説明

2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物

【課題】本発明は、塩化ビニルとの接着性、作業性および水中での接着性に優れ、硬化時の発泡を抑えた2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリブタジエンポリオール10〜60質量%を含むポリオール(a)と、ポリイソシアネート(b)とを反応させてなるウレタンプレポリマー(A)と、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(B)とを含有する主剤と、ポリブタジエンポリオール10〜50質量%を含むポリオール(C)を含有する硬化剤とからなり、前記主剤に含まれるイソシアネート基と前記硬化剤に含まれるヒドロキシ基とのモル比(NCO/OH)が0.8〜1.05である、2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
分子中にイソシアネート基(−NCO)を2個以上有するポリイソシアネート化合物、例えばウレタンプレポリマーは、アミン化合物やポリオール化合物等の硬化剤との反応により三次元架橋構造を形成し、強度、伸度、耐摩耗性、耐油性等に優れたポリウレタン硬化物となる。このようなポリイソシアネート化合物を主剤とするポリウレタン樹脂組成物は、従来より、目地材、シーラント、接着剤等として広く利用されている。
【0003】
アミン化合物やポリオール化合物等の硬化剤とポリイソシアネート化合物を混合状態で貯蔵すると、貯蔵中にゲル化が起こったり、硬化反応が進行したりして貯蔵安定性が劣るという問題がある。また、ポリイソシアネート化合物と硬化剤の相溶性が乏しいと、これらが貯蔵中に分離し不均質な硬化物となってしまうという問題もある。更に、1成分系ポリウレタン樹脂組成物は、湿気で硬化していくため、深部硬化が必要とされる部位には適用することができないという問題がある。
これらの問題を回避するため、通常、ポリウレタン樹脂組成物は作業時に混合するいわゆる2成分系(2液型)として用いられている。
【0004】
2液型ポリウレタン樹脂組成物としては、例えば、特許文献1には、構造用ポリウレタン接着剤の製造方法として「第一成分および第二成分の混合物を混合し反応させることを含んで成る構造用接着剤の製造方法であって、第一成分が、1.5〜2.5の官能価を有する水素化ポリブタジエンポリオールを含んで成り、第二成分が、2〜3の官能価を有するポリイソシアネートを含んで成り、あるいは、第一成分が、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびジアルキルシロキサンとアルキレンオキシドとのヒドロキシ末端コポリマーから成る群から選択される、1.5〜2.5の官能価、および500〜10000の数平均分子量を有するポリマーポリオールを含んで成り、第二成分が、1.5〜2.5の官能価および30〜70重量%の水素化前の1,2ビニル含有率を有する水素化ポリブタジエンポリオールを、2〜3の官能価を有する過剰のポリイソシアネートと反応させることによって得られるイソシアネート末端プレポリマーを含んで成り、その混合物において、NCO:OHモル比が1.05より大きく1.6以下であるような量で第一成分および第二成分が存在する製造方法」が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、従来接着困難であったポリエステルフィルムとフッ素樹脂フィルムのラミネート接着に特に好適に用いることができ、接着性能および接着耐久性に優れることを目的とした二液型ポリウレタン接着剤組成物が記載されている。具体的には、数平均分子量が800〜3,500の高分子ポリオール(a1)と過剰の脂肪族および/または脂環式ポリイソシアネート(a2)とからの末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーからなる主剤(A)、数平均分子量が1,000〜3,500のポリジエンポリオール(b1)および/またはその末端ヒドロキシル基含有誘導体(b2)からなる硬化剤(B)、および有機溶剤(C)とからなることを特徴とする二液型ポリウレタン接着剤組成物が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特表2001−514277号公報
【特許文献2】特開2000−290630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の製造方法で製造された構造用ポリウレタン接着剤は、塩化ビニル(塩ビ)等のシート、フィルムを接着することができるが、室温で固形状であり、使用する際に加熱が必要なため作業性が悪かった。また、特許文献1の製造方法によれば「NCO:OHモル比が1.05より大きく1.6以下であるような量で第一成分および第二成分が存在」するため、この組成物中にはイソシアネート基が過剰に存在している。そのため、水分が多量に存在する環境下(例えば、降雨時の屋外、波打ちぎわ、水中等)で硬化させるとき、イソシアネート基と水が反応して二酸化炭素が発生するため発泡の問題があった。
また、特許文献2に記載の二液型ポリウレタン接着剤組成物は、屋外等の水が多量に存在する環境下で使用する際に問題が生じるおそれがある。また、作業性を改善するために有機溶剤を用いているため、環境への負荷が大きい。そのため、近年問題とされているVOC削減の点から、無溶剤で使用できる2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物が要求されている。
