説明

20−O−β−D−グルコピラノシル−20(S)−プロトパナキサジオールを含む固体分散体

【課題】20−O−β−D−グルコピラノシル−20(S)−プロトパナキサジオールの溶出率を増加させる作用効果を有する、固体分散体を提供すること。
【解決手段】本発明は、薬理学的活性成分としての20−O−β−D−グルコピラノシル−20(S)−プロトパナキサジオール、及び脂質マトリクスとしての飽和ポリグリコール化グリセリドを含んでなる、固体分散体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、20−O−β−D−グルコピラノシル−20(S)−プロトパナキサジオールを含む固体分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
20−O−β−D−グルコピラノシル−20(S)−プロトパナキサジオール(20-O-β-D-glucopyranosyl-20(S)-protopanaxadiol)は、ジンセノサイド(ginsenoside)の腸内微生物による代謝体の中でも抗癌効果の大きい物質である。
【0003】
現在、癌の治療に使われている抗癌剤の大部分は、化学療法剤であって、癌細胞の各種代謝経路に介入して主にDNAと直接作用し、DNAの複製、転写、翻訳過程を遮断し或いは核酸前駆体の合成を妨害し細胞分裂を阻害することにより、抗癌活性、すなわち癌細胞に対する細胞毒性を示す。ところが、この化学療法剤は、癌細胞のみならず、正常細胞に対しても毒性を示している。よって、正常細胞などの所望しない部分に悪影響を及ぼす副作用を示す。正常細胞より旺盛に増殖する癌細胞に対してさらに多くの毒性を示すが、人体内には新しい細胞の増殖が旺盛に起こる部分があって、これらに及ぼす副作用が激しい。盛んに細胞の増殖が起こる骨髄、毛嚢、胃腸管内皮細胞などは化学療法剤に多く影響されるため、薬物治療を受ける患者では骨髄で作られる免疫関連細胞への副作用が大きい。すなわち、免疫に関わる白血球の減少や、血液凝固に関わる赤血球、白血球及び血小板の減少などにより細菌感染、自然出血、脱毛、ムカツキ及び嘔吐などの副作用を示す。
【0004】
化学療法剤のかかる副作用を改善するために様々な抗癌剤が開発されているが、天然物由来抗癌剤がそれらの中でも最も盛んに開発されている。
【0005】
ジンセノサイド(ginsenoside)の代謝体である20−O−β−D−グルコピラノシル−20(S)−プロトパナキサジオールは、このような天然物由来抗癌剤の一つとして開発された物質であって、副作用が少なく、既存の抗癌剤と同等以上の薬効を示すものとして知られており、株式会社一和を特許権者とする特許文献1及び特許文献2により抗癌用途と製造方法などが知られており、同特許権者の特許文献3、特許文献4などでIH−901と略称されている。
【0006】
前記ジンセノサイドは、コレステロール代謝の増加、血清タンパク質合成促進、免疫増強効果、抗炎症活性などを示す朝鮮人参の重要な活性物質であって、ジンセノサイドRb1、Rb2、Rcなどがヒト腸内微生物によって20−O−β−D−グルコピラノシル−20(S)−プロトパナキサジオール(以下、IH−901という)に転換される。前記IH−901は抗転移又は癌細胞侵入抑制、腫瘍形成抑制及び染色体異常抑制によるメカニズムによって優れた癌細胞転移抑制効果を示す。
【0007】
ところが、前記IH−901の経口投与の際に、生体利用率は3.5%と非常に低いため(非特許文献1参照)、経口投与の後に十分な抗癌作用を期待することができない。これは、この薬物が水に対して非常に難溶性であるから、経口投与の後にその薬物の溶出率が低いためである。これを解決するために、この薬物の水に対する溶解度と溶出率を向上させるための研究が行われてきた。
【0008】
難溶性のIH−901の水に対する溶解度を向上させるために代表的な可溶化剤としての補助溶媒(エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、グリセリン)、界面活性剤(ポリソルベート80、ポリオキシ35ヒマシ油、ポリオキシ40硬化ヒマシ油、ポロキサマー188、ポロキサマー407)、包接化合物形成剤(ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン)を使用した場合、補助溶媒を40%、界面活性剤又はヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを10%と高濃度で含有する水溶液の中でも、IH−901の溶解度がいずれも10mg/mL以下であるという報告がある(非特許文献2参照)。前記結果はIH−901の経口製剤化に必要な十分な溶解度とは認められない。
【0009】
