説明

3−ヒドロキシ−2,2′−イミノジコハク酸塩類含有固体組成物及びその製造方法

【課題】優れた安定性を示し、輸送や保存においても有利であり、添加物を含まず、優れた洗浄力等の機能を発揮し、各種用途に好適に用いることができる固体組成物、及び、その製造方法を提供する。
【解決手段】3−ヒドロキシ−2,2′−イミノジコハク酸塩類を含有する固体組成物であって、該3−ヒドロキシ−2,2′−イミノジコハク酸塩類の含有量は、固体組成物の水を除く固形分に対して70質量%以上であり、該固体組成物は、該固体組成物に対して20質量%以下の水分を含むものである固体組成物、及び、上記固体組成物を製造する方法であって、該製造方法は、3−ヒドロキシ−2,2′−イミノジコハク酸塩類含有組成物を乾燥させる工程を含む固体組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3−ヒドロキシ−2,2′−イミノジコハク酸塩類を含有する固体組成物及びその製造方法に関する。より詳しくは、有機キレート剤、スケール防止剤、水処理剤、洗剤用ビルダー、漂白助剤、マスキング剤、繊維処理剤、紙・パルプ用添加剤、半導体洗浄剤、写真薬剤、土壌改質剤等に有用なキレート化合物含有組成物、並びに、食品工業、化学工業及び機械工業等の各種分野における各種洗浄や、家庭用及び業務用の自動食器洗浄機による洗浄に有用な3−ヒドロキシ−2,2′−イミノジコハク酸塩類を含有する固体組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キレート化合物を含む組成物は、各種の金属イオン等と錯体を形成することができるものであることから、有機キレート剤、スケール防止剤、水処理剤、洗剤用ビルダー、漂白助剤、マスキング剤、繊維処理剤、紙・パルプ用添加剤、半導体洗浄剤、写真薬剤、土壌改質剤等の各種用途に好適に用いられている。このような組成物としては、輸送や保存上の便宜の点から、固形状とすることが望まれている。
【0003】
従来のキレート化合物を含有する組成物に関し、特定の構造を有するイミノカルボン酸塩を含有し、該イミノカルボン酸塩のアスパラギン酸骨格部分の異性体割合(D体/L体(モル比))が、1/0〜0.7/0.3又は0/1〜0.3/0.7であり、該イミノカルボン酸塩の含有量が40〜70重量%である水溶液組成物が開示されている(例えば特許文献1参照。)。このような水溶液組成物においては、イミノカルボン酸塩を固形状とすることについては記載されていない。
【0004】
またイミノジコハク酸化合物を固形状とすることに関し、イミノジコハク酸化合物と無機金属塩とを含有する粘着性がなく取り扱いの容易な粉末ビルダー組成物(例えば、特許文献2参照。)、及び、イミノジコハク酸化合物を含有し、気温23℃、湿度65%の恒温恒湿下での吸湿速度が20重量%/日以下であることを特徴とする造粒されていてもよい粉末、及び、イミノジコハク酸化合物および無機金属塩を含有し、気温23℃、湿度65%の恒温恒湿下での吸湿速度が20重量%/日以下であることを特徴とする造粒されていてもよい粉末が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、これらの粉末は、溶解性については示唆も開示もなくどのような粉末を調製すれは溶解性に優れた粉末になるかということについて工夫の余地があった。
【特許文献1】特許第2644977号明細書(第1−2頁)
【特許文献2】特開平9−104897号公報(第2頁)
【特許文献3】特開平9−110813号公報(第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、輸送や保存において有利であり、溶解性に優れ、優れた洗浄力等の機能を発揮し、各種用途に好適に用いることができる固体組成物、及び、その製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、キレート化合物含有組成物について種々検討したところ、3−ヒドロキシ−2,2′−イミノジコハク酸(HIDS)が優れた洗浄能力及び生分解性を有すことに着目し、水分量を特定量以下の固体組成物とすることにより、吸湿速度が低くハンドリング性に優れ、ブロッキングを起こしにくい等の優れた安定性を示し、輸送や保存においても有利であるだけでなく、溶解性にも優れたものとすることができる固体組成物とすることができることを見いだした。また、HIDS塩類の異性体組成比を特定のものとすることにより、固体組成物の水への溶解性が更に優れたものとできることを見いだした。また、HIDS塩類の含有量を特定のものとすることにより、有機キレート剤、スケール防止剤、水処理剤、洗剤用ビルダー、漂白助剤、マスキング剤、繊維処理剤、紙・パルプ用添加剤、半導体洗浄剤、写真薬剤、土壌改質剤等の各種用途に好適に用いられるものとできることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。そして、上述の作用効果を発揮する固体組成物の製造方法を有利なものとすることができることも見いだし、本発明に到達したものである。
