説明

2層構造型伝導性タイル材

【課題】耐摩耗性を極大化して摩耗粒子の発生を最大限に抑制し、伝導性タイルと同等以上の帯電防止特性を保有し、伝導性タイル固有の色相を80%以上発現することが可能な2層構造型伝導性タイル材を提供する。
【解決手段】本発明によれば、帯電防止特性、高耐摩耗性及び透明性を有する水溶性光硬化型樹脂組成物がコーティングされた2層構造型伝導性タイル材が提供される。本発明に係るタイル材は、耐摩耗性を極大化して摩耗粒子の発生を最大限に抑制し、伝導性タイルと同等以上の帯電防止特性を保有し、伝導性タイル固有の色相を80%以上発現することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2層構造型伝導性タイル材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品及び半導体の高集積化によって、静電気発生による製品不良が大きな問題になる。したがって、静電気による被害を最小化するための多くの努力がなされている。電子部品の製造、組立、包装、運搬過程で作業者や包装材料及び各種機器などの作業環境から発生する静電気と、このような静電気により電子製品及び部品に付着するホコリなどの粒子は、電子製品及び部品の不良を招く大きな原因になる。したがって、電子部品の製造や組立の際に必要とする保管及び運搬ケース、そして作業場の床を含んだ全ての周囲環境は、帯電防止機能を有しなければならない。
【0003】
電子部品及び半導体製造環境を保護するためにクリーンルームを利用してホコリなどの粒子を除去することが一般的である。それにも拘わらず、既存のゴムや塩化ビニール樹脂などで製作するクリーンルーム用伝導性タイル材は運搬する装備や他の物体により摩耗粒子が発生しやすく、クリーンルームとしての本来の役割をすることができない短所がある。
【0004】
以下に示す特許文献1及び特許文献2などに開示された伝導性床材は、カーボンブラックを適用したものや、またはカーボン製織が含まれている原糸で製織した製織層などを通じて、帯電防止特性を与えた伝導性タイル材である。しかし、このような伝導性タイル材は、ゴムまたは塩化ビニール樹脂などのプラスチックで製造する伝導性タイルの耐摩耗特性の限界によって、摩耗粒子が必然的に発生する。したがって、環境親和的でないだけでなく、電子製品及び部品などの誤作動と作動不良を招く恐れがある。
【0005】
また、以下に示す特許文献3〜特許文献5などに開示された光硬化型樹脂組成物は、帯電防止特性と耐摩耗性などの主な特性を有しているが、伝導性微粒子の過充電によって、アクリルレートなどからなるオリゴマーの透明性を与えることができない。
【0006】
【特許文献1】韓国特許登録第10−0427554号公報
【特許文献2】韓国特許登録第10−0589279号公報
【特許文献3】韓国特許登録第10−0062233号公報
【特許文献4】韓国特許登録第10−0013946号公報
【特許文献5】韓国特許公開第10−7013227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的は、耐摩耗性を極大化して摩耗粒子の発生を最大限に抑制し、伝導性タイルと同等以上の帯電防止特性を保有し、伝導性タイル固有の色相を80%以上発現することが可能な、新規かつ改良された2層構造型伝導性タイル材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、帯電防止特性、高耐摩耗性及び透明性を有する水溶性光硬化型樹脂組成物がコーティングされた、2層構造型伝導性タイル材が提供される。
【0009】
前記水溶性光硬化型樹脂組成物の厚さが、溶媒の完全乾燥後5〜20μmであってもよい。
【0010】
前記水溶性光硬化型樹脂組成物は、伝導性微粒子5〜15質量%と、ヒュームドシリカ(fumed silica)0.1〜5質量%と、水溶性アクリルレート系オリゴマー20〜50質量%と、単官能または多官能モノマー20〜75質量%と、光重合開始剤0.1〜5質量%と、密着性向上剤、消泡剤、平滑剤(leveling agent)、湿潤分散剤、安定剤及び微粒子分散剤の中から選択される少なくとも1種類の添加剤0.1〜5質量%と、を含み、溶媒として使用する純水(pure water)と、前記成分の合計との質量比は、100:50〜100:150であってもよい。
【0011】
前記伝導性微粒子は、カーボンナノチューブを0〜80質量%を含んでもよい。
【0012】
