説明

2軸延伸ブロー成形容器

【課題】 容器内に陥没状に位置した底壁の「底落ち」変形の発生を防止して、安定した「座」機能を得ることを目的とする。
【解決手段】 2軸延伸ブロー成形された肉厚な容器1において、肉厚な底壁6の底下面7を三角円錐形状とすると共に、底壁流凹部9の肉厚を周囲部分よりも肉薄に成形することにより、蓄熱の影響により底壁6に働く力が、底壁中央部9で突き当たって相殺されると共に、蓄熱の熱影響そのものを小さくして、底壁6の「底落ち」発生を効果的に防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2軸延伸ブロー成形されたボトル状の合成樹脂製容器に関するもので、特に乳児用の容器のように、使用の度に煮沸殺菌処理が施される容器の底部の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
哺乳瓶や乳児用マグカップのような乳児用容器は、殆ど例外なしに、使用の度に煮沸殺菌処理されることから、耐熱性を付与する必要があるが、特に熱変形が発生し易い底部は、この底部の主要部分である底壁を、容器内に球弧状に陥没させると共に、特開2000−128140公報に示すように構成することにより熱変形に耐えるようにしている。
【0003】
特開2000−128140公報に示される技術は、それなりに優れた効果を発揮するのであるが、構造が複雑となること、底壁の陥没量が大きいため、容器の大きさの割には収納容積が小さく、望ましい収納効率を得ることができないこと、そして容器の内表面形状が複雑となり、その分、洗浄し難くなる、と云う不満がある。
【0004】
そこで従来は、図3に示すように、容器1全体を肉厚に成形することにより、必要とする耐熱性を得るようにすると共に、底壁の陥没量を小さくして、容器内側面の洗浄を行い易い形状に成形できるようにしていた。
【0005】
すなわち、外周下端部にネックリング3を有する口筒部2を起立連設した胴部4の下端に、底部5を連設し、この底部5を、胴部4との連設部を構成する底周壁13と、底部5の主体部分を構成して、容器1内に、大きな曲率半径の球弧状で湾曲陥没する底壁6と、この底壁6と底周壁13を連設して、接地部を形成する接地辺10とから構成し、この口筒部2、胴部4そして底部6を肉厚とし、これにより剛的に耐熱性を得るようにしている。
【0006】
しかしながら、図3に示した従来技術にあっては繰り返しの煮沸殺菌処理等の加熱状態時に、肉厚である底壁6に「底落ち」現象が発生し、図4に示すように、底壁6の底壁中央部9が接地辺10よりも下方に突出し、これにより容器1の「座り」が不安定となる、と云う問題があった。
【0007】
この底壁6の「底落ち」現象は、繰り返しの煮沸殺菌処理等の加熱処理の場合、肉厚な底壁6に対する加熱および蓄熱の影響により発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−128140公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、容器内に陥没状に位置した底壁の反転変形をし難くすることを技術的課題とし、もって底壁の「底落ち」の発生を防止して、安定した「座」機能を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記技術的課題を解決するための本発明の主たる構成は、
有底筒状の肉厚プリフォームから2軸延伸ブロー成形された容器であること、
胴部下端に連設された底部を、胴部との連設部分を形成する底周壁と、底部の主体部分を構成する底壁と、この底壁と底周壁を連設して接地部分を形成する接地辺とから構成すること、
容器内に陥没状に位置する底壁の底下面を、中央に向って上昇傾斜する三角円錐形状とすること、
底壁の底壁中央部分を周囲部分よりも肉薄とすること、
にある。
【0011】
容器は、有底筒状のプリフォームから2軸延伸ブロー成形されたものであるので、その底部の底壁は、大きな延伸量を受けることなく最終形状に延伸成形されるのが一般であり、それゆえプリフォームが肉厚である場合には、この底壁は肉厚に成形される。
【0012】
底部の底壁の底下面が、上方に膨出した球弧状ではなく、中央に向って上昇傾斜する三角円錐形状、すなわち直線状のテーパー面状に構成され、これにより底壁の「底落ち」現象を発生し難くしている。
【0013】