また、包接化合物形成剤としてのβ−シクロデキストリンを用いてIH−901の包接化合物を製造し、水を溶出液として溶出試験をした研究では、IH−901の溶出率が6時間経過後に10%程度に過ぎないため、可溶化が十分ではなかったとともに、この包接化合物を用いて経口投与時の生体利用率を測定したところ、 生体利用率がIH−901粉末投与時より約2倍程度増加したが、依然として生体利用率が6.6%と低いことを確認した(非特許文献1参照)。
【0010】
したがって、IH−901の経口投与の際に十分な薬効を得るためには、この薬物の溶出率を増加させる技術の開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】韓国登録特許第0164266号明細書
【特許文献2】韓国登録特許第0178863号明細書
【特許文献3】韓国登録特許第0412218号明細書
【特許文献4】韓国登録特許第0412218号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Physicochemical characteristics and bioavailability of a novel intestinal metabolite of ginseng saponin(IH901) complexed with β-cyclodextrin, International Journal of Pharmaceutics 2006, 316, 29-36
【非特許文献2】朝鮮人参サポニンの小腸内最終代謝産物であるIH−901の水溶液中の可溶化、薬剤学会誌、2004、34、385〜391
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、20−O−β−D−グルコピラノシル−20(S)−プロトパナキサジオールの溶出率に優れた固体分散体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、薬理学的活性成分としての20−O−β−D−グルコピラノシル−20(S)−プロトパナキサジオール(以下、IH−901という)と、脂質マトリクスとしての飽和ポリグリコール化グリセリドとを含んでなる、固体分散体を提供する。
【0015】
前記飽和ポリグリコール化グリセリドは、相対分子量200〜2000のポリエチレングリコールを用いて水素化植物性油(vegetable oil)を部分アルコール分解し、或いは相対分子量200〜2000のポリエチレングリコール及びグリセロールを用いて飽和脂肪酸をエステル化させて得たモノ−、ジ−及びトリ−グリセリドとポリエチレングリコールのモノ−及びジ−エステルとの混合物である(French Pharmacopeia 10th Edition、国際公開公報WO95/07696で再引用)。前記飽和ポリグリコール化グリセリドの代表的な商品としては、Gelucire(販売元:Gattefosse s.a.、Saint Priest、France)、例えばGelucire 35/10、Gelucire 44/14、Gelucire 46/07、Gelucire 50/13、Gelucire 53/10などがあり、それぞれは融点とHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)値で特徴付けられる。それぞれのGelucireは、融点を示す前2桁、スラッシュ、及びHLB値を示す後ろ2桁で命名される。例えば、Gelucire 44/14は、融点が44℃であり、HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)値が14である。
【0016】
前記Gelucireそれぞれの滴下点、水酸基価、鹸化価及び脂肪酸組成は下記のとおりである。
【0017】
Gelucire 35/10
滴下点(drop point):29〜34℃(好ましくは31.2℃)
水酸基価(hydroxyl value):70〜90mg KOH/g(好ましくは74mg KOH/g)
鹸化価(saponification value):120〜134mg KOH/g(好ましくは134mg KOH/g)
脂肪酸組成:
カプリル酸(C8):1〜7%(好ましくは2.1%)
カプリン酸(C10):1〜7%(好ましくは2.2%)
ラウリン酸(C12):31〜41%(好ましくは35.4%)
ミリスチン酸(C14):7〜17%(好ましくは12.9%)
パルミチン酸(C16):12〜22%(好ましくは20.7%)
ステアリン酸(C18):23〜33%(好ましくは26.2%)
【0018】
Gelucire 44/14
滴下点:42.5〜47.5℃
水酸基価:30〜50mg KOH/g
鹸化価:76〜90mg KOH/g
脂肪酸組成:
カプリル酸(C8):4〜10%
カプリン酸(C10):3〜9%
ラウリン酸(C12):40〜50%
ミリスチン酸(C14):14〜24%