【0008】
ところで、ウレタンプレポリマーの原料または硬化剤として用いられるポリオールの中でも、ポリブタジエンポリオールは低極性で、疎水性に優れている。一方、ポリエーテルポリオールは高極性のため塩化ビニル等との接着性に優れるといった特性を有している。しかしながら、これらのポリオールはその極性の差により相溶性が低く、併用した場合に層分離を引き起こす等の問題があった。
【0009】
したがって、本発明は、塩化ビニルとの接着性、作業性および水中での接着性(水中接着性)に優れ、硬化時の発泡を抑えた2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意検討した結果、特定のウレタンプレポリマー(A)と、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(B)とを含有する主剤と、特定の割合でポリブタジエンポリオールを含むポリオール(C)を含有する硬化剤とを用い、上記主剤に含まれるイソシアネート基と上記硬化剤に含まれるヒドロキシ基とのモル比(NCO/OH)を特定の範囲にすると、塩化ビニルとの接着性、作業性および水中接着性に優れ、硬化時の発泡を抑えることができることを知見し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(5)を提供する。
【0011】
(1)ポリブタジエンポリオール10〜60質量%を含むポリオール(a)と、ポリイソシアネート(b)とを反応させてなるウレタンプレポリマー(A)と、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(B)とを含有する主剤と、
ポリブタジエンポリオール10〜50質量%を含むポリオール(C)を含有する硬化剤とからなり、
前記主剤に含まれるイソシアネート基と前記硬化剤に含まれるヒドロキシ基とのモル比(NCO/OH)が0.8〜1.05である、2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
【0012】
(2)前記ポリオール(a)および/または前記ポリオール(C)が、ポリエーテルポリオールを含む上記(1)に記載の2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
【0013】
(3)前記ポリオール(a)および/または前記ポリオール(C)が、ひまし油系ポリオールを含む上記(1)または(2)に記載の2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
【0014】
(4)前記ポリオール(a)のヒドロキシ基に対する前記ポリイソシアネート(b)のイソシアネート基のモル比(NCO/OH)が、1.7〜2.0である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
【0015】
(5)前記主剤および/または前記硬化剤が、可塑剤を含有する上記(1)〜(4)のいずれかに記載の2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
【発明の効果】
【0016】
本発明の2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物は、塩化ビニル、特に軟質塩化ビニルとの接着性、作業性および水中接着性に優れ、硬化時の発泡を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物(以下、「本発明の組成物」ともいう。)は、ポリブタジエンポリオール10〜60質量%を含むポリオール(a)と、ポリイソシアネート(b)とを反応させてなるウレタンプレポリマー(A)と、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(B)とを含有する主剤と、ポリブタジエンポリオール10〜50質量%を含むポリオール(C)を含有する硬化剤とからなり、上記主剤に含まれるイソシアネート基と上記硬化剤に含まれるヒドロキシ基とのモル比(NCO/OH)が0.8〜1.05であるものである。
【0018】
ところで、ポリエーテルポリオール等の比較的高極性な主鎖骨格を有するポリオールを原料とするポリウレタン樹脂組成物を水中で硬化させる場合、その高い極性により水を吸着しやすく、硬化物中に水を巻き込んでしまうために発泡を生じる問題がある。
一方、本発明の組成物に用いられるポリブタジエンポリオールは、比較的極性の低いポリブタジエン骨格を有しているため、水を吸着し難い。したがって、ポリブタジエン骨格を有するウレタンプレポリマー(A)と、硬化剤として用いられるポリブタジエンポリオールを含有する本発明の組成物は、水中で硬化させる場合でも、硬化物中に水を巻き込むことがなく、発泡を抑制することができる。
【0019】
上述した特性により優れる点から、本発明の組成物において、上記ポリオール(a)および上記ポリオール(C)に含まれるポリブタジエンポリオールの合計が、組成物の全樹脂量に対して25〜75質量%であることが好ましく、30〜60質量%であることがより好ましい。なお、組成物の全樹脂量とは、ウレタンプレポリマー(A)、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(B)およびポリオール(C)の合計質量を意味し、可塑剤やその他の添加剤は含まれないとする。