これは、底部の底壁の底下面が、中央に向って上昇傾斜する三角円錐形状であるので、煮沸殺菌等の加熱状態下で残留内部応力により底壁に働く力が、底壁中央部で互いに突き合わせ状に作用して相殺して、すなわち底壁の底下面が「梁状」に機能し、底壁の下方への変形を発生し難くするためである。
【0014】
また、底壁の底壁中央部は、周囲の底壁部分よりも肉薄となっているので、成形金型からの離型時、および煮沸殺菌処理等の熱処理時等における蓄熱程度が低く、これにより底壁中央部の「底落ち」が大幅に規制されることになり、これにより底壁に「底落ち」が発生し難くなる。
【0015】
底壁の底下面を、中央に向って上昇傾斜する三角円錐形状に成形する手段としては、例えばプリフォームから容器に2軸延伸ブロー成形する際に、プリフォームの延伸中心部を延伸ピンと底金型とにより押し潰し状とすることにより、プリフォームの延伸中心部の周囲に意図的に肉溜まり部分を形成し、この肉溜まり部を含めたプリフォーム部分が底壁に延伸成形された際に、成形された底壁の肉厚分布が、蓄熱の影響によりわずかに「底落ち」するようにし、このわずかな「底落ち」により三角円錐形状を得るようにする。
【0016】
本発明の別の構成は、上記した主たる構成に加えて、底壁を、周端部分から底壁中央部に近づくに従って肉厚を漸減させる構成とした、ものである。
【0017】
底壁を、周端部分から底壁中央部に近づくに従って肉厚を漸減させる構成としたものにあっては、「底落ち」は、底壁の周端部を除く部分に発生するのであるが、この周端部を除く底壁部分の肉厚が全体的に薄くなっているので、その分、蓄熱程度は低くなり、これにより「底落ち」の発生は無くなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明の主たる構成にあっては、加熱状態下で残留内部応力により底壁に働く力が突き合わせ状に作用して相殺し、これにより底壁の下方への変形が発生し難くなり、底壁の反転変形による「底落ち」の発生が殆どなくなり、安定した「座り」を得ることができる。
【0019】
底壁の底壁中央部が、底壁の周囲部分よりも肉薄となっているので、この底壁中央部の蓄熱能力は極めて低く、このため蓄熱の熱作用による「底落ち」の発生はなく、安定した「座り」を得ることができる。
【0020】
底壁を、周端部分から底壁中央部に近づくに従って肉厚を漸減させる構成としたものにあっては、「底落ち」が発生する底壁の主体部分の蓄熱能力を低く抑えることができるので、「底落ち」の発生することは殆どなく、これにより安定した「座り」を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態例を示す、要部を縦断した正面図である。
【図2】図1の実施形態例の、プリフォームからの成形の説明図である。
【図3】従来例の、プリフォームからの成形の説明図である。
【図4】図3の従来例における、「底落ち」の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
本発明による2軸延伸ブロー成形容器1(図1参照)は、ポリプロピレン樹脂により口筒部2と胴部4と底部5とを有する肉厚な広口ボトル状に成形されていて、胴部4の上端に起立状に連設された円筒状の口筒部2は、外周面の上半に螺条を、また下半にネックリング3を有しており、胴部4は壷の胴部のように高さの低いものとなっており、底部5は内方に陥没した底壁6を有し、周端部分に脚部を提供する接地辺10を形成して、全体としてマグカップの主体部分に似た形状となっている。
【0023】
底部5は、主体部分である底壁6を容器1内に陥没させ、この底壁6の周端部に脚部を形成する接地辺10を位置させ、この接地辺10と胴部4とを略球弧壁状の底周壁13により連設している。
【0024】
底壁6の下面と接地辺10とは、容器1内に陥没する周段部12を介して接続されており、底壁6の底下面7は、中央に向って上昇傾斜する三角円錐形状となっており、このため底壁6の下面側には陥没凹部11が形成されることになる。
【0025】
この陥没凹部11の陥没程度は、「底落ち」の発生を防止することと、容器1の内表面の凹凸程度を抑えることの兼ね合いに従って設定され、その程度は決して大きいものではない。
【0026】
図1の実施形態例にあっては、底壁6の底上面8が略平坦面に形成されることになるので、底壁6全体としては、周端部から底壁中央部9に近づくに従って肉厚が漸減する壁構造を有しており、底壁中央部9を含めた底壁6の主体部分の肉厚が小さくなるように成形されたものとなっている。
