説明

2液型ウレタン塗料組成物

【課題】 可使時間(ポットライフ)を延長させ、かつ良好な塗装作業性が得られる2液型ウレタン塗料組成物を提供する。
【解決手段】 水酸基含有樹脂(A)の固形分100質量部に対し、加水分解性エステル化合物(B)を有効成分で2〜35質量部、アルコール系溶剤(C)を2〜10質量部含む主剤と、ポリイソシアネ−ト化合物(D)を含む硬化剤からなり、水酸基含有樹脂(A)の水酸基とポリイソシアネ−ト化合物(D)の官能基数が、NCO/OHのモル比で0.5〜1.5の割合で混合されることを特徴とする2液型ウレタン塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主剤中の水酸基含有樹脂の水酸基と硬化剤中のポリイソシアネート化合物のイソシアネ−ト基との反応を調節することにより、可使時間(ポットライフ)を延長させ、かつ良好な塗装作業性が得られる2液型ウレタン塗料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウレタン塗料は、塗料分野において広く使用されているが、その特徴として、水酸基含有樹脂組成物である主剤塗料と、ポリイソシアネート化合物を主成分とする硬化剤とからなる2液型塗料であるため、混合後一定時間以上になると著しく増粘もしくはゲル化するので、それまでに塗装作業や洗浄作業を終えなければならないという本質的な問題があり(この時間を可使時間、ポットライフという)、又洗浄作業は、1液型塗料に比べ負荷が大きいという欠点を有する。これらの作業を容易にするため、可使時間(ポットライフ)をできるだけ延長したいという要望があった。
【0003】
貯蔵安定性に優れ、使用しやすく、塗膜性能のバラツキが少ないアクリル系ウレタン塗料用硬化剤組成物として、ポリイソシアネート化合物を1〜40重量%、脱水剤を0.1〜5.0重量%及び有機溶剤を55〜98.9重量%含むことを特徴とする硬化剤組成物が知られていた(例えば、特許文献1参照)。この文献において、脱水剤としては、加水分解性エステル化合物であるオルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、オルト酢酸エチルなどが記載されており、また、有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類等が記載されている。ただし、アルコール類はポリイソシアネート化合物と反応するので、有機溶媒として記載されていない。
しかしながら、この組成物は、硬化剤組成物であり、硬化剤組成物自体の貯蔵安定性には優れているが、主剤塗料(水酸基含有樹脂組成物)との混合後の可使時間(ポットライフ)には効果がないという欠点があった。
【0004】
また、水酸基含有アクリル系樹脂を基体樹脂とし、アミノ樹脂又はイソシアネート化合物を硬化剤とする熱硬化性塗料組成物100重量部に対してオルガノシリケート化合物の部分加水分解縮合物1〜70重量部を配合してなる上塗り塗料組成物を静電塗装する工程において、該上塗り塗料組成物のサーキュレーションタンク内の空間部を不活性ガスでシールしてサーキュレーションタンク内の空間部の湿度を5000g/m以下にすることにより、上塗り塗料の粘度上昇を抑制し、かつ、静電塗装適性及び硬化塗膜の特性、特に耐汚染性を維持することができる塗料安定化方法が知られていた(例えば、特許文献2参照)。この方法は、熱硬化性塗料組成物がオルガノシリケート化合物の部分加水分解縮合物を含み、シリコン架橋を利用している場合には、空気中から塗料中に入り込む水分により塗料粘度が上昇する問題に対処するための方法であった。さらに、この方法は、上塗り塗料を循環させるサーキュレーションタンクに、前記上塗り塗料の粘度調整を目的として、芳香族炭化水素、アルコール類及び脱水剤(例えば、オルト酢酸トリメチル、オルト酢酸トリエチル、オルト蟻酸トリエチル、オルト蟻酸トリエチル、加水分解性シリコン化合物等など)を注入することが記載されている。
【0005】
しかしながら、この方法の目的は、上記のように、オルガノシリケート化合物の部分加水分解縮合物が水分で劣化することによる塗料の粘度上昇を防ぐことにあり、組成物成分以外に、サーキュレーションタンク内の空間部を不活性ガスでシールする等の手段により、湿度を5000g/m以下にすることが不可欠であるという欠点があった。さらに、この方法は、熱硬化性塗料組成物がオルガノシリケート化合物の部分加水分解縮合物を含む塗料における、塗料粘度が上昇する問題に対処するための方法であり、オルガノシリケート化合物の部分加水分解縮合物を含まない塗料については、全く言及されていない。
【0006】
上記文献でも記載されているように、加水分解性エステル化合物は、脱水剤として使用され、水と反応しアルコールを生成することが知られているが、同時にアルコール類との共存下では、アルコール交換反応も起こることも知られている。アルコール類が単官能のアルコール系溶剤である場合は、加水分解性エステル化合物と共存しても、単官能のアルコール系溶剤がアルコール交換反応により置換されるだけで、見かけの状態は変わらないが、水酸基含有樹脂などの多官能の水酸基を有する化合物と共存する場合は、アルコール交換反応により混合物の状態は著しく増粘するという問題があった。このため、水酸基含有樹脂などの多官能の水酸基を有する化合物には、加水分解性エステル化合物は混合しないのが一般的である。