パルミチン酸(C16):4〜14%
ステアリン酸(C18):5〜15%
【0019】
Gelucire 46/07
滴下点:47〜52℃(好ましくは49.3℃)
水酸基価:65〜85mg KOH/g(好ましくは74mg KOH/g)
鹸化価:126〜140mg KOH/g(好ましくは139mg KOH/g)
脂肪酸組成:
カプリル酸(C8):<3%(好ましくは<0.1%)
カプリン酸(C10):<3%(好ましくは<0.1%)
ラウリン酸(C12):<5%(好ましくは0.9%)
ミリスチン酸(C14):<5%(好ましくは1.4%)
パルミチン酸(C16):40〜50%(好ましくは44%)
ステアリン酸(C18):48〜58%(好ましくは52.8%)
【0020】
Gelucire 50/13
滴下点:46〜51℃(好ましくは48.7℃)
水酸基価:36〜56mg KOH/g(好ましくは52mg KOH/g)
鹸化価:67〜81mg KOH/g(好ましくは74mg KOH/g)
脂肪酸組成:
カプリル酸(C8):<3%(好ましくは0.2%)
カプリン酸(C10):<3%(好ましくは0.2%)
ラウリン酸(C12):<5%(好ましくは2.2%)
ミリスチン酸(C14):<5%(好ましくは1.8%)
パルミチン酸(C16):40〜50%(好ましくは42.5%)
ステアリン酸(C18):48〜58%(好ましくは52.6%)
【0021】
Gelucire 53/10
滴下点:49〜54℃(好ましくは52.5℃)
水酸基価:25〜45mg KOH/g(好ましくは35mg KOH/g)
鹸化価:98〜112mg KOH/g(好ましくは104mg KOH/g)
脂肪酸組成:
カプリル酸(C8):<3%(好ましくは<0.1%)
カプリン酸(C10):<3%(好ましくは<0.1%)
ラウリン酸(C12):<5%(好ましくは0.4%)
ミリスチン酸(C14):<5%(好ましくは1.0%)
パルミチン酸(C16):40〜50%(好ましくは43%)
ステアリン酸(C18):48〜58%(好ましくは54.2%)
【0022】
本発明の固体分散体は、IH−901が脂質マトリックスとしての飽和ポリグリコール化グリセリドに分散した形で得られる。
【0023】
前記固体分散体中の前記IH−901 100重量部に対して前記飽和ポリグリコール化グリセリド200〜5000重量部を含むことができ、200重量部未満ではIH−901の可溶化が十分ではなく、5000重量部超過では過多使用により最終製剤化が難しいおそれがある。
【0024】
本発明の固体分散体中の飽和ポリグリコール化グリセリドの好ましい例は、Gelucire 44/14であり、この添加剤は、ラウロイルポリオキシル−32グリセリドという名称で米国薬局方/国民医薬品集(USP/NF)に収載されている。
【0025】
本発明の固体分散体は、固体分散体を製造するときに用いる通常の方法、例えば溶媒法、溶融法、混合法などの方法によって、IH−901を飽和ポリグリコール化グリセリドに分散させて製造することができる。
【0026】
さらに、前記固体分散体は、そのまま或いは薬学的に許容される添加剤を添加しカプセルに充填してカプセル剤に製剤化し、或いは薬学的に許容される添加剤と混合し打錠して錠剤に製剤化することができる。これらの添加剤の例は、澱粉、乳糖、微結晶セルロース、リン酸水素カルシウムなどの賦形剤、及び/またはタルク、二酸化珪素、ステアリン酸及びその金属塩、ケイ酸アルミン酸マグネシウムなどの滑沢剤などである。
【0027】
前記固体分散剤は、例えばカプセル剤及び/または錠剤などとして製剤化することができ、前記固体分散体のみを或いは添加剤と共に軟質カプセル又は硬質カプセルに充填してカプセル剤として製剤化し、或いは添加剤と共に打錠して錠剤として製剤化することができる。
【0028】
具体的に、固体分散体をそのまま或いは添加剤を添加し一般カプセル充填機又は液体充填機などの充填機によって硬質カプセル又は軟質カプセルに充填して、カプセル剤として製造し、或いは固体分散体に賦形剤や滑沢剤などの添加剤を添加して粉末化した後、この粉末を通常の添加剤と混合し打錠して錠剤に製造し、或いはこの粉末を硬質カプセル又は軟質カプセルに充填してカプセル剤として製造することができる。
【0029】
したがって、本発明は、剤形がカプセル剤の固体分散体を提供する。
また、本発明は前記固体分散体と、薬学的に許容される添加剤とを含んでなる薬学的製剤を提供し、前記製剤は例えばカプセル剤又は錠剤である。
【発明の効果】
【0030】
本発明の固体分散体は、IH−901の溶出率を増加させる作用効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例2で製造した固体分散体の溶出試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の理解を助けるために実施例を提示する。下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるもので、本発明の内容を限定するものではない。