前記カーボンナノチューブは、単一壁、2重壁及び多重壁カーボンナノチューブを、硝酸、硫酸、硝酸と硫酸の混合溶液、過酸化水素及び過酸化水素と水酸化アンモニウムの混合溶液とからなる群から選択された強酸または強塩基で処理したカーボンナノチューブ、イミダゾール、アミン及びアクリルからなる群から選択された有機物で表面を改質したカーボンナノチューブ、400℃以上の温度で2時間以上熱処理したカーボンナノチューブ、または、いずれの処理も施されていないカーボンナノチューブの中から選択されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水溶性光硬化型樹脂組成物をコーティングした2層構造型伝導性タイル材は、耐摩耗性、帯電防止特性、及び床材の色相を80%以上発現できる特性を提供する。またカーボンナノチューブと伝導性微粒子をさらに含有する本発明の水溶性コーティング組成物は純水を溶媒として使用することによって、環境親和的であり、作業時有害性がなく、摩耗による微細ホコリ粒子の発生を極小化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
本発明は、耐摩耗性及び透明性に優れ、帯電防止特性を有する水溶性光硬化型樹脂がコーティングされた伝導性ハードタイル材に関するものである。より詳細には、伝導性タイル材の表面を、水溶性光硬化型帯電防止ハードコーティング組成物を5〜20μmの厚さでコーティングした2層構造形態を有し、水溶性光硬化型樹脂組成物には、耐摩耗性、帯電防止特性及び透明性を与えることによって、外部の摩耗や衝撃から伝導性タイル表面を保護し、静電気発生を抑制すると共に、伝導性タイル材の色相を、80%以上透過できるように製作した2層構造型伝導性タイル材、特に床材用のタイル材に関する。
【0016】
ここで使用する光硬化型帯電防止コーティングは、そのコーティング層の厚さが5〜20μm程度と非常に薄くコーティングされ、かつ水溶性であるので、環境親和的であり、コーティング作業時人体に無害な環境を同時に提供する。
【0017】
前述した目的を達成するために、本発明は、一般的に知られている水溶性光硬化型樹脂組成物に準ずる造成として、PRS−801を利用してASTM F150により測定した電気抵抗値が10Ω(ohm)以下、ASTM D3389により測定した摩耗量が0.1g以下を示し、全体組成物において、伝導性微粒子5〜15質量%、伝導性微粒子のうちカーボンナノチューブの含量が0〜80質量%、ヒュームドシリカ0.1〜5質量%を成分として含む水溶性光硬化型樹脂組成物を、伝導性タイルに5〜20μmの厚さにコーティングすることによって、2層積層構造の伝導性タイル材を製造した。
【0018】
より具体的には、本発明に係る水溶性光硬化型帯電防止樹脂組成物は、帯電防止特性、高耐摩耗性及び透明性を有する水溶性光硬化型樹脂組成物がコーティングされたことを特徴とする。
【0019】
ここで、前記水溶性光硬化型樹脂組成物の厚さが、溶媒の完全乾燥後5〜20μmであることが好ましい。
【0020】
また、前記水溶性光硬化型樹脂組成物は、伝導性微粒子5〜15質量%、ヒュームドシリカ(fumed silica)0.1〜5質量%、水溶性アクリルレート系オリゴマー20〜50質量%、単官能または多官能モノマー20〜75質量%、光重合開始剤0.1〜5質量%、及び、密着性向上剤、消泡剤、平滑剤(leveling agent)、湿潤分散剤、安定剤及び微粒子分散剤などの添加剤0.1〜5質量%で構成され、溶媒として使用する純水(pure water)は、前記成分の合計との質量比で、100:50〜100:150であることが好ましい。
【0021】
さらに、伝導性微粒子は、カーボンナノチューブを、伝導性微粒子に対して、0〜80質量%含むことが好ましい。
【0022】
さらに、前記カーボンナノチューブは、単一壁、2重壁及び多重壁カーボンナノチューブを窒酸(硝酸)、硫酸、窒酸と硫酸の混合溶液、過酸化水素及び過酸化水素と水産化アンモニウムの混合溶液などの強酸や強塩で処理したもの、イミダゾール、アミン及びアクリルなどの有機物で表面を改質したもの、400℃以上の温度で2時間以上熱処理したもの、またはどんな処理も施さず元の状態を有するものなどであることが好ましい。
【0023】
本発明に係る耐摩耗性及び透明性の水溶性光硬化型帯電防止組成物がコーティングされた2層積層構造の伝導性タイル材は、半永久的な帯電防止特性を与えることができ、優れた耐摩耗性と透明性を有する。本発明におけるコーティング組成物は、水溶性の溶媒として純水を使用することができるので、環境親和的であり、作業時人体にも無害である。また帯電防止特性及び耐摩耗性に優れるので、この組成物を各種伝導性タイル材に塗布した後硬化させた場合、伝導性タイル材固有の物理的性質を維持または向上させると共に、耐久性に優れた帯電防止特性を有する。その上、特に伝導性タイル材から発生するホコリ粒子の発生を最大限に抑制できる。
