説明

3次元造形装置

【課題】 造形精度の低下を抑制しつつ、可搬プレートを着脱する際の作業性を向上させた3次元造形装置を提供する。
【解決手段】 水平なプレート載置面を有するプレート取付台41と、造形ステージ112となる水平面を有し、プレート載置面上に載置される可搬プレート41と、プレート取付台42に設けられ、可搬プレート41を磁力によって固定するための電磁コイル421と、外部空間から造形ステージ112上の作業空間110へのアクセスを遮断する上部扉11と、上部扉11の開閉を検出する扉センサ403と、上部扉11の閉状態を示す扉センサ403の出力に基づいて、電磁コイル421に駆動電流を供給し、プレート取付台42に対し可搬プレート41を固定させるコイル駆動手段により構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元造形装置に係り、さらに詳しくは、造形ステージ上に造形材層を順に積層形成する3次元造形装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、積層造形法を用いて、立体造形物を簡易的に作製することが行われている。積層造形法は、造形対象物を多数の薄い層に分割した際の各層と同じ2次元形状の薄板を形成し、この薄板を積層して立体造形物を作製する造形方法であり、ラピッドプロトタイピングに用いられている。この様な積層造形法には、光造形法、粉末結合法、シート堆積法、樹脂押し出し法、インクジェット方式などがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
インクジェット方式の造形法は、インクジェットプリンタの技術を利用した造形法であり、インクの代わりに紫外線(UV)硬化樹脂などの光硬化性の造形材を用い、造形材をノズルから吐出させ、造形ステージ上に堆積させた造形材に光を照射して固化させる。この造形法では、造形材を吐出するための多数の吐出口が略直線状に配列された造形材ノズルを造形ステージと平行に2次元走査することによって、造形材からなるスライス層が形成され、スライス層を順に積層形成することによって立体造形物が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−90530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
3次元造形装置には、造形ステージ上に作製された造形物をステージごと取り出すことができるものがある。例えば、造形ステージとなる水平面を有する可搬プレートを取付台に着脱可能に取り付けた造形装置が知られている。この様な造形装置では、造形ステージが着脱不可であるものに比べ、造形面が損傷した場合などに造形ステージを交換することができる。また、交換用の可搬プレートを別個に用意しておけば、可搬プレートから造形物を撤去しなくても良いので、造形処理が終了してから次の造形処理を開始させるまでの間の待ち時間を短縮することができる。
【0006】
しかしながら、従来の3次元造形装置では、メカニカルな着脱機構によって可搬プレートが取付台に取り付けられている。例えば、取付台に形成され、水平方向に延びるほぞに、可搬プレートに形成されたあり溝を略水平方向から滑り込ませることにより、可搬プレートが取付台に固定される。この様な造形装置では、可搬プレートの位置決め精度を上げようと着脱機構の遊びを小さくすると、可搬プレートが取付台に強固に固定されることから、着脱し難くなる。一方、着脱し易くするために、着脱機構の遊びを大きくすると、造形処理の実行時の振動などによって可搬プレートが移動し、造形精度が低下してしまうという問題があった。また、可搬プレートの取付台に対する固定作業が、水平方向から、取付台のほぞに対して、可搬プレートを差し込む動作となるため、差込動作完了まで可搬プレートを水平に維持することがオペレータに要求されるという煩わしさがあった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、造形精度の低下を抑制しつつ、可搬プレートを着脱する際の作業性を向上させた3次元造形装置を提供することを目的とする。特に、遮断扉の開閉状態に応じて可搬プレートをプレート取付台に強固に固定することができるとともに、可搬プレートを簡単に着脱することができる3次元造形装置を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、着脱し易さを損なうことなく、造形精度の低下を抑制することができるとともに、可搬プレートが未装着のまま電磁コイルに駆動電流が供給されるのを抑制することができる3次元造形装置を提供することを目的とする。さらに、本発明は、可搬プレートから造形物が撤去されないまま次の造形処理が開始されるのを抑制することができる3次元造形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の本発明による3次元造形装置は、造形ステージ上に造形材からなる造形材層を順に積層形成する3次元造形装置であって、水平なプレート載置面を有するプレート取付台と、上記造形ステージとなる水平面を有し、上記プレート載置面上に載置される可搬プレートと、上記プレート取付台に設けられ、上記可搬プレートを磁力によって固定するための電磁コイルと、外部空間から上記造形ステージ上の作業空間へのアクセスを遮断する遮断扉と、上記遮断扉の開閉を検出する扉センサと、上記遮断扉の閉状態を示す上記扉センサの出力に基づいて、上記電磁コイルに駆動電流を供給し、上記プレート取付台に対し上記可搬プレートを固定させるコイル駆動手段とを備えて構成される。
【0010】
この様な構成によれば、造形ステージとなる水平面を有する可搬プレートは、プレート取付台のプレート載置面上に載置され、遮断扉の開閉状態に応じて電磁コイルの磁力によりプレート取付台に固定される。このため、遮断扉の開閉状態に応じて可搬プレートをプレート取付台に強固に固定することができるとともに、可搬プレートを簡単に着脱することができる。従って、造形中に可搬プレートが移動して造形精度が低下するのを抑制しつつ、可搬プレートを着脱する際の作業性を向上させることができる。
【0011】
第2の本発明による3次元造形装置は、上記構成に加え、上記可搬プレートが上記プレート載置面上に載置されたことを検出する可搬プレート着座検出センサを備え、上記コイル駆動手段が、上記遮断扉の閉状態を示す上記扉センサの出力と、上記可搬プレートが上記プレート載置面上に載置されたことを示す上記可搬プレート着座検出センサの出力とに基づいて、上記電磁コイルへの電流供給を行うように構成される。この様な構成によれば、可搬プレートがプレート取付台のプレート載置面上に載置されていないにも関わらず、電磁コイルに駆動電流が供給されるのを抑制することができる。
【0012】
第3の本発明による3次元造形装置は、上記構成に加え、上記可搬プレート着座検出センサの出力に基づいて、造形処理が終了した後に、上記可搬プレートが搬出されたか否かを判定するプレート搬出判定手段と、上記プレート搬出判定手段の判定結果に基づいて、造形物の取り出し忘れを報知する報知手段とを備えて構成される。
【0013】
この様な構成によれば、造形処理の終了後、可搬プレートが装着状態から非装着状態へ移行したか否かにより、可搬プレートが搬出されたか否かを判定することができる。また、その様な判定結果に基づいて、造形物の取り出し忘れを報知することにより、可搬プレートから造形物が撤去されないまま次の造形処理が開始されるのを抑制することができる。
【0014】
第4の本発明による3次元造形装置は、上記構成に加え、上記プレート載置面に形成され、鉛直上方へ突出するテーパー面を有するプレート係合部と、上記可搬プレートに形成され、上記テーパー面を収容する取付台係合部とを備え、上記可搬プレート着座検出センサが、上記プレート係合部の上記テーパー面が上記可搬プレートの上記取付台係合部内に収容されたか否かを検出し、上記コイル駆動手段が、上記遮断扉が閉まっており、かつ、上記プレート係合部の上記テーパー面が上記可搬プレートの上記取付台係合部内に収容されている場合に、上記電磁コイルへの電流供給を行うように構成される。
【0015】
この様な構成によれば、プレート係合部のテーパー面を可搬プレートの取付台係合部内に収容させることにより、可搬プレートをプレート取付台に対して高精度に位置決めすることができる。また、遮断扉が閉まっていてプレート係合部のテーパー面が可搬プレートの取付台係合部内に収容されている場合に、電磁コイルへの電流供給が行われるので、遮断扉が開いているか、或いは、可搬プレートが未装着のまま、電磁コイルへ駆動電流が供給されるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明による3次元造形装置では、遮断扉の開閉状態に応じて可搬プレートをプレート取付台に強固に固定することができるとともに、可搬プレートを簡単に着脱することができる。従って、造形精度の低下を抑制しつつ、可搬プレートを着脱する際の作業性を向上させることができる。
【0017】
また、可搬プレートがプレート取付台のプレート載置面上に載置されていないにも関わらず、電磁コイルに駆動電流が供給されるのを抑制することができる。従って、着脱し易さを損なうことなく、造形精度の低下を抑制することができるとともに、可搬プレートが未装着のまま電磁コイルに駆動電流が供給されるのを抑制することができる。さらに、可搬プレートから造形物が撤去されないまま次の造形処理が開始されるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態による3次元造形装置10を含む造形システム100の一構成例を示したシステム図である。
【図2】図1の3次元造形装置10の一構成例を示した斜視図であり、作業空間110及びカートリッジ収容部130内の様子が示されている。
【図3】図2のヘッドユニット111の概略構成の一例を示した図であり、ヘッドユニット111をx,y,z方向から見た様子が示されている。
【図4】図2の3次元造形装置10における造形時の動作の一例を模式的に示した説明図であり、造形ステージ112上に立体造形物が形成される様子が示されている。
【図5】図2の3次元造形装置10における造形時の動作の一例を模式的に示した説明図であり、x方向の主走査往路及び主走査復路の様子が示されている。
【図6】図1の3次元造形装置10におけるz移動ユニット40の構成例を示した斜視図であり、可搬プレート41をプレート取付台42に装着する前の状態が示されている。
【図7】図6のプレート係合部材50の構成例を示した斜視図である。
【図8】図6の可搬プレート41の構成例を示した図であり、可搬プレート41の上面及び下面が示されている。
【図9】図6のプレート取付台42の構成例を示した図であり、プレート取付台42を上方から見た様子が示されている。
【図10】図6のz移動ユニット40におけるプレート係合部材50付近をzx面に平行な鉛直面で切断した場合の切断面を示した断面図である。
【図11】図6のz移動ユニット40における着座検出センサ60の構成例を示した図であり、着座検出センサ60付近を鉛直面で切断した場合の切断面が示されている。
【図12】図1の3次元造形装置10内の機能構成の一例を示したブロック図である。
【図13】図12の3次元造形装置10における造形準備時の動作の一例を示したフローチャートである。
【図14】図6のプレート係合部材50の他の構成例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、本発明による3次元造形装置が前提とするインクジェット方式の造形装置の概略構成について、図1〜図5を用いて説明する。
【0020】
<造形システム100>
図1は、本発明の実施の形態による3次元造形装置10を含む造形システム100の一構成例を示したシステム図である。この造形システム100は、3次元造形装置10と、LAN(Local Area Network)1を介して3次元造形装置10に接続された複数の造形依頼者端末20により構成される。
【0021】
3次元造形装置10は、インクジェット方式の積層型造形機であり、所定のUV硬化樹脂を造形材として用い、後述する造形ステージ上に造形材からなる造形材層を順に積層形成することによって所望の立体造形物を形成する。造形依頼者端末20は、3次元造形用のアプリケーションプログラムがインストールされたPC(パーソナルコンピュータ)であり、所望の立体造形物を作製するための造形データを生成する造形データ作成装置として機能する。
【0022】
造形データは、造形対象物の3次元形状を示す形状情報と、形状情報以外の造形条件とからなる。造形データは、例えば、CADデータに基づいて作成され、必要に応じて、3次元造形装置10で用いられる積層データとして、各層単位でのデータに加工される。但し、層単位でのデータ加工は、3次元造形装置10側で行われても良い。形状情報以外の造形条件とは、造形対象物に関わらず指定することが可能な造形情報のことであり、造形材の種類、造形材層の厚さ、走査速度などの造形パラメータと、造形ステージ上における造形対象物の配置態様を示す配置情報とからなる。
【0023】
造形依頼者端末20において作成された造形データは、3次元造形装置10へ送信される。3次元造形装置10では、LAN1を介して造形依頼者端末20から受信した複数の造形データが造形ジョブとして管理される。すなわち、造形ジョブは、造形データと、造形データに関連付けて保持される属性情報とからなる。この属性情報には、造形データの識別情報、造形データの送受信日時、造形依頼者の識別情報などが含まれる。造形依頼者端末20は、この様な造形処理の依頼者が使用する端末装置である。
【0024】
この3次元造形装置10には、上部扉11、操作表示部12及び前面扉13が設けられている。上部扉11は、外部から後述する作業空間110へアクセスするのを規制し、また、造形材などが外部空間へ飛散するのを防止するための開閉可能な遮断扉であり、手前側を持ち上げることにより、作業空間110へアクセスすることができる。操作表示部12は、例えば、タッチパネルからなり、ユーザによる操作を受け付け、また、動作状態や各種のエラーメッセージを画面表示する。前面扉13は、造形材カートリッジなどを収容するカートリッジ収容部130用の開閉扉であり、上部を手前側へ移動させることにより、後述するカートリッジ収容部130へアクセスすることができる。
【0025】
<3次元造形装置10>
図2は、図1の3次元造形装置10の一構成例を示した斜視図であり、作業空間110及びカートリッジ収容部130内の様子が示されている。図中には、上部扉11及び前面扉13を開扉した状態の3次元造形装置10が示されている。
【0026】
作業空間110は、造形材を吐出するヘッドユニット111を2次元走査させ、また、ヘッドユニット111から吐出した造形材を造形ステージ112上に堆積させるための空間であり、作業台としての天板116上に形成されている。この天板116には、ヘッドユニット111を主走査方向であるx方向に駆動させる際にヘッドユニット111をガイドする一対のx走査用係合溝113aと、ヘッドユニット111を副走査方向であるy方向に駆動させる際にヘッドユニット111をガイドするy走査用ガイド機構113bと、パージトレイ114及び受光孔115が配置されている。なお、ヘッドユニット111は、一方のx走査用係合溝113aに沿って作業台近傍に設けられる図示しない駆動手段によってx走査方向に往復動されるようになっている。
【0027】
造形ステージ112は、水平で平坦な造形面を有し、造形面上に造形材を堆積させ、立体造形物を形成するための可動ステージであり、鉛直方向に移動させることができる。この造形ステージ112は、天板116の中央に配置されている。ヘッドユニット111は、図示しない駆動装置によって、造形ステージ112と平行に2次元走査される可動ユニットである。
【0028】
この3次元造形装置10では、鉛直方向をz方向とし、互いに直交する水平方向をxy方向とすれば、ユーザから見て左右方向となるx方向を主走査方向とし、ユーザから見て前後方向となるy方向を副走査方向として、2次元走査が行われる。造形材は、主走査方向の走査時に吐出される。また、ヘッドユニット111は、上記2次元走査により、矩形エリア内の任意の位置に移動させることができ、当該矩形エリアが可動エリアとなる。
【0029】
また、言い換えれば、ここでのy方向とは、後述するモデル材用ノズルユニット32及びサポート材用ノズルユニット31の各々が有する複数のオリフィス(後述する吐出口2)が配列した並び方向であり、x方向は水平面内においてこのy方向と直交する方向である。
【0030】
x走査用係合溝113aは、ヘッドユニット111を主走査方向へ走査する駆動装置と係合させるための溝であり、天板116の前端部及び後端部に形成されている。パージトレイ114は、ヘッドユニット111から排出された造形材を使用済み造形材として一時的に収容する容部であり、その様な使用済み造形材からなる造形材液が廃液として保持される。このパージトレイ114は、ヘッドユニット111の可動エリア内であって、造形ステージ112よりも左側に配置されている。
【0031】
