説明

2液硬化型樹脂用洗浄剤組成物

【課題】汚染選択性がほとんどなく、吐出樹脂内に一部混入しても硬化阻害の懸念がなく、且つ人体に対して安全で、オゾン層破壊物質に該当せず、比較的高引火点の洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】次の式(1)で表されるグリコールエーテルアセテート(a)および式(2)で表されるグリコールエーテルアセテート(b)を含有するものとする。
【化1】


(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは1<n<3の数を表す。)
【化2】


(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表し、mは1<m<3の数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗浄剤組成物に関し、より詳細には、2液硬化型樹脂の未硬化樹脂や混合前の樹脂が付着した樹脂吐出装置等の洗浄に主として用いられる2液硬化型樹脂用洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂吐出装置の洗浄には、塩化メチレンなどハロゲン化炭化水素類が使用されてきたが、これらはオゾン層を破壊する原因物質として指摘され、その利用が大きく制限されるようになっており、また一部のハロゲン化炭化水素類は人体に対する安全性に懸念がある。そのため、現在では様々な代替品が提案されており、具体的な代替洗浄剤としては、セロソルブ類やカルビトール系溶剤類、石油系炭化水素、N−メチル−2−ピロリドンなどが検討されている。
【0003】
しかし、これらの代替洗浄剤には汚染選択性の大きいものが多く、対象汚染物によって洗浄剤を変える必要がある。また、セロソルブ類やピロリドン系溶剤には人体への安全性が懸念されるものがあり、取扱いに注意を要する。また、分子内に水酸基を持つセロソルブ類やカルビトール類は、ウレタン樹脂のように水酸基と反応するタイプの樹脂に対して硬化阻害を起こす懸念がある。さらに、それらの洗浄剤の中には引火点が低いものも多く、注意が必要である。
【0004】
これらの課題を解決するものとして、例えば特許文献1ではグリコールエーテルの酢酸エステル類と炭素数が10〜18の不飽和炭化水素を含む樹脂用洗浄剤組成物が提案されているが、未だ洗浄力が不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2006/114937
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、2液硬化型のウレタン樹脂のみならず、エポキシ樹脂・シリコーン系樹脂などによる汚染に対しても良好な洗浄性を有し、従来の洗浄剤と異なり汚染選択性がほとんどないことを特長とし、吐出樹脂内に一部混入しても硬化阻害の懸念がなく、且つ人体に対して安全で、オゾン層破壊物質に該当せず、比較的高引火点の洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、分子内に水酸基を有しない各種溶剤の中から特定のグリコールエーテル類および炭化水素を用いることにより、引火点が高く、且つ幅広い汚染物質に適用可能な洗浄剤組成が得られることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
すなわち、本発明の2液硬化型樹脂用洗浄剤組成物は、上記の課題を解決するために、次の式(1)で表されるグリコールエーテルアセテート(a)および式(2)で表されるグリコールエーテルアセテート(b)を含有するものとする。
【化1】

