３個の画像を含むセキュリティ文書用セキュリティ項目

【課題】少なくとも一部が透明材料からなる基材上にセキュリティ項目を印刷する方法において、セキュリティ項目が、公知の方法よりも偽造に対してはるかに高いセキュリティレベルを有する。
【解決手段】本発明の方法は、見える又は可視化される第１画像を透明材料の一方側に印刷するステップと、見える又は可視化されると共に第１画像と少なくとも部分的に重なる第２画像を、透明材料の他方側に印刷するステップと、透視できる又は透過可視化される第３画像を、透明材料において第１画像及び／又は第２画像によって包含されない区域に印刷するステップとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、少なくとも一部が透明材料からなる基材上にセキュリティ項目を印刷する方法に関する。本発明は、特に、セキュリティ文書上、セキュリティ文書の一部上又はセキュリティ文書に移送し得る基材上にセキュリティ項目を印刷する方法に関する。セキュリティ文書は、特に、銀行券、郵便切手、ＩＤカード、旅券、小切手、証明書、真正証明書等である。本発明は、又、このような方法で製造された印刷セキュリティ項目に関する。
【背景技術】
【０００２】
セキュリティ文書の印刷、いわゆるセキュリティ印刷は、オフセット、凹版、スクリーン及び凸版等の印刷技術の適用又は組合せである。セキュリティ印刷は、銀行券、郵便切手、印紙、株券、ＩＤカード、旅券、小切手、証書、航空チケット、卒業証書及び偽造に対する保護を必要とする他の文書の印刷を包含する。
【０００３】
銀行券等のセキュリティ書類は、偽造者の脅威が常に存在する世界中を流通する。新しい印刷プロセスの開発及び新しい技術の導入により、偽造者は、今までよりも多くの複写方法を利用することができる。従って、銀行券等のセキュリティ文書は、実際上、偽造防止であることが必須である。これは、印刷技術とその組合せを使用するやり方だけでなく、基材及びインキの性質に基づくと共に、セキュリティスレッド（安全線）、ホログラム等の特殊な追加要素を使用することにより達成される。
【０００４】
銀行券は、一般に、１００％綿からなる基材上に印刷されると共に、透かし、セキュリティスレッド、異なる色と長さの蛍光ファイバー、光変動インキ又は他の目視又は機械検出可能な特徴によって保護される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかしながら、このような銀行券の欠点は、それらの制約された寿命である。合成材料の銀行券は、従来の綿の銀行券の約４倍持続できるので、この欠点を有しない。プラスチック紙幣技術は、紙の代わりにポリマープラスチック基材を使用する。紙と比較して、プラスチック銀行券は、より強いと共に非孔質である。
【０００６】
しかしながら、プラスチック銀行券は、紙紙幣にうまく使用されている実際の多色調透かし、ウインドウ・セキュリティスレッド等の多くの安全特色が、使用できなかったり、プラスチック紙幣に使用した時により効果的でないという問題点を有する。
【０００７】
従って、本発明の目的は、セキュリティ項目を印刷する新たな方法、特に、上記の不具合が解消されると共に、セキュリティ項目が、公知の方法よりも偽造に対してはるかに高いセキュリティレベルを有する、セキュリティ項目を銀行券に印刷する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記目的は、少なくとも一部が透明材料からなる基材上にセキュリティ項目を印刷する方法において、見える又は可視化される第１画像を透明材料の一方側に印刷するステップと、見える又は可視化されると共に第１画像と少なくとも部分的に重なる第２画像を、透明材料の他方側に印刷するステップと、透視できる又は透過可視化される第３画像を、透明材料において第１画像及び／又は第２画像によって包含されない区域に印刷するステップとを備える新規な方法を提供することによって達成される。
【０００９】
本発明にかかる好ましい方法において、その方法は、最初に、不透明パターンを透明材料の一方側に印刷するステップと、第１画像を不透明パターン上に印刷するステップと、透明材料の他方側において不透明パターンによって包含される領域に第２画像を印刷するステップと、透明材料において第１画像及び／又は第２画像によって包含されない区域に、第３画像を印刷するステップとを備える。
