説明

3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体およびその製造方法

【課題】3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体を温和な条件下、満足できる収率で製造する方法および新規な3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体を見出す。
【解決手段】下記式(I)で表される化合物またはその塩と、下記式(II)で表される化合物またはその塩とを、炭酸塩および銅塩の存在下、または水酸化物塩、炭酸塩および銅塩の存在下で反応させることを特徴とする、下記式(III)で表される化合物またはその塩の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルココルチコイド受容体結合活性を有する1,2−ジヒドロキノリン誘導体の製造中間体として有用な、また、選択的エストロゲンβ受容体アゴニストとしても有用な3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体は、グルココルチコイド受容体結合活性を有する1,2−ジヒドロキノリン誘導体の製造中間体として知られている(たとえば、国際公開第2007/032556号パンフレット(特許文献1)を参照)。また、当該誘導体は選択的エストロゲンβ受容体アゴニストとしても知られている(たとえば、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,16,2006,1468−1472(非特許文献1)を参照)。非特許文献1には、2当量の水酸化ナトリウムおよび触媒量の硫酸銅存在下、2当量のレゾルシノールとブロモ安息香酸誘導体を水中、100℃で反応させることで、3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体を得る方法が記載されている。
【0003】
しかしながら、本発明者らが非特許文献1に記載された方法を用いて3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体の製造を試みたところ、副生成物が多く生成し、満足できる収率で当該誘導体を製造することができず、工業的製造の観点から収率の向上が必要であった。たとえば、ブロモ安息香酸誘導体として、3位または5位が電子吸引基であるニトロ基で置換された2−ブロモ安息香酸を使用した場合、水またはレゾルシノールのヒドロキシ基によるブロモ基との芳香族置換反応が進行し、目的とする化合物を収率10%程度以下でしか製造することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/032556号パンフレット
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,16,2006,1468−1472
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体を温和な条件下、満足できる収率で製造する方法および新規な3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体を見出すことは非常に興味深い課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、炭酸塩および銅塩、または水酸化物塩、炭酸塩および銅塩を用いることで、従来知られた製造方法よりも温和な条件下、満足できる収率で3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体を製造する方法を見出した。また、水酸化物塩、炭酸塩および銅塩を用いた場合には、反応時の炭酸ガスの発泡を抑制できることも見出した。
【0008】
また、本発明者らは、当該3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体を水酸化物塩と反応させて開環体である5−アセトアミド−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−安息香酸またはその塩に変換し、ろ過操作により不溶物である銅塩などの不純物を除去した後、次いで酸と反応させることにより、当該3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体を製造する方法も見出した。当該製造方法は、不溶物である銅塩などの不純物をろ過操作により容易に除去できるため、工業的製造を実施する上で有用である。
【0009】
また、本発明方法には、炭酸ナトリウムやヨウ化銅などの廉価な試薬を適用することが可能であり、工業的製造を実施する上で、経済的である。さらに、新規な3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体を見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0010】
本発明は、下記式(I)
【0011】
【化1】

【0012】
[上記式(I)中、R、RまたはRは水素原子、低級アルキル基、ヒドロキシ基または低級アルコキシ基を示す。]で表される化合物またはその塩と、下記式(II)
【0013】
【化2】

【0014】
[上記式(II)中、Rは水素原子、低級アルキル基、ニトロ基、アミノ基または低級アルキルアミノ基を示し;Rは水素原子または低級アルキル基を示し;Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、カルボキシル基、ニトロ基または−NRを示し;RおよびRは同一または異なって水素原子、ホルミル基、低級アルキルカルボニル基、低級アルケニルカルボニル基、低級シクロアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルケニルオキシカルボニル基、低級シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基またはアリールアルキルオキシカルボニル基を示し;Xはハロゲン原子、低級アルキルスルホニルオキシ基またはアリールスルホニルオキシ基を示す。]で表される化合物またはその塩とを反応させて、下記式(III)
【0015】
【化3】

【0016】
[上記式(III)中、R、R、R、R、RまたはRは式(I)および式(II)中の各定義と同一]で表される化合物またはその塩を製造する方法であって、上記式(I)で表される化合物またはその塩と、上記式(II)で表される化合物またはその塩とを、炭酸塩および銅塩の存在下、または水酸化物塩、炭酸塩および銅塩の存在下で反応させることを特徴とする(以下、当該方法を「本発明方法」と呼称する)。
【0017】
また本発明は、下記式(Ia)
【0018】
【化4】

【0019】
で表される化合物またはその塩と、下記式(IIa)
【0020】
【化5】

【0021】
[上記式(IIa)中、Rは水素原子、低級アルキル基、ニトロ基、アミノ基または低級アルキルアミノ基を示し;Rは水素原子または低級アルキル基を示し;Rは水素原子または低級アルキル基を示し;R10は水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級シクロアルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、低級アルケニルオキシ基、低級シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基またはアリールアルキルオキシ基を示し;Xはハロゲン原子、低級アルキルスルホニルオキシ基またはアリールスルホニルオキシ基を示す。]で表される化合物またはその塩とを反応させて、下記式(IIIa)
【0022】
【化6】

【0023】
[上記式(IIIa)中、R、R、RまたはR10は式(IIa)中の定義と同一]で表される化合物またはその塩を製造する方法であって、炭酸塩および銅塩の存在下、または水酸化物塩、炭酸塩および銅塩の存在下で反応させることを特徴とする、上記式(IIIa)で表される化合物またはその塩の製造方法についても提供する(以下、当該方法を「本発明方法a」と呼称する)。
【0024】
また本発明は、下記式(I)
【0025】
【化7】

【0026】
[上記式(I)中、R、RまたはRは水素原子、低級アルキル基、ヒドロキシ基または低級アルコキシ基を示す。]で表される化合物またはその塩と、下記式(II)
【0027】
【化8】

【0028】
[上記式(II)中、Rは水素原子、低級アルキル基、ニトロ基、アミノ基または低級アルキルアミノ基を示し;Rは水素原子または低級アルキル基を示し;Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、カルボキシル基、ニトロ基または−NRを示し;RおよびRは同一または異なって水素原子、ホルミル基、低級アルキルカルボニル基、低級アルケニルカルボニル基、低級シクロアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルケニルオキシカルボニル基、低級シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基またはアリールアルキルオキシカルボニル基を示し;Xはハロゲン原子、低級アルキルスルホニルオキシ基またはアリールスルホニルオキシ基を示す。]で表される化合物またはその塩とを、炭酸塩および銅塩の存在下、または水酸化物塩、炭酸塩および銅塩の存在下で反応させて、下記式(III)
【0029】
【化9】

【0030】
[上記式(III)中、R、R、R、R、RまたはRは式(I)および式(II)中の各定義と同一]で表される化合物またはその塩を製造し、上記式(III)で表される化合物またはその塩を水酸化物塩と反応させて、下記式(IV)
【0031】
【化10】

【0032】
[上記式(IV)中、R、R、R、R、RまたはRは式(I)および式(II)中の各定義と同一]で表される化合物またはその塩に変換し、次いで上記式(IV)で表される化合物またはその塩を、酸と反応させることを特徴とする、下記式(III)
【0033】
【化11】

【0034】
[上記式(III)中、R、R、R、R、RまたはRは式(I)および式(II)中の各定義と同一]で表される化合物またはその塩の製造方法についても提供する(以下、当該方法を「本発明方法b」と称呼する)。
【0035】
また本発明は、下記式(Ia)
【0036】
【化12】

【0037】
で表される化合物またはその塩と、下記式(IIa)
【0038】
【化13】

【0039】
[上記式(IIa)中、Rは水素原子、低級アルキル基、ニトロ基、アミノ基または低級アルキルアミノ基を示し;Rは水素原子または低級アルキル基を示し;Rは水素原子または低級アルキル基を示し;R10は水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級シクロアルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、低級アルケニルオキシ基、低級シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基またはアリールアルキルオキシ基を示し;Xはハロゲン原子、低級アルキルスルホニルオキシ基またはアリールスルホニルオキシ基を示す。]で表される化合物またはその塩とを、炭酸塩および銅塩の存在下、または水酸化物塩、炭酸塩および銅塩の存在下で反応させて、下記式(IIIa)
【0040】
【化14】

