説明

24−ヒドロキシビタミンD誘導体

【課題】24位に水酸基を有するビタミンD誘導体の製造方法を提供する。
【解決手段】一般式(6):


(式中、R1、R2、R3およびR4は同一または異なって、水素原子または保護基を示す)を有するビタミンD誘導体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、24位に水酸基を有するビタミンD誘導体に関する。さらに詳細には本発明は、2β位に置換基を有し、かつ24位に水酸基を有するビタミンD誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビタミンD誘導体の生理活性が明らかにされてきている。ビタミンD類の1種である1α,25−ジヒドロキシビタミンD3 はカルシウム代謝調節作用、腫瘍細胞などの増殖抑制作用や分化誘導作用、免疫調節作用など広範な生理活性を示すことが知られている。
【0003】
しかしながら、1α,25−ジヒドロキシビタミンD3 は、投与量あるいは投与方法によっては高カルシウム血症を起こすという欠点を有しており、例えば、抗腫瘍剤、抗リウマチ剤としての使用には不適である。このため、最近ビタミンD誘導体のこれらの作用の分離を目的として多数のビタミンD誘導体が合成されその生理活性が検討されている。
【0004】
多数のビタミンD3 誘導体の中でも、2β位に置換基を有するビタミンD3 誘導体のあるものは、生体内カルシウムの調節作用、腫瘍細胞などの分化誘導作用などの生理活性を有し、医薬、例えば骨粗鬆症、骨軟化症などのカルシウム代謝異常に基づく疾患の治療薬または抗腫瘍剤として有用であることが知られている(特公平3−14303号、特開昭61−267549号、特開平6−41059号などを参照)。これらの中でも、2β−(3−ヒドロキシプロポキシ)−1α,25−ジヒドロキシビタミンD3 は高い血中持続性を有する骨組鬆薬としてその実用化が期待されている。
【0005】
また、ビタミンD3 誘導体の合成方法としては、例えば、ステロイド化合物を出発化合物として用い、そのA環部分をエポキシ化した後に開環することによって2位に置換基を導入する方法(特開昭61−267549号)、あるいはビタミンD誘導体のA環部分とCD環部分とを別々に合成した後、これらを結合させる方法などが知られている。そして、特開平6−25039号あるいは特願平9−53316号(特開平10−251183号として公開)にはビタミンD誘導体のA環部分の合成法が記載されている。
【0006】
上記のように2β−(3−ヒドロキシプロポキシ)−1α,25−ジヒドロキシビタミンD3 は有用な医薬としてその開発が進められている一方、その代謝産物の研究も行われている。最近、このような2β−(3−ヒドロキシプロポキシ)−1α,25−ジヒドロキシビタミンD3 の代謝産物の研究が進められるにつれて、その代謝産物の中には側鎖がヒドロキシル化されたものが含まれているらしいことが示唆されるようになった。しかしながら、例えばこのような2β−(3−ヒドロキシプロポキシ)−1α,25−ジヒドロキシビタミンD3 誘導体骨格の24位がヒドロキシル化された化合物の合成についてはこれまでに報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平3−14303号
【特許文献2】特開昭61−267549号
【特許文献3】特開平6−41059号
【特許文献4】特開昭61−267549号
【特許文献5】特開平6−25039号
【特許文献6】特開平10−251183号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的の一つは、24位がヒドロキシル化された新規なビタミンD誘導体を提供することである。
【0009】
本発明のもう一つ別の目的は、上記した24位がヒドロキシル化された新規なビタミンD誘導体を合成するのに有用な新規な合成中間体、具体的にはビタミンD誘導体骨格のA環部分に対応する中間体化合物並びにCD環部分に対応する中間体化合物を提供することである。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、上記した本発明による合成中間体を使用する本発明による24位がヒドロキシル化された新規なビタミンD誘導体の製造方法を提供することである。
【0011】
本発明のさらに別の目的は、上記した本発明による新規な合成中間体を使用する、2β−(3−ヒドロキシプロポキシ)−1α,25−ジヒドロキシビタミンD3 の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決することを目的として、ビタミンD骨格のCD環部分の合成、A環部分の合成、並びに上記CD環部分とA環部分とのカップリングの諸反応を検討した結果、CD環部分としての1−[4,5−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−1,5−ジメチルヘキシル]−4−ブロモメチレン−7a−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン並びにA環部分としての3,5−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−4−(3−t−ブチルジメチルシリルオキシプロポキシ)−1−オクテン−7−インを各々合成し、これらをカップリングさせることによって目的とする24位に水酸基を有するビタミンD3 誘導体を合成することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明の第1の側面によれば、一般式(1):
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、R1 、R2 、R3 およびR4 は同一または異なって、水素原子または保護基を示し;XおよびYはHまたはOR5 を示し、XがHの場合YはOR5 であり、XがOR5 の場合YはHであり、ここでR5 は水素原子または保護基を示し、R1 とR5 は一緒になって、ビシナル−ジオールの保護基を形成していてもよい)
を有するビタミンD誘導体が提供される。
【0016】
上記一般式(1)において、好ましくは1位の立体配置はR配置である。
本発明の第2の側面によれば、一般式(2):
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、R1 およびR6 は同一または異なって水素原子または保護基を示し;XおよびYはHまたはOR5 を示し、XがHの場合YはOR5 であり、XがOR5の場合YはHであり、ここでR5 は水素原子または保護基を示し;R1 とR5 は一緒になって、ビシナル−ジオールの保護基を形成していてもよい)
を有する化合物、一般式(3):
【0019】
【化3】

【0020】
(式中、R1 は水素原子または保護基を示し;XおよびYはHまたはOR5 を示し、XがHの場合YはOR5 であり、XがOR5 の場合YはHであり、ここでR5 は水素原子または保護基を示し、R1 とR5 は一緒になって、ビシナル−ジオールの保護基を形成していてもよい)
を有する化合物、並びに一般式(4):
【0021】
【化4】

【0022】
(式中、R1 は水素原子または保護基を示し;XおよびYはHまたはOR5 を示し、XがHの場合YはOR5 であり、XがOR5 の場合YはHであり、ここでR5 は水素原子または保護基を示し、R1 とR5 は一緒になって、ビシナル−ジオールの保護基を形成していてもよい)
を有する化合物が提供される。これらの化合物は一般式(1)の化合物の合成に有用な中間体化合物である。
【0023】
本発明の第3の側面によれば、一般式(5):
【0024】
【化5】

【0025】
(式中、R7 はトリメチルシリル基または水素原子を示し、R2 、R3 およびR4 は同一または異なって水素原子または保護基を示す)
を有する化合物が提供される。この化合物は一般式(1)の化合物の合成に有用な中間体である。
【0026】
本発明の第4の側面によれば、一般式(1):
【0027】
【化6】

【0028】
(式中、R1 、R2 、R3 およびR4 は同一または異なって、水素原子または保護基を示し;XおよびYはHまたはOR5 を示し、XがHの場合YはOR5 であり、XがOR5 の場合YはHであり、ここでR5 は水素原子または保護基を示し、R1 とR5 は一緒になって、ビシナル−ジオールの保護基を形成していてもよい)
を有するビタミンD誘導体の製造方法であって、一般式(4):
【0029】
【化7】

【0030】
(式中、R1 は水素原子または保護基を示し;XおよびYはHまたはOR5 を示し、XがHの場合YはOR5 であり、XがOR5 の場合YはHであり、ここでR5 は水素原子または保護基を示し、R1 とR5 は一緒になって、ビシナル−ジオールの保護基を形成していてもよい)
を有する化合物を、一般式(5):
【0031】
【化8】

【0032】
(式中、R7 は水素原子を示し、R2 、R3 およびR4 は同一または異なって水素原子または保護基を示す)
を有する化合物と反応させることを含む方法が提供される。
【0033】
上記方法において好ましくは、一般式(5)の化合物において3位のOR2 基の立体配置はR配置であり、製造される一般式(1)の化合物の1位の立体配置はR配置である。
【0034】
本発明の第5の側面によれば、一般式(6):
【0035】
【化9】

【0036】
(式中、R1 、R2 、R3 およびR4 は同一または異なって、水素原子または保護基を示す)
を有するビタミンD誘導体の製造方法であって、一般式(7):
【0037】
【化10】

【0038】
(式中、R1 は水素原子または保護基を示す)
を有する化合物を、一般式(5):
【0039】
【化11】

【0040】
(式中、R7 は水素原子を示し、R2 、R3 およびR4 は同一または異なって水素原子または保護基を示す)
を有する化合物と反応させることを含む方法が提供される。
【0041】
本発明の第6の側面によれば、一般式(1):
【0042】
【化12】

