説明

3−メチル−4−フェニルイソキサゾロ[3,4−d]ピリダジン−7(6H)−オンの新規製造方法

3−メチル−4−フェニルイソキサゾロ[3,4−d]ピリダジン−7(6H)−オンの製造方法であって、a)1−フェニルブタン−1,3−ジオンをエチル 2−クロロ−2−(ヒドロキシイミノ)アセテートと反応させる工程、b)次いで、工程(a)の生成物をヒドラジンまたはその水和物と反応させて、3−メチル−4−フェニルイソキサゾロ[3,4−d]ピリダジン−7(6H)−オンを得る工程(ここで、工程(b)は、工程(a)から得られる混合物を用いて、そこからエチル 4−ベンゾイル−5−メチルイソオキサゾール−3−カルボキシレート(IVa)を単離することなく行われる。)、
を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I):
【化1】


で示される構造を有する、3−メチル−4−フェニルイソキサゾロ[3,4−d]ピリダジン−7(6H)−オンの新規製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
式(I)の化合物は、例えば、国際特許出願番号WO 03/097613 A1、WO 2004/058729 A1およびWO 2005/049581に記載されている、ホスホジエステラーゼ4(PDE4)の選択的阻害剤である、数種のピリダジン−3(2H)−オン誘導体の製造において有用な中間体である。
【0003】
これらの特許出願はまた、イソキサゾロ[3,4−d]ピリダジン−7(6H)−オン環の3位および4位に置換基を有する種々のイソキサゾロ[3,4−d]ピリダジン−7(6H)−オン誘導体の、2工程の一般的製造方法を記載する。
【化2】

【0004】
上記の方法の2工程の一般的反応条件はまた、上記の特許出願に記載される。しかしながら、該方法には、3−メチル−4−フェニルイソキサゾロ[3,4−d]ピリダジン−7(6H)−オンの合成が例示されておらず、従って、収率が記載されていない。
【0005】
上記の合成経路の工程1はまた、文献 G. Renzi, V. Dal Piaz et al, Gaz. Chim. Ital. 1968, 98, 656−666およびV. Sprio, E.Aiello et al, Ann. Chim. 1967, 57, 836−845(両文献とも、エチル 4−ベンゾイル−5−メチルイソオキサゾール−3−カルボキシレート(化合物III、式中、R4=メチル、R5=フェニル、およびR8=エチルである。))の合成を具体的に記載する。)にも記載される。後者の文献は、40%の収率を記載する。
【0006】
上記の合成経路の工程2はまた、文献 V. Sprio, E.Aiello et al, Ann. Chim. 1967, 57, 836−845(3−メチル−4−フェニルイソキサゾロ[3,4−d]ピリダジン−7(6H)−オン(化合物IV、式中、R4=メチル、およびR5=フェニル)の合成を具体的に記載する。)にも記載される。収率は記載されていない。
【0007】
上記の2工程方法は、いくつかの点で満足できるが、本発明者らは、現在、より増加した収率で式(I)の化合物の製造を可能にする改善された方法を発明した。
【発明の概要】
【0008】
本発明により、式(I):
【化3】


で示される化合物の製造方法であって、
a)1−フェニルブタン−1,3−ジオン(IIa)
【化4】


を、エチル 2−クロロ−2−(ヒドロキシイミノ)アセテート(IIIa)
【化5】


と反応させる工程、
【0009】
b)次いで、工程(a)の生成物を、ヒドラジンまたはその水和物と反応させて、3−メチル−4−フェニルイソキサゾロ[3,4−d]ピリダジン−7(6H)−オン(I)を得る工程、
(該方法は、工程(b)が、工程(a)から得られる混合物を用いて、そこからエチル 4−ベンゾイル−5−メチルイソオキサゾール−3−カルボキシレート(IVa)を単離することなく行われることを特徴とする。)
を含む方法が提供される。
【化6】