【0007】
すなわち本発明は、3−ヒドロキシ−2,2′−イミノジコハク酸塩類を含有する固体組成物であって、上記3−ヒドロキシ−2,2′−イミノジコハク酸塩類の含有量は、固体組成物の水を除く固形分に対して70質量%以上であり、上記固体組成物は、該固体組成物に対して20質量%以下の水分を含むものである固体組成物である。なお、固体組成物の水を除く固形分のことを、単に、固形分という。
本発明はまた、上記固体組成物を製造する方法であって、上記製造方法は、3−ヒドロキシ−2,2′−イミノジコハク酸塩類含有組成物を乾燥させる工程を含む固体組成物の製造方法でもある。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明の固体組成物は、3−ヒドロキシ−2,2′−イミノジコハク酸(HIDS)塩類を必須として含むものである。上記HIDS塩類の含有量は、固形分100質量%に対し、70質量%以上である。HIDS塩類の含有量が70質量%未満であると、洗浄剤として用いる場合に、洗浄力が充分には向上しない等の固体組成物の機能を充分に発揮しないおそれがある。上記含有量は、70質量%以上、100質量%以下であることが好ましい。下限値としてより好ましくは、75質量%以上であり、更に好ましくは、80質量%以上である。上限値としてより好ましくは、98質量%以下であり、更に好ましくは、95質量%以下である。
【0009】
上記固体組成物はまた、固体組成物100質量%に対し、20質量%以下の水分を含むものである。水分含有量が20質量%を超えると、優れた溶解性が充分には発揮されないおそれがあり、また、固体組成物を長期間保存する場合、粘着性が増し、取り扱いにくくなるおそれがある。より好ましくは、18質量%以下であり、更に好ましくは、15質量%である。なお、20質量%以下の水分を含むとは、固体組成物の水分含有量が0を超えるものであることをいう。
【0010】
上記固体組成物の溶解性は、5℃において、下記式;
溶解速度=(仕込の粉末組成物(mg))/(溶解に要した時間(sec))
により算出できる。溶解速度としては、0.6mg/sec以上が好ましい。より好ましくは、1.8mg/sec以上であり、最も好ましくは、2.0mg/sec以上である。このような範囲とすることで、工業的にも充分有用なものとなる。
【0011】
上記固体組成物は、固形分100質量%に対してHIDS塩類を70質量%以上、100質量%以下含み、該固体組成物100質量%に対して20質量%以下の水分を含むものである。したがって、固形分に対してHIDS塩類の含有量が100質量%以下である場合、その他の成分が含まれることになる。
上記その他の成分としては、本発明の作用効果を発揮できるものであれば特に限定されないが、脂肪族ポリカルボン酸又はその塩、アミノ酸又はその塩、アミノポリカルボン酸又はその塩、有機ビルダー、無機ビルダー、無機塩、分散剤、消泡剤、造粒剤、増量剤、漂白剤、漂白活性化剤、表面改質剤、腐食防止剤、再汚染防止剤、蛍光剤、殺菌剤、酵素、香料、着色料等の1種又は2種以上を含んでもよい。
上記その他の成分の含有量は、固形分100質量%からHIDS塩類の含有量を除いたものであるが、固形分の1成分として無機塩を用いる場合、無機塩の含有量としては、固形分100質量%に対し、5質量%以下であることが好ましい。
【0012】
上記固体組成物は、有機キレート剤、スケール防止剤、水処理剤、洗剤用ビルダー、漂白助剤、マスキング剤、繊維処理剤、紙・パルプ用添加剤、半導体洗浄剤、写真薬剤、土壌改質剤等に有用であり、食品工業、化学工業及び機械工業等の各種分野における各種洗浄や、家庭用及び業務用の自動食器洗浄機による洗浄等の各種用途に用いることができる。
【0013】
本発明の固体組成物は、HIDS塩類の含有量が固形分に対して70質量%以上であり、水分含有量が該固体組成物に対して20質量%以下である固体状のものであればその形態は特に限定されず、例えば、粒状、粉体状、顆粒状であってもよい。
上記固体組成物の粒径としては、0.1μm〜10mmであることが好適である。
【0014】
HIDS塩類とは、下記一般式(1);
