説明

2,6−ジアミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチアゾールの生産方法

【課題】 なし
【解決手段】 プラミペキソールの生産に有用な、2,6-ジアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾールを下記工程により生産する:(i)臭素と4-アセトアミド-シクロヘキサノン水溶液とを反応させ、2-ブロモ-4-アセトアミド-シクロヘキサノンを製造する工程:(ii)工程(i)の後、チオ尿素を加え、6-アセチルアミノ-2-アミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾールを製造する工程;(iii)工程(ii)の後、臭化水素酸の水溶液を加え、2,6-ジアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾール二臭化水素酸塩を製造する工程;及び(iv)工程(iii)の後、2,6-ジアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾールを単離する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラミペキソールの製造に有用な中間体である、2,6-ジアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾールの生産方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラミペキソールとして一般に知られている、(S)-4,5,6,7-テトラヒドロ-N6-プロピル-2,6-ベンゾチアゾールジアミン(又は (S)-2-アミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-6-(プロピルアミノ)ベンゾチアゾール)は、ドーパミン作動薬として、初期、及び末期のパーキンソン病において使用され、脳内のドーパミン受容体を活性化させる。これは、欧州特許第0186087号に記載されている。
【0003】
また、欧州特許第0186087号には、プラミペキソールを含む、様々なテトラヒドロベンゾチアゾール類の合成法が記載されている。特に、下記の反応経路による、プラミペキソールの合成法が記載されている。臭素と4-アセチルアミド-シクロヘキサノンとの最初の反応を、氷酢酸中、室温下で数時間撹拌することにより行う。続いて、還流条件下で、チオ尿素を加える。該反応混合液を、冷却し、かつ6-アセチルアミノ-2-アミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾール-臭化水素酸塩の結晶を、沈殿させる。該沈殿物を濾過し、次いで、水、及びアセトンで洗浄する。次いで、該結晶を、臭化水素酸中に溶解し、かつ該溶液を、数時間還流する。次いで、2,6-ジアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾール二臭化水素酸塩が形成された該溶液を、溶媒留去により濃縮し、かつ該残留物を、メタノール中に溶解する。その後、該2,6-ジアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾール二臭化水素酸塩を、プラミゼキソールに変換することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この合成法を、下記反応スキームに記載する。
【0005】
【化1】

【0006】
この合成経路は、異なる条件、溶媒、温度などを各々必要とする、個々の反応工程を含む。これは、不連続工程、及び二以上の単離工程を必要とし、連続工程に比べ、長い工程時間、低い収率(各単離工程の間に、生成物が損失される。)、廃液処理の増加、及び溶媒使用の増加を伴う。
【課題を解決するための手段】
【0007】
今回、我々は、前述の方法における複数の単離工程を省いた、4-アセトアミド-シクロヘキサノンから2,6-ジアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾールの合成方法を見つけた。
本発明の一態様において、2,6-ジアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾールの合成方法を提供し、該方法は、下記工程を含む:(i)臭素と4-アセトアミド-シクロヘキサノン溶液水とを反応させ、2-ブロモ-4-アセトアミド-シクロヘキサノンを製造する工程:(ii)工程(i)の後、チオ尿素を加え、6-アセチルアミノ-2-アミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾール-二臭化水素酸塩を製造する工程;(iii)工程(ii)の後、臭化水素酸の水溶液を加え、2,6-ジアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾールを製造する工程;及び(iv)工程(iii)の後、2,6-ジアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾール遊離塩基を単離する工程である。
本発明の重要な特徴は、工程(ii)において製造される、6-アセチルアミノ-2-アミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾールの単離を行わずに、工程(iii)を行うことである。従って、全ての合成を、一つの反応器内で行うことができる。好ましくは、工程(i)〜(iv)の少なくとも3つの連続工程を、一つの反応器内で行う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
該方法は、工程(i)の前に、4-アセトアミド-シクロヘキサノールを酸化して、4-アセトアミド-シクロヘキサノンを製造する工程を含むことができる。この工程は、その後の工程(i)〜(iv)のように、同じ反応器内で行うことができ、それによって、余計な単離工程を省くことができる。
該酸化反応を、酸化剤を用いて行うことができ、例えば、ジョーンズ試薬、次亜塩素酸ナトリウム、二酸化マンガン、重クロム酸ピリジニウム、又は過マンガン酸カリウムがある。