【0041】
[上記式(IIIa)中、R、R、RまたはR10は式(IIa)中の定義と同一]で表される化合物またはその塩を製造し、上記式(IIIa)で表される化合物またはその塩を水酸化物塩と反応させて、下記式(IVa)
【0042】
【化15】

【0043】
[上記式(IVa)中、R、R、RまたはR10は式(IIa)中の定義と同一]で表される化合物またはその塩に変換し、次いで上記式(IVa)で表される化合物またはその塩を酸と反応させることを特徴とする、下記式(IIIa)
【0044】
【化16】

【0045】
[上記式(IIIa)中、R、R、RまたはR10は式(IIa)中の定義と同一]で表される化合物またはその塩の製造方法についても提供する(以下、当該方法を「本発明方法c」と称呼する)。
【0046】
本発明方法aおよび本発明方法cにおいて、上記式(IIIa)中、R、RおよびRが水素原子を示し、R10が低級アルキル基、アリール基、低級アルコキシ基またはアリールアルキルオキシ基を示すことが好ましい。
【0047】
また本発明方法aおよび本発明方法cにおいて、上記式(IIIa)中、R、RおよびRが水素原子を示し、R10がメチル基、フェニル基、tert−ブトキシ基またはベンジルオキシ基を示すことが好ましい。
【0048】
本発明方法aおよび本発明方法cにおいて、上記式(IIIa)で表される化合物またはその塩は、
8−アセトアミド−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン、
8−ベンジルオキシカルボニルアミノ−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン、
8−ベンゾイルアミノ−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オンおよび
8−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オンからなる群から選ばれる化合物またはその塩であることが好ましい。
【0049】
本発明方法、本発明方法a、本発明方法bおよび本発明方法cにおける炭酸塩は、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、炭酸銅、炭酸鉄および炭酸銀からなる群から選ばれる少なくともいずれかであることが好ましい。
【0050】
本発明方法、本発明方法a、本発明方法bおよび本発明方法cにおける銅塩が塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、炭酸銅、酢酸銅、トリフルオロ酢酸銅、硝酸銅、硫酸銅、水酸化銅および酸化銅からなる群から選ばれる少なくともいずれかであることが好ましい。
【0051】
また本発明方法、本発明方法a、本発明方法bおよび本発明方法cにおいて、炭酸塩が炭酸ナトリウムであり、銅塩がヨウ化銅であることが好ましい。
【0052】
また本発明方法、本発明方法a、本発明方法bおよび本発明方法cにおいて、水酸化物塩が水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選ばれる少なくともいずれかであることが好ましい。
【0053】
また本発明方法、本発明方法a、本発明方法bおよび本発明方法cにおいて、水酸化物塩が水酸化ナトリウムであり、炭酸塩が炭酸ナトリウムであり、銅塩がヨウ化銅であることが好ましい。
【0054】
また本発明方法bおよび本発明方法cにおいて、酸が塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンベンゼンスルホン酸、酢酸およびトリフルオロ酢酸からなる群から選ばれる少なくともいずれかであることが好ましい。
【0055】
本発明はまた、下記式(IIIa)
【0056】
【化17】

【0057】
[上記式(IIIa)中、Rは水素原子、低級アルキル基、ニトロ基、アミノ基または低級アルキルアミノ基を示し;Rは水素原子または低級アルキル基を示し;Rは水素原子または低級アルキル基を示し;R10は水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級シクロアルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、低級アルケニルオキシ基、低級シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基またはアリールアルキルオキシ基を示す。]で表される化合物またはその塩についても提供する。
【0058】
本発明の化合物またはその塩において、上記式(IIIa)中、R、RおよびRが水素原子を示し、R10が低級アルキル基、アリール基、低級アルコキシ基またはアリールアルキルオキシ基であることが好ましい。
【0059】
本発明の化合物またはその塩は、
8−アセトアミド−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン、
8−ベンジルオキシカルボニルアミノ−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン、
8−ベンゾイルアミノ−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン、
8−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン、
3−ヒドロキシ−10−ニトロ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン、
3−ヒドロキシ−9−メチル−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン、
8−カルボキシル−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン、
8−ヨード−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オンおよび
8−ブロモ−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン
からなる群から選ばれることが好ましい。
【発明の効果】
【0060】
本発明は、炭酸塩および銅塩、または水酸化物塩、炭酸塩および銅塩を用いることで、3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体を温和な条件下、満足できる収率で製造する方法を提供する。また、特に水酸化物塩、炭酸塩および銅塩を用いた場合には、反応時の炭酸ガスの発泡を抑制できる。さらに本発明は、当該3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体を水酸化物塩と反応させて開環体である5−アセトアミド−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−安息香酸またはその塩に変換し、ろ過操作により不溶物である銅塩などの不純物を除去した後、次いで酸と反応させることにより、当該3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体を製造する方法を提供する。当該製造方法は、不溶物である銅塩などの不純物をろ過操作により容易に除去できるため、工業的製造を実施する上で有用である。また、このような本発明の製造方法には、炭酸ナトリウムやヨウ化銅などの廉価な試薬を適用することが可能であり、工業的製造を実施する上で、経済的である。さらに、本発明は、新規な3−ヒドロキシベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本明細書中で使用される文言(原子、基、環など)の定義について以下に詳しく説明する。また、以下の文言の定義が別の文言の定義に準用される場合、各定義の好ましい範囲および特に好ましい範囲にも準用することができる。
【0062】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。
「低級アルキル基」とは、炭素原子数が1〜8個、好ましくは1〜6個の直鎖または分枝のアルキル基を示す。具体例として、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルまたはイソペンチル基などが挙げられる。
【0063】
「低級アルケニル基」とは、炭素原子数が2〜8個、好ましくは2〜6個の直鎖または分枝のアルケニル基を示す。具体例として、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、イソプロペニル、2−メチル−1−プロペニルまたは2−メチル−2−ブテニル基などが挙げられる。
【0064】
「低級シクロアルキル基」とは、炭素原子数が3〜8個、好ましくは3〜6個のシクロアルキル基を示す。具体例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルまたはシクロオクチル基などが挙げられる。
【0065】
「アリール基」とは、炭素原子数が6〜14個の単環式芳香族炭化水素または2環式若しくは3環式の縮合多環式芳香族炭化水素から水素1原子を除いた残基を示す。具体例として、フェニル、ナフチル、アントリルまたはフェナントリル基などが挙げられる。
【0066】
「アリールアルキル基」とは、低級アルキル基の水素原子がアリール基で置換された基を示す。具体例として、ベンジル、フェネチルまたはジフェニルメチル基などが挙げられる。
【0067】
「アルコキシ基」とは、ヒドロキシ基の水素原子が低級アルキル基で置換された基を示す。具体例として、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキシルオキシ、n−ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、イソプロポキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシまたはイソペントキシ基などが挙げられる。
【0068】
「低級アルケニルオキシ基」とは、ヒドロキシ基の水素原子が低級アルケニル基で置換された基を示す。具体例として、ビニルオキシ、プロペニルオキシ、ブテニルオキシ、ペンテニルオキシ、ヘキセニルオキシ、エチルプロペニルオキシまたはメチルブテニルオキシ基などが挙げられる。
【0069】
「低級シクロアルキルオキシ基」とは、ヒドロキシ基の水素原子が低級シクロアルキル基で置換された基を示す。具体例として、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘプチルオキシまたはシクロオクチルオキシ基などが挙げられる。
【0070】
「アリールオキシ基」とは、ヒドロキシ基の水素原子がアリール基で置換された基を示す。具体例として、フェノキシ、ナフトキシ、アントリルオキシまたはフェナントリルオキシ基などが挙げられる。
【0071】
「アリールアルキルオキシ基」とは、ヒドロキシ基の水素原子がアリールアルキル基で置換された基を示す。具体例として、ベンジルオキシ、フェニルエチルオキシ、1−ナフチルメチルオキシ、1−ナフチルエチルオキシ、2−ナフチルメチルオキシまたは2−ナフチルエチルオキシ基などが挙げられる。
【0072】
「低級アルキルカルボニル基」とは、ホルミル基の水素原子が低級アルキル基で置換された基を示す。具体例として、メチルカルボニル、エチルカルボニル、n−プロピルカルボニル、n−ブチルカルボニル、n−ペンチルカルボニル、n−ヘキシルカルボニル、イソプロピルカルボニル、イソブチルカルボニル、sec−ブチルカルボニル、tert−ブチルカルボニルまたはイソペンチルカルボニル基などが挙げられる。
【0073】
「低級アルケニルカルボニル基」とは、ホルミル基の水素原子が低級アルケニル基で置換された基を示す。具体例として、ビニルカルボニル、プロペニルカルボニル、ブテニルカルボニル、ペンテニルカルボニル、ヘキセニルカルボニル、ヘプテニルカルボニル、オクテニルカルボニル、イソプロペニルカルボニル、2−メチル−1−プロペニルカルボニルまたは2−メチル−2−ブテニルカルボニル基などが挙げられる。
【0074】
「低級シクロアルキルカルボニル基」とは、ホルミル基の水素原子が低級シクロアルキル基で置換された基を示す。具体例として、シクロプロピルカルボニル、シクロブチルカルボニル、シクロペンチルカルボニル、シクロヘキシルカルボニル、シクロヘプチルカルボニルまたはシクロオクチルカルボニル基などが挙げられる。
【0075】
「アリールカルボニル基」とは、ホルミル基の水素原子がアリール基で置換された基を示す。具体例として、フェニルカルボニル、ナフチルカルボニル、アントリルカルボニルまたはフェナントリルカルボニル基などが挙げられる。
【0076】
「低級アルコキシカルボニル基」とは、ホルミル基の水素原子が低級アルコキシ基で置換された基を示す。具体例として、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、n−ペントキシカルボニル、n−ヘキシルオキシカルボニル、n−ヘプチルオキシカルボニル、n−オクチルオキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec−ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニルまたはイソペントキシカルボニル基などが挙げられる。
【0077】
「低級アルケニルオキシカルボニル基」とは、ホルミル基の水素原子が低級アルケニルオキシ基で置換された基を示す。具体例として、ビニルオキシカルボニル、プロペニルオキシカルボニル、ブテニルオキシカルボニル、ペンテニルオキシカルボニル、ヘキセニルオキシカルボニル、ヘプテニルオキシカルボニル、オクテニルオキシカルボニル、イソプロペニルオキシカルボニル、2−メチル−1−プロペニルオキシカルボニルまたは2−メチル−2−ブテニルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0078】
「低級シクロアルキルオキシカルボニル基」とは、ホルミル基の水素原子が低級シクロアルキルオキシ基で置換された基を示す。具体例として、シクロプロピルオキシカルボニル、シクロブチルオキシカルボニル、シクロペンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、シクロヘプチルオキシカルボニルまたはシクロオクチルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0079】
「アリールオキシカルボニル基」とは、ホルミル基の水素原子がアリールオキシ基で置換された基を示す。具体例として、フェノキシカルボニル、ナフトキシカルボニル、アントリルオキシカルボニルまたはフェナントリルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0080】
「アリールアルキルオキシカルボニル基」とは、ホルミル基の水素原子がアリールアルキルオキシ基で置換された基を示す。具体例として、ベンジルオキシカルボニルまたはジフェニルメトキシカルボニル基などが挙げられる。
【0081】
「低級アルキルスルホニル基」とは、スルホ基のヒドロキシ基が低級アルキル基で置換された基を示す。具体例として、メチルスルホニル、トリフルオロメチルスルホニル、エチルスルホニル、n−プロピルスルホニル、n−ブチルスルホニル、n−ペンチルスルホニル、n−ヘキシルスルホニル、イソプロピルスルホニル、イソブチルスルホニル、sec−ブチルスルホニル、tert−ブチルスルホニルまたはイソペンチルスルホニル基などが挙げられる。
【0082】
「アリールスルホニル基」とは、スルホ基のヒドロキシ基がアリール基で置換された基を示す。具体例として、ベンゼンスルホニル、p−トルエンスルホニルまたはナフタレンスルホニル基などが挙げられる。
【0083】
「低級アルキルスルホニルオキシ基」とは、ヒドロキシ基の水素原子が低級アルキルスルホニル基で置換された基を示す。具体例として、メチルスルホニルオキシ、トリフルオロメチルスルホニルオキシ、エチルスルホニルオキシ、n−プロピルスルホニルオキシ、n−ブチルスルホニルオキシ、n−ペンチルスルホニルオキシ、n−ヘキシルスルホニルオキシ、イソプロピルスルホニルオキシ、イソブチルスルホニルオキシ、sec−ブチルスルホニルオキシ、tert−ブチルスルホニルオキシまたはイソペンチルスルホニルオキシ基などが挙げられる。
【0084】
「アリールスルホニルオキシ基」とは、ヒドロキシ基の水素原子がアリールスルホニル基で置換された基を示す。具体例として、ベンゼンスルホニルオキシ、p−トルエンスルホニルオキシ基またはナフタレンスルホニルオキシ基などが挙げられる。
【0085】
<3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体の製造方法>
本発明は、以下の反応スキーム(合成経路1−1)に示されるように、下記式(I)で表される化合物またはその塩(1,3−ジヒドロキシベンゼン誘導体)と、下記式(II)で表される化合物またはその塩とを、炭酸塩および銅塩の存在下、または水酸化物塩、炭酸塩および銅塩の存在下で反応させることを特徴とする、下記式(III)で表される化合物またはその塩(3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体)の製造方法(本発明方法)を提供する。このような本発明方法によれば、3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体を温和な条件下、満足できる収率で製造することができる。
【0086】
(合成経路1−1)
【0087】
【化18】

【0088】
上記式(I)において、R、RまたはRは水素原子、低級アルキル基、ヒドロキシ基または低級アルコキシ基を示す。
【0089】
また上記式(II)において、Rは水素原子、低級アルキル基、ニトロ基、アミノ基または低級アルキルアミノ基を示し、Rは水素原子または低級アルキル基を示し、Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、カルボキシル基、ニトロ基または−NRを示し、RおよびRは同一または異なって水素原子、ホルミル基、低級アルキルカルボニル基、低級アルケニルカルボニル基、低級シクロアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルケニルオキシカルボニル基、低級シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基またはアリールアルキルオキシカルボニル基を示し、Xはハロゲン原子、低級アルキルスルホニルオキシ基またはアリールスルホニルオキシ基を示す。
【0090】
上記式(III)において、R、R、R、R、RまたはRは上記式(I)および上記式(II)中の各定義と同一である。
【0091】
本発明方法の中でも、以下の反応スキーム(合成経路1−2)に示されるように、下記式(Ia)で表される化合物(レゾルシノール)またはその塩と、下記式(IIa)で表わされる化合物またはその塩を、炭酸塩および銅塩の存在下、または水酸化物塩、炭酸塩および銅塩の存在下で反応させることにより、下記式(IIIa)で表わされる化合物またはその塩(3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体)を製造する方法(上述した本発明方法a)が好ましい。
【0092】
(合成経路1−2)
【0093】
【化19】