【0020】
また、従来より、ポリブタジエンポリオールとポリエーテルポリオールとは相溶性が低いため、これらを併用したときには層分離等の問題を生じることがあった。
一方、本発明の組成物において、低極性のポリブタジエンポリオールを含むポリオール(a)をポリイソシアネート(b)と反応させてウレタンプレポリマー(A)にすると、骨格にウレタン結合が生成し極性が高くなる。そのため、ポリエーテルポリオールとの相溶性が向上し、層分離等の問題を抑制することができる。また、得られるウレタンプレポリマー(A)はポリブタジエン骨格を有するため、硬化剤に含有されるポリブタジエンポリオールとの相溶性にも優れる。
【0021】
したがって、ウレタンプレポリマー(A)の原料となる上記ポリオール(a)は、上述したようなポリブタジエンポリオールの有する優れた効果を発揮することができ、作業性および硬化物の物性のバランスにも優れる点から、ポリブタジエンポリオールを10〜60質量%含む。これらの特性により優れる点から、上記ポリオール(a)は、ポリブタジエンポリオールを10〜50質量%含むのが好ましく、20〜40質量%含むのがより好ましい。
また、上述したようなポリブタジエンポリオールの有する優れた効果を発揮することができ、作業性および硬化物の物性のバランスを取るため、硬化剤に含有されるポリオール(C)は、ポリブタジエンポリオールを10〜50質量%含む。
【0022】
<ウレタンプレポリマー(A)>
上記ウレタンプレポリマー(A)は、本発明の組成物の主剤に樹脂成分として含有されるものであり、常温で液状である。このウレタンプレポリマー(A)は、ポリブタジエンポリオール10〜60質量%を含むポリオール(a)と、ポリイソシアネート(b)とを反応させて得られるものである。
【0023】
上記ポリブタジエンポリオールは、末端にヒドロキシ基を有するブタジエンおよびそれらの共重合体であれば、特に限定されない。例えば、ポリブタジエンポリオールの構造が、トランス型、シス型または1,2ビニル型(1,2−付加型)を含んでいてもよい。このようなミクロ構造は一般に、クロロホルム中における13C核磁気共鳴(NMR)スペクトルによって確認できる。
【0024】
ポリブタジエンポリオールは液状であれば、その数平均分子量は特に限定されないが、例えば、1000〜4000であるのが好ましい。この範囲であると、硬化物の物性のバランスに優れるという効果がある。この効果により優れる点で数平均分子量は1000〜2000であるのがより好ましい。
【0025】
ポリブタジエンポリオールは、定法にしたがって製造してもよく、または、市販品を用いてもよい。
【0026】
ポリブタジエンポリオールは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記ポリオール(a)が含む上記ポリブタジエンポリオールの量は、上述したとおりである。
【0027】
上記ポリオール(a)は、上記ポリブタジエンポリオール以外に、ポリエーテルポリオールを含むのが好ましい。ポリエーテルポリオールを含む場合は、ポリエーテルポリオールの骨格が比較的高極性のため、得られる組成物の塩化ビニルに対する接着性(以下、便宜上「塩ビ接着性」ともいう。)に優れる。また、ポリエーテルポリオールは比較的低粘度であるため作業性に優れ、更に、硬化物の物性のバランスに優れ、価格も安価である。
【0028】
上記ポリエーテルポリオールは、特に限定されないが、ヒドロキシ基数が2〜4で、ヒドロキシ基当たりの数平均分子量が100〜5,000であることが好ましい。
上記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、4,4′−ジヒドロキシフェニルプロパン、4,4′−ジヒドロキシフェニルメタン、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等の多価アルコールの少なくとも1種に、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等の少なくとも1種を付加して得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。
具体的には、例えば、ポリプロピレンエーテルジオール、ポリエチレンエーテルジオール、ポリプロピレンエーテルトリオール、テトラヒドロフランの開環重合によって得られるポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
これらのポリエーテルポリオールは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、5000〜10000であるのが好ましく、2000〜8000であるのがより好ましい。
【0030】
ポリエーテルポリオールは、定法にしたがって製造してもよく、または、市販品を用いてもよい。
【0031】
ポリエーテルポリオールの含有量は、上記ポリオール(a)の10〜90質量%が好ましく、40〜70質量%がより好ましい。
【0032】
