説明

2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フラン誘導体の製造方法、及びそれに用いられる新規化合物

【課題】2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フラン誘導体を温和な条件かつ高収率で得ることが可能な新規化合物及びその製造方法、並びにそれを用いた該フラン誘導体の製造方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1):


[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、Rは、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基である。]
で示される2−(4−アルコキシ−チオフェン−3−イル)−エタン−1−オールである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチオフェン骨格有する新規化合物及びその製造方法、並びにそれを用いた2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フラン誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フランの製造方法として、2−メトキシカルボニル−3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシエチルチオフェンを閉環反応させた後に脱メトキシカルボニル化させて得る方法が知られている(特許文献1)。しかしながら、特許文献1に記載された方法では、350℃の高温で加熱する必要があり安全性やエネルギー効率の面で問題があった。また、出発原料のα−ヒドロキシメチレンブチロラクトンからの収率が2%以下であり、2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フランを収率よく得る方法が望まれていた。
【特許文献1】特公昭48−14067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フラン誘導体を温和な条件かつ高収率で得ることが可能な新規化合物及びその製造方法、並びにそれを用いた該フラン誘導体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題は、下記一般式(1):
【化1】

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、Rは、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基である。]
で示される2−(4−アルコキシ−チオフェン−3−イル)−エタン−1−オールを提供することによって解決される。
【0005】
また、上記課題は、下記一般式(1):
【化2】

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、Rは、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基である。]
で示される2−(4−アルコキシ−チオフェン−3−イル)−エタン−1−オールを分子内環化反応させる、下記一般式(2):
【化3】

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。]
で示される2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フラン誘導体の製造方法を提供することによって解決される。
【0006】
更に、上記課題は、下記一般式(3):
【化4】

[式中、Rは、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基であり、Xは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。]
で示される化合物と有機リチウム化合物を反応させ、次いで下記一般式(4):
【化5】

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。]
で示されるエチレンオキシド誘導体と反応させる、下記一般式(1):
【化6】

[式中、R、R、R、R、R、R及びRは、前記と同義である。]
で示される2−(4−アルコキシ−チオフェン−3−イル)−エタン−1−オールの製造方法を提供することによっても解決される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の新規化合物を用いることにより、2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フラン誘導体を温和な条件かつ高収率で提供することができる。こうして得られる2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フラン誘導体は、医薬・農薬等の中間体や香味剤組成物への添加剤として用いられるだけでなく、導電性材料やエレクトロクロミック材料等として有用な重合体の原料として好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明によれば、一般式(1)で示される2−(4−アルコキシ−チオフェン−3−イル)−エタン−1−オール誘導体、及びこれを原料として用いた一般式(2)で示される2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フラン誘導体の製造方法を提供することができる。一般式(1)で示される2−(4−アルコキシ−チオフェン−3−イル)−エタン−1−オールは新規化合物である。以下詳細について述べる。
【0009】
【化7】

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、Rは、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基である。]
【0010】
【化8】

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。]
【0011】
上記一般式(1)及び(2)において、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、Rは、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基である。
【0012】
置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基は、例えば、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいシクロアルキル基等が挙げられる。
【0013】
置換基を有してもよいアルキル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。中でも、後述の工程2における分子内環化反応させる際の反応速度を考慮すると、R又はRの少なくとも一方が水素原子であることが好ましく、R及びRの両方ともが水素原子であることがより好ましい。即ち、一般式(1)で示される2−(4−アルコキシ−チオフェン−3−イル)−エタン−1−オールが第1級アルコール又は第2級アルコールであることが好ましく、第1級アルコールであることがより好ましい。
【0014】
また、Rは置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基であり、上述に挙げられたものの中でも炭素数1〜10のものを用いることができる。後述の工程2における分子内環化反応させる際の反応速度を考慮すると、Rは、置換基を有してもよい炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基であることが好ましい。
【0015】
置換基を有してもよいアルケニル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、メチルビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0016】
置換基を有してもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
【0017】
置換基を有してもよいシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプタニル基、シクロオクタニル基、シクロノナニル基、シクロデカニル基、シクロウンデカニル基、シクロドデカニル基等が挙げられる。
【0018】
本発明において、一般式(1)で示される2−(4−アルコキシ−チオフェン−3−イル)−エタン−1−オールを得る方法としては、下記化学反応式(I)で示される工程1のように、一般式(3)で示される化合物から合成する方法が好ましい。
【0019】
【化9】