【0043】
(式中、R1 、R2 、R3 およびR4 は同一または異なって、水素原子または保護基を示し;XおよびYはHまたはOR5 を示し、XがHの場合YはOR5 であり、XがOR5 の場合YはHであり、ここでR5 は水素原子または保護基を示し、R1 とR5 は一緒になって、ビシナル−ジオールの保護基を形成していてもよい)
を有するビタミンD誘導体を含む、医薬組成物が提供される。
【0044】
本発明の医薬組成物は、例えば、カルシウム代謝異常に基づく疾患の治療薬または抗腫瘍剤として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は本発明化合物とビタミンDレセプターとの親和性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下に本発明のより詳細な態様、並びに本発明を実施するための具体的方法を説明する。
【0047】
本明細書中において、R1 〜R6 は各々水素原子または保護基である。保護基とは水酸基の保護基を意味し、分子の他の部分に実質的に悪影響を及ぼすことなく、慣用的な保護基離脱手段(例えば、加水分解、酸化分解、還元分解、加水素分解など)によって除去することができる任意の保護基を意味する。
【0048】
保護基の非限定的具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0049】
(I)RaCO−で表されるアシル基(式中、Raは水素原子、C1−C6アルキル基、C1−C6ハロアルキル基、アリール基を示す);例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、カプロイル、ベンゾイル、トリフルオロアセチル基など;
(II)RbOCO−で表されるアルコキシカルボニル基(式中、RbはC1−C6アルキル基、C1−C6アルケニル基、C7−C9アラルキル基、アリール基を表す);例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、フェノキシカルボニル基など;
(III)下記式
【0050】
【化13】

【0051】
で表される3置換シリル基(式中、Rd、ReおよびRfは同一または異なり、C1−C6アルキル基、アリール基またはC7−C9アラルキル基格示す):例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジフェニルシリル、トリベンジルシリル基など:
(IV)下記式
【0052】
【化14】

【0053】
で表される1−アルコキシ又は1−メルカプトアルキル基(式中、Xは酸素原子または硫黄原子を示し、RgおよびRg’は各々水素またはC1−C6アルキル基を示し;Rhは置換または未置換のC1−C6アルキル基を示し、ここで置換基としては、低級アルコキシ基、塩素等のハロゲン原子、トリメチルシリル基などのアルキル置換シリル基、あるいはアルコキシ基又はハロゲン原子等の置換基を有していてもよいフェニル基などが挙げられる。);例えば、メトキシメチル、メトキシエトキシメチル、1−エトキシエチル、メトキシイソプロピル、メチルチオメチル、t−ブチルチオメチル、β−トリクロロエチルオキシメチル、トリメチルシリルエトキシメチル、p−メトキシベンジルオキシメチル、およびp−クロロベンジルオキシメチル基など:
(V)下記式
【0054】
【化15】