3次元造形装置10では、造形処理中において、定期的にパージ処理が行われる。パージ処理は、ヘッドユニット111を造形エリアとしての造形ステージ112上からパージトレイ114上に移動させ、ヘッドユニット111に搭載されている造形材ノズル312,322から造形材を強制的に吐出させることにより、造形材を吐出するための吐出口2や、吐出口2に造形材を供給するための造形材供給経路内に残留する残留物を除去するとともに、造形材ノズル312,322の表面に、図示しないゴム部材を当接させ、摺動させることにより、造形材ノズル表面を清掃する処理である。ここで、ノズルから吐出された造形材は、後述する廃液タンク13Hに回収されるようになっている。
【0032】
受光孔115は、造形材を硬化させるためのUV光の照度を検出する照度センサ用の受光窓であり、天板116に形成された貫通孔からなる。この受光孔115は、上述したパージ用の廃液トレイ(パージトレイ114)の近傍を避け、造形ステージ112を挟んでパージトレイ114とは反対側に配置されている。また、具体的な動作としては、操作表示部12に設けられるランプユニット35の照度検査スイッチを押下し、ヘッドユニット111を駆動させることにより、自動的に受光孔115の真上に位置させ、ランプユニット35を点灯させ、UV光の照度を、受光孔115の内部に設けられる照度センサにより検出させる。
【0033】
カートリッジ収容部130内には、2つのモデル材カートリッジ13Mと、2つのサポート材カートリッジ13Sと、廃液タンク13Hが収容されている。ヘッドユニット111から吐出される造形材には、造形対象物自体を構成するモデル材Mと、造形対象物のオーバーハング部分や孤立部分を支持し、最終的には除去されるサポート材Sとがある。
【0034】
本実施例では、サポート材Sは、モデル材Mに比べ、サポート材Sを除去するための水に対する溶解性の高い材料が含まれている。なお、ここでのオーバーハング部分とは、造形物がz方向(つまり高さ方向)において下方に位置する造形部分よりx−y平面で張り出した部分を意味し、言い換えれば、オーバーハング形状を有する造形物とは、既に成形されたモデル材のスライスが存在しない部分の上表面に新たなモデル材のスライスが成形される部分(オーバーハング部)を有する造形物である。
【0035】
モデル材カートリッジ13Mは、使用前のモデル材Mを収容する着脱式の造形材タンクである。サポート材カートリッジ13Sは、使用前のサポート材Sを収容する着脱式の造形材タンクである。つまり、モデル材カートリッジ13Mやサポート材カートリッジ13Sには、ヘッドユニット111の造形材ノズル312,322から吐出させる前の造形材が収容される。
【0036】
廃液タンク13Hは、パージトレイ114や後述するヘッドユニット111内のローラードレイントレイ(図示せず)から回収された廃液を蓄積するための貯留容器であり、取り外して交換することができる。なお、廃液タンク13Hには、内部に液面検出用のセンサや、廃液タンク13H自体の重量を検出する重量センサなどを設けることにより、廃液タンク13H内の廃液の程度を検出し、オペレータに通知する機能を搭載している。
【0037】
カートリッジ収容部130内には、2個のモデル材カートリッジ13Mと、2個のサポート材カートリッジ13Sとが収容可能であり、両カートリッジを交互に使用することにより、造形処理を中断させることなく空になったカートリッジを交換することができる。
【0038】
<ヘッドユニット111>
図3は、図2のヘッドユニット111の概略構成の一例を示した図であり、図中の(a)には、ヘッドユニット111をy方向(ヘッドユニット111の副走査方向)から見た様子が示され、(b)には、x方向(ヘッドユニット111の主走査方向)から見た様子が示され、(c)には、z方向から見た様子が示されている。
【0039】
このヘッドユニット111は、サポート材用ノズルユニット31、モデル材用ノズルユニット32、y走査用ホルダユニット33、ローラーユニット34及びランプユニット35により構成され、これらのユニット31〜35を一体的に保持している。ユニット31〜35は、この順に、x方向に配列されている。
【0040】
なお、x軸方向に沿うサポート材用ノズルユニット31、モデル材用ノズルユニット32、ローラーユニット34及びランプユニット35の配列の基本的な考え方は、以下の通りである。ヘッドユニット111の主走査方向の往路方向をベースに考えると、サポート材用ノズルユニット31、モデル材用ノズルユニット32は、いずれか一方が他方の前方に位置すればよい。このようなノズルユニットのレイアウトに対して、ローラーユニット34ならびにランプユニット35は、ローラーの作用を往路で行いたい場合は、往路進行方向において、サポート材用ノズルユニット31、モデル材用ノズルユニット32の後方にローラーユニット34、ランプユニット35の順で配置し、ローラーの作用を復路で行いたい場合は、サポート材用ノズルユニット31、モデル材用ノズルユニット32の復路の進行方向において後方にローラーユニット34、ランプユニット35の順で配置すればよい。
【0041】
また、上記実施例においては、ヘッドユニット111から新たな最上層となるための樹脂を吐出させた後、造形途中の未硬化状態の最上層の樹脂層に対して、ローラーユニット34による余剰樹脂の掻き取りを行った後、ランプユニット35によって少なくとも最上層の樹脂層に対する硬化のためのUV光を照射する方法を採用した。
【0042】
しかし、これ以外にも、ヘッドユニット111から新たな最上層となるための樹脂を吐出させた後、余剰樹脂層を含む最上層に対して、ランプユニット35によって一旦光を照射した後、造形途中の未硬化状態の最上層の樹脂層に対して、ローラーユニット34による余剰樹脂の掻き取りを行い、その後再度ランプユニット35によって少なくとも最上層の樹脂層に対する硬化のためのUV光を照射する方法もある。
【0043】
この場合、ランプユニット35は、ヘッドユニット111において、x方向、つまりヘッドユニット111の主走査方向で、サポート材用ノズルユニット31、モデル材用ノズルユニット32を挟む前後方向に一対のランプユニット35を設けることにより、上述のような二度の照射を行うことができる。また、この場合、一度目の照射と二度目の照射を合わせて、最終的に所望する樹脂の硬化の程度を達成するようになるため、一度目の照射後の樹脂は硬化状態ではなく、まだその後のローラーユニット34による掻き取り動作のために、流動可能な、半硬化状態である。このため、この場合においても、ローラーユニット34による樹脂の掻き取り前の最上層の状態は、未硬化または流動可能な状態と表現することとする。
【0044】
モデル材用ノズルユニット32は、モデル材カートリッジ13Mから供給されるモデル材Mを吐出するためのノズルユニットであり、モデル材Mを一時的に収容するリザーブタンク321と、造形ステージ112に対しモデル材Mを吐出する複数の吐出口2がy方向に配列された造形材ノズル322からなる。
【0045】
サポート材用ノズルユニット31は、サポート材カートリッジ13Sから供給されるサポート材Sを吐出するためのノズルユニットであり、サポート材Sを一時的に収容するリザーブタンク311と、サポート材Sを吐出する複数の吐出口2がy方向に配列された造形材ノズル312からなる。
【0046】
モデル材Mやサポート材Sは、造形材ノズル322ならびに312の各々に設けられる吐出口2ごとにノズルユニット内に設けられる圧電素子の振動を利用することにより、吐出口2から液滴となって射出される。吐出口2は一定ピッチでy方向において直線上に配置されている。
【0047】
ヘッドユニット111は、造形材ノズル312,322から造形材を吐出させながらx方向に走査することにより、造形材ノズル312,322の各々に設けられる全ての吐出口2の配列長さに対応する所定幅の造形材層を1回の主走査によって造形ステージ112上に形成することができる。
【0048】
y走査用ホルダユニット33は、ヘッドユニット111を副走査方向へ走査するために、x走査用係合溝113間を結ぶ橋梁体に支持されている。このy走査用ホルダユニット33が上記橋梁体に支持されるとともに、橋梁体上に設けられる図示しない駆動部により、橋梁体に設けられる図示しないy方向(ヘッドユニット111の副走査方向)に延びる軸に沿ってヘッドユニット111を駆動する構造となっている。なお、ヘッドユニット111のy方向(ヘッドユニット111の副走査方向)の駆動方式としては、ヘッドユニット111自体に駆動部を内蔵させ、上述した軸上を移動させるようにしてもよい。
【0049】
ローラーユニット34は、膜厚調整用ローラー341と、このローラー341を回転させる駆動部(図示せず)と、膜厚調整用ローラー341によって造形ステージ112上に形成される造形材層の最表面から掻き取られた造形材を使用済み造形材として一時的に収容するローラードレイントレイ(図示せず)からなる。
【0050】