工程(i)において、好ましくは、該4-アセトアミド-シクロヘキサノン溶液と該臭素とを、該反応器中、5℃〜75℃の範囲内の温度で、さらに好ましくは、15℃〜40℃の範囲内の温度で、最も好ましくは、室温(約25℃)で混合する。好ましくは、該臭素を、該4-アセトアミド-シクロヘキサノン溶液に滴下して加える。好ましくは、該臭素と該4-アセトアミド-シクロヘキサノン溶液とを混合した後に、好ましくは、該混合液を、30℃〜80℃の範囲内の温度に、さらに好ましくは、40℃〜50℃の範囲内の温度に、最も好ましくは、約45℃の温度に加熱し、かつ該臭素化が完了するまで、この温度、又はそれに近い温度に維持する。該臭素化の完了は、該臭素の特徴的茶褐色が消えることにより示される。
【0009】
工程(ii)において、好ましくは、該温度を、50℃〜95℃に、さらに好ましくは、70℃〜90℃に、最も好ましくは、約80℃に上げる。
工程(iii)において、好ましくは、該反応混合液を還流する。
工程(iv)において、好ましくは、該反応混合液を、1℃〜35℃に、さらに好ましくは、5℃〜20℃に、最も好ましくは、約10℃に冷やし、かつ次いで、該混合液を中和する。通常、該中和を、苛性アルカリ溶液(NaOH)を用いて行うが、他のアルカリを使ってもよい。中和後に、該生成物2,6-ジアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾールを単離する。該単離を、濾過、遠心分離、又は他の適切な方法により行うことができる。単離後に、好ましくは、該生成物を、冷水で洗浄する。
【0010】
好都合なことに、4-アセトアミド-シクロヘキサノールの酸化により、該出発化合物4-アセトアミド-シクロヘキサノンを形成することができる。
上述の化合物2,6-ジアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾールは、プラミペキソール、及び関連する化合物の製造中間体として有用なものである。
本発明の他の態様において、プラミペキソールの合成方法を提供し、該方法は、下記工程を含む:本発明の方法により、2,6-ジアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾールを形成し、次いで、それをプラミペキソールに変換する工程である。
2,6-ジアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾールからプラミペキソールへの変換は、当業者にとって周知であり、かつ例えば、米国特許第4,731,374号に記載されている。米国特許第4,731,374号中に記載されている、すべての方法を、本発明に使用することができる。
【0011】
一態様において、該2,6-ジアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾールを、適切な反応条件下、臭化プロピオニルのような、ハロゲン化プロピオニルを用いた反応により、プラミペキソールに変換する。
2,6-ジアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾール、及びプラミペキソールの両方は、不斉炭素原子を有し、かつ相異なる2種のエナンチオマーとして存在する:S(-)異性体、及びR(+)異性体である。しかし、プラミペキソールの該S(-)異性体の薬理活性は、該R(+)異性体の薬理活性に比べて、2倍強く、かつ一般的に使用される該名称、プラミペキソールとは、光学的に純粋なS(-)形態のことを言う。本明細書中において、“2,6-ジアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾール”とは、各該R(+)、及びS(-)エナンチオマー、及び該ラセミ混合物を含む、これらの混合物すべてのことであり、かつ該用語“プラミペキソール”とは、各該R(+)、及びS(-)エナンチオマー、及び該ラセミ混合物のことである。
【0012】
2,6-ジアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾールのラセミ混合物の分割を、上述の工程(iv)の後に行うことができる。分割方法は、技術において公知のものである。また、プラミペキソールラセミ化合物を、分割の前に製造し、次いで、必要に応じて、該混合物を分割することができる。
該プラミペキソールラセミ化合物の分割方法は、Schneider、及びMierauにより記載されている(J. Med. Chem. 30,494 (1987))。この方法は、基質として、(±)-4,5,6,7-テトラヒドロ-N6-プロピル-2,6-ベンゾチアゾールジアミンの該ジアミノ誘導体、及び分割剤として、L(+)酒石酸を使用する。分割後に、プロピオン無水物との反応工程、続いて、該プロピオニル中間体の還元工程を含む、該ジアミノ前駆体の1種のエナンチオマーの二段階プロピル化より、光学活性プラミペキソールを調製することができる。
【0013】
本発明の合成方法は、中間化合物を単離する必要性を省き、かつ従って、該収率は高く、かつ該工程時間は減らされる。さらに、有機溶媒(例えば、酢酸)が存在しないために、該コストを低減させ、かつ該反応条件を、穏やかにする−該穏やかな反応条件は、また、生成物純度において、プラス効果がある。
さらに、次の実施例を参照して、本発明を記載する。
【実施例】
【0014】
(実施例1)
室温下、臭素(112 g)を、水500 ml中の4-アセトアミドシクロヘキサノン(100 g)溶液に滴下して加えた。該混合液を約45℃に暖め、かつ、該臭素の色がなくなるまで、この温度を維持した。これに、チオ尿素(125 g)を加え、かつ該混合液を、約80℃に加熱した。これに、臭化水素酸水溶液(100 ml)を加え、かつ該反応器の内容液を還流した。次いで、該内容液を、約10℃に冷やし、かつ苛性アルカリ溶液で中和した。該生成物2,6-ジアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾールを、濾過により単離し、かつ冷水で洗浄し、かつ乾燥した。該生成物は、オフホワイト色であり、収量は、重量において、約60 gであった。
【0015】
(実施例2)
アセトン(1 L)中の4-アセトアミド-シクロヘキサノール(100 g)の溶液に、10-15℃で、ジョーンズ試薬(酸化クロム68.5 g、硫酸105 g、及び水400 mlから調製されている。)を加えた。該試薬の過剰量を、イソプロパノール(400 ml)を加えてクエンチし、かつ該溶媒を、減圧下で除去した。酢酸エチル(600 ml)を加え、該内容液を、10分間撹拌し、かつ該下の水相部分を、取り除いた。酢酸エチルを、減圧下で濃縮し、かつ該残留物を、水(500 ml)中に溶解した。臭素(112 g)を、滴下により加え、かつ次の反応を、実施例1に記載されているように行った。
