説明

2次元バーコード読取装置

【課題】赤外線発光物質からなる2次元バーコードが所定の領域に形成された物品から、2次元バーコードを確実に読み取ることができる2次元バーコード読取装置を提供する。
【解決手段】2次元バーコード読取装置は、赤外線発光物質からなる2次元バーコードが所定の領域に形成された物品から、2次元バーコードを読み取るもので、物品の2次元バーコードが形成された領域に、物品に損傷を与えない範囲内のパワーで赤外線レーザを面照射するレーザ照射部と、赤外線レーザの面照射によって、物品の2次元バーコードが形成された領域の赤外線発光物質から発せられるカラーの励光を2次元バーコードデータとして光学的に面読取する励光読取部と、2次元バーコードデータを所定のレベルに調整するレベル調整部と、所定のレベルに調整された2次元バーコードデータを白黒2値化する制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線発光物質からなる2次元バーコードが形成された物品から、その2次元バーコードを読み取る2次元バーコード読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、硬貨およびパチスロ(回胴式遊技機)、スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備用の遊技メダル等のコインは、自動販売機、遊技設備、両替機等に投入された際、コインの大きさ、形状、表面形状、材質、固有振動数等を検出され、これにより、投入されたコインが真正なコインであるか、変造または偽造された不正なコインであるかの判定が行われている。
【0003】
しかしながら、このような方法では、投入されたコインの大きさ、形状、表面形状、材質、固有振動数等が同じであれば、不正なコインでも真正なコインであると認識されてしまい、問題となっている。更に、コイン以外の物品においても、例えば、いわゆるブランド品の時計、アクセサリー、ライター、バッグ、財布、衣服、靴、服飾品等においては、偽造品の流通が大きな問題となっている。
【0004】
この問題に対し、本出願人は、特許文献1において、電磁波の照射により発光する物質を含有する多孔質金属部を有する金属部含有物品とその製造方法を提案している。同文献には、多孔質金属部の表面に、2次元バーコードを構成し、発光物質の発光を2次元バーコードとして検出し、あらかじめ登録された真正品のデータと照合することにより、物品の真偽を判定することが開示されている。
【0005】
しかし、同文献には、発光物質の発光を2次元バーコードとして検出する具体的な読取装置の構成は開示されていない。現実問題として、発光物質の発光を2次元バーコードとして読み取ることは容易なことではない。同文献においても、発光物質の発光(点)の有無を目視ないしは電気信号として確認することはできるが、2次元バーコード(面)を読み取ることができる読取装置は現在のところ存在していない。
【0006】
【特許文献1】国際公開第WO2006/038743号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、前記従来技術に基づく問題点を解消し、赤外線発光物質からなる2次元バーコードが所定の領域に形成された物品から、2次元バーコードを確実に読み取ることができる2次元バーコード読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、赤外線発光物質からなる2次元バーコードが所定の領域に形成された物品から、該2次元バーコードを読み取る2次元バーコード読取装置であって、
前記物品の2次元バーコードが形成された領域に、前記物品に損傷を与えない範囲内のパワーで赤外線レーザを面照射するレーザ照射部と、前記赤外線レーザの面照射によって、前記物品の2次元バーコードが形成された領域の赤外線発光物質から発せられるカラーの励光を2次元バーコードデータとして光学的に面読取する励光読取部と、前記2次元バーコードデータを所定のレベルに調整するレベル調整部と、前記所定のレベルに調整された2次元バーコードデータを白黒2値化する制御部とを備えることを特徴とする2次元バーコード読取装置を提供するものである。
【0009】
ここで、前記制御部は、第1の制御として、前記白黒2値化された2次元バーコードデータの鮮明度が、2次元バーコードとして認識可能な所定の範囲内となる方向に、前記励光読取部におけるカラーの励光の読取精度を制御し、かつ、前記レベル調整部における2次元バーコードデータのレベルの調整を制御することが好ましい。
【0010】