【0024】
次に、本発明の2層構造型伝導性タイル材についてより詳細に説明する。
【0025】
(1)水溶性光硬化型帯電防止樹脂組成物
本発明における水溶性光硬化型帯電防止樹脂組成物は、次のような成分の組成比で構成されている。
【0026】
1.伝導性微粒子:5〜15質量%
2.伝導性微粒子のうちカーボンナノチューブの含量:0〜80質量%
3.ヒュームドシリカ:0.1〜5質量%
4.水溶性アクリルレート系オリゴマー:20〜50質量%
5.単官能または多官能のアクリルレート系モノマー:20〜75質量%
6.光重合開始剤:0.1〜5質量%
7.密着性向上剤、消泡剤、平滑剤、湿潤分散剤、安定剤及び微粒子分散剤などの添加剤:0.1〜5質量%
8.溶媒として使用する純水:前述の1〜7項成分の合計を100とする時、100:(50〜150)の質量比
【0027】
伝導性微粒子は、カーボンナノチューブ以外に、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、スズドープ酸化インジウム(ITO)、及びアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)などを含むことができる。伝導性微粒子の粒径は、例えば、5〜200nm範囲の大きさを有し、好ましくは、平均粒径が50nm以下であり、全体粒子の60%以上が100nm以内の粒径を有する分布をなすことがよい。
【0028】
伝導性微粒子の大きさが前述した条件の範囲を超える場合、粒子は光の散乱を誘発して、被膜の透明性をなくすようになる。
【0029】
カーボンナノチューブは、単一壁(single wall)、2重壁(double wall)及び多重壁(multi wall)のカーボンナノチューブを全て使用することができ、伝導性微粒子のうちカーボンナノチューブの含量は、例えば、0〜80質量%を含むことが好ましい。カーボンナノチューブの含量が伝導性微粒子の含量うち80質量%以上である場合は、UV分光計で測定時、透明度を80%以上確保することができない。カーボンナノチューブは、窒酸(硝酸)、窒酸(硝酸)と硫酸の混合、過酸化水素、過酸化水素及び水産化アンモニウムなどのような強酸または強塩水溶液で処理したもの、イミダゾール、アミン、アクリルなどの有機物で表面を改質したもの、400℃以上の温度で2時間以上熱処理したもの、またはどんな処理も施さず元の状態を有するものなど、いずれを使用してもその特性を発揮できる。しかしながら、強酸または強塩で処理したものが好ましく、最小の含量で最大の効果を得ることができるので、表面改質したカーボンナノチューブがより好ましい。
【0030】
本発明において使用するヒュームドシリカは、平均凝集サイズが例えば0.2μm以下であるものを使用し、全体組成物に対して0.1〜5質量%を含むことが好ましい。シリカの含量が0.1質量部以下である場合は、充分な耐摩耗性が得られない。また、5質量部以上である場合は、組成物の粘度が上昇して、伝導性タイルに対するコーティング性を低下させる。
【0031】
残りの成分は、水溶性光硬化型樹脂組成物を構成するための成分である。
【0032】
例えば、水溶性アクリルレート系オリゴマーは、光硬化型樹脂組成物の主成分をなすもので、最終硬化物の性能を決定する。本発明では、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)を主鎖とするウレタンアクリルレート、エポキシアクリルレート、シリコンアクリルレート、ポリエステルアクリルレートなどを、特性と用途に合わせて使用することができる。このような水溶性アクリルレートオリゴマーは、官能基数が多いほど耐摩耗性が向上するが、塗膜形成が容易でない。好ましくは、3官能の水溶性アクリルレート系オリゴマーを、例えば、20〜50質量%使用することがよい。
【0033】
水溶性単官能または多官能モノマーは、単官能と多官能の混合比率を(0〜50):(100〜50)の割合で、20〜75質量%程度を使用することがよい。その代表的な例として、例えば、単官能基のカプロラクトンアクリレート、2官能基のヘキサンジオールジアクリレート、3官能基のトリメチルオールプロピルトリアクリレート、多官能基のジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどを使用することができる。
