説明

3−ヒドロキシ脂肪酸組成物

【課題】可溶化剤その他、プラスチック改質剤等として有用な、環境にやさしい、非石化資源由来の組成物を提供。
【解決手段】複数種の3―ヒドロキシ脂肪酸、該脂肪酸の2量体、3量体エステル結合物を含む組成物を提供する。微生物等の生産するポリヒドロキシアルカン酸などより調製できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境にやさしい、非石化資源由来の組成物に関する。本組成物は可溶化剤その他、プラスチック改質剤等として有用である。
【背景技術】
【0002】
高分子材料は多くの分野で用いられているが、一般には単独で用いられることは少なく、各種の添加剤を加えた組成物として用いられている。
【0003】
例えば熱硬化性樹脂として知られているエポキシ樹脂は一般的に硬くて脆いという性質も有し、硬化時や使用時の応力歪みや熱衝撃によってクラックを生ずるという欠点がある。エポキシ樹脂の強靱化、可とう性やゴム弾性の付与、また、低応力化が望まれる。また、接着性、塗装等の密着性改善の目的で改質剤を添加することが知られている。
【0004】
熱可塑性樹脂であるポリカーボネート樹脂は引張強度、曲げ強度、衝撃強度等の機械的強度や耐熱性等に優れているが、低温耐衝撃性、耐溶剤性、流動性等を改良するために水素化(スチレン−イソプレン−スチレン)ブロック共重合体を配合した樹脂組成物(特許文献1等)、アクリル系ゴムを配合した樹脂組成物(特許文献2等)等が提案されている。
【0005】
さらに、熱可塑性樹脂であるポリオレフィン系樹脂は多くの産業分野で用いられている。ところがポリオレフィン樹脂は改質を行なわないと塗装性等に問題が有ることが知られており、実際には、水素添加したポリジエンポリオール等を添加することで改質を行ない、この問題の改善を図っている(特許文献3等)。
【0006】
また、熱可塑性エラストマーの主要用途として、例えば水素化(スチレン−イソプレン−スチレン)ブロック共重合体等は粘着剤として用いられているが、これには粘着性を発現する目的で粘着性付与剤等が添加されている(特許文献4等)。
【0007】
上記に記載の高分子化合物の改質剤の多くは、石油等の石化原料由来である。
【0008】
他方、近年、非分解性のプラスチックに替わる生分解性のプラスチックが注目されている。一般的に生分解性プラスチックは、(1)ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)等のポリヒドロキシアルカノエートといった微生物生産系脂肪族ポリエステル、(2)ポリ乳酸やポリカプロラクトン等の化学合成系脂肪族ポリエステル、(3)澱粉や酢酸セルロース等の天然高分子物といった、3種類に大別される。これら生分解性プラスチックにも多様な添化剤が用いられる。例えば、ポリ乳酸は、透明性には優れるものの堅く更に加工性に問題があり乳酸系ポリエステルと可塑剤などが用いられる(特許文献5等)。また、天然高分子物は非熱可塑性であることや耐水性に劣るといった問題があり、加工澱粉などの使用が提案されている(特許文献6等)。
【0009】
同様に、脂肪族ポリエステルの問題として、透明性や加熱時の分解がある。
【0010】
一般的に樹脂の溶融強度を改善するためには、樹脂を高粘度化することが有効であり、そのための方法として、化学的架橋性を有する物質の添加や、無機物の添加等は良く知られている。脂肪族ポリエステルに化学的架橋性を有する物質を適用する例としては、イソシアネート化合物等(特許文献7)の添加が代表的である。また、無機物添加の例としては、例えば脂肪族ポリエステルとポリカプロラクトンの混合物に無機充填剤(タルク)等を混合し、溶融強度を増大させ、溶融成形時の加工性を向上させる(特許文献8、9)といったものや、分散しにくいフィラーを分散させるために脂肪族ポリエステル中にスルホン酸金属塩を共重合させる方法等(特許文献10)が知られている。しかしながら、特許文献8、9記載の方法では、場合によって樹脂同士に相溶性が無く、相溶化剤の必要性や、透明性に問題があり、無機物の添加量も樹脂100部に対して約100〜900部と多量のため、生分解後の残存物が多量になることや、焼却処理をした場合にも炉内に多量の無機残存物が発生するという問題がある。また、特許文献10に記載の方法では確かに微量の添加剤の分散性が向上し、種々の特性が期待できるが、工程が増加することや、もしポリヒドロキシアルカノエートに何らかのセグメントを化学的に共重合させると、本来の天然物由来という利点を喪失し好ましくない。
【特許文献1】特開昭58−145757号公報
【特許文献2】特開昭56−143239号公報
【特許文献3】特公昭53−31662号公報
【特許文献4】特開平10−212390号公報
【特許文献5】特開2004−143268号公報
【特許文献6】特表2001−509525号公報
【特許文献7】特開平10−46013号公報
【特許文献8】特開2001−172487号公報
【特許文献9】特開平11−349795号公報
【特許文献10】特開2001−323052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、樹脂又は化合物に対する改質剤としての諸特性を保持したまま優れたハンドリング性を有する組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、上記の様な種々の問題を解決するための組成物を提供する。即ち、本発明の組成物は、3種類以上の3-ヒドロキシ脂肪酸とそれら脂肪酸同士のエステル結合によって重合したダイマーを含む組成物であり、具体的には、下記一般式[1−1]、[1−2]、[2−1]、[2−2]、[3−1]、又は[3−2]で表される化合物を合計で重量換算で10%以上含み、かつ、一般式[1−1]又は[1−2]で表される成分のnが3種類以上であり、一般式[2−1]、又は[2−2]で示される化合物の総和量が一般式[1−1]、[1−2]、[2−1]、[2−2]、[3−1]、又は[3−2]で示される化合物の総量の1%以上である組成物である。
【0013】
【化1】