上記ポリオール(a)が、上記のポリオール以外に、ひまし油系ポリオールを含むものが好ましい態様の一つである。ひまし油系ポリオールを含む場合は、粘度が低下し作業性に優れる。また、ひまし油系ポリオールは、ポリブタジエンポリオールとポリエーテルポリオールとの相溶化剤としても働くので、相溶性が更に向上し、層分離を抑制でき、硬化物の物性がより優れたものになる。
【0033】
上記ひまし油系ポリオールとしては、ひまし油、および、そのアルキレンオキシド付加物、そのエポキシ化合物、そのハロゲン化物、ひまし油を原料とした二価以上の多価アルコールとのエステル交換物等の誘導体等が挙げられる。
【0034】
上記ひまし油系ポリオールは、定法にしたがって製造してもよく、または、市販品を用いてもよい。
【0035】
ひまし油系ポリオールの含有量は、上記ポリオール(a)の20〜80質量%が好ましく、30〜50質量%がより好ましい。
【0036】
上述したポリオール以外のポリオールとしては、例えば、ポリイソプレンポリオール等のポリオレフィン系ポリオール;アジペート系ポリオール;ラクトン系ポリオール;低分子多価アルコール類および/または芳香族ジオール類と、多塩基性カルボン酸との縮合物(縮合系ポリエステルポリオール);ラクトン系ポリオール;ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール等を用いることができる。
【0037】
上記ポリイソシアネート(b)は、分子内にNCO基を2個以上有する化合物であれば特に限定されず、その具体例としては、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)等の脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6XDI(水添XDI)、H12MDI(水添MDI)、H6TDI(水添TDI)等の脂環式ポリイソシアネート;これらのポリイソシアネート化合物のカルボジイミド変性ポリイソシアネート;これらのポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性ポリイソシアネート等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、分子内にNCO基を1個のみ有するモノイソシアネート化合物も、ジイソシアネート化合物等と混合することにより用いることができる。
【0038】
これらの中でも、硬化物の物性(特に強度)に優れ、また、安価かつ入手が容易であることから、MDIおよびTDIが好ましい。
【0039】
上記ウレタンプレポリマー(A)は、上記ポリオール(a)と上記ポリイソシアネート(b)とを反応させて得られる。このとき、ポリオール(a)のヒドロキシ基に対するポリイソシアネート(b)のイソシアネート基のモル比(NCO/OH)は1.7〜2.0とするのが好ましく、1.85〜1.95とするのがより好ましい。この範囲であれば、ウレタンプレポリマー(A)の粘度が増加することなく硬化物の物性が良好となる。
【0040】
上記ウレタンプレポリマー(A)の製造方法は、通常のウレタンプレポリマーと同様の方法を選択できる。具体的には、例えば、上記したポリブタジエンポリオール、ポリエーテルポリオールおよびひまし油系ポリオールの混合物ならびにポリイソシアネートを、50〜100℃で加熱撹拌することにより得られる。また、必要に応じて、有機スズ化合物、有機ビスマス、アミン等のウレタン化触媒を用いてもよい。
【0041】
上記ウレタンプレポリマー(A)は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
<イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(B)>
主剤に含有されるイソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(B)は、常温で液状であり、少なくとも1つのイソシアヌレート基(環)と、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば特に限定されない。イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(B)は、極性の高いイソシアヌレート基を有するため、塩化ビニル、特に軟質塩化ビニルに対する接着性に優れた組成物を得ることができる。
【0043】
イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(B)は、公知の条件・方法により製造することができるが、例えば、上記ポリイソシアネート(b)で例示したイソシアネート化合物と触媒とを混合し、通常50〜150℃で反応させて得ることができる。
【0044】
イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(B)に用いられるイソシアネート化合物としては、特に限定されないが、常温で液体であり、溶媒を必要としない点からHDIが好ましい。
上記イソシアネート化合物は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
上記触媒としては、具体的には、例えば、ナトリウムメチラート等のアルコキシド、トリエチルアミン等のアミン化合物、ナフテン酸カルシウム等のカルボン酸塩、ジブチルスズジラウレート等の有機金属化合物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
