説明

3次元ポインティング装置

【目的】 従来のタッチパッドなどと類似の操作方法でカーソルの3次元位置情報を容易に入力できる3次元ポインティング装置を提供する。
【構成】 指先又はペン先をその内部で3次元的に移動できるゲル状の樹脂体、この樹脂体の内部で空間的に移動する指先又はペン先の位置を検出する空間的位置検出部、及び、この空間的位置検出部からのデータに基づいて、カーソルを3次元的に移動させるカーソル制御手段、を含むものである。また、前記の少なくとも1枚の押圧位置検出シートには、押圧位置に加えられた押圧力の大きさを検出する押圧力検出部が備えられており、前記の積層された押圧位置検出シートの中の2枚以上の押圧位置検出シートが同時に押圧位置を検出したとき、前記の押圧力検出部により検出された押圧力の大きさに応じて、カーソルの3次元的な移動の速度を制御するカーソル移動速度制御手段を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータの表示画面に表示された3次元画像に対して、ユーザーが、カーソルを3次元的に移動させることができる3次元ポインティング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンピュータ画面上を移動するカーソルを3次元的に移動させるための装置が提案されている。例えば、特開昭60−60502号公報では、先端に発光体を有するペンを受光素子で検出することにより前記発光体の3次元位置をコンピュータに入力する3次元位置指定装置を提案している。また、特開平6−3133号公報では、指示部にその傾斜角度を入力する角度センサを設けることにより3次元要素(3次元データ)を一括入力するようにしたポイントデバイスを提案している。さらに、特開平8−255053号公報では、LEDから出射された光が反射板により反射されて1次元PSD及び2次元PSDに入射しその出力電流から操作部の傾き状態及び上下方向の位置が検出しコンピュータ本体に3次元位置情報を出力するようにしたコンピュータ用入力装置が提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、最近のモバイル用の情報端末、例えばノート型パソコンや携帯情報端末(パーソナル・データ・アシスタンス PDA)においては、図7の101で示す「タッチパッド」(人によっては、「タブレット」、「スライスパッド」「グライドポイント」などと呼んでいることもある)が備えられている。このタッチパッドは、指先やペン先で触れることでカーソルをコントロールするものである。指先やペン先の位置検出の方式としては、静電容量式や感圧式などが知られている。前記の「感圧式」のタッチパッドとしては、例えば、特開平4−15816号公報(「感圧形座標入力装置」)などにおいて詳細に説明されている。このような「タッチパッド」は、マウスのように専用の場所が必要ないこと、トラックボールやジョイスティックと異なって可動部がないためメンテナンスフリーであることなどから、携帯情報端末への装備が近年増えているものである。
【0004】
しかしながら、従来は、この「タッチパッド」に関しては、画面に表示された立体画像に対してカーソルを3次元的に移動させるためのカーソルの3次元位置情報を入力するための装置は、まだ提案されていない。そこで、本発明はこのような従来技術の課題を解決するために、従来のタッチパッドなどと類似の操作方法でカーソルの3次元位置情報を容易に入力できる3次元ポインティング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上のような従来技術の課題を解決するための本発明は次のようなものである。
1.表示された3次元画像に対して、カーソルを3次元的に移動させるための3次元ポインティング装置であって、指先又はペン先をその内部で3次元的に移動できるゲル状の樹脂体、この樹脂体の内部で空間的に移動する指先又はペン先の位置を検出する空間的位置検出部、及び、この空間的位置検出部からのデータに基づいて、カーソルを3次元的に移動させるカーソル制御手段、を含むことを特徴とする、3次元ポインティング装置。
2.表示された3次元画像に対して、カーソルを3次元的に移動させるための3次元ポインティング装置であって、指先又はペン先からの押圧位置を検出するための押圧位置検出シートが、少なくとも2枚以上、積層されて成ることを特徴とする、3次元ポインティング装置。
3.上記2において、前記押圧位置検出シートは、弾性シートを介して互いに積層されている、3次元ポインティング装置。