【0014】
【化2】


(式[1−1]及び[1−2]中、R1は、(CH2)nCH3、(CH2)o(CH=CH)(CH2)pCH3又は(CH2)q(CH=CH)(CH2)r(CH=CH)(CH2)tCH3 を示し、nは0から12の偶数を、o及びpはその合計が0から10の偶数になるような整数を、q、r、tはこれらの合計が0から8の偶数になるような整数を示す。XはH、CH3、C2H5、又はC3H7を示す)

【0015】
【化3】

【0016】
【化4】


(式[2−1]及び[2−2]中、R1、R2は独立して、(CH2)nCH3、(CH2)o(CH=CH)(CH2)pCH3又は(CH2)q(CH=CH)(CH2)r(CH=CH)(CH2)tCH3 を示し、nは0から12の偶数を、o及びpはその合計が0から10の偶数になるような整数を、q、r、tはこれらの合計が0から8の偶数になるような整数を示す。XはH、CH3、C2H5、又はC3H7を示す。)
【0017】
【化5】

【0018】
【化6】


(式[3−1]及び[3−2]中、R1、R2、R3は独立して、(CH2)nCH3、(CH2)o(CH=CH)(CH2)pCH3又は(CH2)q(CH=CH)(CH2)r(CH=CH)(CH2)tCH3 を示し、nは0から12の偶数を、o及びpはその合計が0から10の偶数になるような整数を、q、r、tはこれらの合計が0から8の偶数になるような整数を示す。XはH、CH3、C2H5、又はC3H7を示す。)
より好ましくは、複数種の3-ヒドロキシ脂肪酸とそれら脂肪酸同士のエステル結合によって重合したトリマーを含む組成物である。更にテトラマーやヘキサマーを含んでいてもかまわない。
【0019】
構成する3-ヒドロキシ脂肪酸の種類としては、3-ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3-ヒドロキシオクタン酸、3-ヒドロキシデカン酸、3−ヒドロキシウンデカン酸、3−ヒドロキシテトラデカン酸、3-ヒドロキシヘキサデカン酸より選ばれる脂肪酸の3種類以上、より好ましくは4種以上、更に好ましくは5種類以上の炭素数の異なる種類の脂肪酸を含むことが好ましい。
【0020】
更に、上記3-ヒドロキシ脂肪酸中に3−ヒドロキシオクテン酸等の不飽和結合を含む脂肪酸も含まれていることが更に望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の組成物は、樹脂又は化合物に対する改質剤としての諸特性を保持したまま優れたハンドリング性を有する組成物であり、これら組成物を各種樹脂その他化合物と適量混合することで所望の物性を得ることができる。本組成物は可溶化剤その他、プラスチック改質剤等として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の組成物を製造するのに利用できるポリヒドロキシアルカン酸ポリエステル(以下PHAともいう)は、多様なモノマー組成を有することが望ましい。ポリエステルを構成する3-ヒドロキシ脂肪酸の種類としては、3-ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3-ヒドロキシオクタン酸、3-ヒドロキシデカン酸、3−ヒドロキシウンデカン酸、3−ヒドロキシテトラデカン酸、及び3-ヒドロキシヘキサデカン酸からなる群より選ばれる脂肪酸の3種類以上、より好ましくは4種以上、更に好ましくは5種類以上の炭素数の異なる種類の脂肪酸を含むことが好ましい。
【0023】
更に、上記3-ヒドロキシ脂肪酸中に3−ヒドロキシオクテン酸等の不飽和結合を含む脂肪酸も含まれていることが更に望ましい。
【0024】
ポリエステル中のモノマーの構成比は、特に限定されないが、3-ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシヘキサン酸の割合は20重量%以下が望ましい。