上記イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(B)の含有量は、上記ウレタンプレポリマー(A)に対して1〜5質量%であるのが好ましい。含有量がこの範囲であると、塩ビ接着性に優れ、また、硬化物の伸びが十分に得られる。
【0047】
<ポリオール(C)>
硬化剤に含まれるポリオール(C)は、常温で液状であり、ポリブタジエンポリオールを10〜50質量%含む。ポリオール(C)としては、ポリブタジエンポリオールの含有量が異なる点以外は、上記ポリオール(a)と基本的に同様のものを用いることができる。したがって、ポリオール(C)は、上記ポリオール(a)と同様にポリブタジエンポリオールを含むことから、本発明の組成物を水中で硬化させる場合でも、硬化物中に水を巻き込むことがなく発泡を抑制することができる。また、上記ポリオール(C)がポリブタジエンポリオールを上記の割合で含有すると、水中での発泡を抑えることができ、更に、粘度が高くなり過ぎるのを防ぐことができるので作業性に優れた組成物が得られる。これらの特性により優れた組成物が得られる点から、上記ポリオール(C)は、ポリブタジエンポリオールを20〜40質量%含むのが好ましい。
【0048】
上記ポリオール(C)は、上記ポリブタジエンポリオール以外に、ポリエーテルポリオールを含むのが好ましい。このポリエーテルポリオールは、上記ポリオール(a)に含まれるものと同様である。
【0049】
ポリエーテルポリオールの含有量は、上記ポリオール(C)の10〜90質量%が好ましく、40〜80質量%がより好ましい。
【0050】
上記ポリオール(C)が、上記のポリオール以外に、ひまし油系ポリオールを含むのが好ましい態様の一つである。このひまし油系ポリオールは、上記ポリオール(a)に含まれるものと同様である。
【0051】
ひまし油系ポリオールの含有量は、上記ポリオール(C)の20〜80質量%が好ましく、30〜50質量%がより好ましい。
【0052】
上述したポリオール以外のポリオールとしては、例えば、ポリイソプレンポリオール等のポリオレフィン系ポリオール;アジペート系ポリオール;ラクトン系ポリオール;低分子多価アルコール類および/または芳香族ジオール類と、多塩基性カルボン酸との縮合物(縮合系ポリエステルポリオール);ラクトン系ポリオール;ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール等を用いることができる。
【0053】
本発明の組成物において、上記主剤に含まれるイソシアネート基の合計と、上記硬化剤に含まれるヒドロキシ基の合計とのモル比(NCO/OH)は、0.8〜1.05である。上記モル比がこの範囲であると、上記主剤と上記硬化剤とを混合した後も一定時間は液状で、流動性があるため、様々な施工箇所に注入可能である。また、特許文献1に記載の構造用ポリウレタン接着剤のような使用時に加熱して溶融する工程が不要であるため作業性に優れる。これらの特性により優れる点から、上記モル比は0.9〜1.05が好ましく、0.95〜1.05がより好ましい。
【0054】
本発明の組成物は、更に、可塑剤を含有するのが好ましい態様の一つである。可塑剤は、上記主剤および上記硬化剤の一方または両方に含有される。可塑剤を用いた場合は、粘度が低くなるので作業性に優れた組成物を得ることができる。また、ポリブタジエンポリオールとポリエーテルポリオールとの相溶性、および、主剤と硬化剤との相溶性がより向上するので、均一な組成物が得られ、硬化物の物性がより優れたものになる。
可塑剤が主剤に含有されるときは、上記ウレタンプレポリマー(A)の製造時に上記ポリオール(a)および上記ポリイソシアネート(b)等と共に混合することが好ましい。ポリオール(a)に含まれるポリブタジエンポリオールとポリエーテルポリオールとの相溶性が向上することにより、物性に優れたウレタンプレポリマー(A)が得られるからである。このようにしてウレタンプレポリマー(A)を製造した場合、ウレタンプレポリマー(A)(樹脂成分)中に可塑剤が分散した液状混合物が得られる。
ここで、本明細書においては「ウレタンプレポリマー(A)」という用語は上記可塑剤を含まない意味で用いられる。
【0055】
上記可塑剤としては、具体的には、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジメチルフタレート(DMP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジノニルフタレート(DNP)、ブチルベンジルフタレート(BBP)、フタル酸イソデシル(DIDP)等のフタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アゼライン酸ジオクチル(DOZ)、コハク酸ジオクチル(DOC)、コハク酸イソデシル(IDC)、セバシン酸イソデシル(IDS)セバシン酸ジブチル(DBS)セバシン酸ジオクチル(DOS)、オレイン酸ブチル、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)等の脂肪族カルボン酸エステル;ペンタエリストリールエステル等のグリコールエステル類;リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル類;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジル等のエポキシ可塑剤;ポリエステル系可塑剤;パインタール、リノール酸、オレイン酸、アビエチン酸、菜種油、綿実油、落下生油、パーム油等の植物油系;エキステンダー、プロセス油、パラフィン系油、ナフテン系油、芳香族系油等の鉱物油系;モノエステル系、エポキシ系、塩素化パラフィン系、エーテル系、チオエーテル系、ポリエステル系、ポリエーテル系等の合成可塑剤系等が挙げられる。