【0010】
故に、既報の方法とは異なり、本発明の方法は、工程(a)で得られる反応混合物を、そこから反応生成物を単離することなく、ヒドラジン(または、その水和物)で直接処理することにより行われる。
【0011】
上記の反応方法を図1に記載する。
【0012】
本発明者らは、驚くべきことに、式(I)の化合物が、上記の方法で行うことにより(化合物(IVa)を単離することなく)、より増加した収率で得られることを発見した。
【0013】
本発明の一態様において、該反応は、溶媒としてC1−C3アルカノール、好ましくはメタノールを用いて行われる。
【0014】
本発明の別の態様において、工程a)は、アルカリアルコラート、好ましくはナトリウムメトキシド、次いでエチル 2−クロロ−2−(ヒドロキシイミノ)アセテートの添加により行われる。
【0015】
本発明のさらに別の態様において、1−フェニルブタン−1,3−ジオンに対するエチル 2−クロロ−2−(ヒドロキシイミノ)アセテートのモル比は、1.05と1.15との間である。
本発明のさらに別の態様において、1−フェニルブタン−1,3−ジオンに対するヒドラジン水和物のモル比は、1.15と1.25との間である。
【0016】
本発明で用いる反応物質、1−フェニルブタン−1,3−ジオン(IIa)、エチル 2−クロロ−2−(ヒドロキシイミノ)アセテート(IIIa)およびヒドラジン水和物は、例えば、ABCR GmbH & CO. KG (P.O. Box 21 01 35, 76151 Karlsruhe, GERMANY)、Aldrich Chemical Company, Inc (1001 West Saint Paul Avenue, Milwaukee, WI 53233, USA)、またはFluka Chemie GmbH (Industriestrasse 25, P.O. Box 260, CH−9471 Buchs, SWITZERLAND)から市販されている。
【0017】
工程(a)の方法の好ましい条件は、以下の通りである:
不活性雰囲気下、好ましくは窒素雰囲気下、1molの1−フェニルブタン−1,3−ジオンを、300−350mlのC1−C3アルカノール、好ましくはメタノール中に懸濁する;そして、該懸濁液を10−15℃まで冷却する。1molの1−フェニルブタン−1,3−ジオンあたり、190−200gの30% MeONa(メタノール溶液)を、10−15℃にて、20−40分かけて滴下し、該滴下漏斗を10−20mLのメタノールで洗浄する。反応混合物を、10−15℃にて約20−40分間撹拌し、次いで0−5℃まで冷却する。166.7g(1.1mol)のエチル 2−クロロ−2−(ヒドロキシイミノ)アセテートを含む300−350mLのメタノール溶液を、0−5℃にて、該反応混合物に50−70分かけて滴下し、該滴下漏斗を10−20mLのメタノールで洗浄する。
【0018】
工程(b)の方法の好ましい条件は、以下の通りである:
工程a)からの反応混合物を20−25℃まで温めて、100−150分間撹拌する。次いで、1.2molのNH2NH2.H2Oを、35−45℃にて、10−20分かけて滴下し、該滴下漏斗を10−20mLのMeOHで洗浄し、そして反応混合物を、35−45℃にて、220−260分間撹拌し、次いで20−25℃まで冷却する。最後に、480−500mLの水を添加し、反応混合物を20−25℃にて50−70分間撹拌し、次いで、0−5℃にて20−40分間撹拌する。生成物を濾過により単離し、次いで2×320 mLの冷MeOH/H2O 1:1で洗浄し、そして40−45℃にて一晩、真空乾燥させる。
【0019】
本発明に記載の合成方法は、以下の実施例によりさらに説明され得る。該実施例は、説明のみを目的として提供され、限定するものと解釈されてはならない。
【0020】
製造した化合物の構造を、1H−NMRおよびMSにより確認した。NMRは、200または300MHzの周波数で操作するVarian Gemini−200 NMR 分光計を用いて記録された。テトラメチルシランを、参照物質として用いて、サンプルを、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d6)または重水素化クロロホルム(CDCl3)中に溶解した。
【0021】
それらの純度を、ダイオードアレイ検出器(DAD)およびZMDまたはZQ質量検出器(エレクトロスプレーイオン化)を備えるAlliance 2795 Waters装置にて、HPLCにより決定した。Symmetry C18 カラム(3.5μm、21×100mm)および移動相を用いるHPLC法には、相A:緩衝(ギ酸/アンモニア)水溶液、pH3;相B:アセトニトリル/メタノールとギ酸アンモニアの50:50混合物、の2相が含まれた。勾配は、0%ないし95%の相Bで10分間であった。
【0022】
分取HPLC−MS実験を、バイナリポンプ(Gilson piston pump 321);真空脱ガス装置(Gilson 864);インジェクター−フラクションコレクター(Gilson liquid handler 215);2個のインジェクションモジュール、分析および分取装置(Gilson 819);バルブ(Gilson Valvemate 7000); 1/1000スプリッター(Acurate by LC Packings);メークアップポンプ(Gilson 307);ダイオードアレイ検出器(Gilson 170)およびMS検出器(Thermoquest Finnigan aQa、ESおよびAPCIイオン化モードを有する四重極質量分光計)を備えるGilson装置で行った。該HPLC−MS装置をIBM PCにより制御した。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の反応を記載する。
【実施例】
【0024】
実施例
実施例1
20g(0.123mol)の1−フェニルブタン−1,3−ジオンおよび40mLのメタノールを、窒素雰囲気下で、メカニカルスターラーおよび滴下漏斗を付した四口フラスコ中に入れ、該懸濁液を10−15℃まで冷却する。24.4gの30%ナトリウムメトキシド含有メタノール溶液を、10−15℃にて、30分かけて滴下する。滴下漏斗を2mLのメタノールで洗浄する。
【0025】
反応混合物を、10−15℃にて約30分間撹拌し、次いで、0−5℃まで冷却する。20.5g(0.135mol)のエチル−2−クロロ−2−(ヒドロキシイミノ)アセテートを含む40mLのMeOH溶液を、0−5℃にて、該反応混合物に1時間かけて滴下し、滴下漏斗を2mLのメタノールで洗浄する。
【0026】
次いで、反応混合物を20−25℃まで温め、2時間撹拌する。次いで、単離または精製工程を行うことなく、40℃にて、7.4g(0.148mol)のNH2NH2.H2Oを15分かけて滴下し、滴下漏斗を2mLのメタノールで洗浄し、反応混合物を40℃にて4時間撹拌し、次いで20−25℃まで冷却する。
【0027】
最後に、60mLの水を添加し、反応混合物を、20−25℃にて1時間、次いで、0−5℃にて、30分間、撹拌する。
【0028】
得られる混合物を濾過し、得られる固体を、2×40mLの冷MeOH/H2O 1:1で洗浄し、そして40℃にて一晩、真空乾燥させる。22.5g(0.099mol)の3−メチル−4−フェニルイソキサゾロ[3,4−d]ピリダジン−7(6H)−オンを得る(収率=80.5%)。
【0029】
比較実施例2
162.19gの1−フェニルブタン−1,3−ジオン(1mol)を、窒素雰囲気下で、メカニカルスターラーおよび滴下漏斗を付した四口フラスコ中に入れ、該懸濁液を10−15℃まで冷却する。198gの30%ナトリウムメトキシド/メタノール溶液を、10−15℃にて、30分かけて滴下する。滴下漏斗を2mLのメタノールで洗浄する。
【0030】
反応混合物を、10−15℃にて約30分間撹拌し、次いで、0−5℃まで冷却する。166.25g(1.10mol)のエチル−2−クロロ−2−(ヒドロキシイミノ)アセテートを含む400mLのMeOH溶液を、0−5℃にて、該反応混合物に1時間かけて滴下し、滴下漏斗を20mLのメタノールで洗浄する。
【0031】
最終混合物を、室温にて一晩撹拌した。粗物質を後処理し、262.86gの油状物を単離した。油中エチル 4−ベンゾイル−5−メチルイソオキサゾール−3−カルボキシレートの含有量は、CG−EIによって86%と決定された。このことは、87.1%の収率を表す(純粋生成物として表される)。
【0032】
比較実施例3
