説明

2導体スペーサ取付け工法

【課題】大規模な架設対策を必要とせず架空送電線の径間捻回を防止できる、簡易な2導体スペーサの取付け工法を提供する。
【解決手段】鉄塔間に架設された2本の架空送電線に、所定の間隔を保持して複数個の2導体スペーサを配設する2導体スペーサ取付け工法であって、2本の架空送電線10の径間長Sを基に、所定の間隔dを割り付けて複数個の2導体スペーサの取付け位置を決定し、両方の鉄塔A,Bから径間長Sの1/4の長さの箇所に最も近い取付け位置に、可撓式2導体スペーサ30をそれぞれ配設し、他の全ての取付け位置に、固定式2導体スペーサ20をそれぞれ配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空送電線間に配設されるスペーサの取付け工法に係り、より詳しくは、径間捻回を防止できる2導体スペーサ取付け工法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄塔などに架設された架空送電線により交流電力を送電する場合、各々の架空送電線は、互いに接触しないように各送電線間にはスペーサが取付けられる。これにより、各送電線間は送電電圧に応じた所定の距離に保持され、衝突、接触などの事故を事前に防止することができる。
【0003】
図4は、従来の2導体スペーサの取付けを示すスペーサ取付け図である。図4において、径間長Sを有して設置された鉄塔A、B間に架空送電線10が架設されている。この架設された2本の架空送電線10は、所定の間隔に配設されたスペーサ40により把持され、互いの距離が一定に保持されている。ところで、架空送電線10に着氷雪が不均一に発生すると、捩れモーメントが生じ、さらに風圧が加わると、2本の架空送電線10を捻回させることがある。
【0004】
図4aにおいて、相捻回について説明する。図4aの破線で示される部分が、相捻回を生じた箇所であり、スペーサ間で架空送電線10が接触する事故となっている。この事故を防ぐためには、スペーサ間隔を短くして復元特性をよくすることにより、防止できる。図4bにおいて、径間捻回について説明する。図4bの破線で示される部分が、径間捻回を生じた箇所であり、数個のスペーサに渡って捻回が生じている。この場合は、架空送電線10は接触しないため、電線が損傷することはないが、電線を把持するスペーサクランプ部に荷重が加わり、径間捻回復元に停電を要するなど、保守上の問題がある。
【0005】
この問題を解決するため、非特許文献1において、径間捻回が自然復元する径間長の解析が行われ、自然復元する最大径間長を求める理論式が求められている。これによると、復元臨界径間長Sc、張力W、電線の単位長質量w、径間の電線弾性力EA、復元限界線路常数Mc、電線外径D、素導体間隔aとしたとき、
Sc=(2T/w)・(6TMc/EA)1/2 (1)
Mc≒[1+2.5(D/a)]/[0.25+0.781(D/a)] (2)
と記載されている。
【0006】
ところで、上式を基に復元臨界径間長Scをできるだけ長くできるよう試み、径間長Sを決定し、設置された鉄塔A、Bに非可動型ヨークによる架空電線10の架設を行う場合、耐長碍子装置のヨーク構造の変更を生じるなど、大規模な架設対策を必要とする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】松林義教、他、多導体方式架空想電線のスペーサ間隔の研究、住友電気工業、技術資料、8D−4140、1974
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、大規模な架設対策を必要とせず架空送電線の径間捻回を防止できる、簡易な2導体スペーサの取付け工法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の2導体スペーサ取付け工法は、鉄塔間に架設された2本の架空送電線に、所定の間隔を保持して複数個の2導体スペーサを配設する2導体スペーサ取付け工法であって、2本の架空送電線の径間長を基に、所定の間隔を割り付けて2導体スペーサの取付け位置を決定し、両方の鉄塔から径間長の1/4の長さの箇所に最も近い取付け位置に、可撓式2導体スペーサをそれぞれ配設し、他の全ての取付け位置に、固定式2導体スペーサをそれぞれ配設することを特徴とする。
【0010】
本発明の2導体スペーサ取付け工法は、鉄塔間に架設された2本の架空送電線に、所定の間隔を保持して複数個の2導体スペーサを配設する2導体スペーサ取付け工法であって、2本の架空送電線の径間長を基に、所定の間隔を割り付けて2導体スペーサの取付け位置を決定し、両方の鉄塔から径間長の1/4の長さの箇所に最も近い取付け位置と、該取付け位置に隣接する両方の鉄塔側の取付け位置とに、可撓式2導体スペーサをそれぞれ配設し、他の全ての取付け位置に、固定式2導体スペーサをそれぞれ配設することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、大規模な架設対策を必要とせず架空送電線の径間捻回を防止できる、簡易な2導体スペーサの取付け工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の2導体スペーサの取付け工法によるスペーサの取付け図。
【図2】可撓式2導体スペーサの構成を示す構成図。
【図3】固定式2導体スペーサの構成を示す構成図。
【図4】従来の2導体スペーサの取付けを示すスペーサ取付け図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0013】