【0094】
上記式(IIa)において、Rは水素原子、低級アルキル基、ニトロ基、アミノ基または低級アルキルアミノ基を示し、Rは水素原子または低級アルキル基を示し、Rは水素原子または低級アルキル基を示し、R10は水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級シクロアルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、低級アルケニルオキシ基、低級シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基またはアリールアルキルオキシ基を示し、Xはハロゲン原子、低級アルキルスルホニルオキシ基またはアリールスルホニルオキシ基を示す。
【0095】
また上記式(IIIa)において、R、R、RまたはR10は上記式(IIa)中の定義と同一である。上記式(IIIa)において、R、RおよびRが水素原子を示し、R10が低級アルキル基、アリール基、低級アルコキシ基またはアリールアルキルオキシ基を示すことが好ましい。また、上記式(IIIa)において、R、RおよびRが水素原子を示し、R10がメチル基、フェニル基、tert−ブトキシ基またはベンジルオキシ基を示すことがより好ましい。特に好ましくは、上記(IIIa)で表される化合物またはその塩は、
・8−アセトアミド−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン、
・8−ベンジルオキシカルボニルアミノ−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン、
・8−ベンゾイルアミノ−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オンおよび
・8−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン
からなる群から選ばれる化合物またはその塩である。
【0096】
本発明は、以下の反応スキーム(合成経路1−3)に示されるように、下記式(I)で表される化合物またはその塩(1,3−ジヒドロキシベンゼン誘導体)と、下記式(II)で表される化合物またはその塩とを、炭酸塩および銅塩の存在下、または水酸化物塩、炭酸塩および銅塩の存在下で反応させて、下記式(III)で表される化合物またはその塩を製造し、下記式(III)で表される化合物またはその塩を水酸化物塩と反応させて、下記式(IV)で表される化合物またはその塩に変換し、次いで下記式(IV)で表される化合物またはその塩を、酸と反応させることを特徴とする、下記式(III)で表される化合物またはその塩(3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体)の製造方法(本発明方法b)を提供する。このような本発明方法によれば、3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体を温和な条件下、満足できる収率で製造することができる。そして、下記式(II)で表される化合物またはその塩との反応において、上記水酸化物塩、炭酸塩および銅塩を用いることで、反応時の炭酸ガスの発泡を抑制できる。また、当該3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体を水酸化物塩と反応させて開環体である5−アセトアミド−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−安息香酸またはその塩に変換することで、不溶物である銅塩などの不純物をろ過操作により容易に除去することができ、次いで酸と反応させることにより、当該3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体を製造することができる。
【0097】
(合成経路1−3)
【0098】
【化20】

【0099】
上記式(I)において、R、RまたはRは水素原子、低級アルキル基、ヒドロキシ基または低級アルコキシ基を示す。
【0100】
また上記式(II)において、Rは水素原子、低級アルキル基、ニトロ基、アミノ基または低級アルキルアミノ基を示し、Rは水素原子または低級アルキル基を示し、Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、カルボキシル基、ニトロ基または−NRを示し、RおよびRは同一または異なって水素原子、ホルミル基、低級アルキルカルボニル基、低級アルケニルカルボニル基、低級シクロアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルケニルオキシカルボニル基、低級シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基またはアリールアルキルオキシカルボニル基を示し、Xはハロゲン原子、低級アルキルスルホニルオキシ基またはアリールスルホニルオキシ基を示す。
【0101】
上記式(III)において、R、R、R、R、RまたはRは上記式(I)および上記式(II)中の各定義と同一である。
【0102】
本発明方法bの中でも、以下の反応スキーム(合成経路1−4)に示されるように、下記式(Ia)で表される化合物(レゾルシノール)またはその塩と、下記式(IIa)で表わされる化合物またはその塩を、炭酸塩および銅塩の存在下、または水酸化物塩、炭酸塩および銅塩の存在下で反応させて、下記式(IIIa)で表わされる化合物またはその塩を製造し、下記式(IIIa)で表される化合物またはその塩を水酸化物塩と反応させて、下記式(IVa)で表される化合物またはその塩に変換し、次いで下記式(IVa)で表される化合物またはその塩を酸と反応させることを特徴とする、下記式(IIIa)で表される化合物またはその塩(3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体)を製造する方法(上述した本発明方法c)が好ましい。
【0103】
(合成経路1−4)
【0104】
【化21】

【0105】
上記式(IIa)において、Rは水素原子、低級アルキル基、ニトロ基、アミノ基または低級アルキルアミノ基を示し、Rは水素原子または低級アルキル基を示し、Rは水素原子または低級アルキル基を示し、R10は水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級シクロアルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、低級アルケニルオキシ基、低級シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基またはアリールアルキルオキシ基を示し、Xはハロゲン原子、低級アルキルスルホニルオキシ基またはアリールスルホニルオキシ基を示す。
【0106】
また上記式(IIIa)において、R、R、RまたはR10は上記式(IIa)中の定義と同一である。上記式(IIIa)において、R、RおよびRが水素原子を示し、R10が低級アルキル基、アリール基、低級アルコキシ基またはアリールアルキルオキシ基を示すことが好ましい。また、上記式(IIIa)において、R、RおよびRが水素原子を示し、R10がメチル基、フェニル基、tert−ブトキシ基またはベンジルオキシ基を示すことがより好ましい。特に好ましくは、上記(IIIa)で表される化合物またはその塩は、
・8−アセトアミド−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン、
・8−ベンジルオキシカルボニルアミノ−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン、
・8−ベンゾイルアミノ−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オンおよび
・8−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン
からなる群から選ばれる化合物またはその塩である。
【0107】
本発明方法、本発明方法a、本発明方法bおよび本発明方法cにおいて、「炭酸塩および銅塩の存在下」とは、炭酸塩およびそれが解離したイオンの少なくともいずれかと、銅塩およびそれが解離したイオンの少なくともいずれかが反応系中に存在していればよいことを意味する。原料が炭酸塩または銅塩である場合は、炭酸塩および銅塩の両方を試薬として使用してもよく、炭酸塩または銅塩のいずれか一つを試薬として使用してもよい。また、試薬である炭酸塩および銅塩を反応系中に存在させる場合、炭酸塩および銅塩の添加のタイミングを同時のみに限定するものではない。すなわち、反応系中に炭酸塩を添加後、銅塩を添加してもよく、反応系中に銅塩を添加後、炭酸塩を添加してもよく、または炭酸塩と銅塩を同時に添加してもよい。
【0108】
本発明方法、本発明方法a、本発明方法bおよび本発明方法cにおいて、「水酸化物塩、炭酸塩および銅塩の存在下」とは、水酸化物塩およびそれが解離したイオンの少なくともいずれかと、炭酸塩およびそれが解離したイオンの少なくともいずれかと、銅塩およびそれが解離したイオンの少なくともいずれかとが、反応系中に存在していればよいことを意味する。原料が水酸化物塩、炭酸塩または銅塩である場合は、水酸化物塩、炭酸塩および銅塩を試薬として使用してもよく、水酸化物塩、炭酸塩または銅塩の少なくともいずれか一つを試薬として使用してもよい。また、試薬である水酸化物塩、炭酸塩および銅塩を反応系中に存在させる場合、水酸化物塩、炭酸塩および銅塩の添加のタイミングを同時のみに限定するものではなく、また、試薬の添加の順序を限定するものでもない。
【0109】
本発明方法、本発明方法a、本発明方法bおよび本発明方法cにおいて使用する「炭酸塩」としては、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、炭酸銅、炭酸鉄または炭酸銀などが挙げられる。なお、炭酸塩は、1種のみを用いてもよいし、2種または3種を用いてもよい。また、炭酸塩の金属元素の価数は、特に制限されるものではないが、1〜3価、好ましくは1または2価である。
【0110】
本発明方法、本発明方法a、本発明方法bおよび本発明方法cにおいて使用する「銅塩」としては、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅などのハロゲン化銅、炭酸銅、酢酸銅、トリフルオロ酢酸銅などの有機酸銅、硝酸銅、硫酸銅などの無機酸銅、水酸化銅または酸化銅などが挙げられる。なお、銅塩は、一種のみを用いてもよいし、2種または3種を用いてもよい。また、銅塩の銅の価数は、特に制限されるものではないが、1〜3価、好ましくは1または2価である。
【0111】
本発明方法、本発明方法a、本発明方法bおよび本発明方法cにおける炭酸塩および銅塩の特に好ましい組合せとしては、炭酸塩が炭酸ナトリウムであり、銅塩がヨウ化銅である場合が挙げられる。
【0112】
本発明方法、本発明方法a、本発明方法bおよび本発明方法cにおいて使用する「水酸化物塩」としては、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化リチウムなどが挙げられる。なお、水酸化物塩は、1種のみを用いてもよいし、2種または3種を用いてもよい。また、水酸化物塩の金属元素の価数は、特に制限されるものではないが、1〜3価、好ましくは1または2価である。
【0113】
本発明方法、本発明方法a、本発明方法bおよび本発明方法cにおける水酸化物塩、炭酸塩および銅塩の特に好ましい組合せとしては、水酸化物塩が水酸化ナトリウムであり、炭酸塩が炭酸ナトリウムであり、銅塩がヨウ化銅である場合が挙げられる。
【0114】
本発明方法bおよび本発明方法cにおいて使用する「酸」としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンベンゼンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。なお、酸は、1種のみを用いてもよいし、2種または3種を用いてもよい。また、酸の価数は、特に制限されるものでないが、1〜3価、好ましくは1または2価である。
【0115】
本発明方法、本発明方法a、本発明方法bおよび本発明方法cにおける炭酸塩の使用モル比は、上記式(II)または式(IIa)で表わされる化合物またはその塩1モルに対し、1.00〜10.0モル、好ましくは2.0〜5.0モル、より好ましくは3.0〜3.5モルである。
【0116】
また本発明方法、本発明方法a、本発明方法bおよび本発明方法cにおける銅塩の使用モル比は、上記式(II)または式(IIa)で表わされる化合物またはその塩1モルに対し、0.01〜5.0モル、好ましくは0.1〜1.0モル、より好ましくは0.2〜0.5モルである。
【0117】
本発明方法、本発明方法a、本発明方法bおよび本発明方法cにおける水酸化物塩の使用モル比は、上記式(II)または式(IIa)で表わされる化合物またはその塩1モルに対し、0.30〜5.00モル、好ましくは0.5〜2.0モル、より好ましくは0.8〜1.2モルである。
【0118】
本発明方法bおよび本発明方法cにおける酸の使用モル比は、上記式(II)または式(IIa)で表わされる化合物またはその塩1モルに対し、0.80〜20.0モル、好ましくは3.0〜15.0モル、より好ましくは8.0〜12.0モルである。
【0119】
本発明方法、本発明方法a、本発明方法bおよび本発明方法cにおいて使用する反応溶媒としては、水および有機溶媒の少なくともいずれかが挙げられる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、第三級ブタノールなどのアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。また、これらを混合溶媒として使用することもできる。好ましい反応溶媒としては、水、アルコール溶媒または水とアルコール溶媒との混合溶媒が挙げられ、より好ましい反応溶媒としては、水、メタノールまたは水とメタノールとの混合溶媒が挙げられる。
【0120】
本発明方法、本発明方法a、本発明方法bおよび本発明方法cの反応時間は、30分間から12時間であればよく、好ましくは1時間から8時間である。
【0121】
本発明方法、本発明方法a、本発明方法bおよび本発明方法cの反応温度は、−78℃から溶媒の沸点の範囲、好ましくは、室温から100℃の範囲、より好ましくは25℃から70℃の範囲である。
【0122】
また、本発明方法aにおいて、上記一般式(IV)で表される化合物またはその塩に変換後、不溶物をろ過し、次いで上記一般式(IV)で表される化合物またはその塩を、酸と反応させることが好ましい。
【0123】
また、本発明方法cにおいて、上記一般式(IVa)で表される化合物またはその塩に変換後、不溶物をろ過し、次いで上記一般式(IVa)で表される化合物またはその塩を、酸と反応させることが好ましい。
【0124】
なお、本発明方法aおよび本発明方法cにおいて原料となる上記式(IIa)で表わされる化合物は、たとえば、以下のような反応スキームに示される合成経路(合成経路2)に従って製造することができる。
【0125】
なお、本発明方法aおよび本発明方法cにおいて原料となる上記式(IIa)で表わされる化合物は、たとえば、以下のような反応スキームに示される合成経路(合成経路2)に従って製造することができる。
【0126】
(合成経路2)
【0127】
【化22】