一方、アルコール系溶剤(C)は、イソシアネート基と反応するため、水酸基含有樹脂及び架橋剤(ポリイソシアネート化合物)に、第3成分として加えることにより、可使時間(ポットライフ)を延長させる効果がある。しかしながらその効果は、あまり大きくなくむしろ架橋性を損なうため、ウレタン塗料組成物の塗膜性能に悪影響を及ぼす問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−345871号公報
【特許文献2】特開2000−303024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、2液型ウレタン塗料の反応を制御することにより、可使時間(ポットライフ)を延長させ、その結果良好な塗装作業性が得られる2液型ウレタン塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、この課題を解決すべく鋭意研究の結果、水酸基含有樹脂を含む主剤及びポリイソシアネート化合物を含む硬化剤からなる2液型ウレタン塗料組成物において、第3成分として加水分解性エステル化合物を加えると、アルコール交換反応により、水酸基とイソシアネート基の反応は抑えられても、加水分解性エステル化合物自体が水酸基含有樹脂の架橋剤として作用するため、可使時間(ポットライフ)延長効果はわずかしか見出せなかったが、さらに、第3成分と共に第4成分としてアルコール系溶剤を特定量加えることにより、可使時間(ポットライフ)を延長させる大きな効果があり、その結果良好な塗装作業性が得られることを見出した。その作用機構は、加水分解性エステル化合物とアルコール系溶剤が共存して起こるアルコール交換反応が、水酸基含有樹脂と硬化剤中のイソシアネート基との反応を遮る働きをしていると推定される。
【0010】
すなわち、本発明は、水酸基含有樹脂(A)、加水分解性エステル化合物(B)及びアルコール系溶剤(C)を含む主剤と、ポリイソシアネ−ト化合物(D)を含む硬化剤からなり、主剤と硬化剤を混合して得られる塗料組成物中において、水酸基含有樹脂(A)の固形分100質量部に対し、加水分解性エステル化合物(B)を有効成分で2〜35質量部、アルコール系溶剤(C)2〜10質量部になるように、(B)成分及び(C)成分を主剤中に含有しており、水酸基含有樹脂(A)の水酸基とポリイソシアネ−ト化合物(D)の官能基数が、NCO/OHのモル比で0.5〜1.5の割合で混合されることを特徴とする2液型ウレタン塗料組成物を提供するものである。
また、本発明は、水酸基含有樹脂(A)が、アクリル樹脂であり、ポリイソシアネ−ト化合物(D)が、脂肪族ポリイソシアネート化合物である請求項1記載の2液型ウレタン塗料組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の2液型ウレタン塗料組成物は、主剤と硬化剤を混合した際の2液型ウレタン塗料組成物の可使時間を延長させることができ、かつ良好な塗装作業性を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に使用される水酸基含有樹脂(A)としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂等を用いることができ、これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。この中で、アクリル樹脂が好ましい。
水酸基含有樹脂(A)の水酸基価は、好ましくは50〜220mgKOH/gであり、より好ましくは80〜200mgKOH/gである。
水酸基含有樹脂(A)の水酸基価が50mgKOH/g未満の場合は、塗膜の架橋性が不十分なため、硬度や耐薬品性などの塗膜性能が低下する傾向があり、220mgKOH/gを超える場合は、硬化剤との相溶性が不足するため、塗膜外観の低下が起きる傾向がある。
【0013】
また、水酸基含有樹脂(A)の数平均分子量は、好ましくは1,000〜30,000であり、より好ましくは、2,000〜20,000である。
水酸基含有樹脂(A)の数平均分子量が1,000未満の場合は、塗料の硬化性及び硬化塗膜の耐久性が低下する傾向があり、30,000を超える場合は、塗装時の作業性及び硬化塗膜の外観が低下する傾向がある。
【0014】
本発明に使用される水酸基含有樹脂が、水酸基含有アクリル樹脂の場合について以下説明する。
水酸基含有アクリル樹脂は、水酸基を有するラジカル重合性単量体を重合することにより得ることができる。
水酸基を有するラジカル重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類、アリルアルコールなどの不飽和脂肪族アルコール類;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、又はメタクリル酸4−ヒドロキシブチルのエチレンオキサイド及び/またはプロピレンオキサイド付加物などが挙げられ、1種又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0015】