【0025】
本発明に用いられるポリヒドロキシアルカン酸ポリエステルは、微生物・植物などの生物を利用して製造することができる。用いる微生物は、細胞内外にPHAを生産している微生物であれば特に限定されない。例えば、カピリアビダス・ネケータ(Cupriavidus necator)等のカピリアビダス属、アルカリゲネス・リポリチカ(Alcaligenes lipolytica)、アルカリゲネス・ラタス(A.latas)等のアルカリゲネス属(Alcaligenes)、シュウドモナス属(Pseudomonas)、バチルス属(Bacillus)、アゾトバクター属(Azotobacter)、ノカルディア属(Nocardia)、アエロモナス属(Aeromonas)の菌が挙げられ、中でも、シュウドモナス属(Pseudomonas)の菌株またはシュウドモナス属(Pseudomonas)由来のPHA合成酵素群の遺伝子が導入された菌株がより好ましい。更に好ましくは、多様なヒドロキシアルカン酸を重合することのできるPHA合成酵素を有する生物が好ましい。例えば、シュウドモナス・フルオレセンスFA−031やシュウドモナス・レジノボランスATCC14235株、あるいはこれらの微生物のPHA合成酵素を人為的に導入した微生物である。
【0026】
これらの微生物の培養方法は、PHAを多量に効率よく菌体内に蓄積できるものであれば特に限定はなく、例えば、前記シュウドモナス・レジノボランスATCC14235を用いる場合には、Applied Microbiology and Biotechnology(1998),49(4),431−437項等に記載の方法が好ましい。炭素源としては、グルコールなどの糖類や油脂類を用いることができる。油脂類としては、動物油や植物油や脂肪酸、合成脂質類が利用できるが、生産性の点から植物油を用いることが好ましい。
【0027】
本発明の組成物は、前記のように培養して得られた微生物由来PHAを処理(加水分解等)することにより作製することができる。本発明の組成物は、菌体成分とPHAを分離した後に、処理することで作製することもできるが、菌体を処理し、所望の成分に改変した後に精製することによっても作製することができる。
【0028】
菌体成分とPHAを分離した後に、処理することで作製する場合には、通常行なわれている方法によってPHAを単離することができる。例えば、微生物の培養後、乾燥或いは乾燥することなく酢酸エチルやクロロホルム等の有機溶媒にてPHAを可溶化し、濾過や遠心分離等の操作により菌体成分と分離する。その後有機溶媒をエバポレーション等で除去することにより取得することができる。また、貧溶媒を用いて沈殿させることもできる。用いる有機溶媒によっては溶媒除去が不要の場合もある。
【0029】
また、有機溶剤を使用しない精製法としてはWO04/065608に記載の方法などにより単離することができる。
【0030】
単離の過程において、公知の精製方法、例えば、リゾチーム等の溶菌酵素(特公平4−61638号公報)、トリプシンやプロナーゼ等の蛋白質分解酵素(特開平5−336982号公報)、過酸化水素等の過酸化物(特表平8−502415号公報)等を作用させて、更に純度を向上させる工程を利用することができる。
【0031】
得られたPHAは、水蒸気雰囲気下において加熱処理することにより加水分解し所望の分子量とすることもできるし、また、ジオキサン等の有機溶媒に溶解後、NaOHやKOH等のアルカリを加え所望の分子量に至るまで加水分解することもできる。また、クロロホルム等の非水系溶媒に溶解した後にTSA等の触媒下に分解し取得することもできる。
【0032】
菌体を処理し、所望の成分に改変した後に精製することによって作製する方法は、培養終了後の菌体を洗浄後、NaOHやKOH等のアルカリを加え所望の分子量に至るまで加水分解を行なう。その後、pHを調整し酢酸エチルやクロロホルム等の有機溶媒にてPHA成分を分配し、濾過や遠心分離等の操作により菌体成分と分離する。その後有機溶媒をエバポレーション等で除去することにより取得することができる。