また、前記制御部は、上記に記載の第1の制御を行っても、前記白黒2値化された2次元バーコードデータの鮮明度が、前記所定の範囲を超える場合には、第2の制御として、前記レーザ照射部から面照射される赤外線レーザのパワーを所定のパワーだけ低下させるように制御し、前記鮮明度が所定の範囲を下回る場合には、前記赤外線レーザのパワーを、物品に損傷を与えない範囲内で所定のパワーだけ上昇させるように制御することが好ましい。
【0011】
また、前記制御部は、上記に記載の第1の制御を行い、上記に記載の第2の制御を行うことを所定回数繰り返すことによって、前記白黒2値化された2次元バーコードデータの鮮明度を最適化することが好ましい。
【0012】
また、前記レーザ照射部は、それぞれ、前記赤外線レーザを発するレーザダイオードを含む、少なくとも2基の照射ユニットを有することが好ましい。
【0013】
さらに、前記励光読取部は、前記カラーの励光を2次元バーコードデータとして面読取するCCDカメラであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の2次元バーコード読取装置では、レーザ照射部から、物品の2次元バーコードが形成された領域に赤外線レーザが面照射され、物品の2次元バーコードが形成された領域から発せられたカラーの励光が、励光読取部によって2次元バーコードデータとして面読取される。そして、2次元バーコードデータは、レベル調整部によって所定のレベルに調整され、制御部によって白黒2値化される。
【0015】
これにより、本発明の2次元バーコード読取装置では、以上のようにして、赤外線発光物質からなる2次元バーコードが形成された物品から、その2次元バーコードを確実に読み取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の2次元バーコード読取装置を詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の2次元バーコード読取装置の構成を表す一実施形態の概略図である。同図に示す2次元バーコード読取装置10は、レーザ照射部12と、励光読取部14と、レベル調整部16と、制御部18とを備えている。読取装置10は、赤外線発光物質(赤外線の照射によって励光を発する蛍光物質)からなる2次元バーコードが所定の領域に形成された物品20から、その2次元バーコードを読み取る。
【0018】
レーザ照射部12は、物品20の2次元バーコードが形成された領域に、物品20に損傷を与えない範囲内のパワー(レーザ出力)で赤外線レーザを面照射する。本実施形態のレーザ照射部12は、それぞれ、赤外線レーザを発するレーザダイオード(LD)を含む、2基の照射ユニット12a、12bを有する。赤外線レーザの発光波長は976nm±4nm、パワーは400mW/1基、照射範囲はφ20/2基(照射距離は200mm)である。
【0019】
なお、照射ユニットは少なくとも1基あれば良く、その上限は特に限定されないが、2基以上の照射ユニットを有することが望ましい。レーザ照射部12が2基以上の照射ユニットを有する場合、それぞれの照射ユニットから照射され、合成される赤外線レーザが、物品20の2次元バーコードの領域全域にわたって均一に照射されるように、2基以上の照射ユニットを均等に配置することが望ましい。
【0020】
励光読取部14は、赤外線レーザの面照射によって、物品20の2次元バーコードが形成された領域の赤外線発光物質から発せられるカラー(例えば、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)などの各種の色を含む)の励光を2次元バーコードデータとして光学的に面読取する。本実施形態の励光読取部14は、カラーの励光を2次元バーコードデータとして面読取するCCD(固体撮像素子)カメラ(画像認識用デジタルカメラ)である。
【0021】
CCDカメラは、一眼レフレックスのデジタルカメラ、映像素子(撮像素子)は36mm×48mmのフルフレームトランスファCCD(ピクセル数は約5000×4000ピクセル、有効画素数は約2000万画素)、CCDカメラのフィルタはIR透過型である。また、撮影レンズは、マニュアルフォーカスの120mmのF4マクロレンズ、撮影倍率は1倍〜1/2.5倍である。
【0022】
レベル調整部16は、2次元バーコードデータを所定のレベルに調整するアンプ(増幅器)である。レベル調整部16は、レーザ照射部12から面照射される赤外線レーザのパワー、励光読取部14におけるカラーの励光の読取精度に基づいて、2次元バーコードデータのレベルが低い時には増幅し、そのレベルが高い時には減衰させることによって、そのレベルを適宜調整する。