【0055】
で表される2−オキサシクロアルキル基(式中、nは3から6の整数である):例えば、テトラヒドロフラリル、テトラヒドロピラニル基など;
(VI)ベンジル基などのアラルキル基:
あるいは、本発明においてR1 とR5 は一緒になって、ビシナル−ジオールの保護基を形成していてもよい。
【0056】
ビシナル−ジオールの保護基の例としてばアセタール型もしくはケタール型またはオルトエステル型の保護基が挙げられる。具体例としては、アセタール型もしくはケタール型の保護基として、メチレン基、ジフェニルメチレン基、エチリデン基、1−t−ブチルエチリデン基、1−フェニルエチリデン基、(4−メトキシフェニル)エチリデン基、2,2,2−トリクロロエチリデン基、イソプロピリデン基、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、ベンジリデン基、p−メトキシベンジリデン基、2,4−ジメトキシベンジリデン基、3,4−ジメトキシベンジリデン基、2−ニトロベンジリデン基などが挙げられ、オルトエステル型の保護基として、メトキシメチレン基、エトキシメチレン基、ジメトキシメチレン基、1−メトキシエチリデン基、1−エトキシエチリデン基、1,2−ジメトキシエチリデン基、α−メトキシベンジリデン基、1−(N,N−ジメチルアミノ)エチリデン基、α−(N,N−ジメチルアミノ)ベンジリデン基、2−オキサシクロペンチリデン基などが挙げられる。
【0057】
本発明の一般式(1)を有する化合物は新規化合物であり、例えば、ビタミンD誘導体のA環部分とCD環部分とを予め別個に合成し、カップリングさせることによって合成することができる。
【0058】
A環部分としては一般式(5)を有する化合物を使用することができる。一般式(5)を有する化合物も新規化合物であり、本発明の一般式(1)を有する化合物を合成するための有用な中間体である。一般式(5)を有する化合物は、例えば、下記の実施例21に記載する通り、特願平9−53316号(特開平10−251183号として公開;この出願の内容は全て参考文献として本明細書の中に取り込まれる)に記載された1,2−エポキシ−4−ピバロイルオキシ−3−(3’−ピバロイルオキシプロポキシ)−5−ヘキセンから出発して、アセチレンを付加させた後、保護基を適宜、付加および/または脱離および/または置換することにより合成することができる。アセチレンの付加反応は、トリメチルシリル基などの保護基を有するアセチレンの不活性溶媒(テトラヒドロフラン(THE)など)溶液に金属アルキル(n−ブチルリチウムなど)の溶媒溶液を加えて金属−アセチレン−保護基の構造を有する化合物を生成させた後に、1,2−エポキシ−4−ピバロイルオキシ−3−(3’−ピバロイルオキシプロポキシ)−5−ヘキセンの溶媒中溶液を添加して、反応させることによって行うことができる。反応温度は溶媒の種類等に応じて適宜選訳すことができ、一般的には、−78℃から0℃、好ましくは−78℃から−50℃である。反応時間も適宜選択でき、一般的には、1時間から5時間、好ましくは2時間から3時間である。
【0059】
一方、CD環部分としては、一般式(4)を有する化合物を使用することができる。一般式(4)を有する化合物は、一般式(2)を有する化合物から一般式(3)を有する化合物を経て合成することができる。一般式(2)〜(4)を有する化合物はいずれも新規化合物であり、本発明の一般式(1)を有する化合物および24位に水酸基を有する各種ビタミンD誘導体を合成するための有用な中間体である。
【0060】
一般式(2)を有する化合物は、例えば、以下の実施例1から15に記載する通り、ビタミンD2 より5工程を経て得られるスルホン化合物(X.Zhao,P.De Clercq,M.Vandewalle,K.Allewaert,H.Van BaelenおよびR.Bouillon,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,3,1863(1993)に記載)を出発化合物として使用し、Schikらの方法(E.Schroetter,B.Schoenecker,U.Hauschild,P.DroescherおよびH.Schick,Synthesis,193(1990))を参照して、側鎖部分の構築を行い、保護・脱保護の工程を経て合成することができる。
【0061】
次いで、一般式(2)を有する化合物を酸化に付して、4位の水酸基をオキソ基に変換することにより一般式(3)を有する化合物を得ることができる。この酸化反応は、例えば以下の実施例16、17および18に記載されているような条件で行うことができる。この酸化条件ではケトンのアルファ位のエピマーを生じることは全くない。例えば、PCCを用いるとエピマーを生じる場合がある。
【0062】
次いで、一般式(3)を有する化合物を、例えば実施例19および20に記載されているような条件下で4位のオキソ基をブロモメチレン基に変換することによって一般式(4)を有する化合物を得ることができる。この反応ではブロモメチレン基を望ましいE配置に構築できる(B.M.Trost,J.DumasおよびM.Villa,Journal of the American Chemical Society,114,9836−9845(1992))。
【0063】
以上のようにして得られたA環部分に相当する一般式(5)を有する化合物とCD環部分に相当する一般式(4)を有する化合物とを、例えば実施例22に記載されているような条件下でカップリングさせることにより、24位に保護基を有していてもよい水酸基を有するビタミンD誘導体を得ることができる。
【0064】
カップリング反応は、例えば、THE、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどの溶媒中で上記化合物を反応させることによって行うことができる。これらの溶媒は単独で用いても混合して用いてもよい。好ましい溶媒としてはトルエンがあげられる。反応温度は特に限定されないものの、一般的には25〜140℃、好ましくは60〜110℃である。反応時間も特に限定されないものの、一般的には2〜12時間、好ましくは3〜6時間である。
【0065】
なお、カップリング反応後に必要に応じて水酸基の保護基を脱離することによって活性なビタミンD誘導体を得ることができる。なお、保護基の付加および脱離については当業者に周知である。
【0066】
また本発明によれば、一般式(5)を有する化合物(ビタミンD誘導体のA環部分に相当)を使用する、有用な生理活性を有する2β−(3−ヒドロキシプロポキシ)−1α,25−ジヒドロキシビタミンD3 (この化合物自体は公知)の合成方法が提供される。即ち、一般式(5)を有する化合物を、一般式(7)を有する化合物とカップリングさせることにより所望の生成物を得ることができる。このカップリング反応の条件は、一般式(5)の化合物と一般式(4)の化合物とのカップリング反応について上記した条件と同様であり、当業者ならば適宜選択できる。
【0067】
また、本発明によれば一般式(1)を有する化合物を含む医薬組成物が提供される。本発明の医薬組成物の剤型は特に限定されず、その用途などに応じて、錠剤、カプセル剤、分散剤、溶液、懸濁液、乳剤など任意の形態をとることができる。本発明の医薬組成物は、治療的に有効量の一般式(1)の化合物を含み、また所望により薬学的に許容可能な担体または賦形剤を含むことができる。
【0068】
本発明の医薬組成物の投与経路としては、経口投与でも非経口投与でもよく、非経口投与では、静脈内、筋肉内、腹腔内、外用など任意の投与経路を使用できる。
【0069】
また、投与量も特に限定されず、患者の体重、性別、病状の度合いなどに応じて適宜設定することができ、一般的には0.001μg/kg/日〜1000μg/kg/日、好ましくは0.01μg/kg/日〜100μg/kg/日、より好ましくは0.1μg/kg/日〜10μg/kg/日程度である。
【0070】
また、投与回数も限定されず、上記投与量を一日一回から数回に分けて投与してもよく、投与期間も、数日〜数週間または数週間〜数カ月間に渡って投与することができる。
【0071】
以下の実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0072】
実施例1:[3a(R)]−4(S)−アセチルオキシ−7a(R)−メチル−1(R)−[1(S)−メチル−2−フェニルスルホニルエチル]−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物5)の合成
氷冷下、[3a(R)]−4(S)−ヒドロキシ−7a(R)−メチル−1(R)−[1(S)−メチル−2−フェニルスルホニルエチル]−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物4;334mg,994μmol)、ピリジン(200μl)およびN,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)(18mg)のジクロロメタン(20ml)溶液に、無水酢酸(188μl,1.99mmol)を添加し、アルゴン雰囲気下、室温で16時間撹拌した。反応混合物を希塩酸に注ぎ、ジクロロメタンで抽出し、飽和炭酸水素ナトリウム(NaHCO3 )溶液で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウム(MgSO4 )で乾燥後、溶媒を減圧留去して得られる残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(40%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、無色油状の標題化合物(368mg,98%)を得た。
【0073】
H−NMR:δ 0.86(3H,s),1.20(3H,d,J=6.8Hz),2.03(3H,s),2.84(1H,dd,J=14.1,9.8Hz),3.11(1H,d,J=14.1Hz),5.12(1H,brs),7.52−7.96(5H,m);
IR(neat)cm−1:2945,1735,1310,1250,1150;
MS(m/z):336(M−AC),135(100%);
UV λ max nm:270,263,257,217。
【0074】
実施例2:[3a(R)]−1(R)−[4(R),5−ジヒドロキシ−1(S),5−ジメチル−2−フェニルスルホニルヘキシル]−4(S)−ヒドロキシ−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物7a)の合成
アルゴン雰囲気下、−20℃で[3a(R)]−4(S)−アセチルオキシ−7a(R)−メチル−1(R)−[1(S)−メチル−2−フェニルスルホニルエチル]−オクタヒドロ−1H−インデン(実施例1で得たもの、160mg,423μmol)および2(R),3−ジヒドロキシ−3−メチル−1−パラトルエンスルホニルオキシブタン(R.DumontおよびH.Pfander,Helvetica Chimica Acta,66,814(1983)並びにその中の引用文献に記載)(232mg,847μmol)のTHE(15ml)溶液に、n−ブチルリチウム(1.63M,2.3ml,3.75mmol)を滴下し、同温度で2時間撹拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ、酢酸エチルで2回抽出し、飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去して得られる残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(エタノール:ジクロロメタン=0.3:5)で精製し、無色泡状の標題化合物(131mg,71%)を得た。
【0075】
H−NMR:δ 0.67(3H,s),0.96(3H,d,J=6.8Hz),1.20(3H,s),1.26(3H,s),3.51(1H,d,J=10.2Hz),3.81(1H,brd,J=11.7Hz),4.00(1H,brs),7.52−7.94(5H,m);
IR(neat)cm−1:3500(br),2935,1300,1280,1135;
MS(m/z):439(M+1),71(100%);
UV λ max nm:271,263,257,216。
【0076】
実施例3:[3a(R)]−1(R)−14(S),5−ジヒドロキシ−1(S),5−ジメチル−2−フェニルスルホニルヘキシル]−4(S)−ヒドロキシ−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物7b)の合成
[3a(R)]−4(S)−ヒドロキシ−7a(R)−メチル−1(R)−[1(S)−メチル−2−フェニルスルホニルエチル]−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物4;305mg,908μmol)、2(S),3−ジヒドロキシ−3−メチル−1−パラトルエンスルホニルオキシブタン(R.DumontおよびH.Pfander,Helvetica Chimica Acta,66,814(1983)並びにその中の引用文献に記載)(化合物6b;249mg,909μmol)、THE(20ml)およびn−ブチルリチウム(1.69M,4.3ml,7.27mmol)を使用し、実施例2の合成と同様の操作を行った(カラムクロマトグラフィーの溶媒のみ酢酸エチル:ヘキサン=4:1)。無色油状の標題化合物(110mg,28%)を得た。
【0077】
H−NMR:δ 0.69(3H,s),1.05(3H,d,J=6.6Hz),1.20(3H,s),1.25(3H,s),3.35(1H,t,J=5.1Hz),3.45(1H,brs),4.01(1H,brs),7.53−7.94(5H,m);
IR(neat)cm−1:3460(br),2925,1280,1135,1075;
MS(m/z):439(M+1),60(100%)
実施例4:[3a(R)]−1(R)−[4(R),5−ジヒドロキシ−1(S),5−ジメチルヘキシル]−4(S)−ヒドロキシ−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物8a)の合成
実施例2で得た[3a(R)]−1(R)−[4(R),5−ジヒドロキシ−1(S),5−ジメチル−2−フェニルスルホニルヘキシル]−4(S)−ヒドロキシ−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物7a;104mg,237μmol)のTHE(5.5ml)およびメタノール(3.5ml)溶液に、ナトリウムアマルガム(5%,5.01g,10.9mmol)を加え、室温で15時間撹拌した。反応液にメタノール(5.4ml)および水(5.4ml)を加え、さらに30分間撹拌した。アマルガムをデカンテーションにより除去後、反応液を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ、酢酸エチルで2回抽出し、飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去して得られる残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(エタノール:ジクロロメタン=0.3:5)で精製し、無色泡状の標題化合物(68mg,96%)を得た。
【0078】
H−NMR:δ 0.91(3H,d,J=6.3Hz),0.94(3H,s),1.21(3H,s),1.24(3H,s),3.33(1H,brt,J=5.4Hz),4.08(1H,brs);
IR(neat)cm−1:3400(br),2930;
MS(m/z):298(M),135(100%)
実施例5:[3a(R)]−1(R)−[4(S),5−ジヒドロキシ−1(S),5−ジメチルヘキシル]−4(S)−ヒドロキシ−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物8b)の合成
実施例3で得た[3a(R)]−1(R)−[4(S),5−ジヒドロキシ−1(S),5−ジメチル−2−フェニルスルホニルヘキシル]−4(S)−ヒドロキシ−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物7b;216mg,493μmol)、THF(12ml)、メタノール(7.5ml)およびナトリウムアマルガム(5%,12.4g,27.0mmol)を使用し、実施例4の合成と同様の操作を行った。無色油状の標題化合物(100mg,68%)を得た。
【0079】
H−NMR:δ 0.92(3H,d,J=6.6Hz),0.93(3H,s),1.16(3H,s),1.21(3H,s),3.27(1H,dd,J=10.2,2.0Hz),4.07(1H,brd,J=2.6Hz);
IR(neat)cm−1:3400(br),2930;
MS(m/z):280(M−H2 O),60(100%)。
【0080】
実施例6:[3a(R)]−4(S)−ヒドロキシ−7a(R)−メチル−1(R)−[1(S)−メチル−3−[2,2,4,4−テトラメチル−1,3−ジオキソラン−2(R)−イル]プロピル]−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物9a)の合成
実施例4で得た[3a(R)]−1(R)−[4(R),5−ジヒドロキシ−1(S),5−ジメチルヘキシル]−4(S)−ヒドロキシ−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物8a;86mg,289μmol)および2,2−ジメトキシプロパン(DMP,2.93g,28.1mmol)のアセトン(19.5ml)溶液にp−トルエンスルホン酸(TsOH)(6.5mg,34.2μmol)を添加し、アルゴン雰囲気下、室温で15時間撹拌した。反応混合物に炭酸水素ナトリウム(10mg)を添加し、減圧濃縮後、ジクロロメタンで2回抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去して得られる残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(エタノール:ジクロロメタン=0.2:5)で精製し、無色プリズム晶の粗製の標題化合物(107mg)を得、これをこれ以上精製することなく次の工程に用いた。
【0081】
H−NMR:δ 0.93(3H,d,J=5.3Hz),0.95(3H,s),1.10(3H,s),1.25(3H,s),1.33(3H,s),1.42(3H,s),3.64(1H,dd,J=8.5,3.7Hz),4.08(1H,brd,J=2.4Hz);
IR(KBr)cm−1:3485(br),2920;
MS(m/z):338(M),323(100%)
実施例7:[3a(R)]−4(S)−ヒドロキシ−7a(R)−メチル−1(R)−[1(S)−メチル−3−[2,2,4,4−テトラメチル−1,3−ジオキソラン−2(S)−イル]プロピル]−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物9b)の合成
実施例5で得た[3a(R)]−1(R)−[4(S),5−ジヒドロキシ−1(S),5−ジメチルヘキシル]−4(S)−ヒドロキシ−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物8b;100mg,289μmol)、2,2−ジメトキシプロパン(3.8g,36.5mmol)、アセトン(23ml),TsOH(15mg,78.9μmol)および炭酸水素ナトリウム(20mg)を使用し、実施例6の合成と同様の操作を行った。無色油状の標題化合物(76mg,67%)を得た。
【0082】
H−NMR:δ 0.93(3H,d,J=6.3Hz),0.94(3H,s),1.10(3H,s),1.25(3H,s),1.33(3H,s),1.41(3H,s),3.61(1H,dd,J=6.9,5.9Hz),4.08(1H,brs);
IR(neat)cm−1:3520(br),2930;
MS(m/z):323(M−Me,100%)
実施例8:[3a(R)]−4(S)−アセチルオキシ−1(R)−[1(S)−メチル−3−[2,2,4,4−テトラメチル−1,3−ジオキソラン−2(R)−イル]プロピル]−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物10a)の合成
実施例6で得た粗製の[3a(R)]−4(S)−ヒドロキシ−7a(R)−メチル−1(R)−[1(S)−メチル−3−[2,2,4,4−テトラメチル−1,3−ジオキソラン−2(R)−イル]プロピル]−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物9a;107mg)、ピリジン(128μl)およびDMAP(7mg)のジクロロメタン(10ml)溶液に、無水酢酸(120μl,1.27mmol)を添加し、アルゴン雰囲気下、室温で4時間撹拌した。反応混合物を希塩酸に注ぎ、ジクロロメタンで抽出し、飽和炭酸ナトリウム溶液で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去して得られる残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(15% 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、無色油状の標題化合物(91mg,[3a(R)]−1(R)−[4(R),5−ジヒドロキシ−1(S),5−ジメチルヘキシル]−4(S)−ヒドロキシ−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデンからみて83%)を得た。
【0083】
H−NMR:δ 0.89(3H,s),0.95(3H,d,J=6.3Hz),1.10(3H,s),1.25(3H,s),1.33(3H,s),1.42(3H,s),2.04(3H,s),3.64(1H,dd,J=8.8,2.9Hz),5.16(1H,brs);
IR(neat)cm−1:2940,1735:
MS(m/z):365(M−Me,100%)。
【0084】
実施例9:[3a(R)]−4(S)−アセチルオキシ−1(R)−[1(S)−メチル−3−[2,2,4,4−テトラメチル−1,3−ジオキソラン−2(S)−イル]プロピル]−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物10b)の合成
実施例7で得た[3a(R)]−4(S)−ヒドロキシ−7a(R)−メチル−1(R)−[1(S)−メチル−3−[2,2,4,4−テトラメチル−1,3−ジオキソラン−2(S)−イル]プロピル]−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物9b;76mg,225μmol)、ピリジン(500μl)、DMAP(3mg)、ジクロロメタン(3ml)および無水酢酸(250μl,2.64mmol)を使用し、実施例8の合成と同様の操作を行った。淡黄色油状の標題化合物(82mg,96%)を得た。
【0085】
H−NMR:δ 0.89(3H,s),0.94(3H,d,J=6.6Hz),1.10(3H,s),1.25(3H,s),1.33(3H,s),1.41(3H,s),2.04(3H,s),3.61(1H,t,J=6.3Hz),5.15(1H,brs);
IR(neat)cm−1:2930,1735;
MS(m/z):365(M−Me,100%)。
【0086】
実施例10:[3a(R)]−4(S)−アセチルオキシ−1(R)−[4(R),5−ジヒドロキシ−1(S),5−ジメチルヘキシル]−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物11a)の合成
実施例8で得た[3a(R)]−4(S)−アセチルオキシ−1(R)−[1(S)−メチル−3−[2,2,4,4−テトラメチル−1,3−ジオキソラン−2(R)−イル]プロピル]−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物10a;46mg,121μmol)に1%ヨウ素/メタノール(2ml)を加え、4.5時間加熱還流した。反応混合物を10%チオ硫酸ナトリウム(Na2 S2 O3 )溶液に注ぎ、減圧濃縮後、酢酸エチルで抽出し、2回水洗した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去して得られる残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(40% 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、無色油状の標題化合物(25mg,61%)を得た。
【0087】
H−NMR:δ 0.89(3H,s),0.92(3H,d,J=6.6Hz),1.16(3H,s),1.21(3H,s),2.04(3H,s),3.32(1H,brt,J=5.9Hz),5.14(1H,brs);
IR(neat)cm−1:3455(br),2930,1735;
MS(m/z):280(M−Ac−H2 O),59(100%)。
【0088】
実施例11:[3a(R)]−4(S)−アセチルオキシ−1(R)−[4(S),5−ジヒドロキシ−1(S),5−ジメチルヘキシル]−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物11b)の合成
実施例9で得た[3a(R)]−4(S)−アセチルオキシ−1(R)−[1(S)−メチル−3−[2,2,4,4−テトラメチル−1,3−ジオキソラン−2(S)−イル]プロピル]−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物10b;34mg,89.5μmol)、酢酸(240μl)、水(1.99ml)およびエタノール(2.6ml)の混合物を70℃で5日間撹拌した。反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム溶液に注ぎ、酢酸エチルで2回抽出し、飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去して得られる残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(40% 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、無色油状の標題化合物(25mg,83%)を得た。
【0089】
H−NMR:δ 0.88(3H,s),0.93(3H,d,J=6.6Hz),1.16(3H,s),1.22(3H,s),2.04(3H,s),3.23−3.32(1H,m),5.15(1H,brs);
IR(neat)cm−1:3460(br),2935,1730:
MS(m/z):340(M),135(100%)。
【0090】
実施例12:[3a(R)]−4(S)−アセチルオキシ−1(R)−[4(R),5−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−1(S),5−ジメチルヘキシル]−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物12a)の合成
氷冷下、実施例10で得た[3a(R)]−4(S)−アセチルオキシ−1(R)−[4(R),5−ジヒドロキシ−1(S),5−ジメチルヘキシル]−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物11a;46mg,135μmol)および2,6−ルチジン(355μl,3.03mmol)のジクロロメタン(10ml)溶液にt−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(TBSOTf)(466μl,2.03mmol)を添加し、室温で1.5時間撹拌した。反応混合物を氷冷した1N塩酸に注ぎ、ジクロロメタンで抽出し、飽和炭酸ナトリウム溶液で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去して得られる残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(6% 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、無色油状の標題化合物(71mg,92%)を得た。
【0091】
H−NMR:δ 0.04(3H,s),0.06(3H,s),0.07(3H,s),0.08(3H,s),0.86(9H,s),0.89(9H,s),1.11(3H,s),1.19(3H,s),2.04(3H,s),3.22(1H,brs),5.15(1H,brs);
IR(neat)cm−1:2945,1745:
MS(m/z):553(M−Me),173(100%)。
【0092】
実施例13:[3a(R)]−4(S)−アセチルオキシ−1(R)−[4(S),5−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−1(S),5−ジメチルヘキシル]−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物12b)の合成
実施例11で得た[3a(R)]−4(S)−アセチルオキシ−1(R)−[4(S),5−ジヒドロキシ−1(S),5−ジメチルヘキシル]−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物11b;31mg,91.2μmol)、2,6−ルチジン(64μl,550μmol)、ジクロロメタン(2ml)およびTBSOTf(84μl,366mmol)を使用し、実施例12の合成と同様の操作を行った。無色油状の標題化合物(47mg,91%)を得た。
【0093】
H−NMR:δ 0.04(3H,s),0.06(3H,s),0.07(3H,s),0.08(3H,s),0.85(9H,s),0.88(9H,s),1.10(3H,s),1.19(3H,s),2.04(3H,s),3.18(1H,dd,J=7.4,2.3Hz),5.15(1H,brs):
IR(neat)cm−1:2945,1735:
MS(m/z):553(M−Me),173(100%)。
【0094】
実施例14:[3a(R)]−1(R)−[4(R),5−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−1(S),5−ジメチルヘキシル]−4(S)−ヒドロキシ−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物3a)の合成
氷冷下、水素化リチウムアルミニウム(LiAlH4 )(20mg,528μmol)のTHE(1ml)懸濁液に、実施例12で得た[3a(R)]−4(S)−アセチルオキシ−1(R)−[4(R),5−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−1(S),5−ジメチルヘキシル]−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物12a;71mg,125μmol)のTHF(2ml)溶液を滴下し、アルゴン雰囲気下、同温度で1.5時間撹拌した。反応混合物に1Nの水酸化ナトリウム(NaOH)(5滴)を滴下し、さらにロッシェル塩水溶液を加えて酢酸エチルで2回抽出し、飽和食塩水で洗浄した。
【0095】
有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去して得られる残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(12% 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、無色油状の標題化合物(63mg,96%)を得た。
【0096】
H−NMR:δ 0.03(3H,s),0.06(3H,s),0.07(3H,s),0.08(3H,s),0.85(9H,s),0.89(9H,s),1.11(3H,s),1.18(3H,s),3.23(1H,brs),4.08(1H,brs):
IR(neat)cm−1:3425(br),2925;
MS(m/z):511(M−Me),173(100%)。
【0097】
実施例15:[3a(R)]−1(R)−[4(S),5−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−1(S),5−ジメチルヘキシル]−4(S)−ヒドロキシ−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物3b)の合成
LiAlH4 (6.3mg,166μmol)、THF(3ml)および実施例13で得た[3a(R)]−4(S)−アセチルオキシ−1(R)−[4(S),5−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−1(S),5−ジメチルヘキシル]−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物12b;47mg,82.7μmol)を使用し、実施例14の合成と同様の操作を行った。無色油状の標題化合物(44mg,100%)を得た。
【0098】
H−NMR:δ 0.04(3H,s),0.067(3H,s),0.072(3H,s),0.08(3H,s),0.85(9H,s),0.89(9H,s),0.92(3H,d,J=6.3Hz),1.11(3H,s),1.19(3H,s),3.18(1H,dd,J=7.6,2.3Hz),4.00(1H,brs):
IR(neat)cm−1:3430(br),2920;
MS(m/z):511(M−Me),173(100%)。
【0099】
上記実施例1から15の反応を下記にまとめて示す。
【0100】
【化16】