[式中、R、R、R、R及びRは、前記一般式(1)及び(2)の場合と同義であり、Xは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。]
【0020】
上記化学反応式(I)で示される工程1は、一般式(3)で示される化合物と有機リチウム化合物を反応させ、次いで、下記一般式(4)で示されるエチレンオキシド誘導体と反応させる工程である。
【0021】
【化10】

[式中、R、R、R及びRは、前記一般式(1)及び(2)の場合と同義である。]
【0022】
上記工程1の好適な実施態様としては、例えば、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で、溶媒の存在下に有機リチウム化合物を滴下した後、エチレンオキシド誘導体を反応させ、必要に応じて三フッ化ホウ素エーテラート(BF−EtO)等を添加する方法が挙げられる。
【0023】
上記工程1の反応は、溶媒の存在下で行われることが好ましい。かかる溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、キシレン、エチルトルエンなどの芳香族炭化水素;ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ブチルメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル等が挙げられる。これらの中でも、エーテルを用いることが好ましく、具体的には、ジエチルエーテルやテトラヒドロフランを使用するのが好ましい。溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。かかる溶媒の使用量は、一般式(3)で示される化合物1質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましく、1〜50質量部であることがより好ましい。
【0024】
上記工程1で用いられる有機リチウム化合物としては、例えば、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムなどのアルキルリチウム化合物;フェニルリチウムなどのアリールリチウム化合物;ビニルリチウムなどのアルケニルリチウム化合物;リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビストリメチルシリルアミドなどのリチウムアミド化合物などが使用される。これらの中でもアルキルリチウム化合物を用いることが好ましい。有機リチウム化合物の使用量については特に限定されず、一般式(3)で示される化合物1モルに対して0.5〜5モルであることが好ましい。有機リチウム化合物の使用量が5モルを超える場合、副反応や生成物の分解を促進するおそれがあり、2モル以下であることがより好ましい。
【0025】
上記工程1において、一般式(3)で示される化合物と有機リチウム化合物を反応させる際の反応温度については特に限定されず、−100〜100℃の範囲であることが好ましい。反応温度が−100℃未満の場合、反応速度が極めて遅くなるおそれがあり、−80℃以上であることがより好ましい。一方、反応温度が100℃を超える場合、生成物の分解を促進するおそれがあり、50℃以下であることがより好ましく、0℃以下であることが更に好ましい。反応時間は、1分〜20時間であることが好ましく、0.5〜5時間であることがより好ましい。また、反応圧力は、大気圧〜3MPa(ゲージ圧)であることが好ましい。
【0026】
上記化学反応式(I)で示される工程1は、上述のようにして一般式(3)で示される化合物と有機リチウム化合物を反応させた後に、下記一般式(4)で示されるエチレンオキシド誘導体を反応させる工程である。
【0027】
【化11】

