化合物を含むネマチック液晶化合物の例として下記化学式3の化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0048】
[化学式3]

【0049】
上記式中、
〜Rは、互いに独立して、(C1−C14)アルキル、(C1−C14)アルコキシ、(C1−C14)アルキルカルボニル、(C6−C20)アリール、(C6−C20)アリールカルボニル、(C1−C14)アルコキシカルボニル、(C6−C20)アリールオキシカルボニル、カルバモイル、スルファモイルを表し、前記R〜Rのアルキル、アルキルカルボニルのアルキル及びアルコキシ、アルコキシカボニルのアルコキシは、直鎖又は分岐鎖の、飽和又は不飽和結合を含んでもよく、前記R〜Rのアルキル、アリール、アルカノイル、アルケノイル、アルキノイル、アリーロイル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルバモイル、スルファモイルはハロゲン、シアノ、及びヒドロキシルからなる群から選択された一つ以上の置換基によってさらに置換されてもよい。
【0050】
さらに具体的に、上記式中、R〜Rは、互いに独立して、(C1−C14)アルキル、(C6−C20)アリール、(C1−C14)アルカノイル、(C3−C20)アルケノイル、(C3−C20)アルキノイル、(C7−C20)アリーロイル、(C1−C14)アルコキシカルボニル、(C6−C20)アリールオキシカルボニル、カルバモイル、スルファモイルを表し、前記R〜Rのアルキル、アリール、アルカノイル、アルケノイル、アルキノイル、アリーロイル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルバモイル、スルファモイルはハロゲン、シアノ、及びヒドロキシルからなる群から選択された一つ以上の置換基によってさらに置換されてもよい。
【0051】
前記液晶類の合成法については、J.Am.Chem.Soc.,1985,Vol.107,4192;Tetrahedron Lett.,Vol.23,1913,1982;J.Org.Chem.2000,Vol.65,1650;及びJ.Am.Chem.Soc.,2005、Vol.127,534などに説明されている。
【0052】
前記2つ以上のメソゲンが一定の結合角を有する化合物が含まれたネマチック液晶化合物を含有する溶液は、液晶化合物が全体溶液に1〜30重量%含まれることを特徴とする。前記液晶化合物の含量が1重量%未満の場合、フィルムの光補償又は色ずれ現象が改善される効果が非常に小さく、30重量%を超える場合、超過したほどの上昇効果が顕著に発現しないため、材料の浪費をもたらす。
【0053】
前記コーティング厚さは、0.5〜10μmになるように形成することが好ましい。
【0054】
本発明の液晶化合物は、前記配向膜の上部に塗布してコーティングする方法として、バーコーティング、グラビアコーティング、ダイコーティング、ロールコーティング又はメニスカスロールコーティングを用いるが、これに限定されるものではない。
【0055】
その後、前記形成された液晶化合物が含まれたフィルムに50〜150℃において紫外線を照射する段階を行って、本発明の光学補償フィルムを製造することができる。
【0056】
このように製造されたフィルムは、二つのメソゲンが連結された液晶の方向が、厚さ方向によって徐々に変化する形態を有する。液晶の方向が厚さ方向の軸に沿って徐々に変化するハイブリッド配向は、配向膜層の親水性(hydrophilicity)調節と乾燥条件の微細調節を通じて得ることができる。その形態は図1に示されており、ねじれネマチック(TN)液晶セルのロード液晶の光学異方性を補償層のハイブリッド型液晶が補償して光補償効果を得る。
【発明の効果】
【0057】
上記のように本発明の光学補償フィルムは、二つ以上のメソゲンを含む液晶化合物を使用し、またハイブリッド配向を行うことにより優れた視野角補償効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に対する液晶のハイブリッド構造及び光補償原理の概略図である。
【図2】本発明の好ましい一実施例による光学補償フィルムの位相差の結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、下記実施例を通じて本発明をより具体的に説明するが、これに本発明の範疇が限定されるものではない。
【0060】
[製造例1]
ヘプトキシカルボニルメチル置換されたポルフィリンを、1,3−フェニレンスペーサ(phenylene spacer)を用いてAg(I)−promoted coupling方法を通じて下記の液晶化合物を得た(J.Am.Chem.Soc.,1985、Vol.107,4192参照)。