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、X〜Xは、同一若しくは異なって、水素原子、アルカリ金属原子又はアンモニウム基を表す。)で表される化合物である。
上記X〜Xにおいて、アルカリ金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等が好適である。アルカリ土類金属原子としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が好適である。有機アンモニウム基(有機アミ ン基)としては、例えば、モノエチルアミン基、ジエチルアミン基、トリエチルアミン基等のアルキルアミン基;モノエタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基;エチレンジアミン基、トリエチレンジアミン基等のポリアミン基等が好適である。これらの中でも、上記X〜Xとしては、ナトリウム又はカリウムであることがより好ましい。なお、上記HIDS塩類は、部分中和されたものであってもよく、完全に中和されたものであってもよい。
【0017】
上記HIDS塩類の製造方法としては、アスパラギン酸及び/又はその塩と、エポキシコハク酸とを含む原料を水性媒体中で反応させる方法を挙げることができる。
上記製造方法において、原料におけるアスパラギン酸及び/又はその塩と、エポキシコハク酸との比率や、反応温度等の反応条件は、特に限定されるものではない。また、エポキシコハク酸としては、シス体、トランス体の両立体異性体を用いることができ、両者の中でもシス体を用いることが好ましい。水性媒体とは、水又は水と水に溶解する溶媒との混合物であり、水;水とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、アセトニトリル等との混合溶媒が好適である。これらの中でも、水を用いることが好ましい。
【0018】
上記HIDS塩類は、上記一般式(1)で表される構造を有するため、アスパラギン酸骨格部分がL体、D体である光学異性体が存在することになる。
HIDS塩類のアスパラギン酸骨格部分とは、上記一般式(1)中の下記一般式(2);
【0019】
【化2】

【0020】
(式中、X及びXは、同一若しくは異なって、上記一般式(1)中のX及びXと同じである。)で表される構造を意味する。
またアスパラギン酸骨格部分におけるL体、D体とは、上記一般式(2)で表される構造中の不斉炭素原子における立体配置がS配置、R配置である化合物であり、S配置の場合はL体、R配置の場合はD体となる。
【0021】
上記HIDS塩類は、上記HIDS塩類の製造方法において、原料としてL体又はD体の立体配置を有するアスパラギン酸及び/又はその塩を用いることにより、対応するHIDS塩類のアスパラギン酸骨格部分がL体又はD体の立体配置とすることができる。例えば、原料としてD体のアスパラギン酸及び/又はその塩を用いると、エポキシコハク酸と反応して生成するHIDS塩類のアスパラギン酸骨格部分が、原料の立体配置に由来してD体に保持され、HIDS塩類のアスパラギン酸骨格部分の不斉炭素原子がR配置であるHIDS塩類が生成することになる。また、HIDS塩類のラセミ体を分割することにより、L体又はD体を得ることもできる。
【0022】
上記HIDS塩類は、アスパラギン酸骨格部分の異性体の割合すなわちD体/L体のモル比(D体/L体=)が、0/1〜0.3/0.7、又は、1/0〜0.7/0.3であることが好ましい。D体/L体のモル比を上記範囲とすることで、水への溶解性が優れた固体組成物とすることができる。異性体の割合(D体/L体のモル比)としてより好ましくは、0/1〜0.2/0.8、又は、1/0〜0.8/0.2であり、更に好ましくは、0/1〜0.1/0.9、又は、1/0〜0.9/0.1である。このように、HIDS塩類のアスパラギン酸骨格部分における異性体割合を特定の範囲に調整する方法としては、上記HIDS塩類の製造方法において、D体とL体の比率が特定範囲にあるアスパラギン酸及び/又はその塩を含む原料を用いて反応を行う方法、D体のHIDS塩類とL体のHIDS塩類とを別々に合成し、これらを特定比率で混合する方法等が好適である。
なお、上記HIDS塩類の生分解性は異性体間で異なり、D体、ラセミ体、L体の順に高くなることから、生分解性の観点からは、使用するHIDS塩類としては、ラセミ体を用いることが好ましく、L体の割合が高いHIDS塩類を用いることがより好ましい。
【0023】