【0027】
図2は、図1に示した実施形態例の、プリフォームPからの2軸延伸ブロー成形動作を説明するもので、ホットパリソンで作ったプリフォームPは、その本体部分が肉厚な三角錐筒状をしており、延伸温度に加熱されたプリフォームPを、ブロー割金型14と底金型15とサポート治具16とから構成されるブロー金型に組付け、延伸ピン17とブロー空気とにより、容器1に2軸延伸成形する。
【0028】
底壁中央部9に延伸成形されるプリフォームPの延伸中心部は、延伸ピン17と底金型15との間で押し潰されて、周囲部分に比べて肉薄に成形されるが、このプリフォームPの延伸中心部の押し潰しは、延伸ピン17による底金型15への押付けとか、延伸ピン17の前進移動と、これに連動した底金型15の迎え動作との組合せにより達成する。
【0029】
延伸ピン17は、その先端面が球弧状に拡径したものとなっていて、押し潰しにより押し退けられた底壁中央部9の樹脂による肉溜まりが、できる限り延伸中心から離れるようにされており、これにより容器1への2軸延伸ブロー成形完了時において、この肉溜まりによる肉厚部分が底壁6の周端部分に位置して、底壁6全体としては、底壁中央部9に近づくに従って肉厚が漸減する構成となるようにしている。
【0030】
底壁中央部9の押し潰しに引き続いて、底壁中央部9の周囲の底壁6部分が延伸され、球弧状となった底金型15の型面に従って、周端に近づくに従って肉厚が増大する壁構造に成形される。
【0031】
この図2に示した2軸延伸ブロー成形状態から離型すると、底壁中央部9の肉厚が周囲部分に比べて小さいので、蓄熱が小さい状態となっており、このため離型でフリーとなった状態でも、底壁中央部9には蓄熱による「底落ち」が発生することはなく、この底壁中央部9の周囲の底壁6部分にわずかに「底落ち」変形が発生し、これにより底壁6の底下面7は、図1に示すように、中央に向って上昇傾斜する三角円錐形状となる。
【0032】
すなわち、底金型15と延伸ピン17によりプリフォームPの延伸中心部を押し潰し状にして周囲に肉溜まり部を形成することにより、底壁中央部9の周囲に、離型時のわずかな「底落ち」により、底下面7が中央に向って上昇傾斜する三角円錐形状となるように、2軸延伸ブロー成形時の底壁6の肉厚分布を、意図的に成形するのである。
【0033】
容器1の底壁6は、その底下面7が中央に向って上昇傾斜する三角円錐形状となっているので、繰り返しの煮沸殺菌加熱処理を受けても、この熱による内部応力を、底下面7による「梁作用」により突き合わせて消滅させ、これにより底壁6の「底落ち」変形の発生を確実に抑えることになる。
【0034】
なお、上記実施形態例の説明では、容器1の成形材料としてポリプロピレン樹脂を示して説明したが、容器1の成形材料はポリプロピレン樹脂に特定されることはなく、ポリエチレンテレフタレート樹脂であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上説明したように、本発明における容器は肉厚に成形された底壁の「底落ち」を効果的に防止することができ、使用時に加熱される肉厚容器に適用される技術として、幅広い利用展開が期待できる。
【符号の説明】
【0036】
1 ;容器
2 ;口筒部
3 ;ネックリング
4 ;胴部
5 ;底部
6 ;底壁
7 ;底下面
8 ;底上面
9 ;底壁中央部
10;接地辺
11;陥没凹部
12;周段部
13;底周壁
14;ブロー割金型
15;底金型
16;サポート治具
17;延伸ピン
P ;プリフォーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の肉厚プリフォームから2軸延伸ブロー成形された容器であって、胴部下端に連設された底部を、前記胴部との連設部分を形成する底周壁と、前記底部の主体部分を構成する底壁と、該底壁と底周壁を連設して接地部分を形成する接地辺とから構成し、前記容器内に陥没状に位置する底壁の底下面を、中央に向って上昇傾斜する三角円錐形状とし、前記底壁の底壁中央部分を周囲部分よりも肉薄とした2軸延伸ブロー成形容器。
【請求項2】
底壁を、周端部分から底壁中央部に近づくに従って肉厚を漸減させる構成とした請求項1に記載の2軸延伸ブロー成形容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate