説明

3−置換テトラヒドロピラニル−4−カルボキシレート化合物の製法

【課題】 本発明の課題は、温和な条件下、簡便な方法によって、3-置換テトラヒドロピラニル-4-カルボキシレート化合物を高収率で製造出来る、工業的に好適な3-置換テトラヒドロピラニル-4-カルボキシレート化合物の製法を提供することにある。
【解決手段】 本発明の課題は、酸の存在下、3-置換-3-ブテン-1-オール化合物、アルデヒド化合物、及びカルボン酸化合物を反応させることを特徴とする、3-置換テトラヒドロピラニル-4-カルボキシレート化合物の製法によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3-置換テトラヒドロピラニル-4-カルボキシレート化合物の製法に関する。3-置換テトラヒドロピラニル-4-カルボキシレート化合物は、医薬・農薬等の原料や合成中間体として有用な化合物であり、特に、3-n-ペンチルテトラヒドロピラニル-4-アセテートは、香料の一成分として有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
従来、3-置換テトラヒドロピラニル-4-カルボキシレート化合物の製法としては、例えば、4-アセトキシ-3-ペンチルテトラヒドロピランに関しては、1-オクテンとホルムアルデヒドを酢酸中で反応させることから合成されることが開示されている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、詳細な反応条件や目的物の収率等は全く記載されておらず、製法が確立したとは判断出来るものではなかった。
【非特許文献1】FOOD AND CHEMICAL TOXICOLOGY,30,5S-6S(1992)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、即ち、上記問題点を解決し、温和な条件下、簡便な方法によって、3-置換テトラヒドロピラニル-4-カルボキシレート化合物を高収率で製造出来る、工業的に好適な3-置換テトラヒドロピラニル-4-カルボキシレート化合物の製法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の課題は、酸の存在下、一般式(1)
【0005】
【化1】