本発明はまた、上記固体組成物を製造する方法であって、上記製造方法は、3−ヒドロキシ−2,2′−イミノジコハク酸塩類含有組成物を乾燥させる工程を含む固体組成物の製造方法でもある。
上記HIDS塩類含有組成物は、上述した製造方法等により得たHIDS塩類を含む溶液、HIDS塩類含有量が70質量%未満又は水分含有量が20質量%を超える固体状のHIDS塩類含有組成物等が好適である。これらの中でも、取り扱い性の観点から、HIDS塩類を含む水溶液が好ましい。
上記HIDS塩類の水溶液の濃度としては、10質量%以上が好ましい。より好ましくは、20〜60質量%であり、更に好ましくは、30〜55質量%である。濃度が10質量%未満であると、溶媒の除去及び乾燥に必要なエネルギーが増加し、また、溶媒の除去及び乾燥に要する時間が長くなり経済的でない。一方、濃度が60質量%を超えると水溶液の粘度が増大し、取り扱いが困難となり好ましくない。
【0024】
上記水溶液の濃度の調整は、濃縮等によって行うことができる。また、HIDS塩類の水溶液を晶出させ、得られた結晶を改めて水に溶解して適当な濃度の水溶液としてもよい。この場合、メタノール、アセトンなどの水親和性の有機溶媒をHIDS塩類の水溶液に添加してHIDS塩類を結晶化することができるが、有機溶媒の除去、廃棄などの観点から、有機溶媒を用いない方法であることが好ましい。
【0025】
上記HIDS塩類含有組成物は、乾燥工程を経ることとなる。乾燥工程は、HIDS塩類含有組成物を乾燥させることにより、HIDS塩類の含有量及び水分含有量を好ましい範囲のものとする工程であり、本発明のHIDS塩類含有固体組成物を得ることになる。
上記HIDS塩類含有組成物が、HIDS塩類の水溶液である場合は、上述したように適当な濃度に調製した後、乾燥工程を経ることが好ましい。
上記乾燥工程においては、例えば、スプレードライヤーのような噴霧乾燥装置、ドラムドライヤーやCDドライヤーのようなドラム乾燥装置、気流乾燥装置、流動乾燥装置、加熱管付回転乾燥装置、薄膜式蒸発濃縮粉末化装置、レーディゲミキサーやニーダーのような縦型式攪拌造粒機、箱型乾燥装置、通気棚段乾燥装置、トンネル乾燥装置、連続式通気乾燥装置、回転乾燥装置、溝型攪拌乾燥装置、真空箱型乾燥装置、凍結乾燥装置、円筒攪拌真空乾燥装置、赤外線乾燥装置、高周波乾燥装置を用いることができる。これらの中でも、スプレードライヤーのような噴霧乾燥装置、ドラムドライヤーやCDドライヤーのようなドラム乾燥装置、気流乾燥装置、流動乾燥装置、加熱管付回転乾燥装置、薄膜式蒸発濃縮粉末化装置、レーディゲミキサーやニーダーのような縦型式攪拌造粒機が好ましい。このように、スプレードライヤーのような噴霧乾燥装置を用いる乾燥工程を含むものである固体組成物の製造方法は、本発明の最も好ましい形態の一つである。
【0026】
上記乾燥工程により乾燥して得られた固体組成物は、更に、必要に応じて適当な粉砕機を用いて疎砕してもよく、更に、造粒してもよい。CDドライヤー、噴霧乾燥機等を用いて乾燥して得られる固体組成物は、通常、嵩密度が小さく、粒径が不揃いであるが、このような固体組成物を粉砕及び造粒処理することにより、嵩密度や粒径を用途に応じて適当な範囲のものとすることができる。例えば、固体組成物をビルダーとして粒状洗剤組成物に使用する場合、上記乾燥後の固体組成物を洗剤組成物成分と混合すると均一な混合が困難となる場合があるが、粉砕及び造粒処理することにより、固体組成物の嵩密度を、一般的なコンパクト洗剤の嵩密度である0.5〜1g/cc程度にすることができる。
【0027】
上記造粒処理は、本発明の固体組成物を好適な嵩密度及び粒径とすることができるものであれば特に限定されず、一般の造粒機を用いることができる。中でも、撹拌造粒機を好適に用いることができる。撹拌造粒機としては、例えば、深江工業(株)製のハイスピードミキサーのような横型式撹拌造粒機、又は、レーディゲ社製のレーディゲミキサーのような縦型式撹拌造粒機等を用いることができる。これらの中でも、重力方向にシェアーをかけることができ、容易に嵩密度を上昇させることができる縦型式撹拌造粒機が好ましい。なお、造粒後、必要に応じて、さらに乾燥させて、HIDS塩類の含有量が固形分に対して70質量%以上であり、水分含有量が該固体組成物に対して20質量%以下である固体組成物としてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の3−ヒドロキシ−2,2′−イミノジコハク酸塩類含有固体組成物及びその製造方法は、上述の構成よりなり、輸送や保存において有利であり、溶解性に優れ、優れた洗浄力等の機能を発揮し、各種用途に有用なキレート化合物含有組成物、並びに、各種分野における各種洗浄や、家庭用及び業務用の自動食器洗浄機による洗浄に有用な3−ヒドロキシ−2,2′−イミノジコハク酸塩類を含有する固体組成物及びその製造方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