【0016】
(実施例3)
水(300 ml)中の4-アセトアミド-シクロヘキサノール(100 g)の懸濁液に、10%次亜塩素酸ナトリウム(500 ml)の溶液を加え、かつ該内容液を室温で、12時間攪拌した。これに、液体の臭素(112 g)を加え、かつ次の反応を、実施例1に記載されているように行った。
上述の本発明を、変更することができることは、明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,6-ジアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾールの生産方法であって:(i)臭素と4-アセトアミド-シクロヘキサノン水溶液とを反応させ、2-ブロモ-4-アセトアミド-シクロヘキサノンを製造する工程;(ii)チオ尿素を加え、6-アセチルアミノ-2-アミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾールを製造する工程;(iii)臭化水素酸の水溶液を加え、2,6-ジアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾールを製造する工程;及び(iv) 2,6-ジアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾールを単離する工程を、順次含む、前記方法。
【請求項2】
工程(ii)において製造される、該6-アセチルアミノ-2-アミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾールを単離せずに、工程(iii)を行う、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程(i)〜(iv)のいずれか3つの連続工程を、一つの反応器内で行う、請求項1、又は2記載の方法。
【請求項4】
工程(i)〜(iv)を、一つの反応器内で行う、請求項1、2、又は3記載の方法。
【請求項5】
さらに、工程(i)の前に、4-アセトアミド-シクロヘキサノールを酸化して、4-アセトアミド-シクロヘキサノンを製造する工程を含む、請求項1、2、3、又は4記載の方法。
【請求項6】
4-アセトアミド-シクロヘキサノールを酸化して、4-アセトアミド-シクロヘキサノンを製造し、かつ工程(i)〜(iv)の少なくとも3つの連続工程を、一つの反応器内で行う、請求項5記載の方法。
【請求項7】
工程(i)において、該4-アセトアミド-シクロヘキサノン水溶液と臭素とを、15℃〜40℃の温度で混合する、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
該臭素と該4-アセトアミド-シクロヘキサノン溶液とを混合した後に、該混合液を、40℃〜50℃の温度に加熱し、かつ該臭素化が完了するまで、この温度、又はそれに近い温度に維持する、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
工程(ii)において、該温度を、70℃〜90℃に上げる、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
工程(iii)を、還流条件下で行う、請求項項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
工程(iii)終了後、工程(iv)の前に、該反応混合液を、5℃〜20℃に冷やし、次いで中和する、請求項1〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
さらに、工程(iv)で単離した、該2,6-ジアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾールを、そのR(+)、及びS(-)エナンチオマーに分割し、かつ該R(+)、及び/又はS(-)エナンチオマーを回収する工程を含む、請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
プラミペキソールの合成方法であって:請求項1〜12のいずれか1項記載の方法により、2,6-ジアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾールを形成し、かつそれをプラミペキソールに変換する工程を含む、前記方法。
【請求項14】
2,6-ジアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾールを、ハロゲン化プロピオニルを用いた反応により、プラミペキソールに変換する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
該2,6-ジアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾールが、該R(+)エナンチオマーである、請求項13、又は14記載の方法。
【請求項16】
該2,6-ジアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾールが、該S(-)エナンチオマーである、請求項13、又は14記載の方法。
【請求項17】
該2,6-ジアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾールが、ラセミ混合物である、請求項13、又は14記載の方法。
【請求項18】
さらに、該プラミペキソールを、そのR(+)、及びS(-)エナンチオマーに分割し、かつ該R(+)、及び/又はS(-)エナンチオマーを回収する工程を含む、請求項14記載の方法。
【請求項19】
実施例に記載されているように、実質的に、2,6-ジアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾチアゾールを合成する方法。

【公表番号】特表2006−506412(P2006−506412A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−549326(P2004−549326)
【出願日】平成15年11月3日(2003.11.3)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004734
【国際公開番号】WO2004/041797
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(505166340)シプラ エルティーディ (2)
【Fターム(参考)】