4.上記2又は3において、さらに、前記の積層された押圧位置検出シートの中の表層側の1枚の押圧位置検出シートのみが押圧位置を検出したときは、カーソルを2次元的にのみ移動させると共に、前記の積層された押圧位置検出シートの中の2枚以上の押圧位置検出シートが同時に押圧位置を検出したときは、カーソルを3次元的に移動させるカーソル移動制御手段を備えたことを特徴とする、3次元ポインティング装置。
5.上記4において、前記カーソル移動制御手段は、前記の積層された押圧位置検出シートの中の2枚以上の押圧位置検出シートが同時に押圧位置を検出したとき、それらの各シートが検出した各押圧位置から、前記指先又はペン先の押圧方向を求め、この求められた押圧方向に応じて、カーソルを3次元的に移動させるものである、3次元ポインティング装置。
6.上記2〜5において、さらに、前記の少なくとも1枚の押圧位置検出シートには、押圧位置に加えられた押圧力の大きさを検出する押圧力検出部が備えられており、前記の積層された押圧位置検出シートの中の2枚以上の押圧位置検出シートが同時に押圧位置を検出したとき、前記の押圧力検出部により検出された押圧力の大きさに応じて、カーソルの3次元的な移動の速度を制御するカーソル移動速度制御手段を備えたことを特徴とする、3次元ポインティング装置。
【発明の効果】
【0006】
1.本発明では、指先又はペン先をその内部で3次元的に移動できる柔らかい粘土状又はゲル状の樹脂体、この樹脂体の内部で空間的に移動する指先又はペン先の位置を検出する空間的位置検出部、及び、この空間的位置検出部からのデータに基づいて、カーソルを3次元的に移動させるカーソル制御手段を備えることにより、ユーザーが前記樹脂体の中で指先やペン先を任意に動かすとそれに応じて画面の立体画像上でカーソルを移動させられるようになる。特に、本発明では、前記樹脂体は柔らかい粘土状又はゲル状の性質を有しているので、ユーザーが指先やペン先を前記樹脂体の中で動かすときは、前記樹脂体からユーザーに「ある程度の抵抗」が伝えられるので、例えば、人体の内部を立体画像で表示しているときに、バーチャル・リアリティ技術(VR技術)で前記立体画像による人体の内部をユーザーが指先で探る場合などに、ユーザーは、前記の樹脂体から「ある程度の抵抗」を受ける感覚により、「人体内を本当に指先で探っているような、より現実らしい感覚」を得ることができる。
2.指先又はペン先からの押圧位置を検出するための押圧位置検出シートが少なくとも2枚以上積層されて成るので、指先やペン先の平面的(2次元的)な移動だけでなく、立体的(3次元)的な移動をも検出できるようになる。したがって、この3次元的な移動の検出に基づいて、カーソルを3次元的に移動させることも可能になる。
3.上記2において、前記押圧位置検出シートを弾性シートを介して互いに積層することにより、指先又はペン先の押圧「方向」がより正確に検出できるようになる。
4.上記2又は3において、さらに、カーソル移動制御手段を、前記の積層された押圧位置検出シートの中の2枚以上の押圧位置検出シートが同時に押圧位置を検出したときのみ、カーソルを3次元的に移動させるように構成することにより、ユーザーがカーソルを平面的にのみ移動させたいときは、確実に、平面的にのみ移動させられるようになるし、また、ユーザーがカーソルを3次元的に移動させたいときは、確実に、3次元に移動させられるようになる。
5.上記4において、前記カーソル移動制御手段を、前記の積層された押圧位置検出シートの中の2枚以上の押圧位置検出シートが同時に押圧位置を検出したとき、それらの各シートが検出した各押圧位置から、前記指先又はペン先の押圧方向を求め、この求められた押圧方向に応じて、カーソルを3次元的に移動させるように構成することにより、前記指先やペン先の「押圧方向」をより正確に検出でき、カーソルをより正確に移動させられるようになる。
6.上記2〜5において、さらに、前記の少なくとも1枚の押圧位置検出シートに、押圧位置に加えられた押圧力の大きさを検出する押圧力検出部を備えておき、前記の積層された押圧位置検出シートの中の2枚以上の押圧位置検出シートが同時に押圧位置を検出したとき、前記の押圧力検出部により検出された押圧力の大きさに応じて、カーソルの3次元的な移動の速度を制御するカーソル移動速度制御手段を備えるようにしたので、ユーザーは、指先やペン先の押圧力を制御することにより、カーソルの三次元的な「移動速度」を自由に制御できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明を実施するための最良の形態は、以下の実施例1について述べるような形態である。