【0101】
実施例16:[3a(R)]−1(R)−[4(R),5−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−1(S),5−ジメチルヘキシル]−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン−4−オン(化合物2a)の合成
実施例14で得た[3a(R)]−1(R)−[4(R),5−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−1(S),5−ジメチルヘキシル]−4(S)−ヒドロキシ−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物3a;16.4mg,31.2μmol)、4−メチルモルホリンN−オキシド(NMO)(5.5mg,46.9μmol)およびモレキュラーシーブス4A(6mg)のジクロロメタン(1.3ml)懸濁液に、テトラn−プロピルアンモニウムパールテネート(TPAP,0.6mg,1.71μmol)を添加し、アルゴン雰囲気下、室温で1時間撹拌した。皮応混合物を10%Na2 S2 O3 溶液に注ぎ、ジクロロメタンで2回抽出し、飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去して得られる残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(7% 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、無色油状の標題化合物(14mg,86%)を得た。
【0102】
H−NMR:δ 0.04(3H,s),0.06(3H,s),0.07(3H,s),0.08(3H,s),0.63(3H,s),0.85(9H,s),0.89(9H,s),0.95(3H,d,J=5.9Hz),1.11(3H,s),1.19(3H,s),2.45(1H,dd,J=11.5,7.6Hz),3.23(1H,brs);
IR(neat)cm−1:2950,1715;
MS(m/z):524(M),173(100%)。
【0103】
参考例1:1(S),3(R),24(R),25−テトラキス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−9,10−セココレスタ−5,7,10(19)−トリエン(化合物15a)の合成
アルゴン雰囲気下、−80℃で、2−[3’,5’−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−2’−メチレンシクロヘキシリデン]−1−ジフェニルホスホリルエタン(化合物13、S.Hatakeyama他,The Journal of Organic Chemistry,54,3515(1989)に記載)(45mg,77.3μmol)のTHE(0.5ml)溶液にn−ブチルリチウム(1.47mol/l,88μl,129μmol)を滴下し、同温度で5分間撹拌後、実施例16で得た[3a(R)]−1(R)−[4(R),5−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−1(S),5−ジメチルヘキシル]−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン−4−オン(化
合物2a;8.7mg,16.6μmol)のTHF(300μl)溶液を滴下し、同温度で1時間撹拌した後、室温で10分間撹拌した。反応混合物を飽和食塩水に注ぎ、酢酸エチルで2回抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去して得られる残渣をプレパラティブ薄層クロマトグラフィー(TLC)(3%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、無色油状の標題化合物(7mg,48%)を得た。
【0104】
H−NMR:δ 0.04(3H,s),0.06(3H,s),0.07(15H,s),0.08(3H,s),0.53(3H,s),0.86(9H,s),0.877(9H,s),0.881(9H,s),0.89(9H,s),1.11(3H,s),1.19(3H,s),3.23(1H,brs),4.15−4.23(1H,m),4.36−4.41(1H,m),4.87(1H,brd,J=2.6Hz),5.00(1H,s),6.02(1H,d,J=11.1Hz),6.24(1H,d,J=11.1Hz);
IR(neat)cm−1:2940;
MS(m/z):888(M),173(100%);
UV λ max nm:264,min nm:227。
【0105】
参考例2:1(S),3(R),24(R),25−テトラヒドロキシ−9,10−セココレスタ−5,7,10(19)−トリエン(化合物14a)の合成
参考例1で得た1(S),3(R),24(R),25−テトラキス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−9,10−セココレスタ−5,7,10(19)−トリエン(化合物15a;7mg,7.88μmol)の1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)(3ml)溶液にテトラn−ブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)(1mol/l,300μl,300μmol)を添加し、アルゴン雰囲気下、105℃で2時間撹拌した。反応混合物を水に注ぎ、酢酸エチルで2回抽出し、2回水洗した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去して得られる残渣をプレパラティブTLC(エタノール:ヘキサン=3:25)で精製し、白色粉末状の標題化合物(2.7mg,79%)を得た。
【0106】
H−NMR:δ 0.55(3H,s),0.94(3H,d,J=5,9Hz),1.17(3H,s),1.22(3H,s),2.31(1H,dd,J=13.2,6.6Hz),2.60(1H,dd,J=13.5,3.6Hz),2.82(1H,dd,J=10.6,3.6Hz),3.31−3.37(1H,m),4.18−4.27(1H,m),4.40−4.48(1H,m),5.00(1H,s),5.33(1H,s),6.02(1H,d,J=11.4Hz),6.38(1H,d,J=11.4Hz);
IR(KBr)cm−1:3380(br),2925;
MS(m/z):432(M),134(100%);
UV λ max nm:264,min nm:227。
【0107】
上記実施例16および参考例1および2の反応を下記にまとめて示す。
【0108】
【化17】

