説明

2重構造容器

【課題】内容器部と外容器部との接合部分が強固に接合された、内容器部と外容器部からなる2重構造容器を提供する。
【解決手段】内容器部は壁部の上端から外側に折り返された折り返し部7を有し、外容器部は壁部9を有し、折り返し部7の下端は、内壁12、外壁13および底14とからなり、断面が下方が開放された逆凹形状の溝部15が形成され、外容器部の壁部9の上端は、溝部15に嵌め込まれる先端部16が形成され、先端部16の上面は内側に突出部17が形成され、先端部16を溝部15に挿入し、突出部17と溝部15の底が当接した箇所に超音波溶着を行い、先端部16と、溝部15の外壁および底との間に生じる間隙に接着剤を流し込んで硬化させることにより、内容器部の折り返し部7の下端と、外容器部の壁部9の上端が互いに接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピッチャー等に用いられる2重構造容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ビール等の飲料水を大量に収容し、必要に応じてジョッキやコップ等に飲料水を注ぐ容器として、例えば、ピッチャーが飲食店等では幅広く使用されている。ピッチャーのように、飲料水を収容する場合、収容した飲料水の温度を保つ方法の1つとして、2重構造の容器が用いられている。
【0003】
2重構造の容器は一般的に、外容器部の中に内容器部を所定の間隔で配置し、内容器部と外容器部の間に断熱空間を設けたものであり、前記断熱空間を設けることにより、内容器部内に収容された冷たい飲料水等が温かくなるのを防ぐ効果がある。このような容器の一例として、特許文献1に記載されているようなピッチャーがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−22989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内容器部と外容器部の間に断熱空間を設けた2重構造とするためには、内容器部と外容器部を一体形成することは構造上難しいので、一般的には、内容器部と外容器部を個々に形成した後で、内容器部と外容器部を接合して固定する方法が用いられている。
【0006】
内容器部と外容器部を固定する方法としては、超音波溶着、接着剤、あるいは嵌合等によって接合する方法が用いられる。例えば、引用文献1では、内容器部と外容器部を固定する部分に凹部と凸部を設けて嵌合し、接着剤で固定する方法が用いられている。しかしながら、引用文献1の場合、凹部と凸部の接着面に十分に接着剤が塗布されているかどうかを確認することができないので、時には接着不良が生じる場合があり接合強度に問題がある。また、単に内容器部と外容器部を固定する部分を突き合わせて接着剤等を用いて固定した場合には、接合部分を綺麗に仕上げなければ美観上の問題が生じる。
【0007】
そこで、本発明は従来の問題を解決するために、内容器部と外容器部との接合部分が十分な強度を生じることができるピッチャー等の2重構造容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の2重構造容器は、内容器部と、前記内容器部の外側に前記内容器部との間に空間を形成するように配置され、前記内容器部と固定された外容器部からなる2重構造容器であって、前記内容器部は壁部、底部および、前記壁部の上端から外側に折り返された折り返し部からなり、前記外容器部は壁部および底部からなり、前記折り返し部の下端は、内壁、外壁および底とからなり、断面が下方が開放された逆凹形状の溝部が形成され、前記外容器部の壁部の上端は、前記溝部に挿入される先端部が形成され、前記先端部の上面は内側に突出部が形成され、前記先端部を前記溝部に挿入し、前記突出部と前記溝部の底が当接した箇所に超音波溶着を行うこと、および、前記先端部と、前記溝部の外壁および底との間に生じる間隙に接着剤を流し込み、接着剤を硬化させることにより、前記内容器部の前記折り返し部の下端と、前記外容器部の壁部の上端が互いに接合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の2重構造容器は、内容器部と、前記内容器部の外側に前記内容器部との間に空間を形成するように配置され、前記内容器部と固定された外容器部からなる2重構造容器であって、前記内容器部は壁部、底部および、前記壁部の上端から外側に折り返された折り返し部からなり、前記外容器部は壁部および底部からなり、前記折り返し部の下端は、内壁、外壁および底とからなり、断面が下方が開放された逆凹形状の溝部が形成され、前記外容器部の壁部の上端は、前記溝部に挿入される先端部が形成され、前記先端部の上面は内側に突出部が形成され、前記先端部を前記溝部に挿入し、前記突出部と前記溝部の底が当接した箇所に超音波溶着を行うこと、および、前記先端部と、前記溝部の外壁および底との間に生じる間隙に接着剤を流し込み、接着剤を硬化させることにより、前記内容器部の前記折り返し部の下端と、前記外容器部の壁部の上端が互いに接合されていることにより、内容器部と外容器部が強固に固定された2重構造容器を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の2重構造容器であるピッチャーの斜視図である。