【実施例1】
【0008】
次に本発明の実施例1を図1に基づいて説明する。図1は、本実施例1による3次元ポインティング装置を示す斜視図である。図1において、11は容器、12はこの容器11に収納されたゲル状の樹脂体である。この樹脂体12は、柔らかい粘土状又はゲル状の物質である。つまり、この樹脂体12は、ユーザーが、指先又はペン先をこの中に容易に突っ込むことができ、さらに、突っ込んだ状態で自由に指先又はペン先の位置を空間的に動かすことができる性質を有している。また、この樹脂体12は、指先又はペン先で触れても指先に付着しない性質を有するものである。つまり、この樹脂体12は、ユーザーが指先又はペン先を突っ込んだ後に指先又はペン先を引き上げたとき、その指先又はペン先には樹脂体12が全く(又はほとんど)付着しない性質を有している。また、この樹脂体12は、ユーザーが、指先又はペン先をその中に突っ込んで動かそうとすると、従来の柔らかい粘土やゲルと同様に、「ある程度の抵抗」(摩擦抵抗などによるもの)をユーザーに与える性質を有するものである。
【0009】
次に、本実施例1においては、前記容器11には、前記樹脂体12内の指先又はペン先の空間的位置を三次元的に検出するための三次元位置検出部(図示せず)が備えられている。この3次元位置検出部の一つの構成としては、例えば、図6のX−Y平面とX−Z平面とY−Z平面との3方向からそれぞれ前記指先やペン先に向けてX線を放射することにより、前記指先やペン先の空間的位置を3次元的に検出できるX線検出器により、構成されている。また、前記3次元位置検出部の他の構成としては、例えば、図6のX−Y平面とX−Z平面とY−Z平面との3方向からそれぞれ前記指先やペン先に向けて超音波を放射し、その超音波が指先やペン先から反射する状態を検出することにより、前記指先やペン先の空間的位置を3次元的に検出できる超音波検出器により、構成するようにしてもよい。
【0010】
前記の3次元位置検出部が検出した指先やペン先の3次元位置データは、カーソル位置制御装置6に送られる。すなわち、例えば、図6のX−Y平面からのX線の放射により検出された指先やペン先の位置データはデータ線15によりカーソル位置制御装置6に送られ、図6のX−Z平面からのX線の放射により検出された指先やペン先の位置データはデータ線16によりカーソル位置制御装置6に送られ、図6のY−Z平面からのX線の放射により検出された指先やペン先の位置データはデータ線17によりカーソル位置制御装置6に送られる。
【0011】
カーソル位置制御装置6では、前記3次元位置データに基づいてカーソル位置制御データ(カーソルの移動方向、移動拒理、及び移動速度を制御するためのデータ)を生成し、この制御データをコンピュータ本体7に送る。コンピュータ本体7においては、この送られた制御データに基づいて、コンピュータ画面の3次元画像上で、カーソルを3次元的に移動制御する。
【0012】
なお、この実施例1においては、前記樹脂体12は前述のように「ある程度の抵抗(固さ)」を有するものであるので、ユーザーが、指先やペン先を、前記樹脂体12の表面を軽くなぞるように移動させれば、従来のタッチパッドと同様に、この実施例1を、指先やペン先の平面的な(2次元的な)移動のみを検出する装置としても使用すること、もできる。
【0013】
また、この実施例1においては、指先やペン先の空間的位置をX線や超音波により3次元的に検出するようにしているが、本発明はこれに限られるものではなく、様々な方式が可能である。例えば、前記樹脂体12を透明樹脂で形成し、ユーザーの指先やペン先に発光体を装着し、この発光体から発する光を、前記容器11の前記のX−Y平面、X−Z平面、及びY−Z平面に縦横の格子状に配置された多数の受光素子により検出することにより、前記指先やペン先の空間的位置を3次元的に検出することなども可能である。
【実施例2】
【0014】
図2は、本発明の実施例2によるタッチパッドの構成を示す分解斜視図である。図2において、1,2,及び3はタッチパッドの表面側に最も近い位置に置かれた押圧位置検出シートである。これらの各押圧位置検出シート1,2,3は、指先やペン先で押圧することによりその押圧された位置を検出するものである。これらの各押圧位置検出シート1,2,3の構成は、例えば、一枚のシートに多数の圧電素子1a,2a,3aが平面的に(縦横の格子状に)配置され、各圧電素子1a,2a,3aにはそれぞれ電極(図示せず)が備えられて成るものである。
【0015】