【0128】
すなわち、上記式(IIb)で表わされる化合物と、上記式(VIa)で表わされる化合物または上記式(VIb)で表わされる化合物とを水酸化ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウムなどの塩基存在下、室温で2時間から12時間反応させることにより上記式(IIa)で表される化合物を得ることができる。なお、上記反応スキーム中に示されたR、R、R、R10およびXの定義は、上記式(IIa)の定義と同一である。
【0129】
上記合成経路2で使用する反応溶媒としては、水および有機溶媒の少なくともいずれかが挙げられる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、第三級ブタノールなどのアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。また、これらを混合溶媒として使用することもできる。特に好ましい反応溶媒としては、水、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル系溶媒が挙げられる。
【0130】
また、上記合成経路2において原料となる上記式(IIb)で表わされる化合物は、たとえば、以下のような反応スキームに示される合成経路(合成経路3)に従って製造することができる。
【0131】
(合成経路3)
【0132】
【化23】

【0133】
すなわち、上記式(IIc)で表わされる化合物と、ハロゲン化剤(上記式(VII)中、XはCl、BrまたはIである)を0℃から50℃で1時間から5時間反応させることにより上記式(IIb)で表わされる化合物を得ることができる。なお、上記反応スキーム中に示されたR、RおよびRの定義は、上記式(IIa)の定義と同一である。
【0134】
上記合成経路3で使用する反応溶媒としては、水および有機溶媒の少なくともいずれかが挙げられる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、第三級ブタノールなどのアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。また、これらを混合溶媒として使用することもできる。特に好ましい反応溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶媒が挙げられる。
【0135】
<3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体>
本発明はまた、下記式(IIIa)で表される化合物またはその塩(3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体)についても提供する。このような本発明の3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体は、新規なものであって、グルココルチコイド受容体結合活性を有する1,2−ジヒドロキノリン誘導体の製造中間体として有用である。また、本発明の3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体は、選択的エストロゲンβ受容体アゴニストとしても有用である。
【0136】
【化24】