【0033】
本発明の組成物に含まれるモノマー成分は、3-ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3-ヒドロキシオクタン酸、3-ヒドロキシデカン酸、3−ヒドロキシウンデカン酸、3−ヒドロキシテトラデカン酸、3-ヒドロキシヘキサデカン酸、及びこれら3-ヒドロキシ脂肪酸の1箇所ないし2箇所に不飽和結合を有する脂肪酸、並びにこれらのメチルエステル、エチルエステル及びプロピルエステルからなる群より選択される。本発明の組成物は、少なくとも3-ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3-ヒドロキシオクタン酸、3-ヒドロキシデカン酸、3−ヒドロキシウンデカン酸、3−ヒドロキシテトラデカン酸、及び3-ヒドロキシヘキサデカン酸の内の3種類以上を含み、かつこれら脂肪酸の2量体を含んで成る。2量体の総和量は、モノマー、2量体及び3量体の総量の1重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましく、30重量%以上であることがさらに好ましい。より好ましくは、3-ヒドロキシ脂肪酸の1箇所ないし2箇所に不飽和結合を有する脂肪酸を更に含む組成物である。更に3量体を含む組成物は、多様性が増大する為好適である。この場合、3量体の総和量は、モノマー、2量体及び3量体の総量の1重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましい。
【0034】
本発明の組成物は、モノマー、2量体及び3量体を合計で50重量%以上含むことが好ましく、80重量%以上含むことが樹脂等と混合した時の溶解性や浸透性の点でより好ましい。
【0035】
2量体、3量体等の成分は、例えば酸触媒下に脱水縮合することにより3-ヒドロキシ脂肪酸から調製することも可能である。
【0036】
また、本発明の構成成分である3−ヒドロキシ脂肪酸及び3ヒドロキシ脂肪酸重合体のカルボキシ末端はNa、K等の塩の形でもかまわないし、フリーの形態でも良い。更に、メチル、エチル、プロピル等のエステル体でもよいが、より好ましくは、エステル体ではないほうがよい。
【0037】
本発明の構成成分である単量体、2量体、3量体等の3ヒドロキシ脂肪酸重合体の水酸基末端は、水酸基が残っていても良いが、脱水により不飽和化された形態の化合物も含んでいることが好ましい。
【0038】
本発明の組成物は、目的に応じて各種の形態として使用することができる。例えば、水エマルジョンとすることもできるし、酢酸エチル、トルエン等の有機溶剤と混合した状態でも良い。
【0039】
本発明の組成物が、分子量1000以上のポリヒドロキシアルカン酸共重合ポリエステルをさらに含むと好適である。
【0040】
本発明の組成物を、微生物が産生したPHAを低分子量化することにより製造した場合には、菌体由来成分が0.1重量%以上含まれる場合がある。菌体由来成分は含量が多すぎると改質剤としての特性が低下するので、例えば20重量%以下であることが好ましい。
【0041】
本発明の組成物は、各種樹脂又は化合物に添加することによって当該樹脂又は化合物に対する改質剤として使用することができるものであり、本発明の添加対象となる樹脂については特に制限は無いが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。PHBやPHBV、PHBH等の微生物生産系脂肪族ポリエステル、ポリ乳酸やポリカプロラクトン等の化学合成系脂肪族ポリエステル、澱粉や酢酸セルロース等の天然高分子物などが、生分解性の意味で好ましい。本発明の組成物の添加量は、樹脂100重量部に対して、例えば0.01〜100重量部である。
【0042】