【0033】
<実施例1>溶媒法によるIH−901が飽和ポリグリコール化グリセリドに分散した固体分散体の製造
IH−901 100重量部
Gelucire 44/14 200重量部
IH−901(株式会社一和、韓国九里市)100gとGelucire 44/14(Gattefosse社、フランス)200gを、ジクロロメタン:エタノール(60:40)の混合液800mLに加え、完全に溶解させた。この溶液を60℃に加温して溶媒を揮散させることにより、固体分散体を製造した。
【0034】
<実施例2>溶融法によるIH−901が飽和ポリグリコール化グリセリドに分散した固体分散体の製造
IH−901 100重量部
Gelucire 44/14 500重量部
Gelucire 44/14 500gを60℃に加温して完全に溶融させた後、IH−901 100gを加え、150℃に加温して完全に溶解させた。その後、溶融物を室温に冷却して固体分散体を製造した。
【0035】
<実施例3>溶融法によるIH−901が飽和ポリグリコール化グリセリドに分散した固体分散体の製造
IH−901 100重量部
Gelucire 44/14 1000重量部
Gelucire 44/14 1000gを60℃に加温して完全に溶融させた後、IH−901 100gを加え、130℃に加温して完全に溶解させた。その後、溶融物を室温に冷却して固体分散体を製造した。
【0036】
<実施例4>溶融法によるIH−901が飽和ポリグリコール化グリセリドに分散した固体分散体の製造
IH−901 100重量部
Gelucire 44/14 2000重量部
Gelucire 44/14 200gを60℃に加温して完全に溶融させた後、IH−901 10gを加え、130℃に加温して完全に溶解させた。その後、溶融物を室温に冷却して固体分散体を製造した。
【0037】
<実施例5>溶融法によるIH−901が飽和ポリグリコール化グリセリドに分散した固体分散体の製造
IH−901 100重量部
Gelucire 44/14 5000重量部
Gelucire 44/14 500gを60℃に加温して完全に溶融させた後、IH−901 10gを加え、130℃に加温して完全に溶解させた。その後、溶融物を室温に冷却して固体分散体を製造した。
【0038】
<実施例6>溶融法によるIH−901が飽和ポリグリコール化グリセリドに分散した固体分散体の製造
IH−901 100重量部
Gelucire 44/14 500重量部
ケイ酸アルミン酸マグネシウム 300重量部
Gelucire44/14(Gattefosse社、フランス)500gを60℃に加温して完全に溶融させた後、IH−901 100gを加え、150℃に加温して完全に溶解させた。その後、溶融物を60℃に冷却し、ケイ酸アルミン酸マグネシウム(ノイシリン、日本富士ケミカル社)300gを加えて混合した後、室温に冷却させることにより、流動性に優れた固体分散体を製造した。
【0039】
<実施例7>溶融法によるIH901が飽和ポリグリコール化グリセリドに分散した固体分散体の製造
IH901 100重量部
Gelucire 50/13 2000重量部
Gelucire 50/13(Gattefosse社、フランス)200gを65℃に加温して完全に溶融させた後、IH901 10gを加え、130℃に加温して完全に溶解させた。その後、溶融物を室温に冷却して固体分散体を製造した。
【0040】
<実施例8>溶融法によるIH901が飽和ポリグリコール化グリセリドに分散した固体分散体の製造
IH901 100重量部
Gelucire 50/13 5000重量部
Gelucire 50/13(Gattefosse社、フランス)500gを65℃に加温して完全に溶融させた後、IH901 10gを加え、130℃に加温して完全に溶解させた。その後、溶融物を室温に冷却して固体分散体を製造した。
【0041】
<実施例9>カプセル剤の製造
実施例2で製造した固体分散体を、硬質カプセル3号に液体充填機(日本ノサカテック社、FS03−SN008)によりカプセル当たり150mg充填して、カプセル剤を製造した。
【0042】
<実施例10>カプセル剤の製造
実施例4で製造した固体分散体を硬質カプセル1号に液体充填機によりカプセル当たり420mg充填して、カプセル剤を製造した。
【0043】
<実施例11>カプセル剤の製造
実施例6で製造した固体分散体を硬質カプセル1号に手動カプセル充填機(金星機工社、韓国)によりカプセル当たり420mg充填して、カプセル剤を製造した。
【0044】
<実施例12>錠剤の製造
実施例6で製造した固体分散体 180mg
無水乳糖 176mg
ステアリン酸マグネシウム 4mg