なおHIDSに含まれる水分量は、示差熱分析装置により10℃/分で200℃に上昇し200℃で30分保持した場合の乾燥減量を測定した。
【0030】
合成例1
エポキシコハク酸2ナトリウム塩1761g、L−アスパラギン酸2ナトリウム塩1770g及び水3100gを混合し、90℃で4時間反応させて、3−ヒドロキシイミノジコハク酸4ナトリウム塩(HIDS4Na)の50質量%の水溶液を得た。HIDS4Naの50質量%水溶液を、スプレードライヤー(藤崎電気株式会社製)を用いて乾燥し、前記一般式(2)で表されるアスパラギン酸骨格部分がL体であるL−HIDS4Naを含む粉末を得た。乾燥の過程において、装置の壁面や配管等に粘着物の付着は見られなかった。
得られた粉末に含まれるL−HIDS4Naの含有量を高速液体クロマトグラフィーにより分析した結果、81質量%であった。また、水分量を示差熱分析装置により分析した結果、10質量%であった。
【0031】
合成例2
L−アスパラギン酸2ナトリウム塩をD−アスパラギン酸2ナトリウム塩として他は、合成例1と同様に反応、乾燥を行い、前記一般式(2)で表されるアスパラギン酸骨格部分がD体であるD−HIDS4Naの粉末を得た。
得られた粉末に含まれるD−HIDS4Naの含有量を高速液体クロマトグラフィーにより分析した結果、80質量%であった。また、水分量を示差熱分析装置により分析した結果、10質量%であった。
【0032】
実施例1〜3及び比較例1
合成例1で合成したL体のHIDS4Naを棚段乾燥機で乾燥、又は、温度25℃、湿度80%の恒温恒湿器内で吸湿させてL体のHIDS4Naの水分量が表1となるように粉末組成物を調製した。5℃の水10gの粉末組成物0.5gを加えて溶解速度を測定した。溶解速度は、参照溶液との目視比較により行った。参照溶液は予めL−HIDS4Naを溶解させた水溶液を使用した。溶解に要した時間は、粉末組成物を投入した時点を開始時点とし、攪拌下固形分が溶解して参照液と目視比較して同等となった時点を終了時点とした。
溶解速度=(仕込の粉末組成物(mg))/(溶解に要した時間(sec))
【0033】
【表1】

【0034】
実施例4〜6
合成例1及び2で合成したL体及びD体のHIDS4Naの混合比率を表2のように種々変更して、粉末組成物A〜Cを得た。溶解速度の測定には、100メッシュの篩を通過した粉末組成物A〜Cを使用した。
5℃の水10gに粉末組成物A〜Cを0.5g加えて溶解速度を測定した。溶解速度は、実施例1と同様の方法で行った。
溶解速度=(仕込みの粉末組成物量(mg))/(溶解に要した時間(sec))
【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
比較例2
粉末組成物Cを恒温恒湿器内で吸湿させて水分量が表4となるように粉末組成物を調製した。5℃の水10gにこれを0.5g加えて溶解速度を測定した。溶解速度は実施例1と同様の方法で行った。
【0038】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−ヒドロキシ−2,2′−イミノジコハク酸塩類を含有する固体組成物であって、
該3−ヒドロキシ−2,2′−イミノジコハク酸塩類の含有量は、固体組成物の水を除く固形分に対して70質量%以上であり、
該固体組成物は、該固体組成物に対して20質量%以下の水分を含むものであることを特徴とする固体組成物。
【請求項2】
前記3−ヒドロキシ−2,2′−イミノジコハク酸塩類は、アスパラギン酸骨格部分の異性体の割合(D体/L体のモル比)が、0/1〜0.3/0.7、又は、1/0〜0.7/0.3であることを特徴とする請求項1記載の固体組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の固体組成物を製造する方法であって、
該製造方法は、3−ヒドロキシ−2,2′−イミノジコハク酸塩類含有組成物を乾燥させる工程を含むことを特徴とする固体組成物の製造方法。

【公開番号】特開2007−31594(P2007−31594A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−217887(P2005−217887)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】