水酸基含有アクリル樹脂には、その他のラジカル重合性単量体に由来する単位を含有していてもよい。
その他のラジカル重合性単量体に由来する単位を含有する水酸基含有アクリル樹脂は、例えば、水酸基を有するラジカル重合性単量体と、その他のラジカル重合性単量体を共重合することにより得ることができる。
その他のラジカル重合性単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリルなどのメタクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミドなどが挙げられ、1種又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0016】
ラジカル重合をおこなう場合、ラジカル重合開始剤を配合してもよい。ラジカル重合開始剤としては、例えば2、2’−アゾビスイソブチロニトリル、2.2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、4、4’−アソビス−4−シアノ吉草酸、1−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2、2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ化合物、メチルエチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノンパーオキシド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、t−ブチルヒドロパーオキンド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド、ジクミルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、イソブチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンソエート、t−ブチルパーオキシソプロピルカーボネート等の有機過酸化物が挙げられる。ラジカル重合開始剤は1種単独で用いてもよいし、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
ラジカル重合開始剤の配合量は、特に制限ないが、ラジカル重合性単量体の全量に対して0.01〜20質量%にすることが好ましい。
これらのラジカル重合開始剤の系においては必要に応じてジメチルアニリン、硫酸第1鉄、塩化第1鉄、酢酸第1鉄等の第1鉄塩、酸性亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ロンガリット等の還元剤を組み合わせても差し支えないが、重合温度が低くなりすぎないように留意して選択する必要がある。
【0018】
本発明に使用される加水分解性エステル化合物(B)としては、例えばオルソ蟻酸メチル、オルソ蟻酸エチル、オルソ蟻酸n−プロピル、オルソ酢酸メチル、オルソ酢酸エチル、オルソプロピオン酸エチル、オルソ酪酸メチル等が挙げられる。特に、好ましい加水分解性エステル化合物は、オルソ酢酸エチル、オルソプロピオン酸エチルである。
【0019】
本発明の2液型ウレタン塗料組成物は、使用時の直前に主剤と硬化剤を混合して用いられるものであるが、加水分解性エステル化合物(B)の含有量は、主剤中の水酸基含有樹脂(A)の固形分に対して規定される。すなわち、加水分解性エステル化合物(B)の主剤中の含有量は、水酸基含有樹脂(A)の固形分100質量部に対し、加水分解性エステル化合物(B)を有効成分で2〜35質量部になるように選定され、4〜20質量部に選定されることがより好ましい。(B)成分が2質量部未満では、可使時間を延長させる効果が乏しく、35質量部を超えると、コストが高くなり(経済性の問題)、又、塗料配合中の溶剤バランスが損なわれ、塗膜外観が低下する。
【0020】
本発明に使用されるアルコール系溶剤(C)としては、炭素数がC1〜C10の単官能アルコールが好ましく、より好ましい炭素数はC2〜C8である。具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等のアルコールが挙げられる。
本発明の2液型ウレタン塗料組成物は、使用時の直前に主剤と硬化剤を混合して用いられるものであるが、アルコール系溶剤(C)の含有量は、主剤中の水酸基含有樹脂(A)の固形分に対して規定される。すなわち、アルコール系溶剤(C)の含有量は、水酸基含有樹脂(A)の固形分100質量部に対し、2〜10質量部になるように選定され、4〜8質量部に選定されることがより好ましい。(C)成分が2質量部未満では、可使時間を延長させる効果が乏しく、10質量部を超えると2液型ウレタン塗料の架橋性を損ない、塗膜性能に悪影響を及ぼす。
【0021】