膜厚調整用ローラー341は、造形スージ112上に吐出し堆積させた造形材膜の厚さを調整する。より詳細に説明すれば、膜厚調整用ローラー341は、造形材ノズル312,322から吐出された造形材にて形成された最表面層の一部を、ランプユニット35にて硬化させる前に所定の厚みを掻き取ることにより、最表面層の厚みの最適化を図っている。また、膜厚調整用ローラー341は、造形材膜の表面を平坦化するためのローラーでもあり、y方向の回転軸を中心として回転する。より詳細に説明すれば、膜厚調整用ローラー341が作用する際のヘッドユニット111の進行方向に対して、膜厚調整用ローラー341は、順方向に回転する。膜厚調整用ローラー341にて掻き取られ、上記ローラードレイントレイ内に収容された造形材は、使用済み造形材からなる廃液として廃液タンク13Hへ送られる。
【0051】
ランプユニット35は、造形ステージ112上に吐出し堆積させた造形材膜にUV光を照射するためのUVランプ351からなり、吐出口2の配列長さよりも幅が広い照射エリアを造形ステージ112上に形成することができる。
【0052】
図3に示すランプユニット35のレイアウトを採用した場合は、図の左から右にヘッドユニット111を移動させる、いわゆる主走査の往路においては、ランプユニット35は、造形材ノズル312,322よりも先行した位置に配置されるため、往路に吐出した造形物の表面にUV光を照射することがない。従って、点灯制御を容易化するため、常時点灯していてもよい。実際のUV光の照射は、復路において、膜厚調整用ローラー341が造形物の最表面の厚みを適正化した後の最表面に対して行われることとなる。
【0053】
なお、ここでのランプユニット35は、UV光を照射する光源であれば、UV光照射用ランプに限る必要はなく、UV光を照射するLED光源も含むものである。つまり、UV光などの樹脂硬化に必要な特定波長の光を照射する樹脂硬化用の光照射手段である。更に、光硬化型の樹脂に代えて、造形用樹脂として所定の温度によって硬化するような熱可塑性樹脂を採用するのであれば、本発明のランプユニット35に代えて、樹脂硬化手段として、冷却または加熱手段を採用したり、場合によっては、不要な場合もある。
【0054】
<造形処理>
図4は、図2の3次元造形装置10における造形時の動作の一例を模式的に示した説明図であり、造形ステージ112上に立体造形物が形成される様子が示されている。図中には、立体造形物を造形中の3次元造形装置10におけるヘッドユニット111及び造形ステージ112をzx面に平行な鉛直面で切断した場合の切断面の様子が示されている。
【0055】
モデル材M及びサポート材Sは、造形ステージ112に対し、主走査方向(x方向)の走査中にヘッドユニット111から下方へ液滴3となって吐出される。主走査往路時に造形ステージ112上に吐出し堆積させたこれらの造形材からなる造形材層は、主走査復路において、膜厚調整用ローラー341により膜厚が調整され、UVランプ351によるUV光の照射によって硬化する。なお、上記の説明では、モデル材M及びサポート材Sの吐出を、主走査の往路方向にて行うと共に、ヘッドユニット111の主走査の復路において行っても良い。また、モデル材M及びサポート材Sの吐出を、ヘッドユニット111の主走査の復路単独で行ってもよい。
【0056】
本実施の形態におけるモデル材M及びサポート材Sは、共にUV硬化性の樹脂であり、同一のUVランプ351によりUV光が照射されることにより硬化する。なお、3次元造形装置10に使用可能な樹脂としては、光硬化性の樹脂の他に、熱を与えて硬化させる熱硬化性の樹脂や、自然冷却により硬化する熱可塑性樹脂を用いることもできる。
【0057】
ヘッドユニット111のy方向の長さ(ヘッド幅)に対応する一定幅の帯状領域は、フィールドと呼ばれ、あるフィールドについて、造形材層の形成が完了すれば、ヘッドユニット111を副走査方向(y方向)へ移動させ、隣接するフィールドに対する造形材層の形成が開始される。どの程度ヘッドユニット111を副走査方向(y方向)へ移動させるかは、造形ステージ112上にて形成する造形物をどのような位置に配置させるかによって決定され、その決定は、造形依頼者端末20における依頼者の入力に基づいて行われる。
【0058】
ヘッドユニット111は、x走査用係合溝113間をy方向に跨ぐ門型の橋梁体に支持され、一対のx走査用係合溝113に沿って主走査方向に走査される。なお、本実施の形態では、門型の橋梁体にヘッドユニット111を支持させ、一対のx走査用係合溝113に沿ってヘッドユニット111を主走査方向に移動させる構成としたが、x走査用係合溝113を1本とし、ヘッドユニット111を片持ちで支持した状態で主走査方向に移動させる構成としても良い。
【0059】
ヘッドユニット111に配設されたモデル材用ノズルユニット32及びサポート材用ノズルユニット31により造形可能なy方向の幅は造形ステージ112上の造形エリアに対して短いため、ヘッドユニット111を主走査方向へ往復移動させて1フィールド分の造形が完了すると、ヘッドユニット111を副走査方向(y方向)に移動させて隣接するフィールドの造形が行われる。ユーザが設定した立体造形物が1フィールド内に収まる場合には、ヘッドユニット111の副走査方向への移動は行われない。なお、ヘッドユニット111による造形可能なy方向の幅が造形ステージ112上の造形エリアのy方向の幅よりも同一又は大きい場合には、ヘッドユニット111は副走査方向へ移動させながら造形する必要はなく、副走査方向への移動機構は不要となる。
【0060】
造形ステージ112上には、上述したヘッドユニット111の主走査及び副走査によって造形材層がフィールドごとに形成され、立体造形物を構成する1つの樹脂層が形成される。この樹脂層は、スライス層と呼ばれ、あるz方向の位置でスライス層の形成が完了すれば、造形ステージ112をスライス層の厚さに相当する距離だけ下方向(z方向)へ移動させ、次のスライス層の形成が開始される。
【0061】
この3次元造形装置10では、着脱可能な可搬プレート41の上面が造形ステージ112であり、可搬プレート41と、可搬プレート41が載置されるプレート取付台42とから、z方向に移動可能なz移動ユニット40が構成される。z移動ユニット40は、z駆動装置43によりz方向の位置が調整される。z駆動装置43は、ヘッドユニット111と造形ステージ112との間の高さ方向の相対位置を変化させる垂直駆動手段である。可搬プレート41は、矩形状の金属板からなり、造形依頼者端末20から指示した全ての造形が完了した時点で、立体造形物を載せたままの状態で、プレート取付台42から取り外すことができる。プレート取付台42には、可搬プレート41を固定するための固定機構(後述)が設けられる。
【0062】
立体造形物は、モデル材Mによって構成され、サポート材Sは、立体造形物のオーバーハング部分や孤立部分を支持し、最終的には所定の方法によって除去される。例えば、モデル材Mとして、水に対し不溶性又は難溶性の樹脂を用い、サポート材Sとして、易溶性の樹脂を用いれば、可搬プレート41上に形成された造形物を取り出して水に浸すことにより、サポート材Sからなる造形材層だけを容易に除去することができる。また、言うまでもなく、造形物としてのモデル材Mからサポート材Sの除去は、従来通り、手を用いてモデル材Mからサポート材Sを外すようにしても良い。
【0063】
この例では、可搬プレート41上に形成された下地層SS上にモデル材M及びサポート材Sからなるスライス層を積層形成することによって所望の立体造形物が形成される。下地層SSは、可搬プレート41の傾きや表面の凹凸を吸収し、また、造形物を剥離し易くするサポート材Sからなる。さらに、この下地層SSは、可搬プレート41の傾きや表面の凹凸を吸収できるのであれば、造形依頼者端末20における造形条件において、中実の構造以外に格子状などの中空構造を採用することにより、材料の使用量の低減を図ることもできる。
【0064】
<主走査>
図5は、図2の3次元造形装置10における造形時の動作の一例を模式的に示した説明図であり、図中の(a)には、x方向の主走査往路の様子が示され、(b)には、主走査復路の様子が示されている。主走査往路では、z方向に関して造形ステージ112の位置がヘッドユニット111から離間した位置に固定され、モデル材Mやサポート材Sが造形材ノズル312,322から吐出される。造形ステージ112上には、これらの造形材からなる造形材層4が形成される。
【0065】
なお、図5(a)に開示するヘッドユニット111と造形ステージ112との間の距離と、図5(b)に開示するヘッドユニット111と造形ステージ112との間の距離とは明らかに異なるように示しているが、これは動作の内容をわかりやすく説明するためであり、実際は、図5(a)の状態でのヘッドユニット111と造形ステージ112との間の距離は2mm以下であり、図5(b)におけるその距離は、図5(a)の状態から造形ステージ112をz方向で且つヘッドユニット111に近づくように1mm以下の距離を移動させるようになっている。