【００１０】
より好ましい方法において、不透明パターンが透明材料の両側に印刷され、好ましくは、第１画像が不透明パターン上に印刷される一方、第２画像が他方側の不透明パターン上に印刷される。
【００１１】
セキュリティ項目が、不透明パターン上に印刷された２個の画像と、透明材料において不透明パターンによって包含されない区域に印刷された第３画像との組合せであるので、偽造者は、異なる画像を分離する問題を抱える。
【００１２】
よって、不透明パターンを生成することと、セキュリティ文書の両側の正確な位置で画像を完全な見当合せで印刷することとは、非常に困難である。画像の互いの微小な移動でも、不可避的に画像が互いに重なり合う状況が生じて、この状況が見えることは不可避である。
【００１３】
本発明にかかる文書は、好ましくは、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド又はその組合せからなる。しかしながら、別の材料からなるプラスチック基材も可能である。
【００１４】
本明細書において、用語「画像」は、文書上に可視形態で適用できたり、例えば、ブラックライト下で見えるようになる不可視蛍光インキの使用、赤外（ＩＲ）吸収インキの使用等の特定の光環境下で可視化されるいかなる表現、文、メッセージ、記号、パターン等を指す。本発明によれば、画像を単一の色又は多色で印刷することができる。第１画像、第２画像と第３画像は、３個の異なる画像であり得る。しかしながら、本発明にかかる方法の必須の要件ではない。この方法では、本発明の上述の基本原理から逸脱することなしに、２個又は３個の画像が同一であり得る。
【００１５】
本発明は、透明基材上の印刷を意図しているので、従来の印刷技術を超えて、画像をこのような基材上に転写又は生成するインクジェット、熱転写、昇華等の全ての可能な技術を使用することができることが明らかである。
【００１６】
本発明は、既存の銀行券印刷機及び／又は他のハイテク機械の技術的可能性の最適使用により、セキュリティ文書の印刷機がセキュリティ文書のセキュリティレベルを改良することを可能にする。
【００１７】
本発明にかかる好ましい方法において、好ましくは、銀行券印刷機によって、第１画像と第２画像が、透明材料の両側に見当合せされて印刷される。
【００１８】
本発明にかかる別の好ましい方法において、第１画像及び第２画像と不透明パターンが、透明材料の両側に見当合せされて印刷される。好ましくは、不透明パターンは、不透明インキで印刷することにより得られる。
【００１９】
本発明にかかるより好ましい方法において、第１画像と第２画像によって包含される領域が、第１画像と第２画像によって包含されない領域と大略等しい。
【００２０】
好ましくは、第１画像と第２画像によって包含される区域と、第１画像と第２画像によって包含されない区域とが交互の順で設けられる。
【００２１】
別の好ましい方法によれば、第１画像と第２画像が、透明材料の両側に見当合せされて印刷される。第１画像が透明材料の一方側に印刷され、第２画像が透明材料の他方側に印刷される。好ましくは、第３画像は、透明材料の非被覆域に透視見当合せされて印刷される。好ましくは、第３画像は、第１画像及び／又は第２画像と同時に印刷することができる。
【００２２】
本発明にかかる最も好ましい方法において、不透明パターン及び／又は画像は、不透明インキ及び／又はトナー及び／又はフォイルを適用することによって得られる。
【００２３】
本発明は、又、少なくとも一部が透明材料からなる基材上の印刷セキュリティ項目において、第１画像と第２画像が、透明材料の両側に設けられると共に、少なくとも部分的に重なる一方、第１画像と第２画像の間の透明域が、透視できる又は透過可視化される第３画像を支承する印刷セキュリティ項目に関する。
【００２４】
第１画像、第２画像と第３画像は、３個の異なる画像であり得る。しかしながら、本発明にかかる印刷セキュリティ項目の必須の要件ではない。この印刷セキュリティ項目では、本発明の上述の基本原理から逸脱することなしに、２個又は３個の画像が同一であり得る。
【００２５】
印刷セキュリティ項目は、好ましくは、請求項１乃至１０のいずれかにかかる方法によって製造される。
【００２６】