そして、これらの各押圧位置検出シート1,2,3のある部分(点)に指先やペン先で押圧力が加えられたとき、その押圧力が加えられた部分(点)の圧電素子1a,2a,3aに圧電気が生じる。これにより、前記の各押圧位置検出シート1,2,3からは、前記の縦横の格子状に配置された各圧電素子1a,2a,3aのどの圧電素子に押圧力が加えられたのかを示す信号(すなわち、シート上のどの位置(点)が押圧されたかという押圧位置を示すデータ)が、出力されるようになっている。
【0016】
また、図2において、4及び5はゴムなどの弾性シートである。本実施例2によるタッチパッドは、前記押圧位置検出シート1と押圧位置検出シート2との間に弾性シート4が介設され、前記押圧位置検出シート2と押圧位置検出シート3との間に弾性シート5が介設され、これらが図1のような順序で積層されることにより、形成されている。
【0017】
また、本実施例2では、前記各押圧位置検出シート1,2,3からの押圧位置データは、カーソル位置制御装置6に送られる。カーソル位置制御装置6は、ユーザーの指先やペン先を押圧する力が弱い結果、前記の積層された各押圧位置検出シート1,2,3の中の表面側の押圧位置検出シート1のみが押圧位置を検出したときは、カーソルを2次元的にのみ移動させるように制御する。また、前記カーソル位置制御装置6は、ユーザーの指先やペン先を押圧する力がある程度大きい結果、前記の積層された各押圧位置検出シート1,2,3の中の2枚以上の押圧位置検出シートが同時に押圧位置を検出したときは、カーソルを3次元的に移動させるように制御する。
【0018】
前記のカーソルを3次元的に移動させる場合の、前記カーソル位置制御装置6の動作は、次の通りである。カーソル位置制御装置6は、前記の積層された各押圧位置検出シート1,2,3の中の2枚以上の押圧位置検出シートが同時に押圧位置を検出して所定の位置情報を出力したときは、まず、それらの各シートからそれぞれ出力された各押圧位置情報に基づいて、前記指先又はペン先の「押圧方向」を求める。そして、前記カーソル位置制御装置6は、この求めた押圧方向に応じて、カーソルを3次元的に移動させるときのカーソルの「移動方向」を求め、その移動方向を示す制御データを、コンピュータ本体7に出力する。なお、前記の「押圧方向」の求め方については、図3〜図6により後述する。
【0019】
また、このようにして求められた「移動方向」へのカーソルの「移動距離」は、次のようにして求められる。前記の各押圧位置検出シート1,2,3からの押圧位置データは、ユーザーが指先やペン先でタッチパッドを押圧している間は、継続的に、カーソル位置制御装置6に出力され続ける。カーソル位置制御装置6は、前記の押圧位置データが継続的に入力される時間を測定する。そして、カーソル位置制御装置6は、この測定した入力時間の長さに応じた距離(例えば、比例した距離)だけ、カーソルを移動させるように、カーソルの「移動距離」のデータを求め、コンピュータ本体7に出力する。具体的には、前記カーソル位置制御装置6は、前記各押圧位置検出シート1,2,3からの押圧位置データが出力されている間(ユーザーが指先又はペン先を押圧している間)は、継続して、後述の「移動速度」に基づいてカーソルを移動させ続けることになる。
【0020】
また、本実施例2においては、前記の押圧位置検出シート1,2,3には、それぞれ、押圧位置に加えられた押圧力の大きさを検出する押圧力検出部も備えられている。具体的には、前記各圧電素子1a,2a,3aに生じる圧電気の大きさは押圧力の大きさに応じて異なるので、この圧電気の大きさを検出することにより、前記指先又はペン先の押圧力の大きさも検出できる。そして、この検出された押圧力の大きさを示すデータは、各押圧位置検出シート1,2,3から前記カーソル位置制御装置6に出力される。カーソル位置制御装置6では、これらの各押圧位置検出シート1,2,3からの前記「押圧力の大きさを示すデータ」に基づいて、例えば、各各押圧位置検出シート1,2,3からの各「押圧力の大きさを示すデータ」の総和を求め、その総和の値に基づいて、タッチパッド全体への押圧力の大きさを求める(なお、本発明では、前述のように各押圧位置検出シートからの各データの総和に基づいてではなく、どれか一つの押圧位置検出シートからの押圧力を示すデータのみに基づいて、タッチパッド全体への押圧力の大きさを求めるようにしてもよい)。そして、前記カーソル位置制御装置6は、この求めた押圧力の大きさに応じたカーソルの3次元的な「移動速度」を制御するためのデータを、コンピュータ本体7に出力する。
【0021】