【図2】ピッチャーの断面図である。
【図3】ピッチャーの内容器部と外容器部の接合部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を、図を用いて以下に詳細に説明する。ここでは、2重構造容器として図1に示すようなピッチャー1を用いて説明する。図1が本発明の2重構造容器の一例であるピッチャー1の斜視図であり、図2がピッチャー1の断面図、図3が内容器部2と外容器部3との接合部分の拡大図である。
【0012】
本発明の2重構造容器であるピッチャー1は、図1に示すように、飲料水を収容する内容器部2、前記内容器部2の外側に配置された外容器部3、および前記内容器部2に被せられる蓋4からなり、前記外容器部3は、前記内容器部2の外側に前記内容器部2との間に断熱空間を形成するように、前記内容器部2と固定された2重構造となっている。
【0013】
前記内容器部2は、壁部5、底部6、前記壁部5の上端から外側に折り返され、前記壁部5と所定の間隔を有する折り返し部7、および、前記内容器部2に収容された飲料水を注ぐための注ぎ口8からなり、全てが一体形成されている。そして、前記外容器部3は、壁部9、底部10および壁部9に設けられた取っ手11からなり、全てが一体形成されている。前記蓋4は、前記内容器部2の上部を覆い、注ぎ口8の一部が開口となるように、前記内容器部2に取り外し可能に係合される。
【0014】
前記内容器部2の壁部5と前記外容器部3の壁部9との間には所定の間隔が存在し、前記内容器部2の底部6と前記外容器部3の底部10との間にも所定の間隔が存在するように、前記内容器部2の外側に前記外容器部3が配置され、前記内容器部2と前記外容器部3が接合されている。そして、前記内容器部2の壁部5と折り返し部7との間にも所定の間隔が存在するように前記内容器部2が形成されている。これにより、前記内容器部2と前記外容器部3の間には密閉された断熱空間が形成され、前記内容器部2に収容された冷たい飲料水が温かくなるのを防ぎ、温かい飲料水が冷めるの防ぐことができる。
【0015】
前記内容器部2と前記外容器部3との固定は、前記内容器部2の折り返し部7の下端と前記外容器部3の壁部9の上端を2種類の接合方法を用いて接合することにより行われる。この接合部分について詳しく説明する。図3に示すのが、前記内容器部2の折り返し部7の下端と前記外容器部3の壁部9の上端が接合される接合部分を拡大したものである。
【0016】
図3に示すように、前記内容器部2の折り返し部7の下端には、内壁12、外壁13および底14とからなり、断面が下方が開放されたる逆凹形状の溝部15が形成されている。そして、前記外容器部3の上端には、前記溝部15に挿入される先端部16が形成され、前記先端部16の上面の内側の位置には突出部17が形成されている。
【0017】
前記先端部16の前記溝部15に挿入される部分の断面は、前記溝部15の空間よりも小さく、前記溝部15に前記先端部16が挿入された時に、前記先端部16と前記溝部15は完全に密着して嵌合されるような大きさではなく、所定の隙間が生じる大きさとなっている。そして、前記溝部15に前記先端部16が挿入されると、前記先端部16の上面に設けた突出部17により、前記先端部16の上面と前記溝部15の底14とは密着しないで所定の間隔が存在する。
【0018】
このように、前記先端部16を前記溝部15の空間よりも小さくし、前記先端部16に突出部17を設けることにより、図3に示すように、前記溝部15の内壁12、外壁13および底14と、前記先端部16との間には間隙が生じる。このような前記溝部15と前記先端部16の関係は、前記内容器部2の折り返し部7の下端と前記外容器部3の上端のそれぞれの全周に亘って形成されている。
【0019】
前記間隙は、前記外壁13と前記先端部16の外面との間が0.4mm、前記内壁12と前記先端部16の内面との間が0.16mm、前記底14と前記先端部16の上面との間が0.3mmとなっている。これは一例であり、各間隙の寸法は容器の大きさ、接着剤の種類等に応じて適宜設定することができる。