これらの可塑剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
これらの可塑剤の中でも、DINAおよびDINPが好ましい。汎用性が高いので安価で入手しやすく、他の化合物との相溶性にも優れているからである。
【0057】
上記主剤に含有される可塑剤の含有量は、ウレタンプレポリマー(A)と上記可塑剤との合計質量に対して、10〜40質量%が好ましく、20〜30質量%がより好ましい。一方、上記硬化剤に含有される可塑剤の含有量は、硬化剤全体に対して5〜20質量%が好ましく、8〜15質量%がより好ましい。可塑剤の含有量が上記の範囲であれば、ポリブタジエンポリオールとポリエーテルポリオールとの相溶性、および、主剤と硬化剤との相溶性がより向上し、また、硬化物の物性の低下や塩ビ接着性の低下が起きることがない。
【0058】
本発明の組成物は、炭酸カルシウムを含有するのが好ましい態様の一つである。
本発明の組成物に用いられる炭酸カルシウムは、特に限定されず、その具体例としては、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム)、コロイダル炭酸カルシウム等が挙げられる。また、脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステル、高級アルコール付加イソシアネート化合物等により表面処理された表面処理炭酸カルシウムも用いることができる。具体的には、脂肪酸で表面処理された炭酸カルシウムとして、ホワイトン305(重質炭酸カルシウム、白石カルシウム社製)、白艶華CCR(コロイダル炭酸カルシウム、白石工業社製)、カルファイン200(コロイダル炭酸カルシウム、丸尾カルシウム社製)、変性脂肪酸で表面処理された炭酸カルシウムとして、ライトンA−4(重質炭酸カルシウム、備北粉化工業社製)、脂肪酸エステルで表面処理された炭酸カルシウムとして、スノーライトSS(重質炭酸カルシウム、丸尾カルシウム社製)、シーレッツ200(コロイダル炭酸カルシウム、丸尾カルシウム社製)等が好適に用いられる。これらのうち、脂肪酸、変性脂肪酸、脂肪酸エステル、高級アルコール付加イソシアネート化合物等で表面処理されたものが、特に好ましい。表面処理炭酸カルシウムは、粘度を高くするため形状保持性および作業性に寄与し、また、表面が疎水性であるため貯蔵安定性に寄与する。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
炭酸カルシウムの含有量は、適切な作業性を得る観点から、上記ウレタンプレポリマー(A)、上記イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(B)および上記ポリオール(C)の合計100質量部に対して50〜80質量部であるのが好ましい。
【0060】
本発明の組成物は、必要に応じて、本発明の目的を損わない範囲で、炭酸カルシウム以外の充填剤、反応遅延剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、溶剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、接着付与剤、帯電防止剤等の各種添加剤等を含有することができる。これらの添加剤は、上記主剤および硬化剤の一方または両方に含有することができる。
【0061】
炭酸カルシウム以外の充填剤としては、各種形状の有機または無機の充填剤が挙げられる。具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;ケイソウ土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグレシウム;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;カーボンブラック;これらの脂肪酸処理物、樹脂酸処理物、ウレタン化合物処理物、脂肪酸エステル処理物が挙げられる。充填剤の含有量は、硬化物の物性の点で、全組成物中の90質量%以下であるのが好ましい。
【0062】
老化防止剤としては、具体的には、例えば、ヒンダードフェノール系等の化合物が挙げられる。
酸化防止剤としては、具体的には、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等が挙げられる。
【0063】
顔料としては、具体的には、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料;アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、キノナフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、イソインドリン顔料、カーボンブラック等の有機顔料等が挙げられる。
【0064】
揺変性付与剤としては、具体的には、例えば、エアロジル(日本エアロジル(株)製)、ディスパロン(楠本化成(株)製)等が挙げられる。