【0006】
(式中、Rは、置換基を有していても良い炭化水素基を示す。)
で示される3-置換-3-ブテン-1-オール化合物、一般式(2)
【0007】
【化2】

【0008】
(式中、Rは、水素原子又は炭化水素基を示す。)
で示されるアルデヒド化合物、及び一般式(3)
【0009】
【化3】

【0010】
(式中、Rは、炭化水素基を示す。)
で示されるカルボン酸化合物を反応させることを特徴とする、一般式(4)
【0011】
【化4】

【0012】
(式中、R、R及びRは、前記と同義である。)
で示される3-置換テトラヒドロピラニル-4-カルボキシレート化合物の製法によって解決される。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、温和な条件下、簡便な方法によって、3-置換テトラヒドロピラニル-4-カルボキシレート化合物を高収率で製造出来る、工業的に好適な3-置換テトラヒドロピラニル-4-カルボキシレート化合物の製法を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の反応において使用する3-置換-3-ブテン-1-オールは、前記の一般式(1)で示される。その一般式(1)において、Rは、置換基を有していても良い炭化水素基であり、炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基が挙げられる。
【0015】
前記炭化水素基は、置換基を有していても良い。その置換基としては、炭素原子を介して出来る置換基、酸素原子を介して出来る置換基、窒素原子を介して出来る置換基、硫黄原子を介して出来る置換基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0016】
前記炭素原子を介して出来る置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロブチル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基等のアルケニル基;キノリル基、ピリジル基、ピロリジル基、ピロリル基、フリル基、チエニル基等の複素環基;フェニル基、トリル基、フルオロフェニル基、キシリル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等のアリール基;アセチル基、プロピオニル基、アクリロイル基、ピバロイル基、シクロヘキシルカルボニル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、トルオイル基等のアシル基(アセタール化されていても良い);メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;トリフルオロメチル基等のハロゲン化アルキル基;シアノ基が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0017】
前記酸素原子を介して出来る置換基としては、例えば、メトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基、ブトキシル基、ペンチルオキシル基、ヘキシルオキシル基、ヘプチルオキシル基、ベンジルオキシル基等のアルコキシル基;フェノキシル基、トルイルオキシル基、ナフチルオキシル基等のアリールオキシル基が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0018】
前記窒素原子を介して出来る置換基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロへキシルアミノ基、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基等の第一アミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、メチルブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、N-メチル-N-メタンスルホニルアミノ基等の第二アミノ基;モルホリノ基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、ピラゾリジニル基、ピロリジノ基、インドリル基等の複素環式アミノ基;イミノ基が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0019】
前記硫黄原子を介して出来る置換基としては、例えば、メルカプト基;チオメトキシル基、チオエトキシル基、チオプロポキシル基等のチオアルコキシル基;チオフェノキシル基、チオトルイルオキシル基、チオナフチルオキシル基等のチオアリールオキシル基等が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0020】
本発明の反応において使用するアルデヒド化合物は、前記の一般式(2)で示される。その一般式(2)において、Rは、水素原子又は炭化水素基であり、炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体も含む。又、これらのアルデヒド化合物は、多量体やアセタール体であっても良い。
【0021】
前記アルデヒド化合物の使用量は、アルデヒド換算で、3-置換-3-ブテン-1-オール1モルに対して、好ましくは1.0〜10.0モル、更に好ましくは1.1〜5.0モルである。
【0022】
本発明の反応において使用するカルボン酸化合物は、前記の一般式(3)で示される。その一般式(3)においてRは、炭化水素基であるが、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体も含む。
【0023】
前記カルボン酸化合物の使用量は、3-置換-3-ブテン-1-オール1モルに対して、好ましくは1.0〜100モル、更に好ましくは1.1〜50モルである。
【0024】
本発明の反応において使用する酸としては、例えば、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、p-ブロモベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類;塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸等のハロゲン化水素酸;硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸類が挙げられるが、好ましくは有機スルホン酸類、鉱酸類、更に好ましくは有機スルホン酸が使用される。なお、これらの酸は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0025】
前記酸の使用量は、3-置換-3-ブテン-1-オール1モルに対して、好ましくは0.001〜10モル、更に好ましくは0.01〜5モルである。
【0026】
本発明の反応は、溶媒の存在下又は非存在下にて行われる。使用される溶媒としては、反応を阻害しないものならば特に限定されず、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類;クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のカルボン酸エステル類;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0027】
前記溶媒の使用量は、反応液の均一性や攪拌性により適宜調節するが、3-置換-3-ブテン-1-オール1gに対して、好ましくは0〜50ml、更に好ましくは0〜10mlである。
【0028】
本発明の反応は、例えば、3-置換-3-ブテン-1-オール、アルデヒド化合物、カルボン酸化合物及び酸を混合して、攪拌しながら反応させる等の方法によって行われる。その際の反応温度は、好ましくは10〜200℃、更に好ましくは20〜150℃であり、反応圧力は特に制限されない。
【0029】
なお、最終生成物である3-置換テトラヒドロピラニル-4-カルボキシレート化合物は、例えば、反応終了後、濾過、中和、抽出、濃縮、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の一般的な方法によって単離・精製される。
【実施例】
【0030】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0031】
実施例1(3-n-ペンチルテトラヒドロピラニル-4-アセテートの合成)
攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた30mlのガラス製フラスコに、cis-3-ペンチル-3-ブテン-1-オール1.0g(7.0mmol)、パラホルムアルデヒド0.25g(ホルムアルデヒド換算で8.3mmol)、酢酸10.5g(174mmol)及び濃硫酸50mg(0.5mmol)を加え、攪拌しながら80℃で5時間反応させた。反応終了後、反応液をガスクロマトグラフィーで分析(内部標準法)したところ、3-ペンチルテトラヒドロピラニル-4-アセテートが1.21g生成していた(反応収率:80%)。
【0032】
実施例2(3-n-ペンチルテトラヒドロピラニル-4-アセテートの合成)
攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた30mlのガラス製フラスコに、cis-3-ペンチル-3-ブテン-1-オール1.0g(7.0mmol)、パラホルムアルデヒド0.25g(ホルムアルデヒド換算で8.3mmol)、酢酸10.5g(174mmol)及びメタンスルホン酸50mg(0.5mmol)を加え、攪拌しながら80℃で5時間反応させた。反応終了後、反応液をガスクロマトグラフィーで分析(内部標準法)したところ、3-ペンチルテトラヒドロピラニル-4-アセテートが0.91g生成していた(反応収率:60%)。
【0033】
実施例3(2-メチル-3-n-ペンチルテトラヒドロピラニル-4-アセテートの合成)
実施例1において、パラホルムアルデヒドの代わりにパラアルデヒド(アセトアルデヒド三量体)を用いて同様に反応を行うと、2-メチル-3-n-ペンチルテトラヒドロピラニル-4-アセテートが収率良く生成する。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、3-置換テトラヒドロピラニル-4-カルボキシレート化合物の製法に関する。3-置換テトラヒドロピラニル-4-カルボキシレート化合物は、医薬・農薬等の原料や合成中間体として有用な化合物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸の存在下、一般式(1)
【化1】

(式中、Rは、置換基を有していても良い炭化水素基を示す。)
で示される3-置換-3-ブテン-1-オール化合物、一般式(2)
【化2】

(式中、Rは、水素原子又は炭化水素基を示す。)
で示されるアルデヒド化合物、及び一般式(3)
【化3】

(式中、Rは、炭化水素基を示す。)
で示されるカルボン酸化合物を反応させることを特徴とする、一般式(4)
【化4】

(式中、R、R及びRは、前記と同義である。)
で示される3-置換テトラヒドロピラニル-4-カルボキシレート化合物の製法。