【0061】
[実施例1]
厚さ60μmのトリアセチルセルロース(Triacetyl cellulose;TAC)フィルム上に、ポリビニルアルコールを用いて2μmの厚さでコーティングした。用いられたTACフィルムのRは3.5nmであり、Rthは45nmである。ここでRは、(n−n)×dに定義され、Rthは{1/2(n+n)−n}×dである。ここで、nは、フィルム厚さに垂直である平面の一方向に振動する光の屈折率であり、nは、フィルム厚さに垂直である平面においてx方向に垂直である方向に振動する光の屈折率であり、dは、フィルム厚さである。PVAコーティング液を構成するために、2種類のPVAを混合して使用した。PVAコーティング液の親水性(hydrophilicity)を調節するために、R1130(クラレケミカル株式会社製、アルキル基置換PVA)0.75gと、アルドリッチ社製の試薬用PVA(置換度87%)0.75gを3次蒸留水(double−distilled and deionized water)75g、メタノール24g、グルタルアルデヒド50%水溶液0.15g、0.5モル濃度の硫酸1.1gと交ぜて、PVA水溶液を製造した。TACフィルムとPVA配向膜の接着力を増大させるために、NaOHとKOHの割合が9:1であり、12重量%である水溶液を製造してTACフィルムを2分間浸漬した後、取り出して水で洗浄し、80℃の乾燥オーブンにて乾燥した。16番マイヤーバーを用いて前記のPVA溶液を前記の表面処理されたTACフィルムにコーティングし、60℃で90秒間乾燥して2分間冷却した後、80℃で150秒間乾燥して配向膜を製造した。
【0062】
配向膜表面をラビング装置(Rubbing Machine、meerecompany)を用いてTACフィルムの光軸に対して45°角度でラビング処理(rubbing)を行った。前記ラビング(Rubbing)を行った配向膜に、製造例1の液晶化合物を10%含むコーティング溶液を用いて液晶コーティングフィルムを得た。前記液晶溶液は、前記製造例1の液晶化合物2gと光重合開始剤(Irgacure907、Ciba‐Geigy社製)0.01gと、メチルエチルケトン18gを溶解して得た。この溶液を用いて10番マイヤーバーで膜厚が2μmになるようにコーティングし、液晶のハイブリッド配向形成と維持のために、液晶コーティング表面の上に層流を取り入れ、この層流の強弱を微細調整した。このようにコーティングしたフィルムを紫外線装置(UV Curing machine、(株)APO)に移動させ130℃で150秒間液晶を硬化して液晶の配向状態を固定した。液晶コーティングフィルムをミクロトーム法により断面を得、染料であるOSOを用いて染色し、TEMを用いて染色された部分を観察した。また、染色された部分の配向度を通じて液晶がハイブリッド型に配向されていることを間接的に確認することができた。
【0063】
また、前記製造されたフィルムの位相差を複屈折測定装置(KOBRA−WPR、Oji Scientific Instrument製)を用いて波長589nmの光を入射角を変更させながら測定した、その結果は図2に示した。図2の入射角による位相差の変化程度は、液晶のハイブリッド配向により液晶の負の位相差がよく発現されたことを示している。その結果、本発明の液晶コーティングフィルムは、入射角による位相差の変化パターンと位相差値を見ると、視野角補償効果が卓越していることを確認することができる。
【0064】
本発明の単純な変形乃至変更は、全て本発明の領域に属するものであって、本発明の具体的な保護範囲は、添付の特許請求範囲によって明確になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド配向を有するコーティング層を含む液晶表示装置用光学補償フィルムであって、前記ハイブリッド配向において、化学式1で表される化合物を含有するネマチック液晶化合物の配向が、配向膜表面から厚さ方向に徐々に変化することを特徴とする液晶表示装置用光学補償フィルム。
[化学式1]
[A]−B−[A´]
(上記式中、
m及びnは、互いに独立して1〜12から選択された自然数を表し、
A及びA´は、互いに同一であるか異なって、それぞれディスコチック型又は棒状のメソゲンを表し、
前記A´とA´、又はAとAは、二つのメソゲン間の直接結合により連結されるか、スペーサー(spacer)を介して連結され、
Bは、幾何学的に一定の結合角を維持する官能基である。)
【請求項2】
AとA、又はA´とA´が、互いに直線的に結合されており、
Bが、結合角の変化のない官能基であることを特徴とする請求項1に記載の光学補償フィルム。