【0137】
上記式(IIIa)において、R、R、RまたはR10は、上述と同様である。上記式(IIIa)において、R、RおよびRが水素原子を示し、R10が低級アルキル基、アリール基、低級アルコキシ基またはアリールアルキルオキシ基を示すことが好ましい。また、上記式(IIIa)において、R、RおよびRが水素原子を示し、R10がメチル基、フェニル基、tert−ブトキシ基またはベンジルオキシ基を示すことがより好ましい。
【0138】
本発明の3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体の特に好ましい例としては、以下の群から選ばれる化合物またはその塩が挙げられる。
【0139】
・8−アセトアミド−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン。
・8−ベンジルオキシカルボニルアミノ−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン。
【0140】
・8−ベンゾイルアミノ−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン。
・8−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン。
【0141】
・3−ヒドロキシ−10−ニトロ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン。
・3−ヒドロキシ−9−メチル−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン。
【0142】
・8−カルボキシル−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン。
・8−ヨード−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン。
【0143】
・8−ブロモ−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン。
上記式(IIIa)で表わされる化合物、ならびに、上述した本発明方法、本発明方法a、本発明方法bおよび本発明方法cにおいて使用する原料、試薬は、酸または塩基と「塩」を形成してもよい。具体例として、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸との塩、炭酸、酢酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、グルコヘプト酸、グルクロン酸、テレフタル酸、メタンスルホン酸、乳酸、馬尿酸、1,2−エタンジスルホン酸、イセチオン酸、ラクトビオン酸、オレイン酸、パモ酸、ポリガラクツロン酸、ステアリン酸、タンニン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、硫酸ラウリルエステル、硫酸メチル、ナフタレンスルホン酸、スルホサリチル酸などの有機酸との塩、臭化メチル、ヨウ化メチルなどの四級アンモニウム塩、臭素イオン、塩素イオン、ヨウ素イオンなどのハロゲンイオンとの塩、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属との塩、銅、鉄、亜鉛などとの金属塩、アンモニアとの塩、トリエチレンジアミン、2−アミノエタノール、2,2−イミノビス(エタノール)、1−デオキシ−1−(メチルアミノ)−2−D−ソルビトール、2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、プロカインまたはN,N−ビス(フェニルメチル)−1,2−エタンジアミンなどの有機アミンとの塩などが挙げられる。
【0144】
また、上記式(IIIa)で表わされる化合物、ならびに、上述した本発明方法、本発明方法a、本発明方法bおよび本発明方法cにおいて使用する原料、試薬は、水和物または溶媒和物の形態をとっていてもよい。
【0145】
上記式(IIIa)で表わされる化合物、ならびに、上述した本発明方法、本発明方法a、本発明方法bおよび本発明方法cにおいて使用する原料、試薬に幾何異性体または光学異性体が存在する場合は、その異性体も本発明の範囲に含まれる。
【0146】
上記式(IIIa)で表わされる化合物、ならびに、上述した本発明方法、本発明方法a、本発明方法bおよび本発明方法cにおいて使用する原料、試薬にプロトン互変異性が存在する場合は、その互変異性体も本発明に含まれる。
【0147】
また、上記式(IIIa)で表わされる化合物、ならびに、上述した本発明方法、本発明方法a、本発明方法bおよび本発明方法cにおいて使用する原料、試薬、それらの水和物または溶媒和物は結晶であってもよく、該結晶に結晶多形および結晶多形群(結晶多形システム)が存在する場合には、それらの結晶多形体および結晶多形群(結晶多形システム)も本発明に含まれる。ここで、結晶多形群(結晶多形システム)とは、それら結晶の製造、晶出、保存等の条件および状態(尚、本状態には製剤化した状態も含む)により、結晶形が種々変化する場合の各段階における結晶形およびその過程全体を意味する。
【0148】
本発明の3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体は、その製造方法について特に制限されるものではないが、上述した本発明方法aまたは本発明方法cにて好適に製造することができる。本発明の3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体は、合成経路1−2として示した本発明方法aおよび合成経路1−4として示した本発明方法c以外の方法でも製造できると考えられ、このような製造方法としては、たとえば以下の反応スキーム(合成経路1−3)に示すような方法を挙げることができる。
【0149】
【化25】

【0150】
すなわち、式(IIIb)で表わされる化合物(上記式(III)のうち、R、R、R、RおよびRがH、RがCOOHである化合物)をジフェニルホスホリルアジド(DPPA)などの試薬と反応させ、さらにtert−ブチルアルコールなどの式(IV)で表わされるアルコールと反応させることにより、式(IIIa−1)で表わされる化合物(上述した式(IIIa)のうち、R7およびRがHである化合物)を得ることができる。なお、上記合成経路1−3におけるRおよびR10は、上述した式(IIa)の定義と同一である。
【0151】
合成経路1−3で使用する反応溶媒としては、水および有機溶媒の少なくともいずれかが挙げられる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、第三級ブタノールなどのアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。また、これらを混合溶媒として使用することもできる。特に好ましい反応溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒が挙げられる。
【0152】
また、本発明の3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体を製造する方法として、たとえば以下の反応スキーム(合成経路1−4)に示すような方法も挙げられる。
【0153】
(合成経路1−4)
【0154】
【化26】

【0155】
すなわち、式(IIIc)で表わされる化合物(上記式(III)のうち、R、R、R、RおよびRがH、RがHal(ハロゲン原子を意味する)である化合物)と、アセトアミドなどの式(V)で表わされるアミド誘導体をヨウ化銅、グリシンおよびリン酸三カリウムの存在下、アミドカップリング反応に付すことにより、式(IIIa−2)で表わされる化合物(上記式(IIIa−1)のうちRがHである化合物)を得ることができる。なお、上記合成経路1−4におけるR10は、上述した式(IIa)の定義と同一である。
【0156】
合成経路1−4で使用する反応溶媒としては、水および有機溶媒の少なくともいずれかが挙げられる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、第三級ブタノールなどのアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。また、これらを混合溶媒として使用することもできる。特に好ましい反応溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶媒が挙げられる。
【0157】
なお、上記式(IIIa−2)で表わされる化合物は、Tetrahedron Letters,45,2004,2311−2315に開示された方法に従って合成することもできる。
【0158】
以下に、本発明の製造例を示す。なお、これらの例示は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0159】
[製造例]
<参考例1:5−アミノ−2−ブロモ安息香酸(参考化合物1)>
3−アミノ安息香酸(3.00g、21.9mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(18.0mL)溶液に、5℃以下でN,N−ジメチルホルムアミド(9.00mL)とN−ブロモコハク酸イミド(4.09g、23.0mmol)の混合溶液を滴下した。5℃以下で1時間撹拌した後に水(60.0mL)を加えて5℃以下で12時間撹拌し、ろ過した。ろ取物を更に水(5.00mL)で洗浄後、乾燥して、下記表1に示すような標記参考化合物1(3.68g、収率78%)を得た。
【0160】
【表1】

【0161】
<参考例2−1:5−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−2−ブロモ安息香酸(参考化合物2−1)>
5−アミノ−2−ブロモ安息香酸(参考化合物1、25.8g、0.119mol)と水(78.0mL)の混合物に4M 水酸化ナトリウム水溶液(30.0mL、0.120mol)、二炭酸ジ−tert−ブチル(36.0mL、0.157mol)を加え、室温で40時間撹拌した。反応液を氷冷し、1M 塩酸(0.120L、0.120mol)を加えて中和し、酢酸エチル(0.400L)、水(0.250L)を加えて抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液(0.200L)で洗浄後、濃縮し、得られた固体を酢酸エチルとへキサンの混合溶媒(酢酸エチル:ヘキサン=100:1、0.200L)で洗浄後、乾燥して、下記表2に示すような標記参考化合物2−1(34.5g、収率92%)を得た。
【0162】
【表2】

【0163】
<参考例2−2:5−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−ブロモ安息香酸(参考化合物2−2)>
5−アミノ−2−ブロモ安息香酸(参考化合物1、3.00g、13.9mmol)と水(35.0mL)の混合物に4M 水酸化ナトリウム水溶液(3.65mL、14.6mmol)、クロロギ酸ベンジル(3.95mL、27.8mmol)を加え、室温で18時間撹拌した。反応液を氷冷し、6M 塩酸(2.50mL、15.0mmol)を加えて中和しろ過した。ろ取物を水(10.0mL)、トルエン(5.00mL)で洗浄後、乾燥して、下記表3に示すような標記参考化合物2−2(4.29g、収率88%)を得た。
【0164】
【表3】

【0165】
<参考例2−3:5−ベンゾイルアミノ−2−ブロモ安息香酸(参考化合物2−3)>
5−アミノ−2−ブロモ安息香酸(3.00g、13.9mmol)と水(35.0mL)の混合物に4M 水酸化ナトリウム水溶液(3.65mL、14.6mmol)、無水安息香酸(4.73g、20.9mmol)を加え、室温で18時間撹拌した。反応液を氷冷し、6M 塩酸(2.50mL、15.0mmol)を加えて中和しろ過した。ろ取物を水(10.0mL)、トルエン(5.00mL)で洗浄後、乾燥して、下記表4に示すような標記参考化合物2−3(3.80g、収率85%)を得た。
【0166】
【表4】

【0167】
<参考例2−4:5−アセトアミド−2−ブロモ安息香酸・一水和物(参考化合物2−4)>
5−アミノ−2−ブロモ安息香酸(参考化合物1、30.5g、0.141mol)と水(0.360L)の混合物に氷冷下、4M 水酸化ナトリウム水溶液(37.1mL、0.148mol)、無水酢酸(20.5mL、0.217mol)を加え室温で4時間撹拌した。反応液を再度氷冷し、6M 塩酸(26.0mL、0.156mol)を加えて中和しろ過した。ろ取物を更に水(20mL)で洗浄後、乾燥して、下記表5に示すような標記参考化合物2−4(38.1g、収率98%)を得た。
【0168】
【表5】