【0109】
実施例17:[3a(R)]−1(R)−14(S),5−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−1(S),5−ジメチルヘキシル]−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン−4−オンの合成
【0110】
【化18】

【0111】
[3a(R)]−1(R)−[4(S),5−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−1(S),5−ジメチルヘキシル]−4(S)−ヒドロキシ−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン(23.7mg,0.044mmol)のジクロロメタン(3ml)溶液にNMO(7.8mg,0.066mmol)と4Aモレキュラーシーブス(19.0mg)を加え、アルゴン気流中室温下1時間撹拌し、さらにTPAP(0.8mg,0.0023mmol)を加えた。5時間後、反応液をセライト濾過し、濾液を減圧下濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、標題化合物(23.7mg,103%)を無色油状物として得た。
【0112】
[α]D24−5.3°(c1.185,CHCl3 );
IR(neat)1716,1467,1252cm−1
H NMR(300MHz,CDCl3 )δ 3.18(dd,1H,J=2.4Hz,7.5Hz),2.43(dd,1H,J=7.5Hz,11.1Hz),1.20−2.28(m,16H),1.19(s,3H),1.10(s,3H),0.94(d,3H,J=6.3Hz),0.88(s,9H),0.85(s,9H),0.63(s,3H),0.08(s,3H),0.07(s,3H),0.06(s,3H),0.04(s,3H);
13C NMR(75MHz,CDCl3 )δ 212.2,81.2,76.4,62.1,56.8,50.0,41.1,39.1,36.2,34.1,29.7,29.0,27.8,26.2,26.0,24.2,23.2,19.2,18.8,18.3,18.2,12.5,−1.8,−1.9,−3.1,−3.7。
【0113】
MS(EI)m/z 173,509(M−CH3 ),467(M−57),
HRMS(EI)C29 H57 O3 Si2 の計算値 509.3846;実測値 C29 H57 O3 Si2 509.3852。
【0114】
実施例18:[3a(R)]−1(R)−[4(R),5−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−1(S),5−ジメチルヘキシル]−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン−4−オンの合成
【0115】
【化19】