接着付与剤としては、具体的には、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。
【0065】
難燃剤としては、具体的には、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテル等が挙げられる。
帯電防止剤としては、一般的には、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物等が挙げられる。
【0066】
本発明の組成物を製造する方法は、特に限定されないが、例えば、ウレタンプレポリマー(A)、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(B)ならびに所望により加えられる可塑剤および添加剤を減圧下または窒素等の不活性ガス雰囲気下で、混合ミキサー等のかくはん装置を用いて十分に混練し、均一に分散させて得られる主剤と、ポリオール(C)ならびに所望により加えられる可塑剤および炭酸カルシウム等の各種添加剤を含有する硬化剤とを、使用時に混練させて得られる。
【0067】
このようにして得られる本発明の組成物は、塩化ビニル、特に軟質塩化ビニルとの接着性、作業性および水中接着性に優れ、硬化時の発泡を抑えることができる。
【0068】
本発明の組成物の用途は、特に限定されないが、本発明の組成物は、液状で流動性があり、また、水分が多量に存在する環境下(例えば、降雨時の屋外、波打ちぎわ、水中等)でも硬化させることができる。そのため、様々な箇所に打ち継ぎ(施工)することができるので、シーリング材、接着剤等の幅広い用途に使用できる。特に、上述したような優れた特性を有する点から、軟質塩化ビニルからなる複合シートにおけるシート同士の接着に好適に用いることができる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
<主剤1〜7の調製>
第1液として、以下に示す主剤1〜7を用いた。
下記第1表に示す各ポリオールおよび可塑剤を第1表に示す割合(質量部)で混合し、この混合物を減圧下、110℃で8時間脱水した後、この混合物に対してジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)をNCO/OHモル比が1.95となるように、第1表に示す量添加し、窒素気流中、80℃で24時間かくはんし、反応させてウレタンプレポリマーを含む各混合物を得た。ただし、下記第1表中、可塑剤の添加量は、得られたウレタンプレポリマーと可塑剤との合計質量(即ち、上記各混合物の質量)に対する質量%を表す。
次に、上記反応(ウレタンプレポリマーの生成反応)の反応率が100%になったところで、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(B)を得られた各混合物に第1表に示す量添加し、かくはん混合して各主剤を得た。なお、下記第1表中、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(B)の添加量は、得られたウレタンプレポリマー(可塑剤の添加量は含まず。以下同じ。)100質量部に対する質量部を表すものである。また、NCO%とは、プレポリマーの全質量に対するNCO基の質量%を表す。
【0070】
【表1】

【0071】
第1表に示す各成分は下記のとおりである。
・ポリブタジエンポリオール:R45HT、数平均分子量2800、水酸基価46.6mgKOH/g、出光石油化学(株)製
・ポリエーテルポリオール1:D2000、数平均分子量2000、水酸基価56mgKOH/g、旭硝子(株)製
・ポリエーテルポリオール2:G8000G、数平均分子量8000、水酸基価20.3mgKOH/g、旭硝子(株)製
・ひまし油系ポリオール1:数平均分子量2000、水酸基価50.4mgKOH/g ・MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート):コスモネートPH、三井武田ケミカル(株)製
・可塑剤(アジピン酸ジイソノニル):DINA、ジェイ・プラス(株)製
・イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(B)(HDIトリマー):タケネートD170N、三井武田ケミカル(株)製
【0072】
<樹脂組成物の調製>
(実施例1〜5、比較例1〜6)
上述した主剤1〜7および第2液の各成分を下記第2表に記載の組成(質量部)で配合し、樹脂組成物を調製した。
なお、下記第2表中の各樹脂組成物の第2液を構成する可塑剤の含有量は、主剤に含有される可塑剤との合計が、組成物全体に対して15質量%となる量である。また、各樹脂組成物の第2液を構成する炭酸カルシウムの含有量は、各主剤を構成するウレタンプレポリマーおよびイソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(B)と、第2液を構成するポリオールとの合計100質量部に対して70質量部となる量である。第2表中、「NCO/OH」は、各主剤を構成するウレタンプレポリマーおよびイソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(B)のNCO基の合計のモル数/第2液を構成するポリオールのOH基のモル数を示す。