[式中、R、R、R及びRは、前記一般式(1)及び(2)の場合と同義である。]
【0028】
一般式(4)で示されるエチレンオキシド誘導体におけるR、R、R及びRとしては、上述のものと同様のものを用いることができる。中でも、後述の工程2における分子内環化反応させる際の反応速度を考慮すると、R又はRの少なくとも一方が水素原子であることが好ましく、R及びRの両方が水素原子であることがより好ましい。
【0029】
上記工程1において、エチレンオキシド誘導体の使用量は特に限定されず、一般式(3)で示される化合物1モルに対して0.5〜5モルの範囲で用いることが好ましい。エチレンオキシド誘導体の使用量が0.5モル未満の場合、反応が十分に進行しないため原料である一般式(3)で示される化合物と生成物である一般式(1)で示される化合物との分離精製が煩雑になるおそれがあり、0.7モル以上であることがより好ましい。一方、エチレンオキシド誘導体の使用量が5モルを超える場合、余剰のエチレンオキシド誘導体と生成物である一般式(1)で示される化合物との分離精製が煩雑になるおそれがあり、3モル以下であることがより好ましく、2.0モル以下であることが更に好ましい。
【0030】
上記工程1において、エチレンオキシド誘導体を用いて反応させる際の反応温度については特に限定されず、一般式(3)で示される化合物と有機リチウム化合物を反応させる際の反応温度と同様の反応温度が好適に採用される。即ち、反応温度は、−100〜100℃の範囲であることが好ましい。反応温度が−100℃未満の場合、反応速度が極めて遅くなるおそれがあり、−80℃以上であることがより好ましい。一方、反応温度が100℃を超える場合、生成物の分解を促進するおそれがあり、50℃以下であることがより好ましく、0℃以下であることが更に好ましい。反応時間は、0.5〜30時間であることが好ましい。また、反応圧力は、大気圧〜3MPa(ゲージ圧)であることが好ましい。
【0031】
また、上記工程1では、反応を円滑に進めるために添加物を添加しても良い。添加剤はエチレンオキシド誘導体を加えた後に添加することが好ましい。かかる添加物としては、例えば、三フッ化ホウ素エーテラート(BF−EtO)、アルミニウムトリイソプロポキシド(Al(O−iPr))等が挙げられ、中でも、三フッ化ホウ素エーテラートが好ましく、その使用量は、エチレンオキシド誘導体1モルに対して、0.1〜10モルが好ましい。三フッ化ホウ素エーテラートの使用量が0.1モル未満の場合、反応を円滑に進める効果が得られないおそれがあり、0.5モル以上であることがより好ましい。三フッ化ホウ素エーテラートの使用量が10モルを超える場合、生成物の分解を促進するおそれがあり、5モル以下であることがより好ましく、2モル以下であることが更に好ましい。
【0032】
本発明では、上記工程1により得られた反応混合物から溶媒を留去して、得られた残留物をそのまま工程2で用いることができる。さらに、必要に応じてカラムクロマトグラフィーにより精製することで純度の高い一般式(1)で示される2−(4−アルコキシ−チオフェン−3−イル)−エタン−1−オールを得て、工程2で用いることもできる。
【0033】
続いて、上記工程1により得られた一般式(1)で示される2−(4−アルコキシ−チオフェン−3−イル)−エタン−1−オールを出発化合物として、下記化学反応式(II)で示される工程2のように、酸の存在下で分子内環化反応させて一般式(2)で示される2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フラン誘導体が得られる。
【0034】
【化12】

[式中、R、R、R、R及びRは、前記一般式(1)及び(2)の場合と同義である。]
【0035】
上記工程2の好適な実施態様としては、例えば、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で、溶媒及び酸の存在下に2−(4−アルコキシ−チオフェン−3−イル)−エタン−1−オールを反応させる方法が挙げられる。
【0036】
上記工程2の反応は、溶媒の存在下で行われることが好ましい。かかる溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、キシレン、エチルトルエンなどの芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジブチルエーテルなどのエーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼンなどが挙げられる。これらの中でも、芳香族炭化水素を用いることが好ましく、具体的には、トルエン、キシレンを使用するのが好ましい。溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。かかる溶媒の使用量は、化合物(1)1質量部に対して、1〜100質量部の範囲であるのが好ましい。
【0037】
上記工程2で用いられる酸としては特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、ケイタングステン酸、ケイモリブデン酸などの無機酸又はその塩;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのスルホン酸;酢酸、プロピオン酸、安息香酸、テレフタル酸などのカルボン酸;シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、チタニア、シリカ−チタニア、酸化ニオブなどの固体酸;スルホン酸系イオン交換樹脂、カルボン酸系イオン交換樹脂などの酸性イオン交換樹脂などが挙げられる。これらの中でも、反応温度、操作性、触媒の経済性などを考慮すれば、無機酸又はその塩、及びスルホン酸からなる群から選択される少なくとも1種が好適に使用され、具体的には、硫酸水素カリウム、硫酸水素ナトリウム及びp−トルエンスルホン酸からなる群から選択される少なくとも1種がより好適に使用される。かかる酸の使用量は、一般式(1)で示される2−(4−アルコキシ−チオフェン−3−イル)−エタン−1−オールに対して、0.001〜100モル%であることが好ましく、反応の効率を考慮すれば0.1〜50モル%であることがより好ましい。
【0038】
上記工程2において、分子内環化反応させる際の反応温度については特に限定されず、0〜150℃であることが好ましい。反応温度が0℃未満の場合、反応速度が極めて遅くなるおそれがあり、20℃以上であることがより好ましい。一方、反応温度が150℃を超える場合、生成物の分解を促進するおそれがあり、120℃以下であることがより好ましい。反応時間は、通常、1〜30時間であり、また、反応圧力は、通常、大気圧〜3MPa(ゲージ圧)である。
【0039】
上記工程2により得られた反応混合物から溶媒を留去して、得られた残留物をそのまま重合反応に用いることができる。さらに、必要に応じてカラムクロマトグラフィーにより精製することで純度の高い一般式(2)で示される2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フラン誘導体を得ることができる。
【0040】
上記一般式(1)で示される本発明の新規化合物を用いて得られる上記一般式(2)で示されるチオフェン誘導体は、例えば、医薬・農薬等の中間体や、特公昭48−14067号公報に記載されているような、食品、飲料、動物飼料、薬剤および煙草、もしくは芳香味剤組成物への添加剤として用いられるだけでなく、導電性材料、エレクトロクロミック材料、光電変換材料、エレクトロルミネッセンス材料、非線形光学材料、電界効果トランジスタ材料、RF−ID材料、メモリ材料、センサー材料、導電性プリントペースト、インクジェット塗料等に好適に用いられる重合体、特に好適には導電性ポリマーの原料モノマーとして有用である。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。
【0042】
(実施例1)
[式(1a)で示される2−(4−アルコキシ−チオフェン−3−イル)−エタン−1−オールの合成]
温度計および滴下漏斗を備えた内容積1lの三口フラスコに、n−ブチルリチウムの1.6Mヘキサン溶液105ml(168mmol)およびテトラヒドロフラン400mlを加えてから、系内を窒素置換して−78℃に冷却した。この反応混合液に、3−ブロモ−4−メトキシチオフェン21.7g(112mmol)を内温が−70℃以下を保つように添加し、その後−78℃で45分間攪拌した。次いで、1.0Mエチレンオキシド175ml(175mmol)を加えた後、三フッ化ホウ素エーテラート(BF−EtO)錯体17.7g(124mmol)を滴下した。滴下終了後、−78℃でさらに6時間攪拌した。反応終了後、飽和重曹水100mlを添加し、有機層と水層を分離し、水層を100mlの酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下に濃縮することにより粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することにより、下記の物性を有する2−(4−メトキシ−チオフェン−3−イル)−エタン−1−オール7.0g(44.2mmol、単離収率39%)を得た。化学反応式を以下に示す。
【0043】
【化13】