【0116】
[3a(R)]−1(R)−[4(R),5−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−1(S),5−ジメチルヘキシル]−4(S)−ヒドロキシ−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン(15.4mg,0.029mmol)のジクロロメタン(2ml)溶液にNMO(7.0mg,0.059mmol)と4Aモレキュラーシーブス(14.0mg)を加え、アルゴン気流中室温下1時間撹拌し、さらにTPAP(0.8mg,0.0023mmol)を加えた。2.5時間後、反応液をセライトろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、標題化合物(14.8mg,96%)を無色油状物として得た。
【0117】
[α]D23+17.0°(c0.83,CHCl3 );
IR(neat)1716,1460,1252cm−1
H NMR(300MHz,CDCl3 )δ 3.18−3.24(m,1H),2.45(dd,1H,J=7.5Hz,11.1Hz),1.20−2.34(m,16H),1.18(s,3H),1.11(s,3H),0.94(d,3H,J=5.7Hz),0.89(s,9H),0.85(s,9H),0.63(s,3H),0.08(s,3H),0.07(s,3H),0.06(s,3H),0.04(s,3H);
13C NMR(75MHz,CDCl3 )δ 212.2,81.0,76.4,62.1,56.7,50.0,41.1,39.1,36.3,33.8,29.6,29.0,27.6,26.2,25.9,24.2,23.6,19.2,18.9,18.3,18.2,12.6,−1.8,−1.9,−3.1,−3.9。
【0118】
MS(EI)m/z 173,509(M−CH3 ),467(M−57),
HRMS(EI)C29 H57 O3 Si2 の計算値 509.3846;実測値 C29 H57 O3 Si2 509.3845。
【0119】
実施例19:[3a(R)]−1(R)−[4(S),5−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−1(S),5−ジメチルヘキシル]−4(E)−ブロモメチレン−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデンの合成
【0120】
【化20】

【0121】
(ブロモメチレン)トリフェニルホスホニウムブロミド(159.3mg,0
.37mmol)のTHF(0.9ml)溶液に−60℃で、ナトリウムビス(
トリメチルシリル)アミド(THF中1M,355μl,0.36mmol)を
加え、アルゴン気流中1時間撹拌し、さらに実施例17で得た[3a(R)]−
1(R)−[4(S),5−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−1(S
),5−ジメチルヘキシル]−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−イン
デン−4−オン(23.9mg,0.046mmol)のTHF溶液(0.3m
l)を加え、すぐに反応温度を室温にした。1時間後、n−ヘキサンで希釈し、
シリカゲルでろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。残渣をプレパラティブTLC(n
−ヘキサン)で精製し、標題化合物(15.6mg,57%)を黄色油状物とし
て得た。
【0122】
[α]D23+47.31°(c0.78,CHCl3 );
IR(neat)1466,1252cm−1
H NMR(300MHz,CDCl3 )δ 5.64(s,1H),3.18(dd,1H,J=2.1Hz,7.5Hz),2.82−2.91(m,1H),1.00−2.16(m,16H),1.19(s,3H),1.10(s,3H),0.92(d,3H,J=6.0Hz),0.88(s,9H),0.85(s,9H),0.56(s,3H),0.08(s,3H),0.07(s,3H),0.06(s,3H),0.04(s,3H);
13C NMR(75MHz,CDCl3 )δ 145.3,97.4,81.2,76.4,56.0,55.9,45.6,40.0,36.7,34.2,31.2,29.7,29.0,27.9,26.2,25.9,23.2,22.7,22.1,18.9,18.3,18.2,11.9,−1.8,−1.9,−3.1,−3.7。
【0123】
MS(EI)m/z 73,585(M−CH3 ),543(M−57),
HRMS(EI)C27 H52 O2 Si2 Brの計算値 543.2689;測定値 C27 H52 O2 Si2 Br543.2692。
【0124】
実施例20:[3a(R)]−1 R)−[4(R),5−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−1(S),5−ジメチルヘキシル]−4(E)−ブロモメチレン−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデンの合成
【0125】
【化21】

【0126】
(ブロモメチレン)トリフェニルホスホニウムブロミド(130.5mg,0.30mmol)のTHF(1.0ml)溶液に−60℃で、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(THF中1M,290μl,0.29mmol)を加え、アルゴン気流中1時間撹拌し、さらに実施例18で得た[3a(R)]−1(R)−[4(R),5−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−1(S),5−ジメチルヘキシル]−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン−4−オン(19.6mg,0.037mmol)のTHF溶液(0.3ml)を加え、すぐに反応温度を室温にした。1時間後、n−ヘキサンで希釈し、シリカゲルでろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。残渣をプレパラティブTLC(n−ヘキサン)で精製し、標題化合物(11.0mg,49%)を黄色油状物として得た。
【0127】
[α]D21−106.18°(c0.55,CHCl3 );
IR(neat)1467,1253cm−1
H NMR(300MHz,CDCl3 )δ 5.64(s,1H),3.18−3.24(m,1H),2.82−2.91(m,1H),1.20−2.04(m,16H),1.18(s,3H),1.11(s,3H),0.92(d,3H,J=6.0Hz),0.89(s,9H),0.85(s,9H),0.56(s,3H),0.08(s,3H),0.07(s,3H),0.06(s,3H),0.04(s,3H);
13C NMR(75MHz,CDCl3 )δ 145.3,97.4,81.1,76.4,56.0,55.9,45.6,40.0,36.8,33.9,31.2,29.6,29.1,27.7,26.2,26.0,23.6,22.7,22.2,19.0,18.3,18.2,−1.8,−1.9,−3.1,−3.9.
MS(EI)m/z 73,585(M−CH3 ),543(M−57),
HRMS(EI) C30 H58 O2 Si2 Brの計算値 585.3150;実測値 C30 H58 O2 Si2 Br585.3134。
【0128】
実施例21:3,5−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−4−(3−t−ブチルジメチルシリルオキシプロポキシ)−1−オクテン−7−インの合成
【0129】
【化22】

【0130】
トリメチルシリルアセチレン(8.4ml,11.9mmol)のTHF溶液(30ml)に−78℃でn−ブチルリチウムの1.59Mのn−ヘキサン溶液(35.2ml,56.0mmol)を加え30分間撹拌後、さらに三フッ化ホウ素ジエチルエーテル(11.9mmol)を加え1時間撹拌した。−78℃で1,2−エポキシ−4−ピバロイルオキシ−3−(3’−ピバロイルオキシプロポキシ)−5−ヘキセンの1:1の(4R)−および(4S)−エピマー混合物(4.24g.11.9mmol)のTHF溶液(65ml)を滴下し、2時間撹拌した。反応液に飽和NaHCO3 水溶液を加え、酢酸エチルで抽出し、飽和塩化ナトリウムで洗浄し、乾燥(MgSO4 )した後、減圧下溶媒を留去し、黄色油状物(5.1g)を得た。
【0131】
続いて、上記の黄色油状物(5.1g)にメタノール(80ml)、10Nの水酸化ナトリウム水溶液(35ml)を加え、室温で1時間30分間撹拌した。氷冷下濃塩酸で中和した後、トルエン共沸で水を除去し、THFで抽出した。抽出液を乾燥(MgSO4 )した後、減圧下溶媒を留去し、残渣をショートカラム(酢酸エチル)で精製し、トリオール化合物である3,5−ジヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロポキシ)−1−オクテン−7−イン(1.73g)を得た。
【0132】
上記のトリオール化合物(1.73g)をジクロロメタン(100ml)に溶解し、トリエチルアミン(11.3ml,0.4mol)とTBSOTf(10.7ml,40.4mmol)を0℃で加えた。1時間30分間0℃で撹拌後、飽和NaHCO3 水溶液を加え、ジクロロメタンで抽出した。抽出液を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、乾燥(MgSO4 )し、減圧下溶媒を留去した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=50:1)で精製し、フラクション1(エピマー混合物=1.1265g)、フラクション2(エピマー混合物=2.4804g)、フラクション3(S体=334.8mg)を得た(エピマー混合物の収量=3.9417g、エポキシドから見て60%)。さらに、フラクション1をフラッシュカラムクロマトグラフィ(n−ヘキサン:酢酸エチル=50:1)で分離し、R体(169.3mg)、エピマー混合物(789.4mg)を得た。
【0133】
R体
[α]D25+15.4°(c0.52,CHCl3 );
IR(neat)3314,1468,1254cm−1
H NMR(300MHz,CDCl3 )δ 5.89(ddd,1H,J=6.0Hz,10.5Hz,17.4Hz),5.26(dt,1H,J=1.5Hz,17.1Hz),5.14(dt,1H,J=1.5Hz,10.5Hz),4.18(t,1H,J=6.3Hz),3.98(ddd,1H,J=1.8Hz,4.8Hz,7.2Hz),3.60−3.82(m,4H),3.27(dd,1H,J=2.1Hz,6.6Hz),2.46(ddd,1H,J=3.0Hz,5.1Hz,17.1Hz),1.92(t,1H,2.7Hz),1.78(quint.2H,J=6.0Hz),0.89−0.90(m,2H),0.10(s,3H),0.08(s,3H),0.06(s,3H),0.04(s,6H),0.03(s,3H);
13C NMR(75MHz,CDCl3 )δ 138.5,116.0,86.9,83.2,74.4,72.1,69.5,60.5,33.7,26.1,26.0,23.3,18.5,18.4,−4.3,−4.4,−4.5,−5.2。
【0134】
MS(EI)m/z 147(100%),556,541,499。
【0135】
HRMS(EI)C28 H57 O4 Si3 の計算値 541.3565;実測値 C28 H57 O4 Si3 541.3547。
【0136】
S体
[α]D25−2.3°(c0.80,CHCl3 );
IR(neat)3314,1468,1254cm−1
H NMR(300MHz,CDCl3 )δ 5.88(ddd,1H,J=6.0Hz,10.2Hz,17.4Hz),5.26(dt,1H,J=1.5Hz,17.1Hz),5.14(dt,1H,J=1.5Hz,10.5Hz),4.27(dd,1H,J=4.5Hz,6.0Hz),3.85(dt,1H,J=4.2Hz,5.7Hz),3.74(ddd,2H,J=3.0Hz,6.3Hz,12.9Hz),3.67(t,2H,J=6.3Hz),3.36(dd,1H,J=4.5Hz,5.7Hz),2.53(ddd,1H,J=2.7Hz,5.7Hz,17.4Hz),1.93(t,1H,J=2.7Hz),1.74(quint.2H,J=6.3Hz),0.91(s,9H),0.90(s,9H),0.88(s,9H),0.03−0.12(m,18H);
13C NMR(75MHz,CDCl3 )δ 138.2,116.1,85.7,82.3,74.4,71.0,69.8,69.7,60.3,33.7,26.1,26.0,23.3,18.5,18.2,18.2,−4.2,−4.3,−4.4,−4.7,−5.2。
【0137】
実施例22:(5Z,7E)−(1R,2R,3R,24S)−1,3,24,25−テトラキス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−2−(3−t−ブチルジメチルシリルオキシプロポキシ)−9,10−セココレスタ−5,7,10(19)−トリエンの合成
【0138】
【化23】