これらの樹脂に本発明の組成物を添加する場合、通常添加されるその他の添加剤、例えば安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、染料、顔料などを併用しても良い。
【実施例】
【0043】
本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(製造例)
(培養法)
Pseudomonas FluorescenceFA−031株(特開平05−030980公報、寄託番号微工研条寄3433)(以下3433株と略す。)を次のように培養した。
【0044】
種培地の組成は1w/v% Meat−extract、1w/v% Bacto−Trypton、0.2w/v%Yeast−extract、0.9w/v%NaPO・12HO、0.15w/v%KHPO(pH6.8)とした。
【0045】
前培養培地の組成は1.1w/v% NaPO・12HO、0.19w/v% KHPO、1.29w/v%(NHSO、0.1w/v% MgSO・7HO、0.5v/v% 微量金属塩溶液(0.1N塩酸に1.6w/v% FeCl・6HO、1w/v% CaCl・2HO、0.02w/v% CoCl・6HO、0.016w/v% CuSO・5HO、0.012w/v% NiCl・6HOを溶かしたもの。)とした。炭素源には、パーム油を2.5w/v%の濃度で用いた。
【0046】
ポリエステル生産培地の組成は0.385w/v% NaPO・12HO、0.067w/v% KHPO、0・291w/v%(NHSO、0.1w/v% MgSO・7HO、0.5v/v% 微量金属塩溶液(0.1N塩酸に1.6w/v% FeCl・6HO、1w/v% CaCl・2HO、0.02w/v% CoCl・6HO、0.016w/v% CuSO・5HO、0.012w/v% NiCl・6HOを溶かしたもの。)、0.05w/v%BIOSPUREX200K(消泡剤:コグニスジャパン製)とした。
【0047】
3433株のグリセロールストック(50μl)を種培地(10ml)に接種して24時間培養した。300mlの前培養培地を入れた坂口フラスコに3v/v%接種した。運転条件は、培養温度30℃、振トウ速度100rpmで24時間培養した。
【0048】
ポリエステル生産培養は6Lの生産培地を入れた10Lジャーファーメンター(丸菱バイオエンジ製MDL−1000型)に前培養種母を2.5v/v%接種した。運転条件は、培養温度28℃、攪拌速度400rpm、通気量6L/minとし、pHは6.7から6.8の間でコントロールした。pHコントロールには7%アンモニア水溶液を使用した。炭素源であるパーム油は、培養期間を通じペリスタポンプにて10g/Hの速度にて添加した。培養開始より48時間目に培養を停止し、培養液を回収した。
(精製法)
本実施例で行った水系法による培養菌体からのポリエステルの回収方法を以下に示した。
【0049】
培養後の培養液6Lを8000rpmで遠心し、菌体を濃縮した。濃縮菌体に水6Lを加え、再懸濁し再び遠心濃縮を行った。この工程を2度繰り返した。沈殿を回収し、6Lのメタノールに再懸濁し、再び遠心濃縮した。この工程を3度繰り返した。分離後の菌体を酢酸エチル5Lに懸濁し終夜攪拌を行なった。濾紙(東洋濾紙、Nox)にて酢酸エチル不溶成分を分離後、濾液をエバポレーターにて500mlになるまで減圧濃縮した。これを攪拌下5Lのメタノール中に投入し沈殿を形成させた。デカンテーションにより液相を除去し、沈殿を50℃の真空乾燥機中で溶媒を除去した。本操作により約100gのポリエステルを得た。
(PHA組成の測定方法)
培養終了後の微生物細胞中のPHAのモノマー組成比の測定は、特開2001−340078号公報の実施例1に記載の方法で行った。すなわち、PHAを2mlの硫酸−メタノール混液(15:85)に懸濁させ、クロロホルム2mlを加え、100℃、140分間加熱した。冷却後、1mlの蒸留水を添加し、攪拌後クロロホルム層を回収した。これを島津製作所製ガスクロマトグラフGC−17A(GLサイエンス社製NEUTRA BONDカラム)を用いて組成分析を行った。