【0023】
制御部18は、所定のレベルに調整された2次元バーコードデータを白黒2値化する。本実施形態の制御部18は、パーソナルコンピュータ(PC)上で動作するプログラムによって実現されている。制御部18は、例えば、携帯電話等で読み取るために、表示装置上に、白黒2値化された2次元バーコードを表示したり、2次元バーコードをデコードするプログラムによって、その情報を解析したり、各種の処理を行うことができる。
【0024】
また、制御部18は、白黒2値化された2次元バーコードデータの鮮明度(像構造)が、2次元バーコードとして認識可能な所定の範囲内となる方向に、励光読取部14におけるカラーの励光の読取精度(シャッタスピード、絞り、露出、距離等)を制御し、かつ、レベル調整部16における2次元バーコードデータのレベルの調整を制御する(増幅ないしは減衰させる)。
【0025】
上記制御を行っても、鮮明度が所定の範囲を超える場合には、レーザ照射部12から面照射される赤外線レーザのパワーを所定のパワーだけ低下させるように制御し、一方で、鮮明度が所定の範囲を下回る場合には、赤外線レーザのパワーを、物品20に損傷を与えない範囲内で所定のパワーだけ上昇させるように制御する。そして、前述の制御を所定回数繰り返すことによって鮮明度を最適化する。
【0026】
次に、読取対象である、赤外線発光物質からなる2次元バーコードが所定の領域に形成された物品20について説明する。
【0027】
物品20は、例えば、金属(遊技メダル、硬貨など)、紙(書類、紙幣など)、プラスチックなどを含む各種材質のもので、赤外線発光物質(一般に、希土類酸化物である)からなる2次元バーコードを形成できるものである。また、2次元バーコードは、例えば、QRコードなどを含む各種のものである。本実施形態の物品20は、その片面に、赤外線発光物質からなるQRコードが形成された遊技メダルである。
【0028】
次に、読取装置10において、赤外線発光物質からなる2次元バーコードが所定の領域に形成された物品20から、2次元バーコードを読み取る場合の動作を説明する。
【0029】
まず、レーザ照射部12の2基の照射ユニット12a、12bから、遊技メダルを損傷しない範囲内のパワーで赤外線レーザが照射される。2基の照射ユニット12a、12bから照射された赤外線レーザは合成され、遊技メダルの2次元バーコードが形成された領域に赤外線レーザが均一に面照射される。これにより、遊技メダルの2次元バーコードが形成された領域の赤外線発光物質が励起され、所定レベルのカラーの励光を発する。
【0030】
赤外線レーザのパワーは、遊技メダルに損傷を与えないレベルである。従って、遊技メダルの2次元バーコードが形成された領域から発せられたカラーの励光は、赤外線発光物質の量や周囲の光量にも依るが、通常は肉眼で視認できないレベルとなる。
【0031】
遊技メダルの2次元バーコードが形成された領域から発せられたカラーの励光は、励光読取部14によって2次元バーコードデータとして面読取される。つまり、カラーの励光は、CCDカメラによって撮影(面読取)され、カラーの励光に対応する2次元バーコードデータが生成される。生成された2次元バーコードデータは、レベル調整部16によって所定のレベルに調整される。
【0032】
前述の通り、遊技メダルの2次元バーコードが形成された領域から発せられたカラーの励光は、通常、肉眼では視認できないレベルである。従って、これをレベル調整部16によって制御部18で認識できるレベルに調整する。
【0033】
そして、所定のレベルに調整された2次元バーコードデータは制御部18へ入力され、制御部18によって白黒2値化され、出力される。制御部18は、前述の通り、例えば、表示装置上に、白黒2値化された2次元バーコードデータに相当する2次元バーコードを表示したり、2次元バーコードデータをデコードするプログラムによって、その情報を解析したり、各種の処理を行うこともできる。
【0034】
なお、レーザ照射部12から照射される赤外線レーザは、そのパワーを上げすぎると、物品20を破損させる恐れがある。そのため、読取装置10では、制御部18によって、物品20の材質等に応じて、その物品20に損傷を与えない範囲内で赤外線レーザのパワーを適宜調整する必要がある。その一方で、物品20に形成された2次元バーコードが不鮮明な場合には、赤外線レーザのパワーを上げるなどの制御が必要となる。
【0035】
そのため、制御部18は、カラーの励光の読取精度を制御し、かつ、2次元バーコードデータのレベルの調整を制御する。その結果、白黒2値化された2次元バーコードデータの鮮明度が所定の範囲を超える場合には赤外線レーザのパワーを低下させ、鮮明度が所定の範囲を下回る場合には赤外線レーザのパワーを上昇させる。そして、前述の動作を所定回数繰り返すことによって鮮明度を最適化する。