【0139】
トリフェニルホスフィン(2.4mg,0.0092mmol)とトリス(ジベンジリデンアセトン)(クロロホルム)ジパラジウム(0)(1.7mg,0.0016mmol)のトルエン(0.2ml)、トリエチルアミン(0.3ml)の混合溶液を室温で10分間撹拌後、実施例19で得た[3a(R)]−1(R)−[4(S),5−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−1(S),5−ジメチルヘキシル]−4(E)−ブロモメチレン−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン(15.6mg,0.026mmol)と実施例21で得た3(R)−3,5−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−4−(3−t−ブチルジメチルシリルオキシプロポキシ)−1−オクテン−7−イン(9.6mg,0.017mmol)のトルエン(0.2ml)混合溶液を加えて4時間加熱還流した。n−ヘキサンで希釈後、シリカゲルでろ過し、減圧下濃縮した。残渣をプレパラティブTLC(n−ヘキサン:ベンゼン=2:1)で精製し、表題化合物(6.2mg,34%)を無色油状物として得た。
【0140】
[α]D23+10.7°(c0.31,CHCl3 );
IR(neat)1467,1252cm−1
H NMR(300MHz,CDCl3 )δ 6.22(d,1H,J=10.5Hz),6.00(d,1H,J=10.8Hz),5.26(br s,1H),4.98(br s,1H),4.16−4.26(m,2H),3.58−3.76(m,4H),3.16−3.24(m,2H),2.81(br d,1H,J=13.5Hz),2.46(br dd,1H,J=11.6Hz,8.1Hz),2.22(br dd,1H,J=12.6Hz,3.8Hz),1.20−2.05(m,18H),1.19(s,3H),1.11(s,3H),0.82−0.94(m,48H),0.52(s,3H),0.02−0.10(m,30H)。
【0141】
実施例23:(5Z,7E)−(1R,2R,3R,24R)−1,3,24,25−テトラキス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−2−(3−t−ブチルジメチルシリルオキシプロポキシ)−9,10−セココレスタ−5,7,10(19)−トリエンの合成
【0142】
【化24】

【0143】
出発物質として[3a(R)]−1(R)−[4(S),5−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−1(S),5−ジメチルヘキシル]−4(E)−ブロモメチレン−7a(R)−メチルオクタヒドロ−1H−インデンの代わりに、実施例20で得た[3a(R)]−1(R)−[4(R),5−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−1(S),5−ジメチルヘキシル]−4(E)−ブロモメチレン−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデンを使用した以外は、実施例22と同様の操作で、表題化合物(6.3mg、36%)を無色油状物として得た。
[α]D23+25.8°(c0.28,CHCl3 );
IR(neat)1467,1252cm−1
H NMR(300MHz,CDCl3 )δ 6.22(d,1H,J=10.5Hz),6.00(d,1H,J=10.8Hz),5.26(br s,1H),4.98(br s,1H),4.16−4.26(m,2H),3.58−3.76(m,4H),3.22(m,2H),2.81(br d,1H,J=12.3Hz),2.46(br dd,1H,J=12.9Hz,7.8Hz),2.23(br dd,1H,J=12.6Hz,3.3Hz),1.20−2.05(m,18H),1.18(s,3H),1.11(s,3H),0.82−0.94(m,48H),0.52(s,3H),0.02−0.10(m,30H)。
【0144】
実施例24:(5Z,7E)−(1R,2R,3R,24S)−2−(3−ヒドロキシプロポキシ)−9,10−セココレスタ−5,7,10(19)−トリエン−1,3,24,25−テトラオールの合成
アルゴン雰囲気下、(5Z,7E)−(1R,2R,3R,24S)−1,3,24,25−テトラキス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−2−(3−t−ブチルジメチルシリルオキシプロポキシ)−9,10−セココレスタ−5,7,10(19)−トリエン(化合物20a;5.1mg,4.73μmol)のトルエン(0.5ml)溶液に1M−TBAF−THF溶液(237μl,237μmol)を加え、外温105℃で2時間加熱撹拌した。反応溶液を室温に戻し、酢酸エチルで希釈し、水(2回)及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をプレパラティブTLC(シリカゲル厚0.25mm、ジクロロメタン;エタノール=5:1)により精製し、無色油状の標題化合物(化合物1a;1.45mg,60%)を得た。
【0145】
[α]24D −49°(c0.07,EtOH);
H NMR(270MHz,CDCl3 )δ 0.55(s,3H),0.95(d,J=6.3Hz,3H),1.16(s,3H),1.22(s,3H),2.42(brd,J=13.9Hz,1H),2.55(dd,J=14.5,4.5Hz,1H),2.75−2.87(m,1H),3.20−3.37(m,2H),3.68−3.78(m,1H),3.80−3.99(m,3H),4.20−4.36(m,2H),5.08(brs,1H),5.50(brs,1H),6.04(d,J=11.2Hz,1H),6.36(d,J=11.2Hz,1H);
IR(neat,cm−1)3400,2947,2929,2873,1378,1107,1072;
UV(EtOH)λmax 264nm。
【0146】
実施例25:(5Z,7F)−(1R,2R,3R,24R)−2−(3−ヒドロキシプロポキシ)−9,10−セココレスタ−5,7,10(19)−トリエン−1,3,24,25−テトラオールの合成
(5Z,7E)−(1R,2R,3R,24R)−1,3,24,25−テトラキス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−2−(3−t−ブチルジメチルシリルオキシプロポキシ)−9,10−セココレスタ−5,7,10(19)−トリエン(化合物20b;3.3mg,3.06μmol)、トルエン(0.5ml)、1M−TBAF−THF溶液(153μl,237μmol)を用い、実施例24と同様の操作を行い、無色油状の標題化合物(化合物1b;1.02mg,66%)を得た。
[α]24D −23°(c0.07,EtOH);
H NMR(270MHz,CDCl3 )δ 0.56(s,3H),0.94(d,J=5.9Hz,3H),1.16(s,3H),1.22(s,3H),2.42(brd,J=14.5Hz,1H),2.55(dd,J=14.5,4.0Hz,1H),2.76−2.87(m,1H),3.27(dd,J=8.8,2.8Hz,1H),3.30−3.37(m,1H),3.68−3.78(m,1H),3.80−4.00(m,3H),4.21−4.36(m,2H),5.08(brs,1H),5.50(brs,1H),6.04(d,J=11.2Hz,1H),6.36(d,J=11.2Hz,1H);
IR(neat,cm−1)3400,2947,2927,2871,1377,1105,1070;
UV(EtOH)λmax 264nm。
【0147】
上記実施例24と25の反応を下記に示す。
【0148】
【化25】

【0149】
参考例3:[3a(R)]−4(S)−アセチルオキシ−1(R)−[1(S),5−ジメチル−5−トリエチルシリルオキシヘキシル]−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物2)の合成
[3a(R)]−4(S)−アセチルオキシ−1(R)−[1(S),5−ジメチル−5−ヒトロキシヘキシル]−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物1、Hatakeyama,S.他、The Journal of Organic Chemistry,56,461(1991)から公知、1.38g、4.25mmol)、2,6−ルチジン(0.79ml,6.80mmol)のジクロロメタン(10ml)溶液に、トリエチルシリルトリフルオロスタンスルホネート(TESOTf)(1.3ml,5.53mmol)を加えて30分間攪拌した。反応溶液をジクロロメタンで希釈し、氷冷0.5N塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=19:1)により精製し、無色油状の標題化合物(1.66g,89%)を得た。
【0150】
H NMR(200MHz,CDCl3 ),δ 0.49−0.63(m,6H),0.87−1.01(m,15H),1.18(s,6H),2.04(s,3H),5.14(br,1H)。
【0151】
参考例4:[3a(R)]−1(R)−[1(s),5−ジメチル−5−トリエチルシリルオキシヘキシル]−4(S)−ヒドロキシ−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物3)の合成
参考例3で得た[3a(R)]−4(S)−アセチルオキシ−1(R)−[1(S),5−ジメチル−5−トリエチルシリルオキシヘキシル]−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン(化合物2、1.65g,3.76mmol)のTHF(15ml)溶液を0℃に冷却し、LiAlH4 (214mg,5.64mmol)をゆっくり加えた後、反応溶液を室温で30分間攪拌した。
【0152】
過剰のLiAlH4 を酢酸エチルで処理し、10%NaOH水溶液に注入し、酢酸エチルで2回抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製し、無色油状の標題化合物(1.57g,定量的)を得た。
【0153】
H NMR(200MHz,CDCl3 ),δ 0.49−0.63(m,6H),0.86−1.01(m,15H),1.18(s,6H),4.07(br,1H).上記参考例3と4の反応を下記に示す。
【0154】
【化26】