(PHAの平均分子量の測定方法)
回収したPHA10mgを、クロロホルム5mlに溶解した後、不溶物を濾過により除いた。この溶液を、Shodex K805L(300×8mm、2本連結)(昭和電工社製)を装着した島津製作所製GPCシステムを用い、クロロホルムを移動相として分析した。分子量標準サンプルには、市販の標準ポリスチレンを用いた。
(組成物の分析)
実施例1又は2で得られた組成物10mgをアセトン0.1mlに溶解し、アセトンに溶解した0.1Mトリエチルアミンを等量混合し、窒素ガスにて溶媒を留去した。ここに、アセトニトリルに溶解した10mMのブロモフェナシルブロマイド(Bromophenacyl bromide)0.15mlとアセトニトリルに溶解した18−クラウンー6試薬0.15mlを加え80℃にて90分反応させた。
【0050】
反応の終了したサンプル0.02mlをサーモエレクトロン製LCQアドバンテージ装置を用いたLC/MS分析を行い、分子種を特定した。分離カラムODSカラム(ナカライ製、COSMOSIL 5C18ーPAQ 4.6×250mm)にて分離した。分離条件は0.01Mギ酸アンモニウムを含む60%メタノール溶液から100%メタノール溶液への直線勾配グラジエントである。流速は0.8ml/mlとした。イオン化法はAPCI法で正イオンモードで行なった。
(実施例1)
PHAの限定分解−1
精製したポリエステル30gを350mlのジオキサンに溶解した。これに5N水酸化カリウム水溶液35mlを加え60℃にて14時間攪拌した。エバポレーターによりジオキサンを部分的に除去し、濃縮液に150mlの水を加えた。この溶液に濃硫酸を加え、pHを4.0に調整した。この溶液に酢酸エチル200mlを加え、攪拌後静置、酢酸エチル相を分液ロートにより取得した。回収した酢酸エチル相に等量の水を加え、再び攪拌し分液ロートにより酢酸エチル相を回収した。この工程を更に2回繰り返した。最終的に得られた酢酸エチル溶液に無水硫酸マグネシウム2gを加え脱水し、濾過した。濾液をエバポレータにて濃縮し、更に真空乾燥機で乾燥させた。25gの組成物が得られた。LC/MS分析を行った結果を、図1に示す。
(実施例2)
PHAの限定分解−2
精製したポリエステル30gを350mlのジオキサンに溶解した。これに0.5N水酸化カリウム水溶液35mlを加え60℃にて2.5時間攪拌した。エバポレーターによりジオキサンを部分的に除去し、濃縮液に150mlの水を加えた。この溶液に濃硫酸を加え、pHを4.0に調整した。この溶液に酢酸エチル200mlを加え、攪拌後静置、酢酸エチル相を分液ロートにより取得した。回収した酢酸エチル相に等量の水を加え、再び攪拌し分液ロートにより酢酸エチル相を回収した。この工程を更に2回繰り返した。最終的に得られた酢酸エチル溶液に無水硫酸マグネシウム2gを加え脱水し、濾過した。濾液をエバポレータにて濃縮し、更に真空乾燥機で乾燥させた。20gの組成物が得られた。LC/MS分析を行った結果を、図2に示す。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施例1で得た組成物に関するLC/MS分析のチャート
【図2】実施例2で得た組成物に関するLC/MS分析のチャート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[1−1]、[1−2]、[2−1]、[2−2]、[3−1]、又は[3−2]で表される化合物を合計で重量換算で10%以上含み、かつ、一般式[1−1]又は[1−2]で表される成分のnが3種類以上であり、一般式[2−1]、又は[2−2]で示される化合物の総和量が一般式[1−1]、[1−2]、[2−1]、[2−2]、[3−1]、又は[3−2]で示される化合物の総量の1%以上である組成物。
【化1】