【0066】
造形材層4の厚みはユーザが造形精度や造形速度の観点から決定することができる。つまり、ユーザが造形精度を優先することを選択すれば、造形材層4の厚みは設定可能な最小の厚み又はその近傍の厚みに設定し、造形速度を優先することを選択すれば、最低限の造形精度を維持した厚みに設定すればよい。このような選択は、造形依頼者端末20において形状情報以外の造形条件として選択、設定することができるようになっている。
【0067】
主走査復路の走査は、膜厚調整用ローラー341が造形材層4と接触する位置まで造形ステージ112を上方へ移動させた状態で行われる。この主走査復路では、主走査往路での造形材の吐出に加え、モデル材Mやサポート材Sが造形材ノズル312,322から吐出させることも可能であり、主走査往路や復路で吐出し堆積させた造形材層4の上層部が膜厚調整用ローラー341によって掻き取られる。
【0068】
造形材ノズル312,322に配設された各吐出口2からの造形材の吐出量には個体差があり、また、予め設定された厚みの造形材層4が正確に得られるように、造形材ノズル312,322からの造形材の吐出量を制御するのは困難であるため、少なくとも各造形層を形成する単位で、造形材ノズル312,322からは設定された厚み以上の造形材を吐出し、余分な造形材を膜厚調整用ローラー341により掻き取って回収することで、予め設定された厚みの造形材層4を維持し、均一な厚みの造形材層4を積層することができる。但し、膜厚調整用ローラー341を、その時点での造形層の最表面に当接させるタイミングは、造形データとしての各スライス層データ単位での最表面で行う必要はなく、造形の種々の狙い、例えば、造形精度と造形速度の両立の観点から、必要なタイミングにて行うことができる。
【0069】
膜厚調整用ローラー341は、主走査の往路及び復路に関わらず、一定の回転数で同じ向きに回転する。UVランプ351は、造形材の種類や造形材層4の厚さ、x方向の走査速度に応じた所定の光度で点灯し、主として、膜厚調整用ローラー341による膜厚調整後の造形材層4をUV光の照射によって硬化させる。
【0070】
次に、上面が造形ステージ112となる可搬プレート41の着脱機構について、図6〜図14を用いて説明する。
【0071】
<z移動ユニット40>
図6は、図1の3次元造形装置10におけるz移動ユニット40の構成例を示した斜視図であり、可搬プレート41をプレート取付台42に装着する前の状態が示されている。z移動ユニット40は、上面が造形ステージ112となる可搬プレート41と、可搬プレート41が着脱可能に載置されるプレート取付台42からなる。
【0072】
可搬プレート41は、概ね矩形の薄い板状体からなり、その短辺には、把持用の取っ手411が取り付けられている。取っ手411は、板状体の端面から突出する形状からなり、互いに対向する2つの短辺のそれぞれに設けられている。つまり、各取っ手411を両手でそれぞれ把持することにより、可搬プレート41をバランス良くプレート取付台42に対して、取り付けたり、取り外すことができる。
【0073】
また、可搬プレート41には、複数の係合孔412が形成されている。係合孔412は、プレート取付台42に対して水平面内で位置決めするための取付台係合部である。各係合孔412は、可搬プレート41の周縁部に配置されている。より詳細には、可搬プレート41がプレート取付台42上に取り付けられ、可搬プレート41上に形成させる造形物を造形する造形エリアの外側に位置する四隅に各々係合孔412を設けている。また、実施例では、これらの係合孔412を各コーナ部に一つずつ、計4つ設けているが、可搬プレート41のプレート取付台42への取付性を考慮して、いずれの三つのコーナに一つずつの係合孔412を設けるようにしても良い。更に、この係合孔412は、本実施例では、可搬プレート41の上面から下面まで貫通するような孔として形成しているが、可搬プレート41の下面からz方向に内部方向に延びる凹部としての係合部として形成しても良いし、可搬プレート41の下面からz方向に外部方向に突出する凸部としての係合部として形成しても良い。但し、係合部を凸部として成形する場合は、後述するプレート取付台42のプレート係合部材50の形状を凹部として形成することが必要となる。
【0074】
プレート取付台42は、直方体形状の取付台筐体420からなり、取付台筐体420の上面に可搬プレート41が載置される。つまり、プレート取付台42の上面は、可搬プレート41が着脱可能に載置される水平なプレート載置面である。このプレート載置面には、複数のプレート係合部材50が固着され、また、2つの電磁コイル421と2つの可搬プレート着座検出センサ60とが配置されている。
【0075】
プレート係合部材50は、可搬プレート41の係合孔412に係合させるための部品であり、水平な座面を有し、座面から鉛直上方に突出するテーパー形状からなる。各プレート係合部材50は、取付台筐体420上面の周縁部で、上述した可搬プレート41に設けられる係合孔412に対応する位置に配置されている。
【0076】
電磁コイル421は、可搬プレート41を磁力によって固定するためのプレートロック用の電磁石であり、駆動電流を供給することにより、磁力による吸引力が発生し、可搬プレート41がプレート取付台42に固定される。各電磁コイル421は、x方向、すなわち、取付台筐体420上面の長辺に平行な方向に関し、取付台筐体420上面の中央を挟んで両側に配置されている。
【0077】
可搬プレート着座検出センサ60は、可搬プレート41がプレート取付台42の上面上に載置されたことを検出するためのセンサであり、可搬プレート41がプレート係合部材50の座面へ着座したことが検出される。各可搬プレート着座検出センサ60は、電磁コイル421よりも取付台筐体420上面の短辺側に配置されている。
【0078】
図7は、図6のプレート係合部材50の構成例を示した斜視図である。このプレート係合部材50は、上面が水平な座面となる板状の台座部51と、座面から鉛直上方へ突出する突出部52により構成される。台座部51には、突出部52を挟んで2つのねじ孔53が形成されている。プレート係合部材50は、ねじ孔53を介して係止用ねじを取付台筐体420に螺合させることにより、プレート取付台42に固着される。
【0079】
突出部52は、テーパー面を有する柱状体からなる。すなわち、突出部52は、先端ほど径が小さくなっている。このため、可搬プレート41をプレート取付台42上に載置する際に、突出部52を可搬プレート41の係合孔412内に挿入し易くなっている。また、突出部52を係合孔412内に収容させることにより、可搬プレート41をプレート取付台42に対して高精度に位置決めすることができる。
【0080】
可搬プレート41は、下面を取付台筐体420の上面に対向させた状態でプレート取付台42に載置される。その際、プレート係合部材50の突出部52が、可搬プレート41の係合孔412内に挿入され、可搬プレート41の下面が台座部51の座面に当接する。この状態では、可搬プレート41の水平面内における移動が規制される。
【0081】
<可搬プレート41>
図8は、図6の可搬プレート41の構成例を示した図であり、図中の(a)には、可搬プレート41の上面が示され、(b)には、可搬プレート41の下面が示されている。可搬プレート41の下面には、磁力によって吸引させるための2つの吸引プレート413が固着されている。
【0082】
吸引プレート413は、鉄などの磁性材料を含む金属からなる矩形の薄い平板からなり、プレート取付台42の電磁コイル421と対向する位置に配置されている。つまり、各吸引プレート413は、x方向、すなわち、可搬プレート41の長辺に平行な方向に関し、可搬プレート41下面の中央を挟んで両側に配置されている。各吸引プレート413は、係止用ねじを可搬プレート41に螺合させることにより、可搬プレート41に固着される。
【0083】
この様な吸引プレート413が設けられていることから、可搬プレート41自体は、非磁性材料によって構成することができる。すなわち、可搬プレート41は、磁性材料を含まない金属や樹脂によって構成することができる。例えば、可搬プレート41は、表面がアルマイト加工されたアルミニウムからなる。
【0084】
可搬プレート41をアルミニウムによって構成することにより、鉄などによって構成する場合に比べて、熱伝導度が大きいので、放熱性と可搬プレート41全体の熱の均一化を良くすることができ、可搬プレート41上に形成される造形物自体の熱による反りの抑制などの効果をもたらすことができる。また、可搬プレート41の表面をアルマイト加工することにより、耐食性及び耐摩耗性が向上するとともに、例えば、造形面(上面)をつや消しの黒色に発色させることにより、UV光の照射時の反射を抑制することができる。