【請求項3】
Bが、


から選択されることを特徴とする請求項2に記載の光学補償フィルム。
【請求項4】
A又はA´が、化学式2で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の光学補償フィルム。
[化学式2]


(上記式中、
〜Rは、互いに独立して、(C1−C14)アルキル、(C1−C14)アルコキシ、(C1−C14)アルキルカルボニル、(C6−C20)アリール、(C6−C20)アリールカルボニル、(C1−C14)アルコキシカルボニル、(C6−C20)アリールオキシカルボニル、カルバモイル、スルファモイルを表し、
前記R〜Rのアルキル、アルキルカルボニルのアルキル及びアルコキシ、アルコキシカルボニルのアルコキシは、直鎖又は分岐鎖の、飽和又は不飽和結合を含んでもよく、
前記R〜Rのアルキル、アリール、アルカノイル、アルケノイル、アルキノイル、アリーロイル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルバモイル、スルファモイルは、ハロゲン、シアノ、及びヒドロキシルからなる群から選択された一つ以上の置換基によってさらに置換されてもよい。)
【請求項5】
基材層と、
前記基材層の上部に設けられた配向膜層と、
前記配向膜層の上部に設けられた、ハイブリッド配向を有するコーティング層と、
を含むことを特徴とする光学補償フィルム。
【請求項6】
基材層が、ガラス、オレフィン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン(polyether sulfone)、ポリアクリレート(polyacrylate)、ポリメタクリレート(polymethacrylate)、ノルボルネン樹脂、トリアセチルセルロース(triacetyl cellulose;TAC)及びポリエチレンテレフタレート並びにこれらの混合物及びこれらの共重合体からなる群から選択されることを特徴とする請求項5に記載の光学補償フィルム。
【請求項7】
配向膜層が、ポリイミド、ポリスチレン系重合体、ゼラチン及びポリビニルアルコール系重合体並びにこれらの混合物及びこれらの共重合体からなる群から選択されることを特徴とする請求項5に記載の光学補償フィルム。
【請求項8】
配向膜層が、ポリビニルアルコール系重合体であることを特徴とする請求項7に記載の光学補償フィルム。
【請求項9】
基材フィルム上に配向膜を形成する段階と、
前記配向膜の上部に、化学式1の化合物を含有するネマチック液晶化合物を含む液晶溶液をコーティングして、ハイブリッド液晶配向構造を有するフィルムを形成する段階と、
形成した前記フィルムに50〜150℃において紫外線を照射して、ハイブリッド液晶配向構造を固定する段階と、
を含む光学補償フィルムの製造方法。
[化学式1]
[A]−B−[A´]
(上記式中、
m及びnは、互いに独立して1〜12から選択された自然数を表し、
A及びA´は、互いに同一であるか異なって、それぞれディスコチック型又は棒状のメソゲンを表し、
Bは、幾何学的に一定の結合角を維持する官能基である。)
【請求項10】
配向膜にラビング処理を行うことを特徴とする請求項9に記載の光学補償フィルムの製造方法。
【請求項11】
液晶溶液が、液晶化合物を溶液全体の1〜30重量%含むことを特徴とする請求項10に記載の光学補償フィルムの製造方法。
【請求項12】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光学補償フィルムを含む偏光板。
【請求項13】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光学補償フィルムを用いる液晶ディスプレイ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2012−519301(P2012−519301A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551980(P2011−551980)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際出願番号】PCT/KR2010/001179
【国際公開番号】WO2010/098594
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(511055337)エスケー イノベーション シーオー.,エルティーディー. (4)
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO., LTD.
【Fターム(参考)】