【0034】
光重合開始剤は、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノンなどを、0.15質量%程度使用することができる。
【0035】
密着性向上剤として使用する界面結合剤は、例えば、アミン、エポキシ、アクリル系シランを使用することができ、その代表的な例としては、アミン系のγ−アミノプロピルダイエトキシメチルシラン、エポキシ系のγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アクリル系のメタロキシプロピルトリメトキシシランなどを使用することができる。
【0036】
消泡剤は、樹脂内の気泡を除去するために使用する。このような消泡剤としては、例えば、シリコン系、非シリコン系ポリマーなどを0.1〜5質量%程度使用することができる。
【0037】
平滑剤は、表面張力の欠陥を防止するために使用する。このような平滑剤は、例えば、シリコン系を使用し、その構造によってポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサン、アクリルレート系の反応性シリコンなどを0.1〜5質量%程度使用することができる。
【0038】
微粒子分散剤は、微粒子の表面に吸着して静電気的反撥力や立体障害効果により粒子と粒子との間の間隔を一定に維持して粒子を分散させる。このような微粒子分散剤として、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ポリビニールピロリドン(PVP)、グルコースなどを0.1〜5質量%程度使用することができる。
【0039】
この時、溶媒として使用する純水の含量は、伝導性タイルに対するコーティング性、すなわち粘度を考慮して、前述の成分(1〜7項)の合計を100とする時、100:(50〜150)の質量比で維持して使用する。
【0040】
(2)伝導性タイルに対する水溶性光硬化型樹脂のコーティング
本発明に係る水溶性光硬化型樹脂は、スプレーコーティング(spray coating)、グラビアコーティング(gravure coating)、ロールコーティング(roll coating)、バーコーティング(bar coating)などの公知の方法によって、伝導性タイルにコーティングできる。塗布するコーティングフィルムの厚さは、例えば8〜25μmが好ましい。8μm以下にコーティングする場合、後述するUV硬化時、純水が除去されて純水の含量分の厚さが減少するため、充分な帯電防止特性を維持することができないだけでなく、コーティング被膜が形成されない部分が発生する可能性がある。また、25μm以上にコーティングする場合は、耐スクラッチ性が減少して外観特性が低下し、摩耗粒子の発生量が増加するようになる。完全乾燥後、コーティング組成物の厚さが、例えば5〜20μmである場合が最も好ましい。
【0041】
樹脂の硬化のために、UVを照射する。本発明で利用可能なエネルギー源は、例えば、高電圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、ゼノンランプ、窒素レーザーなどを含む。エネルギー線の照射量は、例えば、365nm波長のUV累積露出光量で、50〜3000mJ/cmが好ましい。50mJ/cmより低い場合は、充分な硬化が行われないため、耐摩耗性及び耐スクラッチ性が低下する可能性がある。一方、3000mJ/cm以上である場合は、黄変現象が発生して透明性が減少する可能性がある。
【0042】
本発明において、伝導性タイル材は、各種熱可塑性及び列硬化性プラスチック成形品、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリプロピレン(PP)、及びゴム樹脂のなかから選択されたもので製造したシート、射出成形品などを使用することができる。しかし、ASTM F150により測定した電気抵抗値が10Ω以下の値を、そしてASTM D3389により測定した耐摩耗性が1,000シクロ基準で0.6g以下を示す伝導性タイルでなければならない。前述の特性値を超過する場合は、本発明における水溶性光硬化型樹脂組成物で被膜を形成しても、コーティングによる効果を得ることが難しくなる。
【0043】
本発明で製造した水溶性光硬化型帯電防止組成物をコーティングした2層構造型伝導性タイル材は、耐摩耗性及び帯電防止特性に優れる。また水溶性光硬化型樹脂組成物の高い透明性は市販されている床材の色相発現を最大限に保障するので、クリーンルーム用伝導性タイル床材、帯電防止包装材などに非常に有用である。