本発明のより好ましい実施の形態において、基材がセキュリティ文書である。より詳しくは、そのセキュリティ文書は銀行券である。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２７】
本発明の方法によれば、少なくとも一部が透明材料、例えば、ポリプロピレン又はポリエステル（厚さが、例えば、１２５ミクロン）からなる基材１に印刷された銀行券等のセキュリティ文書に、公知の銀行券印刷機及び／又は他のハイテク機械により新しいセキュリティ項目を設けることができる。
【００２８】
図１に示すように、透明基材１は、基材１の両側で完全に見当合せさせて、不透明スクリーンパターンを白色不透明インキで印刷することにより、部分的に不透明化される。製作された不透明パターン２（図１の白色域）が、材料の透明域３と混合して生じることにより、不透明化領域は、透明材料の全面積の約半分である。
【００２９】
その後、例えば、狐（図３参照）を表す第１（カラー）画像４が、白色スクリーンパターンと完全な見当合せされて、透明材料１の一方側上で透明インキで印刷されることが好ましい。他方側は、透明インキで別の画像、好ましくは、白色ドット構造で再び、例えば、猫（図４参照）を表す第２画像５をオーバープリントされる。
【００３０】
残りの透明領域は、例えば、少女（図５参照）を表す第３画像６によって透明インキで充填される。第３画像６は、第１画像４及び／又は第２画像５を印刷中に印刷することが出来る。
【００３１】
基材１上にセキュリティ項目を印刷する別の方法を図２（ｂ）に示す。この方法によれば、第１画像４が透明材料の一方側上で不透明インキで印刷され、不透明インキで印刷される第２画像５が、透明材料の他方側上で第１画像４にオーバープリントされ、残りの領域３が、第３透明画像６で充填される。
【００３２】
人がセキュリティ項目を透視する時、人が前側（図６（ａ）参照）から見るか他方側（図６（ｂ）参照）から見るに拘わらず、透明域３に印刷されている第３画像６のみが見える。
【００３３】
人が、白色背景に対して前側からセキュリティ項目を見ると、図７に示すように、不透明パターン２の前側上に印刷される狐の画像と、透明域３に印刷される少女の画像とが見える。人が、白色背景に対して他方側からセキュリティ項目を見ると、図９に示すように、不透明パターン２の他方側上に印刷される猫の画像と、透明域３に印刷される少女の画像とが見える。
【００３４】
人が、黒色背景に対して前側からセキュリティ項目を見ると、図８に示すように、不透明パターン２の前側上に印刷される狐の画像のみが見える。人が、黒色背景に対して他方側からセキュリティ項目を見ると、図１０に示すように、不透明パターン２の他方側上に印刷される猫の画像のみが見える。
【００３５】
セキュリティ項目は、２個の画像４と５、即ち、不透明パターン２上に印刷される狐と猫の画像と、透明域３に印刷される少女の第３画像６との組合せであるから、偽造者は、その異なる画像を分離する問題にぶつかる。よって、偽造者が、本発明にかかるセキュリティ項目を設けた銀行券を透過走査する時、不透明パターン２上に印刷される画像は消失するだろう。この効果は、第３画像６のみが見える図１１に図示される。
【００３６】
偽造者が、本発明にかかるセキュリティ項目を設けた銀行券を反射走査する時、透明域３に印刷される画像、本例では少女が、不透明パターン２上に印刷される画像と重なり合う。この効果は図１２と図１３に図示される。図１２において、第３画像６が第１画像４と重なり合う一方、図１３において、第３画像６が第２画像５と重なり合っている。
【００３７】
たとえ偽造者が異なる画像を分離できたとしても、偽造者は、スクリーンパターンを発生すると共に、セキュリティ文書の夫々の側の正確な位置で異なる画像を完全な見当合せで印刷する問題を抱える。画像の互いの微小な移動でも、不可避的に画像が互いに重なり合う状況が生じて、この状況が見えることは不可避である。
【００３８】
本発明によれば、偽造するのが非常に困難であると共に容易に検証可能なセキュリティ項目を銀行券及び他のセキュリティ文書に設けることができる。本発明にかかるセキュリティ項目を備える透明基材を、公知の技術と手法を使用して、文書に移送又は載置することができる。
【００３９】
新たなセキュリティ項目を、銀行券用の他の公知のセキュリティ特徴と組合せることができる。