【0085】
係合孔412は、可搬プレート41の下面における開口のサイズが上面側よりも大きな貫通孔からなり、可搬プレート41の4つの角部にそれぞれ形成されている。係合孔412が貫通孔からなるので、可搬プレート41をプレート取付台42上に載置する際の位置合わせが容易である。
【0086】
<プレート取付台42>
図9は、図6のプレート取付台42の構成例を示した図であり、プレート取付台42を上方から見た様子が示されている。プレート取付台42の4つの角部には、プレート係合部材50a〜50dがそれぞれ固着されている。
【0087】
プレート係合部材50bは、台座部51のねじ孔53が台座部51の長手方向に長い長孔からなり、取付台筐体420に対する突出部52のy方向の位置を微調整することができる。また、プレート係合部材50cは、台座部51のねじ孔53が台座部51の短手方向に長い長孔からなり、取付台筐体420に対する突出部52のx方向の位置を微調整することができる。また、プレート係合部材50dは、取付台筐体420に対する突出部52のx方向及びy方向の位置を微調整することができる。
【0088】
この様なプレート係合部材50a〜50dを用いることにより、プレート係合部材50aを基準として、可搬プレート41の水平面内における位置を微調整し、高精度な位置決めを行うことができる。
【0089】
各可搬プレート着座検出センサ60は、x方向に関し、取付台筐体420上面の中央を挟んで両側に配置され、これらの可搬プレート着座検出センサ60の検出結果を見れば、可搬プレート41の片浮きを検知することができる。可搬プレート41の片浮きとは、一部のプレート係合部材50について、突出部52が可搬プレート41の係合孔412内に収容されているが、他のプレート係合部材50について、突出部52が係合孔412内に収容されていない状態のことである。
【0090】
図10は、図6のz移動ユニット40におけるプレート係合部材50付近をzx面に平行な鉛直面で切断した場合の切断面を示した断面図である。可搬プレート41の係合孔412は、板状体を貫通する貫通孔であり、直径が上面41aから下面にかけて広くなっており、内壁面が傾斜しているテーパー形状の断面を有している。一方、プレート係合部材50は、取付台筐体420の上面42aに固着されている。
【0091】
プレート係合部材50の突出部52を可搬プレート41の係合孔412内に収容させた際に、可搬プレート41の下面が台座部51の座面に当接することにより、可搬プレート41がz方向に位置決めされる。従って、台座部51の厚さを調整することにより、可搬プレート41の傾きを矯正し、或いは、がたつきを解消することができる。
【0092】
<可搬プレート着座検出センサ60>
図11は、図6のz移動ユニット40における可搬プレート着座検出センサ60の構成例を示した図であり、可搬プレート着座検出センサ60付近を鉛直面で切断した場合の切断面が示されている。この図では、可搬プレート着座検出センサ60の押し子62及びセンサ本体63のみ破断せずに描画されている。この可搬プレート着座検出センサ60は、操作体61、押し子62及びセンサ本体63により構成され、操作体61を介して押し子62を押し込むことにより、オン又はオフする。
【0093】
操作体61は、可搬プレート41をプレート取付台42上に載置する際の可搬プレート41の動きを押し子62に伝達するための可動部材であり、一端に抜け落ち防止用の唾部が形成され、他端が貫通孔422を介して取付台筐体420の上面42aから鉛直上方へ突出する柱状体からなる。
【0094】
操作体61の下端面には、押し子62の先端が当接しており、操作体61を押し下げることにより、押し子62がセンサ本体63側へ押し込まれる。センサ本体63は、押し子62が押し込まれることにより、オン又はオフする電気接点からなる。この様なセンサ本体63には、市販のリミットスイッチを用いることができる。
【0095】
また、可搬プレート着座検出センサ60は、上述したような可搬プレート41の下面に対して接触することにより、可搬プレート41の着座を検出する接触式のセンサ以外にも、可搬プレート41の下面に対して、非接触にて可搬プレート41の着座を検出する近接スイッチ、光電スイッチまたは非接触の距離検出センサを用いてもよい。
【0096】
図12は、図1の3次元造形装置10内の機能構成の一例を示したブロック図である。この3次元造形装置10は、操作部121、表示部122、ネットワーク通信部400、造形ジョブ記憶部401、造形処理部402、扉センサ403、上部扉ロック部404、可搬プレート着座検出センサ60、可搬プレートロック部405、プレート搬出判定部406及び報知部407により構成される。
【0097】
ネットワーク通信部400は、LAN1経由で造形依頼者端末20から受信した造形データを造形ジョブ記憶部401内に格納する。造形ジョブ記憶部401には、造形依頼者端末20から取得した複数の造形ジョブが保持される。
【0098】
造形ジョブは、造形データとその属性情報とからなり、造形ジョブの識別情報に関連付けて保持される。造形データの属性情報には、造形データの識別情報、造形データの送受信日時、造形依頼者の識別情報などが含まれる。
【0099】
造形処理部402は、造形ジョブ記憶部401内の造形データに基づいて、造形ステージ112上に造形対象物を形成するための造形処理を行う。この造形処理は、例えば、造形操作者による造形指示に基づいて開始され、ヘッドユニット111のxy駆動制御、造形ステージ112のz駆動制御、造形材ノズル312,322内の圧電素子の駆動制御が行われる。
【0100】
操作部121は、3次元造形装置10の操作者を造形操作者と呼ぶことにすれば、造形操作者による操作を受け付けると、その操作内容に応じた操作信号を造形処理部402へ出力する。
【0101】
扉センサ403は、上部扉11の開閉を検出するための開閉センサであり、検出結果を上部扉ロック部404へ出力する。扉センサ403には、上部扉11が開閉する際の操作体の移動によって電気接点がオン又はオフするリミットスイッチを用いることができる。なお、扉センサ403としては、上述した電気接点による検出方式以外に、光電センサ等を用いることにより扉の位置を非接触状態にて検出する方式を採用しても良い。また、扉センサ403からの検出信号は、後述するように、図示しないCPUでの制御を用いた場合、直接上部扉ロック部404に出力する場合と、それ以外に、その他のセンサからの信号も含め、CPUにて信号を受け取り、CPUの判断に基づいて間接的に上部扉ロック部404に制御信号が出力される構成とを含む。
【0102】
上部扉ロック部404は、コイル駆動部431及び電磁コイル432からなり、少なくとも造形処理の実行中、上部扉11を電磁的に施錠する電磁施錠手段である。電磁コイル432は、上部扉11を磁力によってロックするための扉ロック用の電磁石であり、磁力による吸引力又は斥力を利用して、閉扉状態の上部扉11をロック状態へ移行させ、開けられなくする。なお、上部扉ロック部404としては、上述した電磁式ロック機構の他に、単純な機械的なロック機構のロック部を扉センサ403からの信号に基づいて開閉させるアクチュエータにて駆動するようなロック手段であってもよい。
【0103】
コイル駆動部431は、造形処理の実行中、電磁コイル432に駆動電流を供給し、上部扉11をロックさせる。このコイル駆動部431は、上部扉11が閉状態であることを示す扉センサ403からの信号と、可搬プレート41がプレート取付台42上への着座状態であることを示す可搬プレート着座検出センサ60からの信号とに基づいて、電磁コイル432への電流供給を行う。具体的には、まず、造形処理部402が、造形操作者による造形指示を検知した場合に、扉ロック要求をコイル駆動部431へ出力するとともに、プレートロック要求をコイル駆動部433へ出力する。コイル駆動部431は、造形処理部402からの扉ロック要求に基づいて、上部扉11の開閉状態と、可搬プレート41の装着状態とを確認する。
【0104】
このとき、コイル駆動部431は、上部扉11が閉扉状態であり、かつ、可搬プレート41が装着されていれば、電磁コイル432への電流供給を開始し、扉ロック完了応答を造形処理部402へ出力する。一方、上部扉11が開扉状態であるか、或いは、可搬プレート41が未装着である場合には、電磁コイル432への電流供給を行わず、エラー信号が出力される。
【0105】
上部扉11のロック状態は、造形処理が終了した後、自動的に解除される。例えば、造形処理が終了してから一定時間が経過すれば、電磁コイル432への電流供給が終了され、上部扉11のロック状態が解除される。
【0106】
可搬プレート着座検出センサ60は、押し子62がセンサ本体63側へ押し込まれることにより、可搬プレート41がプレート係合部材50の座面に着座したことを検出し、その検出結果を可搬プレートロック部405へ出力する。