【化2】


(式[1−1]及び[1−2]中、R1は、(CH2)nCH3、(CH2)o(CH=CH)(CH2)pCH3又は(CH2)q(CH=CH)(CH2)r(CH=CH)(CH2)tCH3 を示し、nは0から12の偶数を、o及びpはその合計が0から10の偶数になるような整数を、q、r、tはこれらの合計が0から8の偶数になるような整数を示す。XはH、CH3、C2H5、又はC3H7を示す)
【化3】


【化4】


(式[2−1]及び[2−2]中、R1、R2は独立して、(CH2)nCH3、(CH2)o(CH=CH)(CH2)pCH3又は(CH2)q(CH=CH)(CH2)r(CH=CH)(CH2)tCH3 を示し、nは0から12の偶数を、o及びpはその合計が0から10の偶数になるような整数を、q、r、tはこれらの合計が0から8の偶数になるような整数を示す。XはH、CH3、C2H5、又はC3H7を示す。)
【化5】


【化6】


(式[3−1]及び[3−2]中、R1、R2、R3は独立して、(CH2)nCH3、(CH2)o(CH=CH)(CH2)pCH3又は(CH2)q(CH=CH)(CH2)r(CH=CH)(CH2)tCH3 を示し、nは0から12の偶数を、o及びpはその合計が0から10の偶数になるような整数を、q、r、tはこれらの合計が0から8の偶数になるような整数を示す。XはH、CH3、C2H5、又はC3H7を示す。)
【請求項2】
一般式[3−1]、又は[3−2]で示される化合物の総和量が0.1%以上である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
一般式[1−1]、[1−2]、[2−1]、[2−2]、[3−1]、又は[3−2]で表される化合物を合計で重量換算で50%以上含む請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
一般式[1−2]、[1−2]、[2−1]、[2−2]、[3−1]、又は[3−2]で表される化合物を合計で重量換算で80%以上含む請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
一般式[2−1]、又は[2−2]で示される化合物の総和量が10%以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
一般式[2−1]、又は[2−2]で示される化合物の総和量が30%以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
一般式[3−1]、又は[3−2]で示される化合物の総和量が10%以上である請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
分子量1000以上のポリヒドロキシアルカン酸共重合ポリエステルを含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
菌体由来成分を0.1重量%以上20重量%以下含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−40912(P2009−40912A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208155(P2007−208155)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】