【0169】
<参考例3:5−アセトアミド−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−安息香酸ナトリウム(参考化合物3)>
8−アセトアミド−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン(参考化合物1−1、0.128g、0.475mmol)に水(5.00mL)、4M 水酸化ナトリウム水溶液(0.119mL、0.476mmol)を加えた。60℃で3時間加熱撹拌した後に反応液をろ過しろ取物を乾燥して、下記表6に示すような標記参考化合物3(0.081g、収率55%)を得た。
【0170】
【表6】

【0171】
<実施例1:8−アセトアミド−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン(化合物1−1)>
5−アセトアミド−2−ブロモ安息香酸・一水和物(参考化合物2−4、30.0g、0.109mol)、レゾルシノール(38.4g、0.349mol)、炭酸ナトリウム(40.7g、0.384mol)の混合物に水(300mL)を加え、50℃で加熱撹拌した。50℃でヨウ化銅(6.64g、0.035mol)を加え、5時間加熱撹拌した。反応液を放冷後、ろ過し、ろ取物を更に水(300mL)で洗浄後、乾燥して、下記表7に示すような標記化合物1−1(23.5g、収率80%)を得た。
【0172】
【表7】

【0173】
<実施例2:8−アセトアミド−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン(化合物1−1)>
5−アセトアミド−2−ブロモ安息香酸(参考化合物2−4、1.00g、3.88mmol)、レゾルシノール(1.28g、11.6mmol)、水(10.0mL)の混合物に4M 水酸化ナトリウム水溶液(0.969mL、3.88mmol)を加え、溶解確認後、炭酸ナトリウム(0.945g、8.92mmol)を加え、50℃で加熱撹拌した。続いて50℃でヨウ化銅(0.221g、1.16mmol)を加え、8時間加熱撹拌した後に反応液をろ過し、ろ取物を更に水(10.0mL)で洗浄後、乾燥して、上記表7に示したような標記化合物1−1(0.856g、収率82%)を得た。

<実施例3:8−アセトアミド−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン(化合物1−1)>
水(1.50L)、レゾルシノール(192g、1.74mol)、5−アセトアミド−2−ブロモ安息香酸(参考化合物2−4、150g、0.581mol)の混合物に4M 水酸化ナトリウム水溶液(145mL、0.580mol)を加え、溶解確認後、炭酸ナトリウム(142g、1.34mol)を加え、50℃で加熱撹拌した。続いて50℃でヨウ化銅(33.2g、0.174mol)を加え、15時間加熱撹拌し、反応液に4M 水酸化ナトリウム水溶液(750mL)、水(3.00L)を加え、50℃で3時間加熱撹拌した後にろ過し不溶物を除去した。氷冷下、ろ液にアセトニトリル(450mL)、12M 塩酸(519mL)を加えて1時間撹拌した後に、析出固体をろ過し、ろ取物を更に水(750mL)で洗浄後、乾燥して、上記表7に示したような標記化合物1−1(117g、収率75%)を得た。

<実施例4:8−アセトアミド−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン(化合物1−1)>
5−アセトアミド−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−安息香酸ナトリウム(参考化合物3、0.435g、1.41mmol)に水(15mL)、6M 塩酸(0.704mL、4.22mmol)を加えた。室温で1時間30分撹拌した後に反応液をろ過し、ろ取物を更に水(7.50mL)で洗浄後、乾燥して、上記表7に示したような標記化合物1−1(0.319g、収率84%)を得た。
【0174】
以下、参考化合物2−2、2−3、2−ブロモ−5−フルオロ安息香酸(市販化合物)、2−1、2−ブロモ−3−ニトロ安息香酸(市販化合物)、2−ブロモ−4−メチル安息香酸(市販化合物)、2−ブロモ安息香酸(市販化合物)、4−ブロモイソフタル酸(市販化合物)、2−ブロモ−5−ヨード安息香酸(市販化合物)、2,5−ジブロモ安息香酸(市販化合物)または2−ブロモ−5−ニトロ安息香酸(市販化合物)を使用し、化合物1−1の製造方法に準じて(実施例1に記載の方法)、化合物1−2、1−3、1−4、1−5、1−6、1−7、1−8、1−9、1−10、1−11および1−12を得た。
【0175】
【表8】

【0176】
【表9】

【0177】
【表10】

【0178】
【表11】

【0179】
【表12】

【0180】
【表13】

【0181】
<比較例1:8−アセトアミド−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン(化合物1−1)>
非特許文献1に記載の方法で、上記表6に示した化合物1−1を製造した(比較例1)。5−アセトアミド−2−ブロモ安息香酸・一水和物(参考化合物2−4、0.221g、0.801mmol)、レゾルシノール(0.179g、1.63mmol)、水酸化ナトリウム(0.075g、1.88mmol)に水(1.00mL)を加え、100℃で加熱撹拌した。さらに5%硫酸銅水溶液(0.337mL、0.106mmol)を加え、1時間加熱撹拌した。反応液を放冷後、冷却し、酢酸(0.112mL、1.96mmol)で中和し、ろ過した。ろ取物を更に水(3.00mL)で洗浄後、乾燥して、標記化合物1−1(0.084g、収率39%)を得た。
【0182】
<比較例2:8−アセトアミド−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン(化合物1−1)>
非特許文献1に記載の方法で、反応温度を50℃にした条件で、上記表6に示した化合物1−1を製造した(比較例2)。5−アセトアミド−2−ブロモ安息香酸・一水和物(参考化合物2−4、0.200g、0.724mmol)、レゾルシノール(0.160g、1.45mmol)に4M 水酸化ナトリウム水溶液(0.398mL、1.59mmol)、水(0.600mL)を加え、50℃で加熱撹拌した。さらに10%硫酸銅水溶液(0.116mL、0.073mmol)を加え、5時間加熱撹拌した。反応液を放冷後、冷却し、6M 塩酸(0.267mL、1.60mmol)で中和し、ろ過した。ろ取物を更に水(5.00mL)、エタノール(5.00mL)で洗浄後、乾燥して、標記化合物1−1(0.067g、収率34%)を得た。
【0183】
参考化合物2−4、2−2、2−3、2−1、2−ブロモ−3−ニトロ安息香酸(市販化合物)または2−ブロモ−5−ニトロ安息香酸(市販化合物)を使用し、比較例1の製造方法に準じて、化合物1−2、1−3、1−5、1−6および1−12を得た。
【0184】
化合物1−1、1−2、1−3、1−5、1−6および1−12の本発明の製造方法(実施例1に記載の方法)を用いた場合の収率(%)と非特許文献1記載の製造方法(比較例1に記載の方法)を用いた場合の収率(%)を表14に示す。
【0185】
【表14】

【産業上の利用可能性】
【0186】
本発明によれば、グルココルチコイド受容体結合活性を有する1,2−ジヒドロキノリン誘導体の製造中間体や選択的エストロゲンβ受容体アゴニストとして有用な、3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン誘導体を従来知られた製造方法よりも温和な条件下、満足できる収率で製造することができ、工業的に有用である。また、本発明方法には、炭酸ナトリウムやヨウ化銅などの廉価な試薬を適用することが可能であり、工業的製造を実施する上で、経済的である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)
【化1】

[上記式(I)中、R、RまたはRは水素原子、低級アルキル基、ヒドロキシ基または低級アルコキシ基を示す。]
で表される化合物またはその塩と、下記式(II)
【化2】

[上記式(II)中、Rは水素原子、低級アルキル基、ニトロ基、アミノ基または低級アルキルアミノ基を示し;Rは水素原子または低級アルキル基を示し;Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、カルボキシル基、ニトロ基または−NRを示し;RおよびRは同一または異なって水素原子、ホルミル基、低級アルキルカルボニル基、低級アルケニルカルボニル基、低級シクロアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルケニルオキシカルボニル基、低級シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基またはアリールアルキルオキシカルボニル基を示し;Xはハロゲン原子、低級アルキルスルホニルオキシ基またはアリールスルホニルオキシ基を示す。]
で表される化合物またはその塩を反応させて、下記式(III)
【化3】