本発明における実施の形態について、図を用いて説明する。図1は、本発明の2導体スペーサの取付け工法によるスペーサの取付け図である。まず、可撓式2導体スペーサ30が1本ずつ用いられる場合を説明する。図1aにおいて、鉄塔A、B間に2本の架空送電線10を架設する。2本の架空送電線10の径間長Sを基に、所定の間隔dを割り付けて複数個の2導体スペーサの取付け位置を決定する。つぎに、両方の鉄塔A,Bから径間長Sの1/4の長さの箇所Pに最も近い取付け位置に、可撓式2導体スペーサ30をそれぞれ配設する。つぎに、他の全ての取付け位置に、固定式2導体スペーサ20をそれぞれ配設する。図1においては、両方の鉄塔A,Bから径間長Sの1/4の長さの箇所Pとそれに最も近い取付け位置とが、重なった場合を示している。
【0014】
これらのスペーサの配設手順は、上記手順に限定されるものではない。また、既に固定式2導体スペーサ20が取付けられている径間に対しては、両側の鉄塔A、Bから、それぞれ最もS/4の距離に近い位置の固定式2導体スペーサ20が、可撓式2導体スペーサ30に交換される。
【0015】
つぎに、可撓式2導体スペーサ30が2本ずつ用いられる場合を説明する。図1bにおいて、鉄塔A、B間に2本の架空送電線10を架設する。2本の架空送電線10の径間長Sを基に、所定の間隔dを割り付けて2導体スペーサの取付け位置を決定する。つぎに、両方の鉄塔A,Bから径間長Sの1/4の長さの箇所に最も近い取付け位置と、該取付け位置に隣接する両方の鉄塔側の取付け位置とに、可撓式2導体スペーサ30をそれぞれ配設し、他の全ての取付け位置に、固定式2導体スペーサ20をそれぞれ配設する。
【0016】
これらのスペーサの配設手順は、上記手順に限定されるものではない。また、既に固定式2導体スペーサ20が取付けられている径間に対しては、両側の鉄塔A、Bから、それぞれ最もS/4の距離に近い位置の固定式2導体スペーサ20と、該固定式2導体スペーサ20に隣接する両方の鉄塔側の固定式2導体スペーサ20とが、可撓式2導体スペーサ30に交換される。
【0017】
図2は、可撓式2導体スペーサの構成を示す構成図である。図2において、可撓式2導体スペーサ30は、架空送電線10を把持する導体把持部50とスプリング等の可撓型連結体60とから構成されている。これにより可撓式2導体スペーサ30は、把持した2本の架空送電線10の風や着氷雪による捻回力に応じて曲げられる。図3は、固定式2導体スペーサの構成を示す構成図である。図3において、固定式2導体スペーサ20は、架空送電線10を把持する導体把持部50と棒状の固定型連結体50とから構成されている。これにより固定式2導体スペーサ20は、把持した2本の架空送電線10の風や着氷雪による捻回力を受けても曲げられることはない。
【0018】
このように配設された可撓式2導体スペーサ30は、把持した2本の架空送電線10の風や着氷雪による捻回力に応じて曲げられて、2本の架空送電線10の電線の間隔aを部分的に狭めることになり、式(2)の復元限界線路常数Mcを部分的に大きくすることになる。これにより、式(1)の復元臨界径間長Scが部分的に長くなり、径間捻回を復元する要因となる。
【0019】
以上説明したように、両方の鉄塔A、Bから、2本の架空送電線の10の径間長の1/4の長さの箇所Pに最も近い取付け位置に、可撓式2導体スペーサ30をそれぞれ配設するか、または、2本の架空送電線の10の径間長の1/4の長さの箇所Pに最も近い取付け位置と、該取付け位置に隣接する両方の鉄塔側の取付け位置とに、可撓式2導体スペーサ30をそれぞれ配設し、残りの全ての取付け位置に固定式2導体スペーサ20を配設することにより、大規模な架設対策を必要とせず架空送電線の径間捻回を防止する簡易な2導体スペーサの取付け工法を提供することが可能となる。また、従来の工法により既設されている架空送電線の場合には、上記の可撓式2導体スペーサ30を取付ける位置にある固定式2導体スペーサ20を可撓式2導体スペーサ30に交換するだけでよい。
【符号の説明】
【0020】
10 架空送電線
20 固定式2導体スペーサ
30 可撓式2導体スペーサ
40 従来の2導体スペーサ
50 導体把持部
60 可撓型連結体
70 固定型連結体
A、B 鉄塔
S 径間長
d 所定の間隔
P 鉄塔から径間長の1/4の長さの箇所
a 電線の間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄塔間に架設された2本の架空送電線に、所定の間隔を保持して複数個の2導体スペーサを配設する2導体スペーサ取付け工法であって、
前記2本の架空送電線の径間長を基に、前記所定の間隔を割り付けて前記複数個の2導体スペーサの取付け位置を決定し、
両方の前記鉄塔から前記径間長の1/4の長さの箇所に最も近い前記取付け位置に、可撓式2導体スペーサをそれぞれ配設し、
他の全ての前記取付け位置に、固定式2導体スペーサをそれぞれ配設することを特徴とする2導体スペーサ取付け工法。
【請求項2】
前記径間長の1/4の長さの箇所に最も近い前記取付け位置と、該取付け位置に隣接する前記両方の鉄塔側の前記取付け位置とに、前記可撓式2導体スペーサをそれぞれ配設することを特徴とする請求項1に記載の2導体スペーサ取付け工法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−70560(P2012−70560A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213978(P2010−213978)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000117010)旭電機株式会社 (127)
【Fターム(参考)】