実施例6で製造した固体分散体180gと無水乳糖176gを20分間混合し、さらにステアリン酸マグネシウム4gを入れて5分間混合した後、1錠当たり360mgとなるように打錠機(インドのRimek社、Mini Press−II SF)で打錠した。
【0045】
<実験例1>溶出試験
実施例2で製造された固体分散体から薬物の溶出様相を測定した。対照群として、実施例2の固体分散体の製造の際に使用したIH−901原料を使用した。米国薬局方一般試験法の溶出試験法第2法(パドル法)を利用し、試験液としては精製水900mLを使用した。パドルの回転速度は50rpmとした。IH−901 25mgの対照群、又はIH−901 25mgに相当する実施例2の固体分散体を溶出液に入れ、所定の時間に180分まで溶出液を取り、濾過した後、濾液中のIH−901の含量を高速液体クロマトグラフィー法で測定した。高速液体クロマトグラフィーは、日立社の製品を使用し、次のような分析条件を有する。すなわち、カラムはC18(Luna、5μm、250mm、Phenomenex社、米国)、移動相はアセトニトリル:水(70:30)、流速は1mL/min、検出波長は205nm、注入量は50μLであり、試料数はそれぞれ3個であった。その結果を図1に示す。図1は溶出試験結果を示す。図中のx軸は経過時間、y軸は溶出率(%)をそれぞれ示す。図中の○は原料を示し、●は実施例2で製造された固体分散体を示す。
【0046】
その結果、IH−901原料は薬物溶出が殆ど起こらず、試験開始3時間経過後にも溶出率が約3%に過ぎなかったが、実施例2の固体分散体は試験開始15分のみで65%の溶出率を示し、3時間後には約90%の溶出率を示した。
【0047】
したがって、本発明の固体分散体は、IH−901の溶出率を顕著に増加させる作用効果を示すことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、薬理学的活性成分としての20−O−β−D−グルコピラノシル−20(S)−プロトパナキサジオールと、脂質マトリクスとしての飽和ポリグリコール化グリセリドとを含んでなる固体分散体を提供し、本発明の固体分散体は、20−O−β−D−グルコピラノシル−20(S)−プロトパナキサジオールの溶出率を増加させる作用効果を有するので、産業上の利用可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬理学的活性成分としての20−O−β−D−グルコピラノシル−20(S)−プロトパナキサジオール、及び脂質マトリクスとしての飽和ポリグリコール化グリセリドを含んでなる、固体分散体。
【請求項2】
前記飽和ポリグリコール化グリセリドがモノ−、ジ−及びトリ−グリセリドとポリエチレングリコールのモノ−及びジ−エステルとの混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の固体分散体。
【請求項3】
前記20−O−β−D−グルコピラノシル−20(S)−プロトパナキサジオール100重量部に対して、前記飽和ポリグリコール化グリセリドを200〜5000重量部含有することを特徴とする、請求項1に記載の固体分散体。
【請求項4】
前記飽和ポリグリコール化グリセリドがラウロイルポリオキシル−32グリセリドであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体分散体。
【請求項5】
前記固体分散体の剤形がカプセル剤であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体分散体。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体分散体、及び薬学的に許容される添加剤を含んでなる、薬学的製剤。
【請求項7】
前記製剤がカプセル剤又は錠剤であることを特徴とする、請求項6に記載の製剤。

【図1】
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【公表番号】特表2013−512948(P2013−512948A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543000(P2012−543000)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【国際出願番号】PCT/KR2009/007305
【国際公開番号】WO2011/071194
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(500116111)イル・ファ・カンパニー・リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】IL HWA CO.,LTD.
【Fターム(参考)】