【0020】
前記先端部16を前記溝部15に挿入しただけでは、上述のように前記先端部16を前記溝部15の間には間隙があるために固定することはできない。そこで、超音波溶着と接着剤を用いて、前記先端部16と前記溝部15を接合することにより、前記内容器部2と前記外容器部3を固定する。
【0021】
図3に示すように、前記先端部16の突出部17と前記溝部15の底14が当接している所(図3に符号18で示す箇所)を、超音波溶着を用いて接合する。さらに、前記外壁13と前記先端部16の外面との間隙、および、前記底14と前記先端部16の上面との間隙に接着剤19を流し込み、接着剤による接合を行う。
【0022】
この時、前記底14と前記先端部16の上面との間隙に流し込まれた接着剤19は、前記突出部17によって堰き止められ、前記内壁12と前記先端部16の内面との間隙から断熱空間へと接着剤が流れ込むのを防ぐことができる。これにより、前記外壁13と前記先端部16の外面との間隙、および、前記底14と前記先端部16の上面との間隙に確実に接着剤19が充填され、必要とされる接合強度が確保される。
【0023】
このようにして、超音波溶着と接着剤を用いた2種類の接合により、前記折り返し部7の溝部15と前記壁部9の先端部16を接合することで、前記内容器部2と前記外容器部3は互いに固定される。その結果、前記内容器部2と前記外容器部3は、接合不良を生じることなく、互いに強固に固定され、使用中に接合部分が剥離することなく長期間安定してピッチャー1を使用することが可能となる。
【0024】
前記蓋4は前記内容器部2と取り外し可能に係合されているが、図3に示すように、前記内容器部2と前記外容器部3の接合部分の外周面に段差が生じるのを利用して、前記蓋4が前記内容器部2に係合されている。前記内容器部2の折り返し部7の下端の外周面は前記溝部15を設けたことにより、前記外容器部3の先端部16の外周面よりも外側に位置しているので、前記内容器部2と前記外容器部3の接合部分の外周面に段差が生じている。
【0025】
前記蓋4の内周面に設けた略半円形の断面を有するリブ20を前記段差に係合させる。これにより、前記蓋4は前記内容器部2と係合される。前記リブ20は断面が略半円形であることにより、スムーズに前記蓋4と前記内容器部2との係合を解除することができる。
【0026】
このように、前記内容器部2と前記外容器部3との接合箇所の外周面に段差を設けることで、前記蓋4との係合に利用することもできる。また、前記内容器部2と前記外容器部3との接合箇所の外周面に段差が生じないようにして、平坦な外周面とすることも可能である。
【0027】
本発明の2重構造容器として、ピッチャーを用いて説明してきたが、その他に、例えば注ぎ口の無いようなその他の容器等、様々な容器に利用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 ピッチャー
2 内容器部
3 外容器部
4 蓋
5 壁部
6 底部
7 折り返し部
8 注ぎ口
9 壁部
10 底部
11 取っ手
12 内壁
13 外壁
14 底
15 溝部
16 先端部
17 突出部
19 接着剤
20 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容器部と、前記内容器部の外側に前記内容器部との間に空間を形成するように配置され、前記内容器部と固定された外容器部からなる2重構造容器であって、
前記内容器部は壁部、底部および、前記壁部の上端から外側に折り返された折り返し部からなり、前記外容器部は壁部および底部からなり、
前記折り返し部の下端は、内壁、外壁および底とからなり、断面が下方が開放された逆凹形状の溝部が形成され、
前記外容器部の壁部の上端は、前記溝部に挿入される先端部が形成され、前記先端部の上面は内側に突出部が形成され、
前記先端部を前記溝部に挿入し、前記突出部と前記溝部の底が当接した箇所に超音波溶着を行うこと、および、前記先端部と、前記溝部の外壁および底との間に生じる間隙に接着剤を流し込み、接着剤を硬化させることにより、前記内容器部の前記折り返し部の下端と、前記外容器部の壁部の上端が互いに接合されていることを特徴とする2重構造容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−105921(P2012−105921A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258836(P2010−258836)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)
【Fターム(参考)】