【0044】
次に、実施例を列挙して本発明をより詳細に説明するが、これらの実施例は単に例示の目的で提示するものと理解するべきであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0045】
(実施例1)
下記表1に示す成分を混合して、光硬化型帯電防止特性、耐摩耗性及び透明性を有するコーティング組成物を製造した。
【0046】
水溶性オリゴマーとしては、ポリエチレングリコールを主鎖とするウレタンアクリルレートを使用し、モノマーとしては、単官能基でカプロラクトンアクリルレート、2官能基でヘキサンジオールジアクリルレートを混合して使用した。伝導性微粒子としては、日本Ishihara Co.で製造した水分散ATO溶液を使用し、カーボンナノチューブは、日進ナノテク(株)の多重壁カーボンナノチューブを使用した。カーボンナノチューブを含む伝導性微粒子分散剤として、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を使用し、超音波分散処理を通じて微粒子を分散させた。光重合開始剤としては、ケトン類の1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとベンゾフェノンを使用した。また、ヒュームドシリカは、Degussa社の分散水溶液を使用し、その他少量の消泡剤と湿潤分散剤、平滑剤を使用した。
【0047】
溶媒として使用する純水は、ATO及びヒュームドシリカに含まれている純水を含んで、純水の質量:有機物・無機物の質量の合計が、100:100の質量比で調節した。ただし、表1には便宜上、純水を含んだ全ての造成を質量百分率で示した。
【0048】
以上のように製造したコーティング組成物は、10cm×10cm大きさの塩化ビニール樹脂伝導性タイルの被塗体にバーコーティングした後、80℃に維持している真空乾燥機で5分間放置して、残留溶媒及び気泡を除去した。コーティング組成物が塗布された被塗体に1,000mJ/cmの水銀などを照射して、試片の表面に架橋硬化被膜を形成した。
【0049】
(実施例2及び3)
カーボンナノチューブとATOの含量を変化させたことを除いては、実施例1と同一に実施した。
【0050】
(実施例4)
カーボンナノチューブ、ATO、ヒュームドシリカの含量を変化させたことを除いては、実施例1と同一に実施した。
【0051】
(実施例5)
オリゴマー、モノマー、及び純水の含量を変化させたことを除いては、実施例1と同一に実施した。
【0052】
(実施例6)
カーボンナノチューブを適用しないことを除いては、実施例1と同一に実施した。
【0053】
(比較例1)
耐摩耗性向上剤としてのヒュームドシリカを添加しないことを除いては、実施例1と同一に実施した。
【0054】
(比較例2)
水溶性光硬化型樹脂をコーティングしない伝導性タイルの特性を比較した。
【0055】
(比較例3)
コーティング組成物を構成する有機物と無機物の合計に対する純水の含量の質量比を100:40に変化させたことを除いては、実施例1と同一に実施した。
【0056】
(比較例4)
コーティング組成物を構成する有機物と無機物の合計に対する純水の含量の質量比を100:160に変化させたことを除いては、実施例1と同一に実施した。
【0057】
【表1】

【0058】
実施例1〜6、及び比較例による方法で製造した組成物の物性は、次のような方法で測定した。ここで、光透過度は、テレフタル酸ポリエチレン(PET)フィルム上に前記組成物をコーティングして測定し、この時PETフィルム自体の光透過度に起因する透過率損失を補正した。また、5個以上の試片を製造し、各試片当り5回の測定を行い、各測定の最大及び最小値を除外した残り値の平均から得た結果を提示した。
【0059】
(1)耐摩耗性
ASTM D3389による耐摩耗性測定
【0060】
(2)電気抵抗
PRS−801を利用したASTM F150による電気抵抗測定
【0061】
(3)光透過度
UV分光計を使用して測定した350〜700nm波長領域の光に対する透過度の平均値
【0062】
(4)鉛筆硬度
ASTM D3363による鉛筆硬度測定
【0063】
(5)付着力
ASTM D3359−2による付着力測定
5B:剥離なし
4B:5%以下の剥離発生
3B:5〜15%の剥離発生
2B:15〜35%の剥離発生
1B:35〜65%の剥離発生
0B:65%以上の剥離発生
【0064】
(6)表面平滑性
硬度後の被膜平滑性程度を外観観察
○:表面が鏡面(mirror surface)に準ずる程度に非常に優れる。
△:表面に若干のほつれがある。
×:表面にシワが多くある。
【0065】
(7)コーティング膜の厚さ
マイクロメーターを利用してコーティング前後の伝導性タイルの厚さを比較し、注射電子顕微鏡撮影後の厚さを併行して測定した。
【0066】
前述の実験方法で測定した結果を下記表2に表した。下記表2で、N/Aは測定不可を示す。
【0067】
【表2】

【0068】
前記表2に示したように、実施例のコーティング組成物は、耐摩耗性に優れ、帯電防止効果が良好であることが分かる。すなわち、本発明のコーティング組成物である実施例1〜6のコーティング組成物は、伝導性微粒子単独、または伝導性微粒子とカーボンナノチューブの混用、そしてヒュームドシリカを使用して、帯電防止特性が優秀であり、耐摩耗性に優れた透明な組成物であることが分かる。
【0069】
これに対して、比較例1の組成物は、ヒュームドシリカを用いたため、帯電防止特性は優れるが、耐摩耗性が低下したことが分かる。水溶性光硬化型樹脂組成物を塗布しない比較例2は伝導性タイルだけの特性を示したもので、コーティング膜を積層した実施例1〜6に比べて、電気抵抗が高く、耐摩耗性も減少した。
【0070】
比較例3及び4で提示した水溶性光硬化型樹脂組成物で純水の含量による特性も異なって現われた。適切な厚さを維持するように純水の含量を調節した場合と、そうでない場合においては、耐摩耗性、透明性などに大きな差があり、全般的にコーティング膜としての特性が低下した。
【0071】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明によれば、耐摩耗性、帯電防止特性、及び床材の色相を80%以上発現できる特性を提供する。またカーボンナノチューブと伝導性微粒子を含有する本発明の水溶性コーティング組成物は純水を溶媒として使用することによって、環境親和的であり、作業時有害性がなく、摩耗による微細ホコリ粒子の発生を極小化できる。従って、本発明の産業利用性はきわめて高いものといえる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電防止特性、高耐摩耗性及び透明性を有する水溶性光硬化型樹脂組成物がコーティングされたことを特徴とする、2層構造型伝導性タイル材。
【請求項2】
前記水溶性光硬化型樹脂組成物の厚さが、溶媒の完全乾燥後5〜20μmであることを特徴とする、請求項1に記載の2層構造型伝導性タイル材。
【請求項3】
前記水溶性光硬化型樹脂組成物は、
伝導性微粒子5〜15質量%と、
ヒュームドシリカ0.1〜5質量%と、
水溶性アクリルレート系オリゴマー20〜50質量%と、
単官能または多官能モノマー20〜75質量%と、
光重合開始剤0.1〜5質量%と、
密着性向上剤、消泡剤、平滑剤、湿潤分散剤、安定剤及び微粒子分散剤の中から選択される少なくとも1種類の添加剤0.1〜5質量%と、
を含み、
溶媒として使用する純水と、前記成分の合計との質量比は、100:50〜100:150であることを特徴とする、請求項1に記載の2層構造型伝導性タイル材。
【請求項4】
前記伝導性微粒子は、カーボンナノチューブを0〜80質量%を含むことを特徴とする、請求項3に記載の2層構造型伝導性タイル材。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブは、
単一壁、2重壁及び多重壁カーボンナノチューブを、硝酸、硫酸、硝酸と硫酸の混合溶液、過酸化水素及び過酸化水素と水酸化アンモニウムの混合溶液とからなる群から選択された強酸または強塩基で処理したカーボンナノチューブ、
イミダゾール、アミン及びアクリルからなる群から選択された有機物で表面を改質したカーボンナノチューブ、
400℃以上の温度で2時間以上熱処理したカーボンナノチューブ、または、
いずれの処理も施されていないカーボンナノチューブ
の中から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の2層構造型伝導性タイル材。


【公開番号】特開2009−167785(P2009−167785A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167625(P2008−167625)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(508193541)
【Fターム(参考)】