【図面の簡単な説明】
【００４０】
【図１】（ａ）は、基材の前側上の不透明パターンの図であり、（ｂ）は、基材の後側上の不透明パターンの図である。
【図２】（ａ）は、不透明パターンを設けた基材上の印刷セキュリティ項目の略図であり、（ｂ）は、不透明インキ、トナー及び／又はフォイルを適用することにより画像が得られる基材上の印刷セキュリティ項目の略図である。
【図３】透明材料の一方側上の不透明パターン上の第１画像の図である。
【図４】透明材料の他方側上の不透明パターン上の第２画像の図である。
【図５】材料の透明域上の第３画像の図である。
【図６】（ａ）と（ｂ）は、夫々、前側と他方側から見た時の、透視のみ可能な第３画像の図である。
【図７】白色背景に対する前側からの図である。
【図８】黒色背景に対する前側からの図である。
【図９】白色背景に対する他方側からの図である。
【図１０】黒色背景に対する他方側からの図である。
【図１１】（ａ）と（ｂ）は、夫々、前側と他方側から見た時の、文書の透過走査の効果の図である。
【図１２】文書を前側から透過走査した時の効果の図である。
【図１３】文書を他方側から透過走査した時の効果の図である。
【符号の説明】
【００４１】
１基材
２不透明パターン
３透明域
４第１画像
５第２画像
６第３画像

【特許請求の範囲】
【請求項１】
少なくとも一部が透明材料からなる基材（１）上にセキュリティ項目を印刷する方法において、
見える又は可視化される第１画像（４）を透明材料（１）の一方側に印刷するステップと、見える又は可視化されると共に第１画像（４）と少なくとも部分的に重なる第２画像（５）を、透明材料（１）の他方側に印刷するステップと、透視できる又は透過可視化される第３画像（６）を、透明材料において第１画像（４）及び／又は第２画像（５）によって包含されない区域に印刷するステップとを備える方法。
【請求項２】
最初に、不透明パターン（２）を透明材料の一方側に印刷するステップと、第１画像（４）を不透明パターン（２）上に印刷するステップと、透明材料の他方側において不透明パターン（２）によって包含される領域に第２画像（５）を印刷するステップと、透明材料において第１画像（４）及び／又は第２画像（５）によって包含されない区域に、第３画像（６）を印刷するステップとを備える請求項１に記載の方法。
【請求項３】
不透明パターン（２）が透明材料（１）の両側に印刷される請求項２に記載の方法。
【請求項４】
第１画像（４）が不透明パターン（２）上に印刷される一方、第２画像（５）が他方側の不透明パターン（２）上に印刷される請求項３に記載の方法。
【請求項５】
第１画像（４）、第２画像（５）と第３画像（６）が少なくとも２個の異なる画像を備える請求項１乃至４のいずれかに記載の方法。
【請求項６】
第１画像（４）と第２画像（５）が、透明材料（１）の両側に見当合せされて印刷される請求項１乃至５のいずれかに記載の方法。
【請求項７】
第１画像（４）及び第２画像（５）と不透明パターン（２）が、透明材料（１）の両側に見当合せされて印刷される請求項２乃至５のいずれかに記載の方法。
【請求項８】
第１画像（４）と第２画像（５）によって包含される領域が、第１画像（４）と第２画像（５）によって包含されない領域と大略等しい請求項１乃至７のいずれかに記載の方法。
【請求項９】
第１画像（４）と第２画像（５）によって包含される区域と、第１画像（４）と第２画像（５）によって包含されない区域とが交互の順で設けられた請求項１乃至８のいずれかに記載の方法。
【請求項１０】
不透明パターン（２）及び／又は第１及び第２画像（４、５）が、不透明インキ及び／又はトナー及び／又はフォイルを適用することによって得られる請求項１乃至９のいずれかに記載の方法。
【請求項１１】
少なくとも一部が透明材料からなる基材（１）上の印刷セキュリティ項目において、
第１画像（４）と第２画像（５）が、透明材料の両側に設けられると共に、少なくとも部分的に重なる一方、第１画像（４）と第２画像（５）の間の透明域（３）が、透視できる又は透過可視化される第３画像（６）を支承する印刷セキュリティ項目。
【請求項１２】
その文書が、請求項１乃至１０にかかる方法によって製造される請求項１１に記載の印刷セキュリティ項目。
【請求項１３】
基材（１）がセキュリティ文書である請求項１１に記載の印刷セキュリティ項目。

【図１】