比較実施例2からの262.86gの不純油状物を、550mlのメタノール中に溶解し、20−25℃まで温め、2時間撹拌した。次いで、78.12g(1.56mol)のNH2NH2.H2Oを、40℃にて、15分かけて滴下し、滴下漏斗を20mLのメタノールで洗浄し、そして反応混合物を40℃にて、4時間撹拌し、次いで20−25℃まで冷却する。
【0033】
最後に、480mLの水を添加し、反応混合物を、20−25℃にて1時間、次いで、0−5℃にて30分間撹拌する。
【0034】
得られる混合物を濾過し、得られる固体を、2×40mLの冷MeOH/H2O 1:1で洗浄し、40℃にて一晩、真空乾燥させる。168.2g(0.740mol)の3−メチル−4−フェニルイソキサゾロ[3,4−d]ピリダジン−7(6H)−オンを得る(収率=84.9%)。
HPLC−MS(+/−)=228
MS−FIA=228。
【0035】
氷浴中で冷却後、沈殿が形成され、濾過により集め、予め冷却したアルコール溶媒で洗浄した。
【0036】
中間体 エチル 4−ベンゾイル−5−メチルイソオキサゾール−3−カルボキシレートの単離を含む2工程反応での、3−メチル−4−フェニルイソキサゾロ[3,4−d]ピリダジン−7(6H)−オンの製造の収率を示す比較実施例2および3の合わせた収率は、74.0%である(87.1%×84.9%)。
【0037】
この収率は、該製造方法が、特許請求の範囲および実施例1に記載されるワンポット反応の方法で行われるときに得られる収率より顕著に低い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−メチル−4−フェニルイソキサゾロ[3,4−d]ピリダジン−7(6H)−オンの製造方法であって、
a)1−フェニルブタン−1,3−ジオンをエチル 2−クロロ−2−(ヒドロキシイミノ)アセテートと反応させる工程
b)次いで、工程(a)からの生成物をヒドラジンまたはその水和物と反応させて、3−メチル−4−フェニルイソキサゾロ[3,4−d]ピリダジン−7(6H)−オンを得る工程
(当該方法は、工程(b)が、工程(a)から得られる混合物を用いて、そこからエチル 4−ベンゾイル−5−メチルイソオキサゾール−3−カルボキシレートを単離することなく行われることを特徴とする。)
を含む、方法。
【請求項2】
該反応が、溶媒としてC1−C3アルカノールを用いて行われることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該アルカノールがメタノールであることを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
工程a)が、アルカリアルコラート、次いでエチル 2−クロロ−2−(ヒドロキシイミノ)アセテートの添加により行われることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
該アルカリアルコラートがナトリウムメトキシドである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
1−フェニルブタン−1,3−ジオンに対するエチル 2−クロロ−2−(ヒドロキシイミノ)アセテートのモル比が、1.05と1.15との間である、請求項1ないし5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
1−フェニルブタン−1,3−ジオンに対するヒドラジン水和物のモル比が、1.15と1.25との間である、請求項1ないし6のいずれか一項記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−520158(P2010−520158A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551112(P2009−551112)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【国際出願番号】PCT/EP2008/001080
【国際公開番号】WO2008/107064
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(598032139)アルミラル・ソシエダッド・アノニマ (69)
【氏名又は名称原語表記】Almirall, S.A.
【Fターム(参考)】