[上記式(III)中、R、R、R、R、RまたはRは式(I)および式(II)中の各定義と同一]
で表される化合物またはその塩を製造する方法であって、
上記式(I)で表される化合物またはその塩と、上記式(II)で表される化合物またはその塩とを、炭酸塩および銅塩の存在下、または水酸化物塩、炭酸塩および銅塩の存在下で反応させることを特徴とする、上記式(III)で表される化合物またはその塩の製造方法。
【請求項2】
下記式(Ia)
【化4】

で表される化合物またはその塩と、下記式(IIa)
【化5】

[上記式(IIa)中、Rは水素原子、低級アルキル基、ニトロ基、アミノ基または低級アルキルアミノ基を示し;Rは水素原子または低級アルキル基を示し;Rは水素原子または低級アルキル基を示し;R10は水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級シクロアルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、低級アルケニルオキシ基、低級シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基またはアリールアルキルオキシ基を示し;Xはハロゲン原子、低級アルキルスルホニルオキシ基またはアリールスルホニルオキシ基を示す。]
で表される化合物またはその塩を反応させて、下記式(IIIa)
【化6】

[上記式(IIIa)中、R、R、RまたはR10は式(IIa)中の定義と同一]
で表される化合物またはその塩を製造する方法であって、
炭酸塩および銅塩の存在下、または水酸化物塩、炭酸塩および銅塩の存在下で反応させることを特徴とする、上記式(IIIa)で表される化合物またはその塩の製造方法。
【請求項3】
上記式(IIIa)中、R、RおよびRが水素原子を示し、R10が低級アルキル基、アリール基、低級アルコキシ基またはアリールアルキルオキシ基を示す請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
上記式(IIIa)中、R、RおよびRが水素原子を示し、R10がメチル基、フェニル基、tert−ブトキシ基またはベンジルオキシ基を示す請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
上記式(IIIa)で表される化合物またはその塩が、
8−アセトアミド−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン、
8−ベンジルオキシカルボニルアミノ−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン、
8−ベンゾイルアミノ−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オンおよび
8−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オンからなる群から選ばれる化合物またはその塩である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項6】
下記式(I)
【化7】

[上記式(I)中、R、RまたはRは水素原子、低級アルキル基、ヒドロキシ基または低級アルコキシ基を示す。]
で表される化合物またはその塩と、下記式(II)
【化8】

[上記式(II)中、Rは水素原子、低級アルキル基、ニトロ基、アミノ基または低級アルキルアミノ基を示し;Rは水素原子または低級アルキル基を示し;Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、カルボキシル基、ニトロ基または−NRを示し;RおよびRは同一または異なって水素原子、ホルミル基、低級アルキルカルボニル基、低級アルケニルカルボニル基、低級シクロアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルケニルオキシカルボニル基、低級シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基またはアリールアルキルオキシカルボニル基を示し;Xはハロゲン原子、低級アルキルスルホニルオキシ基またはアリールスルホニルオキシ基を示す。]
で表される化合物またはその塩とを、炭酸塩および銅塩の存在下、または水酸化物塩、炭酸塩および銅塩の存在下で反応させて、
下記式(III)
【化9】

[上記式(III)中、R、R、R、R、RまたはRは式(I)および式(II)中の各定義と同一]
で表される化合物またはその塩を製造し、上記式(III)で表される化合物またはその塩を水酸化物塩と反応させて、下記式(IV)
【化10】

[上記式(IV)中、R、R、R、R、RまたはRは式(I)および式(II)中の各定義と同一]
で表される化合物またはその塩に変換し、次いで上記式(IV)で表される化合物またはその塩を、酸と反応させることを特徴とする、下記式(III)
【化11】

[上記式(III)中、R、R、R、R、RまたはRは式(I)および式(II)中の各定義と同一]
で表される化合物またはその塩の製造方法。
【請求項7】
下記式(Ia)
【化12】

で表される化合物またはその塩と、下記式(IIa)
【化13】

[上記式(IIa)中、Rは水素原子、低級アルキル基、ニトロ基、アミノ基または低級アルキルアミノ基を示し;Rは水素原子または低級アルキル基を示し;Rは水素原子または低級アルキル基を示し;R10は水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級シクロアルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、低級アルケニルオキシ基、低級シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基またはアリールアルキルオキシ基を示し;Xはハロゲン原子、低級アルキルスルホニルオキシ基またはアリールスルホニルオキシ基を示す。]
で表される化合物またはその塩とを、炭酸塩および銅塩の存在下、または水酸化物塩、炭酸塩および銅塩の存在下で反応させて、
下記式(IIIa)
【化14】

[上記式(IIIa)中、R、R、RまたはR10は式(IIa)中の定義と同一]
で表される化合物またはその塩を製造し、上記式(IIIa)で表される化合物またはその塩を水酸化物塩と反応させて、下記式(IVa)
【化15】

[上記式(IVa)中、R、R、RまたはR10は式(IIa)中の定義と同一]
で表される化合物またはその塩に変換し、次いで上記式(IVa)で表される化合物またはその塩を酸と反応させることを特徴とする、下記式(IIIa)
【化16】

[上記式(IIIa)中、R、R、RまたはR10は式(IIa)中の定義と同一]
で表される化合物またはその塩の製造方法。
【請求項8】
上記式(IIIa)中、R、RおよびRが水素原子を示し、R10が低級アルキル基、アリール基、低級アルコキシ基またはアリールアルキルオキシ基を示す、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
上記式(IIIa)中、R、RおよびRが水素原子を示し、R10がメチル基、フェニル基、tert−ブトキシ基またはベンジルオキシ基を示す、請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
上記式(IIIa)で表される化合物またはその塩が、
8−アセトアミド−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン、
8−ベンジルオキシカルボニルアミノ−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン、
8−ベンゾイルアミノ−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オンおよび
8−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オンからなる群から選ばれる化合物またはその塩である、請求項7に記載の製造方法。
【請求項11】
炭酸塩が炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、炭酸銅、炭酸鉄および炭酸銀からなる群から選ばれる少なくともいずれかである、請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
銅塩が塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、炭酸銅、酢酸銅、トリフルオロ酢酸銅、硝酸銅、硫酸銅、水酸化銅および酸化銅からなる群から選ばれる少なくともいずれかである、請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
炭酸塩が炭酸ナトリウム、銅塩がヨウ化銅である、請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
水酸化物塩が水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選ばれる少なくともいずれかである、請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項15】
水酸化物塩が水酸化ナトリウム、炭酸塩が炭酸ナトリウム、銅塩がヨウ化銅である、請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項16】
酸が塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンベンゼンスルホン酸、酢酸およびトリフルオロ酢酸からなる群から選ばれる少なくともいずれかである、請求項6〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項17】
下記式(IIIa)
【化17】

[上記式(IIIa)中、Rは水素原子、低級アルキル基、ニトロ基、アミノ基または低級アルキルアミノ基を示し;Rは水素原子または低級アルキル基を示し;Rは水素原子または低級アルキル基を示し;R10は水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級シクロアルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、低級アルケニルオキシ基、低級シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基またはアリールアルキルオキシ基を示す。]
で表される化合物またはその塩。
【請求項18】
上記式(IIIa)中、R、RおよびRが水素原子を示し、R10が低級アルキル基、アリール基、低級アルコキシ基またはアリールアルキルオキシ基である請求項17に記載の化合物またはその塩。
【請求項19】
8−アセトアミド−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン、
8−ベンジルオキシカルボニルアミノ−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン、
8−ベンゾイルアミノ−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン、
8−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン、
3−ヒドロキシ−10−ニトロ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン、
3−ヒドロキシ−9−メチル−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン、
8−カルボキシル−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン、
8−ヨード−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オンおよび
8−ブロモ−3−ヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オンからなる群から選ばれる化合物またはその塩。

【公開番号】特開2012−180345(P2012−180345A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−24721(P2012−24721)
【出願日】平成24年2月8日(2012.2.8)
【出願人】(000177634)参天製薬株式会社 (177)
【Fターム(参考)】