得られた各樹脂組成物について、以下に示す塩ビ接着性、水中での発泡性、主剤と硬化剤との相溶性、作業性、水中接着性の評価を行った。結果を第2表に示す。
【0073】
<塩ビ接着性>
得られた各樹脂組成物を軟質塩化ビニルシートに5mm厚で塗布し、23℃下で5日間養生したものを試験体とした。各試験体のナイフカットによる手はく離試験を行い、はく離状態を、CF(凝集破壊:樹脂組成物が破壊)、AF(界面破壊:軟質塩ビシートと樹脂組成物との界面で破壊)で評価した。
【0074】
<水中での発泡性>
水を入れた容器中に得られた各組成物を流し込み、水中で硬化させた。得られた硬化物の断面を目視で観察し、発泡がほとんどなかったものを「○」、発泡が確認されたものを「×」とした。
【0075】
<主剤と硬化剤との相溶性>
下記第2表に示す各樹脂組成物を硬化したときに、分離せずに硬化したものを「○」、2層に分離したものを「×」とした。
【0076】
<作業性>
得られた各組成物の粘度が、300ps未満のものを「○」、300ps以上の高粘度のものを「×」とした。
【0077】
<水中接着性>
得られた各樹脂組成物を水中(23℃)に置いた軟質塩化ビニルシートに5mm厚で塗布し、5日間養生したものを試験体とした。各試験体のナイフカットによる手はく離試験を行い、はく離状態を、CF(凝集破壊:樹脂組成物が破壊)、AF(界面破壊:軟質塩ビシートと樹脂組成物との界面で破壊)で評価した。
【0078】
【表2】

【0079】
第2表に示す各成分は下記のとおりである。なお、ポリブタジエンポリオール、ポリエーテルポリオール1、ポリエーテルポリオール2、ひまし油系ポリオール1および可塑剤は、第1表に示すものと同様のものを用いた。
・ポリエーテルポリオール3:D4000、数平均分子量4000、水酸基価30.6mgKOH/g、旭硝子(株)製
・ひまし油系ポリオール2:VRICY202、水酸基価120mgKOH/g、伊藤製油(株)製
・炭酸カルシウム:スノーライトS、丸尾カルシウム(株)製
【0080】
上記第2表の結果から明らかなように、主剤のウレタンプレポリマーがポリブタジエン骨格を持たない樹脂組成物(比較例1)は、ポリブタジエンポリオールを含む硬化剤との相溶性が悪く、また、疎水性が低いため水中で硬化させたときに水を巻き込んで発泡を生じ、水中接着性も低かった。
主剤のウレタンプレポリマーがポリブタジエン骨格を持たず、硬化剤がポリブタジエンポリオールを含有しない樹脂組成物(比較例2)は、疎水性が低く、水中で硬化させたときに発泡を生じ、水中接着性も低かった。
イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(B)を含有しない組成物(比較例3)は、塩ビ接着性および水中接着性が低かった。
ウレタンプレポリマーの原料となるポリオールがポリブタジエンポリオールのみで、硬化剤のポリオールもポリブタジエンポリオールのみである樹脂組成物(比較例4)は、高粘度で作業性が悪く、塩ビ接着性および水中接着性も低かった。
NCO(主剤)/OH(硬化剤)モル比が1.3と高く、イソシアネート基が過剰に存在する樹脂組成物(比較例5)は、水中で硬化させたときに発泡を生じ、水中接着性も低かった。
一方、実施例1〜5の樹脂組成物は、塩ビ接着性、水中での発泡性、主剤と硬化剤との相溶性、作業性および水中接着性のいずれも優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブタジエンポリオール10〜60質量%を含むポリオール(a)と、ポリイソシアネート(b)とを反応させてなるウレタンプレポリマー(A)と、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(B)とを含有する主剤と、
ポリブタジエンポリオール10〜50質量%を含むポリオール(C)を含有する硬化剤とからなり、
前記主剤に含まれるイソシアネート基と前記硬化剤に含まれるヒドロキシ基とのモル比(NCO/OH)が0.8〜1.05である、2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリオール(a)および/または前記ポリオール(C)が、ポリエーテルポリオールを含む請求項1に記載の2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリオール(a)および/または前記ポリオール(C)が、ひまし油系ポリオールを含む請求項1または2に記載の2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリオール(a)のヒドロキシ基に対する前記ポリイソシアネート(b)のイソシアネート基のモル比(NCO/OH)が、1.7〜2.0である請求項1〜3のいずれかに記載の2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
前記主剤および/または前記硬化剤が、可塑剤を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物。

【公開番号】特開2006−96912(P2006−96912A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−286203(P2004−286203)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】