【0009】
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは1<n<3の数を表す。)
【化2】

【0010】
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表し、mは1<m<3の数を表す。)
【0011】
上記洗浄剤組成物は、成分(a)を20〜80重量%、成分(b)を20〜80重量%の範囲内で含有することが好ましい。
【0012】
また、上記洗浄剤組成物は、成分(c)トリデカン及び/又はテトラデカンを30重量%以下の割合でさらに含有するものとすることもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の洗浄剤組成物は、2液硬化型のウレタン樹脂・エポキシ樹脂・シリコーン系樹脂などの未硬化樹脂あるいは混合前の各樹脂組成物が付着した、金属部品・ガラス部品あるいは樹脂吐出装置などの洗浄に使用するものとして、従来のものより適用範囲が広く、様々な未硬化樹脂に対して優れた洗浄性を示すものとなる。また、比較的引火点が高いことから、安全性が高く、加温して使用することも可能である。さらに、万一、樹脂組生物の中に混入しても少量であれば硬化阻害を起こしにくいという長所も有する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に用いられる上記(a)成分の好ましい例としては、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどが挙げられる。これらの成分は単独で用いてもよく、二種類以上を混合して用いてもよい。上記(a)のグリコールエーテルアセテートについて、Rの炭素数が5以上になると洗浄性が劣る。また、nはエチレンオキサイドの平均付加モル数を表し、nは1<n<3の数であって、実質的に1以下の数及び3以上の数を含まない。nが1以下では人体への安全性が懸念され、nが3以上であると洗浄性が劣る。
【0015】
本発明に用いられる上記(b)成分の好ましい例としては、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどが挙げられる。これらの成分は単独で用いてもよく、二種類以上を混合して用いてもよい。上記(b)のグリコールエーテルアセテートについて、Rの炭素数が5以上では洗浄性が劣る。また、mはプロピレンオキサイドの平均付加モル数を表し、1<m<3の数であって、実質的に1以下の数及び3以上の数を含まない。mが1以下では引火点が低いため安全性に懸念があり、mが3以上であると洗浄性が劣る。
【0016】
本発明では、さらに(c)成分として、トリデカン、テトラデカンを上記(a)及び(b)成分と併用することもできる。これらの成分は単独で用いてもよく、二種類を混合して用いてもよい。炭化水素系溶剤は、炭素数12以下では引火点が低いため安全性に懸念があり、炭素数15以上では洗浄性が劣ることから、これらトリデカン及びテトラデカンが好適である。
【0017】
本発明の洗浄剤組成物は、上記成分(a)と(b)、又はさらに成分(c)を配合して混合することにより得られる。配合割合は、組成物全体を100重量%としたときに、成分(a)を20〜80重量%、成分(b)を20〜80重量%の範囲内で含有することが好ましい。さらに成分(c)を配合するときは、30重量%以下の割合とする。
【0018】
本発明の洗浄剤の使用に際しては、当該洗浄液を常温で使用しても良好な洗浄効果が得られるが、場合によっては80℃程度まで加温することや、或はブラッシング・超音波などの物理的操作を加えることで、洗浄性のより一層の向上が期待できる。
【実施例】
【0019】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0020】
[実施例1〜15,比較例1〜8]
表1に示された各成分を表に示された割合(重量%)で混合して、洗浄剤組成物を得た。得られた洗浄剤組成物につき、以下の評価をそれぞれ行った。なお、表1の成分(a)のエチレンオキサイド及び成分(b)のプロピレンオキサイドの平均付加モル数は2モルである。
【0021】
1.洗浄性
(1)ウレタン樹脂、エポキシ樹脂に対する洗浄性
2液硬化性樹脂(ウレタン樹脂:第一工業製薬(株)製 EF−561、エポキシ樹脂:ナガセケムテックス(株)製 XNR5002/XNH5002)の各液を所定の配合比で混合したものをSUS−304の板(25mm×70mm×2mm)に1μmの厚さで塗付し、スターラーで攪拌中の洗浄液に浸漬し、一定時間経過後の板の様子を確認し、洗浄性を下記の基準で評価した。その結果を表2に示す。
〈洗浄性〉
◎:極めて良好
○:良好
△:一部残存
×:不可
【0022】
(2)ポリオレフィンに対する洗浄性
上記(1)と同様の方法でウレタン樹脂の骨格となるポリオレフィン(出光興産製 エポール(登録商標))に対する洗浄性を確認し、上記と同じ基準で評価した。その結果を表2に示す。
【0023】
2.フィラー分散性
洗浄剤100mlにフィラーを含有する2液硬化性樹脂(第一工業製薬(株)製 EF−561)を0.2g加え、スターラーで5分間攪拌した後、2時間静置し、フィラーの分散状態を確認し、下記の基準で評価した。フィラーの分散性が良好であればフィラーの洗浄性も良好となる。結果を表2に示す。
〈フィラー分散性〉
○:良好
△:一部沈殿
×:不可
【0024】
3.引火点
クリーブランド開放式引火点測定器を用いて、洗浄剤の引火点を測定した。引火点が90℃以上のものを○、80℃以上90℃未満のものを△、80℃未満のものを×として、安全性を判定した。その結果を表2に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
表2に示されたように、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテートやジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートを用いた実施例の洗浄剤組成物は比較的引火点が高く、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂の双方に対して良好な洗浄性を示す。また、ポリオレフィンに対しては、成分(C)の炭化水素系溶剤やジエチレングリコールジブチルエーテルアセテートなど、比較的アルキル鎖の長いものを含有する場合に良好な洗浄性を示す傾向がある。
【0028】
フィラー分散性に関しても、末端にOH基をもつグリコールエーテルや炭化水素系溶剤単独に比べ、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテートやジエチレングリコールジアルキルエーテルを用いた実施例のものは、いずれも良好であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の洗浄剤組成物は、2液硬化型のウレタン樹脂・エポキシ樹脂・シリコン系樹脂などの未硬化樹脂あるいは混合前の各樹脂組成物が付着した、金属部品・ガラス部品あるいは樹脂吐出装置などの洗浄に特に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式(1)で表されるグリコールエーテルアセテート(a)および式(2)で表されるグリコールエーテルアセテート(b)を含有することを特徴とする2液硬化型樹脂用洗浄剤組成物。
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは1<n<3の数を表す。)
【化2】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表し、mは1<m<3の数を表す。)
【請求項2】
前記成分(a)を20〜80重量%、前記成分(b)を20〜80重量%の範囲内で含有することを特徴とする、請求項1に記載の2液硬化型樹脂用洗浄剤組成物。
【請求項3】
成分(c)トリデカン及び/又はテトラデカンを30重量%以下の割合でさらに含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の2液硬化型樹脂用洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2011−111464(P2011−111464A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266078(P2009−266078)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】