次に、本実施例2の動作を説明する。図3は本実施例2によるタッチパッドを示す断面図、図4はこの図3のタッチパッドを構成する押圧位置検出シート1,2,3を示す平面図である。今、このタッチパッドに対して、ユーザーが、指先又はペン先で、図の矢印Aの方向から押圧したとする。すると、その押圧力がかなり大きいときは、その押圧力は、最も表層に位置する押圧位置検出シート1のみでなく、その下の弾性シート4、さらにその下の押圧位置検出シート2、さらにその下の弾性シート5、さらにその下の押圧位置検出シート3にも達せられるようになる。
【0022】
すなわち、図3に示すように、タッチパッドに対して、指先又はペン先で図3のA方向から押圧すると、このA方向に沿って、押圧位置検出シート1の圧電素子1aa、同シート2の圧電素子2aa、及び、同シート3の圧電素子3aaから、それぞれ所定の電圧(圧電気)が生じる。このことを、平面的に示すと、図4に示すように、押圧位置検出シート1の圧電素子1aa、同シート2の圧電素子2aa、及び、同シート3の圧電素子3aaに押圧力が加えられて、それらの各圧電素子1aa,2aa,3aaから、それぞれ所定の電圧が生じる。そして、各圧電素子1aa,2aa,3aaの「各シート内の位置(押圧位置)」を示すデータが、前記各シート1,2,3から、それぞれ、前記カーソル位置制御装置6に出力される。また、前述のように、各圧電素子1aa,2aa,3aaからの電圧は、そこに加えられた「押圧力の大きさ」により異なるので、その押圧力の大きさを示すデータも、それぞれ、前記カーソル位置制御装置6に出力される。
【0023】
カーソル位置制御装置6は、前記の各押圧位置検出シート1,2,3からそれぞれ送られて来た「押圧位置」を示すデータに基づいて、前記の「押圧方向」(この場合はA方向)を求める。すなわち、図3及び図4の各圧電素子1aa,2aa,3aaの位置データ(押圧位置データ)から、前記指先又はペン先の「押圧方向」(図3のA方向)を求めることができる。そして、カーソル位置制御装置6は、この求められた「押圧方向」に基づいて、カーソルの「移動方向」を求める。
【0024】
次に、前記カーソル位置制御装置6は、前記の各押圧位置検出シート1,2,3からそれぞれ送られて来た「押圧力の大きさ」を示すデータに基づいて、カーソルの「移動速度」を求める。
【0025】
さらに、前記カーソル位置制御装置6は、前記の各押圧位置検出シート1,2,3からそれぞれ「押圧位置情報」が継続して送られて来る時間に基づいて、カーソルの「移動時間」を求め、さらに、「移動距離(移動量)」を求める(前記の移動速度と移動時間により移動距離が求められる)。実際には、前記の各押圧位置検出シート1,2,3からそれぞれ「押圧位置情報」が継続して送られて来る間は、継続してカーソルが移動するように制御する。
【0026】
以上のようにして、前記カーソル位置制御装置6は、カーソルの3次元的な移動方向、移動速度、及び移動距離(移動量)を決定する。
【0027】
次に、本実施例2の他の動作を、図5及び図6に基づいて説明する。図5及び図6は、本実施例2のタッチパッドに対して、ユーザーが、指先又はペン先で、図5の矢印Bの方向に押圧したときの動作を説明するためのものである。ユーザーが指先又はペン先でタッチパッドを矢印Bの方向に押圧したときは、図5に示すように、各押圧位置検出シート1,2,3には、それぞれ、図5の各圧電素子1ab,2ab,3abに最も大きい押圧力が加えられることになる。すなわち、最も表層に位置する押圧位置検出シート1の圧電素子1abの位置に加えられた押圧力(ユーザーが押圧する力)は、弾性シート4を介して、押圧位置検出シート2の圧電素子2abの位置に伝えられ(押圧位置検出シート2の中では圧電素子2abの位置に最も大きい押圧力が伝えられる)、さらに、弾性シート5を介して、押圧位置検出シートの圧電素子3abの位置に伝えられる(押圧位置検出シート3の中では圧電素子3abの位置に最も大きい押圧力が伝えられる)。また、図6は図5について上述した状態を各押圧位置検出シート1,2,3毎に平面的に示したものである。
【0028】
以上のように、図5の矢印B方向に押圧力が加えられると、前記各圧電素子1ab,2ab,3abからそれぞれ電圧が発生し、各押圧位置検出シート1,2,3毎にそれぞれの押圧位置を示すデータが得られる。そして、これらの各押圧位置を示すデータは、それぞれ、前記カーソル位置制御装置6に送られる。
【0029】