【0044】
式(1a)で示される2−(4−アルコキシ−チオフェン−3−イル)−エタン−1−オールのNMRデータは以下のとおりであった。
H−NMR(270MHz、CDCl、TMS) δ:6.95(d,1H,J=3.5Hz)、6.21(d,1H,J=3.0Hz),3.82(m,6H),2.78(t,2H,6.2Hz)1.90(s,1H)
【0045】
(実施例2)
[式(2a)で示される2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フランの合成]
温度計および滴下漏斗を備えた内容積50mlの三口フラスコに、式(1a)で示される2−(4−メトキシ−チオフェン−3−イル)−エタン−1−オール195mg(1.23mmol)およびキシレン20mlを加えた。次いで、硫酸水素ナトリウム30mgを添加した後、系内を窒素置換して140℃にて10時間加熱攪拌した。反応終了後、水10mlを添加した。有機層と水層を分離し、水層を10mlのジエチルエーテルで抽出した。合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下に濃縮することにより粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することにより、下記の物性を有する式(2a)で示される2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フラン127mg(1.01mmol、単離収率82%)を得た。化学反応式を以下に示す。
【0046】
【化14】

【0047】
式(2a)で示される2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フランのNMRデータは以下のとおりであった。
H−NMR(270MHz、CDCl、TMS) δ:6.72(d−t,1H,J=2.4Hz,1.4Hz)、6.01(d,1H,J=2.4Hz)、4.89(t,2H,J=7.8)、2.99(d−t,2H,J=1.4Hz,7.8Hz)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、Rは、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基である。]
で示される2−(4−アルコキシ−チオフェン−3−イル)−エタン−1−オール。
【請求項2】
下記一般式(1):
【化2】

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、Rは、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基である。]
で示される2−(4−アルコキシ−チオフェン−3−イル)−エタン−1−オールを分子内環化反応させる、下記一般式(2):
【化3】

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。]
で示される2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フラン誘導体の製造方法。
【請求項3】
下記一般式(3):
【化4】

[式中、Rは、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基であり、Xは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。]
で示される化合物と有機リチウム化合物を反応させ、次いで下記一般式(4):
【化5】

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。]
で示されるエチレンオキシド誘導体と反応させる、下記一般式(1):
【化6】

[式中、R、R、R、R及びRは、前記と同義である。]
で示される2−(4−アルコキシ−チオフェン−3−イル)−エタン−1−オールの製造方法。

【公開番号】特開2010−138078(P2010−138078A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313218(P2008−313218)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】