本発明の2液型ウレタン塗料組成物に用いられるポリイソシアネ−ト化合物(D)としては、水酸基と反応するイソシアネート官能基を1分子中に少なくとも2個以上、好ましくは3個以上有するものであり、1種単独で用いてもよく、2種類以上の混合物を用いても良い。
1分子当たりイソシアネート基2個以上を有するポリイソシアネート化合物としては、例えば、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートのような芳香族ジイソシアネート類、あるいは1,4−テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1、6−ジイソシアネートのような脂肪族ポリイソシアネート類、またはイソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネートのような脂環式ポリイソシアネート類などのビュレット体、イソシアヌレート体、または多官能アルコールとのアダクト体などのポリイソシアネート化合物が硬化剤として使用される。
【0022】
このうち耐候性、特に非黄変性の面から脂肪族ポリイソシアネート化合物を用いるのが好ましい。
本発明の硬化剤(D)の含有量は、水酸基含有樹脂(A)の水酸基と官能基数が、NCO/OHのモル比で0.5〜1.5であり、より好ましくは0.8〜1.2の割合である。イソシアネート基の水酸基に対するモル比が、0.5未満の場合は十分な架橋密度が得られないため、硬度や耐薬品性などの塗膜性能が低下し、1.5を超える場合は、未反応のポリイソシアネート化合物が残るため、硬度や耐候性などの塗膜性能や塗膜外観が低下する。
【0023】
本発明の2液型ウレタン塗料組成物は、顔料、染料、光輝剤などの1種以上を含有してもよく、そのままで、あるいは必要に応じて、他の有機溶剤(アルコール系を除く)、各種添加剤、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、界面活性剤、表面調整剤、硬化反応触媒、帯電防止剤、香料、さらにはポリエチレンワックス、ポリアマイドワックス、内部架橋型樹脂微粒子等のレオロジー調整剤などの1種以上を添加して使用することができる。なお、これらの添加成分は、主剤に含有させることが好ましい。ただし、本発明の2液型ウレタン塗料組成物は、オルガノシリケート化合物の部分加水分解縮合物を含まない。
本発明の2液型ウレタン塗料組成物は、クリヤー塗料として用いてもよいし、染料、顔料などの着色剤を配合して着色塗料として用いてもよいが、上塗り塗料組成物として使用することが好ましい。
【0024】
本発明の2液型ウレタン塗料組成物は、種々の基材に対して塗布可能である。上記基材としては、例えば、鉄、アルミニウム、銅またはこれらの合金等の金属類;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂類や各種のFRP等のプラスチック材料;木材、繊維材料(紙、布等)等の天然または合成材料等が挙げられる。またこれらの基材上には、他の塗料による塗膜が形成されていてもよい。
本発明の2液型ウレタン塗料組成物は、種々の塗装方法を用いて塗布可能であり、例えば、塗膜乾燥膜厚が10〜80μmになるように塗装された後、常温〜約160℃で乾燥することにより塗膜を得ることができる。
【実施例】
【0025】
次に、本発明を実施例及び比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0026】
<製造例>
水酸基含有樹脂溶液A−1の製造
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、キシレンを33.9部仕込み、窒素気流下攪拌しながら加熱し140℃を保った。次に、140℃の温度で、メタクリル酸ブチル18.4部、スチレン9部、メタクリル酸2-エチルへキシル5.7部、アクリル酸4−ヒドロキシブチル18.9部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル7.5部、アクリル酸0.5部のラジカル重合性単量体と、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート5部との均一に混合した滴下成分を2時間かけて滴下ロートより等速滴下した。滴下終了後、140℃の温度を1時間保った後、反応温度を110℃に下げた。その後、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.1部をキシレン1部に溶解させた重合開始剤溶液を追加触媒として添加し、さらに110℃の温度を2時間保ったところで反応を終了し、水酸基含有樹脂溶液A−1を得た。得られた樹脂溶液A−1の樹脂水酸基価は176.7mgKOH/g、不揮発分は63.7質量%、及びゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した数平均分子量は3,800であった。
【0027】
<実施例1〜6>