なお、以上の本実施例2では、押圧位置を検出するための素子として押圧により圧電気が生じる圧電素子1a,2a,3aを使用しているが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、押圧力により抵抗値が変化する感圧体を使用して押圧位置を検出するようにしてもよい。また、本発明においては、指先やペン先のタッチパッド上の平面的な(2次元的な)位置を検出するための部材として、本実施例2で説明した圧電素子1aを使用した押圧位置検出シートを使用しているが、これ以外に、指先やペン先のタッチパッド上の平面的な(2次元的な)位置を検出するための部材として従来の静電容量式の押圧位置(接触位置)検出シートを使用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例1の構成を説明するための斜視図である。
【図2】本発明の実施例2によるタッチパッドの構成を示す分解斜視図である。
【図3】本実施例2の動作を説明するための図である。
【図4】本実施例2の動作を説明するための図である。
【図5】本実施例2の動作を説明するための図である。
【図6】本実施例2の動作を説明するための図である。
【図7】従来のノート型パソコンとそれに備えられたタッチパッドを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1,2,3 押圧位置検出シート
1a,1aa,1ab.2a,2aa,2ab,3a,3aa,3ab 圧電素子
4,5 弾性シート
6 カーソル位置制御装置
7 コンピュータ本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示された3次元画像に対して、カーソルを3次元的に移動させるための3次元ポインティング装置であって、
指先又はペン先をその内部で3次元的に移動できるゲル状の樹脂体、
この樹脂体の内部で空間的に移動する指先又はペン先の位置を検出する空間的位置検出部、及び、
この空間的位置検出部からのデータに基づいて、カーソルを3次元的に移動させるカーソル制御手段、
を含むことを特徴とする、3次元ポインティング装置。
【請求項2】
表示された3次元画像に対して、カーソルを3次元的に移動させるための3次元ポインティング装置であって、
指先又はペン先からの押圧位置を検出するための押圧位置検出シートが、少なくとも2枚以上、積層されて成ることを特徴とする、3次元ポインティング装置。
【請求項3】
請求項2において、前記押圧位置検出シートは、弾性シートを介して互いに積層されている、3次元ポインティング装置。
【請求項4】
請求項2又は3において、さらに、
前記の積層された押圧位置検出シートの中の表層側の1枚の押圧位置検出シートのみが押圧位置を検出したときは、カーソルを2次元的にのみ移動させると共に、前記の積層された押圧位置検出シートの中の2枚以上の押圧位置検出シートが同時に押圧位置を検出したときは、カーソルを3次元的に移動させるカーソル移動制御手段を備えたことを特徴とする、3次元ポインティング装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記カーソル移動制御手段は、前記の積層された押圧位置検出シートの中の2枚以上の押圧位置検出シートが同時に押圧位置を検出したとき、それらの各シートが検出した各押圧位置から、前記指先又はペン先の押圧方向を求め、この求められた押圧方向に応じて、カーソルを3次元的に移動させるものである、3次元ポインティング装置。
【請求項6】
請求項2から5までいずれかにおいて、さらに、
前記の少なくとも1枚の押圧位置検出シートには、押圧位置に加えられた押圧力の大きさを検出する押圧力検出部が備えられており、
前記の積層された押圧位置検出シートの中の2枚以上の押圧位置検出シートが同時に押圧位置を検出したとき、前記の押圧力検出部により検出された押圧力の大きさに応じて、カーソルの3次元的な移動の速度を制御するカーソル移動速度制御手段を備えたことを特徴とする、3次元ポインティング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−140492(P2010−140492A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294983(P2009−294983)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【分割の表示】特願2007−153433(P2007−153433)の分割
【原出願日】平成9年6月20日(1997.6.20)
【出願人】(595100934)
【Fターム(参考)】