【0155】
参考例5:[3a(R)]−1(R)−[1(S),5−ジメチル−5−トリエチルシリルオキシヘキシル]−7a(R)−メチル−4−オキソ−オクタヒドロ−1H−インデンの合成
【0156】
【化27】

【0157】
参考例4で得た[3a(R)]−1(R)−[1(S),5−ジメチル−5−トリエチルシリルオキシヘキシル]−4(S)−ヒドロキシ−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン(10.3mg,0.026mmol)のジクロロメタン(3ml)溶液にNMO(4.1mg,0.035mmol)と4Aモレキュラーシーブス(12.9mg)を加え、アルゴン気流中室温下1時間撹拌し、さらにTPAP(0.5mg,0.0014mmol)を加えた。6.5時間後、反応液をセライトろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、標題化合物(10.0mg,97%)を無色油状物として得た。
【0158】
H NMR(300MHz,CDCl3 )δ 2.45(dd,1H,J=9.0Hz,12.5Hz),1.21−2.35(m,18H),1.19(s,6H),0.94(s,3H),0.94(t,9H,J=8.0Hz),0.65(s,3H),0.56(q,6H,J=8.0Hz)。
【0159】
参考例6:[3a(R)]−4(E)−ブロモメチレン−1(R)−[1(S),5−ジメチル−5−トリエチルシリルオキシヘキシル]−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデンの合成
【0160】
【化28】

【0161】
(ブロモメチレン)トリフェニルホスホニウムブロミド(205mg,0.47mmol)のTHF(1.1ml)溶液に−60℃で、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(THF中1M,455μl,0.46mmol)を加え、アルゴン気流中1時間撹拌し、さらに参考例5で得た[3a(R)]−1(R)−[1(S),5−ジメチル−5−トリエチルシリルオキシヘキシル]−7a(R)−メチル−4−オキソ−オクタヒドロ−1H−インデン(23.1mg,0.059mmol)のTHF溶液(0.3ml)を加え、すぐに反応温度を室滉にした。1時間後、n−ヘキサンで希釈し、シリカゲルでろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。残渣をプレパラティブTLC(n−ヘキサン)で精製し、標題化合物(10.0mg,38%)を黄色油状物として得た。
【0162】
[α]D23+62.1°(c0.33,CHCl3 );
IR(neat)1462,1235cm−1
H NMR(200MHz,CDCl3 )δ 5.64(br t,1H,J=1.6Hz),2.86(br dd,1H,J=9.2,4.0Hz),1.20−2.10(m,18H),1.18(s,6H),0.94(t,9H,J=7.9Hz),0.90(s,3H),0.56(s,3H),0.56(q,6H,J=7.9Hz)。
【0163】
実施例26:(5Z,7E)−(1R,2R,3R)−1,3−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−2−(3−t−ブチルジメチルシリルオキシプロポキシ)−25−トリエチルシリルオキシ−9,10−セココレスタ−5,7,10(19)−トリエンの合成
【0164】
【化29】

【0165】
トリフェニルホスフィン(1.7mg,0.0065mmol)とトリス(ジベンジリデンアセトン)(クロロホルム)ジパラジウム(0)(0.9mg,0.00087mmol)のトルエン(0.2ml)、トリエチルアミン(0.3ml)の混合溶液を室温で10分間撹拌後、参考例6で得た[3a(R)]−4(E)−ブロモメチレン−1(R)−[1(S),5−ジメチル−5−トリエチルシリルオキシヘキシル]−7a(R)−メチル−オクタヒドロ−1H−インデン(10.0mg,0.021mmol)と実施例21で得た3(R)−3,5−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−4−(3−t−ブチルジメチルシリルオキシプロポキシ)−1−オクテン−7−イン(8.2mg,0.015mmol)のトルエン(0.2ml)混合溶液を加えて4.5時間加熱還流した。n−ヘキサンで希釈後、シリカゲルでろ過し、減圧下濃縮した。残渣をプレパラティブTLC(n−ヘキサン:ベンゼン=2:1)で精製し、標題化合物(3.5mg,26%)を無色油状物として得た。
【0166】
H NMR(500MHz,CDCl3 )δ 6.22(d,1H,J=11.2Hz),6.00(d,1H,J=11.2Hz),5.26(s,1H),4.98(d,1H,J=2.7Hz),4.23(d,1H,J=6.4Hz),4.18(m,1H),3.61−3.74(m,4H),3.23(br d,1H,J=6.4Hz),2.81(d,1H,J=11.8Hz),2.46(dd,1H,J=13.0Hz,8.9Hz),2.21(dd,1H,J=13.0Hz,3.4Hz),1.19−2.09(m,32H),0.88−0.97(m,36H),0.51−0.59(m,6H),0.04−1.00(m,18H)。
【0167】
試験例1:ビタミンDレセプター(VDR)に対する結合アッセイ
本発明化合物である化合物1aおよび化合物1bについて、ニワトリ小腸由来ビタミンDレセプターに対する結合能をradio receptor assay(RRA)法を用いて試験した。
【0168】
H−1α,25−ジヒドロキシビタミンD3 は、エタノール20μl中に10,000dpmとなるように調製した。1α,25−ジヒドロキシビタミンD3 、化合物1aおよび化合物1bをそれぞれエタノールで1〜100,000nMになるように希釈した。
【0169】
小試験管にH−1α,25−ジヒドロキシビタミンD3 溶液20μlと1α,25−ジヒドロキシビタミンD3 、化合物1aまたは化合物1bの各試験化合物溶液を50μlずつ加え、ビタミンDレセプター溶液[25mgのVDRを70mlの0.05Mリン酸緩衝液(0.3MのKCl;5mMのDTT(ジチオスレイトール)を含む)に溶解したもの]0.5mlを加えて混合し、4℃で3時間放置した。次に、Dextran coated charcoal液(ヤマサ製市販品)0.125mlを加えて混合した後、氷冷中で30分間放置し、3000rpmで15分間遠心分離することによりB/F分離(VDR結合型(B)と非結合型(F)の分離)を行った。上清0.5mlに液体シンチレーター5mlを加え、放射能を測定し、B/B0を算出した(Bは試験物質を添加した場合の放射能の測定値、B0 は試験物質を添加しなかった場合の放射能の測定値)。得られた結果を図1に示す。
【0170】
図1から分かるように、化合物1aおよび化合物1bはビタミンDレセプターに対する親和性を示した。
【0171】
なお、本出願の優先権主張の基礎となる日本特許出願平10−42295号に記載の内容は全て引用により本明細書中に取り込まれる。
【産業上の利用の可能性】
【0172】
本発明の一般式(1)を有するビタミンD誘導体は、生体内カルシウムの調節作用および腫瘍細胞の分化誘導能などの生理活性を有し、医薬、例えば骨粗鬆症、骨軟化症等のカルシウム代謝異常に基づく疾患の治療薬または抗腫瘍剤として有用であることが期待され、また、2β位に置換基を有するビタミンD誘導体、特に2β−(3−ヒドロキシプロポキシ)−1α,25−ジヒドロキシビタミンD3 の代謝産物であると考えられる。
【0173】
また、一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)および一般式(5)を有する化合物はいずれも本発明の一般式(1)を有する化合物あるいは24位に水酸基を有する各種ビタミンD誘導体を合成するのに有用な中間体である。また、一般式(5)で表される化合物は、有用な生理活性を有する2β−(3−ヒドロキシプロポキシ)−1α,25−ジヒドロキシビタミンD3 を合成するためにも使用できる中間体である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(6):
【化1】

(式中、R1 、R2 、R3 およびR4 は同一または異なって、水素原子または保護基を示す)
を有するビタミンD誘導体の製造方法であって、一般式(7):

【化2】

(式中、R1 は水素原子または保護基を示す)
を有する化合物を、一般式(5):
【化3】

(式中、R7 は水素原子を示し、R2 、R3 およびR4 は同一または異なって水素原子または保護基を示す)
を有する化合物と反応させることを含む方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−256361(P2009−256361A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148244(P2009−148244)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【分割の表示】特願2000−533404(P2000−533404)の分割
【原出願日】平成11年2月23日(1999.2.23)
【出願人】(000003311)中外製薬株式会社 (228)
【Fターム(参考)】