【0036】
読取装置10では、以上のようにして、赤外線発光物質からなる2次元バーコードが形成された物品20から、その2次元バーコードを確実に読み取ることができる。
【0037】
また、赤外線発光物質からなる2次元バーコードが形成された領域は、赤外線レーザが照射されない限り発光することはないため、その領域を肉眼で視認することは非常に困難である。従って、赤外線発光物質からなる2次元バーコードが形成された物品20は、そのどの箇所に2次元バーコードが形成されているのかが製造者以外には視認が非常に困難であるため、セキュリティレベルを向上させることができる。
【0038】
なお、本発明においては、レーザ照射部12および励光読取部14として、同様の機能を実現する各種構成のものを採用することができる。また、レベル調整部16および制御部18も、その機能を実現する各種構成のものが採用可能である。さらに、読取対象である物品20も何ら限定されず、赤外線の照射によって励光を発する2次元バーコードが形成されたあらゆるものが対象となる。
【0039】
本発明は、基本的に以上のようなものである。
以上、本発明の2次元バーコード読取装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の2次元バーコード読取装置の構成を表す一実施形態の概略図である。
【符号の説明】
【0041】
10 2次元バーコード読取装置
12 レーザ照射部
12a、12b 照射ユニット
14 励光読取部
16 レベル調整部
18 制御部
20 物品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線発光物質からなる2次元バーコードが所定の領域に形成された物品から、該2次元バーコードを読み取る2次元バーコード読取装置であって、
前記物品の2次元バーコードが形成された領域に、前記物品に損傷を与えない範囲内のパワーで赤外線レーザを面照射するレーザ照射部と、前記赤外線レーザの面照射によって、前記物品の2次元バーコードが形成された領域の赤外線発光物質から発せられるカラーの励光を2次元バーコードデータとして光学的に面読取する励光読取部と、前記2次元バーコードデータを所定のレベルに調整するレベル調整部と、前記所定のレベルに調整された2次元バーコードデータを白黒2値化する制御部とを備えることを特徴とする2次元バーコード読取装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記白黒2値化された2次元バーコードデータの鮮明度が、2次元バーコードとして認識可能な所定の範囲内となる方向に、前記励光読取部におけるカラーの励光の読取精度を制御し、かつ、前記レベル調整部における2次元バーコードデータのレベルの調整を制御する請求項1に記載の2次元バーコード読取装置。
【請求項3】
前記制御部は、請求項2に記載の制御を行っても、前記白黒2値化された2次元バーコードデータの鮮明度が、前記所定の範囲を超える場合には、前記レーザ照射部から面照射される赤外線レーザのパワーを所定のパワーだけ低下させるように制御し、前記鮮明度が所定の範囲を下回る場合には、前記赤外線レーザのパワーを、物品に損傷を与えない範囲内で所定のパワーだけ上昇させるように制御する2次元バーコード読取装置。
【請求項4】
前記制御部は、請求項2に記載の制御を行い、請求項3に記載の制御を行うことを所定回数繰り返すことによって、前記白黒2値化された2次元バーコードデータの鮮明度を最適化する2次元バーコード読取装置。
【請求項5】
前記レーザ照射部は、それぞれ、前記赤外線レーザを発するレーザダイオードを含む、少なくとも2基の照射ユニットを有する請求項1〜4のいずれかに記載の2次元バーコード読取装置。
【請求項6】
前記励光読取部は、前記カラーの励光を2次元バーコードデータとして面読取するCCDカメラである請求項1〜5のいずれかに記載の2次元バーコード読取装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−53794(P2009−53794A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218037(P2007−218037)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(592016739)メタルテック株式会社 (3)
【Fターム(参考)】