表1に記載した主剤の各成分を順次混合して均一になるように撹拌し、主剤を予め調製し、次に、調製した主剤と硬化剤を混合して均一になるように撹拌し、実施例1〜6のクリヤー塗料組成物を作成した。その評価結果も、表1に示す。尚、塗膜性能については、下記の手順に従い、試験片を作成後、塗膜性能の評価を行った。
【0028】
<比較例1〜8>
表2に記載した主剤の各成分を順次混合して均一になるように撹拌し、主剤を予め調製し、次に、調製した主剤と硬化剤を混合して均一になるように撹拌し、比較例1〜8のクリヤー塗料組成物を作成した。その評価結果も、表2に示す。尚、塗膜性能については、下記の手順に従い、試験片を作成後、塗膜性能の評価を行った。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
表1及び表2において、カッコ付き数字は、以下のものを示す。
1)チヌビン900(紫外線吸収剤;商品名、チバスペシャリティケミカルス社製)のキシレン20質量%溶液
2)BYK−300(表面調整剤;商品名、ビックケミー社製)のキシレン10質量%溶液
3)ソルベッソ100(芳香族ナフサ;商品名、エクソンモービル社製)
4)バソナートHI−172(HDI系イソシアヌレート型3量体;商品名、BASF社製、不揮発分72%、NCO含有率15.9質量%、1分子中のイソシアネート(官能基)数3個)
【0032】
試験片の作成及び塗膜性能の評価
リン酸亜鉛処理軟鋼板にカチオン電着塗料アクアNo.4200(商品名、BASFコーティングスジャパン社製)を乾燥膜厚20μmとなるように電着塗装して、次いで175℃で25分間焼き付け、さらに中塗り塗料HS−H300(商品名、BASFコーティングスジャパン社製)を乾燥膜厚30μmとなるようにエアスプレー塗装し、次いで140℃で30分間焼き付け、中塗り塗膜を形成した。次に、中塗り塗膜の表面に、溶剤系ベースコート塗料であるベルコートNo.6000黒(商品名、BASFコーティングスジャパン社製、塗色:黒)を乾燥膜厚15μmとなるようにエアスプレー塗装し、20℃で3分間セット後、本発明の上記クリヤー塗料組成物をウェット・オン・ウェット方式で乾燥膜厚40μmとなるようにエアスプレー塗装し、次いで140℃で30分間焼き付けて試験片を作成した。
このようにして得られた試験片を用い、塗膜外観、硬度及び耐酸性の評価を行った。
【0033】
塗料及び塗膜の評価方法
可使時間
上記実施例1〜6、比較例1〜8のクリヤー塗料組成物の作成において、主剤と硬化剤を混合後、20℃に設定された恒温室に放置し、流動性がなくなるまでの時間を可使時間として測定し、次の基準で評価した。
○ : 24時間以上
△ : 16〜24時間
× : 16時間以下
【0034】
(2)塗膜外観
得られた試験片の目視観察により、次の基準に従い評価した。
○:塗膜に蛍光灯を映すと、蛍光灯が鮮明に映る。
△:塗膜に蛍光灯を映すと、蛍光灯の周囲(輪郭)がややぼやける。
×:塗膜に蛍光灯を映すと、蛍光灯の周囲(輪郭)が著しくぼやける。
【0035】
硬度
JIS K 5600−5−4 引っかき硬度(鉛筆法)に基づき、「ユニ(三菱鉛筆(株)製商品名)」のHBの鉛筆を用い試験を行い、次の基準で評価した。
○ : 位置を変えて5回試験を行い、2回以上傷がつかない(2回未満)。
× : 2回以上傷がつく。
【0036】
耐酸性
0.1N硫酸水溶液0.2mlを試験板にスポット状に乗せた後、40℃で1時間加熱し、その後、水洗いしてシミ跡の発生度合いを目視観察し、次の基準で評価した。
○ : 塗膜にシミ跡が見られない。
× : 塗膜にシミ跡が見られる。
【0037】
実施例及び比較例から明らかなように、本発明組成物の実施例1〜6は、比較例1〜8に比べ、可使時間及び塗膜性能において良好な結果となった。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有樹脂(A)、加水分解性エステル化合物(B)及びアルコール系溶剤(C)を含む主剤と、ポリイソシアネ−ト化合物(D)を含む硬化剤からなり、主剤と硬化剤を混合して得られる塗料組成物中において、水酸基含有樹脂(A)の固形分100質量部に対し、加水分解性エステル化合物(B)を有効成分で2〜35質量部、アルコール系溶剤(C)2〜10質量部になるように、(B)成分及び(C)成分を主剤中に含有しており、水酸基含有樹脂(A)の水酸基とポリイソシアネ−ト化合物(D)の官能基数が、NCO/OHのモル比で0.5〜1.5の割合で混合されることを特徴とする2液型ウレタン塗料組成物。
【請求項2】
水酸基含有樹脂(A)が、アクリル樹脂であり、ポリイソシアネ−ト化合物(D)が、脂肪族ポリイソシアネート化合物である請求項1記載の2液型ウレタン塗料組成物。









【公開番号】特開2010−189480(P2010−189480A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32896(P2009−32896)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(599076424)BASFコーティングスジャパン株式会社 (59)
【Fターム(参考)】