【0107】
可搬プレートロック部405は、コイル駆動部433及び電磁コイル421からなり、少なくとも造形処理の実行中、可搬プレート41を電磁的に固定する電磁固定手段である。電磁コイル421は、可搬プレート41を磁力による吸引力を利用して固定し、取り外せなくする。
【0108】
コイル駆動部433は、造形処理の実行中、電磁コイル421に駆動電流を供給し、プレート取付台42に対し可搬プレート41を固定させる。このコイル駆動部433は、扉センサ403及び可搬プレート着座検出センサ60の出力に基づいて、電磁コイル421への電流供給を行う。具体的には、コイル駆動部433が、造形処理部402からのプレートロック要求に基づいて、上部扉11の開閉状態と、可搬プレート41の装着状態とを確認する。
【0109】
このとき、コイル駆動部433は、上部扉11が閉扉状態であり、かつ、可搬プレート41が装着されていれば、電磁コイル421への電流供給を開始し、プレートロック完了応答を造形処理部402へ出力する。一方、上部扉11が開扉状態であるか、或いは、可搬プレート41が未装着である場合には、電磁コイル421への電流供給を行わず、エラー信号が出力される。この様に構成すれば、上部扉11が開いているか、或いは、可搬プレート41が未装着のまま電磁コイル432,421へ駆動電流が供給されるのを防止することができる。
【0110】
可搬プレート41の固定状態は、造形処理が終了した後、自動的に解除される。例えば、造形処理が終了してから一定時間が経過すれば、電磁コイル421への電流供給が終了され、可搬プレート41の固定状態が解除される。
【0111】
造形処理部402は、コイル駆動部431からの扉ロック完了応答と、コイル駆動部433からのプレートロック完了応答とに基づいて、造形処理を開始する。つまり、上部扉11がロックされていないか、或いは、可搬プレート41が固定されていなければ、造形処理は実行されない。この様に構成すれば、上部扉11がロックされないまま、造形処理が開始されたり、可搬プレート41が固定されないまま、造形処理が開始されるのを防止することができる。
【0112】
プレート搬出判定部406は、可搬プレート着座検出センサ60の出力に基づいて、造形処理が終了した後に、可搬プレート41が搬出されたか否かを判定し、その判定結果を報知部407へ出力する。可搬プレート41が搬出されたか否かは、可搬プレート着座検出センサ60の検出履歴に基づいて、判定することができる。すなわち、造形処理が終了した後に、可搬プレート41の着座状態から非着座状態へ移行したか否かにより、判定することができる。
【0113】
報知部407は、プレート搬出判定部406の判定結果に基づいて、造形物の取り出し忘れを報知する。例えば、可搬プレート41が未搬出であることを示すメッセージが表示部122に表示される。
【0114】
図13のステップS101〜S112は、図12の3次元造形装置10における造形準備時の動作の一例を示したフローチャートである。まず、造形処理が終了してから一定時間が経過すれば、上部扉ロック部404は、上部扉11のロック状態を解除し、また、可搬プレートロック部405は、可搬プレート41の固定状態を解除する(ステップS101)。
【0115】
次に、造形処理部402は、造形操作者による造形指示があれば、扉ロック要求を上部扉ロック部404へ出力し、また、プレートロック要求を可搬プレートロック部405へ出力する(ステップS102)。上部扉ロック部404は、造形処理部402からの扉ロック要求に基づいて、上部扉11の閉扉を確認し、上部扉11が閉まっていれば、ステップS105へ移行する(ステップS103,S104)。
【0116】
次に、可搬プレートロック部405は、造形処理部402からのプレートロック要求に基づいて、可搬プレート41の装着を確認し、可搬プレート41が装着されていれば、ステップS107へ移行する(ステップS105,S106)。
【0117】
上部扉11が閉まっていないか、或いは、可搬プレート41が未装着である場合には、エラー信号が出力され、ステップS102の処理手順が繰り返される(ステップS111)。
【0118】
次に、プレート搬出判定部406は、上部扉11が閉扉状態であり、かつ、可搬プレート41が装着されている場合に、可搬プレート着座検出センサ60の検出履歴を参照し、造形処理が終了してから次の造形処理が開始されるまでの間に、可搬プレート41が搬出されたか否かを判定する(ステップS107)。このとき、報知部407は、可搬プレート41が搬出されていなければ、造形物の取り出し忘れを報知し、ステップS102の処理手順が繰り返される(ステップS112)。
【0119】
一方、上部扉11が閉扉状態であり、かつ、可搬プレート41が装着され、しかも、可搬プレート41が搬出されていれば、上部扉ロック部404は、上部扉11をロックし、扉ロック完了応答を造形処理部402へ出力する。また、可搬プレートロック部405は、可搬プレート41を固定し、プレートロック完了応答を造形処理部402へ出力する(ステップS108)。
【0120】
造形処理部402は、扉ロック完了応答及びプレートロック完了応答に基づいて、z移動ユニット40を基準位置へ移動させ、UVランプ351を点灯させて、この造形準備を終了する(ステップS109,S110)。
【0121】
以上、可搬プレート41のロック、アンロック状態にかかる種々のセンサとの関係について一例を説明したが、可搬プレート41のロック、アンロックについては、以下の条件を満たせば、詳細には種々の方法が考えられる。
【0122】
つまり、可搬プレート41を、プレート取付台42上にロックする前提条件は、"少なくとも上部扉11が閉じられている"ことである。このため、上部扉11の開閉を検出する扉センサ403にて扉の閉状態が検出されるとともに、可搬プレート41がプレート取付台42に着座している状態を検出すれば、基本的に可搬プレート41をロック状態とすることができる。しかし、この状態が成立していても直ぐにロックを行わず、更に造形開始信号の入力に基づいて、可搬プレート41のロックを行ってもよい。
【0123】
更に、直接的に上部扉11の閉状態を可搬プレート41のロック前提条件とせず、例えば、PC側や装置からの造形開始信号または造形予約信号をCPU等の制御部が受け付けた際、その指令を正式に受け付ける条件に、"少なくとも上部扉11が閉じられている"こととし、その指令の受付を正式にCPUが受け付けた場合、既に"上部扉11が閉じられている"ことは確認済みのため、その指令に基づいて、可搬プレート41のロックを行う場合がある。つまり、間接的に"少なくとも上部扉11が閉じられている"が前提となっていることも上記ロック条件を意味することとする。
【0124】
また、可搬プレート41を、プレート取付台42上にアンロックする前提条件は、"少なくとも上部扉11が開いている"または、"造形完了信号を入力している"ことである。このため、造形完了信号が入力されたことを検出するか、または上部扉11の開閉を検出する扉センサ403にて扉の開状態が検出すれば、基本的に可搬プレート41をアンロック状態とすることができる。しかし、造形完了信号が入力されたことを検出した状態でも、3次元造形装置10の機能として、特定のパスワードを受け付けない限り扉を開けないなどの機能が搭載されている場合は、造形完了信号が入力されたことを検出することに加え、適切なパスワードの入力が行われたことを受けて、可搬プレート41をアンロック状態としてもよい。
【0125】
更に、コイル駆動部431ならびに433が各々の電磁コイル432ならび421を制御しているが、これらのコイル駆動部431ならびに433は、図示しない3次元造形装置10内に設けられるCPUの特定の機能を示しているものも意図しており、上述した造形完了信号などはこのCPUにて造形用データに基づいた造形動作が全て完了したことを認識することにより、出力されるものである。
【0126】
本実施の形態によれば、可搬プレート41は、プレート取付台42に対して取り付ける場合、プレート取付台42の上方から下方に向けて可搬プレート41を移動させるだけで、プレート取付台42の上面42a上に載置できるとともに、プレート取付台42から取り外す場合、プレート取付台42の上面から上方に向けて可搬プレート41を移動させるだけで、プレート取付台42の上面42a上から取り外すことができ、更に、可搬プレート41は、上部扉11の開閉状態に応じて電磁コイル421の磁力によりプレート取付台42に固定される。このため、上部扉11の開閉状態に応じて可搬プレート41をプレート取付台42に強固に固定することができる。従って、造形処理の実行中に可搬プレート41が移動して造形精度が低下するのを抑制しつつ、可搬プレート41を着脱する際の作業性を向上させることができる。
【0127】
また、可搬プレート41がプレート取付台42上に載置されていないにも関わらず、電磁コイル421に駆動電流が供給されるのを防止することができ、可搬プレート41が未装着のまま造形処理が実行されるのを抑制することができる。さらに、造形物の取り出し忘れを報知することにより、可搬プレート41から造形物が撤去されないまま次の造形処理が開始されるのを防止することができる。
【0128】
なお、本実施の形態では、プレート取付台42に対し突出部52の水平面内の位置を微調整することができるプレート係合部材50の例について説明したが、本発明はプレート係合部材50の構成をこれに限定するものではない。例えば、プレート係合部材50は、可搬プレート41を水平面内で位置決めするとともに、鉛直方向の位置を調整することができるようなものであっても良い。
【0129】
図14は、図6のプレート係合部材50の他の構成例を示した図である。図中の(a)には、プレート係合部材50を水平方向から見た様子が示され、(b)には、z移動ユニット40内のプレート係合部材50付近をzx面に平行な鉛直面で切断した場合の切断面が示されている。
【0130】
このプレート係合部材50は、上面が水平な座面となる台座部51と、台座部51の座面から上方へ突出する突出部52と、台座部51から下方へ突出する雄ねじ部54により構成される。プレート係合部材50は、雄ねじ部54を取付台筐体420に螺合させることにより、プレート取付台42に固着される。
【0131】
つまり、プレート係合部材50を回転させれば、台座部51の鉛直方向の高さを調整することができる。可搬プレート41は、プレート係合部材50の突出部52を係合孔412内に収容させた際に、可搬プレート41の下面が台座部51の座面に当接することにより、z方向に位置決めされる。従って、台座部51の高さを調整することにより、可搬プレート41の傾きを矯正し、或いは、がたつきを解消することができる。
【0132】
また、本実施の形態では、コイル駆動部433が造形処理部402からのプレートロック要求に基づいて、電磁コイル421への電流供給を開始する場合の例について説明したが、本発明は電磁コイル421への電流供給を開始させるためのトリガをこれに限定するものではない。例えば、コイル駆動部433が、扉センサ403の出力に基づいて、上部扉11の閉扉状態への移行を検知して電磁コイル421への電流供給を開始するような構成であっても良い。
【0133】
また、本実施の形態では、2つの電磁コイル421がプレート取付台42に設けられる場合の例について説明したが、本発明は電磁コイル421の個数をこれに限定するものではない。例えば、1つの電磁コイル421をプレート取付台42に設けたものであっても良い。
【0134】
また、本実施の形態では、可搬プレート41とプレート取付台42とからz移動ユニット40が構成される場合の例について説明したが、本発明は、可搬プレート41及びプレート取付台42からなるユニットが可動式のものに限定するものではなく、固定式のものであっても良い。すなわち、ヘッドユニット111を鉛直方向へ移動させることにより、可搬プレート41上に造形材層を積層形成するようなものも本発明には含まれる。
【0135】
また、本実施の形態では、3次元造形装置10がインクジェット方式の積層型造形機である場合の例について説明したが、本発明は造形対象物の造形方法をこれに限定するものではなく、造形ステージ112上に造形材層を順に積層形成するものであれば他の方式のものであっても良い。例えば、UV硬化樹脂にレーザー光を照射して固化させる光造形法を採用した造形装置にも本発明は適用することができる。光造形法は、UV硬化樹脂からなる液体を入れた容器の上方から樹脂液面にレーザー光を照射し、レーザー光を2次元走査することによって樹脂液面を選択的に露光し固化させる。或いは、本発明は、粉末結合法、シート積層法、樹脂押し出し法を採用した造形装置にも適用することができる。粉末結合法は、熱可塑性の粉末からなる粉末層にレーザー光を照射することによって粉末層を選択的に溶融固化させ、或いは、砂などの粉末にバインダー液を塗布することによって粉末層を選択的に固化させる造形法である。シート積層法は、LOM(Laminated Object Manufacturing)方式とも呼ばれ、紙などのシート材同士を接着し、ナイフなどを用いて上側のシート材を切断することにより所定形状に切れ目を入れる造形法である。樹脂押し出し法は、FDM(Fused Deposition Molding)方式とも呼ばれ、熱可塑性樹脂を溶融させた状態でノズルから押し出しながらノズルを走査して樹脂層を形成する造形法である。
【符号の説明】
【0136】
100 造形システム
10 3次元造形装置
11 上部扉
110 作業空間
111 ヘッドユニット
112 造形ステージ
113a x走査用係合溝
113b y走査用ガイド機構
114 パージトレイ
116 天板
12 操作表示部
121 操作部
122 表示部
13 前面扉
130 カートリッジ収容部
13M モデル材カートリッジ
13S サポート材カートリッジ
13H 廃液タンク
20 造形依頼者端末
31 サポート材用ノズルユニット
311 サポート材用のリザーブタンク
312 サポート材用の造形材ノズル
32 モデル材用ノズルユニット
321 モデル材用のリザーブタンク
322 モデル材用の造形材ノズル
33 y走査用ホルダユニット
34 ローラーユニット
341 膜厚調整用ローラー
35 ランプユニット
351 UVランプ
40 z移動ユニット
41 可搬プレート
411 取っ手
412 係合孔
413 吸引プレート
42 プレート取付台
420 取付台筐体
421 プレートロック用の電磁コイル
43 z駆動装置
50,50a〜50d プレート係合部材
51 台座部
52 突出部
53 ねじ孔
54 雄ねじ部
60 可搬プレート着座検出センサ
400 ネットワーク通信部
401 造形ジョブ記憶部
402 造形処理部
403 扉センサ
404 上部扉ロック部
405 可搬プレートロック部
406 プレート搬出判定部
407 報知部
431,433 コイル駆動部
432 扉ロック用の電磁コイル
1 LAN
2 吐出口
3 液滴
4 造形材層
M モデル材
S サポート材
SS 下地層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形ステージ上に造形材からなる造形材層を順に積層形成する3次元造形装置において、
水平なプレート載置面を有するプレート取付台と、
上記造形ステージとなる水平面を有し、上記プレート載置面上に載置される可搬プレートと、
上記プレート取付台に設けられ、上記可搬プレートを磁力によって固定するための電磁コイルと、
外部空間から上記造形ステージ上の作業空間へのアクセスを遮断する遮断扉と、
上記遮断扉の開閉を検出する扉センサと、
上記遮断扉の閉状態を示す上記扉センサの出力に基づいて、上記電磁コイルに駆動電流を供給し、上記プレート取付台に対し上記可搬プレートを固定させるコイル駆動手段とを備えたことを特徴とする3次元造形装置。
【請求項2】
上記可搬プレートが上記プレート載置面上に載置されたことを検出する可搬プレート着座検出センサを備え、
上記コイル駆動手段は、上記遮断扉の閉状態を示す上記扉センサの出力と、上記可搬プレートが上記プレート載置面上に載置されたことを示す上記可搬プレート着座検出センサの出力とに基づいて、上記電磁コイルへの電流供給を行うことを特徴とする請求項1に記載の3次元造形装置。
【請求項3】
上記可搬プレート着座検出センサの出力に基づいて、造形処理が終了した後に、上記可搬プレートが搬出されたか否かを判定するプレート搬出判定手段と、
上記プレート搬出判定手段の判定結果に基づいて、造形物の取り出し忘れを報知する報知手段とを備えたことを特徴とする請求項2に記載の3次元造形装置。
【請求項4】
上記プレート載置面に形成され、鉛直上方へ突出するテーパー面を有するプレート係合部と、
上記可搬プレートに形成され、上記テーパー面を収容する取付台係合部とを備え、
上記可搬プレート着座検出センサは、上記プレート係合部の上記テーパー面が上記可搬プレートの上記取付台係合部内に収容されたか否かを検出し、
上記コイル駆動手段は、上記遮断扉が閉まっており、かつ、上記プレート係合部の上記テーパー面が上記可搬プレートの上記取付台係合部内に収容されている場合に、上記電磁コイルへの電流供給を行うことを特徴とする請求項2又は3に記載の3次元造形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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